『アンテナ』は、田口ランディが2000年に発表した長編小説であり、熊切和嘉が監督した2004年の日本映画でもある。少年時代に神隠しのように失踪した妹を持つ大学院生が、その出来事から崩れた家庭に悩み、研究の場で出会ったSMの女王との交流を通じて救済へ向かう。宗教、自傷、精神疾患、性愛、オカルトが同じ回路に乗る。『コンセント』に次ぐ田口の長編第2作で、続く『モザイク』と合わせて三部作に位置づけられる。BDSMの女王は、この物語では刺激のカタログではなく、壊れた家族のあとに残る受信の装置として出てくる。
三部作の二作目
失踪した妹、崩壊した家、研究とSM、救済。田口が並べた主題は、女王様の責めそのものより、責めを通じて何を受信するかにある。題名のアンテナは、その受信の比喩だ。コンセント、アンテナ、モザイク。電気と受信と画面の分断が、三部作の外側でもつながる。単行本は2000年11月、幻冬舎(ISBN 978-4344000353)。文庫改稿版は2002年6月、幻冬舎文庫(ISBN 978-4344402478)。新装決定版は2007年10月、新潮文庫(ISBN 978-4101412382)。改稿と文庫の移動を経て、決定稿が新潮へ移った。
2004年の映画
映画は2004年1月10日に日本公開。R-15指定。第60回ヴェネツィア国際映画祭、第28回トロント国際映画祭に正式招待され、国外の映画祭へも多数招かれた。加瀬亮の初主演作であり、この演技で第14回(2004年)日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞を受けた。原作のSMと宗教と自傷を、新人主演の身体へ載せた翻案である。国内の成人指定より先に、海外の映画祭がこの受信の話を拾った。
荻原祐一郎を加瀬亮(8歳時は佐久間駿)、ナオミを小林明実、荻原祐弥を木崎大輔が演じる。相馬俊平は宇崎竜童、荻原房江は麻丘めぐみ、荻原裕作は大森博、荻原シゲノブは小市慢太郎、荻原真利江は甲野優美。風水師・東堂は入川保則、医師・小倉は黒沼弘己、藤村美樹は占部房子、袴田は榎戸耕史。堕天使の客は春海四方、堕天使従業員は寺島進(声のみ)、警官は光岡湧太郎。信者に五島一浩と五島由実、霊能者に塚田美津代、ニュースキャスターに吉田慎之介。家族と宗教者と風俗の店が、同じキャスト表に並ぶ。
熊切和嘉とスタッフ
監督は熊切和嘉。脚本は宇治田隆史と熊切和嘉。原作は田口ランディ『アンテナ』(幻冬舎刊)。製作は佐々木史朗、成澤章。プロデューサーは松田広子、渡辺敦、尾川匠。美術は磯見俊裕、音楽は赤犬と松本章、撮影は柴主高秀、録音は岩倉雅之、照明は蒔苗友一郎、編集は普嶋信一。衣装は小林身和子、選曲は石井ますみ。アソシエイト・プロデューサーは松葉せつこと浜口知俊、助監督は亀井亨、スクリプターは田口良子、スチールは平野晋子。製作はオフィス・シロウズ=ケングルーヴ、配給はオフィス・シロウズ。
小説の三部作と、R-15の映画と、加瀬亮の初主演。失踪した妹のあとに残る家庭と、研究で出会うSMの女王。ヴェネツィアとトロントが先に招き、日本映画プロフェッショナル大賞が主演を認めた。田口ランディのアンテナは、女王の部屋で電波を拾う話として、2000年の紙と2004年のフィルムの両方に残っている。












