SMは、サディズムとマゾヒズムに基づく行為全般、およびそのプレイを含む文化様式の総称である。加虐被虐性愛とも言う。sadism と masochism を合わせたサドマゾキズムの略語だ。加虐側をサディスト、あるいは単にS。被虐側をマゾヒスト、あるいは単にMと呼ぶ。「SM」が定着する前の日本語では、アブチック、悦虐、責、耽奇などと書かれていた。日本の性風俗でも私的プレイでも、この二文字が現場語になった。
サディズムの名はマルキ・ド・サドに由来する。嗜虐の性行為にのめり込み、獄中で体験とファンタジーを長編に書き続けた。『悪徳の栄え』や『ソドム百二十日』は、SMを表舞台へ引き出すきっかけになった。マゾヒズムの名はザッヘル・マゾッホから来る。精神的・肉体的な苦痛に快楽を感じ、情婦とのあいだに奴隷契約まで交わした。その体験をもとに『毛皮を着たヴィーナス』などを発表している。日本では縄で縛り付ける緊縛があり、緊縛師と呼ばれる専門家がいる。ソフトSMでは、手を軽く縛る、目隠しをする程度のプレイも含まれる。ハードSMと呼ばれる側には、鞭打ち、ロウソク責め、性器ピアスを付けるなどの分野がある。どちらも合意と抑制がある点で、DVの一方的な暴力とは切って考える。
SMは、主人役のトップと奴隷役のボトムが、互いの積極的な合意のもとで行う性行為である。心身に異常が出たときに中断を伝える合言葉――セーフワード――を、プレイ前に決めておくことが推奨される。欧米では Yellow と Red の二語が多い。前者は弱めてほしいが続行はよい。後者は直ちに中断してほしい。「セーフワード」という単語自体を叫ぶことも効くとされる。猿轡などで言語が封じられているときは、首を何度も横に振る、タップアウトする。拘束でジェスチャーが難しいときは、ボトムの手にハンカチを握らせ、落ちたら異常と判断する方法もある。トップがボトムのセーフワードを認知したら直ちにすべてを止める。
同意がある限り罪に問われないのが原則である。ただし相手を殺してしまった場合は、嘱託殺人罪に問われる可能性がある。2015年、オーストリアで、売春の男性客に依頼された「SM行為」の結果、男性が死亡した事件があり、依頼に応じた女性に執行猶予付き禁錮2年の有罪判決が下った。合意のSMは、セーフワードと抑制のある暴力の範囲でしか成立しない。


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