『E-CUP SLAVE 愉芽の絆』(いーかっぷ すれいぶ ゆめのきずな)は、岡本百合主演のシネマジックAVである。1988年に活躍した岡本の売りは、大きく美しい乳房——いわゆる美巨乳——と豊満な肉体だった。本作はその魅力を接写で余さず撮り、そのうえでハイレベルな過激SMをぶつけた。単体ものしか出ていなかった岡本が、縄と蝋と浣腸に体当たりした作品として大反響を呼ぶ。監督はシネマジック社長でもある吉村彰一。のちのインタビューで、ヨーロッパの映画のように綺麗に撮ろうというコンセプトだった、と答えている。美巨乳の接写と、綺麗に撮ったハードSMが、同じカセットに入っている。1988年のシネマジックが、単体女優の肉体とハードSMのメニューを一本にまとめた記録である。
片田舎の娘と、黒ずくめの先生
岡本百合が演じるのは、山深い片田舎に住む娘である。のちにセックスパートナーとなる先生へ、密かな恋心を抱いていた。処女を捧げる相手もその先生だ。女校生の頃は二つ結びで清楚な服装。卒業後はボディコン風、三つ編みワンピース、ゴシック風と衣装が変わるが、普段の暮らしは画面からほとんど見えない。先生とは喫茶店で待ち合わせしてデートする。普段は距離を置いて暮らしている。深い仲になったあと、別の男性と婚約してしまう。
先生を演じるのは日比野達郎(恵比寿太一郎名義)。もともと百合の通っていた学校の教師だった。北原白秋の詩集など文庫本をいつも持ち歩くところから、科目は国語と読める。女性を緊縛しないと性的興奮が得られない性癖があり、黒い縄は必需品だ。大きなカバンを常に持ち歩いている。百合とのデートでは黒ずくめのサングラスを、プレイ中も一貫して外さない。写真を撮るときだけ銀縁の眼鏡に替える。百合を愛し、真剣に考えていた。それが、他の男と婚約する百合を前に、愛情から怨念へ変わる。
雪の雑木林から、婚約の指輪へ
白い無機質なロッジの二階。男に無理矢理連れ込まれ、ベッドに押し倒される女。「嫌っ、止めて、許して」。男は構わず黒い縄で縛り、スカートを剥ぎ、臀部を晒してスパンキングを浴びせる。作中、過去の映像がモノクロで挟まる。二人はかつての先生と生徒だった。先生は学校を去る。告白しようと駆け寄るが、できないまま別れる。生徒だった女が十八歳になったのを機に、先生のほうからコンタクトする。
高校を卒業すると、雪の降る雑木林へ連れ込まれ、二人はキスを交わす。男はかばんから黒い縄を取り出す。女は一瞬たじろぐ。「こうしないと駄目なんだ」。仕方ない表情で受け入れ、木に縛り付けられる。目隠しをされ、声が漏れないよう口にハンカチを詰められ、立位で挿入される。股間から血が流れ、目隠しの下から涙が出る。処女を捧げた夜である。黒い縄と木と雪が、先生の性癖を最初に身体へ移す。その後、二人は互いにSMセックスを楽しむ関係へ進む。喫茶店で待ち合わせ、距離を置いて暮らし、縛っては会う。やがて会っても会話が少なく、醒めた空気が流れる。紅茶を飲む女の指に、光るものを男は見つける。「その指輪どうしたの」。「今度私、結婚するの……」。「君が結婚しようがしまいが、君は私のものだよ」。その言葉を体に刻むように、激しい責めが科せられる。愛情が怨念へ変わる転換が、ロッジ二階のスパンキングと、指輪のあとの責めを一本の話にする。
スパンキングから熱蝋まで
プレイは臀部と乳房へのスパンキング、乳房責め、舐め回し、揉みしだき、洗濯挟みによるクリッピング、吸引カップでの乳首吸い上げ、クンニリングス、鼻責め、鼻フック、鼻鏡による鼻拡張、鈴つき洗濯挟みによる陰唇クリッピング、浣腸後の性交中に排便する脱糞ファック、浣腸、アナルセックス、飲尿、イラマチオ、熱蝋責め——舌の上にも熱蝋を落とす——と続く。美巨乳の接写が売りだった女優に、鼻鏡と蝋と浣腸中の性交を積む。単体女優の肉体を接写で見せたうえで、鼻から腸までハードSMのメニューを積んだ作品である。吉村が「ヨーロッパの映画のように綺麗に」撮った画のうえで、メニューは綺麗ではない。
VS-63からダウンロードまで
1988年6月9日、初版VHSが番号VS-63、定価1万7000円で出る。レンタルもセルも好調で、ほぼ下半期の発売ながら1988年年間売上ランキング2位、2830本を売った。下半期の発売で年間2位は、数字として残っている。同時期の作品の多くが廃盤になるなか、廉価版が出るまで現行カタログに残り続けた。1991年12月20日、大洋図書から廉価セル版VHS。番号なし、定価3800円(税別)。書店向けにシネマジックの秀作を選んだ「シネマジック・クラシックス」の3作目。中身は同一だが、カセットの質感は低く、レーベルは貼られておらずユーザーが貼る形だった。のちにシネマジック本体が廉価セルを出すと早々に廃盤になる。本体からのセル版は出なかった。初版1万7000円のVS-63が、書店の3800円カセットへ落ちても、中身の責めは同じだった。
2003年6月27日、DVD版が番号DD-65、定価4800円(税別)で出る。藤岡未玖主演『背徳の絆』とカップリングし、『背徳の絆・愉芽の絆』として発売。宣伝グラビア用スチルのオマケ付き。現代の倫理審査では通らない部分があり、モザイクの上書きによる消し込みが濃くなっている。2007年7月、シネマジック製品の販路変更に伴い廃盤。2013年5月時点では、動画ダウンロードサイトで購入できた。1988年の岡本百合と吉村彰一が、美巨乳の接写とヨーロッパ映画めいた画で撮ったハードSMは、VHSの年間2位からクラシックス、カップリングDVD、配信へと媒体を変えて残った。










