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安里咲2 · 第3部

安里咲2 第3部 (3/5)
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その肛門にも誰かが入ってきた。

感覚が鈍くなった。手足にまったく力が入らず、意識が飛ぶ。

気がついたとき、わたしは洗面所で水を大量に飲まされて、吐かされていた。同時に水を浣腸されていた。まったく締まりのないお尻なので、入れても入れてもすぐ出てしまう。

それが気持ちいい。

「ちょっと酔っ払いすぎたな」

「正気にさせてやろう」

オヤジたちはまだ諦めていない。しつこさだけは大学生以上だ。

「どうだ、少しは戻ってきたか?」

頭から水をかけられ、酔いは醒めていった。あれだけ燃えていた体も、冷たくなっていた。

現実を忘れていられたのはわずかな時間だった。

「あれを、またつけてください」

剛介に頼んだ。

「だめだ」

「どうして」

答えてくれない。

「よーし、女子大生の安里咲ちゃんが戻ってきたぞ。これで、オジサンたちも心おきなく三発目が楽しめそうだな」

十二人いた男たちの半数はいなくなっていた。残っているのは六人だ。酩酊したわたしを見て、まずいと思い逃げたのだろう。それとも、満足して帰っていったのだろうか。

剛介は縄を手にしていた。

彼に縛られるのなら、諦めもつく。

後ろ手に縛られた。

オヤジが床に三本のディルドを並べている。一般的なものから、徐々に大きくなっていく。

三本目は人間の腕ほどある。

「安里咲、順番に入れるんだ」

「えっ」

酔っているうちならできたかもしれない。

しかしクタクタで、いまはあそこも乾いている。

「やれよ」

「泣くのか?」

「泣け泣け!」

そんな顔をしていたのだろう。涙が自然に出てきた。

「エロ人形の安里咲ちゃん。マンコにオモチャを入れてみな」

「大好きなチンコにそっくりだぞ」

そこに剛介がローションを垂らしていく。

「早くしろ」

みんなにはやしたてられ、最初の一本に腰を下ろす。手が使えない。

「ちゃんと狙って」

「もうちょい前だよ」

彼らが好きなのは、媚薬で燃え上がっているわたしではない。酒に酔っているわたしでもない。

こんなことは絶対に自分からしないはずの、ごく普通の女子。彼らは強要し、泣かせるのが楽しいのだ。

ディルドが倒れないように押さえている男もいる。覗き込み、楽しんでいる。

「よーし、入れろ、根元まで」

肩をおされ、畳にお尻がつく。

「ははは、ずっぽり入ったな。次はどうかな?」

引き抜かれ、大きく長いディルドに向かう。

「あっ、そんな」

その長いディルドの亀頭部分まで入ったところで、畳に寝っ転がっている男が、さっきのディルドをアナルに入れてきた。

「逃げちゃだめだよ」

三本目。お尻のディルドも抜かれて二本目を押しつけられている。

「自分で腰を落とすんだ!」

怒鳴られる。

「ううう、つらい……」

また涙が滲む。

すると男たちのものが、みな固くなっている。わたしが苦しみ泣けば、彼らはその気になるのだ。

「大きすぎる……」

「大丈夫だ、もう先は入ってるぞ」

体が引き裂かれそうだった。それなのに、今日のひどい扱いの結果、その粘膜が大きく開くようになっていた。

「ぐううう」

半ばまで入った。

「がまんできない」

お尻にも入れようとしてた男がディルドを捨てて、自分のものを入れてきた。

六人は再び、わたしを襲った。

「はあああああ」

苦しい。だけど、少しホッとしていた。彼らに犯されるのは、むしろ至福の時なのだ。

さきほどのような快楽はほとんど感じないものの、少なくとも肉体同士の感触は、気持ちの上では楽なのだった。

講義

「ゆうべは大変だったわね」

寮長も彩芽もニヤニヤしている。

朝。

また朝だ。

いままでなら、目覚めるときは期待感いっぱいだった。もちろん、毎日、そんなプラスの感覚ばかりだったわけではないが、いまの自分の状況から考えれば、あの日々は夢のように明るかった。あれが当たり前だと思っていた。

昨夜のことはあまり覚えていない。あれは深夜か明け方か。

気がついたら、わたしは剛介と二人きりだった。

「ほかの人たちは?」

「おまえが失神しちゃったから、帰ったよ」

ペンギンのかっこうをさせられたことは覚えている。あとは……。自分から求めて何度もエクスタシーに溺れた。そして酔わされ、また正気に戻されて泣かされた……。

汚れきった体。

どこもかしこも痛い。打ち身のような痛み。火傷のような痛み。筋肉痛。もっと深い部分でうずく痛みもある。

ゆっくりと立ち上がってみる。剛介が肩を貸してくれた。

「寮に戻るよ」

夜の町を二人だけでなんとか戻った。

眠そうな寮長が待ち受けて、わたしを寮内に抱え込むと、シャワーで洗われた。そして納戸で眠った。

あっという間に午前五時。起床時間だった。何時間も休んでいない。

「しっかりやるんだよ。今日は何曜日だ?」

よくわからない。しかし、なんとなく月曜日だと思った。

「そうだよ。曜日とか日付とか時間はいつも気にしておくことだね」

往復ビンタ十回。それは十回「ありがとうございます」と言わされることでもあった。うまく言えなければビンタが追加されるだけだ。終われば「調教いただきありがとうございます」とお礼を言わされる。

お尻パドル打ち十回。浣腸一リットル。フェラ練習。シャワー。寮内を十周、四つん這いで歩かされる。まずい朝食を洗面器いっぱい。また浣腸されながら寮長への奉仕訓練。それが終われば、寮の清掃。

あっという間に十一時になっている。この間に学生たちは起きだし、わたしを疎ましい目で睨み、大学へ行く。

予定では、このあと逆さ吊りにされて、鞭打ちかスパンキングを受けるのだが、彩芽がやってきて「今日は別メニューよ」と言う。

彼女は休養十分らしく、溌

剌

としている。

「大学へ行くの。末土教授の講義があるから」

ゾクッとする。

亜由美が以前、講義の場で晒し者にされたのを見ていた。神南登美子らが、嫌悪の対象として、厳しく非難していた。

今度はわたしが……。

「全裸ってわけにはいかないから、これを着て」

ワンピース。しわしわになっている。プリントの安物。だが、体を隠すことはできる。かろうじて……。

裾は股下五センチほどしかない。胸元はざっくり切れ込みが入り、谷間の下まで見えてしまっている。シャツをボタンをせずに羽織っているようなものだ。

それでも、断る理由はない。かろうじてでも、体が隠せるなら、大学へ行けるかもしれない。

首輪とチェーンをつけられた。手枷足枷は免除された。

「だけど、いざとなったら、これをするからね」

銀色の手錠を見せつける。

「それと、これもあるよ」

スタンガンだ。

「暴れるようなことがあれば、一発でダウンさせてあげるからね」

化粧をした彩芽は、目元をきりっとさせて、小悪魔風な雰囲気を強調している。

「安里咲も化粧していいよ。使わせてあげる」

寮長の化粧室に、わたしの化粧品が箱に入れて置かれていた。

そんなもので、この汚れきった自分を飾ることはできない。どれだけ塗っても、醜くなるだけだ。

「いいです」

「すっぴんもきれいだけど、日焼け止めとかはつけようよ」

柔らかな命令と受け止め、日焼け止めになるファンデーションをつけ、眉を整え、髪をブラシした。

涙が出そうになるのをこらえる。

髪がバサバサなのだ。こんな酷いことは、これまで一度もない。キャンプや林間学校でも、女子らしく整えてきた。髪はつやつやに光らせていた。そのために毎日、ある程度の時間を使うのは当然だと思っていた。

いまは、朝から叩かれ、浣腸され、淫らな練習ばかり。化粧をしたり髪をいじる時間など、ないのだ。

そもそも、美しい髪など、期待もされていない。

朝食を吐き出しそうになる。

「口紅はつけようね」

ファンデーションで目の下のクマはある程度、ごまかせたと思う。土色の唇にアメリカンチェリーのような色の口紅をつけてみる。明るい色はつけたくない。

「いいじゃない。エッチな感じがする」

彩芽は喜んでいるが、寮長は口を歪めただけだ。気に入らないのだろう。その不満は、トレーニングでわたしに倍になって返ってくる。

大変なことをさせられているが、わたしはある意味、特別な存在だった。

剛介はわたしを抱えるようにして寮まで送ってくれた。

商店街の人たちも、とんでもなく破廉恥なオヤジたちだったが、ずいぶんとわたしのことを気遣ってくれていたように思う。少なくとも女として扱ってくれたのではないだろうか。記憶はあいまいだけど。

末土教授も当然、わたしを特別扱いするだろう。亜由美にしたように。

それがそもそも苦痛なのだが、寮長や彩芽のような人間は、そうはとらない。特別な扱いそのものに腹を立てるのだ。

これはとても不思議な感覚だった。

最低のことばかりをする女。それなのに、特別な女になっている。

「なに、ニヤニヤしてるのさ」

寮長のがっしりとした手で顎を掴まれた。

「いい気になるんじゃないよ。体を使っているからって、エライわけじゃないんだからね」

思わず唇を尖らせていた。

「ふふふ。おまえは強気なんだね。だけど、まだまだ続くんだよ。果てしなく。耐えられるかね」

寮長はあえて手を上げず、むしろ髪を撫でた。

鏡の中に、彩芽、寮長とわたしが並んだ。

呉越同舟。同じ穴のムジナ。加害者と被害者。それでいて共犯者。

たしかに、末土教授にとっては、おもしろい題材なのかもしれない。わたしは彼にとっては、マウスに過ぎない。尻尾をつままれ、観察され、生き延びさせられる。

「行ってきな。びっくりすることが待ってるよ」

もう、なにもびっくりすることなどない。

わたしは高を括っていた。学生たちの前で、オナニーでもさせられるのか。フェラでもさせられるのか。大学内でそんなことをするわけがない。

堂々としていればいいのだ。

実験動物ならそれらしく。おどおどするだけ損だ。

彩芽に連れられて、キャンパスに行く。素足にサンダル。手錠は使われなかったが、自然に後ろ手に組んでいた。

首輪の鎖を引っ張られていくのだから、そのほうが似合う。

「ゆうべ、オヤジたちとやりまくった映像、今夜見るんだ」と彩芽が言う。「楽しみだな」

わたしは覚えていない。だからなにも言えない。

「先生!」

比較的新しい棟の入り口に、末土教授がいた。陽子夫人もいる。

突然、激しく羞恥を感じた。ピシッとしたスーツの教授と夫人を前にしたからだろうか。全体から滲み出るいかにも「ご主人様」の雰囲気だからだろうか。

恐ろしい拷問実験を実施した人物だからだろうか。

「最初から教室の前に立っていてくれ」

教授は彩芽に指示をした。わたしには声をかけない。

エレベーターで四階へ行く。ほかの学生や教授たちが、彩芽に微笑み、挨拶をするが、わたしのことは無視する。見えないように扱う。

末土教授がわたしの立場をどうのように説明したのかわからない。

教室に入って、緊張がさらに増した。

一般的な大きな階段状の講堂ではなく、フラットで小さな教室だったのだ。机とイス。満員になっても五十人程度だろう。

真っ白で明るい蛍光灯に照らされれば、わたしはいかにも場違いだ。この間まで、学生としては違和感なくこうした教室で講義を受けていたのに、いまは、恥ずかしくて仕方がない。

当たり前のように、最前列に登美子、佐智子、映奈がいる。寮生もいる。

徐々に、男子学生も増えてくる。ゲー研の連中だ。

そして、ほぼ満席になった。

最後に陽子夫人が入ってきて、後ろの壁にもたれかかって立ち見をしている。

教授が入ってくると、ざわめきは一瞬、遠のいた。

「ゴールデンウィーク明けの月曜日にしては、けっこう集まったな」

笑いが少し起こる。

「相変わらず講義は人気があるようだけど、おっと。今日は特別講義だからだな」とわたしを見てニヤリとした。

「助手がついているんで、お客さんが増えたわけか」

教授は彩芽からチェーンを受け取った。彩芽は登美子たちのすぐ後ろに座った。

「ここにいる助手を知っている人は手をあげて」

半数以上が手をあげた。

「安里咲はモテるね」

忍び笑いが起こる。

「じゃ、安里咲がどういうことをしているか、知っている人」

登美子たちが手をあげる。ほかの人たちは、薄々知っているのに、答えたくないのだろう。

「じゃ、君。安里咲はなにをしてるんだ? 知ってることを教えてくれ」

登美子ではなく、映奈を指した。

「よくわかりませんが、淫らなことをしていると思います」

じわじわと締め付けられるように、わたしのことを題材にして、教授は話を進めていく。講義の内容は頭に入らない。

痛いほど突き刺さる学生たちの視線。ときどき浴びせられる厳しい言葉。

誰とでも寝る、マゾヒスト、変態、淫売、便所女……。

普段は口に出せないような言葉を、学生は平気でわたしに向ける。

膝がガクガクしている。

「安里咲。ワンピースをたくしあげてみようか」

教授がそう言ったと思った。わたしは助けを求めるように学生たちを見渡した。

彼らは待っているだけで、助けてはくれなかった。

羞恥

「そこまでだ」

教授が制止しなければ、股間まで裾を引き上げていただろう。

ギリギリのところで手を止めた。

「彼女がこれ以上、上にあげると、大学内でそのような講義をする私は、まずい立場になるかもしれない。まあ、すでにけっこう睨まれているけどね」と末土教授は学生たちを笑わせた。

「だが、ここまでならいいだろう。その辺の街中で、このぐらい露出してる女性はいるからね。彼女のように美しければ許される行為、だと思うかな?」

命じられたからしている。自慢げにしているのでも、好きでやっているわけでもない。

「人間の趣味嗜好はさまざまだと思う。私たちは自由を求めて社会を変えてきた。そのためにたくさんの犠牲を払ってきた……」

教授の講義が続く間、わたしは裾をたくしあげて太ももまで露わにしている。

自由と抑圧の話が長く続いたあと、「ところで」と話を変えた。

「人間には羞恥というものがある。当然、ここにいる安里咲にもある。恥ずかしいか?」

「恥ずかしいです」

クスクスと女たちに笑われる。昨日、商店街であれだけのことをしておいて、という意味だろう。

だが、恥ずかしいのだ。

「君はなんでもするんだよね。かなり恥ずかしいことをすると聞いている」

「はい」

「それでも恥ずかしい」

「はい」

「恥ずかしいことが好きなのだね。倒錯しているわけだ。普通なら恥ずかしいことは嫌なことだが、安里咲は恥ずかしいことが好きなのだ」

「好きだなんて……」

「言っていない? もちろん。社会は倒錯した者を受け入れるかどうか、選ぶことになる。大きな社会ではいいことが、小さな社会、例えば村社会ではダメなこともある。その逆もある。恥ずかしさの基準は社会が決めるのか、自分で決めるのか。この彼女のように恥ずかしいことをやめられない存在は、社会にとってなんなのか」

しばらく教授の難しい話が続く。ノートを取る者も多い。

「さて、今日はみなさんにゲストを紹介しよう」

教授は入り口に行き、ドアを開けた。背の高い人影。

わたしはショックを受けていた。まさか。そんなわけがない。

「ミハイル・マーコフさん。ロシア人で、日本ではバレエの先生をしている」

彫りの深い顔。灰色の瞳。白い肌。少しだけ大人っぽさが強調されているのは、鼻の下に髭を生やしているからだ。

バレエは引退したのだろう。

それでも、わたしが大好きだった頃のマーコフと同じ目で微笑む。

手が震え、足が震える。体温がぐんと低くなったような気がする。

「彼はかつて安里咲のバレエの先生でもあった。そうだね?」

「はい」

流暢な日本語。あれからずっと日本に腰を落ち着けているのだろう。

「久しぶりの対面というわけだ」と教授。「ミハイル、ロシア式の挨拶をしてあげたらどうだろう」

「安里咲」

大げさに手を広げてわたしのところへやってきたミハイルは、ぎゅっと抱きしめ、頬にキスをした。

恥ずかしさは頂点に達し、気絶しそうになった。

「大丈夫?」

彼はやさしい。

そして、いまのわたしは汚い……。

彼から離れ、距離をとった。この場から逃げ出したかった。

「安里咲、うれしくないのか?」と教授。「何年も会っていないんだよね?」

日記を盗まれ、読まれ、その内容は彩芽、寮長から陽子夫人、そして教授へと伝わり、マーコフに連絡を取ったのだ。

わたしを苦しめ、辱めるために。

逃げ出そう。あの窓から。

そう思った瞬間、マーコフの大きな手で二の腕を掴まれた。吸い込まれるような瞳でみつめられた。

「きれいになったね」

「きれいじゃない!」

わたしは叫んでいた。

「申し訳ない。積もる話は別のところでやってもらおうか。今日の講義はここまでにしよう」

会場に、ため息が漏れ、大したことはなにも起きなかったことを、がっかりするような声も聞こえてきた。

陽子夫人がやってきて、マーコフと握手した。

「安里咲は変わったのよ」

「らしいですね」

彼はニヤリを笑った。

「あの頃は、ずいぶんときれい好きで、ぼくの望むことはしてくれませんでしたけどね」

「いまの安里咲はどんなことでも望み通りよ」

「それを聞いたら、来ないわけにはいきませんでした」

そして、「きゃー」と悲鳴がした。

マーコフがわたしの唇を奪い、激しく深いキスをしたからだ。わたしは汚れている。あなたとキスなんてする資格はない……。逃げようとするが、彼の力にはかなわない。

「元気ですね」

長いキスが終わったあと、彼は舌なめずりをしながら笑った。

「安里咲。君はまだぼくの愛し方を知らない」

金色の髪は短くすっきりとまとめている。氷のような灰色の瞳。輝く白い肌。赤い唇。

「ぼくはスラブ系なんだけど、スラブが古代ローマ人によってスレイブ(奴隷)という言葉の語源になっているって説もある。しかし、ぼくたちは誇り高い人種だ。スラブの語源は『言葉』という意味なんだ。教養がある祖先を持っている。ローマ人は野蛮だったわけだね。そして、まさか安里咲がそのスレイブになっているなんてね」

彼はわたしの腕、そして肩を触った。

恥ずかしく、逃げ出したいのだが、同時にその手の温もりに腰が抜けそうにもなっていた。

ふと気付くと、彼の片手が腿に触れていた。

「あっ」

教室にもう学生はほとんどいない。残っているのは、彩芽だけだ。例の三人は次の講義があるからどこかへ行ってしまった。

教授、陽子夫人、彩芽。その目がギラギラしていた。血のしたたる高級なステーキにかぶりつくように。

彼らは、ただでさえわたしを凌辱するだけでは足らず、新たな野獣を放ったのだ。

それも心に深い傷をつけた原因となった彼を。

体だけではなく、心の中からわたしを凌辱するつもりなのだ。

「やめて……」

小さくつぶやいた。

その唇を彼がまた奪う。

彼の腿の手が、いっきにすべり、剥き出しの股間に指をあててくる。濡れている。とてつもなく。

マーコフは教授たちがいても平気なのだ。

窓に追い詰められ、わたしは彼の激しい愛撫にさらされている。ワンピースをたくしあげ、腹部、そして乳房を撫で回し、キスを浴びせてくる。

ワンピースで腕と顔を覆われてしまう。裾をひとまとめにして陽子夫人が掴んだらしい。巾着状態だ。

拘束されたのと同じだ。片足を持ち上げられる。股間を割られた。

見えないが、彼はズボンを下ろしたに違いない。彼のペニスが当たる。ここで、犯される……。

太く固い彼のものが突き上げてきた。

「うっ」

酷いことばかりされてきた。その中でも、これは最悪だ。

最悪なのに。

「ふぅぅぅぅ」

出したことのないような声。しかも、悲鳴ではない。

「感じてるわ」

「そりゃそうよ。あんな大きなペニスで……」

「刺激的だな」

「おもしろーい」

彼らの声がする中、わたしは激しく突き上げられて腰が抜けてしまった。

陽子夫人がワンピースをすっかり脱がして、鎖を持ち、近くの机へとわたしを引っ張った。

そこにうつ伏せにさせられ、お尻を突き出して彼に捧げた。

「すごーい、びしゃびしゃだよー」と彩芽が喜んでいる。

淫らな音がしている。肉と肉のぶつかる音だ。彼とわたしの息。

彼はわたしを仰向けにさせ、机の上にお尻をのせるようにすると、両足を肩に担ぎ、さらに深く挿入してきた。

「あうっ!」

のけぞる。

彼の首に手を回して、なんとか体を支えている。

「マーコフ、フィニッシュはお口よ」と陽子夫人が命じている。

彼は「ハーハー」と犬のように荒い息をしているが、わたしから引き抜くと、乱暴に床にわたしを跪かせ、頭を掴んだ。

彼のものが目の前にあった。

黙って口をあけると、彼がしごいて、射精した。大量のものが口に入った。

「飲み込んで、しゃぶって、きれいにしなさいね」

体を震わせながら、飲み込んだ。目をつむる。自分でもよくわからない感情。苦しいのではない。喜びだろうか。感動といってもいい。

マーコフのものを飲んだとき。わたしはなにか、新しい世界に踏み出したような気がした。

思わず期待をこめて、目を開いた。

そこに彼はいた。満足した表情で、ズボンを直していた。陽子夫人が馴れ馴れしく、彼の金色の毛が光る腕を撫でている。

彩芽は、いまの光景を撮影したビデオを教授に見せている。

わたしはひとり、机に置かれたくしゃくしゃのワンピースを着た。

「安里咲、このあと、この階にある男子トイレに行ってね」と彩芽が言う。

「えっ」

ビデオを教授に預けて、彩芽は鎖を手にして乱暴に引っ張った。

「忘れたわけじゃないでしょ。おまえ、やることやらないと……」

「い、いや」と叫んでいた。

「いい思いをしたら、少しはほかの人にも還元しないとね。寮じゃ女子しかいないけど、大学にいるときはゲー研連中の相手もしてやらないといけないのよ」

「いや」

鎖を引っ張られる。マーコフは笑っている。

「助けて」

「安里咲。君はきれいで、かわいいよ。ステキな奴隷だね。ほら、いきなさい」とお尻を軽く叩かれた。

「なんで……」

助けてくれないのか。

興味を失ったのか、彼は教授、陽子夫人と一緒に教室を出て行ってしまった。

悪夢

夜がきた。

くたくたの体を横たえるのは寮長の部屋にある納戸の中。首輪、手枷、足枷。動く気力も体力もない。そのまま眠る。

だが、眠りはとても浅い。悪夢に責められるからだ。起きていても、眠っていても責め苦しかない。

わたしの体は腐っていく。痛い部分から順番に溶けるように。股間がなくなり、お尻がなくなり、乳房が消え、背中も……。どろどろになった皮膚と肉。腐臭を漂わせながら絶命していく。

死ぬのは怖い。死にたくはない。

恥ずかしい講義のあと、わたしは彩芽とゲー研の男たちに新たな拘束具をつけさせられた。

黒いマイクロミニを履かされて、グレーのタンクトップを着せられた。その上から、恐ろしい金属の器具をつけられたのだ。

頭を固定する網のような部分。そこから背中に一本の鋼鉄の棒が下がり、首、胸、腰をやはり金属のベルトで留める。鋼鉄のブラから、弱々しい乳房が飛び出す。タンクトップを着ていても、カタチはくっきり浮き上がっている。

手は首の後ろでその棒に溶接された枷で留められる。

頭も動かせず、上体は壊れたロボットのようにぎこちなくなる。

金属の開口器をつけられる。そして鼻フックも。

そんなかっこうで男子トイレに連れ込まれ、何人もの男たちに犯されていく。

顔にもいっぱい精液を浴びせられ、顔を便器に突っ込まれて洗われる。

今日、いったい何人とやったのか。恐ろしくて数えたくもない。

男子トイレから男子トイレへ。そんなかっこうで大学構内を歩かされる。スカートとタンクトップがあるので、余計に恥ずかしい。

「安里咲の太ももとお尻の部分がチラチラ見えるのが、そそるんだよね」と彩芽が言う。

「女から見ても、すごくいやらしいもの」

口も膣も肛門も精液でべたべたになっている。そのままゲー研の部屋に連れていかれた。

そこには足場に使うパイプを組み合わせた鞭を打つための装置が備えられ、拘束されたまま、足首で逆さ吊りにされた。

「あがああ」

「声が聞きたいな」

開口器が外された。

ゲー研メンバーたちの練習台として鞭や棒、竹刀などでお尻を打ち据えられる。

「ぎゃっ」

「泣け、泣け!」

「やめてっ!」

真っ赤になって、傷だらけになり、血を流しているお尻。

そのあと、彼らのパソコンで、自分の動画を見せられた。逆さのまま。

居酒屋の一夜から、寮内での出来事、先日の商店街、今日の講義。男子トイレ。すべて、お金さえ払えば見ることができる。

手慣れたものだ。

「現在調教中 安里咲」といった文字が見える。そして「亜由美」の名もある。彼女のすべても、こうしてネットで配信されているのだろう。

「まずまずの評判だよ」

剛介が言う。もはや、彼らは後戻りはできない。はじめてしまったことを終わらせることができないのだ。

「痛いか?」

鞭のあとに再びつけられた開口器から涎を垂らし、頭に血がのぼって、ときどき気が遠くなっていた。

その口に剛介はペニスを入れてきた。彼は痛んだお尻を両手で握りながら、わたしの体を動かす。頭と首が固定されているので、お尻を強く動かせば、そのまま彼のペニスに伝わる。

「考えなくていいんだ。安里咲はこれが大好きだからね」

男のニオイ。肉や肌のニオイ。精液の味。おしっこの味。そして苦痛。鋭い痛み、うずく痛み、強烈な痛み、ぞっとする痛み、肉が削がれるような痛み……。何十、何百という種類の痛み。

研ぎ澄まされ、鈍らされる。

「かなりいい感じに仕上がってきたんじゃないかな」

剛介は満足したようだ。

寮に戻されて、浣腸とシャワーと夕食。いよいよ夕食には食べ物以外のものが含まれるようになった。

誰のものかわからない汚物。それはニオイですぐわかる。あの水槽の中でさんざん、味わったものだ。

寮長や彩芽が、意地悪そうな目つきで、わたしが飲み下すのを眺めている。

「食べたわ」と彩芽が喜ぶ。

傷口だけではなく、体の中からも腐っていく。喉が、胃が、腸が……。

彼らに犯されないのは脳と心臓だけ。だけど、毒はゆっくりとそこにも回っていく。

貸し出し。寮生たちの足を舐めさせられ、あそこを舐めさせられ、おしっこを飲まされる……。

「すごく汚いお尻だわ」

「ゲー研の連中が手加減なしに叩きのめしたのよ」

「わたしたちの楽しみがなくなっちゃうじゃない」

「ここは無傷よ」

乳房を叩かれる。パンチングボールのように。平手で。拳で。そしてラケットで。

「ぎゃー」

感覚器官であるそこへの暴力。気絶してもおかしくはない。

「腫れてきたわよ。安里咲、巨乳になれるかもよ」

彼女たちの残酷さは、射精目的の男たちを上回る。そして技術的にも未熟で、恐怖と苦痛はそれだけ大きい。

ようやく消灯。就寝。

また朝が来る。わたしにとっては、どうでもいい朝。

悲しいだけの一日がまた始まる……。

朝起こされ、叩かれ、浣腸され、歩行訓練、食事、清掃などの雑用。大学へ行き、末教授の晒し者にされて、またトイレで奉仕。寮に戻されて……。

来る日も来る日も。

「明日は楽しいことがあるわよ」

寮長たちがうれしそうに旅の支度をしていた。

一週間にもわたる厳しい調教。

彩芽が壁に貼られた日課をはがした。

「よかったわね。安里咲。これから仕上げをやって、それで合格すれば、安里咲は別の段階に行けるのよ」

こんなきつい日々に、次の段階などあるのだろうか。

「殺して……」

擦れた声で彩芽にお願いした。

「え? なに? 聞こえないわよ」

「殺して!」

彩芽は少し悲しそうな表情になった。まさかと思うが、彼女はわたしが死ねば悲しむのだろうか。

「安里咲。あなた勘違いしてる」

彼女の手が頬を撫でる。涙がいっぱい流れている。

「これが楽しい毎日なのに。これがなくなったら、そっちのほうが怖いのに。まだそう思えないのね。だからつまらない苦しみ方をしているのね」

意味がわからない。

「いいわ。明日、明後日。この二日間であなたはきっと変わる。死にたいとか思うことはあるかもしれない。わたしだってあるもの。だけど、殺してほしいなんて、絶対に言わない。生きていなくちゃ、なんにも感じられないもの。それに気付かないとしたら、安里咲の調教は延長しなくちゃいけないかもよ」

それは脅しではない。同情だと知って驚いた。

「あなたが大好きなマーコフの故郷へ連れていくのよ。もう少し喜んだらどうなの?」

もうたくさん。彼に恋をしたのは、わたしが未熟だったから。間違った憧れだということは、わかりすぎるほどわかった。

二度と会わなくてもいい。彼がくれたエクスタシーはホンモノだったけど、あんなことがまた起こるとは信じられない。がっかりするぐらいなら、会わないほうがいい。

もっとも、あれから、わたしはゲー研の男たちに毎日、ペニスを突き入れられていたのだが、なにも感じなくなってしまっていた。彼らを早く射精させるために、演技をするようになっていた。

こっちがあえいだり、切ない声を出さないと、彼らは時間ばかりダラダラと過ごしてしまうからだ。

娼婦のようなテクニックだと思う。

あそこに入れて、擦って。痛みを感じて。恥ずかしさを感じて。だけど、あれ以上のものは、もう手に入らない。

あとは腐っていくだけ。

「ここに入りなさい」

大きな木箱が用意されていた。打擲も浣腸もない。

「怖い……」

「まだ、怖いものがあったの?」

寮長にからかわれる。

それは棺桶のようなものだろう。

わたしはその箱の内側に取り付けられている枷に、手足を固定された。足は膝立ちのようになる。手は横に。肘を底につけて手首を箱の側面の枷に。怖いのは、枷にボルトを通して留めてしまうことだろう。どんな方法でも拘束する点では同じだが、ボルトで締め付けるということは、容易に外れないことを意味するからだ。

半円形の鉄の部品。それを首と下顎にはめこみ、ガンガンと釘で箱に打ち付けた。これで、首も顔も動かせない。

「すごいわ。標本みたいね」

それだけではない。ひしゃげた中華鍋を思わせる半球型の金属で、顔から頭部までをすっぽり覆ってしまった。それも釘で木箱に打ち付けられた。

真っ暗なだけではなく、自分の息しか聞こえない。後頭部は木箱の底に接しているので、密閉ではない。隙間があって空気は吸える。

それでも、パニックになるには充分だった。

「たすけてー、こわいー」

叫んでみるが、自分がうるさいだけで、外にはほとんど伝わっていないようだ。

蓋が釘で打ち付けられる音がして、寮生たちと数人で台車に乗せられた。

ゴロゴロと不愉快な振動。入り口の段差は緩いスロープになっていたようで、通ったことも気付かない。

台車ごと、なにかの上に乗る。揺れている。それが持ち上がる。テールリフトのあるトラックだろうか。

荷台に降ろされる。すべり、激しくなにかにぶつかる。そして箱ごと固定された。

エンジンがかる。人の声は聞こえない。

どこに連れていかれるのか、わからない。

死ぬとは、こういうことなのだろうか。

闇の中で、ぐるぐると目が回る。吐き気。汗。振動。騒音。ときどき眠り込んでしまい、吐き気で目が覚める。

胃は空っぽで、胃液だけがこみ上げてくる。

長く苦しい時間は、どれほど続いたのだろう。だが、大学からそう遠くまではきていないような気がした。高速道路には乗っていないと思う。

頭が痛くなり、吐き気がした。

このまま交通事故にでも遭えば、わたしは裸のまま助けだされるのだろうか。標本として。

それとも燃え尽きてしまうのだろうか。火葬として。

灰になれるものなら、なったほうがいいかもしれない。

朦朧とした状態から、ふと気付くと、もう走行音はなかった。エンジンも停止していた。静かだ。

ガタリと音がして荷台に人が入ってきて、台車が転がり、その上に箱をのせていく。そして荷台から降ろされて、しばらくはアスファルトらしいところを移動し、やがてコンクリートの斜面を上がり、最後は鉄板らしくガンガンと音を立てるようなところを抜けて、高い場所に持ち上げられた気がした。

「それでは、みなさま、お待ちかね。本日待望の入荷です。どんな具合になっていることか」

箱を数人で持ち上げ、なにかの上にのせた。それからゆっくりと頭を上にして箱を立てた。

足枷にぐいっと体重がかかる。ちぎれそうに痛い……。

釘抜きで蓋が乱暴に外れた。

どよめき。それは、深く低く響く。突然、わたしは人々の前に引きずり出された。

突き刺すような冷たい空気を肌に感じる。頭痛も眩暈も吐き気も消えている。

この感じはどこか遠い記憶にある。

そうだ。バレエ。発表会で緞帳が上がっていく瞬間。大勢の人たちに見られている自分。まだはじまってもいないのに、ハーハーと呼吸が荒くなる。なんとか落ち着かせて、音の出、動きはじめに集中する。相手がいる場合は相手を見て、いないときは舞台袖の先生を見る。または、なんにも見ない。

そこは舞台なんかではなく、自分だけの空間、全宇宙だと思う。

乱暴な破壊活動は止まらず、頭の上の板が消え、手を固定していた枷の取り付けてあった側面も壊された。

ボルトを引き抜かれて、両手が思いがけず、自由になった。

「今日の主役。安里咲です」

耳慣れない男の声はマイクを通している。その男らしい手が、わたしの手首を掴んでいる。

「さあ、では、マスクを取りましょう」

バリバリと底板の一部が壊されて、顔を覆っていた金属が外れた。

まぶしい光。わたしにスポットが当たっている。広い空間。

公園の噴水のように円形の石の舞台の中央に置かれていた。周囲を大勢の人たちが取り囲んでいる。天井はない。野外なのだ。

どれぐらいの人がいるのだろう。百人以上ではないか。

「特別な拷問ショーを心ゆくまでお楽しみください」

男が下がっていくと、かわりに数人の長身の男たちが登場した。そのセンターには、マーコフがいる。両サイドを二人ずつ、いずれも外国の体格のいい男性が並んでいた。

亜由美の拷問実験は六人の黒人によって実施された。そのあと、パルダ王国へ彼女は向かった。

わたしを囲む五人は、いずれも白人だった。マーコフに劣らないイケメンたち。しかし、彼らはわたしを苦しめるために来たのだ。

拷問遊戯

首輪にこれまでになく太い鎖がつけられた。ずっしりと重い。

自由になった手首だが、その枷の金具に鉄の棒が通された。手を左右に広げたかっこうにされる。ストッパーのような役目をする金具で手を引き寄せることができなくなった。

そのストッパーに空中から下がるフックが取り付けられる。

大がかりな舞台だった。屋外で、建設用のクレーンが遠くからそのフックを吊り下げていた。

軽いエンジン音が響き、ガクンと引き上げられた。

「こわい」

悲鳴は出ない。自分の体が持ち上げられたことに驚いていた。手を広げたかっこうなので、手首がちぎれそうに痛む。

男が下から支えてくれた。

「ムリです」

こんな吊られかたをすれば、体がどうかなってしまう。

ゆっくりと、しかし彼らは確実に進めていく。

金属のブラ。それは乳房のところがくり抜かれ、その周辺に鋭いギザギザがついていた。

「あー、だめー」

人々に見せながら、それを押しつけてきた。

「あっ」

乳首を引っ張られて、乳房が伸びる。その間は鋭い先端もそれほど食い込んではこない。しかし彼らが金属ブラを背中できつく締め付け、乳房から手を離すと、すべての先端が皮膚に深く突き刺さった。

「ちぎれる……」

恐怖しかない。こんなものを付けられたら、そのまま、スッパリと乳房が切断されてしまうのではないか。

男たちの表情には余裕がある。これは彼らにとっては本番ではないのだ。準備に過ぎない。

「あぐっ!」

金属ブラの背中側になにかが取り付けられ、引っ張り上げられた。それだけ乳房の下側に深く切っ先が食い込んだ。

「だめ。切れちゃう。おっぱいが、ちぎれちゃう!」

わたしがいくら叫んでも男たちは余裕の表情で、とくにマーコフは大きく口を開けて笑っている。

ガクンとクレーンが動き、また吊り上げられた。

「ぎぃぃぃぃ」

ブラの背中側に取り付けた金具は鉄棒につながっているらしく、引き上げられると体重がブラにもかかる。

「だめ、これ、きつい!」

箱の残骸が放り出されている。その状態で彼らが下になにかを持って来て、セッティングすると会場にざわめきが起きていた。

電動ノコギリを手にしたマーコフが、一番下の板を勢いよく切り裂いた。自分が切り裂かれたような気がして、叫んでしまった。

足をまだ箱の残骸に固定され、しゃがむようなかっこうなのだが、その下の板がくり抜かれ、見ると、銀色の槍のような器具が下から突き上げているのが見えた。音はしないが、滑らかに上下に動いている。どう見ても、冷たい金属のディルド。形状も、通常の男性器ではなく、奇妙に捻れている。しいてあげれば、親指を突き出した拳のようにも見えるが、それよりも変形していて、毒蛇の頭のようにも見える。

客席はそれを見てざわついていたのだ。

「あんな大きなものが入るのかね」

「かわいそうに。裂けちゃうんじゃないの?」

「あれじゃ、快楽はないね。粘膜がボロボロになるぞ」

そんな声が、時折強く吹く風に乗って聞こえてくる。

客席は遠いようで、案外、近いようだ。暗いのでよく見えないだけだ。

その銀色の器具に、マーコフは金属の棒を近づけた。

バシンと音がして、青白い閃光が走った。棒を近づけるたびに、棒と器具の間に雷のようなスパークが生じるのだ。

ただあそこをぐちゃぐちゃにするだけではないらしい。電気……。

これは、亜由美が受けていたような拷問だ。

気が遠くなっていく。あんなこと、自分の身に起きたら……。

「哀れな娘」と陽子夫人の声がスピーカーから低く流れる。「好きな男性に、無慈悲な責めを受ける。なにも悪いことはしていない。このような拷問を受ける理由はない。ただ、男たちの、そして私たちの快楽のために、犠牲となるのです」

「お願い、助けてください。ほかのことならなんでもします」

「泣こうが、叫ぼうが、懇願しようが、もう止まらない。止めてもいいと思う方、もしいらっしゃったら、拍手をどうぞ」

シーンとしている。風とクレーンのエンジン音だけ。

「では、続けようと思う方は、拍手を」

もちろん、四方八方から拍手と怒号がわき起こる。

「安里咲。覚悟しなさいね」

「いやー」

男たちに支えられながら、体が降ろされる。股間に金属の先端が触れたとき、バシッとスパークした。

「あっ」

体が硬直する。これまでに受けたどんな苦痛よりも酷い。

耐えられるはずがない。

バチッ、バチッとスパークが続く。

「あぐっ、ぎひっ」

「さあ、彼女の中に入るかしら?」

「だめー、あぎっ!」

なにかを言う余裕はない。痺れた体が、ピストン運動をしている器具に向かっていく。

バチッとまた激しい衝撃を受けて、直後に、ぐさりと深く、先端部分が中に入り込んだ。

「ぐえええええええ」

暴れたため、足枷を止めていた木箱がとうとう壊れてしまった。ほぼ、ほかの部分は壊されてしまっているからだろう。

男たちは木箱の残骸をすべて取り外し、足を握りながら、左右に引き伸ばしていく。その間も、予期しないタイミングで電流が走り、その強弱も予測できず、器具はどんどん奥を突くように深く入り込んできている。

足をバタバタさせるが、彼らは足枷にチェーンをつけて、舞台に置かれた巨大な重石に取り付けた。

どういう仕掛けかわらかないが、ピストンの動きも一定ではない。深く、浅く。不規則に動き、ときどき回転をする。体の中に、いろいろな部分が当たってくる。

すっぽり入ったことで、快楽の種がバラ撒かれる。この境遇になってから、連日、鍛えられてきたからか、些細な動きでも快楽に結びつくのではないかと期待してしまう。その逃げ口を見つけたと思ったとたん、無情にも電流が炸裂するのだ。

「ひどいぃぃぃ」

泣きわめいても、おもしろがられるばかりなのだが、我慢できない。

細長い針金のようなものを、マーコフは手にしていた。

「上から順番に、飾っていきましょう」と陽子夫人の声がする。

彼がわたしの鼻をつまんだ。

「えっ」

なにをされるのか、予想もつかなった。

次の瞬間、死角から突然、銀の糸のような細い光が視野に入った。

「うっ」

先端が彼の指のすぐ横に当たった。小鼻のすぐ上。

「うぎっ」

一瞬で、針金がめり込んだ。ものすごい力で鼻を横から貫通していく。

「はああああああ」

絶望の声しか出ない。

顔を対象にされるとは思っていなかったのだ。

ガクンと体が硬直する。五十センチほどの針金が鼻に突き通った。

別の男がもう一本の針金をわたしに見せつける。彼は顎に指をかける。大きな手。万力のようにこじ開けられた。

「ああああ」

頬に先端を感じる。

「うげえええ」

いや。やだ、やめて。そういう間もなく、頬を突き抜けて口の中に入っていた。

次の瞬間。反対側から突き抜けた。

三人目の男。彼も一本、持っている。

「たすけて」

擦れた声しか出ない。強烈な電流。それがわたしの懇願への答え。

男は乳房を撫でている。イヤイヤイヤイヤ……。

時間が止まったように思えた。乳房の横に突き立てた針金。長い長い時間をかけて、左の乳房の中をえぐりながら突き進み、谷間に先端を出した。

失神したと思うのだが、何発目かの電気ショックで意識が戻った。

先端は右の乳房の中に入り込んでいた。

「ぎゅぇぇぇええ」

乳房をとうとう貫通していた。

三本の針金で横串を打たれた。

だが、まだ男は二人残っていて、二人も一本ずつ針金を手にしている。

快楽。間違った快楽がわたしを突き上げる。どうせ、電流で邪魔されるのだが、せめて少しでも忘れたい……。

「あうっ」

もう助けは求めない。無駄だとわかったから。

苦痛と同じぐらいつらい失神だが、失神したほうがマシだと思う。

男は機械を奥まで受け入れながら、汁と小水を飛ばしている股間を、ゆっくりと揉んでいる。

やろうとしていることはわかるが、そんなことをされる理由がわからない。理由などはないのだが、それが苦痛をさらに倍増させている。

「うがああああ」

つまみあげられた秘唇を、横からぐさりと突き抜けていく。ぐりぐりと、かなりの力をこめて。

五本目も、その下に打ち込まれた。

男たちはしばらくわたしを観衆に見せた。吊られたまま、体を一回転させる。前から、横から、後ろからも見られていく。そのために、彼らは足を重石から自由にして、鎖を持って回るのだ。

心なしか、電流は弱くなってきているように思えた。気絶させないようにしているのかもしれない。

マーコフが針金の両端に小さな金属の円盤を取り付けた。車輪のようにくるくると回るのだが、よく見えない、なにかが円盤にくっついている。

五本の針金の両端にそれが取り付けられる。男たちは左右に分かれて、マッチを擦り、炎の先端を円盤に近づけていく。

「ひぃぃぃぃぃ」

激しく鋭い火花が円盤から噴き出した。十個の円盤がくるくると回転しながら、火花をわたしに浴びせてくる。

拍手が聞こえてくる。それどころではないが……。肩、背中、脇、太ももが、その花火によって焼かれた。

どれだけ暴れても、叫んでも、彼らは予定したことをやり続ける。

「いかがでしょう、人間花火。お楽しみいただけましたかしら?」

終わるのだろうか。もう終わりにしてほしい。

「快楽に浸れそうで浸れず、苦しみ悶える娘。楽しい光景ですわね。このあとは、さらに悲惨な光景をみなさまにご覧いただきます」

まだ、終わらない……。

シャンデリア

「悲惨な光景、残酷な場面にご興味のあるみなさまばかりお集まりですわね」

陽子夫人は饒舌だ。自分のパーティーに招待した客に対応するかのように、落ち着いて語りかけている。

「わたしの趣味ばかりではなく、その対象が美しい娘であることは、いっそう気持ちをかきたててくれますわ」

その間に、わたしはいったん、床に下ろされた。

体に力が入らず、自力で立てない。体を貫く針金はそのままなので、へたに動けば自分を傷つけることになってしまう。

クレーンから下がるロープに、巨大な円盤が取り付けられる。円の中は格子状になっている。かなり重そうだ。

ロープは緩められて、円盤が垂直に舞台に立てられた。そこにわたしを縛り付けることは明白だ。

「ご覧になって。このかわいい娘。長いことバレエをやっていたので、体も柔らかい。のびやかな足。細い手。無駄な肉はないけど、女の子らしいスタイルでしょう?」

手首に縄が幾重にも巻き付けられ、それが背後で円盤につながれている。

足首にも縄がつけられて、やはり円盤に結ばれた。

いまわしいエンジン音。ロープが引き上げられていく。ガツンと音を響かせて円盤が宙に浮かぶ。男たちが支えている。次の瞬間、わたしの体も持ち上がる。

「うぎー」

背中を大きく反らせて、吊り下げられた。床が見える。

低い。陽子夫人の腰のあたりだ。

「みなさんは、こんなことは真似をなさらないでくださいね」

会場で笑い声が起こる。

「特別な訓練を受けた者でなければ、大変に危険ですから」

そんな訓練は受けていない。ただ、恥ずかしいこと、苦痛なことを強要され続けて来ただけだ。

夫人が首輪からの鎖を円盤にからめて引き上げた。余った太い鎖で、目の上を覆うように巻き付けて、それも円盤に引っ掛ける。

「あっ」

頭を上に引き上げられて、口を閉じることができなくなった。

「苦しい? 苦しいわよね。だけどきれいよ」

ねじ上げられている腕、ちぎれそうな肩、そこから脇。激しく動く腹部。そしてお尻へと、夫人は手をすべらせていく。何度も。

「いいわねえ。すべすべだわ。若い肌。新車みたいよ」

もう一段、高く引き上げられる。

もし落ちれば、上にある円盤に押し潰されて即死だろう。そのほうが楽かもしれない。

「脱水症状を起こさないようにしましょうね」

無情にもお尻に管を入れられ、冷たい水を注入される。

「こっちからもあげましょう」

開いた口に水の入ったシリンジを入れて、水鉄砲のように浴びせる。飲みたい。だが、うまく飲めない。大半は流れ落ちてしまった。

夫人は円盤を軽く回した。

「ふああああ」

ぐるぐると体がまわりはじめた。

「そうですわ。拷問の駿河問いの変形です」

わたしはロープを握って耐える。腕がもがれそうだ。背骨から腰もつらい。

鎖のせいで視界は限られているが、ちらちらと炎が見えている。男たちが両手にキャンドルを持っている。

あれを押しつけられるのか。

脅えていると、最初の十本は、回る円盤に立てられた。それでも熱く溶けた蝋が体に落ちてくる。

「人間シャンデリアをつくってみましょう。このアイデアはそれほど目新しいものではありませんが、実際にご覧になった方はきっと少ないでしょうし。みなさんと今宵を楽しむためにも、ステキな飾りになると思いますわ」

マーコフたちはさらに十本のロウソクを手にしていた。今度は逃れられないだろう。

ゆっくりと回る体に、溶けた蝋を振りかけられた。

「あうっ、ぎゃっ、熱い!」

体をよじる。そんなことをしても意味はないばかりか、夫人たちを楽しませるだけだが、じっとなどしていられない。

「安里咲。熱いからって、ただ叫んで反射的に身をよじっていたらダメなのよ。あなたはこれからもずっと、いろいろな苦痛を受けるわ。ただ私たちのような『やってみたい』というだけの理由だったり、あなたがいけないことをした罰だったり。理由はいろいろあるし、理由とあなたの苦痛は比例しないの。わかる?」

「うー」

鼻、頬、乳房、そして性器の外側に針金を通されて、背中が反り返るような厳しい吊られかたをし、上からは溶けた蝋が落ちてくる……。こんなことが、ずっと続くというのか。

「これからは、痛みをじわっと感じて、はじめから終わりまで、ゆっくりとひたすら味わいなさい」

「ああーー」

つらすぎて、考えることができない。

「たとえば」と夫人はマーコフから太いキャンドルを手にすると、わたしの顔に近づけてきた。

「だいたい溶けた蝋は六十度ぐらいあるから、それでも火傷するわ。だけどこの炎はもっと熱いわよね?」

「ふうぃぃぃぃ」

すぐ近くに炎を感じて、焦る。目を覆う鎖の間にチラチラと真っ赤な炎が見える。顔を焼かれるのか……。恐怖ばかりが先に立つ。背中やお尻に溶けた蝋が流れ落ちてくるが、もう、先ほどまでのように暴れることはしない。動けば、顔を炎に焼かれてしまう……。

安里咲2 第3部 (3/5)
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