奴隷牧場4 ハニートラップ 第1部分 (1/5)
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目录
プロローグ
一 二〇一〇年八月 エスタブリッシュメントホテル歯科診療予備室二 二〇一〇年九月 三田村隼人私邸三 二〇一〇年十月 エスタブリッシュメントホテル会議室四 二〇一一年三月 エスタブリッシュメントホテル 最上階特別ラウンジ五 二〇一一年八月 銀座「クラブ 桜」店内六 二〇一一年八月 エスタブリッシュメントホテル 会長室七 二〇一一年八月 エスタブリッシュメントホテル 最上階プールサイド八 二〇一一年十月 エスタブリッシュメントホテル 一七〇一号室九 二〇一一年十月 エスタブリッシュメントホテル 四六一二号室(会長個室)十 二〇一一年十一月 エスタブリッシュメントホテル 四六一二号室(会長個室)十一 二〇一一年十二月 エスタブリッシュメントホテル 四十九階ラウンジ十二 二〇一一年十二月 エスタブリッシュメントホテル 二階 歯科医院一般診療室十三 二〇一二年二月 米倉会三田村医療法人 精神科病棟処置室エピローグプロローグ牧野リサ。
前会長の
三田村
勇輔
の秘書として、まだ二十代前半の頃から、長年にわたりその側にずっと仕えていたと聞く。
隼人
が初めて三田村に会った時も、この部屋で、今と同じように「会長」の隣に座り、落ち着いた微笑みを見せ、時に相槌を打ちながら座っていた。「秘書」という肩書だが、長きに渡りそれ以上の役割を果たしてきたことは間違いない。
前会長が長く
寵愛
した理由のひとつなのだろう、とても頭のいい子だ。次に自分が何をすればいいのか、どういう言葉を発するべきかを常に考えている。
そして、それはいつも驚くほど的確だ。
父親は日本人だが、母親はアメリカ人と中国人のハーフで、日本人離れをしたエキゾチックな美貌と、細い肩幅から急激に盛り上がる胸、そして裸にするとあばらが薄っすらと見えるほどの体から急激にくびれる細い腰。尻も小さめだが、上半身の細さとアンバランスにむっちりとした白い腿が男の目を釘付けにする。
端正な言葉遣いの日本語は当然として、英語に中国語、そしてイタリア語も解する。
半ば冗談で、次はアラビア語も頼むよと以前に言ったら、本気で勉強を始めて隼人を驚かせた。
隼人は、養子縁組により父となった前会長が亡くなるまで二年ほどドバイに「留学」していた。
当時、現地では日常的には英語さえ使えれば、アラビア語は挨拶程度のものがわかっていれば充分にやっていけた。
だが、いざ交渉事の場では相手の母国語がわかっている人間がこちらに居ると居ないでは、大きな差がある。実際にお金が絡む交渉事が、エスタブリッシュメントホテルグループと先方との間に存在するのだ。
特に、表面に出てる「貿易」もそうだが、裏の組織の関係する「取引」はそのやりとりする金額も莫大なだけに、その影響は大きかった。それでそんな冗談を言ったのだが、優秀な秘書は、いつかは勉強しなければいけないと思っていたので、とあっさりと言ってのけたのだった。
語学に柔軟な頭脳というものがある、ということもこのリサを身近に置いてみて知ることになった。
いずれはアラビア語を操る相手と対峙する時にもやはりこうして隣に座って、素知らぬ顔で微笑みつつ相手の様子を伺い、向かい側に隣り合わせて座ったアラビア語をあやつる同士の会話に聞き耳を立てる。そういった場面も遠からぬ時期に来るだろう。
だが。
今、目の前に座っているのは、誰がどうみても典型的な日本人で、その肩書さえ知らなければ、言ってみれば関西の方のただのおっさん、という風情の男だった。
国民自由党の幹事長、大河原耕造。
前内閣をもって長くその座に君臨した政権から転落してはいるが、先日行われた参議院議員選挙では、彼の陣頭指揮のもと、まんまと相手、つまりは現在の政権与党の度重なる失策を引き出し、与党を少数与党へと、つまりは参議院においては与党よりも全野党の議員の方が数で上回る「ネジレ」状態に持ち込んでいた。
「会長は山浦先生のところで、大変大変優秀な後継者候補だったとか。ところが彼が政界に転じてみれば、同じような時期にこんな巨大な会社のトップになられて、元々私の後継なんていうレベルの器の人間じゃなかったんですなあと、それでも彼はずいぶんと会長のことがご自慢のようで、何度もお話を聞かされておりましてのう」
男は意識して標準語を喋っているようだが、どこか言葉の端々に関西言葉の微妙なイントネーションが交じっている。
隼人の顔を見ながらも、気になるのだろう、時々隣のリサの胸元に視線を走らせるのが、野党第一党の今や飛ぶ鳥を落とす勢いといってもいい男としては、いささか落ち着きがないようには思えるが。
左に座る隼人の方に
僅
かに斜めに流した左足に右足を乗せて優雅に足を組んで座っているリサが、さりげなく足を組み替える。
彼が来る前に、自ら極端に短いスカートをわざわざ捲りあげて隼人に見せた、ピンク色のパンティが男の目に映ったのは確実だろう。
ストッキングを膝のほんのすこしだけ上でガーター留めしているので、白い太ももが、普段から見慣れている隼人にさえ眩しく映る。
そのタイトミニのスカートと、同色で対の濃紺のジャケットを男が入室して来る直前に身につけている。
これみよがしに第二ボタンまでを外している白いブラウスの内側に、パンティと同色のくっきりとしたピンクのブラジャーが透けて見えているはずだ。
「寄せてあげての最新のブラなんです。この前表参道で買ったばっかりなんですよ」
と隼人ににっこり笑って、その時にわざわざボタンをふたつ外したリサだった。
Eカップの乳房が、実際いつもよりもさらに大きく見える。
ふざけてその谷間を強調して前屈みになって見せている優秀な秘書の胸元に、笑いながら手を伸ばそうとした時に、受付からのインターフォンが国民自由党幹事長の来訪を告げたのだった。
「まあいずれにしても、早い
処
解散に追い込みさえすれば、我々の政権奪還はまず動かぬところでしょう」
男は得意気に政治の話、つまりは今日の来訪の本題へと入っていった。
隼人がサラリーマンだった時代の雇用主が、参議院議員に転じたのも、実は三田村前会長とその懐刀だった君塚弁護士が画策してのことだったという話も、自分が会長の座についてから、リサから聞いた。
「庶民向けのパフォーマンスだったとはいえ、事業仕分けなどと称して、支配層の聖域である国家のカネの使い道まで、詳らかにしようなどと余計なことをするから、官僚どもの反撃を受けるのじゃ。ウチが政権から転落した時にゃぁ、これは十年は戻れぬかと思ったが、あの男さえ潰してしまえば、あとは庶民上がりのボンクラの寄せ集め政党。しょせん我々支配層の鉄の結束の前には、太刀打ち出来るものではないということじゃったのう、会長」
わっはっはと笑いながら、男はまたリサの胸元に目をやった。
それを意識したのだろう。リサは、わざわざ少し前屈みになってテーブルの上のお茶を手にする。
男の目にその白い乳房の谷間を見せつけ、何事もなかったようにお茶を啜りながら足をまた組み替えた。
私も全然その庶民上がりなんですが、という言葉を飲み込んだ隼人は、「それで、先生の今日の具体的なご用件は」
と男に話の展開をうながす。
「ハニートラップ」
男はそう言うと、一度言葉を切って隼人をそしてリサの顔を見た。
「実は外務省の幹部が先だって
儂
のところに相談に来てのう。このところ中国だロシアだので、大使館の人間がまんまとこれに引っかかって、骨抜きにされた事案が続いたらしいのじゃわ。これがまた相当に巧妙らしくてのう。情報を相手には抜かれるわ、将来の事務次官候補とまで言われていた優秀な男が現地で自殺してしまうわと、抜き差しならぬ状況に既になっておるらしいのじゃ」
「ロシアの美しいスパイがイギリスで捕まった、なんてお話もつい最近ございましたわね」
リサには、前会長の時と同様、いつでも自由に口を挟んでよいと言ってある。
会長である自分が軽々しく口を開くよりも、その方が良い結果をもたらすことも多々であるということを既に就任以来何度も経験してもいた。
「そうですな、あれは儂とて一度はそのような不適切な関係になってみたいと思える美人スパイでしたな。ところが翻って、我が国はどうじゃ。そういった女性エージェントの育成などこれまで微塵も考えてはおるまい、誰一人として。若いうちは勤勉だけが取り柄のような官僚たちが、そしてこれまでの日本人という気質が、女を使うて相手を攻略するなど、想像すら出来なかったのじゃ。彼らにとってそれは、対極の手段と言うよりも全くもって想定外の手法ということじゃの。検察や裁判所などの司法組織とマスコミがこちら側である我々支配層にとって、国内のことはある程度それでなんとかなろうし、実際前首相とあの小憎らしい幹事長を追い落とすことが出来たのもそのお陰じゃが、これからの時代、諸外国に対してはそれだけではとても心許ないと。ここは相手に習ってこちらもそれ相応のことをしなければ、ということで、そうしたら会長、貴君に話してみるとよいと、複数の我が方の議員達から進言を受けたという次第じゃ」
元上司である山浦隆二参議院議員、そして古くからのエスタブリッシュメント倶楽部の会員である榎本誠一郎という元議員からと、相次いで幹事長が行くから宜しくと電話がかかってきていた。
「うちに、女性エージェントを育成しろ、または紹介しろと、こういうことでしょうか」
リサが言いながら、再び脚を組み替えたが、今度は男の目がそちらを向くことはなく、隼人の目を見たまま、うんうんと頷いて見せた。
一
二〇一〇年八月
エスタブリッシュメントホテル歯科診療予備室
「乳、出してお見せしろ」
命令には、即座に身体が反応するようになっていた。
右肩の後ろ側にあるボタンをひとつ外すと、後はマジックテープになっている。ベリベリと音をたてて、女医である最後の誇りを示す薄ピンク色の「白衣」の前を開けると、ノーブラのふたつの乳房がエアコンで冷やされた空気に直接触れた。
衆議院議員の
榎本
誠
が今回初めて連れて来た、まだ二二十代前半ほどに見える女秘書が、無遠慮にまるで品定めでもするように紗友里の乳房を見つめる。
「うわーーっ思ったより全然太い、それに重そう…。こんなピアス初めて見ました」
女は自らが仕える政治家にとも、その横で女医に「乳出し」を命じた院長の向井遼平にともなく言った。
「手」
向井がまた命じる。
紗友里は慌てて、両手を頭の後ろに持って行って組んだ。
いつまでたっても、この屈辱的な姿勢を自ら取るということがなかなか出来ない。ましてや初対面の自分より若い女の前だ。
「先週、交換したばかりなんだ。まだ特殊溶接した時に火花で火傷したところが治ってない」
四年前に付けられた、乳首ごと切り落とさない限り外れないと言われたものをメーカーが送ってきた特殊器具で切断して、今度は直径八ミリと径はたった一ミリ太くなっただけだが、あきらかに重さの違う金属リングを通され、「今度こそは絶対に外せない。乳首ごとかオッパイごと切り落とさないとね」
と宣告されていた。
手を吊られ、泣き叫んでも許される筈もないと、この四年間で心底理解しているにも関わらず、絶叫を止めることの出来ぬ中、ピアスの穴を一ミリ分大きくするために、錐のような極太の針を通された挙句、血みどろの乳首にリングを通され、「溶接」された。
左乳が終わって、続いてまた古いピアスの切断から「溶接」までを右の乳首にてもう一度同じコースを味合わされる。
十人ほどの常連客が見物人として呼ばれていたが、そのほとんどは自分が院長だった頃からの「患者」で、今目の前にいる榎本代議士もそのひとりだった。
「ぎゃっ」
思わず声が出てしまう。
秘書の娘が、向井に渡された消毒液を無造作に紗友里の左の乳首の火傷の傷に垂らしたからだった。
「それにしてもこれじゃあ乳首も伸びちゃうし、それよりなによりおっぱい垂れちゃわないんでしょうか」
付け替え前までの、四年間のうちにもうほとんど意識しなくてもよくなった、金属といっても相当質量の少ない、つまり軽い素材だったピアスに比べ、新たにつけられたものは「十倍近い重さ」がある。
実際その重さで乳首がいつも下方に引っ張られていて、紗友里はそれを常に意識せざるを得ない状態だ。
仰向けになって寝ていると、乳房の上に丸いリングの痕がつくほどで、実際手足をベッドに拘束されて眠ることが多い紗友里にとっては、その重みが今度は自分の乳房の上に乗ってくるのだから、変な夢を見たりして眠りも浅くなっている。
「お嬢さん、いいご質問だ。その通り、この女が自慢だったオッパイはこれから日を追うごとに無惨に垂れてもいくだろうね」
向井の言うとおり、紗友里にとって自分のふたつの乳房は、自らの身体の中でもこれまでもっとも自信のある場所だったし、その美しいバストを何人もの男に賞賛されてきていた。いやオトコばかりではない。同性である女性からも羨ましがられてきたのだ。
だが
現在
、その自慢の乳房は、太くて重たいリングによって強制的にその形を崩されようとしている。
「ところがねお嬢さん、こいつはもう女としてのいや人としての尊厳など必要のないことなのだ。つまり…」
向井はそう言いつつ、紗友里の方を向いて
顎
をしゃくった。
「ああぁ」
思わず嘆きの声が口をついて出てしまう。
だが、命令には即座に従わなければ、どんな目に合うかは嫌というほどわかっていた。
紗友里は、ピンクの白衣を脱いで全裸になると、膝を折り、裸の上体を倒して掌を床につけて四つん這いの姿勢になる。
「あらまあ」
女が、四つん這いになった紗友里の胸元にしゃがみこんで覗き込む。
「本当に牛さんのおっぱいみたいになるのねぇ」
乳房が下を向くことで、大きなリングに引っ張られて乳房全体が床に向かって重たく揺れる。あまりに惨めな自分が情けないが、今、紗友里がもっとも恐れているのは、紗友里の所有者になって四年、徹底的に肉体も精神も蹂躙してきたこの向井という男が、何かの拍子に怒りの感情を持ち、あの忌わしいスイッチに触れることだった。
このピアス交換の後、まだ一度も向井は紗友里にそれをしてはいなかった。
実際はそのようなことはないのではとも思うが、そのリングが重たく存在感を増したことで、流される電気ショックも過大になっているのではないのかという恐怖が紗友里を不安にさせていた。
「これ、電気流れるんですよね。彼女が逃げ出せないようにと聞きましたけど」
女は、遠慮するいうこともなく紗友里の乳首を
摘
み、恐る恐るではあるがリングにも触れてきた。
四つん這いの時でも顔は真っ直ぐ前を向き、決して俯いてはいけないという課せられたルールの通りにしているため、目の端にしか女の動きを捉えることができないが、どうかリングを引っ張ったりしないで欲しいと心のなかで願うしかない。
ただこうしているだけでも乳房全体が引っ張られて痛いのだ。この上リングに指をかけられたりしては、この体勢を維持できず崩れ落ちてしまうかもしれない。そうしたら、それを口実にまた少なくとも鞭で打たれることは確実だろう。
マゾを自覚し、その経験をして以来、決して鞭で責められることが嫌いだったわけではない。
ただ、それはある種の錯覚だったと、本当の意味での囚われの身になって気がついた。
自由があってこそ、苦痛を悦びに変えるということが出来るのだ。その自由を完全に失った今、与えられる苦痛は文字通りの苦痛でしかなく、甘美に思えていた鞭も今は、自分の精神を拘束し自分の行動と行為を躾けられてしまうための道具でしかなかった。
それでも鞭の仕置で済めばまだいい。
このリングの効果を試されるかもしれないのだ。
感電させられるときの衝撃もパワーアップしているに違いないと思うと本当に怖くて仕方がなかった。もしも電流を「強」で流された場合、今度は失神する程度ではすまないのではないか。向井の持っているリモートコントローラーには、「弱」「中」「強」の三段階のスイッチがあるが、これまでのリングでかつ「弱」であれ、一度でもそれを経験すれば、どんな女でも反抗心など微塵もなくしてしまうであろうという強烈なものだ。いやそれは女だからというわけではない。男だっておんなじことだろう。
「強」の電流で失神したことも、これまで数えきれないほどある。
しかも電気は乳首だけに流れてくるのではないのだ。
「その通り。このビルのセキュリティゾーンつまりは関係者以外立ち入り禁止という場所とそうでない場所の出入口にあたる場所には、残らずそこを通ろうとするとこの女が乳とクリトリスにつけているピアスに電流を流す仕掛けがしてある。それも、私が持っているこのコントローラーで流せる電流で、今まで彼女が経験したものよりも、さらに一段階強い電気だと言われていて一撃で失神させるパワーだと。まあ言われているだけでね。紗友里は怖がってそこを通る、つまりは脱走してみるなんてことをしてみてくれんものだから、それが本当かどうかはわからんのだよ」
向井はいかにも楽しそうに説明をする。
「ふーん」
女は言って、少し怖くなったのか紗友里の乳房から手を遠ざけた。
「もちろん脱走防止の効果だけではなく、彼女が忠実に副院長としての職務をこなし、さらに最下等奴隷としての激務に励んでくれるのもこれのお陰というわけだ」
「逃げ出したりしなくても、お仕置きにも使われちゃうんですね。こんな綺麗な女性が、最下等奴隷なんて言われちゃうなんて。肩書は副院長って立派なものなのに」
四年前。
紗友里はこの出来たばかりの歯科医院の最初の院長として迎えられた。
高級ホテルの二階に入口があり、診療室も同じフロアーにあったが、それは一般客向けのいわばカムフラージュ用とも言うべきもので、本来の「客」である「会員」向けの診療室は院長室の中にある隠しエレベーターで四十三階の特別室に上がった場所にあった。といってもこのエレベーターで行き来をしているのは、院長と建前は副院長という肩書になっている紗友里、そして歯科技工士、歯科衛生士の何人かの若い女の子たちだけで、エスタブリッシュメント倶楽部会員の「客」たちは、直接会員フロアでもあるホテル四十三階の、一見普通の客室のように見えるドアを開けてやってくる。
この階は、一般客にも開放している客室も存在しているため、外側の廊下からはただの客室と一見、見分けがつかないように出来ていた。
向井は、前職が帝都国立歯科大学の教授で、附属病院でもそれ相応の立場にあり、歯科医としての腕にも当時から定評があった。
正直その点においても紗友里の全く敵う相手ではなかった。
ただ、彼がここへやってきた、いや招かれた理由は、腕がいいからなどという生易しい理由だけではないのであろうと紗友里は思ってもいた。
そして実際、紗友里の立場は一転した。
この組織が秘密だらけであることは事実だったし、その一端を知ってしまったのも確かではあったが、よもやたった数ヶ月で院長の座を明け渡すと同時に、このように籠の中の鳥になってしまうなどとは想像だにしていなかった。
乳首とクリトリスに同時に流される電気は、紗友里の自由も未来も全て奪ってしまったのだ。
院長から副院長へ降格するなど、紗友里のプライドからすれば、あり得ないことだったが、ピアッシングを施されて直後に思い知らされた電流の衝撃が、そんなプライドまでも木っ端微塵にしてしまった。
「今、電気流したりしないから心配いらんよ」
向井の言葉に、女がまた無遠慮に二つの手を乳房へと伸ばしてくる。
「大きくて重くて、それが下にずっしりと引っ張られて、ほんとに牛のおっぱいみたいで牛乳搾れちゃいそう」
自分より一回りは若いであろう女に
蔑
まされる屈辱にもただじっと耐えるしかない。
そもそもこの四年間で、乳房はワンサイズ大きくなっていた。
いやもっとかもしれない。ブラジャーをつけなくなって長い時間が経ち、実感が湧かないのだ。だが確実にその重さは増している。
「うっ…」
思わず声が漏れる。
女が言葉の通り、搾
るように乳房に力を込めて揉み込んできたからだ。
「や、やめ…て」
直後に案の定ふたつのリングに指を引っ掛けて強く引っ張られる。
苦痛に上半身が揺れ、太腿がわなわなと震えた。
「毎日、性欲亢進剤
と女性ホルモンを欠かさず投与してますからね。乳は大きくなるし、スケベさもどんどん増してる。手術の結果も悪くない」
向井の言葉に、榎本代議士が秘書の女に命じる。
「ほら
遙香
、今日はおっぱい揉みに来たわけじゃなかろう。まずはお前が指入れさせて貰って確認してみろ」
「あ、はーい」
そう言われてようやく女がリングから手を離した。
しゃがみこんでいた女が一度立ち上がって、四つん這いの紗友里の尻の方へと位置を変える。
「しかし先生、歯医者さんがそんなとこまで手術しちゃってええんですかいの」
榎本代議士の声は多分に笑いを含んでいて、咎
め立てしているような気配は
微塵
もない。
「ここはねえ、なんとも凄いところですよ榎本先生。俺よりも若い、あんなのが総帥だ会長だなどというところは大いに気に入らんが、このホテル全体は兎も角として、上層階については、その設備もセキュリティも外国の公館並みというのか…そしてなんといっても何が大使館かって、ここは事実上の治外法権だ」
「日本の警察権もここには及ばぬと…まあ確かに…」
「国内にそんなところ、外国公館を除けば、そういくつもはありませんよ。しかもここは首都東京の新宿のど真ん中だ」
「そうですな。長く会員で居ると、ここはこんなものみたいに麻痺してるとこがありますが、まあ確かに押さえるところは押さえ切ってしまってて、誰もここに手をつけようとは思わんでしょうしなあ」
紗友里も、そして紗友里よりも半年遅くここに関わった向井も、四年から五年という間のことしか知らないわけだが、榎本はそれよりかなり以前から会員としてエスタブリッシュメント倶楽部に出入りしていたと聞いている。
治外法権。
その言葉は紗友里にさらなる絶望感をもたらす。
ここから逃げたす
術
は全くないと既に悟ってはいるが、それを外部の人間に太鼓判を押されたようなものだ。
この男とて、ここの会員であるとはいえ、国の最高権力機関である国会の、そして国民から選ばれた国会議員なのだから。
「あらあら」
紗友里の尻の後ろに回った女が、驚いたような呆れたような声をあげた。
「どうした」
聞き返したのは、代議士の方だ。
「女って、ただ四つん這いになっただけで、こんなにお尻の穴が丸見えになっちゃうものなんでしょうか」
紗友里は特に尻を突き出したりしているつもりはないのだが、どうしても胸元が重くて上半身が低くなってしまうので、多少は尻が上向きになっているとは思う。だがそんなにそこが見えてしまっているのだろうかと、同性にそこをじっくり見られることの恥ずかしさが妖しい感覚となって紗友里を襲う。
「乳は大きくなったが、元々尻の小さい女で、そっちは全然変わらんどころかむしろ身体全体は痩せたのでな。どれどれそんなに見えるんだったっけか」
向井が言って、向井とそして榎本までもが立ち上がって紗友里の後ろに回る。
「ああ、確かにここまで肛門が丸晒しになる女は珍しいかもしれませんな」
榎本が感心したように言った。
「あらあら、ヒクヒクさせちゃって」
言われて、ついそこに力が入ってしまっていたことに気が付く。
「普通は、そうじゃないからこそ、四つん這いにさせられても、肩付いて、尻を高く上げて、さらに手で拡げて尻の穴を見せるポーズを取らされるわけだろう、マゾ女はみんな。違うかね」
「は…はい」
秘書が向井に答える。
「藤森君といったかな。そうは言っても藤森君は特にマゾというわけではなかったかな」
「えっ」
「わっはっは。向井教授には
敵
いませんな。ただいま教育中ってところですわ。今回もその教育の一環というわけでしてな」
「いいですなあ、代議士先生ともなると。こんなに若くて綺麗なお嬢さんを秘書として雇った上に、女としても思いのままということですか」
「わっはっは。その上給料はお国持ちですぞ」
ふたりの男はさも
可笑
しいとばかりに豪快に笑う。
「じゃあ、触らせていただいていいですか」
教育の一環の割には、無遠慮に女はいきなり指を二本差し込んできた。
「どうですかな、お嬢さん」
向井が訊く。
「えっ」
女は絶句しているのか、次の言葉が出てこなかった。
「儂の友人にな、先だって貰った新しいワイフが十万人にひとりとやらの名器だそうでな。まず十回コスれる男は居ないんだそうだが、ずいぶんとご自慢だ。それを人工で作ってしまえるというのは、どうやら事実のようかね、遙香君」
「す、すごい。凄いです。指ですらこんなにきもちいいだなんて」
「秘書さんの前ですが、それでもよかったら代議士ちょっと自慢のものでお試しいただいても一向に構いませんよ」
「そ、そうか。紗友里先生とはずいぶんと前に一度したことはあるでな。まだ院長先生の肩書だった頃じゃが。その時とどのくらい違う穴になっているか、試させて貰うならばそれが一番かのう」
向井がはじめから榎本に紗友里とさせるつもりだったことは明らかで、秘書の手前なのか、それともそれが段取りとでも思っているのか、いずれにしても紗友里はこの場で榎本に「試され」ることになった。
紗友里は、先週乳首電流ピアスの付け替えの翌日、今度は性器内に細工を施されていた。
ヒアルロン酸を膣内の特定の場所に注射するというもので、向井の友人の婦人科医が開発したものらしく、これでいわゆる名器と呼ばれる三要素の「数の子天井」「蛸壺」「キンチャク」のどれでも人工的に作れてしまうのだという。
普段から歯科医院には似つかわしくない、性器検査台に上げられ、その婦人科医が横で見守る中、無造作に性器を膣鏡で拡げ、「本当に麻酔なしでやるのか」
と驚愕する婦人科医の目の前で、注射器で全部で三回、三箇所にヒアルロン酸を打たれたのだった。
「あ、あーーーん」
女秘書が指を抜く間際に、中をグリグリとかき回したがために、否が応でも身体が反応してしまう。
この四年間、投与され続けている「性欲亢進剤」と向井が呼んでいる注射のせいなのか、快楽には極端に貪欲になった紗友里の身体だった。
電流の恐怖、鞭や針責めなど日常の折檻が紗友里を支配しているのは事実だが、快楽を与えられたり取り上げられたりということでも向井に徹底的にコントロールされているのだ。
「いや、や…やめ…てください…え…」
裏腹な言葉が口をついて出てしまったが、女はそこで本当に指を抜いてしまう。
つい紗友里は後方を振り向いてしまい、それが榎本に場所を譲るためだとすぐに悟った。
女はその手ですぐ横に来た榎本のズボンのベルトを外し、トランクスごと膝まで下ろすと、何のためらいもなく既に半勃起している男根を口に含んだ。
全裸にされている自分のすぐ側で、カチッとしたスーツを着た女がフェラチオをしているというのも男たちにはなんともいえぬエロティックに満ちた光景なのだろう。そんなことを心のどこか冷めた部分でみつめている自分と、あっという間に大きさも硬度も最大限になった男根につい見とれている自分が鬩ぎ合うが、昔と違って冷静な自分はすぐに影を潜め、淫乱な女がそこに残る。
その瞬間だった。
「うっぎゃっ」
クリトリスに、何の前触れもなく衝撃が来た。
電気を流されたのだった。
命令されない限りは、四つん這いになったらまっすぐ前を向いて顔をあげていろ、という義務を守っていないのだから、ある意味それは当然だろう。
「ご、ゴメンナサイ。堪忍してください」
即座に謝罪の言葉が口をついて出てくるようにもなっていた。
だが、すぐに気がつく。
ビリッときたのは、性器だけだったことに。
これまで電気を流される時は必ず乳首とクリトリスが同時だったのに、今のはクリトリスだけで乳首のピアスには何の反応もなかったのだ。
乳首のピアス交換以来、初めての電気だった。
ひょっとすると、交換後の乳首のピアスは電気が流れないものなのか。
いや敢えてわざわざそうする必要などないのだから、もしかしたら不良品で、本来流れるべき電気がうまく作動していないのかもしれない。
だとするとそれを向井に悟られぬ方が良いのではないか。
紗友里は必死に考えていた。
「う、うっっ」
再び、一瞬だがやはりクリトリスだけに電流がきた。
激痛だが、一瞬ならば耐えられぬほどではない。もっとも敏感な部分だが、顔に近い乳首に流されるよりはあきらかにマシなのだった。これまでは常に二つの乳首と性器に同時に電気が走ったのだから。
「お、お許しください…」
だが、平気だのマシだのというのが表情や身体の反応に出てはいけない。
「ど…どうぞ、榎本先生、紗友里の改造おまんこお試し下さい」
言うと、急激に本当に欲しくなってしまう。もっと痛がらなきゃ、苦しんで見せなくてはという思いが、あっという間に遠ざかってしまった。
女のフェラチオは激しさを増し、ジュポジュポという音が後ろから聞こえてくる。
「よしっ」
と榎本が言うまで、さらに五分以上は待たされた気がする。そのまま射精してしまって、入れていただけるという思いだけ抱かされて、意地悪にもお預けを食うのではないかと、本気で心配に思ってしまったほど、女が口で立てている音は大きく激しかった。
「尻、もっと突き出せ」
命じたのは向井だった。
「は、はいっ」
命令には即座に返事、これも向井に強く言われていることだ。もちろん怠れば罰が待っているし、即座に電流ということも過去に何度もある。
先ほど、肛門が丸見えと言われたことでつい腰が引けていたかもしれない。慌ててお尻をさらに突き出した。もとよりそこに入れて欲しくて欲しくてたまらないのだ。
性器手術を受けて以来、向井以外の男を迎えるのは初めてだ。
「お…おっきい…大きいおちんぽ様…ありがとうこざいます」
メリッという音が聞こえたのではと錯覚するほど、キツキツにされている襞を分け入って、巨根が根本まで挿入されてくる。榎本代議士の男根は向井のものよりもひとサイズ大きいのだ。
「おまんこ接待」の場合は必ず言うように躾けられている言葉が、実際に感情移入されて口に出来る。
「おーーーっ。これは…」
奥のほうまで突き込んだままで、全然動いてくれぬ榎本につい自分の方で腰を動かしてしまいそうになる。
「ちょ…ちょっと待て」
あっ、と思った瞬間に榎本は紗友里の膣奥にドクドクと射精していた。
「榎本先生、出さんでくださいね。この女、今日は結構危険日だ」
素知らぬ顔で向井が言う。
「え。も、もっと、もっとして下さい。もっとおちんぽ様で紗友里のおまんこ愉しまれて下さい」
急激にその力を失っていく男根を逃すまいとするが、それは逆効果で、手術によって改造された自分の性器は、むしろその動きによって力のないものは外へと押し出してしまうということを、この時紗友里は初めて知った。
「あぁぁぁ、抜かないでぇ」
本心から嘆きの声が出てしまう紗友里だった。
「遙香のフェラに紗友里先生のおまんこのタッグの勝利ね」
女秘書が
嘯
く。
「いやあ。もっとしてぇ。おまんこ、オマンコしてください、もっと」
紗友里がお尻を震わせて言うのを見て、女秘書が大声で笑った。
二
二〇一〇年九月
三田村隼人私邸
「どノーマルと言ってもいいくらい普通でしたわ。まあやたらと色々なところを舐めたがるので、あのお顔じゃありませんか、少々気持ち悪いという気もいたしましたけど、でも挿入の時は自らゴムもおつけになられましたし、特に大きくも小さくもなく、興奮なさっていたのか数分と持たずに発射されてしまわれました」
女優の
望月
彩乃
が、隼人の男根に舌をからめながら、そう報告する。
背中では、あの会談の時も同席していた牧野リサが、ゆるゆると円を描くようにローションまみれにした裸の双の乳房を押し付けている。尖った乳首をその動作によって豊かな乳房の中に僅かに埋もれさせ、乳房全体を背中で押しつぶすようにしてくるかと思えば、少し離れてふたつの乳首の先端だけで背中を擽るようにしてくる。
それがなんとも心地よかった。
女優の方ももちろん全裸である。
今年の一月で四十歳になったという彩乃は、五年前にSM大河映画への主演という衝撃的な復帰以来、テレビドラマなどへの出演は全て断り、大作映画だけに、それも一部の友情出演を除いては年に一本か二本の主演だけをこなし、今や押しも押されぬ大女優の道を歩いていた。
しゃがみこんで男根奉仕をする彩乃のすぐ後ろには、やはり女優で若い頃からはひと皮もふた皮も剥けて、名女優という域に入ってきていると世間では賞賛されているらしい葵依という女が、天井高くからの滑車に両足首をまとめて逆さに吊られ、マネージャーで葵依の実の弟でもある川越そらに、鞭をその背中やら乳房やらに容赦なく浴びせられていた。
赤い色の一本鞭が
空
を切り裂き、女優の体を激しく打ち据える音が、浴室全体に反響する。
鞭が当たる度にGカップあるという乳房が
撓
むのが、隼人の目に刺激を与えてくれる。
天井の高さは三メートル近くあり、実の弟の鞭に打たれている葵依の両手は、括られることもなく、かといって床につけて自分の体重を支えることが出来るでもない状態で、鞭が身体を一閃する度に、上半身の揺れとともに、宙をつかむような動きをして苦痛に耐えていた。
弁護士の君塚の助言もあり、収監されていた刑務所の獄中で謎の自殺を遂げた、広域暴力団筆頭若頭だった梅田敏雄の秘密の私邸を買い取ったのは一昨年のことだった。
無類のソープランド好きだったらしい、前家主の梅田敏雄自慢の浴室に、自動巻き上げ装置の付いた天井からの滑車を取り付けることを業者に指示したのは、リサだった。
無論、裸の女を吊り、ここで
寛
ぐ会長にこういったショーを見せるためにだった。
元はソープマットを三つ並べて敷けるようにしてあった広い空間のほぼど真ん中に、臭気防止のための天井までの仕切りの役割をしている透明なアクリルの円筒を設けており、女は全てこの中に入って用を足さねばならないというルールになっている。
人が一人入れるだけの細い筒の中は、まわりの床より一段高くなっており、和式の便器を含めその全てが透明で何もかもが円筒の外の見学者に丸見えな「奴隷用トイレ」だ。事実、女が和式トイレで排泄するポーズそのものに、いやそれよりはさらに脚を開いた状態になってしまうのだが、足首と膝を固定する枷もついており、しゃがんだ状態で手首も万歳の形に固定することも出来る。
やはりリサが、ソープマット三つ分というあまりに広いスペースが勿体無いと、提案して設置させたものだ。
ただし、これが完成した際、そこで浣腸排便を見せるこけら落しの役割を会長の見ている前で命じられたのは、ほかならぬそのリサで、自分自身が指示したこの円筒型という形状が、透明で外から同じように丸見えであっても、何故か四角いスペースよりもさらに羞恥を感じることを自らの身をもって確認している。
また、この場所では隼人の元妻である美樹が、二十代の頃に今隼人が座っているのと同じような、女が身体をその下に入れて、座っている男の玉や尻の穴を舐めることが出来る「くぐり椅子」と呼ばれる椅子に、実際に入って梅田に奉仕していたこともある、とリサが教えてくれた。
リサも、実際にそれを見たというわけではなく、葵依たち姉弟の母親にあたる女からそれを聞いたらしいのだが、そういった意味でも隼人にとっては、ここもそれなりに因縁のある場所で、それもこの大邸宅を購入する決断をした理由のひとつだった。
「会長、いいですわねー。人気女優さんが逆さ吊りで鞭打たれるところを見物しながら、別の大女優さんのご奉仕を受けるなんて」
「確かにそうだ。加えて背中では美人秘書様のおっぱい洗いときてるからな」
「うふふふ。それにしてもハニートラップの仕掛けを頼みに来た方が、いくら有名女優さんのご接待とはいえ、簡単に不適切な関係に陥ってはいけませんわねぇ」
リサの言葉に、股間で隼人の男根を思い切り喉まで入れて口内で舌を使うという技を続けていた彩乃も、一度先端まで口唇を戻して隼人を上目遣いで見ると、おかしそうに目を細めて笑った。
先日隼人を訪ねてきた、国民自由党の幹事長は、頼み事を終えて帰ろうとするところを引き止められ、「折角、我がホテルを訪ねて下さったのですから、自慢の会員制ラウンジでお酒でも飲んで行ってくださいませ。ひとり素晴らしいホスト役…といいましても美女ですよ、おつけいたしますから」
と、リサに言われ、その後に予定していた会合かなにかをキャンセルして、その通りにしていった。
なぜなら、ホスト役として呼ばれて会長室に迎えに来たのが、ヌードも辞さぬ様々な役で、日本の映画会で今ヒット作ならこの女優ともてはやされている大女優だったのだから、心動かされたのも無理もない。特に、支配層の側を強調していた幹事長にしてみれば、それに伴う特権という思いもあったであろう。
ラウンジで新宿の
眩
い夜景を眺めつつ軽い食事とお酒を楽しんで貰った後は、女優望月彩乃の熟れた美しい肉体も心ゆくまで楽しんでお帰りになられたというわけだ。
彩乃は若い頃からずっとホテルの中に自分の部屋を持っていた。一時、時の内閣の中枢に居た官僚と結婚していたと聞くが、二十代の頃に彩乃に与えられた部屋はそのままだった。芸能マスコミにどのような説明をしているのかまでは隼人も知らなかったが、今はまたその部屋を生活の拠点にして使っているようだ。
しかし、今回の幹事長接待では、ホテルの一般客室を利用したらしい。
最上階の豪華ラウンジは、会員制とはなっているが、通常は会員の同伴があればそれ以外の人間も来店が可能なシステムだが、他の会員用の特別階は余程のことがない限り、一般客はそこに足を踏み入れることは出来ない。
次の選挙があれば再び国の中枢に座る可能性がある人物とはいえ、事前調査でも特にSMなどの嗜好はないと判断されていた男に、彩乃の自室を使用するのは余計な詮索を生むたけだと判断したのであろう。
「それにしても、日本人の気質といいましょうか。それとも殿方達の可愛らしいところと言った方がいいのか。何れにしても何故こんなに簡単に、コロリと騙されてしまうものなのでしょうか」
隼人の背中で円を描くようにしていたリサの二つの豊かな乳房は、今は八の字を描くような動きになっている。
バシーーン。
逆さに吊られたもうひとりの女優に、容赦のない一本鞭がまた炸裂した。
その都度、一本ずつ白い身体に赤い鞭痕が無惨についていく。
彩乃のフェラチオは、手をそれぞれ隼人の腿に置いて、ほとんど真上から垂直に喉奥まで男根を飲み込んでは、吐き出すギリギリまで上がってくるという、高速でハードな出し入れをしながら、口内では絶えず舌を縦横無尽に動かすという、超プロ級といってもよいものだった。
手を全く使わず、口唇、舌、喉を総動員するここまでのフェラチオが出来る女は、それぞれが徹底的に訓練されているとはいえ、エスタブリッシュメント倶楽部の女達にもそうは居ないだろう。
「三人とも、四十には見えないしな」
最大限の褒め言葉のつもりで、隼人がつぶやく。
「あら、会長失礼ですわ。私はまだ三十八。彩乃さんだって…」
後ろのリサが途端に背中から押し付けていた乳房を離して抗議をすると、リサの言葉に反応する代わりに彩乃は突然さらにフェラチオのピッチを速めるとともに、右手を参戦させてきた。
男根の幹を数度ひねりを加えて
扱
いたかと思うと、玉を撫で人差し指で尻穴を
弄
ってくる。
グラインドする首の動きにもひねりが加わり、隼人は一気に追い込まれて射精の快感に身を任せてしまおうという気持ちになる。
よしっ、と思った瞬間、彩乃はピタリと動きを止め、膝の上の左手に口の動きをバトンタッチした。
「うううぅっ」
寸止めにされるかと思ったのは一瞬のことで、左手で亀頭を扱かれて、次の瞬間精液が勢い良く空中に噴出する。
「会長、罰ですよ」
それと同時に、彩乃は右手の指をあろうことか尻穴に突き込んできたのだった。
三田村コンツェルンの総帥である会長という立場になって以来の隼人に、そんなことをやってのけたのは彩乃が初めてだった。
射精が二撃、三撃と続く。
「あららら、もったいない」
リサが笑いを含んだ声で言う。
精液は彩乃の豊かな乳房や、太ももへと降り注いだ。
「確かに四十になりましたけどね、つい最近わたし。でもそれは言わぬのがお約束ですわ会長」
言いながらも彩乃はまだ左手の動きを止めないし、右手の指先もそのままだった。
「わかったわかった。せっかく彩乃君の
凄技
フェラで
口
出
ししようと思ってたのに、ひどいやつだ」
「あら、会長こんな熟れ熟れの女、三人も集めて、一回で終わらせて貰えると思ったら大間違いですよ」
彩乃も笑いながら言う。
バチーン。
こちらでのそんな会話など関係なく、逆さ吊りの葵依には鞭打ちが続けられる。
「か、会長も、もうお許し下さい。わ、私もご奉仕に参加させてください」
葵依が言う。
「ほら四十二歳も参加したいそうですわ。平均するとやっぱりちょうど四十歳ですわね、わたくし達」
再び乳房を押し付けながら、リサが笑う。
「しかし、最初はスパイそのものを育てろという話かと思ってびっくりしたな」
九月とはいえ、昼間はまだかなりの残暑で、夜になってそよそよと風が舞い、ようやくテラスもしのぎやすい気温になる。
隼人とリサ、そして彩乃はバスローブをそれぞれ着て、スパークリングワインの細いグラスをカチリと重ね、軽い乾杯をした。
先ほどまで居た巨大な浴室に隣接したテラスにはコの字の形にソファが置かれている。その一番大きいソファに隼人を中心に、右にリサ左に彩乃が並んで座り、グラスの淡い金色の液体を三人とも一度に飲み干した。
一仕事を終えた一杯という感じだ。
コの字の短い一方に全裸のそらが座り、姉の葵依の口奉仕を受けていた。
彩乃とリサがじゃんけんをして、勝ったリサがこの後そらの男根に跨ることになっていて、その準備段階を姉の葵依がしているというわけだ。
「まあ、うちにそんなノウハウがあるとは、国民自由党のお偉いさん方だって思ってやしませんわね」
リサが答える。
彩乃は意味深な笑みを浮かべている。
「なんだ牧野の言い方だと、まるでそんなノウハウがうちにあるかのようだな」
リサが緑色のボトルを手に、隼人、彩乃のグラスに金色の液体を再び注ぐ。
「あら、会長。天下の三田村コンツェルンですわよ。ないとは限らないじゃありませんか」
自分のグラスにも継ぎ足しながらリサがこちらを見ずに言った。
「まあ、どんなスパイが来週やってくるのか、見ものだな。実に楽しみだ」
リサの言葉に敢えて反応せず、隼人が答える。
国民自由党の幹事長が持って来たのは、すでにスパイとしての教育が終わった女たちの性技をきっちり磨いて欲しいという話で、つまりは男をだまして特別な関係に持ち込むための訓練は出来ていても、それが「ハニートラップ」である以上は、その性的なテクニックでも相手を魅了出来なければトラップとしては不完全であるというのが、その要請の理由だった。
「会長のところには、SMとやらのエキスパートも揃っておられるとか。ある程度預ける女達にも過酷な責め、いや拷問というのかね、して貰って、それも訓練の一環と我々は考えておるのです」
万が一、敵方の手に落ちた場合も簡単には陥落しないよう訓練してくれということだ。
幹事長が自分たちの組織について、どの程度の情報を持っているのかは測りかねたものの、提示された報酬を含め、話としては悪くなかった。
「そら君、リサ様を少なくとも百コスリは愉しませなくちゃダメよ」
先ほどまで、自分を鞭責めにかけていた相手に言っているとは思えぬほど、高飛車な口調で葵依が弟に言いつつ「どうぞ」とリサを手招きした。
リサは、椅子に浅く腰掛けているそらの前まで行くと、「もう少し斜めになって、みんなの方を向いてくれる」
とそらに命じる。
言われたとおりそらが身体を少しよじると同時に、リサはこちら向きに回れ右をして、肩まである長い髪をかきあげつつ、腰を落とし、隆々と勃起したものを艶やかな陰毛の下のピンク色の割れ目に飲み込んでいく。
「やらしいわ。こんなにやらしいおまんこしてるのねリサさんて」
彩乃がはやすが、リサは気にするふうもなく欲情した目でひたすら隼人の顔を見つめたまま、腰を上下し始める。
「ああ、気持ちいいっ。そら君、逞
しいわね。絶対にまだまだ逝っちゃ駄目よ」
リサは言いながら、そらのふたつの手を取り乳房を揉ませる。
前会長の最も側近の女として
寵愛
を受けていたリサとは、その当時に一回だけ比較的ノーマルなセックスをしているが、MでもありSっぽい言動をさせても似合う、これほどいい女だったとは、正直自分の身近に置いてみるまでわかっていなかった。
なんといっても、賢い。
そして歳相応、いやそれ以上に淫乱でもある。
秘書としての役割も完璧にこなすどころか、至れり尽くせりだ。
「それじゃ私達も、じゃんけんしようか。おっきくするのはふたりで協力するけど、オマンコしていただけるのは勝った方だけ。負けた方はそのままタマ舐め奉仕ね」
彩乃が葵依に言う。
今夜の二度目はリサにしてやろうと思っていた隼人だったが、女達は勝手に決めている。
普段から何事も自分の思いのままに決断し実行を命令している立場の隼人にとって、それはそれで気楽でいいという気がしていた。
そういうお膳立ても、「平均四十歳」のこの女優ふたりと最優秀秘書なればこそでもあった。
「もう、無理無理無理」
リサの激しい腰使いに、そらが叫ぶと
「そら君、我慢しないと本気でお仕置きだよ」
先ほどまで逆に自分が「お仕置き」されていた姉がりんとした声でそちらを向いてきつい口調で言い、振り向きざま「じゃーんけん」
と、彩乃に勝負を仕掛ける。
気合勝ちだろうか、あっさりと権利を手にしたのは葵依だった。
このマゾヒストの女優とはまだ一度もしていなかったな、と隼人は苦笑する。
「会長、わたしが結婚していたことご存知ですわね」
負けた彩乃が、椅子から降りて葵依とふたりで隼人の前に膝をつきながら突然言った。
「ん…。ああ」
「いわゆる政略結婚だったんですよ、エスタブリッシュメント倶楽部のための」
おいおい、そんな重大な話を今から奉仕をはじめようというところで言うのかい、と思ったが隼人は黙っていた。
「いくぅ、あーん、お潮出ちゃうぅ」
言いながらリサが一度半立ちになって、そらの男根から離れる。
同時に液体が弧を描いた。
「あ」
いきなり宙に放たれたそらの男根も同時に一撃、二撃と精液を噴き上げていた。
喋
りかけていた彩乃と葵依もそちらを振り向く。
「あーあっ」
葵依がなんとも言えない自分の弟に向けてあきれたような声を出す。
「まだしてもらうわよ。出したからって許してもらえると思ったら大間違い。無駄に射精した罰として、私にも彩乃さんにもあと二回ずつおまんこ出しさせるからね」
リサはそう言うと、お構いなしにまだ勃起を維持しているものに再び腰を落として飲み込んでいく。
そして、ゆっくりと腰の上下をはじめながら、「そういう意味では、彩乃さんこそがうちが仕掛けた最初のハニートラップだったのかもしれませんね」
と、隼人の方を見て言った。
三
二〇一〇年十月
エスタブリッシュメントホテル会議室
「あのロシア人の女、やはり半端じゃありませんね。軍隊で拷問担当だったというのはダテでもなんでもないし、口癖のように言う拷問で失神した男性のシンボルを切り落としたというのもハッタリでもなんでもないみたいですしね」
首都東京から、東京湾を横断道路で渡りさらに三十分ほど走った、海を見渡せる小高く広い丘に、会員のための保養兼療養施設も兼ねた「医療法人米倉会・三田村病院」がある。
隼人と牧野リサの前でワンピースの背のファスナーを後ろ手に下ろしながら、その「病院」にロシアの寒河江がスカウトしてきた自称「拷問職人」の女について口にしているのは、今はその病院の「精神科病棟」で看護婦長をしている植草加奈だった。
隼人の元へ来て八年。年齢も四十半ばが目の前と、既に熟女の領域だが雰囲気が若く、三二十代前半の牧野リサと較べても遜色がない。
このところ、隼人が理事長ということになっているその三田村病院でのナース服姿ばかり見ているので、ブラウスにスカートという普通の服装が妙に新鮮に見えた。
「で、母親は承知したのか。まあしたってしなくたって、あの親父は娘を女にするんだろうが」
「ええ。エレーナがまず別の入院患者の性器を母親の有香さんの見ている前で、アレを使って血まみれにして電気流して失神させました。私たちですら目を背けるような針ディルドーでかき回して絶叫させてです」
加奈自身も、マゾが集まっているエスタブリッシュメント倶楽部の女達の中でも筋金入りのマゾであるとともに、自身が女を拷問するといったレズビアンのS役も最近は嬉々としてこなすようにもなっているのだが、その加奈が眉をひそめるほどのことをエレーナはするのだろう。
「そして、これで娘の紫織ちゃんの処女膜破ってついでにグリグリかき回すのと、旦那様に優しく女にしてもらうのとどっちがいいか今すぐ決めなさい、と言われたら奥様は一も二もありませんでした」
隼人も以前、今話題になっている娘の居所を吐かせるための母親とその姪の拷問に立ち会った際に、その胴部にトゲトゲの針を出すことの出来る恐ろしい凶器を目にしている。
その娘の処女の性器にそれを突っ込むと脅されれば、夫の巨根の方がマシだと思うのは、むしろ当然なことだろう。
なにしろ、単なる脅しではなく、エレーナならば平然とやるだろうとわかっているのだから。
「そうか。それでその実験台というのか見世物にされた女はどうした」
「整形に見せたら、一ヶ月は使い物にならないだろうとのことでしたわ」
隣でリサが眉を
顰
める。
三田村病院は、精神科と整形外科という少し変わった取り合わせの診療科目を併設した入院施設完備の大きな病院だが、国への届け出はともかくとして、看板もなく、近隣の住民にもそこに病院があると知られてはいなかった。そもそも近隣といっても一定の世帯が住んでいる集落からは孤立した場所にあるためだ。
整形外科の方は、超一流と言われるドクターを招いて、れっきとした文字通りの「治療」や「手術」をするために存在しているが、その患者は倶楽部の会員とその関係者に限られている。
ドクターは週に一回程度しか常駐していないが、リゾートホテル並みの入院施設を完備し、実際に会員はそこをホテル代わりに使うことも可能で、この新宿にあるエスタブリッシュメントホテルのリゾート版といっても過言ではないだけのサービスを提供していた。
したがって病院といっても、レストランもあればバーも有り、外にはプールや温泉をひいたジャグジーもある、しいていえばボーイというものがおらず、ルーム係がナース服を着た看護婦であるのが、唯一の違いである程度である。
ここでの「治療」は、豊胸や性器の改造といった、サディストの男たちを愉しませるための女体改造が主であるのだが、最初の頃こそそれなりに会員たちが自分の女を送り込んで来ていたものの、それも一段落して、今やもっぱら「ホテル」として利用されている方が多かった。
片や、精神科の方は今も入院患者を多数抱えて大盛況である。
病院に大盛況というのも妙な言い方であるが、こちらは逆に本当の意味での精神科の治療などは行っていなかったし、実際に本当に精神的疾患をもっている患者が居るわけでもなかった。
そもそも医者が居ない。
もちろん届け出をしているから、高名な精神科医の名を借りてはいるが、勤務実態があるわけではなく、実際は婦長の加奈と、隼人の妻になった乃里子がほぼ常駐して取り仕切っていた。
つまりは、エスタブリッシュメントホテルの上層階にある会員専用フロアと同じ、しかも病院という舞台装置を用意した会員用プレイルームという役割をなしているのだが、もっとも重要なのは、精神科の病院という名の監禁施設としてのその役割であった。
「まあ、二度と使いものにならないというのよりはマシということだな。男なんて切り落とされたら、それで完全アウトだろうからな」
あのロシア女がそれをしたのは軍隊でのことのようだが、そうじゃなくてもやれと言われたら鋭利な刃物で男根だろうと女の乳首だろうとスパッとあっさり切り落とす、それくらいのことは平然とやりかねないだろうと隼人は女の顔を思い出す。
碧い目の奥に残忍な光を宿した女だった。
監禁施設にプロの女拷問人。悪くない組み合わせであろうし、このところで予想以上に機能もしているようだ。
「で、関東電力会長のお試しの会は無事終わったのか」
「いえいえ。明後日の夜です。元々娘の二十一歳の誕生日に執行というのは予定通りとのことで、しかも色々手こずらせた罰として、奥様も立ち会わせるということで、本人も承知したようです」
「承知…させたのだろうが、どうせあのロシア女を使って」
「うふふ。立ち会うことを承知させろとの五十嵐会長のお達しに対して、立ち会うだけではつまらないからと奥さまが手を添えて娘の破瓜の手伝いをしなさい、とエレーナは命じてそれも最終的には承知させました」
「あははは、満額回答以上というわけか。確かに凄腕の女だな。五十嵐さんもさぞ喜んだだろう」
「それにしても、エレーナはともあれ、ロシア人の若いお嬢様たちは本当に美しくて妬けますわ」
ん、と隼人は鼻白む。
奴隷牧場4 ハニートラップ 第1部分 (1/5)
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![[大洋図書] 605631 性隷たちの記憶 田崎由希](https://bdsmwild.com/wp-content/uploads/2026/08/605631-slave-1.jpg)
