『縄と乳房』(英題: Nawa to chibusa)は1983年の日活ロマンポルノである。監督は小沼勝、主演は松川ナミ。タイトルが示すとおり、縄と乳房——緊縛の視覚そのものを正面に出したピンク映画で、旅先のSMショーが「見せ物」から「本物」へ食い込む話として残っている。日活の成人映画線のなかで、SM興行と緊縛の乳房を題名に出した一本である。英題は日本語題のローマ字転写であり、海外のピンク映画カタログでもそのまま検索される。
あらすじ:旅のSMショーが本物になる
小夜は夫とともに旅行先でSMショーを催し、そこで下女を演じていた。人生にはますます退屈していた。京都でのツアー中、プライベートなショーを求める裕福なカップルが彼らを手配する。このあと最終的に「本物」を強いられることを、二人はまだ知らない。舞台の下女と、富裕層の私室で強いられる拘束は、同じ縄でも意味が違う。ショーのSMと、逃げられないSMが、一本の旅の先で重なる。公演として売る縄と、客が本物を要求する縄——いまBDSMの場で前提とされる同意の枠は、この1983年の筋書きでは最初から破られる側にある。退屈していた演者が、演目の外へ引きずり出される。
キャスト
松川ナミが小夜。田山涼成が小夜の夫・功。仙波和之が川村健三、志麻いづみが川村妙子——プライベートショーを求める側の夫婦である。高橋明はストリップクラブのオーナー。佐川泉は清水寺の女。高林陽一は少女を伴った和服の紳士。庄司三郎は川村の連絡係。京都の寺社名がクレジットに入り、ストリップと和装と連絡係が、旅先のSM興行を実務として支えている。清水寺の女、和服の紳士、川村夫妻の連絡係——地名と役職が、ツアー先の京都を観光ではなく手配の地図にしている。
2006年のDVD再発
ジェネオンから日活ロマンポルノシリーズの第四段として、2006年2月23日に日本でDVDがリリースされた。劇場公開から二十数年後の再発であり、1983年の縄と乳房を、ロマンポルノのカタログ作品として改めて流通させた。シリーズの第四段という位置は、日活のSM・緊縛ものを番号付きで棚に並べ直した再発である。監督・主演・タイトルの組み合わせ——小沼勝、松川ナミ、『縄と乳房』——が、日活SMものの一本として残る根拠になっている。ストリップクラブのオーナー役に高橋明がいることも、興行としてのSMと、映画としてのSMが同じ回路にあることを示している。
英語圏のピンク映画研究と国内データベース
英語のフィルム資料ではIMDbに Nawa to chibusa (1983) があり、Complete Index to World Film にも “NAWA TO CHIBUSA” として載る(2009年8月8日閲覧の記録)。研究書では Jasper Sharp の Behind the Pink Curtain: The Complete History of Japanese Sex Cinema(Guildford: FAB Press、2008年、ISBN 978-1-903254-54-7)と、Thomas Weisser / Yuko Mihara Weisser の Japanese Cinema Encyclopedia: The Sex Films(Miami: Vital Books / Asian Cult Cinema Publications、1998年、ISBN 1-889288-52-7)が、本作を日本のセックス映画史の中に置いている。ピンク映画の通史とセックス映画事典の双方に、縄と乳房の英語題名が載る。日本語では文化庁の Japanese Cinema Database に「縄と乳房」があり(2009年8月7日閲覧)、walkerplus.com にも同名頁があった(2012年4月6日時点のアーカイブ、2009年8月8日閲覧)。国内の映画データベースと、英語圏のピンク映画研究が、同じ1983年の日活作を別々に記録している。
BDSM寄りの読み方をするなら、ポイントはタイトルの視覚だけではない。興行としてのSMショー、下女という役、京都の富裕層が買うプライベート、そして「本物」へ強制される転換——見せる縄と、逃げられない縄が同じ夫婦の旅に載っている。日活ロマンポルノのSM線を見るときの一本として、キャストと再発年と、英語圏のピンク映画事典に名前が残っている。縄と乳房という題は、緊縛が乳房に残す跡を売る宣言でもある。小沼勝と松川ナミの組み合わせ、1983年の公開、2006年のジェネオン再発、Sharp と Weisser の事典——残っているのはその骨格である。










