ディシプリン(discipline)は、SMプレイにおける厳しい支配と服従のなかで、躾、懲戒、調教、懲罰といった行為と概念を指すBDSM用語である。支配の時間の長さそのものではなく、性的行為ではない行為の側を指す。スパンキングで言えば、ラブスパはディシプリンに入らない。懲罰である以上、相手の快楽や喜びを目的にせず、赦してほしいという懇願をある程度無視した状態で行う行為、関係性、あるいは恋人同士の甘さを取り除いた関係のことだ。
プレイが終わっても戻らない主従
いわゆるご主人様と奴隷の関係だが、ディシプリンと言う場合は、日常生活のすべてがその関係で保たれることが多い。SMプレイ中だけ主従があり、終了後は普通の関係に戻る、という形ではない。支配的なパートナーが服従的なパートナーを、完全に支配下に置くという概念である。屋敷の主人とメイド、教師と生徒のように、主従が変化しない関係になぞらえやすく、ロールプレイのモチーフにも好まれる。日常生活そのものがSMのような状況になる。多くは、支配・服従関係の暗黙の了解を破ったとき——敬語を使わなかった、命令に従わなかった——の懲戒が、本格的なSMプレイの引き金になる。絶対服従を身をもって示させ、支配関係を強化する。
呼称、衣服、家事、体罰
具体例としては、支配者を尊称で呼ばせ、被支配者を屈辱的な名で呼ぶ。衣服や食事などあらゆる自由を認めず、命令には絶対服従を強要する。何らかの技術や知識を教え、未熟な成果には体罰を含む懲戒を与える。共同生活では家事全般を被支配者に任せ、支配者が監督し評価する。性的虐待や鞭打ちを課し、それに感謝させる。かつての家長制度で権威的に振る舞った男女差や、絶対王政期の支配者の傲慢さが、模倣されやすい。ヨーロッパ、とくにイギリスでは、18〜19世紀の家庭教師が厳しい体罰で子女を教育してきた歴史があり、教育的ディシプリンへのフェティシズムも存在する。これは成人が当時の教育権威のイメージを借りる嗜好であって、児童を性的対象にする話ではない。
ラブスパが快楽のための打撃なら、ディシプリンは懇願を聞き流す懲罰である。プレイの前後で対等に戻るか、日常のすべてを主従のままにするか。後者を指してディシプリンと言うことが多い。尊称と屈辱名、食事と衣服の許可、家事の監督、未熟への体罰、鞭への感謝。屋敷と教室と王座のイメージが、成人の合意した24時間支配に借りられる。












