マゾヒズム(ドイツ語 Masochismus、英語 Masochism)、または被虐性欲とは、肉体的・精神的な苦痛を与えられたり、羞恥や屈辱を誘導されたりすることで性的快感を味わうこと、あるいはそのような立場に自分が置かれる想像で性的興奮を得ることである。『毛皮を着たヴィーナス』など自伝的な作品で苦痛を性的快楽として書いたオーストリアの作家、ザッヘル=マゾッホの名に由来する。1886年、著書『性の心理学』でマゾヒズムの概念を提唱したのはクラフト=エビングである。当時、マゾッホはまだ生きていた。嗜好を持つ人をマゾヒストと呼ぶ。俗に「マゾ」。ひとりの人間がサディズムとマゾヒズムを合わせ持つ場合はサドマゾヒストと言う。
WHOのICDでは、ICD-10まで「サドマゾヒズム」の診断名が使われていた。2019年のICD-11では、「性嗜好障害」の下に置いていた分類をやめ、「強制的性サディズム症」へ名称を変えた。個人の機能障害を伴わない、社会的逸脱や葛藤だけのマゾヒズムは、精神疾患に含まれない。2013年のDSM-5では、臨床的に意味のある苦痛や機能障害を引き起こしている場合に「性的マゾヒズム障害」と診断できる。本人に心理社会的問題が起きていなければ、BDSMは基準を満たさない。窒息性愛を伴うものがあり、死亡事故に繋がる危険も指摘されている。
マゾヒストが興奮を満たすとき、パートナーがサディストである必要はない。相手との関係を配慮し、嗜好についてある程度妥協し、両者の行為で満足が得られているなら、「SM」という概念が成立する。「サド男」「マゾ女」など先入観の条件を相手に課すと、そんな都合の良い相手は極めて少ない。語源となったマルキ・ド・サドとザッヘル・マゾッホは、どちらもサドマゾヒズムだったとされる。サドはもともとマゾヒズム的な嗜好を持ち、マゾッホは結婚後、SMプレイで妻にM役を命じた。エーリヒ・フロムは『自由からの逃走』で、サディズムとマゾヒズムは本質的に同質だと書いた。通常、マゾヒズム・マゾヒストともに「M」と略す。極端にマゾヒスト的な性格や振る舞いを指す俗語が「ドM」である。ダウンタウンの松本人志は、自分が作った言葉だと主張している。



