『美男奴隷』(びなんどれい)は梶山季之の長編小説で、光文社の『週刊女性自身』に1968年(昭和43年)から連載された。同じ著者の『男を飼う』があらゆるフェティシズムを横断し、舞台も海外へ広がる大河小説の趣を持つのに対し、本作はSMと女装に主題を絞っている。女性週刊誌に載ったこともあり、女性視点の描写を多用した作品になっている。タイトルの「美男」と「奴隷」が、女装美少年を所有し愛撫する側の欲望を、そのまま表題にしている。
SMと女装に絞った女性誌連載
連載媒体が『週刊女性自身』であることは、読み方を規定する。男の倒錯を男の側から百科のように並べるのではなく、女装した美少年、ストッキングとハイヒール、飼う側/飼われる側を、女性読者の視線で書く。SMと女装を主題に据えた官能長編として、1960年代末の週刊誌娯楽の中に置かれた。『男を飼う』がフェティシズムを横断し海外へ開く大河であるなら、『美男奴隷』はテーマを絞り、女装美少年を愛撫する側と、それを見る女性側の距離を短くした作品である。女性誌の連載である以上、読者は千絵の側からも、安雄の女装と美少年愛撫の側からも、同じ号で両方を読むことになる。
登場人物
中里千絵は高校三年生、文芸部員、18歳。小鍋健吉は国語教師。光岡万里子は千絵と同じ高校の同級生で演劇部長。学校側は文芸部と演劇部、教師と女子生徒という配置である。藤島琢也は企業家で、女漁りが趣味の大金持ち。藤島安雄は琢也の四男、イラストレーター、37歳。女装し、ストッキングやハイヒールの女装美少年を愛撫する。エリーは女装の金髪美少年、17歳。ジャクリーヌも同じく女装の金髪美少年、16歳。田村順二郎は画廊の経営者。栗原巻太郎は週刊誌の芸能記者。資産家の四男が女装して美少年を愛撫し、金髪のエリーとジャクリーヌが同じ欲望の対象として並ぶ。画廊と芸能記者は、その視線を商品や記事に変える側である。女装とSMの欲望が、高校、画廊、週刊誌、資産家の家にまたがって配置されている。
書誌
単行本は光文社から1969年。連載開始の翌年に本になった。文庫は光文社文庫、1987年、ISBN 4-334-70544-8。梶山季之の名前と、SM・女装という主題、女性週刊誌という掲載先が揃った長編として残っている。関連して挙がる語はSMと女装であり、百科の横断ではなく、その二つに絞った小説として読むことになる。














