『緊縛 縄の陶酔』(きんばく なわのとうすい)は、1985年7月公開のSM主題の成人映画である。本編62分、カラーワイド。映像製作は日本シネマ、配給は新東宝映画。2007年4月には『密室凌辱18人』の題でDVD化された。不特定の女性を狙う暴行魔・清原の連続犯行を語り、驚愕の性癖を持つ人妻・麻美との特別な不倫行為をクライマックスに据える。DVD題が想起させるほど、劇中に18人もの女性キャラクターは出てこない。タイトルの「緊縛」と「縄の陶酔」は、清原の黒いロープと、麻美が自ら求める責めの両方に掛かっている。
物語
関東圏で若い女性を次々に襲った清原純一は、複数の被害届で逮捕される。年長者と若者の刑事コンビの尋問に対し、届出は2件しかないのに、すでに18人を手にかけたと自分から語る。記憶のなかの被害者を、思い出深げに楽しそうに話す男である。その流れで狙った池田麻美だけが、特別な相手になった。
平凡そうな人妻の麻美は、白昼、自宅に上がり込んだ清原に襲われ、白いパンティ一枚にされる。居間で掃除機のホースに手首足首を左右へ割り開くように括られ、羽箒でくすぐられたあと、バイブと清原自身の肉体で犯される。全裸にされて後ろ手縛り、両乳首に洗濯ばさみ、絨毯の上のビニールで蝋燭責め。一連の行為は、何年も前に別の男から強姦された経験を持つ麻美の体に潜んでいた性癖に火をつけた。
昼下がりの公園で世間話を装い、麻美は秘密の過去を告白し、次はどういじめてくれるのかと甘えた声で尋ねる。清原は貞淑そうな人妻の反応に驚きつつ応じる。次のデートでは、池田家の居間の革椅子に丸裸の麻美を縛り、正面を鞭打つ。ぶらさがり健康器の上部の鉄パイプに両足首を縄で結び、逆さ吊りにしてくすぐり責めを加える。家人の留守に「もっと、もっと、いじめて……」と哀願する人妻を、同じ格好のままバイブと特別な体位で抱く。清原は「自分のような男に出会えて幸福だったな」と嘯く。
異常な情事の日々から一年が経過した現在、刑事たちは清原再逮捕のため、麻美が被害届を出す意志があるかどうか確認しようと池田家の呼び鈴を押す。奥からは、清原という男など知らない、帰ってくれ、という、なぜか声を震わせた女性からの短い返事だけが返る。届出を出さない人妻の声が、清原の「女も喜悦した」という嘯きを、肯定にも否定にも使わせないまま終わる。
清原と麻美
清原純一は本作の主人公格で、女性をレイプするのが生きがいの20〜30代の男である。黒いロープで自由を強引に奪う手段を使い、20人近くを襲った。被害届は2人分だけである。彼は、被害者の大半が犯されて喜悦したのだとうそぶき、女性の肉体に普遍的に潜むと信じる性への渇望を痛感する。同時に、男が踏み込めない部分へのむなしさとやりきれなさに近いものを抱えている。18人と自ら言い、届出は2件、画面に出る女はそれより少ない、という数字のズレが、この男の語りの信頼度そのものでもある。
池田麻美は、清原が最後に交わった美人の若妻である。関係は約一年前に始まった。見かけは貞淑な主婦だが、過去の経験で体の奥に巣くっていた性癖を、清原との出会いで開花させる。二回目以降は、家族の留守の昼間、麻美自身が彼を自宅へ招く秘密のデートになる。大きな黒い革椅子に丸裸で緊縛され、鞭を受け、革の鞭で首を絞めるように責められ、股座を足でなぶられて悶え泣き、喜悦する。階段脇の廊下では、1980年代に流行した健康器具――ぶらさがり健康器の鉄パイプ――で長く逆さ吊りにされ、清原の思うままになぶられながらさらなる責めを求める。情事のあいだは完全なマゾ女として肉体を燃え立たせるが、関係が切れてしばらく経った一年目の現在は、そんな過去の事実はまったく無かったように平凡な主婦を装う。その態度は清原の女性不信の念をさらに深め、事件に関わった刑事たちにも複雑な思いを抱かせる。初回の掃除機ホースと羽箒、二回目の革椅子と逆さ吊り、一年後の呼び鈴――同じ家の居間と廊下が、暴行と合意の不倫と否認の場になる。
キャストとスタッフ
清原純一は滝川昌良、池田麻美は早乙女宏美。女性Aが姫川京子、女性Bが相原ユミ、女性Cが高橋樹里。刑事Aは久須美欽一、刑事Bは岡竜太郎。夫は山倉峻、若者は水戸康之。企画は伊能竜、監督は新田栄、脚本は中良江、撮影は国立二郎、音楽はレインボーサウンド、照明はライトハウス、編集は酒井正次。滝川昌良の清原と早乙女宏美の麻美が二本の柱で、姫川京子・相原ユミ・高橋樹里は届出の側に残る「女性A・B・C」である。新東宝系の62分SM映画として、縄、蝋燭、逆さ吊り、人妻のマゾ開花と、一年後の否認までを一本に収めている。DVD題『密室凌辱18人』は清原が自ら語る人数に引っかけた売り方で、実際の画面に18人は出てこない。掃除機のホース、羽箒、洗濯ばさみ、ぶらさがり健康器といった1980年代の生活道具が、緊縛と責めの小道具になっている点も、この作品の時期を示している。











