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便所虫の歌 · 第1部

便所虫の歌 第1部 (1/5)
次の話

本作品はすべてフィクションであり、実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません。また、特定の個人、団体、宗教、人種、性別などを誹謗中傷する意図はありません。

あんぷらぐど

SM雑誌に「仲ゆうじ」名でSM小説を執筆して作家活動をスタート。その後、編集の仕事に携わる。九○年代よりネットで複数のペンネームで小説を執筆。二〇一一年「荒縄工房」より独自の自虐的SM、一人称による告白形式の作品、伝奇SM小説などを発表し続けている。東京在住。

マリカになる

懺悔いたします。わたしが金曜日の夜から日曜日の夜まで、どんなことをしていたのか。

マリカと名乗っています。本名ではありません。早いもので二十七歳になってしまいました。

ある団体の職員をしています。OLということになるのでしょう。毎日、そこそこ忙しく、そこそこ緊張感のある職場です。ただ、月曜日から金曜日まで、疲れて帰宅するとため息が出てしまうのも事実です。

「君、いつも完璧だね。ありがとう」

部長から声をかけていただきます。少し微笑み、頭を下げます。

「すごいわよね、あなたがいれば、この部門、誰もいらないんじゃないの?」

同僚からそう言われたこともあります。イヤミでしょうが、気になりません。

「ねえ、たまにはわたしたちと付き合ってよ。合コンよ、もちろん。出てくれたら男たちってけっこう、食いついてくると思うんだけどなあ」

部署が変わるなどして、わたしのことをよく知らない同僚に、誘われることもあります。

ですが、キッパリとお断りしています。

「まさか、門限とかあるんじゃないわよねー」と笑われますが、どう思われてもいいのです。

わたしは、忙しいのです。

欲望を満たすために……。

マジメな仕事ぶりが幸いしてか、男性陣たちは「病気の母親がいて、看病しているらしい」とか「おばあちゃんの介護もしているとか」などと、わたしは臭わせたことさえないようなウワサを信じてくれているのです。

たいがいのことを「個人的な事情があるので」と曖昧にお断りするので、憶測されるのでしょう。

みんながわたしの正体を知れば驚くでしょう。いえ、もはやわたしを女性とも人間とも見てくれなくなるでしょう。

それほどのことを欲望のままに、しているのですから。

わたしは週末だけ、本来の自分、つまり〝マリカ〟に戻ることができます。金曜日。勤務を終えて帰宅したあと、一度お風呂に入ってから、改めてマリカになるのです。

わたしがしていることは、誰にも言えないようなことです。

ある掲示板に書き込みをして、街のどこかで待ち合わせて、見知らぬ人のご命令に従うのです。マリカは絶対にNOと言いません。だから、人気があります。

その掲示板の名称は「便所虫の歌」。

悲しげで滑稽でしょうか。それとも、想像したくないほど、恐ろしい名称ではないでしょうか。

ごく普通に生活する者には無縁の世界。

身も心もボロボロになることを求める者だけが許される、行ってはいけない場所。

女の便所虫はそれほど多くないようです。掲示板を見ていれば、マリカがどんなことをしてきたか、だいたいわかるので、それなりに勇気ある方が利用してくださいます。

はじめてそこを利用したとき、これで自分は終わると思いました。

マリカと名乗って公園で一時間、待ちました。やっと声をかけてきた人が相手だったのですが、男性であったことしか覚えていません。

「うそ。まじで、あんたなの? 便所虫だよね」

「はい。マリカです」

「ドッキリじゃないよね」

金曜日の深夜に、そんなわけないと思いますが、男の人はやたら警戒していたのを覚えています。

そのあと、彼と近くのホテルに行きました。ホテルへ行くことは考えていなかったのですが、彼が誘うので、マリカは「いいなりになる」ことを自分に課していましたから、「いいえ」という言葉は封印していたのです。

すべてを受け入れること。なんでもさせていただくこと。

そんな恐ろしいことをしたくなった気持ちについては、聞かないでください。いずれお話することもあるかもしれませんが、取るに足らないことです。

普通にエッチをしたと思います。あまり覚えていないのですが、できるだけ気に入られるように、お人形じゃないように、全身全霊でそういうことが好きだとわかってもらえるように、一生懸命だったと思います。

そうしなければ、次はないから。

マリカはNOと言わないだけではなく、相手が望むように反応します。

マリカは奔放で限界を知らないのです。

その後も、その人と何度か会っているようなんですが、残念ながらまったく顔は思い出せません。渋い声だったような気はします。

おかげで、最初の人は掲示板「便所虫の歌」にマリカのことを誉めて書いてくれました。

そのあとには、かなり楽になったというか、すごく簡単に出会えるようになりました。警戒されて一時間も待たされることはなくなりました。望みが叶ったのです。それからは、評判を落とさないように、務めてきました。

どんなことでも全力でやってきました。

マリカはわたしとは別人格といってよく、だけどまったくのわたしなのです。すごい変態女で、酷いことをいっぱいされたいと思っています。

だけど、数週間はやさしい人ばかりというか、物見遊山とでもいうのでしょうか。そう「お試し」ですね。そんな感じが続きました。ただエッチするだけ。場所はホテルとは限らず、その人の家だったり、公園だったり、車の中だったりもしました。

一カ月ぐらいしてから、しだいに怖い人にも出会えるようになってきました。

マジメにやってきたからでしょう。だんだん、お客様は本気になってくれるようになったのです。

たいがいの人は、わたしのバックに恐ろしい組織があって、下手なことをしたらやられると思っているようでした。

残念ながらそんなものはなく、マリカは生身の肉体だけの存在なのです。守ってくれる組織などはありません。

相手のことはまったくといっていいほど覚えていない自己中なもので、相手の人が言わない限り、その人と前にも会ったなんてまるで思い出せないのです。

公園で待ち合わせ。いきなり街灯の下に

跪

くように命令され、おしっこを頭からかけられる……。

これだわ。マリカがしてほしいことはこれなの。

やっとこういう人に会えた……。

引っぱたかれて、首を絞められ、公園の茂みで犯されました。

お腹を踏まれながら写真を撮られました。

それが、決定的だったと思います。

その写真が掲示板に貼られてから、マリカはさらに、わたしが望むような稀少な人たちと出会えるようになったのです。

覚えていることは、金曜の夜から日曜の夜までにわたしの体の上で起きたことだけ。マリカの記憶はそれだけなんです。

そして月曜日からは、どこにでもいる働く女がいます。マリカのことなんてすっかり忘れています。

「この書類、大至急お願い!」

「先方に謝罪に行ってくれないかな」

「この件では絶対に譲らないで、強気で交渉してきて」

毎日、朝から定時の退社時間まで、わたしはほとんど暇なく働きます。それはすべて、マリカになるために大切なことだから。

すごく都合のいい自分がいます。

マリカでいる間、ほとんど覚えていないのが悔しくなってきて、合間を見て、スマホにメモするようになりました。マリカ専用スマホには、卑猥なメモがぎっしり。

ときどき、読み返します。

ろくに覚えていないことをこうして読み返しても、正直、実感がわきませんが、苦痛や悪寒、恐怖はそれなりに身体的に甦るような気はします。

本当にこんなこと、自分でしたんだ……。あんなことをされたんだ……。

たしかに肉体は傷つき痛んでいます。だから、きっと事実なのです。

これから、そんなマリカの週末についてお話をしたいと思っています。マリカの残したメモを痛みの記憶をたどりつつ、わたしなりに思い出してみたいのです。

本当の意味で、わたしがマリカになるための旅なのです。

絞首刑

梅雨空でした。ときどき小雨が降って傘が手放せません。目印の公園の街灯。濡れたヤマボウシの白い花がその光で照らされている。こんな場所で咲いても誰も気にもとめないでしょうに。

そこで待っている男性に声をかけました。

「マリカです」

男は一人でした。

「見せろよ」

トレンチコートの前を広げました。素肌に冷たい風が染み込みます。

「便所虫 マリカ」と男は声を出して、お腹に転写シールで貼った文字を読みました。その下には黒いパンストのゴムの部分。

「ついて来いよ」

彼のあとを追いました。

かなり早歩きで、ついていくのが大変です。体が大きくて、歩幅も大きいのです。ついていくのが当然であり、ついていかなければなりません。もし相手を見て断ったなどと掲示板に書かれたら、マリカとしての存在を失うようなものです。

どんな相手にも必ずついていく、なにをされても文句を言わない……。

その評判を失いたくないのです。

公園にほど近い街道に面した一角。夜でも走行音などかなりうるさいところです。

廃屋のような四階建てのビル。一階に店舗があったようですが、その看板は壊れて中の蛍光灯を入れる部品が剥き出しになっています。シャッターに張り紙がいくつもありますが、どれも古いもので、剥がされたあともたくさん残っています。

見上げても、どの階も真っ暗です。男は外階段を上がっていきます。会った瞬間は、それほど怖い人だとは思いませんでしたが、とても怖いところに連れていかれているようです。

行ったらダメ。そう思うからこそ、考えないようにしてついていきます。

ガツンと音を立てて鉄の扉をあけると、「来たぞ」と中に声をかけました。

パッと明かりがついたのですが、野外で使うようなランタンでした。もう一人いて、そのシルエットが動きます。

よく見えませんが、ホコリっぽくて、長年、放置されているようです。

コートを脱がされました。

「靴も脱げ」

ヒールから足を抜きました。

パンストだけの姿。

待っていた男がもてあそんでいるのは、絞首刑にするときのように、輪を作った縄です。頭からその輪を通すと、ネクタイのようにぎゅっと締めてきました。

「うっ」

男たちは笑います。

手が伸びてきて、乳房をつかみます。しばらく感触を楽しんでから、鷲掴みにして握り潰そうと力を入れてきました。

「ぐぐぅ」

「痛いか?」

「はい」

「泣き叫んでいいんだぞ」

「いたい!」

許可をいただければ、思い切り声を上げます。お好みのままに。

LEDのランタンなので白い光が低い位置からわたしたちを照らしています。そのため、明るく見えている部分よりも、むしろ影の方が多くて、幻想的です。

「これを使ってやろう」

パドルを男は持っています。固い木。まな板のよう。女を無慈悲に叩くための道具です。

「ケツを出せ」

お尻を突き出します。バーンと音が響いて、お尻をぶん殴られました。

「ぎゃー」

痛くて前に数歩、出ましたが、それで喉に縄がぐっと食い込みました。

「誰が動いていいと言った」

「すみません」

バーン。

「ぎぃぃぃぃ」

強烈な痛み。右、左とお尻を打ち据えてきます。足が震えて、立っていられないのですが、しゃがもうとすると、縄をぎゅっと引っ張られます。

手で縄を持ち、少しでも緩めようとするのですが、彼らが思い切り引くと、指を間に入れられないぐらい締まってしまうのです。

死にたくない……。

お尻を高く上げるしかないのですが、そこを狙ってパドルが打ち据えられます。

「ひぃぃぃ、たすけてぇぇ」

泣きながら情けない声を出します。

「正座しろ」

足を蹴られます。

腫れ上がったお尻を、ふくらはぎの上にのせます。

「口をあけろ」

さっそくのご挨拶です。

ぶらりとした男のものが差し出され、先っぽが舌の上に乗りました。

どうすればいいのかと思ったのですが……。

「飲めよ」

ちょろっと、暖かい液体が流れてきました。それを飲み込んだとたん、奔流が口の中へ。

「あがあああ」

粗相のないように必死に飲みます。

口からあふれて顎から喉、そして胸へと伝わっていきます。

「さすがに便所虫だ。うまいこと飲むな」

「おれのもだ。一滴もこぼすんじゃねえぜ」

二人続けての飲尿。

たとえてみれば、ジョッキに入ったお茶を立て続けに二杯、いっきに飲むようなものです。これができるようになるのに、マリカはそれなりに練習を積んできたのです。それでも勢いのよい水流は、あふれて体を濡らします。

「こぼしやがって。下手くそだな。あとでその分も罰してやる」

ニオイは実はこうやって飲む限り、それほどではありません。味は……。しょっぱかったり、苦かったり。なかなか慣れることがありません。体が拒絶反応を示すので、必死に抑え込むのです。

男はそのまま口の奥まで入れてきました。

ジュボジュボと尿混じりの唾液で、太く固い男根をしゃぶります。

「どうだ。小便で汚れたチンポを、まんこに入れてやろうか」

口が塞がっているので、返事はできません。

お尻を両手で持ち上げるもう一人。

ビリビリとパンストを破ります。股間のところだけ。

「お先に」

指で穴を探ってきます。濡れているようです。その様子を乱暴に確認しています。

ぐいっと広げて差し込んできました。五日ぶりの感触。熱い……。

「がふぅぅ」

しゃぶりながらも、声を上げてしまいます。

「こういうのを知ってるかな」

しゃぶらせている男が、ベルトのようなものを腰につけました。黒いベルトには左右に靴の踵ぐらいのべろが下がっています。そこに三センチぐらいの長さの針が、華道で使う剣山のように植え込まれています。

しゃぶっていると、顔のすぐ横にその針先があります。

「気をつけろよ。顔を傷つけたくなければな」

ちょっとでもズレたら、ぐさっと頬を貫くでしょう。

「交代しようぜ」

後ろの男が声をかけました。

ジュポッと音を立てて、口の中から固く大きな男根が引き抜かれました。

ゲホッとむせながらが、だらっと涎を垂らしました。

「口にあれをつけさせたほうがいいぞ」

「そうだな。噛まれたら大変だ」

男は金属の輪をマリカの口にはめ込み、それについているベルトを頭の後ろで留めました。口を閉じることはできません。金属を噛むと、とても不快な味と感触です。

「いい具合に腫れているな」

後ろに回った男は手綱のように首の縄を引きしぼりながら、自分たちが叩きのめしたお尻を撫でています。とても熱くなっていて、ヒリヒリしています。

「これは痛いぞ」

男がべちゃべちゃになっている穴に挿入してきましたが、同時に腰につけた剣山が、その腫れたお尻に刺さったのでした。

「がぁぁぁぁ」

全身を震わせて、痛みを訴えます。彼らの答えは笑いと、口の中への挿入でした。

「うれしいか? 便所虫」

ぐさぐさとお尻を刺されながら、男は腰を使うのです。

「なにをされても文句を言わない女だものな」

苦痛の中で、せめて性器で男のものを包み込む快感を得たい……。でも、それを上回る痛み。

突かれるとお尻に走る激痛……。

「おれがイクまでに、おまえのケツがもつかな」

お尻を壊されながらのセックス……。

どれぐらい続いたのかわかりません。痛いとあそこが締まるのでしょう。男は悦びながら、中に出して果てました。

そして口の中の男も射精したのです。

「なんだ、思ったより早くやっちゃったな」

マリカを利用する男性の多くは期待が大きいのか、準備の段階でかなり興奮されていることも多く、愛撫もなにもなく最後までいくことは珍しくないのです。

極めて短時間で興奮はおさまり、満足してしまうことも多いですし、関心を失ってしまう人もいます。「汚い」と遠ざける人も。

なにをやってもそれほど興奮しないことに苛立って、マリカを責め続ける人をマリカは求めていたのですが、案外、少ないようです。なぜなら、こうしてわたしは生きながらえていますから。

果てることのない欲望は、マリカを滅ぼさなければ終わらないはずなのに。

でも、どこかにマリカを処刑してくれる人はいるはず。

「もう一回やろうぜ。回復するまで、便所虫をもっと泣かせてやろう」

背後の男がお尻に突き刺さった剣山をそのままにして、ベルトを外したのです。そしてそのベルトをマリカの腰に巻き付けて、ぎゅっと締めました。

「ぎいぃぃぃ」

「きれいに打ち込んでやるよ」

パドルを手にしています。

「あああああああ」

口が開いたままなので、言葉になりません。

「こっちに来い」

汚れた床の上を歩かされ、裏口に連れていかれました。ドアを開けると、湿った夜風が吹き込んできました。

ランタンの灯りはほとんど届きませんが、街の灯りで彼らのことをぼんやり見ることができます。

首を絞めている縄を持った男が、上の階段に歩いて行き、そこの手すりに巻き付けて引き上げました。

「ぐはっ」

つま先で立つのがやっとです。

思わず手で縄をつかみますが、その手を取られて、背後で縛られました。

「いい眺めだ」

パドルで剣山を叩き付けてきました。

「がひん!」

逃げようとしても、足が浮けば首が絞まります。

その痛みは深く、長く続きます。

肉がザクザクにされていくのです。

「もっと泣け!」

「あああああ」

叫んでみたところで、街の騒音に溶け込んでしまいます。

「聞こえないぞ」

叩く音は鈍く、固くなっていきます。

足が浮けば首が絞まってしまいます。

このまま絞首刑で死ぬのでしょうか。

ただでさえ首が絞まってくるのが怖いのです。一度締まると、手で縄を広げてくれない限り、緩みません。首を動かすと、さらに締まるような気がして、なにがあっても動かないようにガマンしなければと思うのです。

助かるためには、自分からお尻を突き出すしかありません。

「ほら、もっとケツを出せよ」

哀れな便所虫。お尻に針を打ち込まれて、打ち据えられて。泣きわめいています。

「いくぞ」

「あげげげえええ」

ぐさっと深く打ち込まれたようです。

週末の遊び。今回はこれで終わるようです。

血が流れ、飛び散っているでしょう。クラクラしますが気絶すれば首が絞まります。

何度も、このまま逝くのもいいかもしれないと思いました。

ですが、マリカは貪欲なのです。

「これっぽっちの苦痛で死ぬの? だいたい、いつもの快楽もまだ来てないわよ」

そう。果てることのない欲望の持ち主はわたし自身なのです。いつかどこかで、強烈な快楽の炎に身を焦がしながら逝くことこそが、マリカの願望です。

そのとき、どれほどの苦痛と快感を得られるのでしょう。そんなものは実際にはなくて、苦痛だけで終わるのかもしれません。それでも、最後のところまで行ってみたい。地の果てまで行きたい。

「まだ、責め足りないようだな」

男たちは息を荒らげながら楽しんでいるようでした。

遊戯

「○○さん、今度の休みはなにしているの?」

「すみません。親の介護で忙しくて……」

「そうか、そうだよね。いやあ、いいコンサートがあったんだけど」

「すみません」

オフィスではイスに座り続ける仕事もあります。毎週、不特定多数の方にこの体を嘖んでいただいているので、もっとも楽ができるはずの仕事さえも、地獄の苦しみになります。

マリカではないときのわたし。

イスに血がついているのを見つけて、さりげなく拭き取り、スカートのシミをトイレでこっそり消したりすることもあります。そのための薬品を常備しています。

だけど、マリカではないときのわたしは、それが他人事のようにしか思えません。なぜ、こんなに痛いのか。なぜ、こんなに痣だらけなのか。そしてどうすればこんな酷い傷ができるのか。

考えさえしません。手当をし、耐えるだけです。

わたしの身には、いつも傷がありました。それを不思議だと思う自分もいます。同時に受け入れている自分もいるのです。ニキビや深爪、靴擦れしてしまうような感覚で。

それが金曜日の朝、突然、気づくのです。週末がやってきた……。マリカにならなければ……。

もうそれだけで頭がいっぱいになり、体は発情していくのです。激しい苦痛を求めて……。

マリカの処刑執行人を探すのです。

すっかりお尻に剣山が打ち込まれたあと、男たちは、アナルセックスの準備をはじめました。口を開かせていた金属の輪に、無造作に指を入れ、物のように扱われます。

「どうだ、期待通りか?」

寒さと恐ろしさでガタガタ震えるばかりです。

「ケツの中に汚いものがいっぱい詰まってるんだろうな」

「なにしろ便所虫だからさ。たっぷり浣腸してやらないと」

寒くて、痛くて、泣きながら震えているところに、注射器で氷のように冷たい液体が、腸内に流し込まれました。

腸がメリメリと膨らんでいきます。

この感触も日曜日以来のこと。慣れたようでも、前のことを覚えていないので、いつもお尻の粘膜が切られるような痛みと、腸が破裂する恐怖に怯えます。

「百ミリリットルだぜ」

「どうだ、二発ぐらいじゃ効かないか?」

なにを入れられたのかもわからないのです。腸がミシミシと音を立てて動き出します。

「ふえええええ」

「泣くなよ。ただの浣腸液だよ」

お尻が痛いので、いつもより辛く感じるのです。

「おい、いきなり漏らすなよ」

お尻の横を叩かれました。

「ふはっ」

傷口に塩をふりかけるような激痛。

「きついか。どうだ、三発目だぜ」

「まだはじまったばかりだ。四発目。おれたちを満足させられなかったら、おまえの評判は堕ちるんだからな」

「そうだよ、そうなったら、こんな風に遊んでくれるやつもいなくなるぞ。五発目だ。五百ミリリットル。まだ足りないか?」

「ううううぅ」

全身を震わせています。つま先立ちで、もだえるのです。なんとか体をひねって片方ずつ踵をつけます。そうしなければ足が痙攣を起こし、そのまま首に全体重をかけて悶死しそうです。

首がいっぱいに伸びていますが、なんとか耐えます。息をするだけでもかなり苦労します。

もし呼吸が満足にできなければ、気が遠くなり、膝がガクッといってしまうかもしれません。

一人が乳房をつかみました。激しく引っ張って揺すります。

「楽しませてやってんだぜ」

「あがあがががが」

お尻をぎゅっと締めます。

「あっ」

男が指を入れてきました。

「どうなんだ、便所虫。気持ちいいか」

穴の中に二本の指。虫のように動かしています。

出そうになって、必死に締めているのに、指でこじるのです。

「けっこう、きれいな顔をしていて、変態なんだね」

お尻から抜いた手を口に入れてきます。

「きれいにしろよ」

「あああああ」

舌で拭います。甘い浣腸液の味。

「ゆるゆるになってるんじゃないのか? 漏れてるぞ」

「あわわわ」

いくら締めても、こじられたのだから、いくらかは漏れてしまいます。

「だらしがないケツだな。栓をしてやろうか」

「これなんか、どうかな」

男が工具を見せるのです。ドライバー。太い柄はすべりにくくするために、刻み目が複雑に入っています。

「あぐぐぐぐ」

拒否できません。

口に入れてツバをつけさせられます。太く固く、ザラザラです。粘膜が切れてしまうかもしれません。

週末最初の責めで粘膜が激しく損傷すると、それからの四十八時間はさらに地獄となります。

彼らはそれを知っているのです。掲示板を見ているから。わたしは覚えていなくても、彼らは覚えています。自分たちがマリカにしたことを、自慢げにアップしています。写真付きで。

それがさらにみなさんを刺激して、先週よりも過激なことを考え、実行するようになります。

だけど、それこそマリカの狙いなのです。

処刑人に出会うことが困難でも、出会った人を処刑人にすることはできるかもしれないのです。

あと何週。マリカは生きていられるのでしょうか。その前に飽きられてはいけません。嫌われてはいけません。存在を否定されてはいけません。

月曜から金曜だけのわたしになってはいけないのです。

「どうかな、うまく入るかな?」

ぐりぐりと硬いプラスチックの柄が押しつけられて、中まで入り込んできます。腸を押し上げるようにして奥まで入っていき、柄のくびれたところで止まります。

「ふひぃい」

ザラザラの表面を少しでも痛くしたくないので、多少漏れてもいいから、受け入れやすいように相手に合わせて飲み込んでいきました。

「なんだ、これじゃ小さすぎたんだな。ぜんぜん、楽しくなかっただろう?」

「もう一本、入れてやろうぜ」

入るかどうかわかりません。二本になれば、余計に拡がって漏れてしまうでしょう。そして漏らしたことを口実に責められるのです。

先に入っていた方を斜めに押すようにし、そこに二本目を当てたようです。広げながらすべり込もうとしています。どんどん液は漏れていきます。

足が濡れていきます。

「あぐう!」

かなりの力で押し込まれました。お尻は限界です。

「見ろよ、二本でも足りないんじゃないか」

「じゃ、三本に挑戦だ」

「あとは細いのしかないぜ」

「細いのが四本あるじゃないか。全部ぶち込んでやろうぜ」

ボールペンほどの細いドライバーの柄を、ガチガチと音を立てながら、先に入れられた二本の隙間に差し込んできます。

「あああああ」

「そうだ、声を出せば少しはケツ穴が拡がるぞ」

ずずっと入り込むと、その分だけ肛門が広がります。裂けているかもしれません。括約筋が損傷すれば、それだけ腸が飛び出しやすくなります。

お尻が痛いだけではなく、仕事中も飛び出した腸に苦しめられることになるのでしょうか。

「でかいケツ穴だな」

漏れることはしょうがないのです。わたしも意識して、お尻の穴をめいっぱい広げています。

「入っちゃったぜ」

「いいね。おもしろい眺めだな」

彼らは写真を撮りはじめました。ドライバーをぐりぐりと動かします。

「ぐはあああ」

もはやわたしの努力ではどうにもなりません。肛門が壊れていくのです。

「おお、ぎっちりじゃん」

「壊れちゃうかもよ。ほら、どうなんだ」

ぐいっと押し込まれると、ビュッと液が噴き出します。それがおもしろいのか、彼らは六本のドライバーを押したり引いたりこねたりします。

「あうあうあう」

「こいつ、感じてるのかよ。すげえ、やりてえな」

「いったん、出すか」

一本ずつドライバーを引き抜かれます。お尻を傷つけられたくないので、浅く呼吸をして、ムダな力を入れないようにして、耐えるのです。

その間にも排泄は続いています。

すっかり引き抜かれると、全開になった肛門から、激しく排泄をしました。

とんでもない量が落下した音。

彼らは階段の踊り場が汚れてもいいらしく、そのままにしています。

「もう一回やるぞ」

「あううううう」

「イヤなのか?」

「あううう」

「してほしいんだろ? な、どうなんだよ」

頬を叩かれ、鼻の穴に指を入れてきます。浣腸液とお尻の臭い。

「え? マリカ。おまえの体はおれたちのものなんだ。なんだってするんだろ。文句は言わせないぜ」

「がががが」

鼻の穴に指を二本入れて、引き上げるのです。鼻がもげそうです。それにすごく恥ずかしい。

その指も口の中できれいにさせられます。

「今度はもっといいものを入れてやろう」

二人はプラスチックの容器におしっこをしました。それをわたしに見せます。

「どうだ。こいつをおまえのケツ穴に入れてやる。おれたちのものをおまえの腹から体の中へ染み込ませてやるよ」

「ああぅ」

「欲しいのか? たっぷりあるからな。もちろん、グリセリンも入れてやるから安心しろ」

「げええええ」

思わず泣きを入れてしまうのですが、彼らはつぎつぎとお尻に注射器で生ぬるいものを入れてきました。

先ほどの小水を浴びせていたので彼らがそんなに排泄するとは思えません。おそらくグリセリンを大量に入れているのではないでしょうか。

捻れ、発熱し、麻痺してきた腹部。アヌスは開いているのか閉じているのかもわからなくなってきています。きっと、ダラダラと液体を垂れ流しているのではないでしょうか。

「今後は一リットル以上あるぞ。栓をしてやらないと漏れちゃうな」

彼がわたしに突きつけたのは、口に入らないほど大きなアダルトグッズ。赤と青の縞々で、先端こそ丸いものの、軸の部分は段々になっているだけで、最初から最後まで太いのです。

「しゃぶってみろ」

口を大きく開いてもちゃんと含むことができません。

横から前から舌をはわせて、しゃぶります。

「ツバをつけたほうが痛くなくていいぜ」

そう思って必死なのですが、なかなか届きません。

「手伝ってやるよ」

彼らはわたしにツバを吐きかけます。それは口やオモチャにかかり、たっぷりと湿らせます。

「よーし、おれたちの小便、全部入ったぞ」

お腹がたぷたぷしています。そして強烈な便意が襲ってきました。

「あぐっ」

「漏らしすぎだぞ。もっと締めろよ。力、入らないのか?」

スティックを口から抜くと、お尻にあてます。

ぐいっとねじ込んできました。

「あはあぁ」

息を吐いてお尻の穴を広げるように意識しますが、思った以上に太く、簡単には入りません。

ただ、ドライバーの柄よりは、ずっと気持ちがいいのです。正直、そのために作られた玩具は、滑らかで、大きさこそきついですけど、むしろ救いです。気持ちとしても、異物の中ではホッとできます。

男たちは押したり引いたりしながら、斜めに傾けたり、ぐるぐる回したりして、先端部分を通過させました。

「がはっ」

吐き気がするほど、太いのです。ただ、粘膜が思ったよりは傷ついていないことがわかって、さらに安堵しました。

出したくてしょうがないのに、栓をされてしまいました。あまりに大きいので、腸ごと押し込んでくる感じ。安堵は一瞬で、とても苦しいですが、積極的に協力して飲み込んでいきます。

「すごいね、半分入ったぞ」

「さすがマリカだな」

「あぐううぃぃ」

「苦しいか? だけど、もっとおもしろいことをしような」

二人が足を持って、体を持ち上げました。

首が楽になったのと、つま先が楽になったのですが、彼らはそれで許してくれるわけではありません。

担ぎ上げて、階段の手すりにお尻を載せたのです。

「またぐんだよ、手すりをさ」

踊り場部分の水平の手すり。

極太スティックがあたっています。

「ちゃんとまたぐんだぜ」

彼らは足を外に放り出し、むりやりまたがせたのですが、玩具の突き出た部分が手すりの横に当たっています。

「それじゃ、ダメだよ。最後まで入れなくちゃ」

「そうだ。入れるんだ」

しゃぶらされたときに見たのですが、長さは三十センチはあったと思います。彼の手の中にあった部分がよく見えなかったので、もしかしたら、それ以上かもしれません。

「すっかり入れてみせるまで、排泄させないぞ」

「あぐぐぐぐ」

「マリカ。便所虫のくせに、できないのかよ?」

「お腹が裂けてもやるんだぜ」

「ははは。ヘソからオモチャが飛び出してきたら、救急車は呼んでやるよ。そのかっこうのままで、病院に運ばれるのさ。おまえらしくていいだろ」

「くぅぅぅ」

不安定で怖いのです。

手すりの向こう側へ体がズレたら、自分では修正できず、首吊りになるでしょう。

廃墟となったビルの非常階段で、全裸で死体となるのです。薄汚れたてるてる坊主のように。

毎週毎週、週末のたびに、わたしはこうして試されているのです。ロシアンルーレットのように、それはいつか、わたしを殺すでしょうし、いま、マリカであることをやめたとしても、これまでにしたことのツケが、いずれわたしを殺すでしょう。

ケツマンコ

肌寒いはずなのに、どっと汗が噴き出します。

「落ちないようにこうしてやるよ」

左右の乳房を別々に縛り、そのロープをまた、一つ上の階の手すりまで持っていき、縛り付けていくのです。今度はオッパイを吊り上げたのです。根元から引きちぎられそうになっています。

くびれた乳房は、哀れに変形していきます。紫色になっているでしょうが、薄暗いのでよくわかりません。

「あぐぐ」

必死になって、お腹の様子をうかがいながら、お尻の位置を変えていきます。体を少し前に傾けて、オモチャの末端が手すりに乗っかるようにしました。

それから体を起き上がらせていくのです。早くそうしなければ、オッパイも完全に伸びきっていて、きついのです。

そしてもし落ちるようなことがあれば、オッパイだけで吊されることになるでしょう。そのとき、引きちぎれたら……。

シンプルな首吊りへの恐怖から、次はまずオッパイ吊りとなり、ブチッ、ブチッと片方ずつ乳房がちぎれ飛び、最後に首吊りになっていく光景が想像できます。

女性らしさの象徴である肉体を失い、血を噴き上げながら首をくくるなんて。

「あぐぐぐう」

スティックの段々になっているところが、一つ、また一つと肛門を通過していきます。そのたびに、脂汗を流し、犬のように舌を出しながら、呼吸をします。

「もうちょっとだぞ」

まだすっかり入り込んだわけではありません。彼らはわたしが完全に手すりに跨がることを望んでいます。

死ぬのが先か。おへそからグッズの先端が飛び出すのが先か。いずれにせよ、恥ずかしい死に様でしょう。

「んんっぐ」

どれぐらいそうしていたのかわかりませんが、とうとう、最後の部分をクリアして、お尻の穴がぺったりと手すりにつきました。

「おお、やればできるじゃん」

男たちがわたしの足を持ちます。

「うががががあ」

「せっかくだから、もうちょっと遊ぼうよ」

足を彼らが持ち上げてしまうので、わたしはスティックを飲み込んだお尻だけで体重を支えることになりました。その結果、さらに深く入り込んできてしまい、スティック全体を飲み込んでしまいそうな感じです。よくあるディルドような、入り込まないような台というかストッパーの部分がありません。このスティックを作った人は、これを全部飲み込むやつはいないと考えたのでしょう。

もし、これが中に入り込んだら、排泄できなくなる恐れもあります。

以前にも、きっとそんなことがあったかもしれない。そのときはどうしたのでしょう。それとも、これまでは無事に排泄できたのでしょうか。記憶が曖昧です。思い出せません。

ただ、平日に、オフィスのトイレで、巨大なディルドを排泄した記憶が甦りました。どうしてそうなったのか、さっぱりわかりませんが、お尻の中に入って取れなかったのでしょう。そのまま出勤したのです。

腹部に巨大な異物が入ったまま日常生活を送ることほど恐ろしいことはありません。

食事も喉が通りません。排泄欲求があっても、出すことができません。糞便とガスが腹部に溜まっていくので、吐き気に悩まされます。何度か胃液を吐きました。

これはまるで妊娠してつわりでもしているかのようで、お腹には自分の子が入っているかのような感じです。どちらも未体験なので失笑されることでしょうけど、わたしはそう感じたのです。

「出て、お願い」

出そうになり、トイレに行くのですが、なにかにつっかえています。二日目の夜、自宅で半狂乱になりながら、お尻に指を入れて引きずり出そうとしたり、アイスピックを入れて、グッズを突き刺して引き出そうとしたりもしました。

困ったことに、こんなに苦しいのに股間がべとべとになってきて、何度も感じてしまうのです。

おそらく異物がお腹の中から膣や子宮を刺激しているのではないでしょうか。

「はああ、なんでえええ」

アクメの中で、このまま死ぬのかと思いました。

一睡もできず三日目だったでしょうか。

ふいに仕事中にお腹がぐぐっと動きました。パンパンに膨らんで服がきついのですが、弾けそうなほどの動きです。

ガマンできなくなってトイレに駆け込みました。

大量の小水が出て、それがまるで破水したような感じ。

ですがこれまでも、オシッコだけで終わることが多かったので、またダメかと思ったとたん、強烈な痛みとともに巨大なグッズが動いたのです。ズルッと。

「あっ、出る」

指をアヌスに入れると、すぐそこに底部がありました。その縁を指先で押すようにして、限界までアヌスを開いていきます。

「うううう、だめええ、きついい」

脂汗を流しながら耐えますが、またグッズが奥へ戻っていってしまいます。

何度か出そうになり、また戻るという繰り返しののち、やっといっきに一センチほど底部が出てきました。これを逃したら病院に行くしかない。そう思い、指をしっかりと底部にかけて、腸壁に擦りつけるようにしながら引きずり出していくのです。

「ぐはあああ」

思わず声を出してしまいました。

ポタポタと血が便器に落ちます。どこかで出血しているようです。

それでも構わず、とうとう握れるようになった異物を捻るようにして引き出していきました。

強烈な痛み。

肛門を痛めつけながらそれが出てきます。

やっと、産み落としたとき、笑顔が浮かぶほど安堵しました。

それに続いて排泄物が大量に落ちましたが、ずっと笑っていたと思います。

出たのはよかったのですが、今度はその醜く恐ろしい形状の玩具を、どうやって持ち帰ればいいのかと悩んだのでした。汚物入れにも入らない大きさでした。

便器の水を何度も流して洗い、人がいないのをみはからい、服の中に隠してロッカーへ急いだことを思い出しました。

出血は腸壁からだったのでしょうか。その後、とくに症状もなく、医者へ行くこともなかったのですが、できれば二度とやりたくない苦行でした。

彼らは足首に縄をつけると、その縄を引っ張るのです。

「ぐええええ」

体がすべっていきます。スティックが突き刺さった肛門で、手すりを擦ることになります。

今度は反対側へ。

「がはああああ」

粘膜がめくれ、傷つきます。スティックの底と手すりに挟まれて、潰れます。

「どうだ、マリカ。気持ちいいか」

「かゆいんじゃないか、おケツがさ!」

男たちはしばらくそうやって遊んでいました。

そして、やっと乳房と首の縄が解かれ、踊り場に降ろされました。

「しゃぶれよ。おれたちを立たせたら、排泄を許してやるよ。さっき、一発抜いたから、簡単に立つかな?」

極限まで拡がったお尻の穴は、手すりで擦られて燃えるように痛みます。突き刺さった剣山。腸の深くをえぐるスティック。そしてお腹の中で暴れ回るグリセリンと彼らの小水。

首と乳房は締め上げられた跡がうずいています。

寒くはありません。汗をだらだら流しながら、必死で彼らの小さくなっている男根をしゃぶりました。

気が遠くなっていきます。震えが止まりません。

「おお、うまいじゃない」

必死なだけです。

一人を固くさせて、次の人にとりかかります。彼は寒いのか縮こまっているのですが、なんとか勃起させました。

「だめだ、半立ちだ」

「許せないな。え?」

もう少し時間があれば完全に固くさせられたかもしれません。開口器のせいで、唇が使えないのです。

「普通の排泄はさせないぞ」

足首についていた縄を手すりにしっかりと縛り付けました。そしてわたしを抱え上げると、手すりの向こう側へ降ろしていったのです。

「はがあああ」

天地が逆さになっていきます。

彼らはわたしを外に向けて、開脚で逆さ吊りにしたのです。

彼らは足で、わたしのお尻の剣山を蹴ります。

「ぐひっ」

スティックを飲み込んだお尻の穴をつま先で嬲ります。

「ほら、出していいんだぜ。苦しいなら出してみな」

でも、すぐに排泄できるわけではありません。あのスティックをまず出さないと。

「出せるかな? マリカならできるだろ」

開いた口から唾液や胃液があふれ出しました。

また写真を撮られます。ストロボが激しく光ります。かなり遠くからも、非常階段に逆さ吊りにされた哀れな生き物が見えているのではないでしょうか。

金曜の夜。恋人同士がレストランから出て、そぞろ歩きをしています。近くに公園があるので、そこでキスでもするのでしょうか。

マリカにはそんなありふれた幸せは許されません。

「あうぅぅぅ」

彼らは手伝ってくれません。

わたしは自力で、手を使わずに、お尻の中に入ってしまった極太スティックをひり出さないといけないのです。

彼らは、協力するどころか、剣山を蹴ったり、手で剣山を半分ぐらい引き抜いてから、また突き刺したりして、遊んでいます。

その激痛で、集中力が保てません。

「うがあああ」

入れるときは体重を使って手すりに押しつけたわけですが、出すときはどうすればいいのでしょう。スティックに刻まれた段々が、引っかかって、とても排便するようには出せそうもありません。底の部分までお尻の中に入ってしまっています。

かつての悪夢が甦ります。ですが、あのときは指も自由に使えましたし、時間もかけられました。

「ほら。いきめよ」

「そうだ。うーんってさ」

からかわれながら強くいきむと、肛門そのものがめくりあがっていくような、腸が飛び出してしまうような恐怖があります。

「おい、いつまでそうしてるんだよ。それを出さない限り、おまえは苦しみ続けるわけだな」

「頭に血がのぼって鼻血が出て来たら、危ないぜ」

せめて、手を使わせてほしい……。

「便所虫ちゃん。自分のことは自分でしようね」

「がひぃぃぃ」

お腹に力を入れてみますが、しばらくはびくともしません。逆さ吊りなので、余計に緊張しているせいか、肛門が開いていきません。指を入れて掻き出せればまだしも……。

「おっ、少し出てきたぞ」

「ホントだ。おもしろいな」

「うううん!」

力を溜めて、いきみました。ぐっと底の部分が押し出された感覚がありました。浣腸液も外に出たがっています。そして太いとはいえ、玩具は滑らかなので、少しは動いてくれます。

「ははは。やっと最初の一歩だな」

段々のおかげで、逆戻りはしませんが、次の段を排泄するには、これまでと同じように努力しないといけません。

呼吸を整えては、痛いのをガマンして、いきむ。すると数センチの段差を乗り越えて、ちょっと出ていきます。

体が非常階段に当たって、ガンガンと音を立てます。

「活きがいいね」

「ピチピチの魚か。死にかけの魚か」

彼らは無責任に笑っているのです。

「あああああ」

すごく、きつい。

「泣くなよ」

二人は、乳房や首に使った縄を、鞭のように振り下ろしてきました。

「ほら、早くしろ」

「そうだ、応援してやるぜ」

バシン、バシンと縄がお腹や乳房に打ち込まれます。

「退屈だぞ。せっかく立ったのに、萎えちゃうぞ。もし萎えちゃったら、最初っからやり直しだぜ」

恐ろしいことを言うのです。

余裕のないわたしは、必死でお尻を開けたり閉じたりしながら、スティックを送り出そうとします。

「あうぅ」

でも、そのおかげで、ぬるっとかなりの部分が外に出ました。

「はー、はー、はー」

心臓が口から飛び出しそうになっています。

「楽しいだろう。マリカ」

必死なのです。

半分以上が出ているのに、そこからもまた、大変なのです。というのも、肛門の大部分がスティックと一緒に外に飛び出してしまって、うまく力が入らないのです。いきむと、また飲み込みそうになるほどです。

しばらく、まったく出ない時間がすぎます。

「どうしたのかな? おれたち、飽きてきちゃうよ」

「それとも、そんなにこのスティックが好きなら、もう一度、入れてやろうか」

靴でスティックを蹴るのです。

「あああああ」

それだけは許してほしい。

うんと力を入れて、残りの部分を早く出してしまいたい……。

涙を流しながら力を入れます。腹筋に力を入れて、呼吸を深くしながら、残りの部分を押し出そうとします。

腹筋を鍛えるように上体を引き上げながら力を入れていきました。

「ううううー」

すると浣腸のおかげもあって、中から強烈な切迫感があり、ぐぐっと押し上げくれました。

「あああ」

「お、出てきたぞ」

スティックの残りの部分が飛び出し、ガンと音を立てて踊り場に落ちました。

続けて汚物が噴き出しました。

「うひぃぃぃぃ」

最初の浣腸の残りもあったのかもしれませんが、大きく開いたケツ穴から、大量の汚物を垂れ流し続けました。

逆さにされているので、わたしが浴びるのです。グリセリンと彼らの小便。それを浴びました。口の中にもしたたり落ちてきました。あまじょっぱい味がしました。

「すげえな。さすがだね」

しばらく、呆然としていました。

ホッとしたのです。

開いた肛門は閉じません。痛みも残っています。

「丸見えだね、マリカのお尻の穴」

彼らは懐中電灯で覗いています。そして、麻痺したようになっている穴を指で触ってきます。二十本の指が中に入り、縁を触っています。

「よーし、ここでやるぞ」

彼らは縄を引っ張り、やっとわたしを踊り場に戻してくれました。

「マリカ。おまえのケツマンコ、すごくいいぞ」

「やらせてもらうぜ」

今度は手すりにお腹をのせて、縛り付けられました。膝の裏を手すりにかけて、格子を利用してしゃがむようなかっこうのままお尻を開いて縛られました。

髪の毛に縄をかけ、上階の手すりを使って吊り上げます。

手すりに止まった鳥のような姿でしょうか。

そして、彼らがお尻に入ってきました。

あんまり感じないのですが、彼らは悦んでいます。

「おい、しっかりしろ」

背中やオッパイをバシバシと叩かれて、少し気力を取り戻すと、「おお、締まる締まる、いいぞ」と彼らは楽しんでいます。

彼らが動くたびに、剣山が再び押されて、痛みが甦ります。

「ぐううう」

のけぞるほどの痛みですが、そうするとまた「すげー、締まる」と悦ばれました。

こうして、彼らはお尻の中で果てていきました。

「もう一回やろうぜ、マリカのケツ、最高!」

「デリッシャス!」

剣山を引き抜いて、血を流しているお尻を、もう一度、犯されました。

どろどろのわたし。

でも、これはマリカの週末のスタートにすぎないのです。

縄を解かれて、彼らと笑いながら記念撮影をします。それが決まりなので、どんな状況でも必ず笑います。

掲示板の「便所虫の歌」には、こうしてまたマリカの写真がアップされるのです。

彼らは撮影したら、すぐにツイッターや掲示板でわたしのことを書いてくれます。満足した、よかった、おもしろかったと感想を付け加えてくれることで、マリカを使ってみようという新たなチャレンジャーが現れるのです。

わたしはほとんど記憶がないので、この写真を見ても、ピンと来ないのが残念です。

みなさんが思うほど、マリカをいたぶろうという勇気のある人は多くありません。

アクセスはしてくれたり、コメントもいただくのですが、マリカを潰してやろうとか、酷い目に遭わせてやろうと思う人は、そう簡単には現れないのです。

だから、わたしも必死です。

評判を維持して高めていかないと、マリカは簡単に忘れ去られてしまうことでしょう。そして、マリカを潰そうという最終的な「神」に出会うことはできないでしょう。この体を、完全に潰し去る人は、マリカにとっての神なのです。

ただ殺してくれる処刑人もいいのですが、欲の深いマリカは粉々にすり潰してほしいと願ってもいるのです。

マリカはその人に出会うために、毎週、体を誰かに与え続けるのです。

彼らと別れて、汚れて痛む体を毛皮に包み、わたしは夜の街をさまよい、いったん、部屋に戻ります。

一時間ぐらい歩いてやっと着きますが、それは気持ちの整理のためだし、誰かに尾行されて、部屋を突き止められたくないからでもあり、記憶を消去していく儀式でもありました。

とはいえ、この部屋も、実は仮の姿。週末だけ過ごす場所です。でたらめな名前でも入れてくれる特殊な宿。横になったらいっぱいになってしまうぐらい狭い板の間です。

コインシャワーで痛んだ体を洗い、薬品を使います。肛門付近は気が遠くなるほどの痛みです。お尻の傷も強烈で、消毒しただけで失神しそうになりました。

便所虫の歌 第1部 (1/5)
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