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奴隷牧場7 美姉妹蟻地獄 【小説奴隷牧場】 · 第1部分

奴隷牧場7 美姉妹蟻地獄 【小説奴隷牧場】 第1部分 (1/3)
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序​章

一 二〇一一年七月 母乳女子大生

二 二〇一一年八月 母・沙織

三 二〇一一年八月 古都金沢

四 二〇一一年九月 珠海の夜

五 二〇一一年九月 エスタブリッシュメントホテル東京六 二〇一一年十月 中国美人姉妹七 二〇一一年十月 緘口令八 二〇一一年十二月 大晦日九 二〇一二年二月 お披露目、三幕十 二〇一二年三月 美樹・サイグサ・アヤード終章序​章『美樹ちゃん、今どこ。東京揺れてる、すごく揺れてる』

乃里子からこのメールを受け取った時、美樹は先月二十一歳になったばかりの息子、大輔とともに特急サンダーバード二十三号の中に居た。

ゆったりした配置のグリーン車とはいえ、昨日ドバイ乗り継ぎで使った中東のエアラインのファーストクラスには及ぶべくもない。

ただ息子は、母親のすぐ隣に座って窓の外の景色を楽しめる日本の電車の方が嬉しそうだ。

『仙台は大変なことになってるみたい。震度七とか言ってるよ。東北の上の方、大きな津波が来そうだって』

乃里子から第二報が来た。

昨日の夕方、関西空港に降り立ち、そのままタクシーで京都へ。京都の三十三間堂近くのホテルで一泊して、お昼まではホテルで身体を休めた。

日本に帰ったら、金沢に行ってみたいとかねてから考えていた。行ってみて気に入ったら住んでもよいとさえ思っている。

元夫の隼人からは、東京の文教地区にマンションを買うことを薦められていたが、大都会に住むことも大都会の学校に息子を行かせるということにも、あまり気が進まない。

理由は簡単で、美樹は自分でもよくわかっていた。

牧野リサを通じて申し入れた、『自分が産んだ男の子が学校に上がる年になりましたので、日本で教育を受けさせたいと思います。夫も賛成し、婚姻関係を維持したままでの帰国を許してくれました』

というメールでは、その子が誰の子供かということに一切触れていないのだ。

仲間と言っていいのかはわからないが、リサや

瑞花

をはじめとして一緒に倶楽部に居た女たち、もちろん妹分の乃里子も、美樹に子供が出来ていることさえ、これまで知らせていなかったし、その子がもう学校に行く年齢にまでなっていることなど、まさに寝耳に水であったろう。

ましてその子が日本人の子供だとは、皆が知っている経緯からしても、想像も出来ないはずで、誰もが今の夫、アラブの石油王との子供だと想定している筈だ。曲折あってのことだが、自分もその男の第四夫人になって、女としてもマゾとしても何の不満もない六年を送ってきた。

三田村コンツェルンと石油王の友情の証として、自分を気に入ってくれた今の夫に引き渡された美樹だが、一夫多妻制という独特の制度を残しているその国で、莫大な資産を持つ男は、美樹を寵愛し、かつあらゆることに寛大でとてもおおらかな男だった。

もちろん子供のことも理解し、子育て経験のある日本人のメイドを雇ってくれるなど、最大限の配慮で自分の子ではない日本人の子供に対しても彼なりの愛情を注ぎ、今回も彼の妻という立場のままでの日本への帰国も許してくれたのだ。

そこでの積み重ねを経たからこそ今日のこの日があるのだと、美樹は改めて思いながら、隣の席に座っている息子の頭を愛しさ一杯の思いで撫でていた。

それにしても。

よりによって、こんな日に大地震とは。

ツイッターを見てみると、地震に関する書き込みで溢れかえっている。戸惑いと混乱、余震の報告。そして「助けて」という叫びがリツイートという仕組みでどんどん拡散していっている。

『乃里ちゃんたちは大丈夫なの。隼人君は一緒?

わたしは今、金沢に向かう特急電車の中です』

美樹はそう携帯に打っておいて、取り敢えず電話をかけてみようと立ち上がる。

「ママ、ちょっとデッキで一本電話してくるからね」

「はーい」

何もわからない息子はあっけらかんと答えてくるが、よく見るとこの特急電車のグリーン車というひとつの空間の中で、同じ日本国内で大災害が起こっていると知っているのは自分と、たった今、忙しない様子で携帯電話を手にやはりデッキへ急いだサラリーマン風の男の、ふたりだけかもしれない。

それほど、車内にはのんびりした空気が漂っていた。

立ち上がった時に、ドアの上に電光のニュースが流れているのが目に入ったが、地震のニュースなどではなかった。緊急のニュース速報が流れるような仕組みにはなっていないのだろう。

一

二〇一一年七月

母乳女子大生

「うぉーーっ」

一斉に客席から歓声が上がった。

ステージ上の母娘。

母の五十嵐有香は、ゲストで呼んだ熟練の縄師によって、それぞれの乳房の根元をぐるぐると真っ赤に染め抜かれた麻縄で巻かれ、胸の中央でその縄をひとつに纏めた部分にフックがかけられて、それを高い天井の滑車から吊られて両足が三十センチほど宙に浮いている。

乳房の膨らみだけで、自分の全体重を支えているという、傍目にも過酷な吊りだ。

縄と同じ赤い色の布がきりりと口に入り、猿轡

となって悲鳴も哀願の言葉も封じている。

だが、客席が歓声をあげたのは、母のほうのこの無残な姿に対してではなかった。

エスタブリッシュメント倶楽部ゴールド以上の資格を持つ客だけを集めて催されるショーで、ある程度残酷なことが行われるのはもはや織り込み済みであり、会員たちの目は肥え、そして女が厳しく折檻されるシーンを目にすることに慣れきってもいた。

娘、花村紫織は今年大学二年生になったばかりの二十一歳の一見清楚な美少女だ。

ステージに出てきた時も、いかにも無垢な感じのするセーラー服を着ていた。

既にストリップをさせられて全裸にされているが、自他ともに認める「おっぱいマゾ」紫織の乳房はここ二ヶ月程でさらに大きくなり、そのスリムな体とは不釣り合いに熟れきって、顔立ちの幼さとのアンバランスさが一層増している。

実際、服を着ている時とは反対に、裸になった体だけを見ると、この子がまだほんの二十代前半の少女だと初対面ですぐに見抜くのは難しいのではないかと思うほど、その身体は匂い立つほどの「オンナ」の色香を漂わせていた。

ここ一〜二年で急速に育った紫織の乳が、さらに短期間で急激に大きくなったのには理由があった。

母親である有香が再婚した相手は長らく関東電力会長の要職にあり、その強靭な立場から「天皇」とまで言われた五十嵐隆三だ。

だが隆三は今、バッシングの嵐の中に居る。

三月に東日本を襲った大きな地震により原子力発電所が起こした大きな事故が、天災として仕方がないことだったのか、それとも一種の人災であったのかという議論を巡って、その矢面に立たされているからだ。

五十嵐は、六月末に行われた株主総会で会長の座を辞したが、それでもなお、マスメディアの追求の手は緩む気配もなく、また実際に事故も終息したわけでもなくその目処も全く立っていないことから、その心労は相当なもののようだった。

その五十嵐が、そんな事故処理の真っ最中、五月始めにエスタブリッシュメントホテルグループ、通称三田村コンツェルン総帥の三田村隼人の元に、ほぼ研究開発が済んだものとして持ち込んだのが、『リナリス』という名がつけられた薬品だった。

関東電力も出資している、いや事実上関東電力が支配していると言ってもいい、理学研究室が開発したものだと五十嵐は告げた。

「言うなれば女性ホルモンの一種だ。此処なら病院なわけだから、臨床試験の対象にも事欠くまいが、まずはうちの娘、紫織に試していただきたい。乳が大きくなる。なぜなら女を一種の妊娠あるいは出産直後の状態にして、授乳可能にすることをひとつの目的にしたものだからだ。逆に、これを投与している間は妊娠もしなくなっていわゆる避妊薬の役割も果たす一石二鳥の魔法の薬だ」

千葉にある三田村病院でこの話を、夫の隼人とともに聞いた乃里子は、五十嵐が帰った後、一も二もなく反対した。

可愛がっている紫織をモルモットにされてはたまらない。

やがてはこの薬で一儲けしようと

企

んでのことだろうが、未承認薬の投与など、体

のいい人体実験ではないか。

「だが、うちにこれを拒む

術

はあるか。妻の有香だけではなく、義理の娘の紫織も彼が所有者として入院させているわけだし、お前も知っての通り高額な入院費も頂戴している。ましてや紫織本人が、お父様のおっしゃるままにと同意しているのだから、こちらがとやかく言うのはどうなんだろうな」

「で、でも紫織ちゃんはまだ、若いですから。本人の同意は意味がないのでは」

「うちで法律を持ちだしても仕方あるまい」

そんなやりとりをした結果が、今のステージの上だ。

母親と違い床にかかとはついてはいるが、手は吊られ胸を中心に縄を巻かれている。Gカップの乳房が縄に括りだされ歪な形になっているのが痛々しい。

どんな縛りのマジックだろう、乃里子もこんなのを見たのは初めてだ。

縄師が、紫織の後方でちょっと手にしている縄を

手繰

ると、乳房の根元が絞られるのだろう。

その瞬間、二十一歳の少女の巨乳の頂きにある少し大振りになったとはいえ可憐な乳首から、ぴゅーぴゅーと白い乳がまるで噴水のように噴き出すのだ。

客席がどよめいたのも無理はなかった。

縄師は、手にした縄をゆるめては手繰りゆるめては手繰りして、その都度紫織の乳首から母乳を噴き出させて見せた。

妊娠状態にされると聞いて、紫織自慢の乳房のその美しさがショーに出せないほど損なわれるのではないか、という乃里子の心配も杞憂だった。

紫織の乳房はブラジャーのサイズが

二

カップ上がり、Gカップになった。僅かに乳首が膨らんだとは思うものの、細い身体にそれが不釣り合いであるが故に、ふっくらと迫力を増したその美乳は、女の乃里子が見てもうっとりするほどなのである。

「やめてー痛いっ、おっぱい

搾

らないでぇ」

紫織が

喚

く。

「たっぷり搾っていただくのよ。今日のママの浣腸液にはまだまだ足りないわ」

進行役のリサが

襟元

につけたワイヤレスのマイクに言うのが、スピーカーから流れる。

紫織の足元一メートルほど先に、長辺が一メートル半ほどある長方形の銀のトレイが置かれ、紫織の母乳が集められていく。

「副作用とか大丈夫なんでしょうか」

乃里子は当然の質問をした。

「研究の上では大丈夫だということだが、それを含めて自分の奴隷、妻の連れ子で試そうということだろう」

「そんな、非人道的な…」

「なにを言ってる。原発事故の責任を取るどころか、秋より前には『危険な日本』から安全で、小うるさいマスコミも居ないハワイだかへ逃げようと簡単に決めてしまう御仁だぞ。しかも、妻も折角奴隷にしたその娘も捨てて、いや、現金に換金してだ。人道なんて考えがあろう筈もなかろう」

ふたりの買い取りの話が打診されてきているのは乃里子も知っている。

「だからって、若い紫織ちゃんじゃなくても、手元に女はたくさん居るわけでしょう。こういうのは若いほうがリスク大きいと思うんだけど。それにしてもなんで電力会社がそんな研究してるのかしら」

「うーん、単なる多角経営か、下手すりゃ有り余った金で、あの男の趣味でなのかもしれん。傘下に理学の研究所があるとは俺も知らなかった」

「それにしても有香さんを手放すなんて、もったいない話なんじゃないかしら。連れて行けば、いざという時に…」

おまんこで稼がせられるのに、という言葉を乃里子は飲み込んだ。

「原発のせいで、予定していた退職金を会社から取れる可能性がほぼなくなったからだろう。今、税金のかかる不動産や株なんかを処分すれば、マスコミに嗅ぎつけられてまた余計な詮索を受けてしまう。裏金作るには、女房子供を売るのが一番手っ取り早く現金を手に出来る手段てことさ」

そのとき、乃里子は自分でもはっきりわかるほど露骨に嫌な顔をして見せたと思う。

「まあ、そんな顔するな。うちにとっては悪い話ではないし、足元はしっかり見てやるつもりだ。現金で欲しいとか既にほのめかしてきてるわけだしな」

しばらく前に夫の三田村とそんな会話をしたのを乃里子はほろ苦く思い出す。

「だいぶ溜まってきたわね」

助手の女からリサの手に、五百CCの特大浣腸器が手渡される。

その女ともうひとりステージに上がった男性の助手の二人がかりで、床の巨大トレイが持ち上げられ、斜め下一箇所に紫織から搾り出した乳汁が集められる。

リサが重たそうにそこに浣腸器の先端を入れて吸い上げていく。

透明なシリンダーにたちまちクリーム色がかった白色の液体が、八割ほど満たされた。

およそ四百CCというわけだ。

「おっぱい、紫色になってきちゃったわね」

浣腸器を手にしたリサが、乳縄だけで宙ぶらりんに吊られている有香の前に立った。

有香はリサを見て、いやいやと首を何度か横に振るが、哀訴の声は口に厳しく噛まされた赤色の布に封じられ、僅かな呻き声をリサのマイクを通じて客席に聞かせただけだった。

ふたりの助手が、その有香の身体を支えて、半回転させて客席の方に後ろを向けさせると、同時に二人がそれぞれ尻たぼに手をかけて、思い切り左右に開いて息づく肛門を露わにする。

「すぐ楽にして…いえ、気持ちいいことしてあげるからね」

少し腰を屈めたリサは、有香のお尻の真ん中にその照準を合わせると、その先端を容赦なく突き挿し、シリンダーを一気に押して、娘の乳房から搾った白い乳汁を母親の直腸へと注入していった。

「ほら、ジタバタ動かない。浣腸が初めての小娘じゃあるまいし」

そうは言っても、ただの薬を注入されるのと、まだ二十一歳の娘を強制的に薬で出産直後のような状態にして搾った乳を注入されるのでは、その精神的な辛さは大きく違うのかもしれない。ましてや、百戦錬磨の有香でさえ、過去に経験がないという「乳吊り」という過酷な状況でだ。

次にリサに手渡されたのは、T字帯と呼ばれるもので、当然その内側には女の穴をふたつ塞ぐ突起が付いている。

「これは、サイズ的にもまだ初心者のマゾ女を調教するためのもので、基本的にはこれをおまんこの穴とお尻の穴にはめておいて締めあげて、そしてお尻の鞭の調教をします」

リサは、そのふたつの突起をT字帯を裏返すようにして客席に見せる。

サイズ的に初心者用とリサは言ったが、性器に挿す方は完全に男根の形を模したあの形とサイズだ。

エスタブリッシュメント倶楽部では擬似男根といえば、基本的に三田村会長の持ちものを模したもので、三田村隼人がドバイに留学する際に、乃里子がせがんで最初の一つ目を作って貰ったものが元になっている。これまでに作ったものは既に二百本を越したと聞く。なかには形は一緒だがサイズが倍の「特大」や、初心者のアヌス用、つまり今リサが持っているベルト型についている小さい方のサイズなど、大小の派生形も存在した。

リサは、有香ならばお尻の穴にも前の普通サイズが入るのにと言いたかったのだろう。

「鞭初心者の女の子は、このベルトをつけて、あ、もちろん電動ですわよ、ほら」

腰に巻く部分に入ってる電池をリサがわざわざ見せる。

「ええと、初心者の女の子はこれだけで腰砕けになるくらい気持ちのいい振動がお股全体を襲っているところを、こうビシッとお尻を打つわけです。そうすると、その衝撃でキュッと締まるわけですね、おまんこの穴もお尻の穴も。すると擬似ちんぽの振動ブルブルはその瞬間、気がイクほどの刺激をくれます。またビシッと来ます。女の身体というのは、従順かつ貪欲に出来ておりまして。これを繰り返すと、そのうちこのベルトがなくても、鞭だけで気持ちがいいような気になってしまうんです、不思議なことに」

今日の客席に居る男たちにとって、釈迦に説法のような話をリサはわざわざしてみせたのには、何かわけでもあるのだろうか。

初心者であっても最初から苦痛そのものを快楽に変えられる女も居れば、直接の快楽が存在しているところに追加で与えられる痛みに反応を示す女も居る。後者にはリサの言うこのトレーニングは大層効果はあるわけだが。

「でも、初心者だけじゃないんですのよ。この女くらいの熟練のマゾであっても、結構効くんですねえ、これ」

言いながらようやくT字帯の突起をずぶずぶとふたつの穴に埋めていく。潤滑のための油もローションも使わなかったところをみると、性器は充分に準備が出来ていたのであろうし、肛門の方は入れられたばかりの乳汁がその役割を果たしたのだろうか。

「まあおっぱいで吊られて、浣腸我慢させられて、しかも鞭は一本鞭ですけどもね。折角だから、お嬢ちゃんにもママと同じベルト付けてあげてくれる」

リサが助手の女に命じるとすかさず男がリサの耳元になにか囁く。

「あら、太いの二本のしか残ってないんですって。仕方ないわよね。本当は逆がよかったけれど、もうママの二つのお穴に嵌ってしまってるし。せいぜいお尻に入れる方は本人に舐めさせて痛くないようにしてあげて頂戴」

リサが言うと、痛くないようにという言葉はなんとも白々しくて、乃里子も思わず苦笑してしまう。

「いーち」

本来なら本人に数えさせるのが鞭打ち刑の基本だが、肝心の有香は猿轡をされて不可能であり、声を出したのはステージの上や客席側で会員のサポートをしている、こちら側のスタッフの女達だった。打ち合わせ済みだったのだろう。二十人近い女たちが一斉にカウントに加わっていた。

母親は一本鞭で百発、娘の紫織は

九尾鞭

で五十発と宣告され、紫織の方は特殊な縛りからは開放されて、客席に尻を向けた四つん這いを命じられての鞭責めだ。もちろん紫織の股間にもバイブレーションの太い二本が捩じ込まれての上だ。

しかも四つん這いと言っても、膝を曲げることは許されず、客席に向けて尻を高く掲げた格好だ。

もちろんこの姿勢を維持し続けねばならず、鞭の衝撃で膝を折ることは絶対に許されない。

紫織もそれは既に充分に理解しているだろう。

先に有香だけにリサの手で五十発の一本鞭が入れられる。

その音と母の猿轡の中にくぐもる呻き声を聞きながら、尻を見せ続けるポーズを娘は取り続けなければならない。

母親の五十一発目から、娘の一発目がはじまる。

娘を打つのは、客席から上がった会員たちだ。

母親の方は乳だけで吊られた凄惨な姿ながら、前半の五十発の間に不自由な身体を僅かに仰け反らせて、既に二度逝っていた。鞭と二穴バイヴの相乗効果はやはり絶大だった。

いつもながらに凄絶で妖艶な女たちの様子を見ながら、ふーっと乃里子はひとつため息をついた。

乃里子は、このところずっとこんな調子だ。

理由は、三月の終わり頃日本に帰って来て、すぐにも会えると思っていた、美樹が帰国した翌日、東日本を広く襲った地震の日以来、消息を絶ってしまったからだった。

地震の被害に巻き込まれたわけではない筈だ。なにしろ本人は関西空港へ帰国した日は京都に泊まり、翌日くらいから北陸の古都金沢へ向かうと言ってよこしていたのだ。

『久しぶりの日本。一番日本らしい京都に泊まり、それから金沢に寄って、少し身体を休めてから三月二十日頃には東京へ戻ろうと思ってる。乃里ちゃんに会うのもホントに楽しみにしてるよ』

というメールが、今でも乃里子のスマートフォンに残っている。

そしてその翌日、地震のことを告げた乃里子のメールに対し、『乃里ちゃんたちは大丈夫なの。隼人君は一緒?

わたしは今、金沢に向かう特急電車の中です』

という返信があって以降、乃里子の度重なるメールに対しても、全く応答がなくなってしまったのだ。

林檎のマークのスマートフォン同士は世界中何処にいてもインターネットに繋がりさえすればメールを無料で送受信できるが、六年間中東で暮らしていた美樹は、その時点で日本の携帯電話用の番号を持っていたのかどうかさえも、乃里子はわかっていなかった。

たまりかねて、夫の三田村に相談もしたが、「何か思うところでもあるんだろう、あいつも」

と、何故かあまり相手にして貰えず、自分と美樹とこの人も法律的には「複雑な関係」だったと、改めて思った乃里子だった。美樹は、日本の法律で言えば、三田村の前妻。自分が後妻ということになるわけだから。

そして、昨日。

今、ステージに居るふたりを伴い、千葉の三田村病院からエスタブリッシュメントホテルに帰ってきてみたら、その肝心の夫も不在だった。

「出張に行ってるわよ」

母の沙織に、だからどうしたと言わんばかりの口調で告げられたが、美樹に関係したことで何処かへ行っているのではないか、母は実は詳しく知っているのではないか、「女のカン」というやつがなんとなく働いて胸がドキドキとざわめいた。

メールで聞いてみたところで、もともと滅多と返事をくれる夫でもない。結局、乃里子には為す術がないというのが本当のところだった。

「もうダメです。死んでしまいそうです。おトイレ行かせて、いえ皆様の前でどうか恥ずかしい姿を…」

有香が音をあげているのは、実は浣腸のせいだけではなかった。

予め、下剤を飲ませてあるのだ。

厳しい乳房吊りから解放され、足が床につき、猿轡を外して貰った途端に、我慢強くて、マゾの女の心得を重々知っている有香が哀願したのは、もう既に限界スレスレいや、その限界すらとっくに超えているのだろう。

事実、乳房吊りの辛さもあっただろうが、額は

脂汗

で光っていた。

バイヴとそれを覆うT字帯で辛うじて栓をされていることで、肛門の決壊を免れているにすぎないのだろう。

「ああ。おっぱいが…」

吊りから降ろされたとはいえ、豊かな双の膨らみの根元をギリギリと麻縄で絞り上げられていることには変わらず、乳房全体が鬱血して紫がかった色に変色している。

吊られている時には乳房の根元が支点になっていたため、首から上は少々仰け反るような形になっていた。そのためそこを目にすることが出来ていなかった有香は、下に降ろされてはじめて自分の乳房の惨状を目の当たりにしたわけだ。

迫り来る排泄感と血流が幾らかでも戻ることで改めて襲っているであろう双の乳房の苦痛に、横座りになった尻をモジつかせながら、有香はさらに額から脂汗を流し続けている。

美しい顔を歪ませ、汗が光る眉間に皺を寄せて断続的に襲ってきているであろう排便欲求に耐えていた。

それに構わず、「娘があと三回イケたら、おトイレ部屋に連れてってあげるから、もう少しの我慢よ」

と、リサが冷たく宣告する。

娘の紫織も、既に五十発の鞭を受け終えていたが、リサの言葉で再び尻をもたげさせられて、鞭責めが追加され、助手の女が尻を打ち据えている。

「あん、スイッチいれないで、いやーーっ、すぐ逝っちゃうぅ」

ふたつの穴に入っていたバイブレーター付きの擬似男根も止められていたのが、再び動き出したのだろう。打たれる尻を左右に振って紫織が身悶える。

「おっぱいも痛くしてほしいよね」

リサの言葉に、紫織は首をガクガクと縦に何度も振って答えた。

乳房を責められることに強いマゾ性を示す紫織の傾向は、『リナリス』を打たれてさらに胸が大きくなってから、益々顕著になっている。

リサの手に助手の男からパッケージされた注射針が渡された。

黄色の枠に白抜きの文字が描かれた小さな袋が五連繋がっている。二十ゲージの針が五本入っているということだ。

三田村病院で普段使用している注射針では、十八ゲージが一番太く、十九は使用していないため、二十ゲージは二番目に太いタイプとなる。

突き出した尻に、十発追加の鞭が入ったところで、リサの手で髪を掴まれて紫織は上体を起こされる。

性器と肛門を刺激するバイブレーションのせいで、もういつ絶頂してもおかしくない状況にあることは、普段からこの二十一歳の娘を調教している乃里子には手に取るようにわかった。

だが、一度リサが針を手にした以上は、それを乳房あるいは乳首に突き刺すまでは終わらないだろうし、その前に逝ってしまって興を醒ますというのも奴隷としては失格だ。そこまで紫織が理解しているかどうかはわからなかったが、逝く寸前の敏感な体を震わせて、「ほら、お客様の方しっかり向いて。胸張っておっぱい突き出すのよ」

というリサの指示に忠実に従い、向きを変えると手を頭の後ろで組んだ。

手首にも乳房そのものにも、クッキリと縄の痕がついている。

「おまんことお尻とどっちが気持ちいいの」

リサが、手にした五連のパッケージから柄の色もやはり黄色の針を一本取り出して、それをこれみよがしに紫織の目の前に掲げて見せつつ意地悪な質問をする。

針先はまだ半透明のキャップで覆われているが、二十一歳の紫織にとっては、質問に即答するに充分な脅しであろう。

「お、おまんこのほうが気持ちイイですけど、鞭で打って頂いているうちに、ちょ、ちょっとお尻の穴の方も…」

か細い声がリサの襟元のマイクに拾われる。

同サイズのものが性器にも入っている状況であれだけの太いものを肛門に入れられて、違和感がないどころか、それを鞭による刺激で自ら締め付けて感じるレベルに、既に紫織は到達してきているのだ。肛門だけでの絶頂はまだ無理でも、性器だけに入れられている時とは、あきらかに反応は違ってきている。

ふいにリサが、紫織の左の乳房を鷲掴みにした。

先程あんなに搾られたにも関わらず、ピゅぅっと白い乳汁が飛んだ。

「針いきます」

客席にひとこと言って、手にした黄色い柄の上側から半透明のキャップを外す。

先端がステージを照らすライトにキラリと光った。

「乳首に垂直に刺す針のことを、わたくし達は乳腺針と言ったり普段してるんですけど、実際に本当に乳腺に真っ直ぐ入れるのはなかなか難しいのです。どうしてかは、皆様本日お帰りになられましたなら奥様や奴隷のおっぱいの先を改めてよくご覧になってみてください」

「ううっっっっ、いっ…」

リサの言葉と重なるように紫織が

呻

いたのは、左の乳首の先端に針が突き立てられ、ずぶずぶとそれを刺し込まれようとしているからだ。

それでも腰が逃げないのは、たいしたものだと乃里子は思う。

横からやそれに九十度角度をつけた十字に乳首を貫く通常の針責めは、恐怖感の度合いの方が強く、刺される時の一瞬を我慢すれば、打たれた後まで苦痛が長引く一本鞭などよりはむしろ楽な責めだと思うが、それと違い、乳腺を狙って垂直に刺される針はまったく別物といっていいほど、痛みは激しいのだ。

「おっぱいが出る、お乳が出るということは、乳腺はココですよー、と教えてくれるわけですから、確実にそこを狙うことが出来て、こんな便利なことはないわけです」

リサは美しい顔に妖艶な笑みを浮かべつつ、さらに既に黄色の柄の部分まで、つまり針部分はすべて乳首と、乳首より針のほうが長いわけだから、当然乳房の内部にまでめり込んでいるそれを、赤いマニュキュアが目立つ指先につまみ、左右にその柄をぐりぐりと回転させる。

「ぎょえーーーっ」

二十一歳の女の子とは思えぬ、野太い悲鳴がスピーカーから会場全体に響き渡った。

「さ、もう一本あるけど、どうする」

紫織はぶるぶると首を横に何度も振って、拒絶と哀願を示す。

「どうするの」

ところがもう一度リサが強い声で問うと、「お、お願いします。反対のち…、乳首にも針、ください」

と、自ら望む言葉を口にしてしまう。

母親の夫である関東電力会長の五十嵐からある程度の調教は受けていたであろうが、三田村病院に入院してまだ一年足らずで、ここまでハードなM女に成長したのは、やはり母親からの遺伝で、マゾとしての資質が備わっていたからということだろうか。

と、自らも母の沙織の血を引いて、十代からマゾの調教を受け「素質抜群」とその頃から「先生」と呼んでいた現在の夫の三田村、当時の米倉隼人から言われていた乃里子は思う。

「ぎゅあーーーっっ、お許し…い、イクぅーーーっ」

性器と肛門に刺激を与え続けられているとはいえ、苦痛に怪鳥のような叫び声をあげながら、そして許しを乞いながらも、逝ってしまう。マゾの女の身体の業の深さを、たった二十一歳で身につけてしまった紫織が、次の瞬間には失神してしまっていた。

「恥ずかしげもなくあんなに太いものをしかもたっぷりとひり出しおって。臭かったのう、有香。客席の最後部まで臭ってきおったわ」

妻である五十嵐有香を部屋のベッドで組み敷いている五十嵐隆三が言う。

有香がステージで排便ショーを演じたのは、二時間ほど前のことだ。

二十一歳の娘の乳房から搾った

乳汁

で公開浣腸をせよ、と命じたのは他ならぬこの夫の五十嵐で、そのために『リナリス』という試験段階の薬を紫織に使ったのだった。いわば妻の連れ子を奴隷化するだけでは足りず実験台にしたわけだ。

だがミルク浣腸は、その直後に挿入されたディルドーの潤滑油にこそなったかもしれぬが、浣腸液としての効果はさほどではなかったと思われる。有香を苦しめ、しかも浣腸後にも関わらず五十嵐が驚くほどのものを衆人環視のステージで排便して見せることを強いたのは、事前に服用させた下剤の効果だろう。

この排便ショーのために、五日間の排便禁止。強制的な便秘状態にしたのもやはり薬だった。

国の認可を受けた正式な病院という「箱」が、その入手や運用を恐ろしく手軽なものにしていた。

なにしろ今日の『リナリス』こそ特殊だが、ほかは製薬会社の方からどんどん売り込みに来るのだ。精神科という看板が、また特殊な薬も入手しやすくしていた。

「おお、紫織も薬のお陰でますますいいおっぱいになったのう。どれパパにも吸わせてご覧」

乃里子の手で、五十嵐とその妻有香の結合部に紫織の乳房から乳汁を搾ってみせたのだが、五十嵐は直接紫織の乳を吸わせろと要求してくる。

母娘ともども揃いの赤い首輪ひとつ身につけただけの全裸だ。

有香は屈曲位で根元まで受け入れた男根を揺さぶるように自ら腰を蠢かせている。

一万人にひとりの名器とも言われる有香に、ピストンを行えば男は途端に射精に追い込まれてしまう。

男に十回

擦

らせないと言われている有香との性交で、これまで実際に十回以上の出し入れをして見せたのは、乃里子の知る限りこの五十嵐と夫の三田村だけだった。

何度も有香の性交シーンを見ていて、その威力に同じ女として当初は羨ましいと思ったものだが、自分が楽しむという意味ではとてもではないがそれでは短すぎる、と最近は乃里子も気の毒に思うようになっていた。

三十回以上のピストンで実際に有香を悶絶させることが出来たのは、夫の三田村ただひとりだけだったからで、その時の狂乱ぶりからも普段の欲求不満がよくわかってしまったのだった。

ベッドの上に膝立ちになった紫織が、自ら乳房を母親の再婚した夫に差し出す。

本来ならば赤ちゃんが飲める分量だけの母乳を製造出来ればいい筈だと思うが、先程あれだけ搾られた紫織の乳房はそれでもまだ豊富に乳汁を溜め込んでいるようだ。

「あん、パパ」

敏感な乳首を吸われて、紫織が身を

捩

る。

左の乳首を吸いながら、右乳房を強く揉むと、またも乳首からはピューっと白い液が飛ぶ。

「うっ」

五十嵐は慌てたように腰を動かす。射精時の男根の刺激を最大に受けようとしているのだろう。

「いやーー、まだいやーっ」

夫があっけなく射精すると知り、有香が不満の声をあげた。

二

二〇一一年八月

母・沙織

「いいじゃありませんか、乃里子で。六年以上も美樹様は頑張ったのですし。良い経験だと思いますわ。先生の妻になった、いえして頂いたということはそういうことだと思いますし、本人も最終的には納得すると思います。本人に言い渡すのも、直前でいいと思いますわ。なんなら、その時にはわたくしからでも。それよりも先生…会長は美樹様と息子さんのことを…」

三

二〇一一年八月

古都金沢

「み、美樹ちゃん…」

突然素っ頓狂な声をあげて叫んだ

葵依

に、彩乃は身体がびくりとなったが、目の前を小さな男の子と手を繋いで歩いていたその女も、いかにも驚いたというように身体が一瞬固まってしまっていた。

まるでスローモーションでも見ているように、ゆっくりとこちらを向いた女は、確かに米倉美樹だ。

他人の空似、咄嗟

にそう思ったが、なんなのだろうそれが例え父親だけとはいえ、血が繋がっているということなのか。彩乃は目に入った瞬間それが妹の美樹だと確信していた。

葵依と一緒に一昨日から旅の番組で北陸を訪れていた。

撮影は昨日の午後で終り、スタッフやお互いのマネージャーは昨日のうちに東京に帰ったが、ふたりは金沢駅前のシティホテルのツインルームにもう一泊して週末を過ごすというのが、当初からの予定だった。

朝八時にホテルでモーニングを食べ、そのまま部屋に戻らず散歩に出て、歩いて十五分ほどの近江町市場という建物に入った直後の出来事だった。

葵依とは女優仲間であり、エスタブリッシュメントホテルグループに纏わるいくつかの秘密を共有しているという意味でも、特別な友人である。

だがもうひとつ、特別な関係性を有していた。

それはこの美樹という女を介した場合に生ずるのだが、彩乃だけではなく葵依にとっても美樹は妹なのだった。

彩乃は父が一緒、葵依とは母が一緒の、双方が美樹とは血の繋がった姉ということになる(※詳しくは「奴隷牧場零男根崇拝」にて)。

「い、いつ日本に…。な、なぜ連絡くれないの」

葵依がようやく次の言葉を口にした。

美樹もまだ呆然としていた。

「ママ…」

不思議そうな声で、繋いでいる手を引っ張って男の子が美樹の顔を見上げ、そして見比べるように葵依と彩乃を見つめた。

四

二〇一一年九月

珠海の夜

成田空港を夕刻に飛び立ち、台湾桃園空港を経由したキャセイパシフィック航空のボーイング747は、香港国際空港に向けて先程から降下を開始していた。

乃里子が座っている、ファーストクラスの最前列の席は左右に一席ずつしかなく、右側の席には台湾から乗り込んできた女優の望月彩乃が、出された食事に手も付けぬまま、眠り込んでいる。

成田を出た直後に夕食が出たため、乃里子も赤ワインとチーズをもらっただけで、この日二度目の夕食は断っていた。

「

珠海

というところに行ってきて頂きたいの。現地でマカオの支配人が待っているから中国元を受け取って、女を調達して来てほしいのよね」

「ジュ、ジュハイ…ってど、どこにあるんですか。中国ってことですよね」

乃里子にこの話を持ってきたのは、夫の秘書もしている牧野リサだ。

中国に返還された後も社会主義体制の本土とは一線を画して、独自のルール下にあると言われるマカオに、エスタブリッシュメントホテル傘下のホテルがあることは乃里子も知っていた。だが、ジュハイという地名を聞くのは初めてのことだ。

「真珠の

珠

という字に、海

って書いてジュハイと読むみたいなんだけど、中国でもかなり香港に近い場所で、実際にあなた方にも香港から行ってもらうことになる」

「あなた方…というと」

「今のところ、修兵君夫妻と、女優の望月彩乃さん。ご存知だったかしら、美樹さんのお姉さんね。お母様は違うけれどね」

「美樹…ちゃん…」

突然出てきた、この半年ずっと気になっている美樹の名前に乃里子の心が揺れる。

夫の前妻にして、自らは学生の頃から可愛がってもらっていた美樹の呼び方が、幼いころ呼んでいた「ちゃん」付けに戻ってしまったのは、美樹がドバイに行っていた頃のメールのやりとりからだった。

ひとりの男の前妻と後妻という関係をあまり意識したくないという、それぞれの思いが、昔の呼び名に戻すという結果に至ったのだと思う。

美樹が日本に戻ってきて半年が経つが、やはり今のところ音信不通のままだった。

「先月入会した細谷大臣ご存知よね。彼のルートでというかまあ彼に言わせると手土産ということなんだけどね、ちょっと面白いルートが繋がったのよ。多分キバちゃんのところからは絶対に無理そうなところがね」

キバちゃんというのは国民自由党の木林元首相のことで、女優の角川ともみがそう呼ぶのをリサは真似たのだろう。

細谷の所属する国民主権党に今こそ政権の座を奪われてはいるが、木林らの国民自由党が次の総選挙で政権の奪還をするのは確実な情勢と言われている。

リサが同行しろと言っている元テニスプレイヤーで現在はフリーのスポーツキャスターの修兵、そして国営放送のキャスター旧姓村上友紀の浜岡夫妻は、その国民自由党が復権を実際に果たした時のための「国家的プロジェクト」としてグループに預託してきている、大切な「秘密兵器」とも言える存在の筈であった。

そのふたりをわざわざ、対立する国民主権党の主要メンバーでもある細谷大臣ルートの何やら妖しい匂いのする事案に投入すると言ってるのだから、ただ事ではないのだろうし、もちろん夫でありグループ総帥の三田村会長も承知のことなのではあろう。

窓の外に

煌

めく香港市街の夜景が見えてくると同時に、中国語、英語につづいて日本語でも飛行機が最終の着陸態勢に入ったと案内が流れる。

通路を挟んで隣席の彩乃がようやく目を覚まして、百八十度フルフラットになっていた席を、元の座席の形に戻しながら大きく伸びをしている。

浜岡夫妻と、通訳役を兼ねて連れてきた

美月

という上海人の女の子、そして彩乃のマネージャーで名護そらの四人は二階に設置されているビジネスクラスで今頃降機の準備をしていることだろう。

「香港。乗り継ぎでは別に何回か来てるんだけど、入国するのはまだ二回目なんです」

日本人のキャビンアテンダントに、今日はこの後お乗り継ぎですかそれとも香港にご滞在ですかと問われて答えると、「あら乃里子ちゃん、わたしたち香港に入国しないわよ。ここから直接、珠海へ行くのよ」

と、横から彩乃が言った。

お仕事でしたか…と彼女が言うと、「ほら。エスタブリッシュメントホテルグループ総裁の三田村会長ご存知よね。この子、その奥様よ」

女優である自分のことは知っていて当然とばかりに、彩乃が言う。

ファーストクラス担当のアテンダントは、艶

やかに微笑んだ。

彩乃の言ったとおり、香港空港に到着すると、長蛇の列で混雑する入国審査場には並ばず、その後方の通路からバスのりばへと出て、そこから小さなフェリーターミナルへとバスで運ばれた。

「仕事で一度このルートを使ったことがあるんです」

今はプロダクションのマネージャーとして彩乃を担当しているという名護そらが答える。

彩乃が美樹の異母姉ならば、そらは美樹の異父兄で、そのふたりが女優とマネージャーという関係になっているというのも不思議なめぐり合わせである。何かと因果はあったようなのだが、その当時乃里子はまだ幼く、その経緯についてはよくわかっていなかった。

飛行機からの手荷物を受け取るところで、美樹の名をチラリと持ちだしてみたが、「え…。げ、元気にしてるのかしらね。暑いところで大変よね…」

と、彩乃は答えて、どうやら帰国していることも知らぬ様子だ。

そうなるとグループ総帥の妻という立場上乃里子も、このふたりに美樹について、帰国したのに音信不通だなどと伝えるというわけにはいかなかった。

フェリーから見えてきた珠海の街は、香港に比べると随分地味な印象だった。少なくともフェリーが着く港のまわりには、香港のような高層ビルなどもなく、雑然としていることは変わらぬものの、活気という意味では香港と比べるべくもない感じだ。

「同じ中国とはいえ、香港が一国二制度でそうじゃないとすれば、社会主義の国へ足を踏み入れるのは初めて」

乃里子の言葉に、隣に居た美月がそんな船の外の景色を見ながら「街や人は社会主義の国と言っても、そんなに違いはないですけど、自由の制約というものがほとんどない香港と比べると、あ、もちろん日本とは比べ物にならないけれど、どこか人は抑圧されているかもしれません」

と、言う。

上海出身の彼女の日本語はますます流暢になっているようだ。抑圧なんて言葉、今どき日本人とてそんなに使わないのではないか。

「でもまあ、ワクワクしますよね。日本のソープにはない究極のサービスとかいうのも楽しみだし」

横に奥さんが居ることなど全く構うことなく、浜岡修兵が明るくそんなことを言い、一同の苦笑を誘った。

「おー、九州。九州の女かあ」

相変わらずテンションの高い修兵が、叫んだのは港の施設に珠海九洲港と書かれていたからだ。

小さな港だが、「国境」の街ということなのだろう。当然のようにイミグレーションで入国審査がある。

無事そこを通過して、なるべく目立たぬように辺りを見回してみるが、出迎えと思われるような男の姿はどうやら見当たらなかった。

男が声をかけてきたのは、タクシー乗り場の前まで来た時だった。

ポロシャツにスラックスというラフな格好をしているくせに、まわりにうようよいて、大声で何かを喋りあっている中国人とはあきらかに様子の違う、いかにも日本のビジネスマンという雰囲気を漂わせた男だ。

「ショートメッセージを奥様のお電話番号宛に差し上げたのですが」

乃里子は慌ててハンドバッグから携帯を取り出すが、飛行機の中で電源をオフにしてそのままだった。

「でも良かったです。ホテルはちょっと歩いていけるところではないので」

おそらくそこに現金が入っているのだろうか、カジュアルなボストンバッグを重たそうに持っている。

「なかなかこちらで車をご用意するというわけにはいかぬ場所でして、白タクですが問題はありませんので」

と、男がワンボックスカーの前まで案内した。

それでも、まわりに停まっている車がかなりくたびれている印象を受ける中では、ピカピカの車で多少の安心感はある。

その車でホテルまでは十五分ほどを要した。

「お部屋は本社からの指示で、乃里子奥様、望月様にそれぞれスイートルームを、他に二室デラックスツインのお部屋をご用意してございます。後の差配は乃里子奥様に任せるようにと」

出発前にリサから

「修兵君でもそら君でも、あるいは

美月

に奉仕させるのでも、修兵君と奥様セットだとか、なんなら彩乃さんと組んず解れつでも、会長も黙認だから好きに羽を伸ばして来て」

と、言われていた。

中国人の

美月

のことをリサだけはメイユェと中国語読みで呼ぶ。男性にはMでそのくせ女性にはかなりハードなことを平気でやってのけるSに変貌する美月は、倶楽部でも独自の地位を得ていて人気があった。その美月が女に奉仕をするというシーンを少なくとも乃里子は目にしたことはなかったが、リサがそう言う以上はさせた経験があるのかもしれない。

リサに言われた時もそうだったが、部屋の割当を任せると言われて、また少し疼くものがある。

「わたくしはご滞在中のご予定に関しましては、詳しくは何もお聞きしておりませんが、これから行く帝都ホリデイホテルの総支配人がすべて段取りして『ご案内』もされるとお聞きしております。そんなわけで到着いたしまして、総支配人にお引き合わせしましたらわたくしは失礼させていただきます。このバッグの中身の残りがもし出国時にお邪魔になる場合は回収せよとの命も受けてございます。こちらがわたくしの携帯の電話番号でございまして、そのほかのことでも、何かありましたらお電話いただければ真っ先に駆けつけますので。余計なこととは存じますが、このところ殿方の夜のお遊びの方は、多少こちらの公安はうるさくなっているときいております。もしそのような需要がございます場合は、マカオの方まで足をお運びください」

最後は、修兵とそらに向かって言った。

やはり、この男は自分たちが何をしに来たのかわかってはいないのだろう。ひょっとするとホテルの買収の下交渉にでも来たと思っているのかもしれない。それにしては手付金が少ないので、その総支配人とやらへの手土産替わり程度との想像でもしているだろうか。だとすればお釣りが出るというのも不思議な話ではあるだろうが。

「うぉー、なんだこれっ」

修兵が素っ頓狂な声をあげたのも無理はない。

乃里子だってそう思ったし、他の全員がそう感じたことだろう。

その驚きようが織り込み済みとでもいうかのように、総支配人が柔和な顔に笑みを浮かべ、頷きながら何かを美月に言った。

「後で、どのように使うか実地を見れば一目瞭然とのことです」

実際に行った経験があるわけではないが、「それ」以外は日本の風俗店の個室とまあ似たようなものなのではないかと、ネットなどで目にしたことのあるソープランドやマットヘルスのお店を思い浮かべてみる。

お風呂があって広い洗い場があってベッドがある。

いわゆるマットはないが、ベッドの仕様が濡れることに耐えられるようになっているようで、その替わりになるのだろう。

一同が驚いたのは、ベッドのほぼ中央の天井に物々しい金具が長方形につけられており、その中央にはハンガーのような形をした金属にゴムベルトのようなものが天井からぶら下がっているのを目にしたからだ。

なんとも違和感たっぷりなのである。

SM用なのか。手首を縛って吊るすにしても、使い勝手は悪そうで、そもそもそういうサービスをする店とは聞いていなかった。

それになんといってもここは、四つ星ホテルの一角なのだ。

エスタブリッシュメントホテルで、会員制の秘密のフロアーの存在に慣れているとはいえ、社会主義国の中国で、一流ホテルの中にサウナという名のSM設備まで備わっている部屋が用意されているとすればびっくりである。

少なくともちゃんとしたサウナで客とマッサージ名目の女がこっそりとセックスをする、というシステムではないようだ。

しかも、チェックインしたスイートルームに設置されていたディレクトリーをざっと見たところ、このサウナの案内も女がずらりと並んだ写真付きでしっかり載っていたのだ。もっとも、今はクローズしているという意味らしき赤い文字のシールが貼られてはいたが。

乃里子たちがやってきたこのサウナと呼ばれる場所は、実際今は営業していないようだった。

「珠海、突然公安の取り締まりが始まって、どこもほぼ営業不能になっているそうです。特にこういう高級ホテルの中にあるところは、あまり公安刺激するとホテルのそのものの営業にまで影響を及ぼします」

美月が最初に総支配人の言葉をそう通訳した。

「もともとこちらのお店は珠海でも一、二を争う人気店でした。女の子も常時百人以上が待機。香港やマカオからもたくさんお客さんやってきた。こういうエッチなサウナ、マカオにもたくさんあります。でもマカオ高い。珠海、マカオの三分の一以下のお値段。しかも珠海流のスーパーサービスで人気でした」

ほぼ同時通訳の美月の日本語が普段と違って、かなり怪しくなっている。久しぶりに中国語が耳に入っているせいなのか、「わたし上海語、このあたりは多分広東語。ちゃんと通訳としてお役に立てるといいのですが」と本人が言っていた、そんなことが影響しているのだろうか。

奴隷牧場7 美姉妹蟻地獄 【小説奴隷牧場】 第1部分 (1/3)
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