『ボンデージフェアリーズ』(英題 Bondage Fairies)は、昆童虫による日本の成人向け漫画である。人間の女性に似た姿の森の妖精たちが、森を守るために性行為を重ねる。初期は『インセクト・ハンター』の題で『レモンキッズ』1990年7月号から1991年4月号まで連載され、掲載誌の休刊に伴い『ヤングキッス』へ移った。1994年にアメリカで英語版が出て、同国で初めて商業出版された成人向け漫画になった。虫と妖精とボンデージを同じコマに載せた作品が、翻訳成人漫画の商業的な先鞭になった。
プフィルとパミラ、昆虫から獣姦まで
森の妖精プフィルとパミラが、巡回警護と狩猟をしながら様々な性行為を実行する。通常の性交、自慰、レズビアン・セックス、フェティシズム、ボンデージに加え、哺乳類や鳥、虫を相手にした獣姦まで描かれる。彼女たちが主役でない回もある。各話の末尾では、プフィルによるミニ講座が開かれ、昆虫の生態から人間の解剖学まで扱う。エロ漫画の体裁で、虫の知識と人体の知識を同時に渡す。森を守るための性行為、という設定が、アブノーマルな交わりを物語の職務に変えている。
パロディも多い。単行本版『ボンデージフェアリーズ』第1巻の「残忍姉妹」は、チェーホフの『三人姉妹』を捩った題で、プフィルを捕らえる妖精姉妹の名も『三人姉妹』にちなむ。文学の題を借りて、妖精を拘束する話にしている。2005年、久保書店の『本当はエロいおとぎ話』に続編が収録された。2006年には第1巻と『フェアリーフェティッシュ』収録の短篇7本を再編集した『ボンデージフェアリーズ【残忍姉妹】』が出た。連載の移動、新装、再編集。昆童虫の妖精は、題名を変えながら同じ森を回り続けた。
登場人物
プフィル(Pfil)は中心人物の一人で、純真無垢な森の妖精。英語版では男性名フィル(Phil)に近い “p’fill” や “fill” と綴られることが多く、別の妖精から “piffle” と呼ばれて訂正する場面がある。名前の綴り自体が、翻訳の冗談になっている。相棒パミラと二人で森を回り、狩猟もする。
パミラ(Pamila)はプフィルの先輩。大人びて開放的で、純真な相棒と対になる。森を守るための性行為を、彼女の側はよりあっけらかんと引き受ける。巡回する二人組という骨格は、連載が誌面を移しても残った。
日本語版と、Eros Comixの英語版
日本語の単行本は、『インセクト・ハンター』(1990年2月20日)、『ボンデージフェアリーズ』(1993年4月5日)、『フェアリーフェティッシュ』(1993年10月20日、『インセクト・ハンター』の新装)、『ボンデージフェアリーズ2』(1994年11月25日)、『ボンデージフェアリーズ3』(1995年9月25日)、新装版1〜3(1998年11月25日、12月25日、1999年1月25日)、『フェアリー・クリニック』(2004年11月10日)、『ボンデージフェアリーズ【残忍姉妹】』(2006年3月10日)と続く。
英語版はファンタグラフィックスのレーベル Eros Comix から出た。翻訳はトーレン・スミスとスタジオ・プロテウス。The Original Bondage Fairies(1–11、1998–1999)、The New Bondage Fairies(1–16、1996–1998)、The New Bondage Fairies: Fairie Fetish(1–8、1998)、Bondage Fairies Extreme(1–15、1999–2003)。英語以外にも、スウェーデン語(Epix Förlag)、ドイツ語(BD erotix)、フランス語(Bdérogène)、イタリア語(E.F. edizioni)へ訳された。日本の成人漫画が、複数言語のエロ漫画レーベルの棚に並んだ早い例である。
「初めて当たった翻訳成人漫画」
ジェイソン・トンプソンは『Manga: The Complete Guide』で、本作を「初めて商業的な成功をおさめた、日本の成人向け漫画作品」(the first hit translated adult manga)と評した。森の妖精が虫と交わる話が、1994年の英語圏で成人漫画の商業出版の先鞭になった。昆童虫の妖精たちは、ボンデージと昆虫とパロディを同じコマに載せたまま、複数言語の棚へ渡った。ミニ講座の昆虫知識と、チェーホフを捩った姉妹と、Eros Comix の号数。成人漫画の輸出史を語るとき、この妖精は避けて通れない。











