龍妃(りゅうき)は日本の声楽家であり、女性の現代芸術家でもある。東京藝術大学声楽科を出たあと、同大学院修士課程の声楽研究科オペラ専攻を修了している。クラシックの訓練を積んだ人が、SMクラブの女王様として立ち、オペラとSMを同じ舞台に載せる。藝大とオペラ専攻の声を、女王様のショーにそのまま持ち込むのが彼女の現在地だ。声楽の履歴を捨てたのではなく、支配と服従の演出に声を持ち込んでいる。
コロナ禍で女王様を始めた理由
2020年、コロナ禍のなかで「SMを極めずに人生を終えてなるものか」という思いが強くなり、SMクラブへ入店して女王様としての活動を始めた。趣味の延長ではなく、極める対象としてSMを選んだ、という言い方になる。入店以後、彼女が繰り返し掲げているのが「芸術としてのSM」である。オペラの声と身体、支配と服従の演出を一つのショーに組み、ほかに同じ型がないパフォーマンスを重ねてきた。女王様の現場と、声楽家の舞台を分けず、SMそのものを作品として見せる。
artiSMとニューヨークの表紙
都内ではイベント「artiSM」を自ら主催している。名前の通り、芸術とSMを重ねた場で、オペラとSMを融合させたショーの拠点になっている。2024年には同名のオペラアルバム『artiSM』をリリースした。2025年には、ニューヨーク発のメディア『Kink Queens Magazine』の表紙を、日本人として初めて飾った。クイーンとしての顔が、海外の紙面に出た。藝大と大学院のオペラ専攻を経て女王様になり、都内でartiSMを主催し、同名アルバムを出し、海外メディアの表紙に載る。声楽の履歴、女王様としての現場、主催イベントと音源、海外のキンク・メディアの表紙——短い経歴のなかに、SMを芸能と美術の側から押し出す線がはっきり出ている。










