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折檻部屋の風夏 · 第1部

折檻部屋の風夏 第1部 (1/3)
次の話

本作品はすべてフィクションであり、実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません。また、特定の個人、団体、宗教、人種、性別などを誹謗中傷する意図はありません。

あんぷらぐど SM雑誌に「仲ゆうじ」名でSM小説を執筆して作家活動をスタート。その後、作家活動は休止し、編集の仕事に携わる。ネットでは「ふにゃふにゃ」「あんぷらぐど」名でSM小説を執筆。独自の自虐的SM、一人称による告白形式の作品、伝奇SM小説などを発表し続けている。東京在住。

転がり込む

媚びる

脱ぐ

オナニー

股裂き

散歩

謝罪

外飼い

クマキ

叩き

標的

遊戯

貸し出し

浣腸

嬲られ人形

手加減無用

便器

ドライブ

奥付

転がり込む

「清美さん。お願いです。しばらくでいいので、置いていただけませんか?」

そのアパートは思った以上に狭く、散らかっていました。薄いドアを開けると靴でいっぱいの玄関。そのままキッチンから奥の部屋まで見通せるのですが、荷物があふれ返っています。ゴミ屋敷といってもいいぐらいです。

「ムリ」

にべもなく、ガムをくちゃくちゃさせて清美は言います。表情はありません。汚れたグレーのジャージ。髪はボサボサです。

同級生でした。お互い、社会人になってから、一年ちょっと会っていないけど。心はつながっているのではないかと勝手に信じていました。

清美は百八十センチを少し越えていて、体重も九十キロぐらいです。しばらく見ない間にまた太ったんじゃないでしょうか。部屋が小さく見えるのはそのせいかもしれません。小柄なわたしとは大違いです。

黒人の血が入っているせいか、浅黒くて、女子プロレスラーなら間違いなく悪役です。怒ると鬼のようになるのを、以前、見たことがあります。

わたしは彼女をひと目見たときから、おびえていました。ですが、みんなが恐れる彼女に憧れ、友人として三年間、一緒にいる時間が一番長い仲になっていました。

すごく怖い彼女。感情の起伏が激しく、一緒に泣いたこともあるし、一方的にもの凄く怒られたこともありました。

恐ろしいときの清美がわたしには忘れられないのです。

いろいろな意味で、わたしは彼女が好きなのです。

だから困ったときに、真っ先に思い出したのも彼女でした。

久しぶりに会ったのだから、話ぐらいはあるかと思ったのに、わたしが持って来たシュークリームだけ受け取るとすぐ追い返そうとするのです。

「お願いです。わたし、ほかに行くところがないんです」

「ふーん、それで?」

清美はニコリともしません。

「わたしたち、友だち、だったじゃない?」

「友だち?」

わたしは内向的で友人はほとんどいませんでした。だから彼女を友人だと思いたかった。お互いに確認したことはありません。でも、普通の学校の友人以上の関係があると思っていました。

清美はいじめられたり、無視されたり、恐れられていましたが、友人なんて必要ないと思っているようでした。だから、彼女はわたしのことを、わたしほどには思っていなかったのかもしれません。

だけど、この大事な場面で、それを思い知るのは、つらいです。

「そんなこと言わないで。一緒にいろんなことしてきたじゃない」

「ふざけないで。あたしが哀れだと思ってつきまとってたんでしょ」

「そんなことない」

「あたしがひどい人間だって、知ってるでしょ」

怖いです。それが清美の魅力なのです。わたしは恐ろしい鬼のような彼女に、あえて身を任せようと決めたのです。それしか生き延びる方法はないと思ったから、ここに来たのです。身を捨ててこそ……。

そう、この体を清美に。

自然に涙が出てきてしまいます。

「なによ。泣いたってダメよ。そういえば、風夏はなにかと言えば泣いてごまかしてたわね」

「わたし、清美のこと大好きなの。ホントに好きなんだから」

泣きじゃくっていました。

この二ヵ月ほどの間に起きたさまざまなことが、積もり積もっていたのだと思います。

少しだけ清美に表情が浮かびました。

「ふーん」と鼻息。

「あんたさ、いま頃そんなこと言って、都合がよすぎない?」

「だって、連絡もくれずに引っ越してしまったじゃない」

「卒業ってそういうことだろ? お互い社会に出たんだからさ。学生じゃないんだからさ。あんたはあたしがここにいるのを知ってて、ハガキひとつ寄こさなかった」

「そんな……」

メールはしたのですが、携帯の番号を変えたのか、電話もメールもつながらなかったのです。

「あんた、大学行ってんの?」

「受験なんてムリでした。いまは、もう家もないんです」

「ふーん」とまた、鼻息です。

「あんたんち、会社やってたじゃないさ」

「会社、潰れちゃったんです」

清美と会った頃、わたしはお金持ちの家にいるつもりでいました。好きなアイドルのCDも最新のスマホも、ファッションも。なんでも手に入ったし、コンサートや海外旅行もよく行っていました。ずっとこういう生活が続くんだと思っていたのです。

それが昨年の一月を過ぎて受験というあたりから経営がおかしくなっていったのです。高層マンションの最上階を売り、そのほか別荘とか、投資用のマンションも売って、郊外の家を買ったのですが、狭くて暗い家でした。思えばあれが父母の最後の贅沢だったのですが……。

受験どころではありません。そのことは清美にも学校のほかの誰にも黙っていました。

卒業はできました。このまま生活は安定するかもしれないと思っていました。

大学はあきらめて仕事をしました。といっても、フリーター。アルバイトばかりの毎日で、正社員にはなれません。資格を取るとか、勉強もしたかったのですが、時間的にも経済的にも厳しくて、思うようにいきませんでした。

そして、一年。将来のことなんて考えられませんでしたが、住む家はあるし父母も明るく元気でした。うまく行ってると信じていました。これ以上悪くなることはない、と思っていました。

でも、二ヵ月前。わたしの知らない間に、父母の経営する会社は倒産していたのです。母が社長、父が会長の健康食品の会社でした。

二人はわたしになにも言わず、「得意先と香港に接待旅行に行く」と言って出て、そのまま帰らなかったのです。

ゴミ捨て場のようなところで二人は拳銃自殺したそうです。わたしは香港に行きたかったんですが、なかなか手続きがうまくいかず、数日して遺骨だけ戻ってきました。そして二人が多大な借金を負っていたこともわかり、家は追い出されて、なにもかも失い、こうして路頭に迷っているのです。

アルバイトもやめるしかなく、残されたわずかな現金でマンガ喫茶などを転々としてきました。

もう限界。誰かに相談したい。

その時、清美しか思いつかなかったのです。

彼女はシュークリームが好きでした。

節約のために昨日からなにも食べていませんが、残った小銭で、シュークリームを二個買いました。残りもここへ来るためのバス代でほとんど消えています。

清美がどこに行ったのか、わたしは知っていました。運送会社に就職し、その会社の近くでアパートを借りていることを、清美の両親から聞いていたのです。ただ、それを知った頃は、なにも言わずに姿を消した清美に腹を立てていて、連絡は取っていませんでした。

東京湾に近い埋め立て地です。用事がなければ行かないところで、なにかのついでに寄ることなどあり得ない不便な場所です。

「倒産した会社経営者が香港で心中? ああ、なんか、そんなニュース、聞いたかもしれないわ。あれ、風夏のうちのことだったんだ」

清美は少し口元を歪めました。薄笑いのように見えます。

「もう、どうしたらいいのか、わからないの。相談したくても、頼れるのは清美しかいないの」

「ふーん」

警戒心は解けたようです。

「ここに何日ぐらい、いるつもり?」

「何日って……」

ずっと一緒に暮らせないかと頼むつもりでした。見透かされたようです。

「一日か二日ならいいけど、明後日の夜にはいなくなってて」

「どうしてですか」

「うるさいわね! ここはあたしの家なんだからね。あたしのルールが守れないなら、いますぐ帰りなよ!」

ああ、怒っちゃう。

もうちょっとで今日、寝る場所が確保できるのです。そこにいるのが鬼のような清美だとしても。いえ、鬼だからこそ。

「わかりました。わかりましたから、どうかお願いします」

一日でも時間をもらえれば、ちゃんと話をしてお願いできるかもしれません。それを信じるしかないのです。

「しょうがないな。じゃ、一泊だけよ」

靴を脱いで大きな荷物をそこに置きました。スーツケース一つ。ほかの荷物は別の場所に置かれていますが、引っ越し先がないし、お金もないので取りに行くことができません。

「あんたさ、働いているの?」

「はい」

ウソをついていました。

「どんな?」

「お弁当屋さん」

やっていたことはあるのです。借金取りにバレて行けなくなってしまったのです。

部屋に上がると、生ゴミのニオイがしています。履き古した靴下のニオイ。ブーツのニオイ。そして清美の体臭。

なんだかすごく懐かしいのです。大好きな清美のニオイです。

「その辺で適当に座って。うちはなんでも適当なのよ」

たくさんの荷物の間に敷きっぱなしのマットレスと布団が見えています。

清美は体を揺するようにして冷蔵庫を開けると、「これでも飲む?」と紙パックに入ったジュースを差し出しました。

口が開いていて、日付を見ると一ヵ月ぐらい前のものです。

「コップは?」

「そんなものいいじゃん。友だちだろ」

彼女はわたしから紙パックを奪うと、紙の口を折ってそこに唇をつけて飲みました。

「ほら。うまいから」

「はい」

断るとせっかくの機嫌が悪くなりそうだから、わたしは真似して飲みました。

思ったほどまずくはなくて、ホッとして笑顔になりました。

すると清美も笑います。

紙パックを冷蔵庫に戻したら、その下をさっとゴキブリが通り過ぎました。

ドキッとしました。

それを清美は足で踏みつけました。黒いすべりやすい体が一瞬で潰れて、中から気持ちの悪い汁が出てきました。それを古新聞をちぎって拭き取り、臭気を放つゴミ袋に投げ込みました。足の裏も古新聞で拭いています。

「風夏。あんた、かわいいね。誰かに似てるね」

「父に?」

「バカ。そういう意味じゃねーよ。芸能人だよ。三十人ぐらいで歌って踊ってる連中がいるだろ。あの中の誰かに似てるわ」

誉めているのでしょうか。でも、「誰か」なので、どうもよくわかりません。

「初めてだわ。そんなこと言われたの」

「そうなの? そうだ、彼氏は? あんた、そうやっていると、けっこうまともに見えるじゃない。男に不自由しないだろ」

同級生なのに、ずいぶんと大人ぶっています。言い方がとても下品です。

「あん? どうなのさ、風夏」

「ぜんぜん、モテたことないわ」

弁当屋でおやじに言い寄られたことはありましたが、ほとんど冗談のようなもので、そこで一番若くて、職場になじめないわたしをからかっていたのです。

「うそついたらダメだよ。あたしはウソが大嫌いなんだからね」

笑っていますが、清美が怒ったら怖いのです。

わたしは清美の怒ったところが大好きなんです。この瞬間をずっと求めていたのです。

「ごめんなさい。ウソをつきました」

わたしは目をつぶって頬を差し出しました。

懐かしい。学生時代を思い出します。

「え?」

清美は一瞬、戸惑ったようです。

「ウソ? おまえ、親友にウソをついたの?」

「はい。わたしは職場でモテモテで複数の男と付き合っていました」

むしろこれがウソです。だけど、そう言ってしまいたかった。そうしなければ清美が怒ってくれません。

「覚悟しなさいよ」

「はい」

薄目を開けて見ていたら、清美はプロレスラーのように太い腕を振り上げ、大きな手の平をこちらに向けています。

あの清美が戻ってきてくれたのです。わたしだけの恐ろしい清美。鬼の清美。

目をつぶります。

「あっ」

左頬に強烈な衝撃があって、わたしはそのまま敷きっぱなしの布団に倒れました。

最後に叩かれたときよりも、何倍も痛い。体重が違うだけじゃなく、手加減をしなくなったのです。

学生の頃は、清美は教師にも生徒にも目をつけられていたので、わたしがいくら「もっと強くぶって」と頼んでも、跡が残らない程度にしかやってくれませんでした。いまはもう、そんな制約はないのです。

汚い布団に倒れて、涙を流しながら、わたしはゾクゾクしていました。ここに来たのは間違いじゃなかったのです。

清美は恐ろしい。だけど、だからこそ、わたしはここに置いてもらえるかもしれません。

媚びる

「ウソは許さないよ。二度と言うんじゃないよ」

清美が怒鳴ります。

「ご、ごめんなさい」

見上げるとわたしの上に清美が立っています。

わたしの、めくれ上がったスカートの裾を掴んでいます。

「こんなもの着てさ。カワイ子ぶったやつ、あたし、大嫌いなんだよね」

ぐいっと引っ張ります。

「ホントにごめんなさい。ウソはつかないから」

頬がジンジンしています。ボウッとなっています。

臭いこの部屋で、夢にまで見た恐ろしい清美にいま乱暴されようとしているのです。妄想していたシチュエーション。

彼女は怒ると突然キレて手がつけられないのですが、根はすごく優しいのです。優しさと強烈な暴力。それが同居しています。

それが清美の魅力なのです。

「なにするの、清美。触らないでよ」

「なんだって!」

「こんなゴミ溜めみたいな部屋に住んで、えらそうに言わないでよ。汚い手で触らないで!」

「ふざけるな!」

清美は怒りました。わたしのスカートを引っ張って、引き剥がそうとしました。

「あっ」

スカートは裂けてしまいました。

「そうだ、風夏。あんたうちにいるなら、そんな服じゃ、いさせないよ」

「え?」

「あんたが学生の頃に、誓ったこと、忘れたの?」

ドキドキしています。清美があれを覚えていてくれた。うれしい。

「いいかい。あんたはね、大人になったら、あたしの奴隷になるって言ったんだよ」

ただ、黙っています。

「誓ったんだよ。覚えてるだろ?」

わたしは、じっとしています。

「奴隷ってなんだ、どんなことするんだって、あたしが聞いたよね。そうしたら風夏はなんて答えたんだっけ?」

体が痺れたようになっています。

うれしくてまた涙が出てきます。

もし清美がまだそのことを覚えていて、わたしをカワイイと思ってくれているのなら、ここに置いてもらえるかもしれないのです。

わたしはその場で正座しました。

そして大人になったことを証明したくて、あの頃はそこまではできなかった土下座をしました。借金取りや父母が迷惑をかけたらしい人たちに頭を下げる気はまったくなかったのですが、清美にならいくらでも土下座できます。

「清美さま。わたし風夏は身も心も清美さまに捧げます。奴隷としておそばに置いてくださいませ。奴隷は清美さまのご命令になんでも従います。風夏が悪いことをしたり、清美さまの気分がよろしくないときは、ご自由に叩くなり蹴るなり、お好きになさっていただいて構いません。気晴らしにお使いください。躾けのために厳しく折檻してください。そして、ボロボロになって使いものにならなくなったら、どこにでも捨てていただいて構いません」

学生のときに考えた言葉。

忘れるはずがないのです。必死に考えて、夢の中でも何度も唱えて。

ただ、そこに「どこにでも捨てて」と付け加えていました。ゴミ捨て場で無惨に死んだ両親のことが重なります。わたしたち、なんの価値もないゴミみたいな家族だったのです……。

「じゃあ、そんなきれいなカッコ、する必要はないよね」

「は、はい」

「久しぶりに風夏の体、見せてもらおうかな。だいぶ前の夏だったよね。あれから少しは女っぽくなった?」

清美は冷蔵庫の上にあるタバコを手にして、オイルライターで火をつけると、煙をふーっと吹き出しました。

なんてステキなんでしょう。清美はタバコを吸うのです。わたしの父母も、アルバイトをしていた先でも、ほとんどタバコを吸う人はいなかったのですが、清美のその姿は、いかにも似合っていて痺れます。

わたしはおそらくすごくうれしそうな顔をしていたと思います。喜んで上着のボタンに手をかけました。

「待って」

清美は大股で部屋を横切り、ガラス窓をバーンと開け放ちました。

外の音と風が入ってきました。生暖かい春の空気。

アパートの外は、小さな庭のような空き地。駐車場。そして幹線道路があり、その向こうは倉庫や運送会社が並んでいます。

今日は休みなので、あまり車も通りません。海が近いのか風に潮の香りも混じっています。

見慣れない寂しい風景。歩いている人なんていません。

「こっちへ来なよ」

陽が注ぐ窓の近くに、立たされました。

「脱ぎな」

彼女は陰にいて、ときどき赤くなるタバコの火が見えていますが、表情はわからなくなりました。

学生時代、清美の前で裸になったことは何度かあります。一緒にいられる最後の夏休み。外でした。遊びに行った町の、小さな公園。女子トイレ。そこで全裸になりました。

「どうか、風夏の体をご覧ください」

わたしの中では清美に命じられてさせられたシチュエーションですが、実は自分からやって、見てもらったのです。

あの興奮がよみがえります。

「風夏の裸を見てください」

「いいよ。ゆっくり脱ぎなよ」

清美に見てほしい。恥ずかしい姿を。

わたしにはもう、なにもないの。家族も家も仕事も。だから裸がふさわしい。

ボタンをゆっくり外して上着を脱ぎました。

汗を吸っているブラウス。それもゆっくりとボタンを外していきます。少し冷たくも感じる風ですが、むしろ心地がいいです。

清美に気に入ってもらいたい……。

ピンクのブラ。

「かわいいの、つけてんじゃないの」

清美が指先で谷間のフロント部分をぐいっと引き上げます。

「少し大きくなったんじゃない?」

「毎日もんでいました。ブラのサイズはいまEカップです」

「ホントに? 前はCだったわよね」

覚えていてくれたんだ……。

ボウッとなります。

雀がチュンチュンと鳴いています。

ゴーッと大型トラックが通り過ぎました。

すぐに抱いてほしい。

清美はふざけてプロレスとか格闘技の技をかけることがあって、すごく痛くて苦しいけど、あれがわたしは大好きでした。彼女の太ももに頭をはさまれたときのことが忘れられません。

こうした一つ一つの思い出は、ごくたまにしかなかったことばかりです。おみくじで大吉を引いたときしか覚えていないように、大事にしてきました。

清美はシャイなので、よほどその気にならない限り、わたしを乱暴に扱ったり、ふざけたりしないのです。

よく二人で一緒にいましたが、いつもなんにもしませんでした。ただ一緒にいて。ゲームしたり、話をしたり、マンガを読んだり、お菓子食べたり。それだけ。

三年の間に、わたしが夢に見るような清美とのふれ合いがあったのは、ほんの数えるほどです。

でも妄想だけはすごく膨らんでいたので、現実とは大きなギャップがありました。

受け入れてくれるのかどうか、不安でしょうがありません。

「さっさと脱ぎなよ」

清美が言うので、わたしは「はい」と返事してブラを取りました。

脱ぐ

「ふーん」

彼女の手が肩にかかって、窓の方を向かせられました。

まぶしい光。道路が見えます。自転車やバイクが通っていますが、顔も見えないほど距離はあります。ただ、庭の向こうの駐車場を人が通れば、裸のわたしははっきり見えたと思います。

「かっこいいじゃないの」

「ありがとうござます」

乳首が硬くなっています。

「自分でもむんでしょ。やってみなよ」

「恥ずかしい」

「やらなくてもいいけどさ」

「あ、やります、やりますから、清美さん、見ていてください」

「清美さん? 違うよね?」

「あ、ごめんなさい。すみません。清美さま」

「あんたにさ、気安く呼ばれたくないんだよ」

「なんてお呼びすればよろしいでしょうか?」

「ご主人さまっていうのは、つまらないしね。あんたの旦那じゃないしさ。そうだ、飼主さまってどうかな」

飼主……。飼っていただけるのでは……。

すごく希望が持てて、うれしくなります。

「ありがとうございます。飼主さま。風夏がオッパイをもむところをご覧ください」

「さっさとやりな」

両手を乳房の下側に置きます。重さを確かめるように。手の平で包みます。そして全体を上に持ち上げます。ぐいっと上にもみ上げるのです。

乳首が完全に上を向くまで押し上げ、それから潰すように指に力を入れて、引き伸ばす。それから、両手の平で、左の乳房を下から上へもみ上げ、脇の下から乳房方向へもみます。全体を回すように撫でて、また下から上へ。次に右の乳房。

本当は手にベビーローションかなにかをつけるのですが、いまは自分の汗だけでやっています。

「ふーん、そうやるんだ」

「はい」

「あたしがやってやろうか」

もし乱暴にされたら、むしろオッパイの形は崩れてしまうでしょう。でも、清美に触ってほしい。以前も、なかなか触ってはくれませんでした。いまはきっと違うと思うのです。

「お願い、します」

左手に吸いかけのタバコを持って、右手だけで左の乳房を鷲掴みにしました。

「うっ」

強烈な握力です。わたしの表情を見て、清美は冷たく笑います。

「痛い?」

「い、いえ」

「そうなの? これでも?」

じわっとさらに力が加わります。ちぎれそうです。指先が深く食い込んでいます。汚く伸びた爪が、皮膚を破りそうなぐらいに。

「だ、大丈夫です」

「こうするんだっけ?」

指先を食い込ませたまま、ダイヤルでもひねるように、左右に捻ります。

「あああっ」

「痛いの?」

「い、いえ」

「じゃ、なんで声出すの? 気持ちいいの?」

「は、はい。気持ちいいです」

手がぶるぶる震えます。彼女に乳房を差し出しているだけでも、かなりガマンしています。だけど、ここで機嫌を損ねたら終わってしまいそうで怖いのです。

ふいに清美が手を離しました。

「はー」とため息が出ます。見おろすと、くっきりと彼女の手の跡がついています。

「おもしろいね。こっちもやって欲しい?」

「お願いします」

右の乳房も掴まれました。わたしのおびえた顔を見て、彼女はうれしいようです。タバコをくわえると、左右同時に掴んで、グリグリとひねり回すのです。

息ができないほどの苦しさ。

「嫌がらないの?」

「ううううう」

嫌といえば終わってしまうでしょう。

「はい。好きだから……」

「ふーん。すごいわね。だけど、素手じゃかわいそうだわね。普通、クリームとかつけるんでしょ? ローションとかさ」

「はい」

「そうか。そういうことか」

清美はニヤリと笑って、タバコを冷蔵庫の上の灰皿に置くと、わたしが買ってきたシュークリームを持ってきました。

「覚えていたのね。大好物だって」

「はい」

「これもクリームよね」

「はい」

彼女は大きな口を開けます。巨大な歯。少し黄ばんでいます。歯茎もあまり血色はよくないようです。

シュークリームを口に押し込み、おいしそうに食べます。指にはみだしたクリームがつきます。それをしゃぶって、途中でやめると、その指をわたしの乳房に塗りたくりました。

「自分でやってごらんよ」

もう一つを渡されます。

「あの、よろしければ、こちらも召し上がってください」

「いいのよ、風夏。あんた、これでオッパイ、もめばいいじゃん」

せっかく買ってきたシュークリームですが、ご命令です。

乳房に押し当てて、潰しました。クリームが出てきます。それを破れた皮で塗りたくっていきます。

「もっと全体に塗りなさいよ」

「はい」

両方の乳房に塗っていきました。冷たいクリームが皮膚に染み込みます。

「皮は食べな」

ボロボロの皮を口に入れて、飲み込みました。

「おいしい?」

「おいしいです」

「じゃ、続けて」

クリームだらけの乳房を両手で、さきほどのようにもみほぐします。

すごく惨めなのに、すごく気持ちがいいのです。

「飼主さま。わたし……」

「なによ」

「感じてしまって……」

「なに?」

「感じてしまっているんです。すみません」

「だめよ。なに勘違いしてるの? おまえ、気分出してもいいけど、達したら承知しないよ」

「でも……」

この夢に見た状況に、わたしは膝から崩れ落ちそうになっているのです。

オナニー

「困ったね」

清美はあきれています。

ベタベタになったおっぱいを撫で回しているだけで、わたしはイキそうになっているのです。たまらないのです。

「どうしたいの?」

「わかりません。ただ、もう限界です、飼主さま。思い切り感じさせてください」

「いやらしいわね。自分でやりなさいよ」

「ありがとうございます」

パンティの上から指であそこを触ると、ぐっしょり濡れています。それを確認したとたんに、ズキンと背筋を小さな快楽が走りました。ボコボコと沸騰する鍋のように、少しずつ下から快感が脳天に上がってくるのです。そして、このままいけば、頭の中が気泡のような快楽でいっぱいになっていくでしょう。

「そんなもの、脱いじゃいなさいよ」

肌に食い込んでいるパンティの中に手を入れました。クリームがついています。その感触が気持ちいいのです。

そして手を押し下げていき、パンティをずらしていきました。

「風夏。おまえ、処女なの? 男は?」

「知りません。したこと、ありません」

「さっき、複数の男と付き合ってたって言ったじゃない」

忘れていました。崩れた体のほうが、清美はわたしをいたぶりやすいと思ったし、嫉妬させたり、怒らせたいから言ったのです。

「はい。そうです。したことがあります。ヤリマンです。わたしは、何人とも何度もエッチしました」

「じゃあ、これを突っ込んでみなよ」

彼女は消臭スプレーの缶を手にしています。

「クリームつければ入るよ」

それはすでに使い切ったスプレーで、古いもののようですが、もしかすると清美が自分でオナニーに使ったことがあるのではないでしょうか。ドキドキします。丸いキャップ。つるりとなで肩で、握りやすい太さ。

それを胸の谷間にあてて、クリームをつけます。

「しゃぶってみれば、男のものと比べられるだろ」

そんなことをしたことはないのですが、わたしは男たちのオモチャになって汚い体になっている方が、清美には楽しいと思うのです。

両手をそえて、エッチなサイトで見たように口に持っていきます。舌先で舐め、甘いクリームを感じながらパクッとくわえました。正解なのかどうか。薄目で彼女を見ると、うれしそうにタバコを吸いながらコーラをシュパッと開けて、おいしそうに飲んでいます。

「もっと気持ちを入れてやりなよ。男だと思ってさ」

口でするといっても、よくわからないので、吸いつきながら動かしてみました。

「上手なんじゃないの? ホントにイヤらしいね、風夏は」

おそらくクラスの女子の中で、わたしほど清純だった者はいなかったでしょう。妄想だけ。男と付き合ったことはなく、盛り場に行くこともなく、合コンもしません。清美とだらだらっとした時間を過ごすぐらい。あとは全部、妄想。

「風夏ってさ、不気味だよね」と真顔でクラスの子に言われたことがあります。

「あんたみたいなのって、裏でよっぽどスゲーことしているかもしれない」

だけど、ほかの子たちから、それほど興味を持たれることもなく、地味に、静かに生きてきたのです。誰もが、わたしの両親が金持ちだと思っていたし、教師たちもそれを知っていて、わたしのことを露骨に大事にしていました。あの頃は、すごい寄付を学校にしていたからですけど。

「いつまでしゃぶってるんだよ、退屈だよ」

「はー」

やっとスプレーを吐き出しました。

いよいよ、体に入れるのです。

パンティを押し下げて、足から完全に抜き取りました。

「窓の外に捨てな」

「えっ」

「聞こえたろ?」

「はい」

飼主さまの命令はすべて従わなければ。

パンティを窓から外に投げました。すぐそこに落ちていると思います。

「どうやって男を満足させてきたのか、見せなさいよ」

「横になってもいいですか?」

「ダメ。そのままでやって」

手を伸ばし、その部分を確かめます。濡れています。とうとう、その日が来ました。清美の前でわたしは、処女を失うのです。

缶の先端を押し当てます。

「うううう」

歯をくいしばっています。

肉を押し分けて、硬いキャップ部分が入ってきます。痛くないので、少しホッとしています。

ですが、キャップが入ったぐらいのところで、進みにくくなりました。

「くうううう」

力を入れて、いっきに入れようとしました。

「あっ」

メリッと音がしたわけではないのですが、感じとしてはそんな印象がありました。痛みといっても、叩かれたりするようなものではなく、異物感が先です。ほかに喩えようがないので、痛いとしか言えません。

「ぐう」

ねじるようにして入れていきます。

そのとき、したことがないので、いったい、どこまで入れていいものか自分でもわかりませんでした。でも、半分ぐらいは入ったと思います。

そこでいったん、引き抜きます。

「あんたのあそこ、小さくて狭いんだね」

はじめてだとは言えません。幸い血は出ていません。

もう一度、奥まで入れてみます。

「なんだか、だるいね」

清美は手を伸ばしてきて、わたしの手首を掴みます。

「こうやるんだろ」

スプレーを握っている手を、激しく動かされます。

痛い!

なにかが弾ける感じ。思った以上に深く缶が入り込みました。

彼女の力は強く、ガンガンと突き上げるように動かします。

「ああああ」

すべすべの細い缶は硬いのです。してはいけないことをしている気持ちからか、急激に感じてきました。

「ダメ。いかせない」

清美の手が、今度は止めさせるのです。わたしはいつしか、自分の力で強く出し入れしていたのでした。

「そこに、座ってごらん」

窓を指さしました。

股裂き

怖すぎます。ここは一階なので落ちても大したことはないのですが、体をほとんど外に出すことになりますし、股間にとんでもなく影響するに違いないからです。すごく痛いに違いありません。

「窓の上を持てばいいんだよ」

カーテンレールの内側に窓枠が出っ張っているので、そこに指をかけて体を支えてみました。

缶を彼女が持ち、窓枠にあてます。

「体を動かしてごらん」

お尻を窓枠の外に突き出すようにして、いやらしい動きをするのです。

手で動かすのとは違い、体を上下させると、いままで以上に深く入ってくるようになって、体をくねらせないと耐えられない感触になります。そして、鈍い痛みも感じます。

「ああん、ふぅぅぅ」

「いいの?」

「はい」

「すけべな風夏」

「はい、わたしはスケベです」

彼女の手がわたしの足にかかります。

「こうしてみようか」

足を持ち上げて、窓枠の向こうへやるのです。体がほとんど外に出てしまう。背中とお尻を道に向けていたわけですが、窓枠に跨がるようにされると、外から見れば全身ほとんど丸見えです。

それに外に出た足は支えがありません。

「もっと深く入れてみなよ」

それはもう、快楽とは関係のない行為でしょう。

「こわい」

「いやならいいけどさ」

「や、やります。飼主さま、ご覧ください」

わたしは自分の快楽に溺れてはいけません。飼主さまの命令が第一。体がどうなろうと、実現して見せること。それによる苦痛をご褒美として味わうこと。

少しずつ体重をスプレー缶にかけていき、斜めですけど、とうとうお尻を窓枠に落としました。

「うぐぅぅぅぅ」

すごく痛い。裂けそうです。

ぶら下がっている手も右手だけになって、左手は窓枠の下を突いて支えます。

「だめよ」

清美が乱暴に左手を払いました。

「あっ」

体重がずんとスプレー缶にかかり、ぐりっと内臓の奥深くまで入り込んだのです。裂けたんじゃないかと思います。

その衝撃に愕然としてしまいます。大変なことになった……。

「続けなさい」

動けません。

「やれって言ってるんだよ」

清美が怖い声で言いますが、痛いし苦しいし、怖いし。身動きができないのです。

「言うことがきけないの?」

彼女がドンと突いてきて、あっと思う間もなくバランスを崩します。右手を彼女が払いました。明らかにうれしそうに笑っています。スローモーションのように、わたしは窓の外に落ちていきました。斜めになるところまではゆっくりだったのに、そこから地面にぶつかるまでは、あっという間で、肩から落ちて、側頭部も少し打ちました。手をつく暇もなかったのです。

裸でアパートの外に落とされていました。

「反省しなさい、風夏」

清美は窓からこっちを見ています。立ち上がれば、窓に登り直すことは簡単そうですが、しばらく倒れたままで動けませんでした。

「その缶を勝手に抜いたらぶっ飛ばすわよ」

風が吹いていて、地面は土と砂、小石。パンの袋やカップ麺の発泡、丸めたティッシュ、壊れたトースターなどが転がっています。清美が怒りにまかせて投げ捨てたのでしょうか。

アパートの正面なのに、駐車場との間の空き地のようなもので、掃除も手入れもされていません。

雑草が生えていて、その向こうに簡素なフェンスがあって駐車場になっています。

轟音をあげてトラックが通り過ぎます。

裸で放り出されたことで、呆然としています。肩を強く打ったので痛いのですが、さするようにして立ち上がります。視界が開け、驚いてしゃがみます。

「誰もいやしないよ。そうだ、パンツを頭から被ってごらん」

窓からタバコの灰を落としながら清美が言うので、パンティを拾いました。これを頭から被るのです。

「似合うわ、変態女らしくていいわ」

笑われます。

「缶も、しっかり奥まで入れないとダメだよ」

缶を押し込むようにします。

「そこでオナニーしてみなよ」

いつしか、息が荒くなっています。恥ずかしい。痛い。酷い。

だけど、これって、わたしが望んだこと。夢に見たこと。家族も家もないわたしには、お似合いの歪んだ快楽ではないでしょうか。

「はい」

両手で缶を持ち、口を開いて、あえぎながら、裂けたような痛みの残る股間を自分でいたぶるのです。

ぐいぐいと、思ったよりも深く入ってしまい、子宮を押し潰しているような強烈な感覚があります。

「歩きながらやりなよ」

「はい」

そのあたりを歩きながら、缶を出し入れします。地面は尖った小石やゴミがあって、足の裏に突き刺さります。道路をトラックが通り過ぎ、すぐ隣の駐車場には人影が少しはあります。

裸でパンティを頭から被って、スプレー缶を女性の大切なところに押し込みながら歩いている……。わたしって、ホントにとんでもない人……。いえ、人ではなくて、もっと下等ななにか。淫らなだけの生き物。

「こっちにおいで」

清美に呼ばれて、急いで窓に。

「向こうに回りな」

「はい」

やっとお許しを得たようです。アパートを回って、清美の部屋のドアに辿り着きます。誰かに会ったらどうしようと、ドキドキしながら。

散歩

玄関のドアを開けた清美は、わたしを入れてくれるのではないのです。サンダルを履いて、外に出てきました。

「あ、入れてくれるんじゃ……」

「散歩に行こうよ」

甘い気持ちだったわたし。清美を怒らせたのでしょうか。彼女の目は怖く、まったく許してもらえていないようです。

ドアに鍵をかけて、清美は歩きはじめます。

「来なよ。缶を勝手に抜いたらダメだよ」

なんとか彼女のあとをついていきますが、股間に物が入っていて恥ずかしいし、大股でどんどん進む彼女には追いつけません。

三メートルぐらい先に行ってしまった清美が振り返ります。そしてわたしが追いつくのを待っています。

「遅いよ! のろまだね!」

バシンと左の乳房を平手ではたきました。

「あうっ」

その衝撃で、缶を落としてしまい、しゃがみ込んでしまいました。

「勝手に缶を抜いたね」

「あ、すみません」

「バカ!」

清美がサンダルでわたしの顔を蹴りました。

「あっ」

仰向けにアスファルトの上にひっくり返ってしまいました。

「みっともないね。あそこが丸見えだよ」

「恥ずかしい」

「はやくあそこに戻しな」

こんなかっこうで。しかも血が混じった淫液で濡れた缶は、地面に落ちて汚れてしまっているのです。砂埃がついています。

やっぱり出血はしたようです。だけど清美はそのことには触れません。

「入れなよ」

「でも、これ」

「ここで終わりにする?」

「あ、はい、やります」

汚い缶を手に取り、そのまま入れました。

「あっ」

ジャリっとした感触。粘膜が傷ついていきます。

「さっさと立って」

しっかり手で支え、妙なかっこうで歩きました。

殺風景な埋立地は、建設機械置き場や、コンテナ置き場、遠くにはリサイクルの施設などが見えます。

こんなところで捨てられたと思うと、必死に清美にすがるしかないことを自覚させられます。

ひたすら歩いていると、お店がありました。コンビニのようですが、知られたチェーン店ではありません。

「いらっしゃい」

髪の毛がほとんどないのに、わずかな髪を薄汚く伸ばしている老人。体がねじれています。

「お弁当、まだある?」

「今日はもうこれだけ」

清美は弁当を買いました。その間、老人はわたしをチラチラ見ています。

「紹介するわ。この子、変態の風夏」

「変態か。まったく」

「怒らないでね、友達だから」

「清美の友達ならしょうがないな」

「ヒデキさん、挨拶、させてもいい?」

「いいよ」

「変態の挨拶だから、特別だけど」

「どんな」

「男のあそこが大好きなのよ」

老人は笑いました。歯が少ししかありません。でも、思ったよりも若いかもしれません。七十前かも。

「いいのか。おれでも」

「もちろんよ。ね、風夏」

腕を掴まれ、引き出されます。独特の臭気。

「じゃあ」

ヒデキさんが、ズボンを膝までおろしました。

悪夢です。

清美にいじめられるのはいいのですが、初対面の老人のあそこに対面するなんて。

ステテコというのでしょうか。その中から、ぼろっと一物を引き出しました。

「お口でやるのよ」

したことがない。パニックです。でも、やらないと。ヒデキさんの足元にうずくまり、「手は離すんじゃないよ」と念を押されたので、両手で股間の缶を押さえながら、口をそれによせました。柔らかい奇妙な感触。味わったことのないもの。

はじめてのニオイ。

嫌とかではなく、どうしていいのかわからずにキスをしていたら、「バカ、口に入れてしゃぶるのよ」と、清美が背中をサンダルで軽く蹴りました。

口を開けて、それを入れてみました。

「噛むなよ。歯を立てるなよ」

皮があると気づきました。

急激に吐き気がして……。

「げー」

まったく違うとは思いますが、鶏肉の皮の部分みたいな感じだと思ったとたん、吐き出してしまいました。

「うわっ」

ヒデキさんが慌てて下がります。

涎だけですが、床に吐き出したものがしたたります。

「風夏!」

清美さんが恐ろしい顔で見ています。

「なにやってるの!」

「ごめんなさい」

「だめよ。許さない。こっちにお尻を向けなさい」

清美はずっと機嫌が悪かったのですが、まだまだ本気で怒っていたわけではなかったのです。わたしは彼女の逆鱗に触れたようです。

「恥をかかせて!」

その大きな手の平が、お尻にバシンとくいこみました。

「あっ」

「悪い子だわ」

バシン、バシンとお尻を叩くのですが、バットで殴られているような衝撃です。長い手。分厚い手の平。それを思い切り遠くに振り上げて……。

バシン。

「くうぅぅぅぅぅ」

頭が真っ白になっていきます。

「数えるのよ。いまから五十発!」

「ふぇぇぇ、許して」

「ダメ! 数えないなら百発!」

「数えます、数えますから」

バシン!

「いち」

バシン!

「に」

なんという衝撃。なんという痛み。

だけど、これこそが、わたしが望んだものなのです。

謝罪

「じゅう……」

清美の手がお尻を叩き続けています。

「もっと突きだして!」

痛いから引こうとしてしまうのですが、そうすると怒られてしまいます。

「手が痛くなったから、これで叩いてあげる」

清美はサンダルを脱いで手にしています。

「ああ、それは……」

十一発目。

「ぎゃん!」

手とはまるで違う衝撃。

「いい音がするじゃない。数えてよ。数え間違えたら百発だよ」

「じゅういち……」

パーン、パーンとものすごい音が店内に響きます。

ヒデキさんは笑って見ています。あそこを固くして。わたしの上半身を押さえつけるようにし、顔に股間を擦りつけてきます。

「にじゅうなな……」

乳房をちぎれそうなほど強く握られます。

「はひぃぃぃ。にじゅうはちぃぃぃ」

パーンとサンダルで叩かれて、飛び上がりそうなほどの痛みで体が前のめりになると、おっぱいがぐいっと潰されて。唇が彼のものに。顔にペニスをこすりつけて、彼は楽しんでいます。

「ごじゅうぅぅ」

やっと五十発が終わりました。

「ちゃんとやりなよ」

髪の毛を清美に引っ張られて、涙でくしゃくしゃの顔を持ち上げられ、開いた口にヒデキさんが入れてきました。

「風夏。よく覚えておくんだよ。これからなにをしても、気に入らなければ、ぶったたくからね。お尻だけじゃないよ」

必死にしゃぶります。もう、これ以上は叩かれたくないから。

外は、いつしか激しい雨となっていました。

お客さんなんて来ないのですが、とにかく早く終わらせたくて、頭をけんめいにふりました。

「うっ」

ヒデキさんがうめき、喉の奥まで突いてきました。

「飲み干すんだぞ」とヒデキさん。「これ以上、床を汚したらしょうちしないぞ」

口の中に生臭いものがたっぷり。

その粘り具合は、糊のようです。どんな食べ物にも該当しない味。飲み込もうとしても、なかなか簡単ではありません。

彼のものが入っているのですが、吸い込むようにして飲んでみます。喉の奥にへばりついて落ちていかない感じ。

そうやっていると、まだ出てくるようで、減るどころか増えていきます。

「清美ちゃんさ、すごい雨になったけど、傘あるの?」

「持って来なかったわ」

「貸してやるよ」

「ありがと」

窒息しそうになりながら、なんとか漏らさないように飲もうとしているわたし。だけど彼らは普通の会話をしているのです。

「ヒデキさん、どうだった、風夏」

「うーん。悪くはないさ、もちろん。上手じゃないけど。若いからね」

「そう。またよろしくね」

なんとか飲み込みましたが、口の中を二人で点検されました。

「なにか、こいつに合う首輪とかない?」

「あるよ」

ヒデキさんは店内の棚をあちこち探したあげく、ホコリをかぶった細い首輪とリードを見つけてきました。

「あげるよ」

清美は汚れているからか、わざとか、受けとり損ねて床に落としました。

「風夏。自分でつけてごらん」

袋を破って、細いグレーの革の首輪を取り出しました。鈴がついています。猫用のようです。

リードがつけられません。鈴をつけている輪にリードのフックをつけようとしていたら、「それを入れれば」と清美に言われました。

右手の薬指にあるプラチナのリングのことを言っているのです。すべてを失ったわたしにとって、母から貰ったこの指輪だけが残っています。いつかは売ることになるかもしれないと思っていました。

貰ったときはそんな大きな意味はなかったのですが(たぶん、母がもう自分ではつけないからあげる、みたいなことだったと思います)、結果的に形見となっています。

それを外し、首輪に通しました。びっくりするぐらいピッタリです。そこにフックをつけるとリードを取り付けることができました。

折檻部屋の風夏 第1部 (1/3)
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