奴隷牧場1 第1部分 (1/7)
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二〇〇二年一月
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二〇〇三年二月
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二〇〇四年九月
二〇〇二年一月
間近に迫った二〇〇二年四月の風俗営業法の改正、いわゆるテレクラ規制法は、米倉隼人たち「奴隷狩り」を任務とするものたちにとって深刻な問題となっていた。
「会社」が今から七年ほど前に立ち上げた「SM伝言ツーショット」の成功は、その事業そのもので得られる収益、つまりMの女性と知り合いたいS男性、もしくはその逆にS女性と知り合いたいM男性が高額の対価を支払い、女性にはフリーダイヤル回線を提供して、その差額を儲けとするという本来の収益構造もさることながら、米倉たち「狩人」の暗躍により「会社」=「組織」にマゾ奴隷を数多く提供するという重要な役目を担ってきたからである。
通常、会員となる男性は、一時間一万円、五時間三万円、十二時間五万円のコースの中から選択し、事前の振込みかカード決済により代金を支払う。カード決済の場合は、手数料分若干時間が短くなる。
会社は女性誌、特に設立当時隆盛を極めていたレディースコミックなどに大量の広告を打ち、SMに興味を持つ女性会員を獲得する。
もちろんメジャーSM誌や夕刊紙などへの男性向けの広告も欠かせず、男女ともにより多くの会員を獲得しなければ、結局は敬遠され衰退してしまう。
米倉自身は、このシステムの開設時にはまだ「組織」とも「会社」とも一切の関わりがなかったため、詳しい経過はわからないが、三年前に妻の美樹とともに会長三田村と知り合うきっかけとなったのもこの伝言ダイヤルを美樹が「いろいろ試したけどここが一番よさそう」と判断したからであったし、そのカテゴリーが細かく分かれていて使いやすいシステムは、当時から他の同様のシステムとは、比べるべくもなく洗練されたものであった。
このシステムが成功したもっとも大きな理由は、実はこの男性と女性の出会いを仲介するという仕組そのもので利益をあげることを本来の目的とはしていなかったからだった。現在でこそ結果的に利益も上がっているが、儲からなくてよかったのだから、広告費をいくらでも使えたのだ。
女性の利用そのものは無料であるから、そのアクセス数は結果的に女性に向けた広告費に比例する。そこへ他の同業者との決定的な違いとして、お金を払う男性会員をだますために女性を雇ってサクラにするのではなく、逆に男性のサクラを最初に置き、女性が安心して使えるという評判を手にすることを目標とした。つまり、男性のサクラにより、様々なS男性M男性を存在させ、それを聞いた女性が返事を入れたり、もっと積極的に自分からメッセージを入れたりするということを誘発して、男性会員は後から作るという形で全体像を作り上げていったわけだ。
そうして今では、SMに特化した伝言ダイヤル・ツーショットといえば他を圧倒する形で存在するに至っていた。
米倉自身、三田村という怪物、潤沢な資金を持った裕福な実業家であり、シビアな目を持った経営者で、そして稀代のサディストでもあるこの男に出会ったことで、人生がまったく別の方向へ向かうこととなったのだが、米倉が組織に加わった後も、この男が部下の意見を聞き、そこに自分の考えを乗せる事で、成功がまるで約束されたプロジェクトを次々に実行に移し、そして成果とともにさらなる富を生んでいくのを何回も目にしてきた。
三田村が最初にやった大きな買収劇は、もともとは広告料を支払っていた女性向けアダルト誌を、出版社ごと買い取ったことだ。そうしておいて、さらに部数を伸ばすための数々の戦略を打ち、広告と記事の側面から伝言システムをバックアップするに及ばず、ダイレクトに職業としてSMクラブで働きたい女、金のためならどんなことでもしますという元々M性を持った女を集めるためのシステムも構築していった。
そして次に、それらの女たちを効率良く稼がせるために、経営不振に陥ったシティホテルへの出資をして大株主となり、上階のフロアごとVIP向け秘密SMクラブにしてしまった。
その上で、政治家や高級官僚、一流企業の社長などと彼等の紹介でしか入会できない、いわゆるゴルフ会員権のような仕組をSMクラブの会員権に持ち込み、大きな収益源を獲得した。
しかしそうなると、新たな奴隷を次々に入手することができなければ、様々なシステムが破綻しかねない。これまでにいくつか確立したマゾ奴隷発掘の方法の中にあっても、このテレフォンコミュニケーションによる方法は、他を圧倒して機能してきたのだった。
M願望を持つ女性がいかに多いかということをこの三年間で米倉は思い知らされてきた。それ故に「胴元」としてこの伝言システムを握り続けている限り、常時新たな奴隷を入手できると考えていたのだが、そこに待っていた落とし穴が、まさかの法律改正であった。
確かにここ数年、伝言ダイヤルやテレフォンクラブでの安易な出会いによる、人間関係のトラブルが続出してはいた。援助交際という名の付いた若い者の売春から、金銭トラブルによる殺人事件までが起こり、テレビのニュースを賑わせた。
しかし、組織の顧客=会員には有力な政治家や高級官僚も多くいる為、三田村はなんとかなると楽観していたような節があった。
だが、今度ばかりは世論の勢いに彼らも敵わなかったようだ。
「さっき、なに見てたの。もっとしっかり腰を使いなさい」
米倉の妻美樹の罵声がベッドの上で米倉が組み伏せている娘に飛ぶ。
狩人として鍛えた米倉の容赦ない動きに、レッスンと称して実際に犯されている乃里子は、息も絶え絶えで、最初見よう見まねで米倉の動きに合わせて腰をグラインドさせていたものの、今は、自らの内部に沸き起こる未知の快感を受け止めるのに精一杯となっていた。
「ちゃんとできなければ、お母さん呼んでお母さんの前でのレッスンに切り替えるわよ」
「はぃっ」
かすれた声で返事をして十八の娘が懸命に腰を動かそうとする。
百五十センチそこそこの小柄な体には、いつものレッスンとは違って、縄一本巻かれることなく、それ故に強い力で手首を押さえつけられ、下半身をふたつ折りにさせられたいわゆる屈曲位で容赦のないピストンを受けていた。
米倉の腰の動きにおずおずと合わせようとするが、下半身から押し寄せる快楽の波に、まるで苦痛を与えられているかのように、眉を寄せて悲鳴にも似た喘ぎ声が漏れる。
「せ、先生、こんな格好で腰使ったら、す、すぐに乃里子イッちゃいます」
「お客様によっては、女がイクのを喜ぶ方もいらっしゃるけども、許可なくイクのは奴隷教育を受けたあなたにとってどんなことかわかっているわね」
美樹がきつい口調でたしなめた。
「さっきお前が見てきた麻美は、寒河江
さん、お前のパパの責めにどうしてた」
米倉の言うパパとは乃里子の義理の父親で、寒河江駿一。
組織では米倉の先輩に当たり、乃里子の母沙織の法律上の夫、実態はありとあらゆる責め苦を与えて母親を完全奴隷にし、まだ学生だった娘まで差し出させた絶対君主である。
「こ、腰をグラインドさせて」
「それから」
「パパの首に手を回して、おまんこ気持ちいいとかおちんぽ大好き、っていっぱい言ってました」
「乃里子はどうなんだ」
腰のストロークを速めながら米倉が問う。
「乃里子のおまんこは先生のおちんぽ様でもう、もう今にもイキそうです」
膝をさらに持ち上げて開かせながら、より一層深く突き入れると同時に、横に居た妻の美樹が乃里子の両方の乳首を摘まんで捻りあげる。
「ぎゃー、いくぅ」
すでに快楽と同時に与えられる苦痛に対して反応するよう、十五で義理の父親に処女性を奪われ、マゾとしての階段を追い上げられてきた娘は、絶叫とともに今日最初の絶頂に追い立てられてしまった。
「勝手にイッちゃ駄目だと言ってるのに、全然堪え性のない子ね。ママのようにお仕置きで鞭の痣だらけの体になってみないとわかんないのかしら」
イキやすい事に関しては人のことを言えた義理でもない本来Mの妻に、米倉は内心苦笑する。
「ほら、私からのお仕置きよ」
米倉が余裕しゃくしゃくで肉棒を引き抜くと同時に、美樹は興奮で勃起しているクリトリスに爪を立てて捻りつぶす。
「痛いぃ、お許し…」
「ほら、ちんぽ抜かれたらすぐにもっと腿を広げて見せるんでしょ、使われたばかりのおまんこ。まだまだ全然作法がなってないわね、乃里子」
「駄目だな。沙織を連れて来い」
娘の教育がなっていない、三十八歳にして未だ妖艶な美女の折檻のために最もよく使われる口実だった。
もちろん、今から娘の前で母親を責めるのは米倉と美樹の間では、最初からプログラムされていたことだ。
「先生、お仕置きは乃里子が、乃里子が受けます」
美樹が出て行くと、慌ててベッドから床に降りて正座した娘が縋る様に言う。
義理の父親や過去の米倉夫妻による調教で、同じような経験を何度もしている娘は、こんな時に目の前で行われる責めがどれだけ厳しいものか身をもって知っていた。
「お前は特別なショーのとき以外は、店の特定の客の性欲処理専用奴隷として今しばらくは使う予定だからな。うちの会長も大してSM趣味のないやつまで相手にしなくちゃなんなくなってきて参ってるようだが、それでもVIPはVIPだから仕方あるまい。お前がその役目をきちんとできなければ、ハードマゾ女として売ってるお前のママを、今日だけでなく、いついかなるときも身代わりとしてお仕置きにかけるんだから、ちゃんとよく見ておけ」
大切な商品である白い体に今日のところは傷をつけるわけにはいかないという理由であった。
全裸でたわわに実った胸を自らの手で抱くようなポーズのまま、乃里子の目からみるみるうちに涙が溢れてきた。
コンコンとドアをノックする音。
「入れ」
威圧感のある声で米倉が言うと、やはりまっ裸に赤い首輪だけをつけた沙織が、「失礼します。美樹様に言われて参りました」
凛とした声で言い、ドアを閉めて振り向いた瞬間に、拘束されていない手を頭の後に組んで、奴隷として躾られた極めて無防備なポーズをとった。
「お母さん…」
乃里子が絶句したのは、その晒された胸の惨状を見たからだった。
あきらかに一本鞭によるものとわかる線条痕が、乃里子をさらに上回る巨乳に、真横に、そして斜めに幾本も、まるで血そのもののようなまっ赤な色で残っていた。
ドアを閉める時に後ろを向いた一瞬に見えた尻や背中は、それほど新しい鞭跡など目に付かなかったのだから、ここに来る前に調教師か客の手で乳房ばかりを集中的に責められたのであろう。
「大丈夫よ、乃里子ちゃん。それよりもまた、米倉先生に対して何か粗相をしてしまったの」
諭すような優しい声に、乃里子がわーっと泣きじゃくり床に伏せてしまう。
「その乳はどうしたんだ」
米倉が問うと、「今日、代議士の中尾先生が秘書だとおっしゃる女性の方を連れてこられて、その女性の方に中尾先生の目の前で、三時間ほどおっぱいばかり、一本鞭と蝋燭とでいたぶられて、その後おふたりにご奉仕させていただいて参りました」
「その秘書とやらは、その感じだと鞭を扱いなれている感じだな」
「はい」
「議員先生はお前のそのデカパイにご執心だからな」
沙織は一瞬俯いて、視線を自分の乳に注ぐが、「娘に代わってお仕置きお受けします」
顔をあげ、米倉をまっすぐに見て言った。
「よし、最初は尻鞭二百」
宣告されると、正座させられた乃里子の前に出て、足を開いて膝は伸ばしたまま手を床について尻を高く突き出すという、定められている尻鞭折檻のポーズを取った。
「乃里子、しゃんとして、ママの顔をしっかり見てろ。沙織、お前もだ。一度でも目をそらしたら、おっぱいの鞭の時はその残ってる白い部分がなくなって、一回り大きくなるくらいぶちのめすからそのつもりでいろ」
米倉が手にしたのは、最初から一本鞭だった。
「イーーチ」
ヒュッという空気を切り裂く音がした瞬間、ビシッと音がして一発目が美尻に炸裂し、一瞬にして赤い蚯蚓腫れを浮き上がらせた。
同時に鞭の先端が柔らかいわき腹付近に巻きつき、尋常じゃない苦痛を与える。
「ニィー」
反対から×印をつけるように二発目。
数を数える声が裏返るが、姿勢だけは必死に保っている。
膝をついたらノーカウント、もしくは数の追加という試練が待っていることを充分に体が知っているからだが、並みのM女ではこうはいかない。
「サン、シィィッ、ゴォー、ロクゥ、ヒチー、ハーチ、キュウ、ジューーッ」
そこから十発目まで右から左からと一気に打ち据えた。
尻たぶにクロスするようについた十本の赤い線の一部からは早くも血が滲んできている。
与えられたばかりの痛みに、膝もそして腕もかすかに震えているが、やはり尻は高く米倉の方へ差し出したままで、足を広げているため、無毛の性器から肛門までの全容がさらけ出されていた。
「一本鞭はこっちも疲れる。残り二十のところまではいつもの鞭にしてやろう」
「ありがとうございます。隼人様のあの鞭大好きでございます。座るのも辛くなるくらい沙織のお尻が腫れ上がるまで思い切りぶってくださいませ」
答える声はすでにかすれているが、サディストを喜ばす言葉がすぐに口をついてくるところは、さすがに調教歴の長い真性マゾである。
乃里子はしゃくり上げながらも、いたぶられる母と目線をしっかりと合わせていた。
母親の娘の前での公開折檻とその母が見ている前での再度の乃里子の性交調教を終え、ひとつ上のフロアーにある通称「作戦室」に入ると、米倉とタッグを組むことの多い大沢瑞花が正面の椅子に座って目をつむり熱心にヘッドホンの声に聞き入っていた。
よく見るとその膝元には先ほどまで乃里子の調教の手伝いをしていた妻の美樹が全裸で跪いて、瑞花のまくれあがったスカートからはみ出した白い腿の間で奉仕を行っている。
「おす。美樹ちゃん借りてるわよ」
米倉の存在に気が付くと、美樹の頭を手でさらに自分の性器に押し付けるようにして、にこっと笑う。
「なんだ、急用って。まさか美樹を使うことの許可が欲しいわけでもあるまい」
瑞花は笑って米倉の席のパソコンを指差す。
「隼人好みのが入ってるわよ。これはなんとしても落とそう。早速隔離して私はもう返事入れたわ。私の入れたやつも聞いてね」
SM伝言ダイヤルとは、SだったりMだったり、その度合いも経験も異なる者が、まず自分の希望などをメッセージとして入れ、それを聴いて、自分と相性の合いそうな相手に返事を入れる。最初に自分からメッセージを入れるのはSの男性、つまりM女を捜しているものが一番多い。次にM男性が女王様を捜しているもの。M女はS男性の伝言を聴いて自分の気に入った相手に返事を入れるというところからスタートするようだ。やはり不特定多数に対して最初から自分の性癖を語りかけるのには躊躇いがあるのだろう。しかしそれでもそういう段階を経て、自分から広く自分に合った相手を探そうとするようになったりもする。
こうして日々やりとりされている全てのメッセージは、五人いる「狩人」たちによって、男性側のメッセージも含めて全て聴取掌握されていた。
そうして、マゾ女性がフリーで録音してきたメッセージでこれはというものはシステムから切り離して、実は一般には公開せずに主催者側の数人だけが返事を入れ、怪しまれぬようにしつつ、伝言のやりとりが続けられるということもあったし、一般顧客の男性のメッセージに反応したものの中にもそういった奴隷として組織が手に入れたいと思える女性の返答に対しては、巧妙にすり替わったり、時には待ち合わせの場所に先回りしたりなどということもあった。何しろ、突然返事が来なくなったりや、待ち合わせをすっぽかされたりしても、こちらが非難されることは当然なかったし、時には待ち合わせを妨害するために、男性に断りを入れるといったことも瑞花たちが女性本人や友人を語って返事を入れてしまうということさえあるのだった。
米倉が自分の席に座り、マッキントッシュ・パワーブックのふたを開くと「3369よ」と瑞花が言う。
LANで接続されたサーバーの該当のフォルダーを開き、さらにその中に現れた「access」「non access」から後者を選択しマウスでクリックをする。
ちなみに前者の方は、その下にさらに「male」「female」というフォルダーがあり、その下にそれぞれ「S」と「M」、さらにその下に、発行された会員番号のフォルダーがそれこそ無数に存在する。男性会員がこのシステムに電話をかけてくると、会員番号とパスワードの入力により、自分の会員番号のフォルダー内に記録された利用残高が時間換算でアナウンスされ、さらにフォルダーに女性からの新しいメッセージがあればその件数のアナウンス、なければメインメニューがアナウンスされ、プッシュ回線のトーン音によって、「自分に届いたメッセージを再生する」「女性の新しいメッセージを聞く」「会員番号のわかっている相手にメッセージを送る」「新たにオープン伝言板にメッセージを入れる」などのメニューの選択に移る。
女性会員の場合もほぼ一緒で、フリーダイヤルによるアクセスであるため利用残高の記録などがないこと、当然聞くことができるのは「male」のフォルダー以下に保存された男性会員のオープンメッセージと自分のフォルダー内に録音された自分に対する返答の伝言だけである以外、サーバー内の構成に替わりはない。
ひとつのメッセージを聞く度に、「この伝言に返事を録音する時は7、もう一度聞く時は8、次の伝言を聞く時は9、メニューに戻る時は0を入力して下さい」とアナウンスされ、7を選択して返事を録音すると、その女性のフォルダー内に新たに音声ファイルとして保存される仕組みだ。
瑞花が言う「隔離する」とは、女性会員がオープンボードに入れた最初のメッセージや、S男性に対して返答したものでこれはという伝言が録音されたそのフォルダーを「non access」の方にそっくり移動させてしまうことで、これによって、再度アクセスしてくる女性にとっては何も変化はないしわからないのだが、男性会員からのアクセスでは移動したフォルダーについては最初からなかったも同然となり、その情報の一切が遮断されてしまう。
男性会員、女性会員ともに登録は数千人以上あり、会員は日々増え続けていた。
しかし、その中でよしこれは、という女性の伝言は限られており、そのうちのいくつかが「隔離」されたところでシステム全体に何ら影響を与えることもない。
一日平均数百件、時には千件を超えるメッセージがやりとりされているのだ。
この手のメディアが乱立し
淘汰
もされ、また新たな業者が新規参入してくるということが繰り返されているわけだが、最近では売春の温床になっているという声も高まって批判され、今回の法改正へと繋がっている。
実際、SM専門の最大手である自分たちのシステムに録音されるM女の伝言を聞いていても、それを匂わす言葉が入っているものもよくある。
ただ、米倉たちの目的は組織の奴隷になる女を捜すことであったから、例えお金目的であっても、その覚悟の度合いとかによっては、むしろ好都合の場合もあり、一概にそういう伝言を無視しているというわけでもなかった。
もちろん「ちょっとおこづかいが欲しいので援助でお願いします」レベルのものではお話にならないが、「パチンコで借金が出来てしまったので何でもいたしますからマゾの私を一回十万で買ってください」だとか「百万で一週間好きなようにお使いください」などというのも結構あって、こういう女が案外使い物になったりするわけだ。
実際、五人いる狩人の一人は、常時、金満の産婦人科医として、マゾの女を高く買いますという伝言を先に入れて、それに回答してくる女専門に狩りをしており、それはそれで成果が上がっていた。
米倉が開いた「non access」の下には四桁の番号のついたフォルダーが七つあった。つまりシステム側で隔離管理されている女性会員が、現在七名存在することになる。
ヘッドレストをつけ、「3369」のフォルダーを開き、mes_openというファイルを選択する。ほかにmes_1というファイルがあり、これが瑞花が「返事」として録音したものだろう。
『伝言をお聞きのサディストの男性の皆様、もしくはSMをされてらっしゃるカップルの方々やいらっしゃるかどうかわかりませんがSの女性の方、はじめまして。私は、三十四歳になる強度のマゾ女です。今現在はバツイチということになりますが、実は、今日つい数時間前までいわゆる人妻でした。私は、二十三の時から八年あまり三人の方の共有のマゾ奴隷として厳しく調教されていたのですが、三十一で結婚をしてSMから、マゾである自分の性癖から逃げて、貞淑な奥さんを演じておりました。このままマゾであることも忘れて生涯を過ごしたいとも最初は思ってはみたのですが、残念ながらそれはとてもとても無理なことでした。それほどまでに八年間で沁みつけられたマゾとしての性、苦痛と羞恥にしか反応できない私の体と心は、まともな人間としての妻という立場に耐えきれるものではなく、あることがきっかけで、ひと月ほど前に夫に全てを告白し、自ら強く願って離婚をしてもらいました。普通のセックスに全く反応できない私とは性生活も疎遠になっており、夫は実家からの赤ちゃんの催促にも困り果てておりましたし、比較的簡単に事が進みました。それでも今日実際に離婚届を提出するまで私も必死の思いで自分の願望を押さえ我慢して参りました。そして自由になった今、すぐにでもサディスト様の前にまっ裸になってこの体を投げ出したいのです。私の人格を否定して下さい。本物のサディスト様により絶対服従の奴隷女として一から調教しなおしてください。結婚生活ではただの一度も行いませんでしたが、フェラチオのご奉仕は八年間徹底的に仕込まれております。丸一日しゃぶりつづけろと言われればそういたします。性器だけではなくお尻もご使用下さい。以前はもちろん使っていただいてましたが、ずいぶんと間が空いていますので、本日からまた自分の手で肛門拡張をしてその時に備えたいと存じます。自らそういったことをするということを、主となる方に禁じられれば、もちろんそれも従います。以前は常時肛門拡張のためのプラグを入れられて、排泄の管理までされ、浣腸なしでは排便できない体にされておりました。
お仕置きも存分にしてお楽しみください。ハードな鞭で体中傷だらけにして、奴隷の立場をわからせてください。鞭だけではなく針責め等の経験もございます。
できれば現在、ほかにも女性の奴隷をお持ちの方が希望です。その奴隷の方のさらに下の最下等の奴隷として、私をご使用下さい。ご主人様が女性に出された精液を口移しにされたり女性器に直接口をつけて飲まされたりすること等にもとても喜びを感じます。奴隷の方が粗相をされた際に身代わりでお仕置きを受けるといったことにもご使用下さい。もちろん女性の方へのご奉仕も何時間でもさせていただきます。
最後にプロフィールを申しますと、身長は百六十二センチ、体重四十九キロ、バストは八十六センチ、ウエスト五十六、ヒップ八十七で、髪はセミロングです。妊娠を経験していませんので、体のラインはそれほど衰えていないと思います。調教を受けていた当時、乳首にピアスをされていましたが今は塞がっております。また、恥毛が生え揃って隠れておりますが、恥丘に小さい字でマゾ奴隷という墨を入れられております。こちらは一、二度調教を受けさせていただいて、主従関係が確立した後、御主人様の手によって毛を除去してご確認いただければと存じます。
こんな私ですが、どうか超ハードな調教で私を支配して下さる御主人様からのお返事を心よりお待ち申し上げております。』
『あなたのオープンボードへのメッセージをご主人様に言われて聞かせていただき、お返事を差し上げております。大沢瑞花と申します。現在三十三歳です。私のご主人様はきっとあなたが望まれているような方だと思います。普段はとても優しい方ですが、調教はとても厳しくいわゆる超ハードという部類に入るのだと思います。私のほかに、いえ私の知る限りですがもうひとり奴隷にしている女性がおり、特にそちらへの責めはSMというよりは折檻といった方がよく、その場に立ち会わされたり調教のアシスタントのようなことを命じられたりすることもあるのですが、私自身はつい目をそむけてしまうほどの厳しい責めをお与えになられます。でも、そうは申しましてもそういう場に立ち会わされることが私自身決して嫌というわけではなく、いえむしろ最近はゾクゾクとする悦びさえ感じ、女性に対してはSの気があるのではないかと言われたりもしております。
今、どちらにお住まいなのでしょう。離婚されたばかりということですから、今後の生活のことは、新しいご主人様が決まってから考えられるのでしょうか。もしあなたさえよかったら、ご主人様の奴隷、いえ私たちの奴隷となって私の部屋に住むというか私の部屋で飼うといったことも可能です。まぁ飼うといっても、ご主人様は奴隷を動物扱いすることはあまり好きではなくて、よく言われる牝犬とか牝豚という言い方もされません。あくまでも人間の奴隷として、女として生まれたことを後悔するほどに女扱いはするけれども人格は無視して服従させることがお好きなようです。私自身もご主人様の指示のもと、あなたを私の奴隷としても調教してみたいと思っております。よかったらぜひお返事下さい。最後に御主人様はかなり大きなものをお持ちでいらっしゃいます。私など二十分もフェラチオのご奉仕をしたらあごがはずれてしまいそうになりますし、未だお尻の穴には入りません。覚悟をして調教最初の日からお尻を使えるように拡げておいてくださいね。私はご主人様の立派なものがあなたのお尻にずぶずぶと入れられるのをぜひ見てみたいです。そうそう、以前浣腸なしでは排泄できないようにされていたということですが、今はどうなのでしょう。入れ墨は性器の部分だけなのですね。さらなるみじめな入れ墨の追加やピアス、もっとハードな肉体改造でも受け入れる気持ちはありますか。お返事お待ちしております。』
「なかなかいいじゃないかこの女もそれに瑞花のこの返信も」ヘッドレストを外しながら米倉が言うと、少し得意げに瑞花がうなずいて見せた。
「
唆
るでしょ」
「ああ。ところでこの御主人様役というのは、やはり俺か」
苦笑気味に米倉が言う。だいたい隼人が気に入るだろうと言いつつそういう時には真っ先に自分が気に入って、自分でストーリー立てをして自分のやってみたい状況設定をさっさと提示してしまうのが瑞花のやり方だ。
「うちで一番ご立派なおちんぽお持ちでしょ。私ほんとに何度あごがはずれそうになったか」
美樹に奉仕をさせているためだろう。いともあっさりと淫らな言葉を口にする。
「でもね、あなたはあなたのキャラクター作って口説いていただいたって結構よ。もちろん、アシスタントでもお友達のレズのドミナでもかまわないから、私も登場させてね」
「考えておくよ」笑いながらそう言い、立ち上がって、こんなイキやすい女イカせるのになんぼかかってるんだ美樹、と自分の妻の尻を軽く蹴りあげ、「じゃあこの後なんだか会長に呼ばれてるんで行ってくるわ。俺がメッセージ入れる前にその女からお前に返事が来ないことを祈っとくよ。俺は今晩にでも入れる。その間に三、四件、雑魚を入れとくようにみんなに頼んでおいてくれ」
「了解。でもでもいいでしょ久しぶりにいい獲物。絶対おとして店に出す前にふたりで楽しもうね」
「ああわかった」
ドアを閉めようとする米倉に、「たまには美樹にもその立派なのあげなよ、ああイクぅ」美樹に対してSとして君臨している筈なのに、マゾの女そのものの淫らな声が聞こえた。
エレベーターホールに出て、胸ポケットから白い長方形の薄いカードを出すと、エレベーターを呼ぶためのボタンの横にある小さなセンサーにかざす。新宿の副都心と呼ばれる区域にあるこのホテルの四十七階と四十八階、そしてラウンジでもある最上階の四十九階が彼等の占有フロアになっており、四十六階で乗り換えてこのホールに昇ってくるわけだが、米倉が今使ったカードもしくはクラブにやってくる客にその都度渡される青色もしくは赤色のカードがなければ、この階に来ることもできなければ、エレベーターを呼んで去ることもできない。
エレベーターに乗り込むと、またセンサーにカードをかざす。
最初の頃はまあ面倒なシステムにしたものだと思ったものだが、今ではすっかり慣れてしまった。四十六階に降りると、扉が開いたそこはスイートルームの一室になっている。つまり、エレベーターが部屋の中にあるのだ。
ホテル全体としてもこの四十六階は特別なエグゼクティブフロアーと呼ばれるスイートルームばかりの階になっており、廊下から見ると、この部屋も単なるコーナースイートの一室に見える。
その部屋のドアから廊下に出た米倉は、ふかふかの絨毯の上を歩き、反対側のコーナーにあるスイートルームのチャイムを鳴らした。
すぐに扉が開き、母親がアメリカ人と中国人のハーフで、父親が日本人と言ういわゆるクォーターで、いつ見てもその完璧な美しさに気後れしてしまうような美女リサがにっこりと微笑みを浮かべながら、「会長、お待ちになっています」
と言って、米倉を招き入れた。
乳房の膨らみの高さが際立っている。
あえてぶしつけな視線をその胸に落としてやると、さらに胸をはって突き出すようにして見せる、そういう女だった。
三田村はこの一般客も利用するフロアーの、百五十平米あるプレミアムスイート四六一二号室を会長室としていた。
「お待たせしてすみません」
全然構わん、という表情を見せて向い合せにソファセットに座った。
「さて、早速用件だが、実は今度はピンサロをやろうと思ってだな」
「は、ピンサロというと、街のあちこちにあってまあ暗闇でばばあか若い娘だかわかんないようなのが、尺八で抜くと言うあれですか」
「そうだ。ただしもちろん考えがあってのことだ」
「それはそうでしょうが」
意味なく、なんの戦略もなく新たな事業に手を出す男ではないことはもちろんよくわかっていた。だが超VIP相手のSMクラブと、ピンクサロンだかピンクキャバレーだかでは、同じ風俗でも全く対局に位置しているといえる。
「そこでお前の仕事なんだが、今から三か月間でできるだけあちこちの店を歩いてきてくれ。もちろん目的は女だ。店のシステムがどうとか当然のことだが内装がどうかなどには全く興味はない。大野が言ってきた話なんだが、当然玉石混淆ではあるが、時々とんでもない玉も紛れているというのだ。ピンサロというのは他にもっと楽でしかも稼げる風俗があるのを知らない娘が、それはもう献身的にサービスをしている場合が多々あるようなのだな。顔も体もそして尺八技術も最高の女が探せば結構いるらしい」
「で、そういう子たちを引き抜いてきて、ハイレベルの店でも作るのですか」
三田村は苦笑いをしながら
「それはあくまでも次の段階のための
礎
だ。ただいずれにしてもハイレベルな技術があって、顔体がまぁ一定レベルの女を見つけては本部にデータを入れてくれ。そんなところでお前のお眼鏡に叶うような女がいれば、その玉そのものも使えるかもしれんが、まああくまでも特別な店を作るための素材だと思ってくれればいい。引き抜きは別の兵隊にやらせるからお前は徹底的にリサーチしてくれ。金はなんぼ使っても構わん。と、言ってもピンサロじゃあ一回一万もしないらしいが」
そう言い、スーツの内ポケットから折り畳んだ白い紙を取り出した。
「これが大野が事前調査したあいつのご推奨リストだ。自分の足で調べたものもあれば、インターネットでの噂から調査の価値ありというものもリストしてあるそうだ」
ざっと見ただけで五十件ほどの店名とその店のある駅名、その横にひとりかふたりの源氏名らしき女の名前が書かれていた。
「まあこれだけ回るだけでも大変だろうが、情報の追加は望むかね。それとも自分でやるかね」
「ネット情報だけなら自分で、と言いたいところですが時間がもったいないからお願いするとしますか」
「了解した。いずれにせよ、伝言システムから女を水揚げすることはほぼ不可能になると思われるから、そのための先手だ。よろしく頼む」
「先生に久しぶりに抱いて欲しいわ」
ドアを開けてくれたリサが妖艶にウインクを投げてきた。
長い廊下を先ほどと逆に戻り、四六〇一号室と書かれたプレートの横についているセンサーに例の白いカードをかざす。
ここだけは他のセンサーと違い、会員が会員権かわりとして持っているゴールドかシルバーのカードがあれば開くことができる。もちろん米倉たちの持つ白色の何も書かれていないカードは万能である。
「おう、今携帯呼ぼうかと思っていたところだ。これから審査があるんだ。四十八階の倉田の爺さんが今度法務大臣になるってんで、売るんだとさ。金がいるらしい。どうも二億らしいぜ。もともと千の時の最初の会員だもんな、ぼろ儲けなんてもんじゃないわな」
寒河江駿一は奴隷の調教直後なのか、上半身裸で下はイエローのボクサーパンツだけだ。
元々、百七十枚発行した会員権のうち、寒河江が「四十八階」といったゴールドカードは七十枚、「四十七階」とか「下の階」などと称しているシルバーカードが百枚だったが、その発行当時の金額はゴールドが一千万、シルバーが五百万円である。
金と銀、その違いはひとえにSMプレイの内容だ。
ゴールドは超ハードや時には真性のレイププレイをするための生け贄を差し出している。もちろん、プレイをする時には相応のまた目ん玉が飛び出る金がかかるのだが、金なんか紙切れと思っているような連中だ。そういった要求に答えるための奴隷の供給と調教が米倉や寒河江の仕事というわけだ。
ちなみにシルバーの会員には、もっとバラエティに飛んだ、ちょっとハードなセックスを極上の女とするといった程度から、縛りや少しハードな程度の鞭、そして複数からの奉仕や、Mプレイまで様々な要求に応えるための女を用意しなくてはならない。まぁこちらは、普通のSM倶楽部として広告を出しているレディスコミックや風俗専門の情報誌なんかを見て応募してきた女を面接時にチョイスして、ちょっと仕込めば事は足りる。
ようは教育なのだ。
寒河江の言った審査とは、会員権の売買には当然クラブ側の承認を必要としており、会員間で取引される売買価格以外に、ゴールドシルバーに関わらず、現在は二千万円の名義書換料を要し、かつ、実際にモニターカメラ越しに新会員にはプレイをさせて、その適格性を検討した上で承認する。承認がおりなかった場合も審査料とプレイ料の名目で、ゴールド一千万円シルバー百万円を差し引いてしか返金しない。
ゴールドカードを譲渡する場合は特に審査が厳しく、真のサディストであることと奴隷の限界を見る目をしっかり持って、少なくとも冷静な部分をどこかに残して調教を行えること、これが条件だ。もちろん超ハードと言えないレベルでしかなければそれも失格である。
また、この審査のシーンを複数の人間にモニターされ、そして撮影されることも承諾しなくてはならない。
社会的地位の高い人間であることは最低ラインの条件であるわけだから、それだけで大変な秘密と交換ということにもなる。
ここ数年の間に政財界の間に密かに噂が広がり、譲渡代金もうなぎのぼりとなったものだから、時々、財テクや財産隠し目的で会員権を買い取ろうとする輩が現れるようになったための措置でもあった。何しろ表の世界で取り引きされるゴルフ会員権などと違い、どこにも登録されていないし、見た目は何の変哲もない金色のカードに二億という値段がついてるのだ。
まして自分から申告しない限り税金の心配もない。万一つぶれて、ただの紙切れならぬプラスチック片にならない限り究極の財テクに違いない。
ご丁寧にも、会員権の条項には「万一会員が死亡した場合は、会員が予め指定するものにその譲渡をする権利が自動的に移るが、会員となる権利が移譲されるわけではなく、その譲渡対価を得る権利が移譲されるのみに留まり、その譲受するものが会員としての資格を有するか否かは、通常の売買による譲渡時と何ら違わない」などと謳われ、表現はともかくとして、買ってくれる人さえあれば裏の相続財産としての利用価値を認めてもいた。
そしていつの間にやら、会員には大臣経験者やら外務省や財務省それに公安組織の超エリート官僚といった人間も集まり、破綻などということもそう簡単にはありえない特別な会員権である。そんな噂がこの権利の価値をより高めているようだった。
「で、どんな輩なんですか」
「外交官らしいぜ。どこだったかの大使をやってて日本に戻ってきたばかりらしい。会長いわく、向こうで二十代の女ばかりでハーレムを作って奴隷調教をしていた筋金入りってことだが」
「へー。で、誰を今日はあてがうんですか」
「
麻美
。しっとりした人妻の体を鞭でぼろぼろにしてみたいというご希望でな。かつ巨乳の女だとよ。二十代の小娘のハーレムさんとはカタログ違いじゃないかと思ったが、反動かね。まぁ麻美が最適任だろう」
「あらら。でも麻美はさっき先輩がお嬢に見せながらさんざんやりまくっていたと美樹に聞きましたが」
「あははは。ちょっとよれよれでやつれた感じがまたいいんじゃないか。オマンコの作法の確認と乃里子への手本でやっていただけで、麻美にとっちゃあお食事前においしいシャンパンでも飲んだ程度のもんだろうよ」
「しかし、さすがに審査には沙織は出さないんだなぁ、なんぼ鬼畜の先輩でも」
「あほいえ、お前さんに言われたくないわ。だいたい沙織は中尾代議士と秘書の小娘がさんざん乳に鞭やったうえに、おまえが追い打ちかけたばかりってじゃないか。そんな傷だらけのを出したらさすがに可哀想だろうよ。もちろん沙織じゃなくて大使様がだぞ」
そういいつつも、これまで一度も沙織を未知数の客がプレイする審査に使ったことがないことも事実であった。
スイートルームの寝室だった場所に設けられたいわゆるモニタールームには真ん中に五十インチのプラズマディスプレイ、そのまわりに十数台の十インチの液晶ディスプレイが備え付けられている。
メインディスプレイに映し出された男は、いかにも中東あたりの大使に居そうな、髭づらの精悍な感じのする四十台半ば、いっていても五十にはなっていまいというがっしりとした体格の男で、今まさに審査の誓約書を読み終えてサインをしようとしているところだった。
誓約書とはこのクラブについて、そして審査について他言をしないであるとか、途中でストップがかかる場合もあるので了承せよとか、奴隷に重大な怪我をおわせた場合には損害賠償と就労保証金をいただく、ただしこの条項を恐れてプレイが軽度になりすぎて失格になってもこの条項に責はないことを確認するとか、まぁそういったことが書かれている。
もう一枚、彼が持っている紙にはその日使用する奴隷に対する注意書きがあるのだが、麻美の場合コントロールオプションとしてあるのは浣腸に関することくらいで、腸が弱いためプレイ続行が不可能になることを避けるため、原液浣腸不可、グリセリン五十パーセントで一リットル以内、できれば浣腸責めは避けた方が無難、当日朝洗腸済みのため肛門性交に支障なし、程度のことが書かれている。加えて「鞭・ろうそく・針・その他の器具使用~奴隷の限界まで」と赤字で書かれている筈で、これを読んだだけで初めての客は勃起してしまうことさえある。
モニターの中、部屋に入ってきた麻美はどこかの国のものと思われる軍服を身に付けていた。
「おー、案外似合うじゃないか。やっこさん行ってた国の軍服をSMLサイズ取り揃えて今日持ってきたらしいぜ。気合い入ってるなぁ」
骨細で全体的にかなり華奢な女だが、そのくせGカップある乳房がアーミーカラーの制服を思いきり押し上げており、軍人にはあり得ない長い髪の毛とともにそのアンバランス加減が妙な色気を醸し出しているように見えた。
モニターは二分割され、その麻美を正面から映している画面が半分になって左側に移動し、かわって右半分に麻美の背中越しに、ソファに座った男が映し出された。
「名前は」
「今野麻美です」
「本名か」
「はい。本名を名乗るように指示されておりますので」
「フルネームで名乗ったのでちょっと驚いた。さすがに徹底されてるわけだな、そんな細かいところまで。では手を頭の後ろに組んでもっと胸を突き出せ」
取らされ慣れた姿勢に即座に従い、必要以上と思われるほどに背を反らせて巨乳を強調する。このあたりも寒河江の調教が徹底している。
「サイズは」
「おっぱいですか」
「全部だ」
「身長は百五十四センチ、体重四十一、おっぱいは九十二のGカップ、五十六、八十三です」
「ほう」
「時々、突然ウエストサイズの検査があって、一センチにつき鞭百発のお仕置きがありますので、極力サイズを保つようにしております」
「カルテのようなものに浣腸以外は全て限界まで可とあるが」
「はい。お好きなようにお責めおなぶり下さいませ。御主人様がどうかこの審査に合格されますよう、精いっぱいお尽くし申し上げます」
男は立ち上がり、麻美の背後に回ると、頭の上で組んでいた手首を両手もろとも掴み、手にした麻縄で両手首を束ねて縛り上げて行く。
「吊られるのは」
「大丈夫です、お願いします」
縄を三重に手首にかけると、一歩前に出させて天井から下がった滑車のフックに巻き付け、思いきりのよい動作でチェーンを巻き上げていく。
「うっ」
足が完全に宙に浮いた瞬間に麻美がわずかな苦悶の声をあげた。
手首だけでの吊りはかなりつらいものがある。
責め手にとっても奴隷の体力と気力を著しく消耗する可能性があるため、完全な宙吊りまで持って行くことは勇気と自信が必要なことだ。
鞭責めなど、その後厳しい責めを与える場合は、せいぜいつま先立ちで止めておいた方が後々長い時間楽しめるとも思える。
足が床から二十センチ浮いたところでやっと男はチェーンの巻き上げを止めた。
「こういう吊りは」
「大丈夫です。逆さ吊りよりは長い時間耐えられます」
いい子だ、と言いながら男は麻美の腰のところにベルト替わりに巻かれた紐をほどいて一気に引き抜き、ズボンを落とした。案の定ズボンの下はパンティをつけておらず、華奢な体のわりにむっちりと白い腿が剥き出しになり、恥毛がコントラストを作る「多分、もうぐしょぐしょだろう、あいつの好きな責めパターンだしな」
寒河江の声が聞こえたかのように、男は無造作に指を性器に突き入れ、かきまわして「ううっ」という淫らなうめき声を搾り取った。
「毛、生やさせてるんですか」
米倉の問いに
「ああ、二か月くらい前からな。ちょうど生えそろったところかな。もちろん穴の周りだけ剃らせてるけどな、あいつは意外に濃いんで」
と、苦笑いしながら寒河江が答える。
「そうそう、さっきあいつが言ったウエスト一センチにつき鞭百発ってやつな、あれ一センチ以下の端数切り上げなんだわ。だからあいつのウエストはいつも五十五センチ台。あのおっぱいに細い腰、色気を増す一方の自分の女房に、指一本触らせてもらえなくなった旦那は悶々としてるだろうよ」
寒河江が落としてきた女なので事情はよくわからないが、いずれにせよ離婚はしていないものの肉体はすでにマゾとして寒河江の思うがままというわけだ。
軍服の上から乳房を両手で鷲掴みにされると麻美は地に着かない足をばたばたとさせた。相当、指先に力を入れられているのだろう。下半身がそうだった以上、上もノーブラであろうから、直接乳房を揉み潰すに近い力が加えられているわけだ。
「今までで一番辛かった責めはなんだ」
乳房を潰していた男の指先が急激に
収斂
して一点に集中する。吊られたまま両方一度に乳首をひねりあげられるのは、マゾの麻美にはそれなりに体の奥底に響くものもあろう。
米倉はこの外交官の男がゴールド会員としての資質を十分に持っていることをこの時点で確信していた。
「うっっ」
問われた麻美の答えは呻き声だけだった。
「そぉか答えたくないか」
男はいきなり軍服のその豊満な乳房の中間に手を差し入れると、いきなり引き裂くように左右に開いた。
ただ大きいというだけではなく、見るからにしっかりとその重みをたたえた麻美の美しい双の乳房が剥き出しにされる。
男は軍服の裾を後ろの縄に絡めて、麻美の上半身の前面全てをカメラの前に晒すと、今度は直接その丸出しの乳房に両手をかけた。
「では最初はこの見事な乳に一本鞭百発なんてどうだ。それとも三十ずつも洗濯バサミをつけて一気に落とすなんてのを先にやろうか」
演技かそれとも男のサディストとしての気に圧倒されてか、麻美はいやいやと首を横に振り、その目をぎゅっとつぶって何かに脅えているという表情を作っている。
男が手にしたのは目玉クリップと呼ばれる金属製のクリップだった。
男の動く気配に、目をチラと開けた一瞬に、それをどこにつけられるか悟った麻美は、より固く目をつぶってその時を待っている。
左、右の順で無造作にそれは麻美の乳首を噛んだ。
次に、一本鞭。
まるで容赦なく、胸の膨らみとは対象的に小振りな尻に音をたてて振り抜かれ、先端が腹部に巻き付いた瞬間に引き戻すという一発一発の苦痛が強い打ち方で、宙吊りの女を踊らせる。
「痛いっ、お許しを。なんでもいたしますしなんでも申し上げますから」
麻美が音を上げたのは五十発ちょうど。
普段から鞭責めの時に数を声に出して数えさせられているためか無意識のうちにも頭の中でカウントしているのだろう。
「では、さきほどの質問に答えろ」
「クリトリスに針を二本刺していただきました。私の経験ではそれが一番辛かった責めです。でも私の御主人様はもっと厳しいことをされる方で、それを目の前で見せていただいていますので、そのくらいで辛いって言えなくて…」
その主人にモニター越しに見られているから、ということだろう。
「ほう。どんなことをするんだ、お前のご主人様とやらは」
「うっ。それはお答えできません。ご入会になられたらそういった調教シーンのビデオをお買い求めになられることも可能ですから、それでご確認下さいっ…」
「俺はお前の口から聞きたいんだがな」
「申し上げられ…ません」
「では待望のそのデカパイへの鞭といこうか。さすがにもげたら困るんだろうから…」
男は今度も無造作に、きつく乳首を噛んでいたクリップをはずす。
実はつけられる時も痛いのだが、外される時はもっと痛い。
その上で、今度は洗濯バサミで両乳首をはさむ。
はずされてまたすぐにつけられるのはさらなる苦痛で、事実麻美は空中で思いきりもがいて、うーーーっという湿った悲鳴をあげた。
続いて、男はそのGカップの乳房全体に、洗濯バサミをゆっくりと左右それぞれ十本ずつ深く噛ませていく。
この部屋に用意されている洗濯バサミはそれだけでも十分な苦痛を与えることができるよう、もっともバネが強い部類のものである。
「さあ行くぞ、ほんとは少しなじませてからやるのがいいんだが情けだと思え」
「ううっ。ありがとうごさいます。お願いいたします」
「まず、右」
奴隷牧場1 第1部分 (1/7)
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