奴隷牧場7 美姉妹蟻地獄 【小説奴隷牧場】 第3部分 (3/3)
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「もちろん、付加価値を考えたら妹だろうけどな。テクニックなんてやがては身につくわけだし。それとまあ、うちの会員で処女好きが居るのかどうかはわからんが、世の中にはそこに多大な価値を見出す輩もゴマンといるだろうからな。いずれにしても乃里子はいい仕事してきてくれたよ」
だったらチューをしてくれるとか、せめて頭を撫でてくれるとかしてくれてもいいものだと思うが、口には出せず、もちろんそれ以上のこと、夫は乃里子の「先生」にはなってくれず、三田村会長の威厳を身に纏ったまま、病院を後にしていた。
姉の
美帆
が先に中国語で比較的長い言葉を口にした。
しっかりと、こちら側に座って見ている女たちを目でひととおり見回し、最後に三田村にその視線を留めてだ。
妹。
鈴玉
の声はか細かった。
さすがに視線は泳ぎ、途中から
俯
いてしまったが、それでも姉の言葉を
反芻
して、誓いの言葉を言ったのだろう。
ふたりとも姿勢は先程のままで、性器を自らの手で開かされていることも変わりはない。
「足、下ろしていいわ」
リサが今度は日本語だけで言ったが、雰囲気なりリサの視線なりで理解出来たのだろう、ふたりは高く上げていた足をようやく下ろして気をつけの姿勢になった。
「連れてきて」
リサが、末席の優菜に言う。
斜め後方のドアへ小走りで行った優菜がドアを開けると、入って来たのは熱い男浜岡修兵で、修兵が手にした鎖の先に赤い大型犬用の首輪に繋がれた女が膝をつかず尻を高く掲げた四足歩行でノロノロと従っていた。
近付いてきて、それが歯科医師の宍戸紗友里だとわかる。
ふたつの乳首を
穿
つ太いリングがEカップの乳房を変形させて重たげに揺らしている。リングの先端は床を掃くほどだ。
目の前を通り過ぎると、プリプリしたお尻をことさらに振って見せながら歩いていく。
それを真後ろから見ると、股間からもひとサイズかふたサイズ細いものとはいえ、リングが尻の動きによって縦に横にと揺れ、天井のライトが時折キラリと反射している。リングが付けられている元の部分の敏感さを思うと、それは相当の苦痛を伴う筈だが、紗友里はそんな素振りは微塵も見せず尻を振って四足歩行で修兵に付いて行っていた。
「立ちなさい」
四足歩行のままで十センチほどの段差のあるステージに紗友里が上がると、リサが命じた。
すかさず女医は立ち上がり、さっと手を頭の後ろで組む。
「おっぱい、垂れたわねえ。私たちだって人ごとじゃないけどさ。巨乳オンナの宿命みたいなもので」
麻美が言うが、残酷な時間と重力でそうなってしまったり、あるいは母になった勲章で授乳をしたことによって形が変わったりというのは仕方がないのだろう。だが紗友里の場合は違う。
五年間、ピアスに乳首を引っ張られているのだ。それも普通の女の子が耳につけているような可愛らしいものでもなんでもない。
特に去年の夏に、彼女の上司である向井院長に付け直された直径八ミリのそれは、最初のものの「十倍の重さがある」と向井が豪語しているもので、現に今も紗友里の乳はそのピアスの重みで乳首が完全に下に引っ張られている。
皮肉なことに乳房がその乳房の本来の形に、少しでも美しく見えるとしたら、先程までの四つん這いで真下に乳首が引っ張られているという状態が一番マシなわけだ。歯科イシじゃなく歯科ウシだと、言い放って下品な笑いする向井を思い出すだけで不快だ。
「あなた方にこの女を見せるのは、今誓ったことに反すると、こんなものをぶら下げられて、その折角きれいなおっぱいがこんな風になってしまうわよ、ということだけではないの」
リサがまたわざわざ日本語で言ってから、中国語で言葉を繰り返す。
「見なさい」
ポケットからリモコンを取り出して、スイッチを動かす。
途端に、紗友里の身体が痙攣しビクビクと反応した。強にすると一発で失神するレベルと言われているから微電流を弱で流されただけだとは思うが、それでも膝をくずすこともなく、後頭部で組んだ手も真横にしたまま大きく崩れることはなかった。
紗友里がこの電気責めに慣れたせいなのか、それともそこで体勢を少しでも崩すとさらなる強い電気を流されるといった訓練を向井院長にされているせいなのか。
少なくとも千葉の病院でエレーナに電気責めを受ける女たちが泣き喚いて失神したり失禁したりするのに比べると、よく我慢している方だと思う。
リサは一度、スイッチを切り、「電気よ」
とでも言ったのだろう。その言葉にふたりの中国人の美少女は驚愕し、すぐにその表情は恐怖に変わった。
もう一度、スイッチを入れる。
「う、ううぅぅぅ」
先程と違い今度はくぐもった声を紗友里があげた。それでも何とか堪えて体勢は維持している。
それと同時にドアの外、続き部屋から、甲高い悲鳴が上がった。
「あ、忘れてた。リモコン届いちゃうか。いいわ連れてきて」
慌ててスイッチを切ったリサに命じられて、再び優菜が立ち上がる。
現れたのは、なんと女優の望月彩乃だった。艶やかな和服姿だ。
もちろん悲鳴をあげたのは彩乃ではないだろう。美しい顔に微笑みを浮かべて、三田村に軽く会釈をした。
その後ろからもうひとり、乃里子が
珠海
から調達してきた中国娘の
雪蘭
が既に全裸にされ、黒い首輪をひとつつけただけで、へっぴり腰で付いてきている。
雪蘭
の右側の乳首には、キラリと光る小さなリングが見えた。
「あらあ。この子もまたちっちゃいのにいい身体しているわねえ」
初めて見たのか、麻美が感心しているのはやはりそのDカップほどの乳房の丸みだろうが、そこにいつ電流ピアスを付けられたのだろうか。
それでもそれはとても小さなもので、現在の紗友里のものとは違って、乳房の形を崩して、美しさを損なわせたりはしていない。
ステージまで連れて来られた
雪蘭
は、イヤイヤをするように首を横に振りながらまだ涙を流し続けていた。
こちらを向き直った彩乃が、改まって深く会釈をする。
一緒に日本に来た姉の
美帆
は、あきらかに動揺した様子だ。
多分、今の今まで
雪蘭
が既にそんなピアスを付けられているのを知らなかったのだろう。
そしてその事実は、いつ次は自分か妹か、という具体的な可能性に行き着いたということでもあるわけだ。
二十一歳の
鈴玉
よりも小柄なためか、三人が裸で並ぶと
雪蘭
が一番若く見える。
愛嬌があると珠海で初めて見た時に思ったこの子は、髪型をショートカットに変えてナチュラルメイクをきちんと施したことで、思った以上の見た目になっていて乃里子はなんだか誇らしい。
「修兵君と友紀ちゃんは、脱いでくれる」
「おす」
リサの命令に夫の修兵は即座に返事をして、すぐに自分のズボンのベルトに手をかけたが、その横で友紀は戸惑いを見せてイヤイヤをして首を横に振った。
「ん」
「え。せ、生理なんです」
慌てたように友紀が答える。
「知ってるわよ。昨日一緒に泊まったんだから」
リサはにべもなく、脱げと目で促す。
こうなると、立場がまるで違う友紀は従わざるを得ない。
そんなやりとりなど聞こえてもいないように、修兵の方はあっという間に全裸になっていた。既に男根は半勃起状態で、若い女たちの裸に興奮を示している。
友紀は白いスリップ一枚になったところで、リサに先にパンティを下ろすように命じられ、スリップと対照的な黒のパンティを脱いでリサに差し出す。ブラジャーはしておらず、自慢の乳房の全容がほとんど透けて見えた。
受け取ったリサは、すかさず内側を「客席」側に提示するが、そこにつけられたナプキンにさほどの汚れは見られなかった。
「これから会長やお集まりの幹部の皆様に、乃里子様が発掘されて来られたこちらの雪蘭の巨大ビーチボールを使用するという中国四千年の技なのか珠海地方独特の開発なのかはわかりませんが、多分初めて目にされるであろうフェラチオ奉仕をお目にかけます。また美帆と鈴玉姉妹のお勉強のために、紗友里先生にレズ奉仕を実演してもらい、奴隷が女性に対して女のおまんこにはどんなご奉仕をすべきかを間近で見させます。修兵君、先に奥さんのタンポン抜いてあげて」
「い、イヤッ」
リサの言葉に友紀が抵抗を示すが、それも言葉だけでの些細なものに過ぎない。奴隷に否やはない、とさすがに身に沁みているのだろう。
ステージに、椅子とオレンジ色の巨大なボールが持ち込まれる。
「ば、バランスボールすか」
「中国にあったとかいうそんな大きいビーチボールなんて簡単に手に入らなかったの。つべこべ言わずに座りなさい。一流のスポーツマンでしょ」
リサがピシャリと言う。
椅子にはもちろん友紀が座らされ、スリップを胸の上まで改めて捲りあげ、足を大きく開くように命じられる。
ふたりとも「客席」には、横顔を見せて夫婦同士向き合って座っている状態だ。
ビーチボールとは多少勝手が違うのか、一律にまっすぐ戻って来ない男根に雪蘭は少し苦心しているように見えたが、すぐにその反動を予測出来るようになったようだ。運動神経抜群の修兵の協力ももちろんあるだろう。
友紀の股間に顔を
埋
めている紗友里の口元は、既に経血で赤く染まっていた。もちろんそんなことはお構いなく、クリトリス、穴の周辺、肛門にまで紗友里は舌を小刻みに動かし、時に吸い付き、舐め奉仕を一心不乱に行う。
「修兵君より先に、奥様を逝かせるのよ」
リサが紗友里を叱咤する。
彩乃は修兵の横に来て、ただでさえボールの反動でイラマチオ状態になっているにも関わらず、さらに反動を大きくするために髪の毛を掴んで雪蘭の頭を動かす。
「あれで
咽
ないのはたいしたもんねー」
麻美が感心している。
美帆
と
鈴玉
の姉妹は最初ふたりとも紗友里の奉仕を見せられていたが、「ご、ごめんなさい。い、イキますイクーーっ」
と、友紀が最初の絶頂を迎えたところで、妹の
鈴玉
だけは、雪蘭
の男根奉仕の見学に移動させられた。
「この子、大人のおちんぽ見るのは今日が初めてだそうです。お父さんのものも萎えたところしか見たことないそうです。お父さんって言っても義理の父親、お母さんの再婚相手だそうですけど」
リサが全員に向かって言うと
「そ、それは光栄っす」
と、いちいち修兵が口にする。
義理父。
美帆
が事情がありそうに妹を一緒に日本へと言っていたのは、そんなこともあるのだろうか。
いやいや、ちょっと考え過ぎかもしれない。
普段から近親相姦的なことを目にすることが多くなってきたせいもある。
自分も義理の父、寒河江に女にされている。
乃里子の場合は血の繋がりのない「父」だが、香港で一緒だった名護そらは、実姉である女優の葵依や、母親ともさせられたことがあると聞いている。
そうだ、その母親が美樹の実の母でもあるのだ。葵依は異父姉でそらは異父兄だ。
そして美樹はこの眼の前に居る彩乃とも同じ父を持つ姉妹なのだった。
香港で合流した彩乃とそのマネージャーとして同行していた名護そらに、思わず美樹は日本に帰ってきているのだが消息が…という話をしてしまいそうになったことを思い出す。
彩乃はどうやらそのことを知ってはいないようだったので、慌てて口を閉ざして話題を変えたのだった。
「ほら、奥さん逝ったわよ。あんたも早く旦那逝かせるのよ」
彩乃の言葉はまだ
雪蘭
にはわからないようだが、再び髪の毛を掴まれてピストンのスピードをあげるように動作で指示を受けると、雪蘭は一気にストロークの深度と速度の両方をあげて修兵を追い込みにかかった。
「珠海で名護君はこの子にあっさり白旗あげてましたけど、俺はがんばるっすよ。見学してくれてる処女のこのお嬢さんのためにも」
修兵が言うと、三田村の隣に座る母沙織が
「修兵君、言った以上は、最低奥さんが十回逝くまでは頑張るのよ。もしそれ以下だったら、明日病院で看護婦全員の手コキ抜き十回の刑ね」
「う。あ、あれは勘弁してくださいっ。それにただのフェラじゃないんすよ、これ。十回はさすがに…」
威勢のいいことを言った割には、熱き男に似合わぬ弱気の発言になる。
さすがの修兵も看護婦十数人に寄ってたかって連続で全員に抜かれるのは堪えるようだ。現場を見ている、いや自分も参加している乃里子もそれはよくわかる。
「修兵君、会長がもし奥さん十回イキまで持ちこたえたら、その処女、破っちゃっていいっておっしゃってるわよ」
再びの沙織の言葉に、今度は小さなガッツポーズを修兵はして見せた。
「奴隷女のレズ奉仕は、どんなことがあってもおまんこから口を離してはいけないのよ、わかるわねメイ」
リサはすぐに中国語でもそれを伝えると、美帆
もうんうんと頷く。
今までの仕事では、男しか知らないということは現地で乃里子が美月の通訳で確認していた。
「お尻叩いて下さる方」
リサは、友紀への口奉仕を続けている紗友里をスパンキングするつもりらしく、手を真っ先にあげたのは隣の麻美だった。
「この前ね、お客さんにされたら、結構痛いのになんか気持ちもよかったので、貰ってあるのよ」
そう乃里子に言いつつ、皮革
の手提げバッグから麻美が出したのは、青い色のゴムホースだった。どこにでもある都市ガス用のありふれたものに見える。長さは一メートル半くらいだろうか。
麻美までステージにあがり、狭い舞台の上は女たちでひしめき合っているという状態になった。
「い、いくーーっ」
ゴムホースでのムチ打ちが始まる前に、友紀が二度目の断末魔の声をあげて仰け反る。
「二十発、行くわよ」
「ふぁ、ふぁいっ」
麻美の気合いに、口を女性器に押し付けたままで紗友里が返事をした。
ブァッシーン。
ホースは唸りをあげて紗友里の尻に鞭とはまた違う独特の音で炸裂する。
四つん這いの尻をビクリとさせて、それを受けた紗友里の喉からくぐもった悲鳴があがるが、そこで奉仕が一瞬でもおろそかになってはならじと必死に舌を動かし続けている。
奴隷としての粗相を犯した際のお仕置きが、こんな程度では済まないと知っているからだろう。
赤く斜めの線が一発で刻まれた白い尻に二発目三発目と襲いかかる。
鞭との最大の違いは、その当たる瞬間までのブーンという空気を切り裂く音だ。
痛みが来る直前のこの音は、される側に立てば結構ゾクゾクするかもしれない。乃里子はMの血までが騒ぎ出すような、はじめて目にし耳にする責めを感心して見つめていた。病院でエレーナにやらせるのも面白そうだ。
「すみません、い、逝くっす」
修兵は残念ながら、妻の三回目の絶頂より先に射精してしまった。
雪蘭
は平然と深いストロークのイラマチオでそれを受け止めている。
麻美の二十発の鞭の間に、友紀はまた二度のアクメを味わい、「も、もうゆ、許して」
と、奉仕の中止を懇願して足を閉じそうになるが、「あんたも、その自慢のおっぱいにぶっとい電気ピアスつけてやろうか」
そう脅したのは、瑞花だった。
自分の立ち位置がよくわからない乃里子だったが、その自分を除けば女たちの中で、瑞花は、母の沙織、牧野リサに次ぐナンバースリーの女だ。
すかさず、友紀がまた大きく足を拡げる。
ゴムホースでの鞭打ちは、麻美の二十発の後、彩乃も二十発を打ち据え、既に紗友里の尻は白い部分の方が少なくなっている。
そしてその後、なんと鞭を持たされたのは、悲鳴をあげながらも口を離すまいと懸命に奉仕をするその部分を見つめさせられていた美帆だった。
「やりなさい。中途半端な鞭打ちだったら、今度は私が貴女をそれで叩くわ」
中国語が続く。
言われて
美帆
が彩乃からゴムホースを受け取る。
一発目は、なんと空振りだった。
空気を裂いた音は、ペシャっという床を叩く音で終わる。
それなのにむしろ紗友里の尻はキュッと緊張を走らせたのが見て取れた。
二発目は命中。
三発目から、美帆
は容赦なく振りかぶって既に真っ赤になっている尻を力いっぱい打ち据えた。
さすがの紗友里が、膝が崩れて悶絶したほどだから大したものだった。
コツを掴んでそこからは容赦のない二十発をこなした全裸の中国娘は一気に汗をかいていた。
「初めてにしてはなかなかの『鞭』
捌
きだ。ましてゴムホースだからな」
と
美帆
を褒めたのは、二十発目が終わると同時に立ち上がった三田村だった。
「さて。仕事があるから私は先に退出させてもらうが、君たちはゆっくり好きに楽しむといい。あと残念ながら、浜岡君は権利放棄のようだな。その娘は、かわりにほれ電力会社の元会長にでも抱かせてやれ。あれは処女に目がなかろう。餞別代わりだ、といってもタダでさせる必要はないがな。本人もそう言うだろうが、会社の方にたっぷり請求してやれ。どうせじゃぶじゃぶ税金投入されて、中抜き会社を肥えさせているだけだ。退職金をもらい損ねた中興の祖のためとあっては、会社も喜んで払って寄越すだろう」
関東電力会長だった五十嵐は退職し、海外に転居する予定と聞いている。
退出するのは三田村だけかと思ったが、母沙織が一緒に立ち上がっていた。
「ふーーっ」
乃里子の大きなため息に、席に戻っていた麻美が驚いたように視線を送ってよこした。
七
二〇一一年十月
緘口令
「乃里子には言わないで」
旅番組の収録でたまたま女優仲間の葵依と一緒に訪れていた金沢の近江町市場で、ばったりと会った妹美樹に、ふたりは懇願されていた。
自分にとっては異母妹、葵依にとっては異父妹となる美樹は、学校一年生になっているという自分の息子を連れていた。
その息子大輔を見て、彩乃もまた葵依も衝撃を受ける。
アラブの産油国の石油王と呼ばれる男の第四夫人だか第五夫人になったと聞いていた美樹が、日本のそれも北陸の古都金沢に居たことにも驚きを隠せなかったが、連れていた子供がどうみても日本人純血の男の子、それも誰が見てもあの男の面影を宿していたからだ。
もちろん、父親のことを美樹は認めた。
だが美樹は、それ以上のことは話そうとしなかったのだ。
中国美人姉妹の妹
鈴玉
が来日してお披露目されたこの日、久しぶりにエスタブリッシュメントホテルにやって来た彩乃が、沙織にこの話をすると、案の定沙織はすべてを知っていた。
そして、こう言ったのだ。
「誰にも、特に乃里子には言わないでおいて。葵依さんにもそう伝えて。もし話しちゃったならそら君にも」
八
二〇一一年十二月
大晦日
気が休まる暇すらない。
東京へは、もう半月以上戻っていなかった。
中国から連れ帰った
美帆
、鈴玉
姉妹か
雪蘭
の三人のうち、ひとりくらいは自分のところで育ててみたいと思っていたし、実際そうなるのではないかと考えていたのに、今はそれどころではなかった。
来るべき衆議院議員選挙に備えて、身ぎれいにするという名目で引き渡された、代議士や元議員、新人立候補予定者の愛人たちのうち九人もの女が三田村病院に送り込まれて来たからだ。
ちょうど一年ほど前に、浜岡修兵の妻の友紀など「ハニートラップ要員」という名目の女たちがまとめて入院してきた時とは、雲泥の差があった。
何しろ今度送り込まれて来たのは、覚悟も自覚もない女ばかりで、全員が奴隷としてはゼロからのスタートだったのだ。
人数だって多い。
先ごろ関東電力元会長だった五十嵐が海外へ転居逃亡し、その際に三田村が買い取った五十嵐いや花村有香・紫織母娘の手まで借りなければならない状況だった。
そんな十二月が、激動の二〇一一年があと数時間で終わろうかという時間に、一通のメールが乃里子のスマートフォンの着信音を鳴らした。
『ごめんね、乃里子。心配かけてるわよね。少し先だけれど、来年の三月十日に東京に行きます。その時にすべて話しますから、もう少しだけそっとしておいて。ごめんね。乃里ちゃんは元気だって聞いてるから。わたしも息子も元気です。よい年をお迎えください。美樹・サイグサ・アヤード』
九
二〇一二年二月
お披露目、三幕
エスタブリッシュメント倶楽部のゴールド会員。
設立当初から、その登録人数は八十人と決められていた。
もちろん、条件も通常会員よりは厳しい。
実は、今はこの上に「プラチナ会員」「ダイヤモンド会員」というクラスも存在するのだが、承認された本人たちはともかく、表向きになっていないため、それがどういう資格でなれるのか、どういう恩恵があるのかということは公表されていない。その存在そのものがシークレットなのだから、当然と言えば当然だった。
一説には八十人と決めたゴールド会員の枠が空かないため、より貢献度が高い者を無理矢理上位認定して、ゴールド会員への昇格枠を増やしたのではないかとも言われているようだが、乃里子もそのあたりの運営の実情はよく知らされていなかった。
これからひと月ぶりほどの、ゴールド会員向けの特別ショーが行われようとしている。もちろん中にはプラチナやダイヤモンドの会員もいるだろう。
今回のテーマは「お披露目、三幕」と事前に発表され、その具体的な内容には触れない招待メールに、参加希望の返信が相次いだと聞いている。
相応に仕事も忙しい人たちも多いため、いつものショーは参加率が半分くらいの四十人程度のことが多いが、それに比べると、今日は会員多くの注目を集めたのだろう。エスタブリッシュメントホテル四十九階のラウンジが久しぶりにほぼ満席になっていた。
ひと幕目は、一般会員も含めた全会員に対応する新人奴隷たちの紹介である。
全部で八人。
リクルートスーツのようなものを着た女が居るかと思えば、キャバクラ嬢のようなドレスの女も居る。そうかと思えば既にスリップ一枚でその下の乳房や陰毛が透けて見えているといった美女も、ブラジャーとパンティだけの若い女も居る。
チャイナドレスの女がひとり居るのは、珠海
で残りはひと山百万円、ひとり十万円で乃里子たちが買ってきた女で、見覚えもあった。化粧のせいか珠海で見た時よりもやはり綺麗になっているが、どうやらそれ以外の九人はここには残れなかったようだ。
残る七人は昨年末に一斉に払い下げられてきた、国民自由党の先生方、あるいは次の総選挙を目指す国会議員候補のみなさまの愛人だった女たちだ。
そのうち乃里子のところから出せたのは、全部で九人を預かったうちの四人で、それ以外の五人のうち二人はまだ重点調教中だが、三人は既に海外に売却されていた。
ここに残れた女たちは、いずれ高額な「退職手当」を貰って自由になれる可能性もある女たちで、残れなかった女は最終的にはドバイの提携施設で訓練を受けて、性奴隷として世界中に売られていく。
乃里子と母の沙織もその施設に一度預けられているが、あくまでも倶楽部の幹部候補生としてであり訓練は受けさせられたもののそれ以外は賓客待遇で、マゾの自分にとっては辛かったという思い出はほとんどない。
だが、そうじゃない女たち、世界中から集められて世界中に売られていく本当の奴隷候補たちの扱いは過酷そのものだ。
いつものように一人ずつが真ん中のさらに一段高い台にあげられ、ストリップをさせられていく。
おっぱいを披露して、進行役のリサが触って揉んで乳首を捻り上げて、その感想を露骨に口にする。
ここに残れる要件のひとつに乳房の形というのがあるわけだから、レベルは全員一定以上であり、その中でのさらなる優劣をつけられていくのだ。
次に下着を取られ全裸にされると肛門披露。
ステージ上の巨大モニターに、後ろ向きで自らの手で拡げきって皺のひとつひとつまでも見せているその部分のアップと、ステージから直接見えない反対を向いている顔が別カメラで捉えられて、映しだされる。
もちろんそのポーズを取ってお尻を客席に向けている時には、目の前のカメラを見据えるように言われているわけだ。
その台に上がる順番待ちをしている女たちも、モニターを見て目を離さないようにと言いつけられている。
肛門性交の経験値と浣腸の許容量と耐性などのデータがリサの口から淡々と読み上げられる。
最後に性器披露。
台に座りM字に拡げた股間を前方に突き出し、「拡げなさい」
のひと言で、自ら
小陰唇
を開いてピンク色の内部を見せる、といういつものパターンだ。
もちろん、後ろの席でもその形状は巨大モニターに拡大投影されているから、一目瞭然である。
ここでは、外界での最後の相手男性の役職…といっても今回はほとんどが国会議員の現職か元職または新人候補だが…、そして経験人数とおよその延べ使用数などが公表される。
ショーはいつも以上に
粛々
と進んでいき、八人目の女までに一時間半かかっていなかった。
ふた幕目。
ゴールド会員専用、もちろんその上のプラチナやダイヤモンド会員も含めて九十人ほどの上級会員だけが利用出来る特別な女たちの紹介だ。
「本日このショーの後からも指名解禁になる六人をご紹介します。一人目は小泉和香さん。現職国会議員M氏の秘書を経て愛人になりました」
和香がステージ右側から出てきて、真ん中の一段高いところに上がる。
既に全裸だ。
「どうでしょうか、日本的美人とでもいいますかこの美貌、そしてこのスタイルとおっぱい。普段あまり縛りなどご興味ない方でも、襦袢を着せて赤い縄で縛り上げたいと思われるのではないでしょうか」
特別会員向けの女たちは、ここでの性器や肛門の公開は、先程までのような決まった形式では行わない。
したがって、ショーで見せる対象となるのは、身体全体のスタイル、乳房、そして顔ということになる。その上で、受付で渡された番号とリサが引くカードとが一致した会員ひとりがステージに上って、三十発の鞭打ちが出来ることになっていた。
番号が告げられ、男がひとりステージに上る。
以前はこのような場合、アイマスクをつけて上がってくる会員が大半だったが、最近そのような面倒なことをしようとする会員はめっきり少なくなった。
ゴールド会員がほぼ固定されてきており、顔見知りであることもそうだが、厳重に秘密が守られているという長年の実績がものを言っているわけだ。
もちろんこの様子は撮影されている。
公表こそされないが、いざという時に倶楽部側が切り札にする可能性もある。だが、そういう話が漏れることはないため、各界の著名人であれ、高級官僚であれ、素顔で少々ニヤついたり照れたりしながらステージに上るのだった。
「ひとつ皆様にお知らせがございます。小泉和香、実は現在妊娠しております。父親は三日前に、エスタブリッシュメントホテル歯科、院長を懲戒免職になりました向井遼平でございます。まだ妊娠初期ですから、ほとんどお腹の方もわかりませんが、これから徐々に大きくなっていき、おっぱいもさらに膨らみ母乳を出す準備をしていきます。もちろんそうなったところで責任を問うようなことは一切ありませんが、皆様の扱い次第では流産してしまう可能性もありますので、充分ご配慮の上お取り扱いください」
ただ座っていれば温厚そうな紳士ばかりだが、ひとたびSMを始めれば鬼のような男たちばかりである。
何しろそういう審査を通過しないと、ゴールド会員にはなれないのだから。
これでは流産させてしまってくれ、と言わんばかりではないかと、乃里子でさえ少々眉を顰める。
看護婦姿の植草加奈がステージに登場し、和香の前まで来ると左手に持っていた電マを手渡す。
「皆様、まずは本日最初の生贄の和香ちゃんのクリトリスに催淫剤を打ちます。中身は皆様覚えてらっしゃる方もいらっしゃると思いますが、去年の夏、今日も後から登場しますが、おっぱい奴隷の花村紫織ちゃんを母乳奴隷にした『リナリス』というお薬。あれをベースにさらに改良を加えたもので、即効性抜群の素敵なお薬です。二人目からは先に打った状態でステージにあげますが、敢えてこの和香ちゃんのお注射は皆様の前ですることにいたしました」
拍手が起こり、ステージ両側から黒人の黒服が出て来た。
ふたりは和香を抱え上げ、膝の裏を持って空中でM字開脚にする。
無毛の性器の割れ目から、既にクリトリスが尖りを見せて顔を出しているのがあまりにも淫らがましい。
三日前の向井遼平の「処刑(※奴隷牧場四「ハニートラップ」)」では、巧みなフェラチオで向井を射精まで追い込んだのがこの和香だ。
乃里子はその瞬間はちょうどドアの外に出たところで、向井のなんとも不気味な呻きと絶叫を耳にしただけだが、後で聞いたところでは、射精の瞬間エレーナに切断された男根を咥えたまま、自らの性器を弄っていたのだという。
一緒に立ち会わされたリサはとてもそんな気になれなかったと言っていたが、和香の方は興奮して「おちんぽ下さい、オマンコさせて下さい」と騒ぎ、もともと処刑の興奮でセックスがしたくなるとわかっていたエレーナが用意してあったふたりの男を分けあって貪ったらしい。
「これはホントに役得じゃのう」
「あ、貫通させちゃいけませんよ。お注射なんですから、上からチクンと刺して薬入れるのが目的ですからね」
注射器を手渡された男は脱脂綿で加奈が消毒したクリトリスに真横から刺そうとして、リサに注意を受けた。
つい、いつもの習慣で横から刺して貫通させようとしてしまうのだろう。
「おー」
男は、うんうんと頷いて手にした注射器の向きを変えた。
「う、うぅぅーーっ。おまんこ痛いです」
和香がクリトリスとは言わず、わざわざ恥ずかしい四文字で言ったそこからは、薬液を注入され針を抜いた瞬間に血が流れ出した。慌てて加奈が止血のために脱脂綿を当てる。
「和香ちゃんが、女の一番感じるところから血を流すのもご覧に入れたいのですが、折角入れたお薬が血と一緒に流れてはもったいないですからね。高いんですよ、結構」
と、リサがマイクを通して言い客席の笑いを誘った。
「あーん、痛いけどおまんこ気持ちいいです。もっと強くぎゅっとしてー」
加奈が止血しながら、薬を浸透させるためにクリトリスを揉むものだから、途端に和香が反応する。
「加奈ちゃんもういいわよ。あとは自分の手で電マ当ててなさい」
すかさずウィーンと音がして、スイッチを入れてから渡されたマッサージ器を和香は自らのクリトリスに当てる。
よく見えるようにと、和香の膝をそれぞれ持っている黒人の黒服ふたりが、さらにあからさまに開いた脚の角度を広げていく。
「あ、あ、もうイク。いや、こんなに早く、だめーーーっ」
絶叫して、いきなり性器から大量の淫水が飛び散った。
「いやらしい子ね。さあ鞭されてる間も電マ、クリトリスから絶対に離しちゃ駄目よ。最後の五発はおまんこ直接打ってもらってあげるから、それまで派手によがって何回でも逝きなさい」
和香が派手にそれから三度絶頂し、その都度弧を描いて潮吹きを見せたところでようやく鞭刑がはじまった。
身体を客席に対して横に向けて立たされ、少々猫背になりながらも、和香はがっちりと両手で電マを持ってクリトリスに当てている。
バシーーン。
先程の男が今度は鞭で和香を責め立てる。
派手な音の
九尾鞭
が連続で白い美しい尻をなめすと、そこはあっという間に赤く染まっていった。
「ま、またイクぅ」
和香が淫らに尻を振る。
「この催淫剤を使うと、途中で奴隷に水分補給することも大切です。それくらい淫水がドバドバ出てしまいますので」
「あーんお汁が、淫水
また出ちゃうぅ、もっとぶってーー」
和香の次は、あの
雪蘭
だった。
やはり全裸で登場し、鞭打ちショーの前に、元々片乳にのみ付けられていた電流ピアスをもう片方の乳首にも取り付ける作業が公開で行われた。
さらには自らを鞭打ちした男を例のバランスボールに座らせて、その弾みと反動を利用した得意技の自動イラマチオを披露する。これは誰もが初めて見る行為だったであろう。あっという間に男を射精させて、口からそのザーメンを垂らして見せた時には、やんやの喝采を浴びた。
三番目が、花村有香と紫織の
母娘
で、何度かショーには出ているこのふたりが会員の手に委ねられることを待ち望んでいた者は多く、全裸での登場にひときわ大きな拍手が起きた。鞭打ちの前には、『リナリス』を既に打たれている淫らな部分をシックスナインで舐め合わされる、母娘公開レズビアンショーでさらに客席を沸かせた。
二幕目のラストが、美帆
と
鈴玉
の姉妹だった。
登場の直前に、今月からオンエアされている化粧品と清涼飲料水のふたつのCMが巨大モニターに流された。
何れも美しく清楚なイメージの中国娘ふたりを使ったものだ。テレビでも大々的に流されてもいるし、駅のポスターや街の看板も増殖しているため、目にしていた会員も多かったのであろう。どよめきともざわめきともつかぬ異様な雰囲気の中、ふたりがやはり全裸で登場する。
ただしこの姉妹はふたりとも自らの手で乳房を覆い、いかにも恥ずかしいといった風情で出てきたものだから、一層の拍手とヤジを浴びた。
「ツカミはばっちりだったね」
右隣の母、沙織が言う。
いつもならば、もっと真ん中の席で三田村を挟んで座るのだが、今日は一番後ろの一番右端に沙織、そして自分、左側に先生、夫の三田村会長だ。
「まさかこの二人が裸で登場するなんて思わんだろうからな。ましてやこの二人をスカウトしてテレビCMにまで出すプロデュースをしたのがウチだとは会員ひとりとして想像できなかっただろう。珠海まで行って来てくれた乃里子のおかげだ」
三田村は珍しく手を伸ばして頭を撫でてくれた。
リサが姉の
美帆
を、ステージに残っていたナース服の加奈が妹の
鈴玉
の手を乳房から離させて、頭の後ろで組ませる。
「CMへの出演依頼が殺到している、ふたりのチャイナ娘のきれいなナマおっぱいをどうぞご覧ください」
リサの言葉にまたまた大きな拍手が起こった。
芸能界へのデビューと並行して、特に妹の
鈴玉
の調教は進んだことだろう。
海外逃亡した五十嵐元関東電力会長と処女セックスをしたという報告までは乃里子も聞いていた。
漆黒の丘で姉と好対照に見えた
鈴玉
のそこも、既に一本の恥毛も残っていない。
「ふたりとも服を着てする仕事しかいまのところ受けておりませんので、身体は服に隠れるところならばどんなに傷つけても大丈夫です。そうは言いましてもこの綺麗な足を出すことは多くなりますので、流れ鞭で傷がつかぬよう、お尻の折檻をする際は…」
言ったところで、一見ギロチン台のような形をしたものが、運び込まれる。
あきらかに違うのは、それがアクリル製で透明なところだ。
乗せられたのは
鈴玉
だ。
ギロチンならば首を突っ込むところに尻を入れる。
「このような器具をご利用いただくことになります。これで突き出したお尻だけを存分に鞭で打っていただくこともできますし、このままご自慢のおちんぽ様をズブリとしていただくことも可能です」
男が、鈴玉
の尻の側に回り鞭を一発振り下ろした。
いきなりの一本鞭に、二十一歳の少女が絶叫する。
「またこの二人、おっぱいとおまんこは打ち放題。どんなに傷がついても大丈夫ですので、安心して打ち据えて下さい」
美帆
は、ゴム製の六尾の鞭を持った男により、最初の一発で六つの太くて赤い線がその美しい乳に刻まれた。
三十発ずつの鞭責めの後は、二台のぶら下がり健康器のようなものが持ち込まれた。得意技の披露だ。
ふたりが自らを逆さ吊りにして行うフェラチオもまた、客席の度肝を抜いたようだった。
「お姉ちゃんのお仕込み、たいしたもんでしょ」
「今では妹のほうが深く
咥
えこめたりして調教師の評判はこちらの方がいいくらいだ」
母と夫が両側から相次いで言う。
ここで例の「セルフ駅弁」とか言う技まで見せるかと思ったが、「中国四千年の技、この器具を使用した特殊な技をふたりはまだまだ持っています。殿方には指一本、腰ひとつ動かさせずにご満足戴くこのふたりの素晴らしい淫技を、是非ご指名の上、ご堪能ください」
リサが喋っているうちに、妹、姉の順で相次いで男を追い詰め射精させた。
「中国ではね、ペッて吐き出していたらしいの。だけどうちでは許されないでしょう。でも逆さ吊りのままザーメン飲むのってものすごく大変らしいわ」
沙織は楽しそうにけらけらと笑う。
そして…
「さ、乃里子、そろそろ出番。一緒に行くわよ。三幕目は私たちふたりの番。さあ準備して」
と、全く事前に聞かされていない事を、母沙織が口にした。
十
二〇一二年三月
美樹・サイグサ・アヤード
「ごめんね、乃里子」
泣きじゃくる乃里子を抱き締めてくれているのは、ずっと会いたかった、小さな頃から姉と慕う美樹だった。
日本に帰ってくる、帰ってきていると聞いてから、一年越しの再会がようやく実現したのだ。
先生と呼んでいた現在の夫、三田村会長と一緒に美樹がドバイへ旅立つ時に成田空港で見送りをした。それ以来の再会だ。あの時は先生への思いばかりが優先で、こんなに長い期間美樹と会えなくなるなんて、全く思ってもいなかったのだ。
乃里子の胸に、幼かった頃からの美樹との思い出がいくつも過っていった。
美樹はその置かれた事情から、エスタブリッシュメントホテルの外に出ることはなかった(※奴隷牧場零「男根崇拝」参照)が、「仕事」をしている母にかわり、勉強を見てくれ、食事を一緒にし、最上階のプールで遊び、一緒にお風呂に入り、一緒のベッドで寝てくれた。
寝るときは必ずまっ裸になる癖がある美樹。その乳房に顔をうずめて数えきれないほどの夜、眠りについた少女の頃。
いままた、その胸に洋服の上からとはいえ顔をまともに埋めて、乃里子はぐすんぐすんと泣き続けていた。
乃里子はこの三月の末を目処に、再び中東へ渡ることになった。
「ごめんね。あれもこれも本当にごめん。でもね、いい人だから。すごくすごく優しくて素敵な方。いつもいつも乃里子がお嫁さんに行く相手が私のお古みたいでほんっとうに申し訳ないけれど、でもほんといい人だし、今度は私も離婚したわけじゃないからね。一緒だよ、一緒の人の奥さんだよ」
行き先は、美樹が去年まで居た中東産油国の石油王の元だ。
第四夫人の美樹に続いて、乃里子を第五夫人として迎えてくれることになったのだった。
母の沙織は、「わたしも第六夫人に…と思ったけどいいわ、我慢する」
と、軽いノリで一緒についてくるらしい。
具体的なことは母と夫の三田村会長で詰めているだろうし、母は自分を見送ったらすぐに東京に帰ってくるつもりかもしれない。
それならそれでも構わなかった。
美樹だって、ひとりで行ってきたのだ。
いや、まあひとつ違うことがあるとしたら、子供が居たことか。
「電話もね、電話もしようと思ったのよ。あの日は、電車の中だった。でも地震のせいで電話回線はきっとパンクしてたのよね。ずっとお話中で何度電話しても繋がらなかった」
帰ってきたのに会おうとしてくれない美樹。
子供が学校に上がる
年齢
になり日本で教育を受けさせるために帰ることになった、ということだけが実際の帰国間際のメールで聞かされたことだった。
どうやら何かを知っているらしいのに教えてくれない母。
千葉の病院に引き離されていて、夫の行動はこれまでとてよくわかっていなかったが、以前より出張に出掛けることも多く、美樹に会いに行っているのではないのか、いや美樹の産んだ子供にと、乃里子は疑念を持たずにはいられなかった。
考えてみたら、七年。辻褄が合わなくはないのだ。美樹の子供が、三田村隼人、いやまだその頃は米倉隼人だった先生の子供であっても。
教えてもらえないのが辛かった。
いいのだ別にそれならそれで。
先生と美樹が正式に日本の法律上の離婚をしたのは、乃里子と結婚するほんのすこし前なだけだ。
日本に居なかったからだ。
七年前、美樹と隼人は夫婦だったのだ。
そう考えれば、何もかもが
符合
するような気がした。
ドバイに売られる。
自分が邪魔になったからだ。
あのステージにあげられ、「三田村会長夫人、三田村乃里子はあとひと月ほどで中東の産油国の第五夫人に迎えられることが決定しました」
と、リサによって会場に告げられた時には、絶望で頭の中が真っ白になった。
「母、寒河江沙織も同行いたしますので、本日はふたりの最後のショーをお見せします。ふたりとも裸になりなさい。三田村会長、どうぞステージへ」
自分は奴隷だ。
こういうステージにあげられ、裸になれと言われれば即座に布切れ一枚残さぬ素っ裸にならなければならない。ましてや先生がステージに上がってくるというのだ。
売られるのだって、妻だからとか関係ない。奴隷だから売られるのだ、となんとか自分を納得させながら、それでも溢れ出してきた涙を止めることが出来ぬまま、ワンピースを落とし、スリップの肩紐を外して落とし、手を回してブラのホックを取り、パンティを脱いだ。
「皆様に、もうひとつご報告があります。それは三田村の方から…」
ステージに上った夫三田村隼人がマイクを手にして深々と一礼をする。
ヘッドセットのマイクで喋っているリサとは違い、ちゃんとしたハンドマイクだ。
客席は突然の総帥の登場に静まり返っていた。
「いつも当グループを公私にわたり、また表、裏にわたってご支援いただき、感謝申し上げます。皆様にひとつご報告があります」
三田村はここでひと息置いて、乃里子たちの方を見た。
「私の先代、あの偉大だった三田村勇輔が、この世を去る前に、実はひと粒ダネを残していたことがこの程判明いたしました。今現在は北陸金沢の学校に通っています。一年生です。三田村のオヤジの面影をはっきりと見て取れる、そしてとても賢い子です。まだそんな段階ではないとはいえ、私三田村隼人は彼を当エスタブリッシュメントホテルグループの、三田村コンツェルンの、次期総帥とするために今後は全力をあげて育成、教育をしていく所存です。ですが、今はまだ学校一年生。そっと見守っているというところです。正式に発表する段階ではございませんが、今日お集まり頂いた皆様にまだ内密な段階ということを踏まえてもなお発表をさせて頂きたく、高いところへ上がらせていただきました」
一斉にこの日一番の拍手が起こる中、リサが続ける。
「わたくしも、先日会って参りました。まだママに甘え盛りでしたが、とても利発な、そして今会長もおっしゃられましたとおり、前会長の三田村勇輔の面影をはっきりと残している素敵な男の子でした」
「さて、その彼を学校に上がる直前まで大切に育ててくれたのが、私の盟友でもあるモハメド・ジェイ・アヤード氏です。そして今も彼や彼の母親のためにアヤード氏は全力で支援してくれています。ただ、アヤード氏の手元を離れたその母親、彼女は私の元妻でもあります、美樹・サイグサ・アヤードに替わる、新たな妻を、日本人の素晴らしさを教えてくれた美樹のような妻をまた紹介してほしいと請われ、アヤード氏とも母親である沙織とも何度も何度も相談した結果、またも自分の妻である乃里子をアヤード氏の元に行かせることに、苦渋の決断をいたしました」
隣でやはり全裸になっている沙織が深々と頭を下げたため、乃里子も慌ててそれに倣う。
だが、発表された事実と自分の未来は衝撃だった。
同時にこの一年あまり乃里子の抱いていた疑念は
氷解
していた。
「一回だけ、ひと月だけ、誰にも言わずに日本に帰ってきたの。本当に妊娠出来るかどうかはわからなかったわ。でも会長が呼んでくれたことは嬉しかった。ドバイに行く時はてっきり他の女たち同様に、奴隷として売られるんだ、組織から見離されたんだ私、と思ったわ。でも違った。ちゃんと向こうに行ったら段取りが出来ていて、ものすごいところにお嫁に行くことになった。もちろん性奴隷みたいなこともしたけれど、そんなのココでやってることを思えばお戯れ程度。自分の性欲を持て余すほどだったのよ」
美樹が産んで育てていたのは、なんと前の会長三田村勇輔の子供だったのだという。
先生を疑ってごめんなさい。でも口にしなくてよかった。
「あの日、金沢駅に着いて、ホームに隼人君が待っていてくれたのを見つけた時は涙が出そうになったわ。隼人君は多分、その時にはもう息子が、息子の大輔が三田村前会長の子供ではないかと想定していたんじゃないかと思う。だからわざわざ会いに来てくれたんだと。少なくとも隼人君の子供でないことは本人、わかってるわけだしね」
乃里子はまだグスンとしゃくり上げながら、美樹に抱きついていた。美樹もそんな乃里子の頭を、自分の胸の膨らみに押し付けてるようにかき抱いて髪を撫ぜてくれている。
「夫のジェイから、隼人君への親書を預かってきていたわ。英文で書いたその文章は封をする前に私も読まされた。夫が私のことを大層気に入ってくれていたこともわかったし、日本人の女に惚れ込んだからこそ、次の妻も望んだの。そしてその手紙の時点で、乃里子、既に貴女の名前が登場していたわ。隼人君は私に、少し時間をくれと言った。ジェイも一年くらい先になってもいいからと言ってきていたしね。本当にそれが乃里子になるかどうか、私にはまったくわからなかったけれど、そのことがあって今日まで会いに来られなかったの。本当にごめんね。色々ごめんね」
「それでは、日本で最後になるかもしれない、寒河江沙織と三田村乃里子のスペシャルショーをお楽しみください」
鞭を手にしたのは、会員ではなく三田村自身だった。
あの日。
そして、今こうして自分を抱き締めてくれている美樹。
乃里子は全てを前向きに受け止めよう、そう心に決めていた。
終章
「乃里ちゃん、わたし、したかも…。わかったらすぐにメールするわね」
成田空港第二ターミナルの、ファーストクラスの乗客だけが通れる特別なゲートの前がお別れだった。
三田村にはホテルで別れを告げてきた。
優しく抱きしめてくれて、たっぷりキスをしてくれた。
「わたしも」
とせがんだ、母沙織にまで同じことをしたのが
癪
に触ったが、素直に嬉しかった。
二月の突然のショーへの出演と自分への運命が告げられた日の夜、乃里子はリサを捕まえて言ったのだ。
「会長の、先生の子供産んであげて」
と。
そして、今リサが言ったのがそのことだった。
「実は…ワタシも…」
乃里子はそっとリサに答えた。
なになに、という沙織に、「リサさん、妊娠したかもって…」
とそっと耳打ちしてやると、「ああ、わたしも。私もキテないの。また妊娠しちゃったかも」
と言ってのける。
「ああでも、最後にセックスして貰った時、お尻しか使ってもらってないわ」
母は確かに今回ドバイまでついては来るが、そこで「彼」と会ったら日本へ戻るだろう。
いい機会だから、これで少し第一線から退いて、プロの保育士さんを雇って結構任せきりにしてきた子育てをちゃんとしようと決心したらしい。
「香緒里も、おかげで手のかからないいい子に育ってはいるけど、どうせならね、大輔君のお嫁さんになって欲しいし」
上の娘、つまり自分に続いて下の娘までグループ総帥に嫁がせようかと、半分以上冗談とも思えぬ真顔でその時母は言ったのだ。
三田村コンツェルン、エスタブリッシュメントホテルを核にスタートした巨大企業グループは、ますます肥大化していっている。
最初、資金面でその屋台骨を支えた裏の倶楽部の役割は、そういう意味では既に終わっていた。しかし、会員という人脈がそこには残り、一定以上の役割を今でも充分に果たし続けている。
母も今やエスタブリッシュメントホテル支配人という立場になり、表舞台に立ってしまっているわけだが、それもこれを機に引くつもりのようだった。
「加奈さん、私帰ってくるまでもう少し病院がんばってね。優菜、いい女じゃんじゃん育ててよ。リサさん、先生に可愛い女の子産んであげて。暫しのお別れ、行ってきます」
美樹ちゃん、行ってくるね。
乃里子は姉と慕う女にそう心のなかでつぶやいた。
奴隷牧場7 美姉妹蟻地獄 【小説奴隷牧場】 第3部分 (3/3)
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