もちろん聞かされてもいなかったが、いちいち企画をしている寒河江にしろ美樹本人にしろ米倉に言ってくるというものでもないのは、今に始まった事ではない。
二番目が迷彩色の軍服上下を身につけた麻美。
三番目の娘は入って間もない娘で若手のハンターが連れて来たまだ十七だかの現役大学生。米倉はまだヌードも見ていないのでこれも楽しみだ。スポットライトの中で多分学校の制服そのまま、濃紺のブレザーに襞スカートという清楚な服装、それに五人の中で唯一赤色の布で目隠しをされていた。
四番目が白のセーラー服に紺色のリボンとスカートをつけた乃里子、最後が上半身裸で股間につけさせられている赤いふんどしがライトアップでやたらと目立つ、例の元人妻加奈だった。
全員同じように両手を頭上高く
括
られ、ほとんど爪先立ち状態で吊されていた。
数分間の後、スポットライトは突然に消えてステージは暗転し、またリサの声だけが聞こえてくる。
「それでは最初に入札までの流れをご説明します。これからひとりずつ奴隷たちをみなさまに検分していただくわけですが、女の体は、若いお嬢ちゃんは特にですが、こういった刺激的な環境におりますと変化の激しいものです。ひとりずつ、身長体重はもとより、スリーサイズ、特にバストはトップとアンダーも計ってブラジャーをつけさせた場合にどんなサイズになるのかという計測をして本日の生のプロフィールを、その他の経歴や経験値などとともに皆様にお知らせいたします。その後、ひとりずつ性器検査台にて性器と肛門をお見せします。お見せしますと申しますか、ご希望される方はステージ上で指などで検分していただくことも可能です。もちろんおっぱいの弾力などを調べたりしていただいても結構ですが、時間の都合もございますので、ステージに上がれるのはおひとり二回までとさせていただきます。なお、当クラブを普段ご利用いただく時と同様、奴隷全員の身分証明書もお見せいたしますし、デジタルカメラであれば写真も撮っていただいてかまいません。ただ、その場合必ずお帰りになる前に撮影されたデータのコピーを頂戴いたします。万一撮影された写真が一枚でも流出した場合は、会員資格は即抹消、かつ違約金を頂戴することはご入会時の契約書にも書いてある通りですのでご留意下さい」
奴隷たちは、会員には本名はもとよりあらゆるデータを晒され、フラッシュを焚かれ目をそらす事さえ許されない状況であらゆる恥ずかしくて惨めな記録をも残される。ただしそういった本人情報やその撮影された写真が会員から漏れた時にはリサが今言ったような、違約金程度で済まないことは言うをまたないが、現在までのところこういったショーや普段のプレーの時に会員が撮影した写真が外部に漏れたという事実はない。
デジタルカメラが急速に普及してきたおかげで、簡単に撮影したデータそのものをパソコンのハードディスクにコピーしてデータベース化することができるようになり、万一流出があった時にはその元データを誰が撮影して持ち帰ったのかはすぐにわかる。
またこういったデータベースや会員の個人情報などは、USB指紋認証装置のついたスタンドアローンのワークステーションで管理しており、組織の側からの機密漏洩の危険性もない。
「五名の生の体を充分検査していただいたところで、最後に競りにかけるわけですが、ひとりずつ競っていくわけではなく、後ほどお配りする用紙に奴隷全員の金額を入れて提出していただきます。食指が動かない子にはゼロ円で出していただいて構いませんし、参加される意志のない方は全員にゼロと書いて出していただいて構いません。なお参考までに後ほど過去二回の落札価格などもお知らせいたします。それでは早速はじめさせていただきます」
リサの言葉を合図にステージ全体に灯りがいきわたり、吊された五人の前ど真ん中にリサが性器検査台と呼んだ赤い開脚椅子、右はじの加奈の横には身長と体重を計るための台が置かれ、その前にメジャーを持った赤いチャイナドレスのリサが進み出る。
ステージ上は赤い色をアクセントとして統一しているといえる。そのためか、全裸の美樹よりも赤ふんどしで乳房丸出しの加奈の方が際立って見えた。
「では最初に真ん中の一番若い奴隷からいきましょうか」
がっしりした男ふたりがステージ左手から現れ、真ん中の娘の両脇に立って、頭上高く吊り上げられた手首の縄を手慣れた動作でほどいていく。縄から解放された手を後ろ手にねじ上げると、一度ステージ最前列ぎりぎりまで連れてきて、もうひとりが娘の顎に手をかけ目隠しをした顔をあげさせる。
リサが寄って来て、「しゃんとしなさい」と言いざま、ブレザーの中のブラウスの合わせ目に手を入れ、左右に引き裂いた。
ブラジャーは着けておらず、それほど大きくはないものの双の乳房はこんもりと形よく盛り上がり、二十一歳という年齢にふさわしい瑞々しさをたたえていた。
「すっ裸にして」
男たちに命令すると、リサは先に身長と体重を同時に計ることが出来る計測台の方へと戻って行く。スリットからのぞく細い脚は見事だが、会員たち十名の目はそちらを見る余裕はないかもしれない。
男たちふたりが上半身と下半身に別れて、娘から着衣をはぎ取っていく。
「神田美奈子、二十一歳。都立大学の三年生。現役の女子大生です。処女喪失は二十一歳、相手は学園時代の教師だそうで、最近は、学校の先生が最も危ないので、年頃のお嬢さんをお持ちの方はどうぞお気をつけ下さい。また、美奈子の父親はみなさんもよくご存知の上場会社の専務取締役ですが、残念ながら当方の会員ではありません」
リサがジョークを交えている間に、すっ裸にされた娘は片方の男に膝を抱えられて、赤ちゃんがおしっこをするあのポーズで、左側から順にお披露目をされていく。
男がカニ歩きに一段低いところに座る十人全員に無毛の性器を見せ、羞恥のため全身が紅色に染まった娘はそのポーズで抱きかかえられたままリサの元へ連れて行かれる。
「身長百五十四センチ、体重四十二キロ。ええとバストは」
と、メジャーを娘の胸に巻いていき、「トップが八十三、アンダーがええと六十四センチ、細いわね。ブラはCカップくらいかしら」
「C六十五です」
無理矢理質問のマイクが口元に押し付けられ、か細い声で娘が答える。
「ウエスト五十六センチ、ヒップ八十六センチ。体の割にはお尻はおっきめね。それでは神田美奈子の肉体検分をされたい方は、検査台の前に上がっていらしてください」
サイズのチェックが終わると、用意してあった犬用の赤い首輪をリサにつけられ、そのままリサに鎖をひかれ、へっぴり腰でステージ中央まで歩いて戻され、うながされて自ら台に乗り、左右の脚台に細い足を乗せて太腿と足首を固定される。
首輪の留め金に新たな引き綱をとりつけて、奴隷が顔を俯けることができないようにしながら、リサが会員をさらに促すと四人の男が顔を見合わせながら段上にあがった。
つづいて、美樹、乃里子と同じようにサイズ測定と性器検査が行われ、美樹にいたっては「当クラブの専属調教師の妻にて男にはマゾだがレズっ気があり女性には相手次第でSにもMにもなる」と紹介されたし、乃里子の方は寒河江の話こそ出なかったものの「母親も当クラブの所属で超ハード調教専門の奴隷」であると紹介された。
それぞれが屈辱の検査にかけられ、性器検査台では同じような人数の男たちに囲まれた。
美樹もまだまだ捨てたものではない、と米倉は思ったが、既に人様の管轄下にあるといっていい戸籍上の妻がこういった場所に引き出されている事に対して、特別の感慨があるわけでもなかった。
「それでは四人目の奴隷をご紹介します。舞台向かって左の女、迷彩服の下の見事なGカップは、皆様の目を釘付けにすることと存じます。では…」
リサが男たちを促す。
ここで米倉達だけが知っていたハプニングが待っていた。
片方の男が、天井から手首を吊っていた縄をフックから解いて、迷彩服を脱がすために手首からもその縄をはずそうと、つま先立ちから開放されて一瞬前屈みになった麻美の前に立った途端、いきなり麻美の右足が股間に飛んできたのだ。
夕べ、今ステージで五人目の生贄として最後に残っている加奈に対するこの数ヶ月間毎晩行われてきた調教に、麻美を助手として呼んだ際、今夜のショーに加奈とともに呼ばれていることを聞き、ではわざと言う事を聞かずチャンスがあったら逃げ出して、場を盛り上げろと言い渡しておいたのだ。麻美の現在の管理者である、寒河江には話しておくからできるだけ本気で逃げろと。
もちろん寒河江には伝えたが、彼も喜んで、せっかくのハプニングだからリサにも言わずにおいて状況を楽しもうということになっていた。
手首に巻き付いた赤色の縄はそのままに、麻美が舞台の左手へ走る。
リサは状況が把握できなくて声も出ないようだ。麻美がこんな行動に出る事はかつてなかったし、むしろ麻美のマゾ性のひとつとしてこうしたオークションで公開売買されるといった行為にとても感応する女だとよく知ってもいるからだ。
もうひとりの男が慌てて追いかけた。
股間を蹴り上げられうずくまっていた男もなんとか立ち上がる。
ステージを回り込んで横手から麻美が米倉の居る方に向かって走ってきた。
迷彩服の下で巨乳が揺れるのをスポットライトが追いかけている。
「米倉さん」
麻美の走る方向に座っていると知っているリサが慌てて呼びかけてくる。
逃げろとは言ったが俺の元に逃げて来いと言ったわけではないのに、と苦笑いしながら米倉が立ち上がる。
息を切らした麻美のすぐ後ろに男が追いついてきていた。
米倉の前で失速し、息を切らして立ち止まった麻美に、待っていたのは米倉の強烈なビンタだった。
「うっ…、先生」
マゾの目で米倉を見た麻美にうなずいてやる。
そうしてもう一度右手を左の頬に炸裂させて、そのまま迷彩服の胸元の隙間に両手を突っ込み力一杯左右に思い切り引っ張る。
ボタンがはじけ飛んで、いつ見ても美しさと重みをたたえた麻美の双の乳房がひと揺れして剥き出しになった。乳房そのものは美乳だが、両乳ともに連日の鞭責めの痕が無惨に残っており、それがまた嗜虐心を煽る。
後ろから追いついてきた男が手首の縄をとり、目礼してステージへと引きずって行こうとする。
「先生、もうぐしょ濡れあたし。どうしよ…」
麻美はそう言い残した。
ステージにはいつの間にか寒河江が上がっていた。
連れ戻された麻美は今一度そこで、本来の自分の調教師である寒河江からも強烈な往復ビンタを貰った。
何も知らされていなかったリサが怒りの表情で、左手で麻美の髪の毛を引っぱり、顔を上げさせておいて、右手でその見事な乳房のわりには小振りな乳首を思い切りひねり上げる。三十秒近く「ギャー、痛いですぅ」という麻美の悲鳴を絞った後、ズボンを腰のところで留めている蝶結びをほどいた。
すとんと迷彩色のズボンが床に落ち、下半身はたちまちレモンイエローのパンティ一枚だけとなる。そうして麻美は男に手首の縄も解かれ上半身も裸にされ、今度は寒河江がポケットから取りだした手錠で後ろ手に拘束される。
マイクを再び持ったリサが、「突然のハプニング失礼いたしました。今野麻美、二十八歳、れっきとした人妻ですが、当クラブでも屈指のハード調教可能なマゾ女です。特徴はこのおっぱい、後で正確なサイズをお知らせしますが、この憎らしいほど大きい天然のGカップのおっぱいを苛められることがこの女は何よりも好きで、連日のように鞭責めをされた痕がこのように皆様にもご覧いただけるかと思います。今夜はこのじゃじゃ馬を落札して、一本鞭で思い切り泣かせて、傷だらけにしたこのでかぱいに唐辛子入りのローションを塗りたくってパイズリさせるというのはいかがでしょう」
などと半分怒りが収まらないままなのか、手厳しいことを言って、パンティに手をかけて引き下ろす。
麻美も今度は素直に自ら足を抜いて協力した。
「こちらにおりますのが、当クラブ内でこの奴隷の調教を担当している寒河江駿一でございます。これから皆様に奴隷のこの大きくて恥ずかしいおっぱいと性器を間近でお見せしながら、逃げ出した罰の宣告をしたいとのことでございます」
先ほど股間を蹴り上げられた男が、後ろから麻美の膝を抱えて、ステージの一番前に進み出る。
これまでの三人同様、赤ん坊におしっこをさせるあのポーズで性器が晒されると、本人の先ほどの言葉を証明するように、強烈なスポットライトの中で、滴りがぽとりと床に溢れた。
「ご紹介に預かりました寒河江でございます。皆様には、競売中の奴隷が逃走するなどという大変お見苦しいところをお見せしてしまい、大変申し訳ありません。しかし、この女はこのように本来皆様に晒される事も大好きな女で、見ての通りの濡らしようでございますし、今皆様のお手元に順に回しております、奴隷がさきほどまで身につけていたパンティの濡らし具合からも、お仕置きが欲しくて逃げて見せたと判断しても一向に構わないと考えます。したがって、通常のお仕置き程度では不足と考えますので、厳罰として、奴隷今野麻美には、来月行われる年一回のロシアンルーレットショーへの出演を命じるものとし、本日ご参加の皆様には、当日の模様のビデオを後日お送りすることをお約束いたします」
えっ、と思いもかけなかった宣告に麻美の顔に動揺が走る。
罰と言ってもせいぜいこのステージ上での乳房への鞭打ちか、乳首への針責め、重くとも麻美が苦手とする浣腸責めがそれに加わる程度で、元々米倉の命令で演じた逃走劇で、このような宣告が下されるとは思ってもいなかったであろう。
「私の方から、ただいま寒河江が申しましたロシアンルーレットショーについてご説明申し上げます。今年のショーの詳しいディティールはまだ決まっておりませんが、昨年七月に行われたこのショーでは、選ばれた三人の奴隷がそれぞれ、黒人、アラブ人、ロシア人、中国人、そして日本人の五人の男性と公開で生セックスをさせられ、全員に中だしをしていただいて、もし妊娠したらその妊娠させることに成功した男性に奴隷として払い下げるというものでした。昨年はその三人のうちふたりが見事に妊娠して、検査の結果ひとりはアラブ人にひとりはロシア人に引き渡され、ふたりともすでに日本にはおりません」
リサの説明に、さすがに十人の新会員からどよめきがおこった。
寒河江の目配せでリサはマイクを寒河江の手に渡す。
「なお、麻美への罰は厳罰ではありますが皆様に直接お楽しみいただける話ではありませんので、この後、性器検査の時間に拘束椅子上でこのデカパイへの鞭責めでもお楽しみいただきましょう。おひとり十発ずつバラ鞭ゴム鞭一本鞭とお好きな鞭で打ち据えて乳責め好きの奴隷を喜ばせるなり、泣き喚かせるなり、皆様のお手並みを拝見させて下さい。また、司会のリサからはお話をしていないと思いますが、さきほど皆様にご検分いただいた乃里子という娘は、私の娘、正確に言うと私の妻の連れ子です。奴隷今野麻美の調教師である私の不手際のお詫びとして、この後のオークションにて娘を落札いただいた方には、娘のほかに私の妻、寒河江沙織も提供し、二十四時間という短い時間ではございますが、実の母と娘を奴隷としてお好きなようにお楽しみいただくことにいたします」
「みなさま、寒河江の妻沙織は乃里子を産んでいるとは言え、まだ三十八歳。女の私から見てもうらやましいほどの美人ですし、出産を経験した割には体型は維持しているし、おっぱいも大きくてきれいです。そのくせ一本鞭数百発という調教というよりも拷問にも耐えるばかりか、鞭だけでイッてしまうような変態のマゾ女です。特に娘と一緒の調教には燃え狂いますので、どうぞ張り切って落札してお楽しみください」
再びリサの説明があり、その後麻美もまた計測にかけられ、特に乳房の計測には途中でリサが「もっと突き出しなさい」などと顔に一発、乳に数発の平手打ちを行うなど、より時間をかけて、アンダー六十五トップ九十四のGカップという脅威のサイズが報告された。その上で、その大きな乳房も縄で絞り上げられ、上半身を性器検査台に縛り付けられた上で、集まった新会員十名全員から計百発という鞭を浴び、うち後半の五名は全員一本鞭を使った事から、見事に血の色と紫色の新たな条痕に染まった。
そして、麻美が、鞭が当たるたびに不自由な上半身を踊らせ乳房を揺らしながら「うっ」とか「あーーん」といったマゾ女らしい苦痛を楽しむかのような悲鳴をあげたことから、新会員たちの興をそそり、「いい反応だ」とか「ぜひ落札したい、というより早くゴールド会員に昇格したいものだ」などとサディストたちを喜ばせた。
「それではいよいよ大トリ、植草加奈、三十四歳元人妻、真性マゾ。奴隷歴八年、当クラブの調教師米倉隼人の奴隷となって約半年でございます。実はこの奴隷は、これからゴールド会員専用の奴隷とする予定ではありますが、本日が会員様へお披露目するはじめての日。新会員の皆様方が、この奴隷加奈を見る最初のお客様でございます。また、本日がお披露目の日なわけですが、今夜オークションで落とされた方の二十四時間の調教が終わった後、本人の希望により、海外にて豊胸手術を行い、それからクラブの奴隷として正式デビューさせる予定でございます。したがいまして、すでに先ほどからああして皆様の目におっぱいを晒しておりますのを見ていただいてもわかる通り、大変美しいお乳をしておりますが、それもこれが見納めでございます。」
リサは右端に吊られた加奈の方へ歩いていきながら、それにしても、と、自分の左の乳房をチャイナドレスの上から揉むところを客席に見せつけ、「私もこのとおりEカップでサイズ的には彼女とほぼ一緒ですが、これで充分と思っておりますし、皆様もそう思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか」
リサが会員たちに同意を求めた上で、加奈にマイクを向ける。
「あなたの希望はワンサイズアップのFカップだったかしら」
「はい」
「でも、ご主人様、調教師様が決めたサイズは」
「GカップかHカップでバストサイズ百センチ以上と言いつけられております」
「うわ、百センチ、贅沢ねー。今でもそこそこ大きいし、こんなにきれいなおっぱいなのに」
言ってリサが片乳を鷲掴みにする。
結婚前の三人のサディストからの調教でもピアスと刺青は受け入れたのに、豊胸には耐えられなくて逃げ出し、一度は普通の女になろうとしたにもかかわらず、結局は戻ってしまってさらに過酷な奴隷の運命を受け入れた女。
その後数年間はそれがトラウマのようになっており、どうしても受け入れて乗り越えなければならないのが、「穴三つだけではなく、おっぱいも性器として使えるように」という以前受けていた命令の実現であったようで、調教を始めて二ヶ月過ぎ、本人の口から米倉に「お願いします」と申し出てきた。
以前、逃げ出した理由がそれであった以上、そして夏美という実際に豊胸した娘のパイズリ奉仕を何度も目の前で見せられている以上は、受け入れるのか否かを早いうちに決めなさいと、米倉も事あるごとに言ってはいた。
「それでは、これから性器をお見せします。今回はお席までお連れして、おひとりずつに間近で見ていただきます。どうしてそうするかはご覧いただければおわかりになります。もちろん後で検査台でじっくりご覧いただいても結構です」
男のひとりが、前の四人同様の排尿ポーズに抱えあげた上で、リサが赤色のふんどしをはずしていく。
「いやぁ、大勢の人に見られるの恥ずかしい。やめて、やめて取らないで」
恥ずかしければ恥ずかしいと言葉に出して言いなさい、ただし…
「いやぁ、見ないで見ないで見せないで、おまんこ見ないでぇ、やめてー」
加奈が叫ぶ。
調教を始めてみてわかったことだが、加奈は羞恥心を訴えるのと、淫らな言葉を叫ぶ、それがとても自然に出来て似合う女だった。この羞恥心の強さが加奈のマゾ性そのもので、その羞恥心を乗り越えようとして苦痛を求め、苦痛がやがて快楽と自らの安らぎに変わっていくことを覚えたのではないか。毎回服を脱がす度に、羞恥の言葉を吐き、その色香に股間を固く勃起させられてしまう米倉は、自らのマゾ性を見いだした二十代前半頃の加奈を見てみたかったものだと、つくづく思うのだった。
ステージより一段低くなっている会員たちの座る席へ抱えられたまま連れて行かれた加奈は、スポットライトの中で顔を背けてはリサに髪の毛をひっぱられて会員の方を向かされ、顔と性器を交互に見られては「おまんこ恥ずかしい」と叫び、「ほう、本物の刺青ですかこれは」と聞かれて、か細く「はい」と答えていた。
加奈の股間、無毛の性器の土手には、以前の男たちに入れられていた『マゾ奴隷』という小さな文字の下に、勃起した男性器の先端、亀頭から少し下までの部分がかなりなまなましく描かれていた。
それは米倉のものを実物大に模したものであった。
最初の調教から数ヶ月、加奈はすっかり米倉に心酔し、完全な奴隷となることを誓い、その証として数週間前にこの新たな刺青を加え、奴隷契約書にサインをしていた。
その中の一文、第三条【性器としての存在とその義務】というところには、『奴隷植草加奈は、ご主人様の所有物の証として、ご主人様のおちんぽ様を加奈の淫らなおまんこに印していただきます。奴隷はご主人様及び男性女性を問わずご主人様の指定されるあらゆる方の性欲処理を義務とし、口、おまんこ、肛門の三つの穴は、すべて性器としてお使いいただきます。また、この奴隷契約の後は、速やかに豊胸手術に望むものとし、奴隷はおっぱいも性器でありおちんぽ様に満足いただくために存在するということを理解し、その実現のためにパイズリの技術の習得にも最大限の努力をするものといたします』
と書かれており、その一環として、会員制超高級SMクラブのVIP会員専用かつハードプレイ専門の奴隷として店に出すという宣告を受けていた。もちろんエスタブリッシュメントクラブのことである。最近になってようやく加奈自身も、ここのクラブの奴隷とされるために米倉と瑞花に釣り上げられたのだということを薄々理解しているようだが、すでにそこから逃げ出すには本人の気持ちが深みに嵌りすぎていた。
その契約を交わした日、加奈は米倉の苦痛と快楽の双方を与える責めに、何度も潮をふいては失神するということを繰り返し、その強い興奮と満足が性的快楽として体全体に満ち渡る喜びを自らの肉体で味わった。
そして今、初対面のサディストたちにその淫らすぎる細工を施された性器を、見知らぬ男に抱えられて見せて回るというそれだけのことに陶酔し、「見ないで、おまんこ見ないでー」
と、自分の発する淫らな叫びに、マゾの心が満たされたか、ついに十人目の男性の前に来た時、「ごめんなさい、ごめんなさい、もう駄目。おまんこイキます、おまんこイクー」と叫んで潮吹きショーまで見せるはめになってしまったのだった。
「昨日はなかなか盛況だったそうじゃないか」
米倉の座るソファの向かい側に座りながら、三田村がにやりと笑った。
エスタブリッシュメントホテル四十六階にある会長室は、南側全面がガラス張りになっており、午後の日差しが強く差し込んでいた。もちろん空調設備は完璧であり、久しぶりに三十五度を越したという外の暑さは、みじんも感じられない。
「そうですね、ひとり豪傑の親父が居たのには参りましたよ。まあ乃里子は母親の沙織とセットだし、沙織を公開しなかっただけに値が逆に吊り上がるとは予想できましたが、もうひとりの新人の娘まで持って行くんですからねぇ。この二組一晩に二千万ですよ。いやぁ逆に品がないと私は思いましたけど」
「あははは、まぁそう言いなさんな。これまでマックスでも一晩三百万だったんだから寒河江はしてやったりだったろう」
「私から見たら、乃里子はともかく美奈子なんていうガキよりもはるかに加奈や麻美の方が一千万の価値あると思いますけどね」
「そのふたりとて七百に五百だろ。それどころかお前の女房美樹も七百だったそうじゃないか。昨日に金のある客を集中させてあったのかね」
「リサが入札の直前にゴールド会員になれたらこの子たちをいつでも指名できるみたいなこと言って煽りましたからね。金だけじゃなれんのに、資格審査の第一段階で落とされたらかなわんみたいなムードになってたのは事実ですね」
「金なんか紙切れだみたいな客も必要ということだよ。まぁせいぜいこの夏は調教師諸君にもたっぷりとボーナスはずむとするよ」
「寒河江さんに聞いたところでは、次の次の最終回が一番金持ちばかりらしいです。次回はどっちかというと国のお偉いさんとかばかりで下手したら今回の反動で誰も落札されないかもなんて冗談混じりに言ってましたし。ちなみに、その最後の回だけは一括入札ではなくひとりずつ値を釣り上げていくオークション方式でやるそうです。出す奴隷にもよるでしょうけど、まぁ買われるという奴隷の意識もより煽れるし、一括入札よりもずっと面白いと私は思いますけど」
「同時に五人に値をつけさせるのが、器量がわかろうというもんさ。入ったばかりの会員さんは、表向きのプロフィールしかわからんのだからな」
「まぁそれは確かにそうですが」
ところで、と三田村は改まり
「お前の新しい女は昨日だけにして、あとはフィリピンに出すつもりかね」
「ええまあ、本人にはお披露目で一回競りにかけたらすぐおっぱいの手術だと言い渡してはありますが」
「沙織以上にハードな責めもOKだと聞いているが」
「そうですね。あの長時間の刺青も耐えるどころかぐしょ濡れにしてましたし、クリトリスへの針責めも刺した瞬間にイキましたからね。なんといっても異常に恥ずかしがりのくせに見られるのでも感じて昨日もおまんこ見せて回っただけで潮吹いて、まぁ客はスーツが汚れたのなんか気にせず喜んでましたけど。そういう意味で羞恥責めもいけるのに超ハードもいけるという貴重な女ですよ。例の伝言システム最大の収穫だったと私も瑞花も自負しておりますが」
「そのようだな。縛り上げられて動けなくさえされれば苦痛でもイクようだと瑞花からも聞いとるよ。そこでな、相談なんだが胸の手術の前に例の去年見たドイツのビデオのあの責めをやらんか。なんとなく本物の乳の時にやった方がいい気がするだろ。海外ものでは見た事あるが、さすがに日本ではまだないし取りあえず手術前に撮っておけよ」
「はあ」
昨年の秋頃、これまでに見た事もない調教というより折檻という責め方の欧州製のビデオを、三田村が現地で入手してきて、寒河江、リサ、瑞花とともにこの部屋で見たのだが、さすがにリサと瑞花は顔をそむけて「ぎゃ」といううめき声とも悲鳴ともつかぬ声をあげたものだ。
「で、責め手は誰にやらすんですか」
「お前がやればよいだろう、お前の女なんだから」
さすがの米倉も映像で見るくらいならば興奮もしたが、自分がやれと言われると二の足を踏む。
「まさか、本人に意思確認しないと、などとは言わんだろうな」
「まぁそれはそうですが…」
「俺ももちろん見てみたいが、ゴールド会員の中にあの責めをぜひ目の前で見たいという客が居てな、まぁやりたいと言わないだけましと俺は思うのだが、生で見て極上のマゾ女がそれも日本人の美女が、生であげる悲鳴を聞きたいんだとさ」
少しだけ間を置いて、米倉は答えた。
「なるほど、承知しました。この際だからおっぱいの手術代を本人のおっぱいで稼がせるとしますか」
その客は、少なくとも手術代の数倍の金を払うのだろうということは、容易に想像がつく。
加奈には前日にビデオを見せ、直後に刑の執行の宣告をした。
ビデオを見せられている時からある程度予測はしていたのだろう。
「わかりました、お願いします。でも、とても怖いです」と答えた。
「やるのはおっぱいの方だけだ。それともおまんこの方もされてみたいか」
米倉の意地悪な質問に激しく首を横に振った。
そのドイツのマゾ奴隷は乳房への刑の前に、木製の椅子に開脚で座らされ、なんとラビアを直接椅子に釘で打ち付けられていた。もの凄い絶叫も意に介される事はなく太い釘が、左、右とトントンと打ち付けられた。
「お願いですから、磔
とかで動けないようにしてやってくださいませ。できることなら目隠しもしていただいた方がいいかもしれません」
部屋には、地方の鉄道会社のオーナーでクラブのゴールド会員の中でもかなりハード嗜好で知られている遠山という男が招かれ、すでにガウンの前をはだけ、全裸の夏美にフェラチオ奉仕をさせていた。指名する場合も必ず巨乳の娘だけを指名する男で、今日の夏美も本人の指名によるものだった。もちろん、夏美の乳房が豊胸手術によるものだということは知らせていないし、気づかれてもいない。
会長の三田村が少し遅れて入ってきて、その後ろから米倉の妻美樹。
すでにビデオカメラは二台セッティングされ、ふたりの若い調教師が臨時のカメラマンを務める事になっていた。
「それでは私米倉の専属奴隷植草加奈の、先週奴隷市場で買われた際、性器晒しで勝手にイッて潮吹きをした件と、買われた後私の許可なく女性器そのものまで使わせた罪への公開処刑をお目にかけます」
米倉の足下に、ひれ伏している加奈はすでに全裸で黒い目隠しを巻かれたのみである。
「立ちなさい」
言われて顔をあげ、おずおずと立ち上がる。
「それでは今日の処刑の執行人をご紹介します」
米倉の言葉に、一度は三田村の横に座った美樹が立ち上がる。
米倉は加奈の目隠しをはずした。
「ひっ」
その瞬間に加奈は声を発する。
「お願いします、ご主人様がご主人様が」
美樹は加奈の横に立つと髪の毛をつかみ思い切り引っ張った。
「米倉美樹です。今日は夫米倉隼人の一番のお気に入りの奴隷の処刑執行人を仰せつかりました。よろしくお願いいたします」
「いやーーーっ」
またしても加奈が悲鳴をあげる。
その横で米倉がズボンを下ろしていた。半勃起状態のペニスをつかみ出すと、「しゃぶれ」と一言加奈に命じる。
「あっ」と言う声とともに、髪の毛を掴んだ美樹に無理矢理ひざまずかされ、突きつけられたものに口を寄せる。
一度口に入れられると、加奈はビデオカメラの前ですぐに夢中になった。
「この子は、縛られて身動きできなくされて痛めつけられるのが大好きな変態のマゾ女です。でも今日は特別な刑の執行なので、縄や鎖の替わりに、奴隷が死ぬほど好きな主人のおちんぽを縄代わりにしておっぱいへの刑を行います」
美樹の宣告に加奈が一瞬動きを止めるが、その瞬間に今度は米倉が腰を突きこむようにして、喉奥へとペニスをねじ入れる。
公開でのフェラチオショーを十五分ほど行った後、椅子が持ち出され、米倉が腰をかける。
「ほら、うれしいでしょ。みなさんの前で大好きなご主人様のおちんぽ入れていただけるなんて」
再び美樹によって立ち上がらされ、半回転させられた上で、座った米倉に背を向けさせられ、腰を沈めるよう命じられる。
「いや、縛って。縛ってください。痛くてもいいですから縛って縛って」
「そんなに縛ってほしいの、困った子ね」
美樹は二メートルほどの縄を手にして、ずぶりと米倉のペニスを最奥まで受け入れた加奈に、「手、後ろにまわしなさい」
と、命じて米倉の顔の前で高手小手に縛りあげ、縄尻を夫に渡す。
「さあ、お望みの通り縛ってあげたんだから、腿をもっと開いて入ってるところよく見ていただきなさい」
「嫌ぁ。手だけじゃなくて、動けなくして、もっときつく縛っていただかないと耐えられないです」
「なに贅沢言ってるの。奴隷の分際で私の大切な夫のおちんぽ入れてもらってるというのに。ほらもっとちゃんと腰動かして、おちんぽ気持ちよくするのよ」
「あーーん」
命じられて、腰を少しだけ浮かしてすぐに沈めるという動作をした瞬間に淫らな声が漏れる。
「さあ罰を受ける自分のおっぱいよく見てるのよ。目離したりつぶったりしたら、おまんこはちんぽでつなぐんじゃなく椅子に釘でびらびら打ち付けだからね。ほら、見てご覧。ご主人様の膝の上で過去最高の拷問なんてとっても幸せでしょう」
そう言って、照明にキラリと光る"それ"を加奈の目の前にかざして見せると、美樹は生贄の口元に唇を寄せて濃厚なキスを与えた。
「暗誦してるんでしょ。奴隷契約書の第一条を腰動かしておちんぽ味わいながら言ってご覧」
「はい」
動きやすいように米倉が足を開いてやると、米倉のペニスを支点にして足の間で加奈はゆっくりと腰を上下させる。
「第一条、奴隷植草加奈はご主人様に苦痛を与えられることを奴隷として最大の喜びとします。したがって、調教中はいついかなる時でもおっぱいやお尻に鞭責め針責めなどをお受けいたしますが、奴隷がこの契約書の以下の条項に背いたとご主人様が判断なさった場合は、性器への直接の鞭、クリトリスや肛門への針責めなど、どのような厳罰も謹んでお受けいたします」
下半身からわきあがる快楽とこれから与えられる苦痛への恐らくはマゾとしての暗い悦びに声を上ずらせながら加奈が記憶しているその一文を読み上げた。
それは針というにはあまりに長くそして太かった。
例えていうならバーベキューに使う金串というところか。
米倉が縄で
括
られた手首を掴んでさらに胸を張らせる。
遠山という会員は、二台のカメラの視界に入らないように近づいてきてしゃがんで見ていた。横にしゃがんだ夏美に勃起したペニスを手でこすらせながら右手はその夏美の巨乳を鷲掴みにしている。
「さあ、いくわよ」
言われて、腰の動きを止めた加奈が潔く胸を僅かに美樹の方へと突き出す。
「はい…。うぎゃーーーっ」
左の乳房の乳首より少し上の高さに左側からそれが突き立てられ、美樹が渾身の力を籠めると、右側から先端が顔をのぞかせた。
貫通したのだ。
この責めをまともに受けられるのは、加奈以外では沙織くらいか。
それ以外の女だと、その瞬間の膣痙攣を心配しないといけないだろうと、この男根を挿入した状態での刑の執行を美樹から提案された時に米倉は思った。
加奈ならばその心配はないと思ってはいたものの、絶対という自信もなかった。
開いた米倉の膝の上でさらに外側に拡げられた加奈の太腿が、痛みに耐えて内側に向けて力が加わる。性器の内部はきゅーっとペニスを包み、締まりが加わった。
「あーーーっ」
美樹が手を離すと、ため息ともつかぬ声を加奈があげた。
「どう、もっと腰動かしてごらん。おっぱいの罰大好きでしょ」
「はいっ」
二本目が右の乳房のほぼ同じような位置に突き込まれる。
「あーーーっ痛い、でも気持ちいいですぅ」
錯乱したように腰の動きを早める。
「美樹様ぁ。おっぱい、私のおっぱい、かわいそうな私のおっぱい。乳首にも乳首にも針してくださいぃ。ああぁいくぅ…」
米倉は加奈の中にドクドクと射精した。
「責め甲斐のあるいい乳してるじゃないか」
三田村がそうつぶやいたが、米倉にもそしてもちろん加奈の耳にも届いていない。
二〇〇二年九月
深夜十二時まであと数分という東京羽田空港国際線ターミナル。
前年の二〇〇一年二月から国際チャーター便が解禁になり、チャーター運航であれば、そして深夜であれば、わざわざ遠い成田空港へ行かなくてもよくなった。
そうはいっても、その枠を利用している航空会社もしくは旅行会社はまだまだ少ないようであったが、東京都内に住んでいるものにとってその利便性は、成田に比べて計り知れない。
そんなわけだから国際線ターミナルと名はついていても、それはとても小さな建物で、一階のフロアーのほぼ全体を米倉の居る場所から見通すことができた。
チャーターした飛行機の出発予定時刻は午前一時。
今夜羽田を飛び立つチャーター機は、その一機のみのようで、エスタブリッシュメントクラブの会員か、運営側の関係者、それに数人の空港関係者だけしか居ないフロアーは、どんなに狭いとはいえ閑散として見えた。
香港チェクラップコック国際空港まで約四時間。
「一番でかい飛行機を借りてこい」
と、三田村には言われたが、航空会社の方でジャンボと呼ばれる最大旅客数をほこる飛行機のチャーターは断られ、ようやくトリプルセブンという、それでも旅客数二百人を超える、なんと今回の渡航者数の五倍以上もの容量のあるジェット機を借りていた。
「二百数十人乗りの飛行機と言っても、同じ機体の国内線バージョンは三百八十人も乗れるでかいやつですよ。国際線仕様で上位クラスのデッキで半分を占めているからそんな席数ですけど、これで手を打ちましょうよ」
正直言って燃費が全然違うんでその分勉強しますから、という航空会社の運航担当の重役との話し合いでようやく借りることが出来た飛行機は、運航乗務員を含めて五千万円、片道の価格である。
一方、会員の参加費は現地での三泊の滞在費も含めて、ファーストクラス利用者が二千万円、ビジネスクラス利用者が一千万円で、スペースでは半分だが席数では全体の七割を占める百五十九席のエコノミークラスは何人かのスタッフと連れて行くことになったピンサロ嬢三人のみが使用する。
本来ならば空港へ行ってもVIP用待合室やらファーストクラス専用のラウンジなどでしか時間を過ごしたことのないような参加者にとって、アクセスが便利とはいえ設備が整わない羽田の国際線ターミナルはどのように映っているのだろう。それでも静かに席に座ったり顔見知りの会員と言葉を交わす男たちに混じって、二組の一見華やかに見える輪があった。
片方はリサを中心に麻美、瑞花、夏美、それに米倉に一本釣りされて調教を受けた上で、こちらの所属になった元ピンサロ嬢由香といったクラブの女たちで、もう一方は「サロン天使牧場」のコンパニオン三名、うち一人は六月に米倉が店の客のような顔をして店内で面接した例の優菜という娘で、残る二人はこの夏に入ったばかりの二十二歳と二十一歳の姉妹、姉は樹理、妹は理子という。特に妹の理子は背も高く胸が大きくて腰もくびれた抜群のプロポーションをしていたし、姉の樹理の方は小柄で童顔だが経験値が高いらしく顔に似合わずテクニック抜群という噂がたって、指名客もずいぶんと増えているようだった。
この三人に共通しているのは、家族が居ないか連絡が途絶しているということと、一緒に住んでる男もしくは友人なども居らず、東京に出てきてまだ日も浅い、ということだ。
「天使牧場」が、女を調達するために作った店である以上、その背後の調査部隊も完璧だった。
三人とも、そのテクニックと容姿が買われ、海外で行うVIP客の慰安旅行のピンクコンパニオンという名目でここに来ていた。仕事とはいえウキウキとした様子が見て取れる。
午前零時を回ってパスポートコントロールが始まった。
チャーター便にたった四十数人という出国客というだけではなく、VIP客である旨が伝達されているのだろう。係官はろくに顔も見ずに『出国』と書かれたスタンプをパスポートに次々に押していき、あっという間に全員が「日本」を出てやはり手狭な搭乗待合室へ入る。たったこれだけの客であることは予めわかっていたろうに、小さな免税品店がこの時間でも営業していて、コンパニオンの娘たちはウキウキとして、また瑞花たちも見るとはなしに店内をぶらついている。
男たちはそんな女たちに目をやりながらも所在なさげに、腕時計とただ一機しか載っていない搭乗案内版のデジタル表示を見比べたりしていた。
麻美が何かをカゴに入れてレジに並んだ。
豊かな胸が白いサマーセーターを押し上げていて、何人かの男たちの視線を釘付けにしているのがわかった。
ふた月ほど前に麻美はついに夫と離婚をした。
例のショーの時に寒河江が麻美に宣告した刑は本気であり、そのための布石としてそれまで実態はともかくとして籍は入れたままだった夫と離婚をするように命じられたようだ。金額はわからないが、それなりの金もこちら側が支払って印鑑を押させたらしい。そしてその直後、夏美と由香にも奴隷としての適当な罪が押しつけられ、同じように輪姦"ロシアンルーレット"ショーへの出演が命じられた。
その上で三週間ほど前から、三人は毎晩ひとつの部屋に呼び集められて、目隠しをされた上で一錠の薬を与えられることとなった。
その最初の夜、三人を前にした寒河江は、「今度のショーは来月半ばの連休に香港かマカオでやることになった。三人ともショーが終わっても妊娠の結果が判明するまではそのまま滞在してもらう。無事生理が来たら帰りのチケットを貰えるという寸法だ。ついては今夜から毎晩三人に薬を一錠ずつ飲んでもらう。薬は避妊薬つまりピルか、ただのビタミン剤かもしくは排卵誘発剤だ。誰がどの種類のものを飲まされているかは教えることは出来ない。三人ともピルの可能性もあるし、三人ともある時点で排卵誘発剤ということもある」
と宣言した。
実際は三人ともずっと
避妊薬
だったのだが、それを知っているのは三田村と寒河江、そして米倉だけだった。
アナウンスがあり、飛行機への搭乗が始まった。
三田村と秘書役のリサを含めて八人のファーストクラスの客が最初に搭乗を終え、十七人のビジネスクラスの客が乗り、次いでエコノミーに乗るコンパニオン三名と若いスタッフ六人、最後に米倉たちと組織の女たちがビジネスクラスでは最後部の、機内中央のデッキに乗り込んだ。
米倉の隣に瑞花。
「美樹ちゃん来たかったんじゃないの」
「さぁな。スタッフとしてならいいけど生贄としてじゃああいつの性根じゃ気が狂うかもしれんし。それにお前が残るんならともかく、誰かそれなりに仕切れるやつを残さにゃしゃあないんだから仕方なかろう」
「そか、私がさっさと行きたいって会長に言ったそのお鉢なのか…」
そんな話をしている間に出発準備が整ったようだ。
「乗務員はドアモードを切り替えてください。本日は当機をご利用いただきありがとうございます。機長は大原客室を担当いたします私は緑川でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。当機はこれからここ羽田を午前零時五十五分頃出発いたしまして、九州の上空から台湾上空を通過し、香港国際空港への到着は午前五時四十分頃を予定しております。なお、香港と日本との時差は一時間ございますので、実際の飛行時間は三時間四十五分となっております」
透き通った声が告げた。
「なお、本日は特別なチャーター便ということで、私ども客室乗務員も特別チームを組ませていただいております。上空に参りましてシートベルト着用のサインが消えましたら、お夜食をお持ちいたしますが、今回特別チームではその時点から香港国際空港着陸直前まで下着姿にてサービスをするよう申しつかっております。なお、制服の着用はいたしませんが、客室乗務員に直接手を触れられたり、カメラ等を使用しての撮影などはご遠慮願います。あくまでも特別サービスの一環でございますので、どうぞよろしくお願いいたします」
「へーー、やるじゃん」
瑞花がびっくりして米倉を見て言ったが、米倉もそんなことまでは聞いていなかった。
「いやいや、知らんよ。俺の仕事は飛行機借りるところまでで、その後の計画は寒河江さんがやったんじゃないのかなぁ」
「ホンモノなの」
「なんぼチャーター機だって、スッチー偽物じゃ法律にふれるだろ。会長にどんなに力があろうとそりゃあ無理だと思うぞ」
その後非常用設備の説明があって、「それではごゆっくりとおくつろぎください」
というスピーカーの声に合わせて、米倉たちのデッキ最前部の通路に立ったふたりのキャビンアテンダントが頭を下げた。
もちろん、正規の航空会社の制服を着用している。
「スッチーのほかに何か余興はあるの」
機体が静かにプッシュバックをはじめ、風景が機体の前方へと流れていくのを見ていると通路側に座った瑞花がまた尋ねてきた。
「気が向けば後ろの三人の娘の仕事は楽しんでいいことにはなってるようだがな。エコノミーのデッキは、上にあがったら客室乗務員の立ち入りも制限するとは言ってたから」
「さすがに女の子がお席までお邪魔してというわけにはいかないのね。ファーストクラスでご奉仕させた方が気分もいいでしょうに」
「エコノミーまでわざわざそのために行くガツガツしたのは居ないんじゃないか、というのが読みだろ。でも三人は仕事で来てるつもりなんだし、実際三人とも味わってみる価値はあるみたいだぞ、技術的には」
上空で水平飛行に移り、シートベルト着用サインが消えると、斜め前の席で、寒河江が立ち上がった。この飛行機はビジネスクラスのデッキが三つに分かれており、その中では一番後ろのこのデッキには米倉と寒河江のほかは、リサ以外の組織の女たちが居るだけだ。
「それでは三人に今日も薬を飲んでもらう。今日は目隠しはシートポケットにアイマスクが入っているので各自それをしてもらう」
スラリとした肢体のキャビンアテンダントが、本当に下着姿になって飲み物を乗せたギャレーを押して入ってきた。薄いピンク色のブラが見事な隆起を包んでいた。
「最初に真ん中の列の女三人に水をやってください」
寒河江が頼んだ。
「で、どうなの。誰が本当の生贄なの。まさか由香ちゃんっ。隼人だってまだそんな気ないでしょ、加奈を別格にしてずいぶん気に入ってるみたいだし」
「さあなぁ。麻美はなんといってもうちのトップファイブの女で、毛唐に下げ渡すにはあまりにもったいないし、夏美だってあの胸の手術には金もかけてるわけだし、最近のマゾっぷりもたいしたもんだぞ」
「だったらアレは全員ピルってわけだ」
米倉は曖昧な笑みでその質問に答える。
「お飲み物何にいたしますか」
先程のピンクの下着の娘が重たげにワゴンを押してくる。
「ねえねえ、前代未聞でしょそんな格好させられるの。業務命令なの。あ、シャンパンお願い、辛口よね」
聞くのが当然の権利というように瑞花が質問をする。
少しは動じるかと思ったが、にっこりと笑って濃緑の瓶を手にとってコルク代わりの金属のふたをはずすと、「そう思われるのはごもっともと思いますけど、一度はこんなことしてみたいって思ってた子は思いのほかたくさんいたみたいですよ。もちろん超過勤務手当がとっても魅力的な金額だったこともあるとは思いますけど」
「ふーーん、じゃあみんな納得ずくなんだ」
「ええ。ランジェリーに元々みんなお金かけてたりしますから、そのくせ見せる相手がいなかったりだし」
私はもちろんいるけど、という顔をして見せながら米倉にも何を飲むかと尋ねてくる。
「あ、そうそうこれをお配りするようにって言われてたんでした」
彼女はそう言ってワゴンの一番下の引き出しから、一見ワインリストのようなものを数冊取り出して、米倉と瑞花に一部ずつ、前に戻って寒河江にも渡した。
渡されたのは、言うなれば現地での日程表だった。
【一日目】
メインステージ「スーパーピンサロ嬢早抜きゲーム」
二日目のメインショー、輪姦ロシアンルーレットショーへの出場者は全部で五名。離日時点で決定している出場者は、今野麻美、水沢夏美、北村由香の三名です。第一日目は残り二名を決めるため、我がエスタブリッシュメントクラブグループが経営する『天使牧場』の所属娘三人による予選を行います。
【二日目】
メインステージ「第二回輪姦ロシアンルーレットショー」
その後会場として使用した夜総会にて香港の妖しい夜をお楽しみ下さいください。
【三日目】


