性的ロールプレイ(せいてきロールプレイ、英: sexual roleplaying)とは、性行為においてある種の役割を演じること、または服装への偏愛から特定の衣装を着て性行為を行うことを指す。心理学では治療や問題行動の自認のために人間関係を再確認するロールプレイを言うが、性の文脈ではポルノやアダルトビデオに出てくる役柄——医師と看護師、主人と奴隷——をパートナーと演じ、興奮を高める行為になる。普段の妄想の実現、現実の力関係の逆転、タブーを擬似的に犯す歓びが目的である。通常の性交でも使われるが、SMでは主人と奴隷という役割を認識しやすくするため、ほぼ必ず何らかのロールプレイになる。役は人間に限らず、犬などの動物、椅子やベッドなどの非生物にもなる。雰囲気のためのコスプレの側面も持ち、性風俗ではSMクラブやイメージクラブで行われることが多い。近年は単なる衣装遊びになっている店も少なくない。
コスプレと制服という性の語
性行為で俗にコスプレ、コスチューム・プレイと呼ばれる行為は、女性のみ、または男女ともに、特定の職業を想起させる制服や、学校制服など児童・生徒・学生を想起させる服を着て性欲を満たすことを指す。原義のコスプレがキャラクターを「演ずる」プレイであるのに対し、性風俗用語のプレイは「性的プレイをする」意味である。使われる服装は、看護師・警察官・スチュワーデス・エレベーターガール・レースクイーン・レディーススーツ・メイド服などの職場制服、学校制服・体操着・スクール水着、レオタード・水着・ジャージ・ドレスが多い。衣装の下に下着を着ける場合と着けない場合がある。
風俗店、とくにイメージクラブでは、片方または双方がコスチュームを着てのプレイを用意している。アダルトビデオには漫画・アニメ・ゲームのキャラクター衣服を模した、原義どおりのコスプレをテーマにした作品もある。従来は制服物と呼ばれたが、コスプレという語が一般に定着してからはコスプレ物と呼ばれることも多い。日常生活で現在・過去・将来に着用する衣装でプレイするケースと、ロールプレイ目的で新たに買うケースがある。一例として、学校でブルマーが使われなくなったあと、学生時代にブルマーを穿いたことのない女性が、ロールプレイで初めて購入して着用するケースがある。新品を買う場合と中古を買う場合があり、中古ではブルセラショップも購入先になるが、規制で店自体は減っている。
アダルトグッズ店では、これらに加えてアニメやゲームのコスプレ衣装を扱う店が増え、出来も年々よくなっている。指摘されなければアダルト系と気づかない店もある。ただし前提は性的プレイ用であり、職場や学校で使わないメーカー品だったり、コスプレイヤーの服に比べ縫製が雑でほつれたり、露出が極端に高いものが多い。性交以外はコスプレを着て、性交時は全部脱いで全裸になる場合と、着衣セックスの場合がある。複数の女性を相手にするとき、全員に同じ服を着せる場合と、人ごとに変える場合がある。
コスプレ風俗とメイド、ゴスロリ
性風俗のなかには、比較的若いおたく層を取り込むため、おたく色を前面に出したイメクラが現れた。原義のコスプレが根底にあり、アニメやゲームのキャラクター衣装を着た風俗嬢とのプレイが基本で、嬢側もアニメやゲームに通じた女性を起用する。趣味が合うため比較的快適に進む傾向がある。全国に広がり、イメクラだけでなくデリバリーヘルスでも行われる。メイド喫茶の急増に伴いメイド系を意識した店舗も増えた。ソープ嬢などが、非おたく向けの店でも自前の衣装を持ち込んだり、おたく的趣味を公言したりすることもある。2006年4月、神奈川県川崎市にメイドカフェとソープランドを融合させた店が誕生し、メイド系風俗を謳う店が続いたが、本質的なメイドからかけ離れたものが大半である。本来のメイドを追求したうえで性的サービスを出す店も現れ始めている。
ゴシック・アンド・ロリータを主題としたアダルトビデオも複数あり、ゴスロリを愛好する星月まゆらのようなAV女優もいる。アダルトゲームでもゴスロリキャラが複数登場する。2004年、d-angelから19世紀末イギリスを舞台にしたゴスロリ・コスプレ陵辱ADV『黒薔薇は夜に咲く』が出た。公式は「ゴスロリファッションを楽しむために、たとえHシーンでも全裸はなし。常に衣装を纏ってのHのみ」をこだわりとした。2007年、ミルフィーユのゴスロリ悪魔っ娘陵辱ADV『魔が堕ちる夜 デーモニックプリンセス』も「コスチュームを全て脱がしきらない半脱がし状態でのHシーン」を謳う。漫画では2006年1月、キルタイムコミュニケーションから「本邦初のゴスロリ美少女オンリーの成人向けアンソロジー」を謳った『ゴスロリマニアックス』が出た。現実にもゴスロリ・メイド専門のデリバリーヘルスやゴスロリキャバクラは存在する。
SMにおける役割と隣接するプレイ
日本では子供の遊びとしての「ごっこ遊び」が、概念的にはいちばん近い。心理学のロールプレイが治療や自己認識のための再演であるのに対し、性的ロールプレイは妄想の再演である。SMクラブでは主人と奴隷、教師と生徒、医師と患者、逮捕者と被疑者といった役が、縄や鞭の前に口頭で決まる。役が決まると、呼び方、許可の出し方、罰の理由が揃う。役なしの責めは疼痛の技術になり、役つきの責めは物語になる。フェムドムの店では、来店した時点で客は奴隷役へ固定され、衣装と敬語が強制される。イメージクラブは職業や制服のイメージを売る店で、SM色が薄くてもロールプレイそのものは本体である。近年はコスプレ衣装を着せるだけで、役の会話がほとんど無い店も増えた。
役は人間に限らない。犬や猫、馬にするヒューマン・アニマル・ロールプレイ、ペットとして飼うペットプレイ、家具や椅子や便器にするオブジェクト化、憑依や人格の上書きを演じるポゼッションプレイ、年齢を下げて演じるエイジプレイ、男性を女性の役と衣装へ移す女性化は、いずれも「誰として触られるか」を先に決める点で同じ棚にある。着衣セックスは、その役の外形を最後まで残すための選択でもある。全裸になると役の制服が消え、ただの身体になる。ゴスロリものやメイドものがHシーンでも脱がしきらない、と謳うのは、興奮の対象が身体より衣装と役だからだ。
衣装を買う経路は、新品のコスプレ通販、アダルトグッズ店の特設、中古のブルセラ、自作に分かれる。ブルセラ規制後は学校指定品そのものを入手しにくくなり、ロールプレイ用に新しく作られた「学校風」が増えた。縫製が雑でほつれやすいもの、極端に丈が短いもの、下着を前提にしない裁断のものは、職場や学園祭では使えない。風俗の現場では、その雑さと露出の高さがむしろ商品になる。複数人を相手にするとき全員を同じ制服に揃えるのは、ハーレムやクラスの幻想を固定するためで、人ごとに衣装を変えるのは役のカタログを並べるためだ。性的ロールプレイはコスプレの派生ではなく、SMの主従を動かすための役作りである。衣装はその役を、部屋に入った瞬間から見える形にするための道具にすぎない。












