亜由美 灼熱編 亜由美シリーズ 第3部 (3/4)
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拷問官が長い一本鞭を手にします。わたしがこれまでに見たなかでは一番長いものです。拷問実験でさんざん、彼らに鞭打たれましたが、地下の室内でしたから、ここまで長くはありません。
それを空中でヒュッ、ヒュッと回すと、そのたびに喚声が起こります。
なんと拷問官たちはビートにあわせて踊るように舞台で動きながら、鞭を空中で振り回しているのです。
「やーれ、やーれ」
そんな喚声でしょうか。群衆が手拍子をとります。
そして最初の一撃が彼女の背中に。
「ぎゃぁぁぁぁ」
間近にいたので、これだけ騒がしい中でも、彼女の肉に激突した鞭の音をはっきり耳にしました。それは肉を裂き、骨を砕くような激しいものです。
拷問官たちはバトンのように鞭をお互いに渡しながら踊り、彼女に鞭を振り下ろすのです。
音楽が激しくなり、振り下ろされる鞭のタイミングもそれにつれて速くなっていきます。
バシン。
突然音楽が止まり、静寂の中、最後の一振りが彼女の背中を裂きます。血でしょうか。それとも汗でしょうか。なにかが飛び散って、ライトをキラキラと反射させます。
拍手の中、拷問官たちは一礼すると次の準備をはじめます。
シャベェイはとてつもない拷問ショーなのです。
恐怖の祭り
一人の女を男たちがいたぶるのです。
壮絶なショーが目の前で繰り広げられています。
柱から解放された女は、二人一組となった男たちに肉体を差し出します。
一人は口。一人はお尻か性器で。
男たちは最後までするつもりはなく、音楽に合わせて、ただ女をおもちゃにしているだけなのです。
それでも、六人もの男たちにつぎつぎと休みなく責め立てられているわけですから、たまったものではないでしょう。
あれに似たことはわたしもされたことがあります。
満足に呼吸もできず、いつ終わるともしれない苦痛の連続です。
男たちは女を犯して遊びながら、手のあいたものが、舞台に柱を立ていくのです。
それは、おそろしい柱です。
丸い舞台の外周に、十二本の柱が立てられました。低いもので、舞台から二十センチほど。ロウソクのように細く長い突起のついた柱です。それがしだいに高くなっていき、最後には黒人たちの肩の高さぐらいの、ただの柱になっています。
つまり、最初は小さなディルドのようなものがついた柱なのですが、徐々に高くなっていき、長く、太くなっていくのです。最後はただの丸太にすぎません。
準備は整いました。
女を後ろ手に縛り上げます。それは剛介がわたしにしたような日本的な縛りではありません。
はじめて見るのですが、荷造りに近いものではないでしょうか。
足はしゃがんだようなかっこうで縛られています。
女を拘束するだけではなく、両脇に立った二人の男がちが女を担ぎやすいように、背負子のような縄がついているのです。
鞭を持つ人、小さな炎を爬虫類の舌のように出しているバーナーを持っている人。
そしてバケツとブラシを手にした人もいます。
最初の柱にブラシでなにかを塗りつけます。
すべりやすいようにでしょうか。
女を担ぐというより、縄を持ち手のように使って持ち上げます。
彼女の体重がかかった縄は、さらに強く締め上げ、豊満な乳房を飛び出させます。
「ぎひぃぃぃ」
音楽の合間に彼女の悲痛な声が聞こえてきます。
会場に詰めかけた群衆は熱狂的に声をかけています。
最初の柱はなんなく、彼女の性器に深々と入りました。
別の男が、彼女の股間にうがたれた穴にリングをつけ、野球のボールぐらいの錘をつけました。
次の柱は少し太く長いですが、これも問題なく彼女は受け入れます。
バーナーを持った男が、さきほどクリアした柱に火をつけます。油を塗っているからか、すぐに炎を上げます。
なんという恐ろしい光景。
二本、三本とクリアしていく女。
そのたびにラビアの錘は増えていき、ベロのように引き延ばされています。
彼女は全身を刺青されていて、炎に反射して不思議な立体感をもって迫って来ます。
奇妙な生き物……。
六本をクリアしましたが、そろそろきついのではないでしょうか。残りは六本。
虚ろな目をした彼女が男たちに抱えられ、次の柱に突き刺さります。
「ぎぇぇぇぇ」
こうした行為をいつもされているのかもしれませんが、耐えられない苦痛のようです。
六個の錘が柱にぶつかり、ゴツゴツと音を立てます。引きちぎれそうです。ラビアの穴が拡がってしまい、その向こうに、炎が見えています。
腰ぐらいの高さの柱に、腕ほどのディルド部分。油を塗られて光っているところに、彼女の肉体がおろされていくのです。
そして、とうとう最後の十二本。
それは男の太ももぐらいもある丸太にすぎません。先端は丸くなっていますが、その上に彼女をのせるところを見上げていると、彼女の股間には巨大な穴があいていることがわかります。
炎に照らされた洞窟のよう。その左右に薄く引き伸ばされたラビア越しに炎が透けています。
あんなふうになっちゃうのでしょうか。
「ぎゃぁぁぁ」
悲鳴。丸太が突き刺さっていきます。
見ていられません。
泣き叫ぶ女の声。そして無情にも鞭が飛ぶのです。
見上げると、両脇にいた男たちは、いまでは足を支えているだけで、彼女は丸太に体を貫かれているのです。
男が手を離せば、そのまま串刺しとなって死ぬでしょう。
その傷ついた背中にさらに鞭が飛びます。
群衆はかけ声をかけています。
「五、六、七」
数えているのではないかと思います。
十二で終わりました。
わたしもホッとしたのです。
彼女の体を押し上げて、柱から引き抜くと、そこにも火が放たれました。
でも、これで終わりではなかったのです。
巨大な穴と十二個の錘をぶらさげたラビアを見せるように、男たちは彼女の縄を手にして、舞台から観衆たちに見せていくのです。
人々は叫んだり笑いながら、ぽっかり開いた穴に手を入れたり、錘を揺らしたり、彼女を叩いたりします。
一周したので終わるのだろうと思ったら、そうではありません。
燃えている低い柱に彼女を近づけていきます。彼女は暴れるのですが、きびしく縛られていて男たちに縄で吊され、反撃などできません。
燃える柱の上に彼女がさしかかると、群衆が叫びます。なにを言っているかわかりませんが。
「燃やせ、燃やせ」とでも言っているのでしょうか。
「ぐぎぃぃぃ」
あっさりと男たちが彼女を燃えるディルドにおろしたのです。
それも、今度は性器ではなくお尻に……。
肉の焼ける臭いがします。
わたしが失神しそうです。
彼女が引き上げられると、柱は一度は火が衰えたものの、また盛大に燃え上がります。
それを確認して群衆は喝采するのです。
二本目にいくと、パッと火が彼女の伸びきったラビアを焼きました。
「ぎやああああ」
人間のものとは思えない声。ラビアが焼き切れて錘が、舞台にドンと音を立てて落ちました。あれほど重いものをぶら下げていたのです。
彼女のお尻は焼かれ続け、十二本目の巨大な柱の上にきたときには、ほとんど失神しているように見えました。
お尻の穴が巨大な空洞に見えます。炎がそこをなめていくので、よく見えるのです。膣もお尻も真っ黒な穴になっています。
かわいそうにラビアは焼き切れて、無惨な残骸となっています。
燃えさかる柱に彼女の体が押しつけられていきます。
ジューと音が聞こえます。
この音は、一生、忘れないのではないでしょうか。
きっと、彼女は死んでしまうでしょう。まさに生贄です。
そこに、ベッチェがやってきました。彼女は自由に出歩くことができるようです。
「シャベェイ、すごいでしょ」
「怖いわ」
「あれだけやったらあとが大変だわ」
「死んじゃう……」
「そうねえ」
ベッチェは笑っています。
「その話はともかく、注意事項として、妊娠できないでいて、彼女みたいに全身刺青が終わってしまったら、最も悲惨なシャベェイを担当しなくちゃいけないの」
言葉がありません。
目撃してしまったことは、話で聞くよりもズシンと心に残るのです。
この光景を一生、忘れることはなさそうです。
そして、もしわたしが妊娠せず、留学期間を延長させられて、ずっとここにいたら、遠からずこういう目に遭うことになるのでしょう。
「だけどさ。彼女、これで半年ぐらい休めるわ」
「え?」
「うらやましいじゃない?」
「生きるか死ぬかなのに?」
「そうかしら」
ベッチェの微笑みの意味がわたしにはよくわかりませんでした。
「いずれ、わかるわよ。それより」
ざざっと足音がして男たちがやってきました。
怖い。
笑っているけど怖いのです。
「祈りの時間は終わったけど、シャベェイのお楽しみはこれからよ。わたしたちの出番。もちろん亜由美もね」
「えっ」
引き立てられます。燃える柱の間に金具がつけられていて、そこに斜めの台がしっかり取り付けられます。
最初に出て来た女性たちも戻って来ます。
十二の柱の間に、ベッチェを含め十一人の女が並びました。
「あとは、ひたすらやるだけだよ。やられるだけかしら」
群衆たちが立ち上がり、舞台の回りを回るのです。それはわたしたちを品定めしているのです。舞台の上には拷問官たちが鞭を手にして立っています。群衆に声をかけています。
わたしの前に男が立ちます。彼らはみな、儀式のものらしい頭からかぶるだけのポンチョのような布をまとっているだけで、その下は裸なのです。
股間に手をやって長いものをもてあましています。ベッチェの前にも男が立っています。それが、徐々に列になっていくのです。
群衆の移動が落ち着くと、音楽が変化しました。
リズミカルですが、やや落ち着いた民族音楽です。
背後にいた拷問官がわたしの首輪の鎖を引っ張り、台の上に上げさせます。足は枷と錘があって持ち上がりません。
台を背中にして足を開くようなかっこうになります。
アナウンスがあり、群衆は「わー」と呼応します。
はじまったようです。目の前の男がのしかかってきました。
顔を舐められ、キスをされ、舌を入れられ、乳房をつかまれます。珍しいからでしょうか。何度もわたしを見て笑いながら、なにかを言い、股間のものを突き上げてきました。
「あうぅっ」
これを十日ごとにやるというのでしょうか。
しかも月末と月初は実質、二回分を連続で。それは二昼夜ぶっ通しということでしょうか。
ひどい拷問ショーを見せられていたのに、わたしは濡れていたらしく、その長いペニスを受け入れていました。
男は一方的にわたしの中に放出し、名残おしそうに乳房をバシンと叩いて次の男と交代です。
そのとき、わたしは絶望的な気分になりました。わたしの前だけ、ものすごい列なのです。
ベッチェも人気ですが、男たちはまっすぐ一列に並んでいて、おそらく十五人ぐらいでしょう。
だけど、わたしの前には列の途中から二列になって、しかも横に折れているのです。
数えられませんが、三十人以上でしょう。
「亜由美。あなたのおかげで、みんなが楽できるわ。ありがとう!」
あえぎながらベッチェが叫びました。
彼女の中で果てた男が、わたしを見てなにかを言い、列のうしろに並ぶのが見えます。
「夜が明けるまでよ。途中でお水とかくれるから、がんばって」
男たちは、その気になれば、とっかえ引っ替え、何度でもできるのです。
女性も並んでいます。女性はわたしの顔の上にまたがって、股間を押しつけてきますから、舌と唇で満足させなくてはなりません。
顔がずるっと剥けてしまうのではないかと思うほど、体重をかけてくる女性もいます。
その間も、男たちは股間を責めてきます。
お尻を選ぶ人もいます。
拷問官が油を男たちに塗ってくれていますが、ときどき、思わぬ巨根を埋め込まれて、泣き叫ぶことになります。
「あうう、だめー、痛い!」
日本語で叫ぶとどよめきが起きます。おもしろいらしいのです。
水をくれるといっても、ひしゃくの水を舞台の上からかけてくるだけなので、うまく飲めないこともあります。
夜でも空気は熱く、燃える炎がさらにヒートアップさせています。
そしてわたしは、見知らぬ人たちに、激しく犯されながら、涙を流して悦んでいるのです。
「亜由美を存分に犯して。突き殺してくださいぃぃ。ああ、またイクぅ」
拷問官たちは手持ちのビデオカメラでわたしを撮影しています。
日本語で叫びました。
「みなさん、亜由美を犯して。もっと狂わせて。すべてを忘れさせて。中にたっぷり出して。妊娠させて。孕ませてください」
妊娠すれば、おそろしいシャベェイを逃れられるから。もしかしたら、生きて日本に帰ることができるかもしれないから……。
ゲダの仕事(五月十五日 日曜日)
朝まで犯されて、わたしにとって初めてのシャベェイが終了しました。
何回か、穴の奥まで水を入れて洗われて、油のようなものを塗られたりしたのですが、体はガクガクです。洗濯板のようなものにくくりつけられていたこともあって、背中も腰も痛くてしょうがありません。
明るくなってきたら、暑さも夜の比ではなく、人々は建物の中に入って、ほとんど出てこなくなるようです。
黒人たちに鎖を解かれ、わたしたちは鞭で追われるようにして建物に入れられます。
一瞬、真っ暗になってしまいます。小さな窓からの明かりしかないのです。
入れられた建物は殺風景な駐車場のようなところで、下はざらざらのコンクリート敷き。
わたしたち十一人全員が壁に手をあげたかっこうで拘束されます。
黒人たちはホースを手にして、高圧の水をわたしたちにかけました。
「うあー」
「きゃー」
悲鳴はどの国も同じです。
ゲダたちは、泣き叫びながら、体を洗われます。
男たちは笑いながらみんなを踊らせるのです。もうクタクタなのに。
ちょっとでもにらまれると、六人の放水が一人のゲダに集中します。そうなると悲惨です。口、鼻に浴びせられて息ができない上に、乳房や性器、お尻を強烈な水流でなぶられるのです。
彼らの一人が、「亜由美」と言うのが聞こえました。
「いや、お願い、やめて!」
彼らは至近距離まできて、水を顔にかけてきます。
「がふっ」
気管に入ってむせてしまいます。彼らは笑っています。
一晩中、責められ続けたというのに、なおも笑い物にされるのです。
膣の中に直接水流を入れられ、お尻も洗われます。
みんながこれをやられて、足元には糞尿が垂れ流しになっていきます。
お腹の大きなゲダが四人やってきました。
全裸なので、妊娠していることがはっきりしています。全員、陰部を描いた腹部の刺青だけは完成しています。それが上下左右に引き延ばされて、奇妙な絵柄になっています。
腰に布を巻いていて、ホンモノの陰部は隠しています。
鎖、枷をすっかりとられて自由になったわたしたちに、タオルを渡してくれます。
ベッチェも幼く見えるのですが、四人とも若く見えて、小柄で、大きなお腹がアンバランスです。
「彼女たちは、妊娠しているから、シャベェイに出されないけど、身の回りのことはいろいろやらされるの」
ベッチェがいつのまにかわたしの横に来ています。
「見てて」
ああ、そんなこと。
彼女たちは、床に四つん這いになると、わたしたちの汚物を処理しはじめたのです。
「すごいでしょ」
全身に震えがきます。
恐ろしい祭りへの参加や生贄からは逃れても、ゲダとして最下等の生き物であることからは逃れられない……。
「妊娠したのだから、もっと優遇されてもいいはずなのに」
「そうしたら、バランスが取れないでしょ。同じゲダなんだもの。妊娠したからって階級が上がるわけじゃないんだから」
それによって猶予されるのは、シャベェイと新たな刺青だけ。苦痛の中の生活は変わらないのです。
「ああやって、常に自分たちがゲダであることを叩き込まれるの。肉体的な苦痛は少ないけど……」
「じゃあ、もし妊娠できたとしても、ずっと?」
「亜由美。あまり先のことを考えてはダメ。つらいだけだから」
遠くに来てしまったのです。なにもかも置いて。自分の大事なこともすべて。
泣き叫びたい衝動にかられます。
「ここはゲダだけが住む建物なので、自由だけど、ほかのところには行けないのよ」
黒人たちが、入り口を閉じて厳重にロックしていました。
どの窓も小さく、体も通らないほどです。
熱い地域なので窓は最小限なのです。
「案内するわ」
中庭を囲む四角い建物の、一辺だけが、ゲダに許された場所でした。
四階には比較的若い者たち。三階には中堅。二階には妊娠した者が住んでいます。
一階はいま水をかけられた広場と、なにかいけないことをした者や病人が閉じ込められる牢屋があります。
「食べ物は毎日、一階に運ばれてくるので、みんなで分け合って食べます。妊婦が仕切ります。トイレは各階に一つずつあって、部屋の掃除やトイレ掃除も妊婦の仕事です」
牢屋のような細長いベッドだけの部屋がいくつもあるのです。
「ここに、最大で四十五人住めると思うけど、いまは二十人ぐらいしかいないから、空き部屋が多いわね」
どこも薄暗いのです。一緒に水を浴びたシャベェイ仲間たちも部屋へ引き上げてきます。
「全員がシャベェイに参加するわけじゃないのね?」
「ふふふ。休めると思ったの? 甘いわ」
ベッチェは意地悪な言い方をします。
「わたしたちゲダは、シャベェイのために生かされているのは事実。だけどほかにもいろいろとやらされているわ」
「どんなこと?」
「不安にさせて悪いけど、たとえば拷問ね。あなたも拷問官たちを知っていると思うけど、彼らが最初からいまみたいな一人前ではなかったの。訓練を受けてああなったわけ。わたしたちはその練習台」
どよんと重い気分になります。あの末土教授たちによる拷問実験。わたしは殺されるはずがないと信じていたのですが、いま思えば、殺されていてもおかしくはありませんでした。そして、夕べのシャベェイでの柱刑。
お尻を焼かれたあのゲダはどうなったのでしょう……。
この国では、さらに厳しいことが日常的に行われているのです。
耐えられないかもしれません。
「それから、王室関係からの呼び出しもあるの」
「呼び出し?」
「遊びよ。慰み物として使われるだけ。でも、甘く見ないほうがいい。たぶん思った以上に厳しいわ」
聞きたくない。
「休もうと思うなら、大けがをすることよ。お尻を丸焼きにされた彼女みたいにね」
「死んでしまう……」
「そうそう。そのほかにも、実験材料にされることもあるの。あなたが留学していることになっている大学には医学部や生物学部もあるけど、そこでは先進国ではできないような人体実験が密かに行われてるから。わたしはまだそこに行ったことはないけど……。なにをされたのかしらないけど、お腹が真っ二つに裂けてしまった子がいたの」
「えっ」
「最後まで苦しんでいたけど、二週間ぐらい生かしていたわ」
死にたくても死なせてくれないのです。
「注意すべきは、大学の研究棟に行かされたときね。だけど、拒否できないからどうにもならないけど」
「妊娠さえすれば、そういうことは免除なのよね?」
「シャベェイと拷問の練習台は免除されるけど、王室関係に呼ばれたり、実験材料になることはあるわ。妊婦じゃないとできない実験があるから」
厳しいのです。思った以上に。
「ゲダは絶滅危惧種なのよ」と彼女は笑います。
「無理もないわよね。増えるはずがないし……。あなたみたいにわざわざゲダになりに来る人なんていないし……」
もしかすると、剛介たちはゲダの供給源としてパルダ王国に見込まれてしまったのでは?
わたしが無事に日本へ戻るどころか、このあとも、次々と剛介たちは誰かをゲダとしてここへ送り込んでくるのでは?
そんな想像をしてしまいます。もっとも、いまのわたしには自分のことだけで精一杯です。どれだけチャンスが少なくても生きて日本に戻りたいのです。
部屋をあてがわれました。ベッドといっても固い木の台のようなもので、そこにムシロのような編み込まれたクッションがついています。
「これだけ?」
「これだけ」
いたたまれない部屋です。
「トイレはこっち」
床に穴があいているだけで、トイレットペーパーはありません。
「どうするの?」
「わたしを呼んで。舐めてあげるから」
「え?」
「ウソよ。そこから水が出るから洗って」
ベッチェの冗談は冗談に聞こえません。
「言っておくけど、ゲダ同士でなにか肉体的なことをしたときは厳しく罰せられるから注意してね。ここには古い決まりがあるから、腕を切り落とされた子とかもいるのよ」
ベッチェとは、心でつながるような関係でありたいのです。お互いに肉体的な接触は必要ありません。
部屋に入ります。廊下とは鉄格子の扉があるだけ。壁にイモリが這っています。薄暗い廊下の明かりだけで、昼でも暗い部屋。蒸し暑いので、けっこう寝苦しいのですが、くたくただったので、眠ってしまったようです。
ゴンゴンと鉄格子を棒で叩く音で目覚めます。
「亜由美」
拷問官の野太い声。夢ならいいのに。
現実でした。
ベッチェがもう一人の拷問官に引き立てられています。
「王室の呼び出しよ。わたしは通訳で一緒に行くことになったわ」
一晩、責め立てられて、休みはわずか四、五時間ではないでしょうか。
ぼんやりした頭で、トイレに行き、水であそこを洗って、濡れたままですが、彼らについて一階へ行きます。
そこで首、手、足に枷をつけられます。
毎日、こうして脅えながら過ごすことに、耐えられるかどうか、自信がなくなってきました。
男が乱暴にわたしの体を抱え、お尻を突き出させます。
「かわいそう。いまそれをつけるの?」
ベッチェが日本語で言います。
「亜由美。お尻の中に長いものが入れられるから」
「うぎぃぃぃぃ」
彼女が言うよりも何かぐねぐねとしたものが押し込まれる方が早く、お尻の穴を拡げながら、腸内にどんどん入ってくるのです。
深いです。お腹の左から入ってきて、腸を引っ張るように胃を押し上げるほど中まで入ってきました。
「しっかりお尻を締めて」
「ええっ」
ゴムのような長く重いものを入れられて、その先に細いワイヤーがついています。ワイヤーは地面にまで達して、先端に鉄の大きな輪が三つついています。
男にうながされて歩くと、お尻でそれを引っ張ることになります。ガリガリと派手な音がします。
「お腹の中のものを出してはだめよ」
「ムリよ」
必死に締めますが、緩んでいるお尻にはつらいのです。
「このまま街中を歩くのだから」
「ええ!」
驚いているわたしの口に、男は固い角材を噛ませて、頭のうしろで、角材を縄で縛るのです。
そして乳房を同じような角材で上と下からはさみ、端を強く縛り付けていきました。
角が肉に食い込んできます。
「あぐぐぐう」
さらに丸太を肩に抱えさせて、重い枷がついている手を、そこに鎖でつなぐのです。
拷問官が、お尻に短い鞭を当てました。
歩き出すしかありません。
王宮へ
暑い国だからでしょうか。
真昼を避けて行動する習慣があるようで、午後遅くなってから、人々は活動をはじめるようです。
わたしだけが、丸太を担がされて、ジャラジャラと鉄の輪を引きずりながら、昼下がりの街を歩かされます。
アスファルトの道は焼けるように熱いのですが、裸足です。
お尻を一所懸命に締めても、ズルッと太いゴムの部分が出ていく感じがあります。
ベッチェは裸に布をまとっています。頭からすっぽりと。
拷問官は、鞭をときどき地面に叩きつけて、ものすごい音を出し、行き交う人たちの注目をこちらに向けさせます。そしてなにかを言っています。
「新しいゲダで、日本人だと言っているのよ」
くらくらします。
「止まって」
道の真ん中で止められます。
「出てきちゃったから、入れ直すそうよ」
「入れ直す?」
拷問官が、わたしの頭を下げさせ、お尻を突きだしたかっこうにします。重い丸太が下がり、そのまま前のめりに倒れてしまいそうになりますが、勢いがつかないようにゆっくりとおろされて、わたしは顔を焼けたアスファルトに押しつけて、肩の丸太で抑え付けられたようなかっこうになってしまいます。
「足を曲げちゃだめ」
この姿勢で、なおも足を延ばし、お尻を高く上げろというのです。
男たちの手によって支えられながら、恥ずかしい姿勢を取らされます。
「これは日本から来たゲダで、これから宮廷に行くところだと説明しているわ」
「があああ」
男の手が、半分ほども飛び出していた長く太い棒を、いっきに引き抜いたのです。
わたしの周りに人が集まっています。彼らのサンダルが目の前にあります。
一度、引き抜いて、見世物にされながら、また入れられるのです。
「ちゃんと締めていないと、何度でもやらされるわよ」
「あがああ」
角材の猿ぐつわを噛みしめて、叫びます。
笑い声が上がります。
お尻の穴を拡げられ、そこにゴムが入ります。時間をかけて、遊びながらねじ込んでいきます。
とても長いので、なかなか終わりません。
ようやくすべてが中に入りきると、男たちは肩の丸太を持って、わたしを起き上がらせます。
「あわあ」
五十人ぐらいの人だかり。
吊り下げられます。
「触られるわよ」
人々が手を出して、角材ではさまれて飛び出しているオッパイを触ってきます。顔も触られます。
「初めての純粋な日本人のゲダだから、珍しいのね」
「あぐぅ」
乳首をつねられたり、ひっぱられたりして、もてあそばれます。
いつもこんな目に遭うのでしょうか。
しばらくして、合図があったのか、人々がさっと離れていきます。
そしてまた、歩かされます。
街は、高い建物はなく、アスファルトの道は宮殿方向に向かう一本のほか、少し離れたところに自動車がいきかう立派な道路が見えています。
その間は、ずっと同じ形をした長屋のような建物が続いています。庭があってヤシの木などが植わっています。
あんまり貧富の差はないようで、それはいいのですが、仕事をしなくてもお金が貰えるからか、みんな暇なのです。
喉が渇き、とても飢えた感じになってきました。
ケモノにされていくような気分です。
必死に一時間ほど歩いたでしょうか。途中、もう一度、お尻のゴムを入れ直されて、人々に触られて、おかしな気分になって。
宮殿はとても大きく、公園のようです。門をくぐると、南国とは思えない芝生の広場。噴水がありますが、警備人と庭師しかいません。
見渡す限りの敷地。
建物は大きく、遠いのです。
ひらすら歩いていると、この中の人たちはゴルフ場のカートのような車で移動しているのがわかります。セグウェイで移動する警備員もいます。
警備員といっても自動小銃を担いでいるので、軍人なのかもしれません。
ブーンと音がして、虫のようなものが飛んでくると、それはカメラのついた小型の無人ヘリで、わたしたちを上から監視しているのです。
正面に高い塀と木の扉がありますが、そこへは行かず、右に逸れていきます。
人工の林があり、やっと直射日光を遮ってもらい、ホッとします。
そこには小川が流れ、石作りの太鼓橋などもあり、日本庭園風なところや、中国風の雰囲気もあります。
やっと建物の中に入ることができそうです。
亙ののった壁。両側に開く木の扉。それが男たちによって左右に開きました。
残念ながら、まだ外でした。
そこをくぐっても、あるのは赤っぽい土をならした広場です。建物の中には入れてくれないようです。
その真ん中へ行くと、地面に穴があいていて、鉄でできた丸い管のようなものが埋め込まれています。
肩の丸太がようやく外され、そこに垂直に立てました。
「ゲダという階級の呼び名は、柱という意味があったのよ」
ベッチェが教えてくれますが、わたしは疲れ果て、その場に倒れてしまいました。
「なんていうのかしら。建物を建てるときにしっかりとさせるための、えーと、基礎ね」
基礎。それは日本で言えば、人柱でしょうか。生贄とか人柱。それがゲダなのです。
いにしえの時代、この国ではなにをするにしても、生贄を捧げ、重要な建物を作るときは、人柱を立てたのでしょう。
近代になって、ゲダはすぐに殺されることはなくなったものの、人々の娯楽として、そして国の成り立ちを忘れないための一種の文化として、形を変えて残っているのです。
「大昔は誰が柱になるかわからなくて、大変だったらしいけど、何百年か前の王様が、ゲダという人たちを作り、そこからしか生贄を出さないようにしたら、国が栄えたらしいのね」
人身御供というものなら、神様に捧げる命ですから、神聖なもので、その生贄は神に近い存在としてあがめられるはず。それがなければ、犠牲になる者は浮かばれません。
でも、ゲダを階層として作ったときに、その観念は変わってしまったのです。
人々はゲダでなければ、生贄になることはないと保証されたわけで、それは王様を支持する力になったでしょうし、同時にゲダを特別視しつつも、「自分たちで用意した捧げ物」に過ぎず、崇める必要はなくなったのです。
こうして百年以上も制度が維持されて、その間に世界は変化し、資源国となって豊かになったこともあって、ますますその幸運を維持するために、ゲダも維持すべき存在となってしまったのでしょう。
男たちが、わたしのお尻を持ち上げて、中からゴムを引きずり出しました。
それをわたしに差し出します。
「舐めてきれいにしなさい」
ベッチェが猿ぐつわを外してくれました。
こんなに長く大きなものが入っていたのです。わたしは自分の汚物のついた柔らかな棒を舐めました。
少し涙が流れました。
「亜由美は、ウンコを食べたことはないの?」
ベッチェの言葉に、愕然とします。
「そう。食べたことがないなら、ちょっとかわいそうかも」
男たちが見張っているので、気を緩めることなく、舐めていきます。
「見たでしょ。わたしたちのものを掃除してくれた妊娠したゲダたちを」
そうでした。あれはショックでした。お腹の大きな女性たちが、這い蹲って、床の上の汚物を口にしていた姿。
「あれは特別なことじゃないのよ」
この南国で、わたしは死ぬんだな、と思いました。男の人たちのお尻を舐めさせられたことはありますが、そこまでしたことはないのです。
「泣かないで、亜由美」
優しくされると、さらに泣きたくなってしまいます。
高い塀に囲まれているからでしょうか。
この庭はすでに日が陰り、涼しい風が吹いています。拷問官たちが、庭の周りにある松明に火をつけました。
シャベェイを体験したばかりなので、この場が同じような雰囲気になっていくことが恐ろしくてなりません。
しかも、わたし一人だけなのです。
ソファがいくつも並べられ、パラソルが立てられていきます。
氷の入った皿に食べ物が盛り付けられています。焼かれた羊の頭、果物、カレー風のスープなどなど。
リゾートのような雰囲気になっていきます。
照明もついて、低くリズミカルな音楽が流れます。王室の人たちは、みな柔らかで鮮やかな布をまとい、優雅に支度を進めます。
「立って。命令されるまで、正面を見ちゃだめ」
わたしは柱の横に立ち、地面を見ていました。影に沈む汚れた足を見つめていると、そこに涙が落ちていきました。
絶望的に悲しいのです。
「顔を上げて」
上を向くと、四つのソファには、スーツを着た男たちがそれぞれ二人ずつ座っていました。二十代ぐらいの若い人もいれば、六十は超えているだろう人もいます。
全員、世界中のどこででもビジネスのできる雰囲気です。
「王族の方々。紹介はしないわ。彼らはゲダとは直接口を利くことも滅多にないし、名乗ったりもしないの」
四十代ぐらいの男が立ち上がり、なにかを話し始めました。それをベッチェが通訳します。
「今日はわれわれが尊敬する国、日本からわざわざゲダを体験するために留学をしてきた亜由美を歓迎しようと思います」
日本語は少しおかしいですが、意味はわかります。
「亜由美はみなさんもご存知のように、ネット上でさまざまなゲダにふさわしい行為を公開しており、日本にもこうした存在がいるということに、わたしたちは驚きとともに、とても親しみを感じました」
言っていることは、それなりにまともですが……。
「亜由美がゲダとしてどれだけ務まるかはわかりませんが、できるだけ楽しんでほしいと思います。亜由美のわが国を知りたいという意欲に免じて、われわれは本格的なゲダとして亜由美を迎い入れることにしました。留学期間は未定ですが、ぜひ、有意義に過ごしてほしいと思いますし、われわれも最大の配慮をしたいと思っています」
ぶらぶらと、男が歩いてやってきました。
久しぶりに見る、宇辻先生です。まだいたのです。ニヤニヤしています。
「また、日本の学生たちが主体となった亜由美のサイトでも、この模様は随時、配信される予定となっており、わが国古来の風習をより多くの人たちに理解していただくきっかけになると期待しています」
本気なのでしょうか。世界中から非難されるかもしれないのに?
もっとも、ゲー研が作ったサイトは、フィクションであり、アダルト用のゲームなのですから、それを正面から攻撃してくる人たちはいないでしょう。
この光景をパソコンで見ても、ホンモノだとは思わないかもしれません。
どうせ、ヤラセ、演出だと。
それぐらい、常軌を逸したことなのです。
「ついては、ゲダの名を授けることにします」
男は、そこで間をあけたので、わたしも思わず彼を直視しました。
「メスブタ・アユミ・プゥッフ」
男たちが笑います。
名前にメス豚と入れたのです。
「プゥッフは、ウンコのことよ。それもすごく侮辱的な言葉なので、通常は使ってはいけない言葉なの」
ベッチェは一生懸命、説明してくれるのですが、いろいろなショックが重なって、反応できません。
「日本語でいえば『クソッ』ってあるでしょ。あれほど軽くはないの。もっといけない言葉」
わたしはピンときませんが、男たちや拷問官の反応を見ていると、それがとても屈辱的な意味だとわかります。
「これからは、ただプゥッフと呼ばれるようになるから、気をつけてね」
彼らはそれを口にするたびに、わたしを侮辱して笑うのでしょう。
「今夜は、プゥッフを歓迎して、伝統的な遊びをしたいと思います」
挨拶が終わると、男たちは召し使いに飲み物や食べ物を取りにいかせました。
「わたしたちも食べることができるの。さあ、行きましょう」
食べ物のところへ行くと、召し使いたちがニコニコして、わたしたちの足元に食べ物を落としていきます。
ベッチェはすぐに四つん這いになって、手を使わずに口にします。
「亜由美も、じゃなかった、プゥッフも早く。こんなにおいしいもの、当分、食べられないんだよ。ただし、手を使ってはダメだから」
しばらく、わたしたちは地面を這い、召し使いたちが落としていく食べ物を味わいました。
拷問官がやってきて、わたしだけを立たせます。
そして柱に連れていきます。
「い、いや」
怖くなります。
柱に後ろ手で縛り付けられました。
食べ物のついた口を手で拭いながら、ベッチェが来ました。
拷問官の言葉を説明します。
「これからゲームをする。プゥッフは自由に声を出していい」
それだけを言うと、ソファにいる男たちのところへ行きました。なにかメモを受け取っています。
「いい、プゥッフ。このゲームはちょっとつらいものになるわ。彼らは、あなたに自分が予想した声を上げさせようとするの。あなたはなにが正解かわからない。叫び続けることになるのよ」
「怖いわ。ねえ、お願いだから彼らに許してほしいと頼めない?」
「ムリ。こちらから話しかけたら殺されるわ。あなたは日本人だから特別だと思ったらダメよ。彼らはゲダから声をかけられたら、一族の恥だと思ってるの。名誉のためにあなたを殺すしかなくなる……」
「殺してほしいわ」
「そんなこと言ったらだめ」
ベッチェに怒られてしまいました。
でも、怖くてしょうがないのです。拷問官たちが、あの拷問実験のときのように、さまざまな器具を取り揃えたワゴンを押してきたのです。
もしまた拷問実験がはじまるなら、今度は耐えられないかもしれません。
拷問遊戯
最初の男が手にしているのは、大きなペンチです。
拷問官がするのではなく、王族にいる男たちが遊びでやるのです。
それを持ち上げると、ほかの人たちがパラパラと拍手します。おどけたしぐさで、そのペンチをわたしの頬にあてます。
細かく鋭い刃先のある幅の広いペンチ。
ニヤニヤ笑いながら、それを顎へ。耳の下。首筋。肩と動かします。
脅えているわたしを見ながら、楽しんでいるのです。
肩から鎖骨。
船旅の間にも痩せたので浮き出ています。
肩の付け根。その下の脇の柔らかな肉。びくっとわたしが反応したのを、男は喜んでいます。
ペンチの刃先が開きました。
そして、脇の下の肉をはさみます。
「いたい!」
男たちが笑っています。
彼は悲しそうな表情です。わたしは予想とは違う悲鳴をあげたらしいのです。
もう一度、さらに深く肉をはさみ込みました。
「あひぃぃぃ」
肉をちぎるように引っ張るのです。
「ちぎれるぅぅ」
ソファで笑っている男たちが真似をしています。「ちぎれるぅ」と。
それでよかったのでしょうか。
男はわたしの顎を手でつかみ、笑いながら顔にツバを吐きかけ、戻っていきました。
「王族の人たちにとって、ゲダは遊び道具。滅多に体に直接触れたりしないの」
ベッチェが説明します。
「王族のツバはありがたく舐めとらないといけないわよ」
ベッチェが指で目や頬のあたりについた男の唾液を集めて、わたしの口に押し込みます。
「タバコの味がするでしょ」
苦い味です。
次の男は、アイスピックを手にしてきました。皮の手袋をしています。
みんな顔が似ています。
鋭い先端で小鼻を押します。
「ひっ」
なにをされるかわからないので、とても怖いのです。
「メスブタ」
彼はそう言うと、指で鼻をつまみます。左右にゆすります。鼻柱を下から押し上げます。
アイスピックの先が小鼻の根元に強く押しつけられました。
「あ、いや。許して」
男は顔をゆっくり横にふり、笑っています。
「ぎゃっ」
すごい力で小鼻を貫通しました。拍手が聞こえます。
「あうぅぅ」
ぐりぐりとアイスピックを動かしています。痛みに頭がボウッとなります。
引き抜かれたのですが、痛みでよくわかりませんでした。
男はもう一度、アイスピックを突き刺して、今度はそのままにして手を離しました。
目の前に長い金属の錐と木の柄が見えています。
位置をかえて、反対側の小鼻にアイスピックを突き立てます。今度はなんの準備もなく、一発で突き刺しました。
悲鳴を上げる間もありません。
そして、こじるようにして傷口を拡げます。
「があああ」
そのまま突き刺しておくのです。左右にVの字のように、突き立っています。
また新たなアイスピックを持っています。
皮の手袋で乳房をつかんでいます。
「いや。お願い」
そのとき、ソファで拍手が起こりました。「お願い」と男たちが繰り返しています。
男は残念そうな表情で、口をすぼめました。ツバをはくのでしょう。
わたしは思い切って口を開きました。彼はニヤリとして、口の中にツバを吐きました。なにも考えずに飲み込みました。男が機嫌を直して、戻っていきます。
「当たったのね」
男はお金をみんなに払っています。賭けの対象になっていたのかもしれません。
紙を見て、彼らはこそこそとわたしに聞こえないように話をしています。どうせわかりっこない、この国の言葉なのに。
次の男がやってきました。
アイスピックを手にしています。
思わず宇辻先生を探しますが、酔っ払っているらしく、遠くからぼんやりと見ているだけです。別の係の者が、カメラでわたしを撮影しています。
若い男で、乳房をぐいっと掴みました。右、そして左。わたしの顔に恐怖が走るのを楽しんでいるのです。
鋭い先端で乳房をなぞり、乳輪をなぞり、乳首をツンツンと押します。
「ああああ」
予告もなにもなく、わたしの体につぎつぎと、穴が開けられていくのです。
刺青同様に、修復不可能な傷になるでしょう。
指で乳首の根元をコリコリと揉まれます。
乳首を指でつまんで引っ張りました。先端部ではないようで、少しホッとしますが、乳首の根元あたりに刺さりました。
「ああ、ううう」
言葉が出ません。
涙があふれます。
鼻から流れる血と涙が、唇まで流れてきます。
ぐりっと刺さったアイスピックを、持ち上げるようにして貫通させました。
男は自分の仕事に満足そうで、なおもアイスピックを深く通していきます。
そして手を離しました。
拍手がおこります。ヤジや口笛も。
わたしがなにも言えないうちにやり遂げたので、その手際がほめられているのでしょうか。
新しいアイスピックを手にして、反対側の乳首も同じように揉みながら、引っ張っていくのです。
「助けて。お願い」
ソファの男たちがわたしの言葉を繰り返してつぶやき、笑っています。それはすでに言ったことのある言葉なので、賭けの対象になっていないようです。
二本のアイスピックが乳首を真横に貫通しました。
ぶるぶると震えながら耐えます。
ほかの男たちもやってきて、わたしの周りを囲み、記念撮影をしています。みんながアイスピックを触ります。そのたびに新たな痛みが走ります。
賭けに勝っているその男は、みんなを席に戻らせると、四本のピックを、揺すっていきます。
「あはっ」
穴が広がり、血を流しています。
「あとで、いいお薬があるから、心配はいらないわ」
ベッチェに慰められるものの、取り返しのつかないことになって、呆然としています。
男は三本目のアイスピックを持ってきました。先端を乳房から脇腹。そしておへそへ。
皮膚にカタツムリが這ったような跡がついていると思います。切り裂くようになぞっていきます。
波打つ腹部。
「やめて。だめ。死んじゃう!」
男はハッとしました。そしてわたしを見ました。悔しそうな表情です。
口を開く間もなく、臭いツバが飛んできて眉間にはりつきました。
別の男に皮の手袋とアイスピックを渡しています。
わたしの言った言葉で、彼らは笑い、からかい、楽しんでいるのです。
彼らが見ている叫びそうな言葉の候補は、宇辻先生が書いてあげたのでしょう。お互いに言葉がよくわかっていないからこそ、できるゲームです。
楽しみながら拷問をすれば、言葉を叫ぶ可能性が出てきますが、有無を言わせずに鮮やかに痛めつければ、言葉にならないので、セーフということになるのかもしれません。
すたすたとやってきた初老の男は、股間を皮手袋で撫でると、割れ目に指を入れて、小陰唇と大陰唇を一度につまみました。
やりたいことはわかります。
でも、なにかを言うより早く、鋭い先端が肉を切り裂いていました。
「ぎゃぁぁぁぁ」
見れば、真横にアイスピックが突き通っていました。右側から入った先端は、左の陰唇を内側から串刺しにして外に突き抜けていました。
体が壊されていく……。わたしの体が……。
そして反対方向からも。
声を出すタイミングさえ与えられません。
手慣れているらしく、いっきに突き抜けていました。
気が遠くなっていきます。
みごとなやり方に、男たちが集まって、その部分を見ながら、アイスピックを動かします。
秘部を拡げ、歪め、おもしろがっています。
「ちぎれるぅ」
そのあまりの乱暴なやり方に、陰部が引きちぎられそうです。
再び撮影をしている彼ら。
これで終わってくれればいい……。
宇辻先生がすぐ横にいました。お酒臭い息をしています。
「どうだ。楽しいか?」
「つらい……」
「もう少しうれしそうにするんだ。おまえの映像は世界中に配信されるんだから」
「体が……、こんなになって……」
「傷口は少し汚いが、まあ、ちゃんと手当すれば化膿しないと思うよ」
男たちは、鼻のアイスピックを引き抜きました。
もう遊びは終わったのか、わたしが泣きわめいても、ぜんぜん気にしないようです。
乳首、そして陰部。六本のアイスピックを回収すると、建物に帰っていくのです。
黒人の拷問官がやってきました。
手には銀色のフックが六個あります。
なにか言っています。
「鼻と乳首だけの予定だったのに、あそこもやられたんだなって」
開けられた穴に、フックをこじ入れるので、また泣き叫びました。
小鼻のフックには細い鎖がつけられて、来るときに引きずってきた金属の輪を一つ、ぶら下げるのです。乳首にもフックがつけられて、細い鎖がつけられ、やはり金属の輪がぶら下げられました。左右の小鼻で一つの輪を、左右の乳首でもう一つの輪を吊り下げているのです。
固く張った乳房ですが、さすがに下へねじ曲げられてしまいます。
細い鎖を調整して、二つの輪が秘部に当たるようにしています。
そして秘部には、細い棒が真横に左右の穴を通されました。そこに金属の輪を取り付けます。輪にはその棒を引っ掛けるようなツメが裏側についているのです。
拷問官が鼻と乳房に吊された輪を持って、少し手前に浮かせてから、手を離しました。
秘部の輪にぶつかって、カリンと金属音がしました。
拷問官は満足そうです。
縄が解かれました。
庭から柱を引き抜くように言われました。再び担がされて、腕に枷が取り付けられ、柱に固定されます。
足にも枷がつけられました。
こうして、街を歩いてゲダの部屋へ帰るのです。カリン、コリンと金属音を立てながら。
部屋に戻されると、宇辻先生があとからやってきて、傷を消毒してクスリをつけてくれました。
「今日はこのあとは休めるそうだから、わたしの部屋に来て、これまでのことをすべて書いておきなさい。夜は少しはまともな食事も用意できる」
宇辻先生の部屋はゲダの棟の四階にありました。そこだけ、まともな個室になっています。まともといっても、わたしたちに比べてです。粗末な小屋ぐらいの設備です。それでも冷蔵庫、テレビ、パソコン、そして柔らかな普通のベッドもあります。
「こんな体にされました」
「うん。かわいそうだが、まだまだ試練がある。ここの子たちを見ただろう」
「刺青をしています」
「そうだよ。おまえもされちゃうかもしれないな」
「もし、あんな風になったら、もう日本に帰れないかもしれない……」
「来たばかりなのに、ホームシックか」
「そうじゃなくて……」
「だとしても、かまわないんじゃないか? ここでゲダとかいう最下層民として一生を終えても」
「本気でおっしゃってるんですか?」
「王室がどこまでおまえのことを本気でここに留めておくかはわからないさ。ただ、こちらへの要求ははっきりしている。定期的に留学生を寄こしてほしいという」
「わたしだけではなく?」
「何人もはいらないだろう。次の留学生が来たら、御役御免で帰ることになるんじゃないか?」
見も知らぬ誰かが、わたしのような生贄になるというのでしょうか。
「彼らからすれば、日本とパルダ王国の関係を強くするための犠牲者として、それぐらいはふさわしいと思っているようだな」
メチャクチャな話ではないでしょうか。
「ひょっとすれば、外交ルートで日本の政府にも内密に根回しがされているかもしれないぞ」
「だったら、わたしはどうなるんです」
「次の子が来れば帰国できる。それに、おまえは大事な日本から来たゲダなんだ。ある意味で大切にしてくれるんじゃないか?」
どこが大切にされるというのでしょう。
もう、これ以上はないというほどの苦痛と屈辱の中におとしめられているというのに。
食事は期待したほどおいしいものではありませんでした。あまり味はなくて、甘いばかりの肉料理と、少し辛みはあるものの、パクチーのような強い香りだけしかしないスープ、そしてパンと言えなくもないもの。
ただ、食後に宇辻先生と飲んだコーヒーはとてもいいものでした。痛み止めが効いてきたからかもしれません。
それだけに、暗い部屋に戻り、固いベッドに横になると、薄寒い孤独とみじめさが募ります。
わたし自身だけではないのです。かわいそうなベッチェのことを思うとなおさらです。
この理不尽な地獄を、なんとか抜け出すことはできないでしょうか。彼女と日本に逃げ出すことはできないでしょうか。
研究棟(五月十六日 月曜日)
「これを着ろ」
宇辻先生が牢獄のような部屋に来てくれました。
白いワンピースを渡されました。
ああ、こんな服をまた着ることができるなんて。
ここは監獄のようですが、鍵はありません。自由に出入りできます。
とはいえ、ゲダたちはみな刺青をされ、服も持っていませんので、外に出ればすぐにバレてしまうでしょう。
見張りがいるので、建物から出ることは基本的にできませんが、実際には中庭は自由に出られます。
この四角く中庭を囲む建物は、庭に出るのは簡単ですが、外に出るところにも見張りがいるので、そこを突破するのは容易ではなさそうです。
四角い建物の一辺だけがゲダの棟となっていて、ほかの三辺には拷問官などが住んでいますから、すぐ追われて捕まってしまうでしょう。
わたしは逃げたとしても行くあてもなく、言葉も通じませんから、のたれ死にするだけでしょうけど。
それに、とうとう、体にいっぱい穴をあけられ、そこに金属の輪をぶら下げられる身となったのです。
だけど、ワンピースを着ると以前の自分に戻れそうな気がします。
なんという肌触り。懐かしいにおい。涙が出てしまうのです。
サンダルを履くことも許されました。汚い足のままなのは残念ですが、人間らしい気持ちが戻ってくるようです。
「プゥッフ、すごくきれい。お姫様みたい」
ベッチェは上品な柔らかな布で身をまとっています。通訳としての仕事のときだけ許されるようで、彼女はそれをとても気に入っているようです。
それなのに、このワンピースはあまりにも美しすぎるのです。彼女は布に触る勇気もないようです。
「いいな、プゥッフは。ホンモノのゲダじゃないんだものね。いつか日本に帰るんだものね」
ベッチェの言葉に、わたしはなにも返せません。ずっと一緒だ、とウソをつきたい衝動にかられます。そんなことは言えないのです。
どんなに酷い目にあっても、わたしはゲダとして扱われているだけで、ゲダではありません。
内心ではすごくホッとしています。いつかこの苦痛には終わりがくるのです。日本に戻り、大学に復帰し、剛介たちと学生としての日々を送ることができるかもしれません。
必ずできると思いたいのです。
中庭を通り抜け、兵士のいる入り口までいくと、古い銀色のドイツの高級車が止まっていました。銃は持っていませんが兵士が運転してくれるようです。
わたしたちは後部に乗りました。
ほこりを巻き上げて走り出します。エアコンがとてもよく効いています。
「いいところへ連れて行こう」
それははじめてここへ来たときに通りすがりに見えたリゾート地のような大学でした。
王立大学です。
その正面で止まり、わたしたちは校内へ歩いていきました。白人の学生もいて、アメリカの大学のような雰囲気があります。
受け取ったときはステキなワンピースに思えたのですが、こういうところに来ると、むしろ質素すぎます。
そんな不釣り合いなわたしとベッチェのことは、無関心というか、無視されています。
「設備は最高クラスだよ。これだけのものは日本の大学にもあまりない」
鼻輪、そこから鉄の輪がぶら下がっていても、誰も気にしないようです。
もっとも、日本の大学に比べても、学生は少なく、お休みのように見えます。
宇辻先生に案内されて、講堂、教室、図書館などを見ていきます。その都度、写真を宇辻先生が撮ります。
わずかな期間しか通えていない日本の大学を思い出してしまいます。そこよりはすべてに新しく、最先端のようです。
「すごいわね。こういうところで勉強がしたかったわ」
ベッチェは大学を見るのさえ初めてだそうです。
「一応、おまえはここに在籍してるんだからね」
宇辻先生は写真の入った学生証を見せてくれました。いつ撮影されたものかわかりませんが、ゲー研による撮影がはじまった最初の頃の写真でしょう。明らかになにか痛いことをされて、苦悶の表情を浮かべています。
「これプゥッフなの! ブタみたいに太ってたのね!」
ベッチェが笑います。ついこの間の自分ですが、たしかにふっくらしているのです。
「懐かしいだろう」
もう、あの頃の自分とは違うのです。
「といっても、まだ一か月も経っていないんだけどな」
まだ五月の半ば。剛介に出会ったのは四月の下旬だったのですから……。ついこの間なのに、思い出すこともできないほどです。
くらくらしてしまいます。
「あっちは研究棟だ。普通は入れないが、今日は特別に通行できる許可を得ている」
銀色に輝く四角い箱のような研究棟。
「だめ、怖い」
ベッチェは脅えています。
「大丈夫だ。おまえは通訳として来ているだけだから、なにもしない」
見学用の入り口が別にあり、そこの通行証を持っているそうで、外からそのままのかっこうで入ることができます。それでも、入り口に自動小銃を持った兵士がいて、学生でも簡単には入れないそうです。
「ここでは、世界中から特殊な実験の依頼を受けているんだ。パルダ王国は、ほとんどの国際条約を批准していない。パルダ王国には秘密警察があるし、拷問もあるし、人体実験もある」
息が止まりそうになります。ベッチェはガタガタと震えているので、手をつなぎました。


