奴隷牧場外伝 奴隷 佳代子 小説奴隷牧場 第1部分 (1/3)
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十一
佳代子がそのウェブサイトを見つけたのは全くの偶然だった。
一
二十一歳で短大を卒業して以来、十二年勤めた中堅の商社をひと月前に退社した。三年前に結婚した時に寿退社をすればよかったのだが、そのままズルズルとOLを続けることを選択してしまい、これが色々な面でマイナスに作用したと佳代子自身も思っていた。
いつのまにか部内では自分が最年長になり、入ってくる若い女の子に、気が付くと嫌味のひとつも言っており、自分では決して意地悪な気持ちで言っているわけではないのだが、相手の反応次第でついエスカレートしてしまうことがあり、結局は自分が一番嫌な思いをする、といったことが最後の一年間にたて続けに起こった。
しかし退社を決めた最大のきっかけは、ずっと自分の味方だと思っていた直属の上司に疎まれていると感じたことだ。
実はこの上司とは結婚する数年前に僅かな期間ではあったが、特別な関係にあった。
二十一歳年上の紺野健一がいわゆるサディストだと気が付いたのは、彼が会社のビルのすぐそばで喋っていた携帯電話での会話をたまたま聞いてしまったからである。二十六歳だった佳代子にとって、これほど身近にS性を持った人間がいたことに、しかも相手が結婚していて普段の口ぶりからひたすらに優しい愛妻家であることを確信していた男が、そうであったことは少なからずの驚愕であった。
と同時に、自分でも心臓の高鳴りがわかってしまうほどのトキメキをその時覚えてしまったのだ。
佳代子が自分のM性に気が付いたのは学園に入ったばかりだから、二十代の始めの頃だ。それ以来、数え切れないほどの妄想を描いてきたが、それまで一度も実体験はなかった。正確に言うと、性体験として男性とはそのような経験がなかったといった方がいいだろうか。
大学、短大と女子だけの環境の中で、部活で先輩にしごかれたことは数えきれぬほどある。五人の先輩の前に順に立たされて、計十発の往復ビンタをされる等ということが日常茶飯事だったからだ。そんな時佳代子は「裸になりなさい」と誰かが命じてくれないか、と心密かに願っていた。もちろんそんなことは一度もなかったのだが、ビンタをされて恍惚となっている自分を必死で隠しつつ、自分が何かしら失敗を犯して先輩達から「気合い入れるからそこに立ちなさい」と言われるのを心待ちにしていたのだった。
佳代子が紺野に自分のM性を打ち明けたのは、彼が携帯電話に向かって主従関係にあると思われる相手と電話で話しているのを偶然聞いてしまった二週間ほど後のことである。
部内の暑気払いの二次会の席で、「課長、ちょっとご相談があるのですけど、この後もう一軒連れて行っていただけませんか」と自分からきっかけを作ったのだった。
紺野は優しい男だった。
普段から女子社員だけではなく、後輩の男性社員にも慕われていたし、部下の公私にわたる相談事にもよく乗っているから、ふたつ返事で近くのホテルのバーへと連れて行ってくれた。
ロングのカクテルをひと口だけ口にしたところで、佳代子はいきなり切り出した。
「課長、Sさんなんですよね」
突然の切り出しに紺野が相当驚くだろうと思いはしたが、まっすぐ切り出す以外の方法を佳代子はみつけることができなかったのだ。
しかし、彼の反応は佳代子の予測とは全く違っていた。
「ああ、お前この前俺の電話聞いていたんだろ。まあ大体において、お前がマゾだってこと、俺はもうずっと前から知っていたよ。あのとき、お前が会社から出て来たのも見えていたし、俺に気がついて立ち止まったこともわかっていた。あの正面のガラスにお前、自分が映っていたこと知らなかったんだろう」
紺野の口調はもちろん咎めるようなものではなく、むしろ優しい笑い顔であったのだが、びっくりすると思って話を切り出したのに、逆に驚いたのは佳代子の方だった。
頭に血が上って、顔が真っ赤になっているのが自分でもよくわかり、彼の表情を確認するどころではなかった。
「それで、相談というのはそのことかい」
「あ、はい」
紺野がピルスナーグラスの生ビールを一気に飲み干したので、佳代子もつられるようにカクテルを半分ほど口にした。
「あ、でもどうして私がMとお思いになったのですか。私、こんな話をしたら課長はきっと飛び上がるほどびっくりされると思いました。なのに、私の方が飛び上がっちゃって、まだドキドキしてます」
「どれ」
「あっ」
なんと、紺野は佳代子の質問には答えず、いきなり右手を佳代子の左の乳房に伸ばしてきた。
自分の体の中でも、乳房は自慢のパーツだった。ものすごく巨乳と言うほとではないが、Eカップの乳房は二十代の頃からほとんど形を変えず、二二十代前半になっても充実した張りを保っていた。
「で、なに今日の話は、俺の調教を受けてみたいとかそういうことか」
服の上からではあるが、強く揉み込まれても抵抗する気配を見せない佳代子に、紺野は言った。
「いえ、あの、でも課長にはすでに奴隷さんがいらっしゃるようですし、それに奥様も」
紺野は右手で痛みを感じるほどに強く乳房を揉み込んだと思うと、少しずつ指をすぼめていき、的確に乳首を捉えてさらにぎゅっとつねりあげるように力を込めた。
「ああっ」
こんな場所でと思いながらも、抵抗できない佳代子から屈服の声が漏れる。
Sの男性から受けるこのような刺激がこれほど甘美であることは、佳代子の想像をはるかに上回っていた。
「経験は」
「男性とはありません」
「なに、女とだったらあるとでも言うのか。そういえばお前、宝塚の追っかけを学生時代にしていたと言ってたよな」
「いえ。女性とあるという意味ではないんですけど、部活とかで女の先輩によく叩かれたりはしていました」
「痛いの、好きなんだろう」
「は、はい」
とうとう佳代子は認めてしまった。紺野は言葉をかけてくるたびに、乳首を捉えた親指と人指し指に力を加えてくる。
今の「はい」は、私を調教してくださいと言ったのと同じだ。
他人に自分の性癖を認めたのは初めてだった。
「そうか。だったら俺の奴隷になるにふさわしい体かどうか検査してやろう。明日、仕事が終わったら駅前の『葡萄樹』で待ってるんだ、いいな」
「あ…、は、はい」
紺野が席を立つ気配にも、佳代子は言葉を発することすらできなかった。
体を調べる。
「奴隷」にふさわしい女かどうかではなく、ふさわしい体かどうか調べる。
紺野の言った言葉が旋律のように佳代子の脳天を突き抜けた。
振り向くと、紺野はすでにチェックを済ませラウンジを出て行くところだった。
翌日。
佳代子は『葡萄樹』で二時間近く待たされた。
待っている間、夕べのバーでの短い時間の会話を反芻し、また、あの時彼が電話で自分の「奴隷」に対していたいくつかの言葉を思い出していた。
「お前は、俺の何だ」
「奴隷なら当然出来るんだろう」
「奴隷は何のために存在するんだ」
「鞭が好きなんだろう、痛くしてほしいんだろ」
携帯電話の向こうに居る相手に向けられる言葉は、普段の部下たちに対する穏やかな物言いからはまるで想像つかぬ凛とした声だった。
「お待ちどうさん、行くぞ」
いつの間に入ってきたのか、テーブルの傍らに立った紺野が、伝票を手にするとすたすたとレジの方へ歩き始める。普段の彼ならば、例え部下であれ待たせた事への詫びをもう少し丁寧な言葉で口にするのだろうが、この時はそのような気配は微塵もなかった。
タクシーに乗って告げた行き先は、「港区の法務局の近く」という場所だったが、佳代子は知識としてそのそばに東京で唯一のSMの専門ホテルがあるということを知っていた。
紺野は黙って窓の外の景色を見ていたが、佳代子は不安と胸の高鳴りで何かを言わないと、叫び出すか大声を上げて泣いてしまうような気がして、とりあえず呼びかけた。
「課長…」
タクシーに乗って以来、はじめて紺野が佳代子の方を向いたが、返事の替わりに右手が左の太腿に伸びてきた。
乗車の時に佳代子は、先に、奥の座席に乗るように指示されたため、運転席からは死角になってはいるものの、佳代子にとっては思いもよらぬ紺野の行動だった。
昨日はなんだかんだ言ってもアルコールも入っていたが、今日はつい二時間ほど前まで、上司と部下としてすぐそばで仕事をしていたのだ。もちろん、紺野は昨日のことも今夜これから何かが起こるなどということもまるで忘れてしまったかのように、拍子抜けするほどにいつもの紺野であった。
思わず佳代子が腿を固く閉じてしまうと、咎
め立てるように紺野の右手に力が込められ、逆にそれまで以上に脚を開かされてしまう。すでに始まっているのだ。素直に佳代子が腿を開いたことを確認すると、紺野の右手は太腿に沿ってスカートの奥に差し込まれてきた。
脱いで見せる、そのことを意識した佳代子は、会社に行く時には滅多に着用することのない白のガーターベルトでストッキングを吊っていた。したがって、腿の付け根の少し手前で紺野の指が素肌に直接触れた。たったそれだけのことで、「うっ」と小さなうめき声が漏れてしまい、思わず自らの手で口をふさぐ。
紺野が佳代子の顔を見て、にやりと笑った。
そして彼の右手は一気に奥に差し込まれ、パンティの上からなぞられてしまう、と思った佳代子の想像を超えて、パンティのふちの部分を中央によじるようにして人指し指と中指が、いきなり佳代子の濡れた部分に侵入してきた。
口を手でふさいでいるにもかかわらず「あぁ」と声をあげてしまう。空いているもう片方の手で紺野の手を押しとどめようとしたが、先にそれを察知されて左手で手首を押さえつけられてしまった。
一気に体から力が抜ける。
しかしその佳代子の耳元に紺野は追い打ちをかけるようにつぶやく。
「ストッキングは感心だが、パンティをはいてることがすでに減点対象だ」
小さな声ではあったが、運転手に聞こえたことは間違いないだろうと佳代子には思えた。
何か言おうと紺野の顔を見ようとした瞬間、無造作に紺野の指先が性器の中へと差し込まれた。そこは佳代子が自分で思っているよりもずっと濡れていたことを思い知らされる。そしていとも簡単に紺野の指先は佳代子の穴奥上部のもっとも感じる場所を探り当てていた。
部屋の中は佳代子の想像以上におどろおどろしい雰囲気を持っていた。
部屋の中央にでんと据え付けられた、おそらくはそこに座らされた生贄の体をあますところなく開いて晒させるための毒々しいほどの赤い椅子。その前には大きな鏡。滑車と鎖。壁につり下げられた手錠やリードのつけられた首輪。無数の洗濯ばさみ。そして数本の鞭と色とりどりの縄。タクシーの中で性器を容赦なくまさぐられた余韻もあって、部屋の入口でぼんやりと立ちつくす佳代子に、紺野の厳しい声が飛んできた。
「なにしてるんだ、さっさと脱いで裸になるんだ」
女子大生の頃から、何度他人にこの言葉を言われることを想像したことだろう。
マスターベーションをするたびに、様々な男女が佳代子に投げかけてきた言葉だ。
それもほとんど毎日、会社という日常の中で顔を合わせ、もっとも信頼して尊敬すらしている直属の上司である。
悦びが旋律のように足元から頭のてっぺんまで駆け抜けたが、口から出た言葉は少し違っていて、口にした途端自分でも驚いてしまった。
「ここでですか。あちらで、洗面所で脱いできます」
ハッとして紺野をみつめる。了解しないでという懇願の目が、紺野に目の前で脱ぐのは許してという懇願に見えるのではないか、どこか冷静にそう思っている自分を意識して、そのことも佳代子を驚かせた。
「経験あるのかないのか知らんけれど、新しい男にはじめて裸を見せる時ほどマゾにとって至福な時はなかろうよ。見ててもらえることをありがたいと思いながら、ぐずぐずしないでまっ裸になるんだ。検査というのは裸になるだけじゃ済まんのだから」
紺野がふっと
逸
らせた視線の先にはあの赤い椅子があった。
そう。
その通りだ。私は見て欲しい。脱ぐところを、そして脱いだ後の全てを。できる限り不躾なサディストの冷たい視線で。
「脱げ」
再び佳代子の体を電流が突き抜けた。
ワンピースの後ろのファスナーに手をやった瞬間、心からうれしいと思えた。たったひと言だったが、この普段優しい上司の前で裸になるための、自らの行動を正当化してくれる言葉だった。
脱がなくちゃいけない。
心の中で何度もつぶやきながら、ワンピースを足元から抜き、スリップを落とし、留め具をはずしてストッキングを巻き下ろした。
彼の視線を体全体で受け止めながら脱いでいくこと、それ自体がもの凄い快感だった。
「胸、サイズは」
「八十九のEカップです」
「ブラ、さっさと取って見せてみろ」
手を後ろに回してホックをはずして、「ご命令だから」と自分に言い聞かせて、手で隠したりをわざとせずに、さっとブラジャーを外して手を下におろして紺野を恐る恐る見た。
紺野は目の前の小さなソファに腰をかけて、佳代子を少し見上げるような位置だ。
「ほう。なかなかいい形だ。もっと胸はってみろ、手を頭の後ろに回して組むんだ」
言われたとおりにする。
佳代子の体に残っているのは、白のガーターベルトと同じく白のレースのパンティだけだ。
「違う、こうだ。もっと肘を真横にシャンとしておっぱい突き出せ」
一度立ち上がった紺野が、頭の後ろで組んだ腕の肘の部分をそれぞれ両手で掴んで、ピンと張らせた。
紺野が命じた姿勢は、普段は仕事上の上司である男に、完全に服従を示すものだった。
再び椅子についた紺野の視線が突き出したバストに刺さる。
恥ずかしい。
でも心の底の部分は確かな悦びに満たされていたし、それ以上に憧れていた男に、そしてサディストである男性に自分を見て貰うことの性的刺激は想像以上のものがあった。
「ほう、さすがにパートのおばちゃんたちが
妬
むだけのことはあるか」
「胸、ですか」
佳代ちゃんのおっぱいうらやましいわね、程度に優しく言われた経験はある。しかし、この異性の上司に対して彼女たちが何を言ったかまでは定かではなかった。
「あはは、まぁな。そのままの姿勢崩さず回れ右してみろ」
従った途端、後ろからパンティを剥き下ろされた。
無言の指示に従い、片足ずつわずかに浮かせて佳代子の体からその小さな布きれが紺野の手に渡る。
「本来、パンティはな尻の下までまくり下ろされたら、その後は自分で脱いで、畳んで渡すのが作法だ、こういう風にな」
後ろから佳代子の鼻先にその小さく折りたたんだ布きれが押し当てられた。
しかも、もっとも真ん中に当たる部分、濡れた部分を上にしてだ。
ひどく汚していることは、そんなことをされなくてもわかっていた。
その濡れ具合と恥ずかしい匂いで立っていられなくなりそうだ。
後ろで紺野が再び椅子に座る気配。
無遠慮な視線が後ろから裸の尻に注がれているのを、いやがおうにも意識させられた。
「よし。ではお待ちかねの性器検査だ。そこの椅子に脚開いて乗りなさい」
待ちかねてなんかいない、そんな言葉を口にすることすらできないほどの緊張感を感じた。
その毒々しく赤色をした鉄製の物体は、椅子という表現には全くあたらない、座ったが最後、両脚は付け根まで無惨に開かされ、太腿や足首をそこにつけられたベルトで固定されてしまうと二度と自らの意志では脚を閉じることは叶わず、その上、半ば万歳をした位置に取り付けられている手首を固定するベルトに手の自由も奪われると、何一つ隠すことが出来なくなる。
一瞬でそのことが見て取れる、椅子などと言うより、まさしく性器検査台と言うにふさわしいものであった。
「早くしろ」
尻に一発、後ろから平手が飛んできた。
それは思いの外、力が込められており、普段優しいこの上司がやはりサディストであることを改めて認識させられる。
一段高くなっている台の底の部分にやっと尻を乗せても、なかなか左右の脚台に両足を開いて乗せることが出来ない。先程まで感じていた「見られる」快感も強い羞恥心のためにさすがに吹き飛んでいた。
パチーーン。
一瞬、何が起こったかわからず、意識を飛ばしたままで佳代子は両足を台に乗せていた。
ビンタ。
短大の一年生の頃に先輩に思い切り頬を張られて以来受けたことのない行為だった。
太腿、足首とベルトが巻かれて、あっと言う間に想像通りの淫らなポーズに固定されてしまう。
「手、頭の後ろ」
手も固定されるとばかり思っていた佳代子が、次に衝撃を受けたのはその言葉ではなく、言われた通り手を頭の上に持って行った次の瞬間、紺野は椅子の横に取り付けられたハンドルを回し始めたことによるものだった。
体が後方に少しずつ倒されていく。
それは、剥き出しにされた性器をさらに高い位置で男に晒すということだった。
頭の中が真っ白になった。
「凄い濡らしようだなぁ。お前の普段の気の強さはマゾの資質の裏返しだろうとわかってはいたが、まさかここまでとはな」
そう言った紺野に、剥き出しになった上に、自分でも恥ずかしいくらい尖っていることがわかるクリトリスを、指で軽くひと撫でされただけで「ひいっ」
という声をあげて、軽くイッてしまった。
私はマゾ、私はマゾ、男の人に濡らした性器を見られて、もっとも敏感な部分をほんのちょっと触られただけで絶頂してしまうマゾ女。
頭の中で、そんな言葉をひたすら繰り返す。
「手で開いてもっと中まで見せてみろ」
手を拘束されない理由がもしかしてそれではないかと、先程背もたれを倒されていく時に、ほんのちょっと頭をよぎった佳代子のその予感が当たった。
おずおずと両手を羞恥の中心部に持って行き中指に力を入れて、濡れた花びらを左右にくつろげる。
「俺は、中まで見せろと言ったんだよ。出来なきゃ器具突っ込んで無理矢理拡げるぞ、どんな道具があるかくらいお前も知ってるだろう」
自分より立場の強いものの命令でなければ絶対に出来ないであろうことを無理矢理させられる、想像していたそれがどれだけ甘美なことかを佳代子はこの時現実として思い知らされる。
「どこ、見て貰いたいか言ってみろ」
入口を両手で完全に拡げさせ丸見えにさせておいて、紺野は追い打ちをかけた。
「あそこを見てください」
「アソコなんて場所はない。言い方も悪い」
「ど、どうぞ私の性器を見て下さい」
「もっと淫らな言葉、マゾのお前が知らんわけないだろう」
人前では絶対に口にしてはいけなくて、でもいつか誰かの前で口にしてみたいと、ずっと思っていた四つの文字の言葉を紺野が言っていることはすぐにわかった。
しかし、言わなくてはという気持ちとウラハラに言葉が出ない。
「わ、わたしの…」
「守口佳代子の、だ」
「も、守口佳代子のお…、見て…」
「全然、聞こえない」
「も…守口佳代子のお…おまんこを見てください」
「よし。ちゃんと言葉に出してそれを言うのは、性器を見せる時のマゾ女の作法だ、忘れるな。もう一回、今よりも大きな声で言ってみろ、鏡の中の自分で拡げている場所を見ながら。そうだ、もっとぐっと拡げろ」
言われて目を開ける。それまで自分が強く目を閉じていたことをはじめて気が付いたかのように、意識的に一度瞬きをした。
佳代子の括り付けられている椅子は、背もたれの部分をおよそ三十度くらいの角度へと倒されていたから、少し顔をあげるようにしないと、鏡の中の自分のその位置までは目に入れることはできない。
そうして無理な態勢になりつつ覗き込んだそこには、無惨にも目一杯太腿を開かされ、そして両手でくすんだ色の襞を左右に開いたなかに、濡れて恥ずかしく充血したピンク色の粘膜が丸見えになっていた。
佳代子は一度目を閉じると、もう一度自分の性器をみつめながら、はっきりと言った。
「私の、守口佳代子の恥ずかしいおまんこをどうぞご覧下さい。ああ、おまんこ見てください、課長」
言った瞬間、下半身から上半身を突き抜ける強い快感が佳代子を襲って、重力以外の拘束を受けていない上半身をビクンと跳ね上がらせた。
「今日は、お前が望んだことの適性を見るための検査が目的だ。俺からは快感を与えるということはない。したがって今後勝手にイクということがあったら、その分は後で罰を与えるからそのつもりでいろ」
そんな佳代子の様子を見た紺野の反応は冷淡なもので、しかしそれがますます佳代子には強い被虐感と陶酔をもたらした。
しかし、次に紺野が言った言葉は、今言ったことの正反対ではないかと思うようなものだった。
「両方の中指でちゃんと拡げたままで、右手の人指し指でクリトリス擦れ」
「そ、そんなことしたら…」
「それと勝手にイッてもいかんが、イク時にちゃんとそれを口に出して言わなければもっと厳しい罰だ」
「そ、そんな」
「勝手にイク罰は尻とおっぱいに鞭だが、申告せずにイッたりしたら性器への直接鞭。そのつもりでやれ」
性器を直接鞭でぶたれる。尻にしろ胸にしろ鞭などでは叩かれたという経験すらまだない自分が、こんなみじめな格好でオナニーをさせられて、その上、事と次第によっては、性器を鞭で叩かれるのだ。
頭の中がそのシーンで一杯になった佳代子は、手で性器を拡げたままでという過酷な命令の下、窮屈な触りかたになっているにも関わらず、五分と持たず屈服の時が近づいていることを、鏡に映った紺野に告げなければならなかった。
「駄目です、イキそうです」
「どこが」
「ああ…、イク」
「どこがだ」
「おまんこ、おまんこいっちゃいます。ああ、おまんこイク…」
ひとりの部屋で、この言葉を口に出してオナニーしたことが何度あったろう、本当に誰かの前でこんな淫らな自分を見せながら達してしまう。本当にイク、次の指先の一往復で…、そう思った瞬間、無情にも紺野の手が佳代子の右手首を掴んで性器から引き離した。
「い、イヤー」
「勝手にイクなと言ってるだろう」
直前のお預けに、括り付けられた太腿が小刻みに痙攣している。
「で、でも、言えば…、言いましたちゃんと」
「言えばいいなんて言ってない。言わないとおまんこ鞭だと言っただけだ。だいたい、恥ずかしくないのか、上司の前でオナニーしてイクなんて」
紺野は佳代子のもっとも痛いところをついてきた。
「降りろ」
言って、太腿、足首とベルトをはずして、ハンドルを回して背もたれを元の位置に戻す。
「えっ」
恥ずかしいポーズから開放されるというのに、「いやっまだ」と思ってしまう自分に気づいたが、頭に血が昇っていて、その言葉を声に出して言ったのかどうかさえわからない有様だ。
羞恥と欲求を強要した赤色の椅子から降りると、すかさず次の命令が飛んだ。
「後ろ向いて、脚、思い切り開いて、膝を曲げずに床に手をつけ」
自分は後方の椅子に座り、ゴソゴソと音をたててなにやら道具を探している気配だが、紺野の言ったポーズがすぐには理解できず、なかなか行動に移すことができない。
「四つんばいだ。ただし、膝を曲げないで尻は高く突き出す。脚、開けもっと」
言われて、前屈みに手を前について脚を開く。
「手、もっと前。脚ももっと広がるだろう。何のための格好かよく考えろ」
入社したばかりの頃、何のための仕事か考えてやれとよくこの上司に叱られたことが急に頭をよぎる。しかし、次の瞬間何のためのポーズかを知って顔がカッとなるのがわかった。
「何のためだ」
紺野が追い打ちをかけてくる。
「お尻、見ていただくためです」
「ただ尻じゃないだろ」
「アナル」
「アナルなんてどこの言葉かわからん、ちゃんと言え」
「佳代子のお尻の穴を見ていただくためです」
Mとして予期していたこととは言え、ついに上司に肛門を見せる宣言をしてしまった。
覚悟を決めてよりお尻を高く突き出す。想像しただけで凄いポーズだと思ったが、ついいけないと思いつつ椅子の前の鏡を見てしまった。
鏡に対してほぼ真横の位置で、火照
った顔を下に、なだらかなカーブで背中から腰にかけて盛り上がって行き、尻を頂点にする山の形が描かれている。横から見るとただそれだけだが、紺野が座っているのは真後ろだ。
脚を開いているために尻たぼが拡がり肛門が見えてしまっていることは確実だが、その下の先程から濡れに濡れている性器も見えているかもしれない。
佳代子がそんなことを思った瞬間、ピカッと光が後ろで光った。同時にカシャリというシャッター音。
「あぁ」
止めてください、と言えなかった。続けざまにシャッターが押され、その都度佳代子の性器と肛門をあからさまにすべくフラッシュが光る。
濡らしきった性器からは先程から床に
滴
り落ちていることがわかっていた。こんなポーズをさせられても、まだ溢れさせてしまっているその証拠を、記録として残されてしまったらあまりに恥ずかしすぎる、そんな気持ちがまた、佳代子の体の芯に快感の渦を作っていった。
「よし、膝をつけ。肩もついて、両手を後ろに回して自分で尻を拡げてもっと穴をよく見せるんだ」
従うしかなかった。
再びシャッターが何回も
焚
かれる。
「一度立って、九十度横、鏡の方を向いて、さっきのポーズ」
「手、床についたら、顔は正面向いて鏡をしっかり見ろ」
先程までは顔は全く写る心配がなかったが、今度は横顔がしっかり撮られてしまう。
それにしても凄いポーズだ。なのに自分は感じて陶酔しきった顔をしている。鏡の中の自分を見てはっきりとそう思った。
そして、思い切って昨日告白してみてよかったと。しあわせだと感じる自分がどこか誇らしい。
「立って、もう一度九十度。そうだ、こっち向きでまた同じ格好だ。もっと尻あげて、顔あげてカメラしっかり見ろ」
カシャ、カシャっとフラッシュとともにシャッター音が鳴る。
その都度フィルムが巻かれるシュルルという音が、次々に記録されているという佳代子の意識を煽った。
「いやらしい顔だ、目がとろんとしているぞ。恥ずかしいか」
「はい…、とても恥ずかしいです」
「いやらしい顔したついでだ。舌出して自分のくちびる舐めて、もっとスケベな顔してみろ」
言われて、舌先でくちびるの左端を舐めた佳代子だが、はっきりと意識できてしまうほど濡れすぎている下半身とは逆に、口の中もそしてくちびるもカラカラに乾燥していた。
「佳代子は淫らなマゾ女です、と言ってみろ」
「はい」
写真を撮られたことで、まったく抵抗の意識すらなくしてしまった佳代子が言われた通りを口にする。
「もっと恥ずかしいポーズさせられたいか」
「はい」
今、紺野から見ると後方に突き出していて羞恥の中心が見られていないとはいえ、お尻を高く突き出したみじめな四つんばいで、顔だけしっかり上向かされているこのポーズこそ、もっとも恥ずかしいポーズではと思えたが、佳代子の中では、もっともっと淫らな私を撮って欲しいという後ろ暗い気持ちが生じていた。
「こっちを向いて、そこに、床にお尻をつけて座れ。膝を立てて、左右に開く。手は頭の後ろで組んで上半身は胸をしっかり見せて、顔はカメラを見るんだ」
縄ひとつ用いず、紺野は佳代子に屈辱的ポーズを取らせる。せめて縛られて無理矢理ならば、という撮られたいという気持ちと裏腹な、佳代子の心のうちのわずかな抵抗もむなしく、言われた通りのポーズをフラッシュの前に晒してしまう。
顔、胸、性器の全てが数枚分のフィルムに同時に記録された。
全てを晒してどこも隠すことを許されない自分。
カメラを一瞬下ろして、佳代子を見ると当然のように紺野は言った。
「よし、その格好のまま両手で性器拡げて見せろ」
ニ
拍子抜けするほど、会社での紺野はいつもと何ら変わらなかった。
仕事の指示を出してくる時の、口調も目線もそしてその目の奥にある優しささえも、それまでの自分、自分以外の他の部下に対するのと全く一緒で、むしろ何かを期待してしまう自分に気付いては絶望感にも似た気持ちに襲われた。
最初の二、三日はどこかぼーっとしていて、ふっと気が付くとあのホテルでのシーンのいずれかが頭をよぎっていたり、知らぬ間に正面に座っている紺野をじっと見てしまっていて、ふっと我にかえることもあった。
そんな佳代子の様子に気付いているのかいないのか、一週間、二週間経っても、彼からの次の誘いはなかった。
あの日、紺野の言う検査の後、「三十分だけだぞ」と時間を切られて、床に正座したまま椅子に座った紺野に口での奉仕をした。
時々、時計を見る気配に佳代子は気持ちばかりが焦るが、これまでに経験した誰よりも紺野のそれは大きくて、なかなか思うにまかせずにいるのに、当の紺野はひと言の指示を発してくれることもなく、どこをどうしていいかわからぬままに、三十分が過ぎてしまった。
「はい、終わりだ」
無情に、そして必要以上に冷たい言い方をしていると佳代子には思えた。
「さっきの分のお仕置きは貯金ということにしておいてやろう」
という言葉で、最後にあると思った鞭での責めも受けずじまい。
その代わりに佳代子が得たものは「次」という「可能性」だったわけだが、これほどの間、ほとんど毎日顔を合わせているにも関わらず、次どころか、そんなことは何一つなかったかのような紺野の様子に、あせりと怒りにも似た気持ちで悶々とした日々を送っていたのだった。
思いもよらぬ形で誘いがあったのは、あの日からもうすぐ一ヶ月が経とうとする日曜日の夕刻のことであった。
携帯電話を持ってまだ間がなくて、部屋で電話が鳴ると、ついびくりとしてしまう。
番号は電話機に登録されていない、東京
03
から始まるものだった。
「もしもし」
「あ、守口さんでいらっしゃいますか」
若い女の声だった。
「私、紺野さんの代理のもので、紺野さんに言われてお電話さしあげているんですけれど、もし今夜お時間があったら、十九時に新宿エスタブリッシュメントホテルの二四二五室にいらしてほしいとのことです」
「はぁ…」
「ではお待ちしています」
用件だけ言うと、カチッという音ともにあっさりと通話は切られてしまった。
何故、本人がかけてこなかったのだろう。待っているということは、今電話してきた女が一緒にいるのだろうか。
疑問は尽きなかったが、今の佳代子にとって、行かないという選択肢はまったくもって考えられないことだった。
十九時ちょうど。
指定されたドアを開けてくれたのは意外にも紺野本人だった。
きっと先程の電話の女が顔を出すだろうと思っていた佳代子は、ホッとして涙が出そうになった。
「入れ」
抱きつきたい、という衝動的な感情を見透かしたように、紺野は部屋の中を指した。
そんな関係じゃないだろうと釘をさされたようで、胸が苦しいような思いを抱いたまま、エントランス部分がちゃんと設けられていて、廊下のようになっている部分を抜けて、もうひとつ内側にあるドアを通った。
突き当たりの部屋だったので、もしかしたらスイートルームなのかもと思ってはいたが、入ってみた部屋の広いことに少なからず驚いた。ベッドが見あたらないから、もちろん寝室は別なのだろう。部屋の正面は、床上一メートル位の高さから天井までが一面のガラス。
佳代子は、目にした「それ」をあえてすぐには理解したくなくて、頭の中で部屋の構造を確認しようとばかりしたのかもしれなかった。
その一段高くなった場所に、ガラス窓にぴたりと貼り付くようにひとりの女が立っていた。いや、立たされていた。ちょうど佳代子の目の高さに女の尻。女は腰が細くて、くりんとした尻が余計際だっていた。
もちろん全裸。手は肩の高さの延長上に真横に伸ばしている。まるで磔にされているように動かないが、体の前面を完全に窓の外に晒していることはあきらかで、しかも目の前には日曜というのにオフィスらしき灯りのついているビルも見える。
「あんたもさっさと脱いで裸になりな」
ドキリとした。
もちろん背を向けている女が言ったのではない。
部屋の奥に、もうひとり女が座っていた。一瞬見たところ、まだ二十一歳くらいに見える小柄な女。もちろんそう言った本人は黒のノースリーブのワンピースを身につけたままだ。
「ここは、マゾの女が服を着ていてはいけない場所なの。嫌ならそのまま回れ右して帰りなさい」
年下であろうことはあきらかだったが、まったくそんなことを意識していない、そしてこちらに意識することも許さないといった、凛とした物言いだった。
気配がして、振り向くと紺野は後方のテーブルに置かれたシャンパングラスを手にしたところで、その目はやはり「脱げ」「その子の指示に従え」というもので、佳代子は従う以外にないことを早々に悟った。
女がふたりも居るというのは、ここに到着するまでの間の佳代子の想像をまったく超えたことであったし、夜の大都会の光に向けて裸を晒している女を目にした衝撃は思いの外大きかったのに、その上、自分に命令を下してくるのが、紺野ではなく別のしかも年下の女であるということで、まったくもって冷静さを失ってしまい、そこから後の記憶が少しぼんやりとしたものになっている。
「ほら、早く脱いですっぽんぽんになって何もかも丸出しにするのよ。マゾ女はおまんこの襞からお尻の穴の皺まで見られてなんぼなんだから」
若い娘は淫らな言葉をこともなげに言って、手元に置いてあったらしい、九尾の赤色の鞭を手にして立ち上がった。
佳代子自身はそれでもずいぶんと
慌
てて背中のジッパーを下ろし、ワンピースを脱ぎ落としたつもりだった。
ワンピースを脱ぐと、揃いのブラとパンティ、それにガーターで吊ったストッキングだけで、もう佳代子自身にとっては裸同然のような寒々とした気持ちでさえあったが、「遅い」
と、尻に一発鞭を飛ばされてしまった。
「いたっ」
つい口をついて出た言葉に、自分でどぎまきとしてしまう。
「手を止めない。私はまっ裸になりなさいと言ったのよ」
そう言われて、お尻を一瞬かばってしまった両手を、ブラのフロントホックにようやくもっていく。
ブラをはずしながら、今夜は紺野の前でこの女性に責められるのだということをようやく理解しつつあった。そしてそれは、紺野に直接責められる以上に体に火がついてしまうかもしれない、という予感を伴うもので、元々自分がMに目覚めたのは、相手が女性であったということをぼんやりと思い返していた。
佳代子がようやく全裸になると、女はふたたび前の椅子に座った。
手の持って行き場がなくて、乳房と股間を覆っていたが、彼女の目を見た瞬間に手を後ろに回さざるをえなくなる。この若さで、女を責めることに既にかなり慣れているのだ、ということがよくわかった。
「まぁ、生意気なデカパイしてるわね、偉そうに」
下から見上げた娘に言われて、また片手を前に持ってきて、思わず胸を隠してしまう。
同性に見られることが佳代子にとっては、ことのほか甘美だったが、「大きくなんかありません」
と、思わず言葉を返してしまう。
「それが生意気だって言うのよ。私はね、昔からおっぱいのおっきい女が自慢げにしてると、思いっきりずたずたにしてやりたくなるの」
「大きくなんか…、普通です」
「それってAカップやBカップは普通じゃないってことよね」
そう決めつけられて、言葉を返せない。
「手、どけなさいよ。どうせペチャパイの私に見せつけて感じてるんでしょ。あの子…、あの窓んとこですけべな体をお外の人に見て貰ってるユキもね、DだかEだか知らないけれど、今日谷間を見せつけるようなお洋服着てきたから、そんなに見せたいならぜーんぶ皆さんに見ていただきなさい、って言ってもう一時間以上ああしてるのよ。あんたも同じようにさせてあげようか」
「いや…、あ、あんなはしたないこと無理、絶対に無理です」
思わず言ってしまって、はっとするがすでに遅い。
「はしたないってさ、ユキ」
「ああん、もうお許し下さいぃっ」
ユキという女が初めて声をあげた。
「ところで、前回の試験で、鞭のお仕置き残したんだってね。そのお仕置き、これから私がやってあげるから。いいんですよね、私がやって」
後半は紺野の方を見て言っていたが、紺野に確認したというよりも、佳代子に言い渡すためのようだった。それでも紺野が後ろでうなずいた気配に佳代子はつい体が硬くなる。
「ほら、手、頭の後ろに回すのよ。服従して胸見せる格好、習ったんでしょう」
あきらめて胸を上から覆っていた左手と、股間を隠していた右手を後ろに回す。
「ふーーん、やっぱり偉そうなおっぱいね。鞭のお仕置きは何回なの。私、お尻なんてぶつよりおっぱいぶつほうが百万倍好きだから、全部そのでかぱいにしてあげるから覚悟しな」
「か、回数は…」
「二十ずつくらいはいいわよね、足りなければもっとたしてあげるけど」
再び、女が同意を求めたのは紺野にだった。
「ユキ、もういいわよ。充分、堪能
したでしょ、あんたの見られ好きも。紺野さんとこからビデオ持ってきて、ここで縛るとこからこの子の映像撮ってあげなさい」
「う、うっ。ビデオなんて…」
佳代子の抵抗は黙殺され、後ろからユキという女が小さなビデオカメラと思しき機材を手にやってくる。
きれいな子。この子が紺野の「奴隷」なのだろうか。ちょうど目に入ってきた胸の大きさは佳代子と同じくらいだが、その美乳ぶりは見事なもので、「見られたい」という願望は本当なのかもと思えるものだった。
女が朱色の綿ロープを手に再び立ち上がり、そばにやってくる様子を、ユキという女は手慣れた様子でビデオカメラで追い、女が佳代子の後ろにまわった時に、カメラのレンズは正面から佳代子の顔を捉えた。
首から縄がかけられていく。
女は実に手慣れた様子で、乳房のすぐ下、お腹のあたりで結び目を作り、容赦なく二本束ねたロープを股間に通す。そのまま首の後ろにかけられた縄で股間を絞り上げられ、「ううーっ」と声を出した佳代子を体の前面を舐めるようにユキがカメラで追いかける。
背中で一度結びが作られ、体の左右から乳房の下とお腹の結び目の間を縄が通されふたたび引き絞られた。
「手、背中の後ろに回して組むのよ」
頭の後ろにあった手は、女の細い指先により背中で組み合わされ、手首を拘束されて佳代子の自由は完全に奪われた。
「ほら、胸張りなさい。言うこと聞けなきゃ、おっぱい、洗濯ばさみつけてから鞭するわよ。ただぶたれるより何倍も痛いよ、鞭で洗濯ばさみ払い落とされるのは」
女が手にした鞭は、先が六つに分かれた鞭で、見た瞬間、柄がずいぶん長いと佳代子は思ったが、それが振り上げられた次の瞬間には目を固くつぶっていた。
バチーン、音がして左の乳首を中心に衝撃が来た。
痛い、でも瞬間に想像したほどではない。
二発目、三発目と音は派手だが乳首にジーンとした甘い苦痛が走る程度で、佳代子はむしろ「もっと」と思ってしまったほどだった。
五発目が来て目を開けた次の瞬間に、痛烈な鞭が乳首の上から左乳房全体に走って、「痛いっ」と言って身をよじる。
七発目はまた軽い打ち方に戻ったが、十発目に再び強い鞭が来た。
二発強いのをもらうと、軽く打ったであろう残り十発もかなりの苦痛を伴った。
「はい、左のおっぱい完了。いい色になったわよ」
言われて、ようやく再び目を開けて自分の左胸に目を落とす。
しかし想像していたよりもそれはたいしたことはなく、何もされていない右胸に比べてうっすらと赤くなっている程度だった。
「おっぱい打たれたのはじめて」
急に女は少し優しい声を出した。
「はい」
「はじめてにしては、姿勢崩さずよく耐えたわね。痛いの好きなのね」
図星で返事ができない。
「そう、じゃあ右はもう少し痛くしてあげるわ」
言った瞬間にその右の乳首に激痛がきた。
「うっ」
ピンク色の洗濯ばさみが乳首の根本に噛みついていた。
「胸、突き出して」
バチーーーン。
目から火が出るとはこういうことかと、何故かもうひとりの佳代子が冷静に思っていた。
たった一発で洗濯ばさみは見事に床に転がった。
「い、痛い〜」
声が出るまでに一瞬間があった。
「本当はね、おっぱい洗濯ばさみだらけにしてやるのが好きなのよ。少々痛いの好きなマゾ女でも大抵泣き喚くけどね」
「お、お許し…」
「どうユキ、私の鞭は」
「はい。いつもとてもお上手です。私も後で志乃様の鞭もいただきたいです。できればご主人様と志乃様で左右両方からおっぱいぶってください」
ビデオカメラのレンズを志乃に向けて、ユキが言う。自分の言葉が録音されていることをあきらかに意識している。
確かに、最初の左胸への鞭責めで右には一切かすりもしていなかったし、今は今であれだけ深くはさんでいた洗濯ばさみを一発で落とした。その腕は多分、相当なものなのだろう。
そんなことを思いながら、ジンジンと傷む右胸を見ると、乳首の上側が少しはがれたような痕になって、そこからわずかに血がにじんでいた。
「さ、じゃあ残りのお仕置きしちゃおうか。ちゃんと撮るのよ、ユキ。紺野さん、私にも後でダビングちょうだいね」
そ、それだけは絶対に嫌。紺野のカメラと聞いたこともあって何故かほとんど抵抗しなかったけれど、この見ず知らずの女がその記録を手にするなんて。
「ああ、もちろんだ」
それまで女の問いかけにほとんど無言でうなずいていただけの紺野が、はじめて声をあげ、佳代子の抗議は言葉にする前に封じ込まれた。
「さ、残り十九発、ゆっくりやってあげるから声に出して数えるのよ」
血が出ていることを視認したおかげで、余計痛みが増した気がする乳首を狙って、最初から数えて二十二発目の鞭が振り下ろされ、激痛に思わず佳代子は膝を折ってしまった。
三十分後、ひとりがけのソファの上で、佳代子は絶望的な気持ちを味わっていた。
その絶望的な気持ちとはまったくウラハラに体は再び登りつめていく。
既に何回イッただろう。
両脚は肘掛けの上で大きく開かれ、丸出しにされた股間にはユキがしゃがみこみ、執拗にクリトリスを舐めあげながら、信じられないほどの太さの男性器を模したバイブレーターを右手に持って容赦なく性器への出し入れをしていた。
もうひとりの志乃という女は、立ったままでかがみ込み、佳代子の口唇を甘く吸ったかと思えば、舌を差し入れ、手では乳房を揉み込み、鞭の痛みの残る乳首に羽のようなタッチで快感を与え、先程巨乳が嫌いだと言った同じ口からとは思えぬ「おっぱい気持ちいいでしょう」という甘いささやきを、耳元に吐息とともに送り込んできている。
「もうやめて」
言いたくても言えない。
いや、本当に止めて欲しいのかといえば、もちろんそうではないと思う。
絶望的な気持ちというのは、志乃による鞭責めの後、この椅子の上に開脚で縛り付けられる佳代子を見下ろしながら、紺野が、「お前、本当は女が好きなんだろう。若い頃のタカラヅカの追っかけの話も聞いたし、うちの女性陣は、若い女の子が入ると、佳代ちゃんはレズだから気をつけてと最初に忠告するそうだぞ」
などと教えたからだった。
そんな。
自分の秘密がかくもたやすく
暴
かれていたとは。
それでも紺野に対する思慕とか、必ずしもレズということでもないし、という佳代子の思いは、志乃の次の言葉で簡単に打ち消されてしまう。
「それでは、バイのお姉様に女同士のよさをしっかり味わってもらいましょう。何やってもいいからね、がんばるのよユキも」
ユキに手渡されたバイヴは、先日の口奉仕の際、かなり大きいと感じた紺野のものよりも、さらに一回りもふた回りも太いものだった。
「そうそう、このユキはね。紺野さんの奴隷になってからは、彼以外の男性はもちろんのこと私も含めて女にもイかされたことないのよ、どんなことされてもね。そうよね」
「はい」
「本当の奴隷とはそういうもの。お姉さんは、誰が相手でもイッちゃう淫乱なバイのただのマゾ女だってこと、私たちが証明してあげるわ。紺野さんの奴隷に立候補するなんて百年早いってことをね」
この志乃という女と紺野との関係はまるで見えなかったが、それでも敵意剥き出しであることだけは確かだった。
「ああ、だめまたイクぅ」
「どこが気持ちいいか言うのよ」
その敵意と正反対の優しいささやきを耳元でしたかと思うと、「ほら、おまんこ気持ちいいって言ってごらんなさい」
人前で言ったのは前回紺野に対してがはじめての淫らな四文字を、志乃はいともたやすくはっきりと口にする。
女性の口から出たその言葉を耳にしたことで、佳代子は一気に追いつめられた。
「気持ちいいです、おまんこ。おっぱいも、おまんこも気持ちいい、ああイキそうです」
「おまんこってイクまで言い続けてご覧、もっと大きな声で」
「ああ、おまんこ…、おまんこおまんこおまんこ、おまんこ、イッちゃう、おまんこイクぅーー」
正面のテーブルに置かれたビデオカメラの前面の赤ランプが、全てを記録していることを示していた。
クールな顔で、カメラのフラッシュを
焚
く紺野が恨めしかった。
三
「目を閉じない。しっかり見なさい」
「いやぁ」
命令したのは志乃で、抗議の声を上げたのはユキである。
しかし、命令されたのは佳代子だった。
佳代子はその後も何回も絶頂に追い込まれた椅子から開放されると、四つんばいで志乃に髪の毛を掴まれて這い歩かされて、寝室へと連れてこられた。
その様子をユキが後方からビデオカメラに捉えていたのは言うまでもない。
紺野は、「俺はシャワー浴びてくるから、やってろ」
と、言い残し浴室と思しきドアへと消えた。
ベッドに仰向けに寝かされた佳代子は二人がかりで、手首を縛られそれぞれ斜め上に引き上げられて、万歳をする形で再び拘束された。
足首には枷をつけられ、それを一メートルほどの黒い棒状の両端に金具で固定され、再び開脚も強いられている。
その上で、志乃が命じたのはユキに佳代子の顔の上にしゃがみこむということだった。
目を開くと、薄オレンジ色の光の中、ユキの無毛の性器が本当にすぐ目の前にあった。内部のピンク色をおびただしい愛液がにじませている。
「舐めなさい。さっき散々イカせてもらったお礼をするのよ。まずは濡れやすいユキちゃんのジュースを音たてて啜ってご覧」
目を開いてそこを見たことを確認するや志乃の次の命令が飛んできた。
佳代子の顔の上で、ユキは向こう側を向いてしゃがんでいた。
命令、というものに佳代子はすっかり逆らえなくなっていた。
顔を少し上げて、唇を寄せて本当にズズッーという音をたてて、ユキの性器の中心部を吸った。うっすらと開いたラビアの間に見えるさらに小さなピンク色の狭間の部分だ。
「あ、あっ、いやっ」
ユキが声をあげると、縛られて命令をされているのは自分の方なのに、そのことがどこかに吹き飛んだように、佳代子は積極的にその部分をより強く啜りたてた上で、舌を出して内部をさぐるように舐めてみたりもした。
「あ、あん」
さらにユキの声が甘くなる。
「そうねぇ、さっきも言ったけれどこの子、ユキは、紺野さんの奴隷になって以来、他の人にイカされたことないのよ。もし、もしあなたがユキをイカせることが出来たら、ご褒美に紺野さんに入れてもらってもいいわよ。紺野さんにオマンコしてもらえるの。それってあなたにはわかんないかもだけど、凄いことなのよ。ねっ、ユキ」
「はっ、はい。ご主人様は滅多に、滅多にしてくださいません」
「まぁ私の知る限り、ユキはしてもらってる方だけどね、全然」
「あ、あーーん」
ユキの反応が志乃の言葉によるものか、佳代子の舌の動きがもたらす刺激によるものかはわからない。
「ほらほら、どうせこの女はバイで女好きなんだから、もっと愉しみなさい。もっとおまんこ口に押し付けてぐりぐりするのよ」
志乃がベッドに上がってきて、ユキの肩を上から押さえてさらに腰を落とさせる。
本当に呼吸が出来ないかと思うくらい、ユキの性器が口に押し付けられた。
「あんたも、女ならどこが一番感じるかわかってんでしょう。穴ん中に舌突っ込むなり、クリトリス舐め擦るなりするのよ。この子いかせられたら、おまんこに紺野さんのおちんぽ入れていただけるのよ」
そう言いながら、ピシャリと佳代子の性器に平手が飛んできた。
叱咤
されるまでもなく、佳代子も夢中になっていた。紺野にしてもらえるとか、そんなことよりもともかくこのユキという女をイカせたかった。この子によって自分は何度も登りつめさせられたのに、自分は彼女を逝かせられないのは悔しい。いや、逝かせてあげられないのは申し訳ない、と思ったのだった。
「あーん、あん。気持ちいいです、おまんこいいっ。もう、もうイキそうです」
ユキに
断末魔
の時が近づく声が足元から聞こえてくる。
佳代子は、意識的に目を強く閉じていた。まぶたに力を入れてだ。
結局、一時間以上にわたる佳代子の懸命の努力も報われず、ユキを追い込むことはできなかった。今、彼女が声をあげているのは、紺野によって責められているからだ。それも相変わらずベッドに磔状態のままである佳代子の、顔のすぐ上でだ。
顔面騎乗でさんざん佳代子に性器や肛門を舐めさせ、絶頂まではいかぬもののユキもかなりトロトロの状態になっていることは、性器内部から溢れてくる多量の愛液で佳代子にもはっきりと知ることが出来ていた。
もうすぐ、と思うものだから懸命な舌使いをしたつもりの佳代子だったが、「はい、タイムアップよ」
志乃の声がした時には敗北感ともいうべき感覚に襲われ、いささか自分でもそれは大袈裟だろうと思ったのであるが、紺野の挿入で登り詰めるユキの声に、悔しさと羨望と嫉妬の入り交じった不思議な感情を味わっていた。
ユキの甲高い悲鳴にも似た声に、はじめてうっすらとではあるが目を開けてみる。
広いダブルベッドの上に四人の男女が上がっていた。先程から大の字でベッドに括り付けられている自分のすぐ上で、それまでと違い膝を伸ばして手を前についた変形の四つんばいで、後ろから紺野のものを挿入されているユキ。ユキの性器に出し入れされる紺野の太いものが、はっきりと目に飛び込んでくる。そして佳代子の足元では志乃がしゃがみ込み、ユキに濃厚なキスを与えながら、さらに淫らな言葉を引き出そうとする。
「ほら。どこが気持ちいいのかもっと大きい声で言ってごらん。ご主人様のなに入れていただいているの、ユキ」
「は、はい。おちんぽ、おちんぽ様を入れていただいています」
「どこに」
「はい。ユキの淫らなおまんこにです」
「もっと大きい声で、全部言うのよ」
「ユキの淫らなおまんこにご主人様のおちんぽ様を入れていただいて気持ちい…、あ、イクもう駄目、イッてもいいですか、おまんこおまんこおまんこ、イキます」
あまりにも露骨で淫らなその声と眺めに、ふたたび目を閉じてしまった佳代子であるが、ぴちゃぴちゃという音とともに腰をぶつけるような激しい出し入れの気配で、紺野もピッチをあげていることがわかった。
「ほら顔もっとあげて。大きい声で、おまんこって言いつづけなさい」
「あぁ、おまんこおまんこおまんこおまんこ…おまんこイクぅぅぅ」
その瞬間、佳代子の顔面になま暖かいシャワーが降り注いだ。
文字通り降り注ぐと言うのがふさわしい大量の潮吹きと同時に、ユキの腕の力が抜けて、上半身が佳代子の下半身に崩れ落ち、偶然なのかそれともユキは意識していたのか、ユキの口唇はちょうど佳代子のクリトリスの上だった。
「ひっ」
先程から何度もいかされ続け、かつて経験したことのないあまりに淫らな空気の中で、佳代子は簡単にこの日十数回目の絶頂を味わった。
紺野も達したのが、ふたたび目を強く閉じた佳代子にもその気配で察することができた。
「中出し…」声に出したわけではないが、佳代子は少し驚いていた。
普段は比較的慎重な紺野が、避妊具をつけずに挿入したことにもびっくりしたのだが、そのまま達してしまうとは思いもよらぬことだったのだ。もしも自分にされるとしても当然避妊具は着用してくれるものと決め込んでいたし、結局紺野にされることはなかった佳代子だが、紺野にとってそれだけ奴隷という存在が重いということがわかったような気がした。
「さあて、入れて貰えなかった可哀想なお姉様に、せめてものお裾分けあげようね」
志乃の言葉に、おそるおそる佳代子は目を開けてみた。
達した直後の紺野のモノを口にさせられるのだと思ったからだ。
「お口、開けるのよ、あーーんって」
紺野のモノを抜かれたばかりの、ユキの尻が落とされてくる。
えっ、と思った時には口を
塞
がれていた。
「ほら、ちゃんと口開けなさい」
左右の乳首を同時に
捻
りあげられた。
「ふぁい」
佳代子が発した返事は、しゃがむというより直接顔面に座って押し付けられたユキの性器によってくぐもって聞こえた。
精液と愛液の混ざり合ったにおいが
鼻腔
に充満する。
ユキは正確に自分の性器の膣穴部分を佳代子の口元に持ってきた。特に詳しい指示もなかったのだから、こういうことが初めてではないのかもしれない。
実は佳代子はこのときまで、フェラチオの経験こそあったが、口内で射精された経験がなかった。そのため、男性の精液というものがどんな味なのか知らなかったのだった。
四
その出来事から六年が経った。
それから後、二度と紺野からの誘いはなかった。二回の出来事などまるで何もなかったような会社での紺野にじりじりとしたのは言うまでもなかったが、紺野の態度はまるで変わらないようでいて、でも肝心な部分で「お前は失格だ」と告げていた。もちろん、仕事には何の支障もなかった。だからこそそれから六年も勤めることが出来たのだ。五つも年下の小生意気な娘が入社してくるまでは。
その間も、いやあの出来事があったから故に余計、自分のマゾの性質をよりはっきりと知ってしまった佳代子は、ある時期から紺野のことはあきらめて、なんとか自分のそういったことを理解してくれて、満足させてくれる人を探そうとしてみた。
当時、テレフォンクラブだの伝言ダイヤルなどが全盛期で、佳代子はその中でも特にそういうSMなどの特殊なところを探しては、自称サディストだと言う男に連絡をつけ会ってみていた。その数は二十人以上に及ぶ。しかし、到底佳代子を本当の意味で満足させてくれ屈服させてくれるレベルの男は存在していなかった。
そういった出来事と、日々就寝前に必ずするようになってしまったオナニーで、佳代子はいくつかのことに気が付いていた。
まず紺野との二回の出来事の中で、自分がMとしてどうされるのが好きか。
特に、二回目の女性二人を交えた
戦慄
の経験が、佳代子に残したものは強烈で、男性のみならず女性にも屈服したいと願っている自分を否定できなくなっていた。
オナニーの際に佳代子を
苛
むのは、紺野ではなく志乃という女であることが多くなった。正確には、紺野という絶対的なサディストに遠隔操作された、無慈悲な「女王様」である志乃という女。その冷酷な女サディストに対して屈服させられる自分に異常な興奮を覚えるようになってしまったのだった。
そしてその際、最後の最後に経験させられた女性器から直接男性の精液を啜るという行為。その苦い味と強烈な匂いを思い出すだけで、イッてしまいそうになる。
そのおかげで、テレクラや伝言ダイヤルの自称サディストたちとの、SMとはとても言えないいわゆる性行為の中、ひとつだけ佳代子を満たしてくれることがあった。
最初のひとりふたりはあまりの相手の不甲斐なさに失望感だけが残ったのだが、その後は、知り合った男たちとホテルに行って部屋に入ると、戸惑いを隠せずにいる男には自分からある意味積極的にアプローチしていくことにして、それがあるひとつの点においてのみは佳代子に満足を与えてくれた。
「ご奉仕させてください」
服を脱ぐ前に、突っ立っている男の前に
跪
き、自分から男のズボンのベルトに手をかける。
大抵の自称サディストたちは、その佳代子の雰囲気だけでそれを屹立させていた。
五人、六人と数をこなしていくうちに、自分でも少し上達したと思う。
男が興奮しているからということもあろうが、ものの十分から長くても二十分もあればどの男も佳代子の口の中を精液で満たしてくれた。
佳代子の唯一の満足とは、男の精液を味わい、飲み干すことだった。その行為は、男のサディストとしての力量の如何を問わず、佳代子に屈辱と陶酔を味合わせてくれるのだった。
フェラチオの最中も目の前の男のことはほとんど眼中になくなり、「おちんぽ様、男根様」という言葉を頭の中で反芻し、「ほら、もっと深くしゃぶりなさい」「もっと舌を使って」「ご主人様を見なさい。しゃぶりながらご主人様にあんたのいやらしい顔見て貰うのよ」と言った女性による命令、佳代子が自分の頭の中で作り出す志乃という女の声が、佳代子に行為の悦びを与えてくれた。
つまり、出会う男への失望などから、佳代子のしていることはオナニーの延長となっていったのだ。
テレクラやら伝言ダイヤルに男の側がどのくらいのお金をかけているか、ということを話してくれた男も居て、それは佳代子の想像をはるかに超える額だったが、その分、どの男たちも捕えた女でモトをとろうということなのか、一度果てたくらいではもちろん満足しておらず、一回口でいかせたところで、佳代子にとってはマゾの行為の象徴となったフェラチオという名のオナニーを心ゆくまでさせてくれることは、好都合であった。
奴隷牧場外伝 奴隷 佳代子 小説奴隷牧場 第1部分 (1/3)
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