CFNMは Clothed Female(s) and Naked Male(s) の略で、着衣の女と裸の男、という関係を指す。人数は問わない。服を着た女性と、脱いだ男性とのあいだに生じる性的倒錯であり、雑誌、AV、官能小説のジャンル名としても使われる。女性による男性の性的客体化の一種でもある。服を着た側が見て、脱いだ側が晒される。その非対称が、フェムドムやM男優の画面とも重なる。カテゴリーは広く、SMや露出など、いくつかの場面設定を含む。ネット上では設定ごとに紹介するサイトはあるが、多様な設定を組み合わせた表現はめられることは少ない。対になる語は、着衣の男と裸の女を指すCMNFである。同じ服の格差を、どちらが着ているかで裏返す。
SM系CFNM
支配的な女性と隷属的な男性によって行われる。男が奴隷となり、「奴隷は動物と同じ、あるいはそれ以下なので衣服を着ることを許さない」といった支配が前提になる。服を着る権利を取り上げることが、人間扱いをやめる合図になる。男を見下すことを好む女性(ドーム、domme)が服従者や奴隷に家事をやらせ、自分や友人が服を着たまま男を裸で放置することも一般的だ。そのとき首輪や貞操帯を着用させ、鞭で打ち、全身の体毛を剃り、裸体に侮辱的な言葉を書くこともある。家事をしながら裸、友人が来ても裸。服を失った側が、部屋の家具に近づく。
裸で従う男たちの周りでドームがまとう服の種類は多様である。SM雑誌やビデオでは、刺激的な女王様(dominatrix)の格好が多い。実世界では、男が素っ裸なのに対して、女が素朴で平凡な服を着ていることが多い。レザーとヒールでなくても、日常着のままの女と全裸の男で、支配は成立する。プレイの場面設定としては、鞭打ち、男性器虐め、ディルドを用いたアナルセックスといった「拷問」、あるいは「女を性的に満たすことを強いられる反面、本人の射精は禁止される」といったものがある。着衣の女が残る部屋で、男だけが道具と射精を取り上げられる。責める側が服を着ていることが、責める側であることの印になる。
露出とエンターテイメント
CFNM愛好者のなかには、侮辱的ではない状況で自らを女に露出する男を見るのを好む者もいる。典型は、男性ストリッパーを見る女性だ。SMの奴隷ではなく、ショーのパフォーマーとして脱ぐ。人気サイトのなかには、女の見物者が男性ダンサーとフェラチオや性行為に及ぶものもある。「ガールズ・ナイト・アウト」や「バチェロレッテ・パーティー」と銘打たれる。辱めるための裸と、祝うための裸が、同じ略語の下に並ぶ。近年のバチェロレッテ・パーティーものでは、「服を着た女と素っ裸の男」という定義に忠実と言えなくなり、半裸や全裸の女が登場するものも少なくない。定義が崩れるほど、ジャンルとして消費されている。
エンターテイメント系のよい例は、英国映画『フルモンティ』のようなストリップショーである。最も人気の男性ストリッパー集団の一つがチッペンデールズ(Chippendales)。アメリカから出発し、世界の有名劇場で公演している。音楽と踊りが上演され、パフォーマーと観客が様々な形で関わる機会もある。舞台上や「ストリッパーズ・ピット」で桟敷席の客を招いたり、観客のなかに飛び込んだりする。形は、単体または複数による舞台公演、パブやクラブの特別公演、バチェロレッテ・パーティーやヘン・パーティーのための自宅やプライベート空間、男性ラップダンサーが女客を楽しませるクラブやダンス場などだ。ショーの多くはストリッパーの踊りに脚光を当て、女客の飛び入り、チーキーゲーム、ダーティーダンス(腰を密着させて回る踊り)の機会を設ける。客席は着衣、舞台は脱ぐ。その配置自体がCFNMである。露出と接触の程度は国によって違う。裸や接触を伴うエンターテイメントへの法律と文化的態度の差である。
日本におけるエンターテイメント系CFNMとしては、おさわり系ホストクラブと呼ばれる女性向けセクシーパブがある。ホストが下半身を露出して女客を接待し、女客がホストの男性器を触って遊ぶ風俗だ。イケメン男性の裸や男性器を見たいという女側の欲求を満たす店で、女性客がホストを刺激して射精させることを楽しむことが多い。チッペンデールズが劇場の踊りなら、おさわり系は座席での接触と射精までを商品にする。どちらも、服を着た女が裸の男を見る——そして触る——側に立つ。
望まない脱衣
CFNMを楽しむ者のなかには、男が望まないのに最終的に裸になる場面を好む者もいる。服を着たままの女に脱がされる。誰も来ないと思って寝室やロッカールームで裸になっているところへ、着衣の女が入ってくる。自分から脱ぐ露出と、脱がされる露出強制は、同じ略語でも温度が違う。女の前で裸になるよう求める圧力を含む筋書きは、CFNM的物語の主題でもある。裸になることを賭けたポーカーに負ける、脅迫される、着衣の女による医学的検査を受ける、といった設定がこの範疇に入る。負け、脅し、診察。理由は違っても、着衣の女の前で男が服を失う点は同じだ。女性スポーツ記者が、裸の運動選手の体格を観察することを許されたり、ロッカールーム取材で尻や性器を隠さない場面に出くわしたりするのも、この部類のCFNM的設定と言ってよい。取材の権限が、見る側の服を守る。
日本のAVと、オールナイトフジ
AV業界では、ソフト・オン・デマンド系列の『ウブな女のちんちん研究』(菅原ちえ監督ほか)や、MOODYZ系列の『チンポを見たがる女たち』(藤沢いずみ監督)が長期シリーズ化した。着衣の女が男の性器を観察し、触り、研究する——シリーズ名の時点でCFNMである。国内にもそれなりの数の愛好家がいると考えられる。風俗店の一種であるオナクラも、CFNM愛好家のニーズを満たす役割を果たしている。店側の女が服を着たまま、客の男を扱って射精させる。ただしCFNMを扱うサイトの多くは海外の画像・動画に頼り、国内に男性ストリップが定着していないことを考えると、未だメジャーとは言えない。AVの長期シリーズとオナクラはあっても、劇場型の男ストリップは薄い。
性風俗とは別に、1980年代の深夜番組『オールナイトフジ』(フジテレビ系列)では、「あなたのパンツ見せて下さい!」が好評だった。一般公募の現役女子大生・短大生で構成される「オールナイターズ」が街頭ロケし、美青年を捕まえてズボンを下ろし、下着を見せてもらうコーナーである。路上で、着衣の女たちが男の下着を見る。当時は若い男性のあいだでエロパン(ビキニブリーフ)が急速に普及しており、オールナイターズの前でビキニブリーフを露出する率が高かった。下着がビキニブリーフだったときに、女たちが恥じらいながら喜ぶ姿が受けた。パンツだけでなく男性器を見せる者も多く、そのリアクションが名物コーナーとして長く続いた理由になった。地上波の深夜が、CFNMをジャンル名なしで毎週やっていた。
夏休みの特別企画では「あなたのモッコリはからせて下さい!」も行った。夏の海岸でビキニの水着を穿いた美青年に声をかけ、男性器の大きさを計らせてもらう、普段より過激な内容だった。股間に粘土を押さえつけて計る。ビキニの上から計られる者も、ビキニを脱いで直接粘土を当てられる者もいた。下着を見るコーナーが、大きさを計るコーナーまで進んだ。オールナイトフジ終了後、類似企画をレギュラーで持つ番組は現れなかった。いまも地上波で、主に芸人による露出強制系CFNM的なコーナーが組まれることがある。CFNMという言葉は使われず、性的な意図も定かではないが、女性出演者や観客の反応が組み込まれ、CFNM的な要素の濃い番組作りは残っている。着衣の女が残る場所で男だけが脱ぐ——AVのシリーズも、おさわり系ホストも、深夜テレビのパンツも、同じ配置の変種である。SMの奴隷部屋から、劇場のストリップ、ロッカールーム、フジの街頭ロケまで、略語は一つの格差を指している。













