開口具(かいこうぐ)とは、口を開いたまま固定する道具である。医療器具として用いられると同時に、BDSMにおいて口枷としても用いられる。口を閉じられない状態そのものが羞恥になり、舌や口腔を好きに触れる無防備さも責めになる。猿轡が声を塞ぐのに対し、開口具は声も涎も止められない顔を作る。歯科の診療台で口を開け続ける不快と、責め部屋で同じ形を強制される羞恥は、道具の系統が同じでも目的が逆である。
医療器具としての開口具
医療ではアングルワイダー、マウスワイダーと呼ばれる。日常で目にする機会は少ない。簡易な合成樹脂製のアングルワイダーは薬局等でも取り扱っている。アングルワイダーは口を左右に広げるものであり、ちょうど子どもが口の端を両手で広げた顔(いわゆる「イーッ」の状態)のようになる。口内炎の治療や虫歯の確認、歯磨きの補助など、唇を広げる用途である。
マウスワイダーは口そのものを広げるために金属製のものが多く、構造もしっかりしている。かつては手術などに用いられたが、現在では樹脂製の使い捨てタイプに移行している。医療用具として使う場合は、口唇の擦過傷や、口を開け続けられることへの精神的な不安に配慮する。とくに女性は、大きく口を開けること自体に羞恥心を覚えることが多い。
責め具としての開口具
アングルワイダーは顔を変形させる。鼻フックと同じく、顔面変形を好むサディストが好んで用いる。責め具としてのアングルワイダーは、両端に幅広の金属フックの付いた革ベルトであることが多い。これを付けられると顔が醜く歪み、涎が止まらなくなる。医療用が「口の中を見やすくする」ための道具であるのに対し、責め用は「見るに堪えない顔にする」ことが目的になる。
マウスワイダーは金属製で、ネジもしくはラッチで固定できるものが多く、大きく口を広げたまま固定できるものがほとんどである。開けっ放しだけでも充分な責めとなるが、無防備な状態を活かして口の中を責めるのも効果的である。塩辛いもの、辛いものを舐めさせる、汚いものを舐めさせる、無理やり水や酒を飲ませる、舌を拘束する、といった重ね方がある。鼻フックを併用すればかなりの顔面変形ができ、容姿に自信のある女性には心理的な責めが大きい。
構造
アングルワイダーは、両端がフックになった、長さ調節可能な革ベルトであることが多い。医療用具としては衛生面から樹脂製の使い捨てタイプになっており、大きなU字がバネの役目を果たし、両端のU字が口の端にはまる形が一般的である。各断面もU字型である。上下左右に広げることのできるマウスエキスパンダーも存在している。U字を上下左右に配し、それぞれがU字のバネとなる部分で接続される。口の端と前歯に噛ませれば、口は大きく開いたままとなる。
マウスワイダーは、金属製のブリッジ(金属棒)を二つ配して両端を金具で止めてあるものと、左右ばらばらなものがある。左右ばらばらなものは製図用具のディバイダのような形で、奥歯に噛ませて広げるタイプである。どちらも歯に噛ませ、金属棒をネジまたはラッチで固定して用いる。人間の噛む力は予想以上に強いため、そのままでも外れる心配は少ない。責め具としてのマウスワイダーでは、後頭部にまわす革ベルトを付加したオリジナル商品もある。
時間と皮膚
唇を長時間開けたままにするため、口の端が炎症を起こすことがある。長時間圧迫された唇にも擦過傷ができる可能性があるため、着用させる時間と状態には注意が必要である。消炎剤を含んだ軟膏などを併用するとよい。猿轡、テープギャグ、バルーンギャグ、ビットギャグ、ボールギャグ、リングギャグとは役割が違う。口を塞いで声を止めるのではなく、口を開けさせて声も涎も止められない状態を作る道具である。リングギャグは開口に近いが、開口具ほど顎を左右・上下に固定しない。
医療用の樹脂ワイダーをそのまま寝室に持ち込むと、バネの強さや角が唇に合わないことがある。責め用はフックとベルトで顔の外形を変えることを狙っているので、医療用の「口を見やすくする」設計とは目的が違う。薬局のアングルワイダーは唇を左右に開くだけで、顎を固定しない。金属のマウスワイダーは奥歯を支点に上下を開き、噛んで外すことが難しい。どちらを使うにせよ、歯と顎関節への過負荷、嘔吐、鼻呼吸ができない状態の重ねは、開口そのものより先に事故になる。使用目的は口を開けっ放しにすることであり、それ以上の責めを足すなら、外す手順と合図を先に決めておく。












