『夢幻廻廊』(むげんかいろう)は、Black Cycより2005年9月16日に発売された18禁アダルトゲーム、およびそれを第1作とするシリーズである。Cyc Member会員限定で2009年2月27日に出た『夢幻廻廊1.5 〜連鎖〜』と、2009年6月26日の『夢幻廻廊2 〜螺旋〜』も同じ屋敷の調教を描く。2007年11月26日に第1作のDVD-PG版、2014年8月29日にはWindows 8.1対応の復刻版が3作まとめて出た。九条家の屋敷で「かとる」(家畜)としていっぷ(躾)を受ける主人公の日々を描き、「究極のマゾゲー」と呼ばれることもある。ループがあり、1周目の赤の日のあと条件を満たすと、黒の日と呼ばれる2周目へ入れる。黒の日は赤の日より過激で、人物の心情も深く掘る。
記憶を失った主人公と、かとるの屋敷
主人公は記憶を失った状態で目を覚まし、目の前に妖艶な美女がいる。拾ったことを告げられると、天涯孤独だったことを思い出して涙を浮かべる。身を寄せたいと告げると、美女は微笑み、「かとる」としてこの屋敷に置くと答える。たろと呼ばれた主人公は、この日から虐げられる快楽を味わうことになる。かとるは家畜のことである。いっぷを受け続けるため、寿命はきわめて短いとされる。成人向けゲームの記憶喪失の主人公として屋敷に取り込まれ、人間の尊厳を壊すような躾を受けて変わっていく。
九条家の女たち
たろ(声:森藍子)は記憶喪失で、中性的な容姿の主人公。道端で倒れていたところを九条家に拾われ、かとるとして暮らす。九条環(声:海原エレナ)は館の女主人。温厚さと妖艶さを持ち、たろと九条四姉妹のいまの関係を作っている。九条薫子(声:金田めい)は長女で長髪。病に臥せ、部屋を出ることはめったになく、世間知らずなところがある。のんびりした見た目に反して苛烈ないっぷが多い。病弱は先天性ではなく、人為的なものが起因している。九条麗華(声:みすみ)は次女でショートカット。武術を体得し、気が強く暴力的な一面がある。九条祐美子(声:まりもりん)は三女。優しい性格でペットの世話をすることが多いが、優しさの裏に凄惨な事情を抱える。たろを動物として認識しており、『1.5』では本物の雌犬とお見合いさせる場面もある。九条奈菜香(声:ひかり)は末子で、無邪気さと残酷さを併せ持つ。
麻耶(声:阿倉優)は九条家のメイド。冷徹で、たろに厳しく接することが多い。志乃(声:柴田蕗)は気弱で不器用なメイド。「次失敗したら家畜に格下げする」と常に脅され、たろに同情することもある。心の奥には別の本性が潜む。グモルクは、犬の被り物のみを身にまとった人間である。
スタッフと主題歌
キャラクターデザイン・原画は椎咲雛樹。企画・原案は村上智右。制作協力は有限会社シルバーパレット。シナリオは伊藤ヒロ、奈落ハジメ、土田太郎、千堂琉宇衣、らまんちゃ。オープニングテーマ「トキのかたりべ」は、作詞・作曲・編曲が谷上純三、歌が海原エレナ。ロックンバナナのサブレーベル・dandelionのオムニバス『黒の追憶』に収録されている。エンディングテーマは「夢幻廻廊」。
夢幻廻廊1.5 〜連鎖〜
Cyc Members会員限定で2009年2月27日発売の外伝。シナリオは松山怜史、原画は椎咲雛樹。たろ(森藍子)、薫子(金田めい)、麗華(みすみ)、祐美子(まりもりん)が再登場する。奈菜香の声は木下鈴。主題歌「Endless Corridor」は電気式華憐音楽集団。
夢幻廻廊2 〜螺旋〜
第2作では、たろはあるきっかけでお屋敷に取り込まれ、そこで調教されていく。原画は引き続き椎咲雛樹。2010年3月26日発売の『ク・リトル・リトル 〜魔女の使役る、蟲神の触手〜』オフィシャル通販特典の短編『ク・リトル・リトル ~”たろ”の触れる、乙女の触手~』には、本作からたろと薫子がゲスト出演している。
たろ(声:黒岩心々)は気弱な男子学生。しろに出会ったことがきっかけでお屋敷に出入りするようになる。屋敷ではメイド服に犬耳を足したような服装をさせられる。前記の短編では、薫子と外出していたところ狩野たんぽぽと出会い、大変な目に遭う。しろ(声:早乙女綾)は屋敷にいる無口な少女で、外では存在感が希薄。奈菜香(声:相模真)は長女だが、立場の割にこどもっぽい。百合絵(声:平野響子)は次女。男装が多く、芝居がかった言動が特徴。祐美子(声:まりもりん)は三女で、たろには優しく接する。かとるへのいっぷはハナを通じて行われることが多い。薫子(声:西野みく)は四女。末子ながらしっかりしており、奈菜香と遊ぶことが多く、叱ることも多い。メーカー主催の人気投票では、薫子のくつ下が第9位に入った。奥様(声:葉月るい)は館の女主人。姿を現すことが少なく、顔のベールも相まって謎めいている。ハナ(声:みすみ)は無愛想だが有能なメイド。トモ(声:咲良さく)はたろの学校での同級生。気が強いが、たろへの想いを隠しきれない。グモルクは前作と同じく、犬の被り物のみの人間である。
オープニング「瞑想に堕ちる闇」、エンディング「Endless ripples」はともに電気式華憐音楽集団。記憶喪失の主人公とか弱な男子学生が、同じ「たろ」の名で屋敷の家畜になる。赤の日から黒の日へループし、いっぷのたびに寿命が削られる——Black Cycのマゾゲーとして、その屋敷は三作分残った。
シリーズの核は、かとるといっぷという二つの言葉である。家畜として置かれ、躾を受け続ける。寿命が短いという設定は、調教が身体を消耗させることの比喩であり、周回のループと重なる。赤の日で関係の輪郭を見たあと、黒の日で心情と過激さが増す。第1作のたろは記憶喪失のまま九条家に拾われ、第2作のたろは男子学生としてしろに導かれ、同じ屋敷のメイド服と犬耳へ落ちる。薫子は1では病弱な長女、2ではしっかりした四女として再配置され、祐美子はどちらでも優しさの裏に凄惨を抱える。椎咲雛樹の原画が三作を通し、電気式華憐音楽集団が1.5と2の主題歌を担う。2014年の復刻版は、Windows 8.1対応で三作をまとめて出した。館の女主人、四姉妹、メイド、犬の被り物のグモルク——配置は変わっても、かとるをいっぷする屋敷の型は同じである。










