吊り責め(つりぜめ)は、古くは拷問の一種であり、いまはSMプレイの型として残っている。全裸または半裸の相手を緊縛し、空中へ吊り上げたうえで、鞭や性的な責めを重ねる。床から足が離れた瞬間に体重は縄へ移り、抵抗は難しくなる。縄の食い込み、落下への不安、排泄すらままならない屈辱——吊りそのものがすでに責めである。
なぜ吊りは効くか
人間を完全に無力化するのは難しい。空中に浮かせると、比較的少ない手順で無抵抗に近い状態を作れる。身体を支えている縄やロープが肉へ食い込み、その箇所の壊死など取り返しのつかない損傷への恐怖が、絶え間ない痛みと重なる。古来、吊り単体が拷問として使われてきた理由はそこにある。鞭や杖の打擲を足せば効果はさらに上がる。ただしかつての日本家屋には太い梁があり、吊りの支点にできた。いまの住宅に太い梁は少なく、天井や梁を使う吊りは特別な設備が要る。もともと拷問である以上、壊死で手足を失う、死ぬ、という最悪がある。安易に手を出してはならない。
歴史的な縛りと、いまの吊り方
かつての被疑者への手順はこうだった。上半身を露出させ、後ろ手に縛る。手は平行に揃えて肩のあたりまで上げ、グルグル巻きにする。腕を半紙で巻き、その上から青い細引き縄で縛る。細引きを天井の滑車にかけ、吊るして拷問する。箒尻で打つほか、水を浴びせ、弓の折れで腹を殴ることもあった。高さは爪先が一寸浮く程度。長時間になると、その爪先から血が滴ったとされる。
一般的なイメージは、両腕を束ねて頭上へ引き上げる吊りである。この吊り方は体重を腕と肩で支えきれず、脱臼しやすい。両手吊りは天井から下ろしたロープで両手首を縛って上げるやり方で、手順は簡単だが手首に全体重が乗る。逆さ吊りは頭を下にする型で、別項として語られることが多い。SMの現場では肩と胴で体重を分散する吊り、片足吊り、逆さに近い傾斜など、脱臼と循環障害を避ける型が複数ある。梁のない部屋では専用のフレームやフックが前提になる。合意のプレイであっても、吊りは血流と神経を直接狙う。短時間、監視つき、降ろす手順を先に決めておく——それが最低限である。
拷問としての吊りは、爪先が一寸浮く高さと、長時間ののちに爪先から滴る血という記録が残る。箒尻、水、弓の折れは、吊ったあとの二次責めである。SMの吊り責めは、その無抵抗と縄の食い込みを性的な責めへ移した型だ。全裸または半裸で吊り、鞭を入れ、排泄の自由を奪う。見た目の派手さより、体重をどこで受けるかが本体になる。両手を頭上へ揃える吊りは脱臼しやすい。肩と胴で分散する、片足を残す、傾斜で逆さに近づける——現場の型は、そこを避けるために増えた。壊死と切断と死亡が、もともと拷問側の結末である以上、趣味の空中責めは設備と時間と監視を外すと、ただの傷害になる。吊りそのものが責めであり、そのうえで種々の性的な責めを重ねる、というのがこの語の中身である。












