女性化(じょせいか、feminization)、または強制女性化(forced feminization)、シシフィケーション(sissification)は、BDSMやキンクの現場で、服従側の性的役割をひっくり返し、男性に女装と「女らしい」ふるまいを課すプレイである。女性化された側はしばしばシシー(sissy)と呼ばれる。長期間かけて女らしさへ躾ける一連の調教は、シシートレーニングと呼ばれる。日本語ではメス堕ちが近い。趣味やフェティシズムとしての女性化は、トランスジェンダーであることとは別物だ。調教を受ける側の大半は、異性愛のシスジェンダー男性である。男らしさの圧力から一時的に降り、罪悪感なしに女らしさを解くための筋書きとして使われる。
Sissy を省略せずに書けば Sissy Boy である。しぐさや外見が男らしくない男性一般への侮蔑で、「泣き虫」「オトコオンナ」と訳されることが多い。プレイのなかで相手をシシーと呼ぶのは、その侮蔑を性的に再利用することだ。具体的には、女性用ランジェリーを着せる、女性名をつけてその名で呼ぶ、アナルセックスの受け手に回す、人工乳房を着ける、タッキング(性器を脚のあいだに隠し、前面を平坦に見せる)を行う、といった手数がある。名前に「強制」とあるとおり、当人の意思に反して女性化させられる筋書きはよく使われる。実態では参加者の同意に基づくことがほとんどである。スパンキング、ペギング、ボンデージ、ペニスをクリトリス呼ばわりするSPHのような羞恥が重ねられることも多い。2009年時点で、東京・横浜に女装プレイ特化の個人主宰SMクラブ「Paradiso」があった。
シシートレーニングは、調教する側が相手をシシーとして長期的・漸進的に躾ける。女装、全身の剃毛、化粧、女ものの下着が基本になる。極端な場合は投薬や去勢手術まで語られる。狭い型として人気なのがシシーメイドトレーニングである。フリル付きで露出の多いメイド服を着せ、従順に家事をさせ、失敗にはお仕置き、達成には射精が褒美として許されることがある。スラットトレーニングは、露出が高く体型がはっきり見える「ふしだらな」女装を着せ、内気さを挑発的な態度へ作り替える。エイジプレイやスクールガール、おむつと組み合わせる型もある。エイジプレイは大人が演じている。
ハフィントンポストがまとめた取材では、強制女性化は顧客の性的願望のなかでもっとも人気なものの一つだった。ダニエル・J・リンデンは『Dominatrix』で、性風俗サービスの利用者サンプル305人のうち、3分の1以上が女装させられることへの関心を抱いていたと書いた。Kinklyは、女性化の魅力は男らしさを保てという社会的圧力から来ると説明する。「強制的に」やらされたという筋書きは、女らしさのはけ口を与えると同時に、内面の罪悪感を軽くする。三橋順子は、女装者の性的指向が男性に向いているとは限らず、強制女性化のサービスは異性愛の女装者にも需要がある、と分析している。
近代ポルノグラフィにおける女性化の萌芽は、19世紀末ヴィクトリア時代後期のイギリス小説にすでに見える。現代ではFictionManiaなどに投稿が集まる。雑誌『Forced Womanhood!』が発表の場になってきた。2019年、Patreonが強制的な変身要素のある女性化やシシフィケーションを含む特定の性的コンテンツを排除すると報じられた。日本国内でシシーに相当するジャンル語がメス堕ちである。日本には別に「男の娘」と呼ばれる類型があり、永山薫は『少年メイドクーロ君』『ブロッケンブラッド』『メイドいんジャパン』を挙げる。強制女性化は、女装コスプレでもトランスの医療移行でもなく、同意のうえで「無理やり女にされる」筋書きを共有するプレイである。



