ペットプレイは、ヒューマン・アニマル・ロールプレイの一種で、パートナーを愛玩動物として扱うBDSMである。支配側が服従側を主人と奴隷に置き換えるのはよくあるが、そのバリエーションとして飼い主とペットに置き換えるのがこのプレイだ。モチーフには、性質が分かりやすい動物が選ばれやすい。支配と服従というより、コスチュームプレイやイメージプレイの側面が強いことが多い。小道具を使うなら、その動物の特徴を示す最低限の記号が入っているとよい。イメージだけでも成立する。胸や性器は隠さない前提で組まれる。必要に応じて剃毛や、成人同士の幼児化・女性化が乗る。首輪と尻尾と、隠さない裸体。それだけで「飼われている」絵面は立つ。
自慢のペットになるまで
ペットは愛玩動物である。飼い主とペットの関係では、過酷なSM調教より、信頼と馴致、「躾け」の側がテーマになりやすい。ごく普通の人間を強制的にペットへ落とす主題を好む人も少なくない。その場合、ペットという立場に貶めること自体が、精神的な屈服になる。行き着くところは、パートナーがどれだけ「自慢のペット」になれるかだ。見せびらかせる一匹であること。それが飼い主側の基準になる。成人同士のファンタジーとして幼児化が伴うこともあり、男性なら女性化が重なることもある。人間という種族を愛玩動物として扱う以上、依存と所有の演じ方は年齢ロールとも隣接する。ただし相手は合意した成人であり、児童を性的に描く話ではない。生まれたときからペットとして飼われてきた、という想定も、演じるのは大人の側である。
犬:パピー、散歩、品評
日本では奴隷犬、英語圏ではパピー(子犬)プレイと呼ぶことがある。犬は従順で芸を覚える性質が好まれるので、犬役はその再現を求められる。首輪を着けて散歩させる(露出にもなる)、尻尾を振らせる、お手やちんちんといった命令に従わせる。大抵は愛玩犬として扱うが、使役犬としてのプレイもある。檻に閉じ込める、鎖につなぐのは調教の一環で、飼い主への依存が快感と癒しになる、とされる。罵倒や鞭も適時入る。SMクラブのMプレイでは、M男に人気が高い。芸を見せ、鎖につながれ、主人の足もとにいる。犬役の快楽は、そこで人間の言葉を使わないことにある。
牝犬役では、長い髪を左右に結わえて垂らし耳に見立てるか、逆に短く刈って顔が髪で隠れないようにするか、どちらかが好まれる。オークションの変形として、ドッグコンテストやペットショッププレイがある。犬として品評され、売られていく状況が好かれる。凝ると、本物に似せた鑑札、予防注射の証明書、血統書まで用意する。品評と売買の演技は、奴隷市場のペット版である。自慢の一匹を、他人の前で値踏みさせる。
猫とその他、搾乳、留守番
英語圏ではキティ(子猫)プレイとも呼ぶ。猫は気まぐれで、なつくかと思えば逆らう。猫役は鈴付きの首輪をされ、目の前の動くものに飛びつき、妖艶に肢体をさらして周囲を楽しませることを求められることが多い。犬の従順とは逆に、気ままさが役の核になる。ほかにウサギやブタもモチーフになる。特定の種ではなく、ただ人間扱いしない「ペット」だけの場合もある。想定する動物に関わらず、ペニスを牝牛の乳房に見立て、搾乳と称して強制射精するプレイもある。種の記号より、飼う/飼われる関係だけを残す型だ。
おるすばんは、ペットに留守番させる型だ。慣れないメス役は精神的な負荷が大きいので、最初は30分程度が望ましい、とされる。オス役は、ふっと素の人間に戻らないよう注意が要る。何もせず放置しないこと。どちらも、オモチャを与えるか、他のペットがいると安定しやすい。留守番は放置プレイに近いが、ペットとしての時間を一人で保たせる訓練でもある。人間に戻った瞬間、おるすばんはただの一人部屋になる。
前提になる躾け
動物や現場で差はあるが、調教の向きとしてよく挙げられる前提は次のとおり。しゃべらない。言葉によるコミュニケーションを求めない。手や指にミトンやグローブをするか、決して指を使わない。常に首輪をする。オスでは性器の根元に付ける場合がある。裸である。服を着ない、必要としない。恥じらわない。胸・尻・性器を隠さず、飼い主に見てもらうことを喜ぶ。犬の降参のように仰向けになり、腹や性器・アヌスを晒す。命令があればその格好で放尿する。後背位の交尾姿勢をとり、性器・アヌスを晒す。基本は四つん這い。後ろ足は膝をつけず爪先で歩く四足の訓練を受ける。尻尾を着ける。アヌスに入れるプラグ型などがある。
食餌・排泄・快楽は主人の管理下に置く。勝手なオナニーは禁止される。鎖やリードで小屋につながれるか、檻に収容される。人間のトイレは使わず、専用のトイレや野外で——多くの場合主人の前で——用を足す。食事は餌であり、床の餌皿に顔を突っ込んで食べる。命令に従う。逆らうのもバリエーションではある。従順でないペットはお仕置きされる。主人の希望でペアリングされる。つがいの相手は、他のペット役、大きなぬいぐるみ、あるいは動物を想定した擬似である。夫婦や恋人を同時にペットにする交尾、ぬいぐるみをダッチワイフとした強制オナニーもある。ペットは他人に自慢され、見せびらかされる。主人に依存し、所有されることを喜ぶ。好きになり、所有物として売買・譲渡・交換・相続の演技を受ける。多くはプレイであり、現実の売買ではない。
首輪と四つん這いと、喋らないこと。ペットプレイの核は、動物の種類より、人間の言葉と手を取り上げることにある。犬の従順、猫の気まま、使役と愛玩。どの種を選んでも、自慢の一匹になれるかどうかが、飼い主側の快楽の基準になる。躾けのリストは長いが、やっていることは一つだ。人間をやめて、飼われる側に残ることである。












