奴隷牧場2 闇の相続人 第4部分 (4/6)
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敢えて最小限の水を飲むだけで済ませようとした花純だったが、乃里子に言われてふたたびペットボトルに口をつけた。もちろん水はただの水にすぎないようだったが、錠剤がなんの薬かはわからない。
妊娠予防のピルなら常用していることは告げてあった。
そうこうするうちに、列車はあっという間に、最初の停車駅品川に停まった。
「ボタンもうひとつ外そうか」
ピンク色のブラウスは、既にホテルの部屋を出る時からボタンを上からふたつ外させられていた。
前屈みになれば、ノーブラの乳房の谷間は露骨にのぞくであろう。
しかし、命令に従わないわけにもいかず、自ら三つ目のボタンを外すと、ひんやりとした空気が胸に入り込み、さらに心許なくなった。
「すみません。その席…」
その時、車両の後ろ側から入ってきた若い男が、ボックスにした三人の席の横に立ち止まって言った。
「あら、どうぞ。回しちゃってるけどいいかしら」
「は、はい」
乃里子が立ち上がって男を花純の向かい側、窓側の席に座らせる。
グリーン車なので、席自体はゆったりとはしているが、女三人の中にいきなり座らされた男は居心地が悪そうに下を向いた。
こんなにガラガラなのに、と花純は思うが乃里子と優菜は、やったねとばかりに目配せしたりして、含み笑いをしている。
すぐに列車は発車した。
「ごめんなさいね、椅子回しちゃってて」
「い、いえ」
返事をした男は、まだ大学生くらいだろうか。見ようによっては大学生にすら見えた。年上の女三人からそれぞれ視線を向けられ、どことなくぎこちない動作で文庫本をカバンから取り出す。
やがて電車は新横浜駅に停車して、そして発車した。
のぞみ号ならば次はもう名古屋の筈だが、こだまはここからも小田原、熱海と停まるのだろう。
その先はなんという駅だっただろうと、考えはじめたとき、性器の中が振動をはじめた。
「優菜ちゃん、名古屋のお店の説明をしてあげて」
少しだけ声を潜めた乃里子が言う。
新幹線の走行音もあって他の席には聞こえないかもしれないが、どんなに声を潜めたところで、花純の前の男の耳には当然入ってしまうだろう。
しかし、優菜はお構いなしだった。
「ええと、名古屋ではなんて言ったかな、なんか業種は一緒なのに名前が確か違うんだけど、やってることはまったく同じで、東京で言うところのピンサロ、ピンクサロンと呼ばれてる風俗の一種のお店で…」
「優菜も、東京でその業界に居て、そこからうちの東京のお店に入って、ナンバーワンになって…」
「そうです。名古屋のお店と同じ名前なんだけど、『天使牧場』といううちの会社がやってるお店に紹介されて入ったの」
「で、具体的に説明してあげて」
男は文庫本に目を落としてはいるが、あきらかに聞き耳を立てているような気がする。
「名古屋のお店はね、一昨日オープンしたばかりで、行くのは私も初めてだから、完全に東京のお店と同じとは限らないけれど、システムは変えていないと聞いたし、なんといっても店長が私がやってた時の東京の店長が行ってるから、まあ違うところがあっても知れてると思う。そもそもやることはひとつ。男性客のおちんぽへの奉仕そのものよ」
優菜のあからさまな言葉に、男が小さくみじろぎをしたのがわかった。
「風俗の中でも、これだけフェラチオに特化してるのはピンクサロンだけ。お客が席についたら、ズボンとパンツを脱がせてしゃぶって、口でザーメンを抜いてあげる。基本はこのシンプルさ。これに玉舐めやお尻舐めなんかもするのかどうか、ってのがお店によって違っていたり、女の子自身のサービスの特色だったりがなんだけど、うちの店はこの点に関して明確なルールがあるの」
花純はだんだん落ち着かなくなってきた。
目の前の男の耳をまったく気にしていない、優菜の露骨な表現での風俗店の説明を聞くこともさることながら、問題は性器の中のローターだった。それは時々強弱を変えながら、また時に停止することで、花純にそれを意識させ続けさせ、実際にその快感に腿をぎゅっとこすりつけるような動作を無意識にしてしまい、男にそれをチラリと見られて恥ずかしい思いもした。
そしてもうひとつ。
それは、先ほど飲まされた錠剤の正体かもしれなかった。
だとすればこだまでのこれから名古屋までの時間はかなり辛いものになるかもしれない。
まだ冷静さを辛うじて保っている頭で花純は思った。
「そして、うちの店の最大の特徴は、ひとりのお客に女の子が必ず二人つくの。ふたりで同時にサービスするんじゃないのよ。ひとりはね、お客の前のテーブルに上がって、おっぱいや性器を見せるの」
乃里子が、「お店はね、一応少し暗いんだけど、それぞれ身体を見せている女の子にはスポットライトが斜め上から当てられてたりして、自分の席以外の女の子の裸も遠目に見えたりだし、二十人以上のおっぱいや丸出しのおまんこが一斉に光の中に浮き上がって圧巻の眺めよ」
あ、私は見たことがあるというだけだけどね、と付け加える。
「もちろんダウンライトで、サービスしている口元も明るくされるから、お客さんは台に上がった女のおっぱいやあそこを見たり、自分のおちんぽしゃぶってくれてる女のテクを目でも楽しめるし、それに大抵のお客は指をお相手の女の穴に突っ込んでおまんこの感触も楽しみながらって感じで、殿方には天国のような、まあお店の名前の通り、天使達に囲まれるようなお店よ」
ふたりとも男をわざわざ挑発しているのではないかと思うほど表現が露骨だった。
ふたたび乃里子が補足する。
「あとお客は台の上の女には一切触ってはいけないことになってるの。触りたければ指名してということなんだけど、実はこれにはわけがあって、台の上の女は自分の身体をあますとこなく見せながらも、サービスしているもう一人の女の子の口元を、つまりフェラチオのやり方をちゃんと見てなくちゃいけないのね。だからお客とはいえ、その邪魔はさせないというわけ。ほら、うちのカイシャがこんなことで儲ける必要なんてこれっぽっちもないわけじゃない。お店の目的は女そのものってこと」
「見て学んで、しゃぶって実践して最強のテクニックを身に付けることを目的にしてるってわけよ、今の貴女にもぴったりでしょ」
「普通の女の子、他人のフェラチオを生で見る機会なんてそうそうないからね。しかも新人さんにとっては、指折りのテクニシャンの技を見られるなんてことは」
優菜の言葉をまた乃里子が補足する。
「あ…あの」
ようやくふたりの説明が一度途切れたとみて、花純はようやく声を発した。
途端に、クリトリスにバイヴレーションが生じる。
「うっ」
男も花純の声に、顔をあげた。
いやそれよりも恥ずかしいのは、その小さな振動を起こしているブーンという音が列車の走行音に混じって聞こえる気がすることだ。
自分に聞こえるということは、男にも聞こえているかもしれない。
そして花純は確信していた。
さきほど飲まされた薬は、下剤だ。
腸が蠕動して、急激に便意を催してきていた。
なんとか、ふたりの今日から行くというお店についての説明は聞いていたが、今はもうそれどころではなくなってきている。
ふたつのローターによる快楽と、急激に押し寄せる便意が相乗効果で作用してきていた。
「あ…も…もう」
他人が居るにも関わらず、スカートの上から股間を押さえてしまう。
ところがそれは、振動をさらに直接クリトリスに強く押しつける結果になってしまい、身体がびくんと飛び跳ねる。
「あ…あん」
性器内のバイヴレーションが急に止まった。
数秒おいて、クリトリスも解放される。
「う…」
ほっとするのもつかの間、今度は便意がさらに強まってきて、慌てて肛門に力を入れた。
「あ…あの…」
花純は乃里子を見てトイレに立つ許可を得ようとするが、「駄目よ」
言葉を継ぐ前に、乃里子にピシャリと言われてしまった。
その乃里子が右手を花純の方に出してきた。
花純も、そして真向かいに座っている為に、結果的に自分の目の前に手を出された男もそれを見る。
手のひらを開くと、ピンク色の四角いモノが握られている。
親指でスイッチらしきものをいじった。
「うううっっ」
途端に性器の中をまたバイヴレーションが襲う。
次いで優菜が乃里子の手に重ねるようにして右手を差し出す。
やはりスイッチ。
クリトリスから身体全体にむかって急な快感が押し寄せる。
「だ、だめ。い…いき…」
いきそうです、と言いそうになって、慌てて自らの手で口を覆った花純だった。
「まもなく浜松に到着します。浜松では追い越し列車待ち合わせの為五分停車します」
浜松…。名古屋まではだいぶ近づいているとは思うが、花純はもう限界だった。とてもそこまで持ちそうにない。
浣腸をされての我慢という経験は幾度もさせられていたが、下剤というのは初めてだった。
クリトリスへの刺激はすぐに止められたが、乃里子は断続的にその手に持つスイッチの入り切りを繰り返し、花純の性器の中で暴れさせた。
そしてそれは便意を堪える力にも複雑に作用して、花純はもう気が狂わんばかりだ。
「あらあら、すごい脂汗ねぇ」
なにくわぬ顔で乃里子が言う。
便意には強弱があるのだが、それが強まった時に肛門を締め付けることで、スパークしそうな快感が押し寄せてみたり、花純の表情でわかるのか、その瞬間の直前に振動を止められて、力が急に抜けたり、見知らぬ若い男ひとりを含むボックス席の窓側で、花純ひとりがひたすら格闘しているのだった。
それにしても、限界ギリギリで我慢をさせられる苦しさというのが、バイヴひとつ追加されるだけで、これほどの脳を焼くほどの快楽と隣合わせとは。頭のどこかが冴えていて、そんな思いまでがよぎったりもするのだが、排泄の欲求はもういつ暴発してもおかしくない切迫した状況になっていた。
「トイレ行ってらっしゃい、優菜ちゃんと」
目を閉じて、何十回目かの強い波と戦っていると、乃里子の優しい声が突然聞こえた。
お許しが出た、そう思って目を開けた花純が見たのは、隣の男の耳元に口を寄せ、そして大胆にも男の股間に手を置いている乃里子の姿であった。
も…漏れそう。
一瞬の気の緩みを、慌てて立て直そうと、しっかりと肛門に力を入れるが、その瞬間に止まっていたローターが動き出す。
「あぁ」
思わず声が漏れてしまう。
「こんなにびんびんじゃないの。若いんだからフェロモン満載の女に囲まれたのは気の毒よね。優菜ちゃんのフェラは日本でも指折りなのよ、行ってらっしゃい」
「し…知ってますけど」
朦朧としながらも、花純はふたりのやり取りを聞いているしかない。
知ってる、知ってるってどういうこと。
立ち上がった優菜が、男に手を出して立たそうとする。
トイレに連れていって、男の欲情を処理してやろうということだろうが、男は優菜のことを「知っている」と言った。
「ほら、貴女も行くのよ。見て貰っていらっしゃい、恥ずかしいところ」
乃里子が命じた。
花純は、列車の通路の一番前を歩かされた。
後ろに優菜、そして優菜に手を取られて青年が続いている。
残念なことに、トイレはその車両の三人が歩いてきた側にはなく、わざわざもう一車両分を歩かなければならなかった。
座っていても辛い便意が、歩くことで
増幅
される。脂汗をかきながら、もう一刻の猶予もないと思い知らされる。だが、よく浣腸の時に「声に出してトイレに行きたいなんて言えるうちはまだまだ全然限界じゃない」と叱られたことを思い起こす。
浣腸なら限界以上の我慢の経験を何度もしているのだが、今は足を万が一止めたらその瞬間にへたり込みそう、そのくらい限界の限界だった。
なのに、ようやく二つ目の車両の反対側を出ると、トイレはあったがなんと使用中だった。
そのエントランス部分には誰も居ない。
優菜が花純の背中をトイレの扉とは反対側の壁に押しつけ、いきなり双の乳房を両手でそれぞれ掴んで力を籠める。
「いい。トイレに入ったらまずまっ裸になるの。あと落としたら困るからローターはずしてあげるから足開きなさい」
もうどんな抵抗も出来ない花純は、素直に足を左右に開いた。
「取ってあげて、おまんこどんな状態かじっくり調べながら」
そしてなんと優菜は、その役割を青年に振ってしまった。
自分よりも若い女二人が教育係のような形でこれほどまでに自分を嬲っているというのに、さらにもっと若い男性にも参加させるというのか。
しかも、いつ人が通るとやらも知れぬ通路である。乗客ならまだしも車掌が通りかかれば、確実に咎め立てされるであろう。それに少なくとも今目の前の個室に入っている客は必ず出て来る。
いや、そんなことよりこの青年はそもそもなんなのだ。
新横浜で乗車して来たときには、確かにガラガラのグリーン車の中でなんでわざわざ隣に人が居る席にと思いはしたが、どうみてもそれはたまたまであり、女三人との同席に青年は戸惑っているように見えたのだ。
「ほう…」
花純が命じられるままにスカートをめくり上げると男が感嘆の声をあげた。
素足の付け根にぴったりとした真っ赤なラバー製のパンティの不自然に盛り上がった股間のそれが、その瞬間にまた振動を始め、花純の身体をピクンと跳ねさせたからだろう。
「だ…駄目。も、もうほんとに限界です」
男の視線をまともに股間に浴びながら、か細い声で優菜に訴えかける。
「あら、どっちが」
「ぜ、全部。いえ、お尻…もう我慢が…」
歩かされたこと、さらに足を開かされていることで、便意がますます高まって、今にも腰砕けになりそうだった。
「じゃあローターはずすだけじゃなくて、ここでそれも脱がせて貰えば」
優菜は、意地悪にそんなことまで言った。
「む…無理、ひ、人が来たら…」
当然花純は抵抗するが、声はひどく弱々しかった。
男の手が無遠慮にラバーのパンティに差し込まれた。
クリトリスの上で振動しているローターは、絆創膏で軽く貼り付けられているだけで、パンティの弾力で尖りきったそこに押し当てられているだけだったので、男は容易にそれを引き剥がして取り出した。
パンティから抜き出したそれは、男の掌の上でまだブルブルと震え続けている。
男は優菜にそれを渡すと、再び花純のパンティに手を入れてくる。
今度は深く。
だが、ピッタリしたラバーに阻まれて、指を性器に入れるなどということは到底無理なのだった。
一度手を抜いた男は、今しがたの花純の懇願など何も耳にしなかったかのように、パンティの上部に手をかけて、力ずくでクルクルとそれを巻きおろしていく。
ガチャッ。
その瞬間トイレの鍵が外される音が狭い空間に鳴った。
出てきたのは三十歳前後かと思える女性だった。
男ひとり女ふたりのその場の異様な雰囲気を感じ取ってか、女が花純を見ようともしなかったのは救いだった。
それでもスカートを捲り上げた状態での裸の下半身は、その少し薄暗い空間ではあれ、女の目の片隅くらいには入ってしまったかもしれない。
そんな中でも、目の前の若い男は冷静で、花純の性器からローターを取り出した。
「おいで」
優菜に手を引かれてへっぴり腰でようやく個室へと入る。もちろんその後ろから男もついてきていた。
そこは身障者用のトイレで、三人入っても広さとしては全然余裕だった。
しかし、花純には一刻の猶予もない。
優菜に言われたとおり、ブラウスを自ら剥ぎ取るようにして脱ぎ去って手を出してくれた優菜に渡すと、既にひざ上まで下げられてしまっているラバーパンティを脱ごうとするが、これにまた時間がかかってしまった。
もう、本当に一刻の猶予もなかった。
「い、いいですか。させていただいて」
優菜にとも男にともつかずに問いかける。
「我慢出来ないなら仕方ないわね。そのかわりこっち向きでね」
洋式の便器の上に一度しゃがんで乗り、足を入れ替えながら体を半回転させて向き直ると、男はすでに優菜の手によってズボンを下ろされ、隆々とした男根が天を向いているのが否応なしに目に入った。
「奥様が出すものお出しになってから二人がかりでゆっくりご奉仕しますね」
男にそう言いながら、右手で包み込むようにして優菜はそれを擦っている。
「で、出ます」
花純はそう宣言した。
浣腸排便の際にそう言うよう躾けられているのだ。
それでも優菜の許可を確かめようとして見ると、いつの間にか優菜は手に小さなカメラを持って花純に向けていた。
これまでにも何度か経験のある他人に見られながらの排便ショーではあったが、いつものまずは液体が噴き出していくという浣腸排便とは勝手が違っていた。
固形物がいきなり肛門を通過していくその瞬間、花純は強いエクスタシーを感じて頭が真っ白になる。
開放される安堵感、マゾヒスティックな気分を充分満たしてくれる雰囲気、そして肛門の刺激。これまで、こんな状況では一度も感じたことのない強い被虐の快感だった。
人前での排便など人間が見せるものではないし、マゾとしての喜びどころか、精神的苦痛と羞恥以外の何も感じたことはなかったのに、今日はまったく違っていた。
「やっぱり美人でもうんちは臭いって言うけど、本当だね」
男に言われるが、今日に限っては羞恥心と同時に、そしてそれ以上に花純の官能を強くくすぐった。
「まだ出るの。溜め込んでたのね」
知っているくせに優菜が意地悪な言葉をかける。
もう出ないでやめてと思う花純の思いも虚しく、固形物が次々に肛門に尋常じゃない刺激を与えて通り過ぎる。
「カメラ見て」
いつの間にか若い男もコンパクトデジタルカメラを手にして、個室全体が光るような強いフラッシュを花純に浴びせる。
「足もっと拡げなよ。折角だから出したものも一緒に撮してやるから」
男の物言いは、先程までとは打って変わってぞんざいになっていた。
「うわーーっ」
「すごい量」
叫んだのは男で、言葉にしたのは優菜だった。
「どこにそんなに入ってたのかしら」
優菜が追い打ちをかける。それでも、どんなにそれが辛くても、排便はまだ終わってくれなかった。
涙がこぼれてくる。
「も、申し訳ありません」
花純はか細い声で言うしかなかった。
自らが感じたエクスタシーも恥ずかしい。
ようやくそれが終わる。
「ほら、出し終わったらあんたも手伝うのよ。玉舐めとアヌス舐め。わたしがおちんぽ楽しませるから」
前屈みになって、優菜が勃起した男根を口に含む。
洋式便器から床に降りる。流させてほしいと、願う間は与えられなかった。
トイレの床に裸の膝を直接つかねばならないのが何より辛かったが、そんなことは言ってられない。
ひどい格好のまま、玉舐めや時にさらに屈みこんで男の尻の中央まで舐めて協力したが、時間はさしてかからなかった。それだけ優菜が本気を出した時の技術は突出しているのだ。
喉奥まで入れる深いストロークは、絶対に自分には真似が出来ない。いっそ本当に歯を全部抜かれてしまえばこんなことも可能なのだろうか。
気配で男の射精が終わったのを感じて、いつの間にか固く閉じてしまっていた目を、ゆっくりと開いてみた。男の膝に手をすがり、玉舐めは続ける。
ゆっくりと、優菜の口唇が男根を再び飲み込みつつ迫ってくる。
目が合って、優菜の命じる無言の言葉が伝わってきた。
一番深くまで到達した優菜の口元から、少しずつ出されたばかりの精液が男根の根の部分から玉伝いにたらされてきて、花純はそれを啜りたてる。
万一、床にこぼしでもして、それも舐め取れと言われたらと思うと、一滴たりとも受け止め損ねるわけにはいかないのだった。
【七】二〇〇六年九月
岸谷花純
キャンパスパブ「天使牧場・名古屋」
「十一番テーブル」と店長が呼んだ、店の中央の一番前の席。そこに文字通りに本当に置いてあるテーブルの上に裸足で、いや裸足どころか裸で花純は立っていた。
少し前までは「六番テーブル」に居た。
店内には、ゆったりと縦にも横にも五席ずつ二十五の「テーブル」があり、それぞれビジネスワークに使うような大きなテーブルと、客が横になることも充分可能な幅二メートル近いソファーが対になって配置されている。
開店してまだ三日目とのことで、実際それらは全て真新しい感じはするが、店全体の照明は薄暗く、その全容はわかりにくかった。
十一番テーブルの客はスーツを着たサラリーマンだった。隣の六番テーブルの客は四二十代前半から五十歳くらいの中年客という感じだったので、それに比べればこちらの男は随分と若い。
スーツを着ていると言っても上半身だけで、下半身はズボンを下ろされ、あきらかに勃起したままとわかる男根に申し訳程度に白いおしぼりが被せられている。
上から見るとなんとも滑稽な感じの状態で男は待っていた。
サービスをする女性よりも先に、テーブルをひとつ横に移動した花純の乳房を見て、そして顔を見た男は、すぐに視線を逸らして斜め右の、先程まで花純が居たテーブルにあがった女に目をやった。
店内は薄暗いのだが、花純にもその隣の女にも、いやテーブルに立っている二十五人の女全員が真上からのスポットライトで照らし出されていた。
花純からは、サラリーマンの頭越しに、十二番テーブルの女のクリンとしたお尻が見えているし、その更に向こうの席の女もそしてその次もと、花純の列の他の四人の尻が、さらには両サイドの女達の様々な大きさの尻も、暗がりの中に浮き上がるように裸身が見えている。
「今日は、サービスは一切しなくていいので、六番、十一番、十六番で二十分ずつ一時間。それで客が入れ替わるから今度は反対に十六、十一、六番で一時間と、そこのテーブルの上を行ったり来たりしてればいいから。他の子は指名によってコンピューターが作った席表でぐちゃぐちゃに動くけどね。あとはマイクで指示された通りにすればいい」
優菜によって「支配人の大野さんよ。以前は東京店の店長だったの」と紹介された男に指示され、そして服を今すぐ全部脱ぐように言われた。
テーブルの上…。言ってる意味がわかったのは、実際その場に「配置」されてからだった。
「名前はどうしようかな」
と言う店長に
「本名でもいいんじゃないの。花純って…」
と返したのは、乃里子だ。
「カスミかぁカスミカスミ…。うーん、じゃいいか、スミスにしようか、スミス夫人。…はいじゃこれ」
ピンク色の蛍光ペンでその場で大きくスミスと書いた紙を、はいこれもと優菜がくれた紐のついたプラスチックのケースに入れて首からかける。
「おっぱいのちょっと下くらいにくるようにな」
明るい支配人室で、裸になった花純の乳房に支配人の大野が無遠慮な視線を投げかけてくる。好きなタイプの男ではないと、内心では眉を寄せた花純だが、態度に出すわけにもいかず、はいと返事をした。
何人か赤や緑の犬の首輪らしきものをつけている女がいる他は、全員、首から下げた名前のカードフォルダーそして足に履いているサンダル以外は、何も身につけない状態で店内を歩き回っていた。
スポットライトの当たっているところ以外は薄暗いのだが、逆に暗い客席で目が慣れれば、それなりに見えるであろう程度の照度を、そのスポットライトそのものが作り出していた。
三分ほどのインターバルを置いて、まもなく二巡目が始まろうとしている。
花純はテーブルを横にひとつズレただけだが、他の女たちは大幅にシャッフルされたようだ。
アップテンポな音楽がフロア全体に流れ出す。
それなりの大音量だが音色は美しい。
システムもスピーカーも、こんな場所に似つかわしくないくらいお金をかけているのだろうか。幼い頃から音楽に慣れ親しんできている花純は思った。
「お客様も女の子たちも、さあ本日第一ステージの第二クールに突入いたしましたぁ」
折角の音を台無しにするだみ声で、支配人の大野がそのスピーカーの中からがなりたてる。
「今回も五曲、総計十八分五十と三秒。まずはサービスの女のコたちは、軽くふきふき終わったら早速おっきくしてあげられるよう、お口でレロレロ。おっきく出来たら全体舐めて、玉舐めもして。お客様はソファー浅めに座ってくださいねぇ。両手はおっぱいモミモミいきましょう。当店の女の子たちはみんなおっぱい自慢、全員Dカップ以上。さあそして視線はどっちだぁ。さあライトアップもするよー」
音楽の音量に負けていない支配人の声が、店内にそんな掛け声をかけるのは、第一クールの時と全く一緒だった。
そして、ソファー側のスポットライトが、客の股間をいきなり照らす。
花純の前の男には、しっとりとした雰囲気を持つ人妻風の女がやってきた。女は長い黒髪を首の後ろ一箇所だけを留めて、肩から胸元を通って正座をしている膝下へ流していた。
首から下げていたネームカードは、花純の前に裏返して置かれたので名前はわからない。
床に正座している女と、テーブルの上に立ち上がっている花純とでは、随分と高さが違っているため、完全に見おろしている形だ。
「客は、花びら回転三人のうち、ひとりだけ指名が出来る。なのでタイミングとしてはどうしてもそうならない場合もあるかもしれんが、出来るだけ君のテーブルにはテクニシャンの女をつけろという指示だから、そのようにするので、今日はじっくり観察して勉強して明日からせいぜい役に立ってくれ」
大野はそうも言った。
ハナビラカイテン…。
耳慣れない言葉には戸惑うばかりだ。
もちろんピンクサロン、優菜が新幹線の中で言ったように、ここではキャンパスパブと呼ぶようだが、そんなところに足を踏み入れたのも勿論初めてだし、そもそもその存在は知っていたものの、いわゆる風俗と呼ばれている射精産業というものの構造がよくわかっていない。
ただ、六番テーブルの上に乗っての一回目にしても、曲が変わるごとにポーズの指示が来るものの、実際に客についてサービスしている女と違い、やはり少しゆとりもある。ちゃんと見ろと言われているから、サービスをしている女の照らされた口元を見るには見た。
でも、どんなに上手であっても、自分にはあれほど口の中に男根を飲み込むことがそもそも出来ないのだった。歯が当たるというのは如何に致命的なことであるのか、ということを思い知らされるばかりだ。
そうすると途端に気持ちが覚めてしまい、ポーズだけは指示に従いながらも別のことを考えてしまう。
客は最大一時間二十五人。
テーブルが二十五しかないのだからこれは当然で、しかも入口には「終日一万円のみ、指名料ほか全て込み」と看板に書いてあったわけだから、それがその文句のとおりだとすれば、一時間あたりの店の収入は最大二十五万円ということだ。
そこに女の子がテーブルの倍数以上の六十人近くも居て、男子従業員も花純がざっとみた感じでも十人は居る。
七十人だ。
しかも。
話を聞く限り、一時間に三人の女性がひとりの客について、その客は出来るのなら三回射精することを求められている。いや、三回射精して当然という合意みたいなものが、男性側にもサービスしている女性に対する店側にもある感じがする。
そうするとだ。
二十五万円を七十人で単純に割って、さらにそれを一回二十分なので三で割ると…。
ひとり一回の、売上はたったの千二百円にも満たない。
コレデハ、ナリタタナイ…。
そんなことを考えつついや計算までしつつ、一本目をこなした花純だった。
しかし、その一本目とテーブルを横に移動した二本目では決定的に違うことがあった。
客の視線である。
一本目の時は、なんだかんだ言って、指示されるポーズの通りこちらが性器の内側まで拡げて見せていても、相手がたいしてこちらを見ていなかったのだ。
こんな初めての特異な状況に置かれたが故に、暗い中でも相手が自分を見ているか否かは、はっきりとわかった。
そして二人目のこのサラリーマン風の男は、一人目の客とは逆に、全くサービスしている女の方は見ようともせず、ひたすら花純を見ていた。
顔を見て胸を見てまた顔を見る。
乳房を見る目線がいわゆるサディストの品定めの目線であったことも、花純を当惑させた。
自分を見てるか見ていないかなど、おかまいなく目の前に正座したロングヘアの女は、男の男根に舌を這わせている。口に含むということをあまりせず、亀頭を舐めまわし、舌で巻くようにしながら男根全体に唾をまぶして下まで行くとまた亀頭へ戻る。
自分の唾液で充分に濡れたところで、身体をさらに深く折り曲げて、玉へと舌を這わして舐め回しつつ、ふわりという感じで男根を右手で握って、上下させていく。
男の視線を顔や乳房に感じつつも、いつしか花純は女の男根奉仕に見入っていた。
やがてスピーカーから流れていた一曲目が終わり、スローな二曲目の旋律が流れだす。
「開店から三日目を迎えました、名古屋天使牧場においでいただいた親愛なるお客様…」
支配人のだみ声から一転して、ソプラノアルトの澄んだ声がスピーカーから聞こえてきて、花純は思わず音のした方向を振り返りそうになった。
もちろん、そこにあるのはスピーカーだけだと、すぐに気が付く。
「わたくしは、先ほどまでマイクを握っていました、当店支配人大野の上司で本部の寒河江と申します。このサロンの親会社の取締役副社長をしております。どうぞ以後お見知り置きをお願い申し上げます」
そんなあまり今来ているお客には関係ないような挨拶から始まったが、次の瞬間にトーンが変わる。
「はい、では第二ステージの二曲目。見世物女たちは、全員その場でしゃがんでしゃがんだら大事なところがお客様に丸見えになるように足を精一杯に開きなさい」
見世物。
その言葉に頭のなかで何かが反応してしまう花純だったが、すぐに言われた通りにしゃがんで、左右に膝を割った。
一気に顔の位置が下がったことで、花純の顔を見る男の視線が露骨になった。
足を開いているのに、すぐにそこを見ようとはしてこない。
次の瞬間、下から白い強烈な光がきて、目が眩み相手の顔も、それから相変わらず男の膝の間に屈みこんで玉や尻の方まで舐めながら、右手を上下させている女の姿も一瞬見えなくなった。
テーブルの中央が白く光ったのだった。
「昨日までの最初の二日間の営業では使用しなかった、初めてこのお店に導入したシステムをたった今作動させました。皆様の前にあるテーブルには、LEDのライトが仕込んであります。いま、真ん中に明るいランプがついて見世物女達の恥ずかしい性器が丸見えになりましたでしょうか」
ようやく目が少し慣れてきて、男の視線が自分の股間を凝視しているのがわかった。
「そして、皆様から見て左側。うっすらとブルーか赤に色が変わりましたね。これの意味は、皆様ご自身がよくおわかりと存じます」
花純の乗っているテーブルも、確かに花純から見て右側が赤い光が淡く点灯していた。真ん中の強い光に比べると文字通りほんのりとした淡い光だった。
「さあ。テーブルの真ん中の明るい光で、見世物女達の大切なところをじっくり見られるのは、この第二ステージだけです。このお店では遠慮は禁物です。じっくり穴があくほど見てあげてください。見世物の女の子たちは、手をお尻の後ろについて、お客様の顔の高さまで腰を浮かせて、もっともっともっともっとよく見えるようにしてみましょう」
なんという指示だろうか。
六番テーブルで支配人が指示した時も露骨な指示だったが、こんなにひどい見せ方があるのかというポーズを女が要求してきた。
だが、花純も手を後ろについて、腰を高く浮かすしかない。
全員しゃがまされたことと、いつの間にか上からのスポットライトが消されたために、あまり他のテーブルの女達の様子はうかがい知ることができなくなってはいるが、ほの暗い中に白い身体が浮かんでそれはそれでさらに淫靡だった。
二曲目が終わり、今度はアップテンポな曲に変わる。
「さて大野君、何処
かなぁ」
曲が替わっても、マイクを持っているのは女取締役だった。
一番左側の列から、男のマイクを通さない返事が聞こえてきた。
それと同時にロックテンポの曲の音が極限まで絞られて、不思議な静けさが演出される。
「はい、見世物の子たちはお尻をテーブルにつけていいわよ。LEDでちょっとだけ熱くなってるかもしれないけど、しっかりお尻をつけて座って、今度は足をMの字にして、手で性器しっかり拡げてお見せしてください。ご奉仕の女の子たちも、そろそろ第二ステージも中盤戦。特に一回イッてるお客様の連射は御指名料よりお手当て高いからね。でも五曲目ですよ。お客様もしっかり四曲目までは我慢して我慢して、楽しんで楽しんで、見て触って、なんでもありの当店のシステムをとことん楽しんでから発射してください」
あちこちから、熱っという小さな声が聞こえてくるが、花純は全然平気だった。言われたとおりのポーズを取り、性器に両手を持っていきラビアを左右にくつろげて男に見せる。平気なはずもないが、マゾとしては散々させられているポーズだ。
「はい、ちゃんとポーズ出来ない子は、このステージで辞めていただくわよ。代わりが十人以上用意してあるのはわかっているわね」
言うことを聞かなければ即刻クビとの言葉に小さなざわめきが店内におこる。
「さーて大野君」
女取締役が再び支配人を呼んだのと同時に「おーーっ」というどよめきが今度は複数の客の口から起きた。
同時に背後に強くて、そして面積の広い光が灯された。
「さあ、当店のもうひとつの売りはこの巨大スクリーン。今日のお客様はラッキーです。開店三日目、今日のこのステージがはじめてのお披露目になります」
どうやら後ろの光は巨大なモニターから発せられているようだ。
それが言葉の通りかなり大きなものであることはよくわかった。
「はい二十四番ミミちゃん。昨日までの二日間のインターネット投票でも、可愛さ部門一位、おっぱい部門三位、そして実際に来られたお客様からのテクニック部門の合計点数二位。総合堂々二位の女の子。みなさん見て下さい。確かに可愛いですね。あ、はいおっぱい、おっぱいもいいわね。大野君、もう一回お顔にしてくれる、はい、そうそう」
目の前の男の視線も、花純の肩越しに後ろのモニターに行っている。
「投票結果のおかげか、ミミちゃん今日もご指名が閉店の時間まで殺到しています。でも、この一回だけハズれて見世物に回ってもらいました。どうしてか今お教えしますね。はい、足もっと広げてね」
「ああ」とか「ほう」という同意のようなため息のような声が、いくつかの席の客から起こる。
「はい、男性の皆様もこの紐がなんであるか御存知ですね。ミミちゃん、実は昨日から月の使者が来ています。当店の新兵器のお披露目第一号に選ばれたミミちゃんに、普段あまり殿方が目にすることが少ないと思われることをこれからしていただきますね」
今度は息を飲んだように客からは声も出ない。
目の前の男も食い入るように花純の後ろのモニターを見つめていた。
「ミミちゃん、生理の時はおっぱいどう。その瞬間の前にもっとみなさんにそのきれいなおっぱいもう一度よく見てもらおうか。ご奉仕の女の子たちも、得意な子はパイズリしてもいいわよ。最低Dカップが面接の条件のウチのお店の実力をお客様に存分に発揮してちょうだい」
目の前の女も膝立ちになって乳房で男根を挟んだ。
「いつもより大きいです」
突然若い女の子の声、ミミという子の声がスピーカーに入った。
支配人が持っているらしいカメラにマイクがついているのだろうか。
「そうね。殿方の皆様。生理の時はパイズリが違いますよ。ガールフレンドや奥様に今度生理の時にやってみていただいては如何でしょう。もちろんそれが叶わぬ時はまたぜひ当店にいらしてください。そうね、今度から生理中の女の子は、インターネットでもわかるようにしよっか、生理パイズリ指名とか」
女取締役がノリでルールを変えていく。
「さあ四曲目に入ります。静かな曲なので少し音をあげるわよ。ご奉仕の子たちは適宜フェラチオに戻ってね」
女の言うとおり、ピアノのインストルメンタルのボリュームがあがる。フランツ・リストだった。
「じゃあ大野君、もう一度ミミちゃんの大事なところをみなさんにお見せして。さあ、そして抜く時は少し引いてね。そうそう、ミミちゃんどんな顔してそれを抜くのか、お客様にもよーくお見せしてください。はい、ライト当てて。うーん、カメラ二台あるといいわねぇ、明日用意しときなさいね」
おーーっという声の直後、何処からともなく拍手が起きて、それが全体に広がった。
なんと悪趣味な。タンポンを抜くところを客にモニター越しに見せたようだ。だが客の男たちは大喜びのようである。
これまでも確かにサディストで生理の時に性器をよく見せろという男は居たが、ノーマルな男たちの方が多いであろうこの店の客達は、もっと純粋に、そう文字通り見世物として楽しんでいるのだろうか。
そんなことを思っていると、目の前の男の視線が自分に戻ってきていた。
顔、乳房、そして広げている股間へと強い視線が移動していく。
目の前の女は、相変わらず男根を口に含もうとはせず、すばやい動きで口唇を上下させたかと思うと、舌を出してそれを律動させながら舐め回している。
そうしながら、左手は軽く男根の幹部を上下させ、右手は玉袋の部分をさすり続けていた。
ハードなフェラチオではないが、これは口の小さいのが難だと言われ続けている自分にも充分に取り入れられる技だと花純は思う。
五曲目で再びアップテンポな曲になって、ボリュームも最大と言ってもいいくらいになる。
目の前の女の口の動きがスピードを帯びる。
相変わらず口に含むことはなく、舌を細かく動かしながら、亀頭を集中的に責めている。舌の裏側まで使って、ぐるぐると回転させながら舐め続けた。
手は、左は玉の下側、右は幹部分の上下で、時々握っている手が亀頭の冠の部分にまで上がってくる。その手にもひねりが加わっているため、見ているだけでも気持ちが良いだろうなと思えた。
男の視線は相変わらず自分に来ているが、男根は最大限に力を帯びていて、今にも爆ぜそうだった。
次の瞬間に男の視線が外れ、僅かに上を見た。その時には女の口は、亀頭を覆いこんで、その口の動きから中で舌をぐるぐると回しているのだというのがわかる。そうしながら精液を受け止めるというのはどんな感じだろうか。右手はゆっくりと上下しつつ、左手は玉を包み込んでさすっていた。
五曲目が終わって、女がおしぼりを使って男根を拭き、射精された精液は口に含んだままで、席を立って行った。
男に見られながら、花純もテーブルから降りる。
その時、テーブルの真ん中の明るい光がすーっと消えて、代わりにぼーっと青色が点灯された。
見ているだけの時間は長いようで短かった。
わかったのは、大抵の女がそれぞれ個性的なテクニックで、きっちり五曲目で射精させることが出来ていることだ。
支配人が最初に言ったとおり、テクニックの上達者を花純の前に配置してきていることもその理由ではあるのだろう。
でも中には、そうじゃない子も居たということが店が閉店して、客が全員居なくなってからわかった。
閉店後の店内の隅に、六十人の女を並ばせて、真正面中央に支配人の大野とおそらくは時々スピーカーから声が聞こえた、大野の上司だという女が立った。よく見るとそれは先日歯医者で会った女、後で教えられたのだが、乃里子の実の母親だった。
「七十四番」
ひとりの女の番号を指名して呼んだのはその女、沙織だった。
「はいっ」
花純の右、三人目の女が返事をした。
女たちは全員が白か黄色の無地の膝上までのワンピース型のTシャツを与えられて着ている。
「五クール目第三ステージの男性に歯を当てましたね。こちらで確認したところ男性のものに間違いなく赤く剥けたような傷がありました」
「はい、申し訳ありません」
「残念だけど、今日で退職していただきます」
「えっ」
いきなり厳しい処分が口にされる。
「それから、四番、二十六番、五十五番の三名。成績的にリーチですから、明日も駄目なら続けてはいただけないと思います。もし今日で辞めたいのならお給料精算しますので申し出てください」
これまた辞めろということなのだろう。
この店としての採算云々は度外視と聞いたし、実際チラッと計算してみただけでもやればやるほど赤字になってしまいそうだ。
結局、利益ということ以外の目的がある以上は、見込みのないものは早々に切り落とされるのは致し方ないことなのだろうか。
一昨日開店したばかりにも関わらず、定数以上の女性も居るし、そこは当然なのかもしれないが、育成するために見世物係をしながら「見る」ことを強要しているにしては、早過ぎる決断のような気もする。
「はい、それではA班は解散。大野君から今日の明細を貰ってから帰ってください。お疲れ様でした。B班はちょっと残ってちょうだい」
全体が二つのチームだと初めてこの時知るが、すぐにそれが、外からこのサロンのために採用されたばかりの子たちと、「倶楽部」側から応援で来ている女たちという区分であるとわかった。
白いシャツの女たちだけがその場に残った。
全員にA四サイズの二枚綴りのペーパーが配られる。
花純にも渡された。
左上に岸谷花純と当然のように本名が書かれた紙は、どうやら成績表だ。タイムテーブルのようになっていて、花純の紙には、全ての欄のテーブル番号と思わわれる数字の横に「見世物」という文字が縦にズラリと並んでいた。その文字の右側は空欄だ。
サービスをした場合は、その右側に何らかの成績と、生じる歩合給が書かれているようだ、とチラッと隣の女の紙を盗み見てわかった。
紙を
捲
ると、二枚目は成績の順位表だった。
名前の横に付いている
★
印がどうやら今残されている倶楽部側から来ている女のことなのだろう。
人数的にもほぼ符合しているし、全部で六十人ほどが並ぶ一番下の自分の名前の左にも★がついている。そして成績上位十人のうち実に八人に★がついているのと、一位には優菜の名前があったからだ。
「今日のお仕置き対象の最下位は、岸谷…」
え、っと顔をあげて同じような白い紙を手にした沙織を見る。
「…は全部見学か。あかりさん。素人同然の女たちを含めての最下位、応援チームの中での点数ではぶっちぎりときては言い訳のしようもないわね。言い分聞く時間ももったいないから、はい、おっぱい出しなさい」
名前を呼ばれた女が沙織の前に進み出て、集まる前に着たばかりの裾の長いTシャツを自らの手で胸の上までまくり上げる。
ノーブラなので、形の良い乳房がすぐに少し緊張した空気に晒された。
「明日も明後日もあるからね。あまり痕つけられないわね」
「は、はい」
あかりという女の返事はか細い。
「手、頭の後ろ」
沙織が厳しい声を発する。
横に立ったスタッフらしき男から沙織に渡されたのは十センチほどの長い針だった。
おっぱいに刺すの、と花純は目を見開いたが、それは針の長さを見て、花純が一瞬想定したような、乳房を貫通させるのではなく、外側から内側に向けて両方の乳首を真横に刺し貫いただけだった。
「うううっ」
それでも女から苦痛の声が漏れる。
倶楽部側の女は、最下位だと折檻されるのだ。全体で最下位だからされているのか、そうじゃなくてもこの中で最下位だったらされてしまうのかはわからないが、さすがに厳しいものだ。
女への罰が、その乳首針刺し貫通で終わるのだろうと思った花純は、明日は我が身かもしれないと、自分が対象外とはみなされていないことを、渡されたペーパーに目を落として再確認する。
「ぎょえーーーーっ。お許しー」
突然あかりという名の女から絶叫が上がる。
見ると貫通した長い針の左右から黒と赤のコードが延びていた。
ふたつの乳首に一本ずつの長針。そこにそれぞれ二本のコード。
あかりと呼ばれた女は、乳首に電気を流されているのだった。
「どうだった」
深夜一時過ぎのホテルのエレベーターの中だ。
訊いてきた優菜に、花純はうんうんと頷いただけだ。
ただ見ていただけなのに、へとへとに疲れきっていた。逆に優菜は、ほとんどの時間、お店で言うところの「奉仕嬢」として男性客にサービスをしていたようだ。
先ほど貰った成績表でも、一番右側に書かれた数値が二位を圧倒している断トツのトップだった。
見世物をしていた花純のところにも、優菜は二度回ってきた。
「上手い子、いた」
「はい」
ようやく声に出して答える。
店を出て、ふたりでタクシーに乗ってホテルに帰って来たが、花純が声を発したのはこれが初めてだ。優菜もここまでは、運転手に行き先を告げた以外は黙っていたのだ。
それくらい、最後に見た電気責めの衝撃は大きかった。
スイッチボックスを手にした沙織は、何度か電圧を調整しながら、「明日は頑張るわね」
「明日も似たような結果だったら、次はクリトリスよ。それともおまんこの中に針刺して、電気しようか」
あかりはブルブルと震えながら、か細く首を横に振るばかりだ。
「返事っ」
と言われ、最後に女が振り絞った「はいっ」という声だけがやたらと大きく店内に響いた。
「見世物、って言われてたね」
「ええ。でも、見世物そのものでした。この手のお店って、何処でもあんな感じなんですか」
優菜は最後の折檻のことにはやはり触れてこない。
「ま、まさか。こんな店は、東京と名古屋のうちのお店だけよ」
やっぱり、と花純は思う。
「やればやるほど赤字になるお店なんて、普通はやらないわ。女の子だって、他のおんなじようなお店でお仕事したことあれば、自分のお給料がおかしいって、気がつくと思うわ。この手の店でこんなに給料絶対もらえるわけないって。ソープじゃないんだから」
「ああ、やっぱり」
今度は花純は声に出して言った。
風俗業でどのくらいのお金が貰えるものかということはわからなかったけれど、先ほど花純が計算してみたような、これでは女の子は相当な薄給じゃなければ成り立たない、と思ったのと実際は逆になっているということだ。
エレベーターが花純たちの宿泊している階に到着する。このホテルもうちの系列、と名古屋に着いてチェックインした際に乃里子に教えられていた。


