『月花美人』(げっかびじん)は、1990年代後半にSPEEDから発売されたアダルトゲームシリーズである。第1作『月花美人』は2002年、ディスカバリー製作によりアニメ化された。ラインナップは『月花美人』(1998年5月29日)、『続月花美人 桜花の頃』(1999年5月28日)、『真月花美人〜ひとりしづか』(2001年7月19日)。緊縛と調教を核にした18禁で、調教の組み合わせでパラメータが動く「連華システム」が看板である。アパートの屋根裏、山間の神社、茶道の裏の調教師——舞台は変わっても、縄で女を仕上げる話としてつながっている。
連華システムとチューリップモード
本シリーズには、調教内容の組み合わせによってパラメータが変動する「連華システム」が載っている。メニューをどう組むかで数値が変わり、イベントの出方もそれに引きずられる。『真月花美人〜ひとりしづか』では調教内容だけでなく、キャラクターの服装によってもパラメータやイベントが変動する。加えて簡易シミュレーションである「チューリップモード」も搭載された。縄と衣装と調教メニューが数値になる、というのがこの三部作の遊び方だ。日本のSMものADVのなかで、調教を組み合わせて連華と名付けるシステムとして残っている。
月花美人:かざはな荘の調教部屋
主人公・伊東晴一は、義母・霖によって緊縛の悦楽を教え込まれ、緊縛師としての顔を持っていた。大学受験に失敗したため、義母の元を離れて受験勉強に専念すべく、古いアパート「かざはな荘」へと引っ越す。引っ越して間もなく、アパートの屋根裏にSM用の調教部屋があるのを見つける。大家の天羽深雪に事情を聴くと、深雪はマゾヒストであり、調教を望んでいた。晴一は深雪への調教を開始する。
そんななか、義妹の霧子が調教されにやってくる。晴一は調教の師匠である知念早雲に相談したうえで、霧子をメス犬として調教する。さらに霖もアパートを訪れ、晴一の調教師としての生活は多忙になっていく。浪人の緊縛師、屋根裏の調教部屋、大家のマゾ、義妹のメス犬、義母の再調教——第1作の筋は、かざはな荘に女が集まってくる話である。
続月花美人 桜花の頃:総内町へ戻る
山間にある総内町の神社で、宮司の妻が幼児を一人見つける。警察に届け出るが親は見つからず、服に「彰人」という縫い取りが入っていたことから、幼児は宮司夫妻に引き取られる。世間の目を気にした夫妻は、彰人と呼ばれた幼児を親戚の尾崎家へ養子に出し、宮司の家に預けられているという扱いにした。その後、宮司の家に娘・操が生まれたことを機に、彰人は自分が不要になるのではないかという恐怖を抱き、一家のなかで他人であることを意識する。それでも操と互いに惹かれ合い、将来を誓い合うようになるが、彰人は大学進学のため故郷を離れる。大学生になった彰人は、勤務先の法律事務所で、故郷の養父母が殺害されたことを知り、総内町へ戻る。拾われた子、養子、操との誓い、帰郷と殺人——続編は神社の村に調教を持ち帰る。
真月花美人〜ひとりしづか:茶道の裏
調教師・采女大樹は、叔父である源三からある女性への調教を頼まれる。亡き義父・栄一よりも技量が劣ることを自覚していた大樹は、なぜ叔父が頼んできたのかを疑問に思う。その女性が栄一の門弟の娘にして幼馴染の八千草栞であり、借金のかたに源三のもとへ送られてきたと聞かされ、調教に消極的になる。しかし心のどこかで興奮していることにも気付いていた。そこへ義妹の倉又ひなのも調教に加わってくる。表向きは茶道・采女流、裏は調教。家元争いと借金が、女を縄の側へ送る。
月花美人の人物
伊東晴一(いとう せいいち)は主人公の浪人生。声はOVAのみ桜田貴一郎。ふとした経緯から霧子の母と関係を持ち、それが実父にばれて家を出た過去がある。雪村風花(ゆきむら ふうか)は凪の妹で深雪の義理の娘。声は竹内めぐみ、OVA版には未登場。成り行きから晴一に犯され、兄からの提案で調教されることになる。伊東霧子(いとう きりこ)は晴一の義妹。声は松田ゆう/OVAは北条明日香。義兄に密かな恋心を抱いている。義兄が実母と関係を持っていたことは知っており、自分も同じ関係になりたいと望んでいた。晴一が家を出てから密かに荷造りをし、彼を追ってかざはな荘へやってくる。
天羽深雪(あもう みゆき)はかざはな荘の大家。声は鈴木直子/OVAは北都南。被虐嗜好をもつSM愛好家で、アパートの屋根裏に専用の部屋を作るほどである。アニメ版では晴一の妻となる。伊東霖(いとう りん)は晴一の義母にして霧子の実母。声は藤村美樹(OVAも同じ)。晴一が家を出るまで肉体関係を持っていた。霧子が晴一から調教を受けていることを知って連れ戻すためにかざはな荘へ乗り込むが、成り行きで継子である晴一に調教を再開するよう頼み込む。被虐願望が非常に強く、晴一に緊縛の手解きをしたのも彼女である。
雪村凪(ゆきむら なぎ)は長髪の中性的な美男子。声はOVAのみ光電寺みゆき。自分に思いを寄せるかすみや妹の風花を引き合わせ、晴一の義妹・霧子を含めたヒロインたちへの調教を勧める、謎めいた存在。雨宮かすみ(あめみや かすみ)はかざはな荘の住人。声は田中華子/OVAは佐藤まこと。深雪が晴一に調教される姿を見ているうちに触発され、肛門への自慰にふけるようになる。実は凪に深い恋心と憧れを持っており、肛門で自慰をするのは彼に処女を捧げたいためである。このため女陰に関する調教は一切できない。知念早雲(ちねん そううん)は晴一の調教の師匠。声はOVAのみ比留間京之介。のちに『真月花美人』にも登場する。芳賀浩(はが ひろし)は声がOVAのみ体田肉男。天羽平蔵(あもう へいぞう)の名も人物欄に残る。
続月花美人の人物
尾崎彰人(おざき あきと)が『続月花美人』の主人公。山縣操(やまがた みさお)は声・皆川鮎。桂万里子(かつら まりこ)は声・鈴木由美。西園寺深雪(さいおんじ みゆき)は声・藤村美樹。若槻紫乃(わかつき しの)と百田ひろこはともに声・北都南。桂健次(かつら けんじ)。ヒミコ南條(ひみこ なんじょう)は声・藤村美樹。大限昭平(だいげん しょうへい)。井原ゆりこ、百田はつ江、百田ひろしはいずれも声・佐藤亜美。総内町に戻った彰人のまわりに、神社と養家と女たちが並ぶ。
真月花美人の人物
采女大樹(うねめ だいき)が主人公。表向きは茶道・采女流の師範。裏の調教師としての技能は亡き義父・栄一より劣っていたため、これまで調教師としての仕事は少なかった。実は采女家の人間ではなく、施設暮らしの孤児だった。亡き養父にひなのと共に迎えられ、兄妹のような関係に育った。倉又ひなの(くらまた ひなの)は大樹の義妹。声は北都南。義兄同様に孤児で、栄一との血縁はない。学生ではあるが家事をこなし、メイドに近い立場である。調教が進むと本当にメイド服を着る。義兄に恋心を抱いており、愛する義兄の手であるならばと調教を願い出る。恋心を表に出すことはしないが、展開次第では彼と愛し合う。
八千草栞(やちぐさ しおり)は栄一の門弟の娘で、大樹とは幼少時に遊んだことがあった。声は海原エレナ。両親の失踪により莫大な借金を背負わされ、後見人の手によって大樹の元へ調教のために送られた。大樹のことを「先生」と呼ぶほど幼少期を覚えていないが、展開次第ではそれを思い出し、関係を持つようになる。西園寺霖(さいおんじ りん)は、早雲が調教・緊縛の指導者として送り込んだ女性。声は北条明日香。采女源三(うねめ げんぞう)は大樹の叔父で栄一の弟。茶道・采女流の現家元。奸計で兄を罠に嵌めて家元の座を簒奪した。采女栄一(うねめ えいいち)は大樹の義父で故人。本来の家元だったが、弟・源三の奸計で座を奪われた。五十瀬(いせ)は源三の部下の調教師で、調教相手の人格を失わせるほどの技量を持つ。大樹にとっては頼りになる兄貴分でもある。知念早雲は前々作の人物と同一で、生前の栄一と親交があった。大樹の求めに応じ、霖を補佐役に送り出す。
スタッフ、主題歌、関連商品
原画はどどいつ、シナリオは御倉たな、音楽は柴田泉。企画・制作はすたじお実験室、発売・販売はSPEED。『月花美人 1・2 DVD PACK』の主題歌「月花美人」は、作詞・御倉たな、作曲・編曲・せんたろ、歌・海原エレナ。『真月花美人〜ひとりしづか』とアダルトアニメのエンディングテーマ「恋歌」も、作詞・御倉たな、作曲・編曲・せんたろ、歌・海原エレナである。
『月花美人 1・2 DVD PACK』はSPEEDから2002年8月30日発売、品番JSP-019。『月花美人』と『続月花美人 桜花の頃』をセットにしたDVD-ROM版で、特別特典として攻略ガイドブックが付く。『真月花美人〜ひとりしづか DVDPG』は電脳Clubから2004年10月28日発売、品番DCPG-071。ノベルは結樹飛龍著、SPEED/すたじお実験室原作、どどいつ原画で、茜新社〈TENMAノベルズ〉より2002年3月25日発売、ISBN 4-87182-497-7。
アダルトアニメ:雪の宴、霧の宴
OVAのキャストは、伊東晴一が桜田貴一郎、天羽深雪が北都南、伊東霧子が北条明日香(第二縛のみ)、伊東霖が藤村美樹、知念早雲が比留間狂ノ助、雪村凪が光電寺みゆき、雨宮かすみが佐藤まこと、芳賀浩が体田肉男、晴一の父がイチ(第一縛のみ)。ゲーム側の早雲クレジットは比留間京之介、OVAは比留間狂ノ助と表記が分かれる。
制作の中核は、エグゼクティブプロデューサー・田中辰弥、プロデューサー・千葉博己(IKINA)、監督・桶澤尚。原作はいちひめ/すたじお実験室、ストーリー原案は御倉たな、キャラクター原案はどどいつ、脚本は道上丈一、音楽はせんたろ。絵コンテは武倉鉄州、巴たかし、椋代善騎。演出は阿藤二朗、亜弥。作画監督は木下裕孝、補佐はいずみ魔呼。キャラクターデザインは飛馬陸成。美術監督・美術設定は福田和矢、色彩設計・色指定・仕上検査は和田秀美。音響監督はパックオーライじん、効果は野崎博樹、音響制作担当は発射オーライGO、音響制作は紙屋、録音調整はジャン・ピエール、録音スタジオはプロセンスタジオ。編集はP・M・J、ビデオ編集は佐々木恵介。プロダクションマネージャーは伊藤将志、アニメーションプロデューサーは萬波賢、制作デスクは白井史子、制作進行はモーミー・矢野、宣伝制作は瀬戸勝。アニメーション製作はAT-2 Project、製作はディスカバリー。原画にはミクリヤカツトシ、しげくにひろこ、吉木正行ら、撮影はスタジオDの沖一ほか、海外協力に英雨Entertainment、E-CHO動画が入る。
映像ソフトは『月花美人 第一縛 雪の宴』(2002年4月26日、DVD: DISE-0032/VHS: GCV-954)、『月花美人 第二縛 霧の宴』(2002年7月26日、DVD: DISE-0037/VHS: GCV-959)、『月花美人 完全版』(2009年8月28日、DISEB-003)。連華システムでパラメータを動かした三作のゲームと、雪と霧の二縛のOVAが、『月花美人』の棚を構成している。













