奴隷市場(どれいしじょう)は、奴隷の売買そのものと、値踏みから落札までの過程を楽しむSMプレイの一分野である。欧米のBDSMシーンではよく知られ、日本でもSMバーの余興として開かれることがある。無理やり引き出され、衆人の前で品定めされる側と、人を売買する側が、仮想の奴隷市を成立させる。
出品される側と買い手
男が女の奴隷を売買するのが一般的だが、逆もある。その場合、買い手の女性を女王様、売られる男性をM男と呼ぶことが多い。市場に出されるときの演出は、だいたい次のような型を取る。全裸にする(ただし性器の露出は禁止される現場が多い)、後ろ手に縛る、縄で緊縛する、手錠・手枷・脚枷をつける、首輪をつける、拘束具で固定する、貞操帯をつける、檻に入れる、番号をつける。借金返済のために意に反して競りにかけられる、といったシチュエーションを乗せることもある。エイジプレイと混ぜて赤ちゃん奴隷を売買する形、ペットプレイと混ぜて奴隷犬として売る形もある。剃毛してパイパンにする、シールのペーパータトゥーで卑猥な絵や文字を入れるなど、「奴隷の印」を身体に残す場合もある。
買い手はしぐさや態度を楽しむ。開けっぴろげな奴隷より、羞恥が強い奴隷を好むことが多いとされる。ペニス責めを嗜好する女性のように、男性器の形状を基準に落札先を選ぶ者もいる。通常より巨根、あるいは反対にマイクロペニスが珍重される。落札された奴隷は、一定時間、あるいは数日間、買い主に従う。SMバーなどのイベントでは、店内で落札者に玩具にされることが多い。家畜同然に扱われる屈辱感そのものが、売られる側の快楽である。
欧米の映像・イベントと法の境界
歴史的に奴隷売買を行ってきた欧米では、奴隷市を題材にしたビデオが作られ、実際にイベントが開かれることもある。ネット上にも同様のサイトが存在した時期がある。フェムドム寄りの市では、女王様がM男を品定めし、巨根かマイクロペニスか、羞恥の強さか、家畜としての従順さかを見て札を入れる。日本のSMバーでは余興として短時間の競りが組まれ、落札後はその場で玩具にされるのが普通だ。映画『96時間』のように奴隷売買をサスペンスの題材にした作品もあるが、プレイとしての奴隷市場は、恐怖ではなく屈辱の快感を前提にする。
ただし実際に金銭を授受すると人身売買と見なされ、性行為に及べば売春や強姦として当局に規制される危険がある。かといって自己規制が過ぎると、単なるスワッピングとの差が消える。札を入れる演技と、身体を渡す合意と、金が動く現実——三つを混同した瞬間に、プレイは犯罪側へ滑る。仮想の売買と、現実の金と肉体の取引。その線を越えないことが、奴隷市場がSMとして成立する条件である。番号を貼られ、檻に入れられ、家畜として呼ばれる屈辱を、双方が遊びとして共有できているかどうかが、境界の目印になる。













