女斗美(めとみ)は、日本で女性同士の格闘、およびそれに対する嗜好を指す言葉である。女闘美とも書く。娯楽として続いてきた女相撲が土台で、上半身を裸にし、まわしを締めて戦わせるお座敷芸・見世物としての女相撲は、江戸時代にはすでにあった。乳房もあらわに、なりふり構わず戦う姿を見て楽しむ、通俗な見世物である。BDSMの現場では羞恥プレイとしても使われ、負けた側に激しい調教を課す条件付きの試合など、格闘そのものより「なよやかな美女が苦しむさま」を楽しむ型もある。
女相撲、キャットファイト、女子プロレス
西洋ではキャットファイトと呼ばれる。つかみ合いの末に髪を掴み、衣服を引き裂き、最終的に裸にし合う見世物的な女性格闘が一部で好まれた。髪を掴む、服を裂く、胸や股を晒し合う——勝敗より剥く過程が商品だった。BDSM系のビデオ会社がポルノの一種として売っていたものが、次第にエンターテインメントへ移り、近年ではWWEに代表されるショーアップされた女性同士の格闘までを総称してキャットファイトと呼ぶようになった。ジャンル名にまでなっている。日本の女斗美が女相撲とお座敷芸から来ているのに対し、西洋のキャットファイトは喧嘩の見世物から来ている。合流点は、戦う女体を見て興奮する視線である。
近代に女性の社会進出が進むと、格闘技の世界への進出も顕著になり、女子プロレスに代表される女性同士の格闘が現実化した。ただ女斗美を好む層から見ると、現実の格闘技で活躍する女性が必ずしも「女性的魅力」に満ちているわけではない。そこから嗜好は、性風俗寄りの見世物へ特化する傾向を見せた。リングの競技と、見世物の女斗美は、同じ女性格闘でも欲求の向きが違う。
泥レス、ローション、フィクション
性風俗の場では、泥んこプロレス(泥レス)と呼ばれるショーがあった。プール状に仕切った床に水分の多い泥を敷き、若い女性同士が水着か薄手の衣類でプロレスをする。足場が悪く転び、泥にまみれて衣類が身体に密着し、乳首などがはっきり見える——エロティシズムはそこにある。1970年代から存在し、次第に透明なローションを満たしたスペースでの格闘へ移った。ウェット&メッシーの嗜好と重なる。映画・アニメ・ゲームでは、戦う美しい女性は人気の高いモチーフであり続けている。
嗜好の二つの向き
個人差はあるが、格闘する女性に女性美を見出したい欲求から、髪は長い、プロポーションは良い、といった「女性的魅力」を維持したまま戦わせることを好む傾向がある。この場合、勝敗よりボディラインと肉体の躍動が目当てだ。一方で、筋肉が隆起し腹筋が割れた強い女性に戦ってもらい、その強さと美しさを堪能したいという向きもある。柔らかい身体が泥とローションにまみれる快楽と、鍛えられた身体がぶつかり合う快楽——女斗美は、その両方を同じ言葉で抱えている。
BDSMのプレイとして組むときは、勝負の前に負けた側の処遇を決めておくことが多い。全裸にされる羞恥、髪を掴まれる痛み、泥やローションで衣服が透ける視覚。キャットファイト映像が衣服を裂いて終わるのに対し、女斗美の現場はそこから調教へ続くことがある。江戸時代のお座敷芸としての女相撲、ポルノとしてのキャットファイト、ショーアップされたWWE、性風俗の泥レスとローションプール、フィクションの戦う美女。同じ「女が女と戦う」でも、見世物の熱の置き場は時代ごとにずれてきた。いま女斗美という言葉が指すのは、競技の勝敗より、戦う女体を見て興奮する嗜好の側である。












