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奴隷牧場2 闇の相続人 · 第5部分

奴隷牧場2 闇の相続人 第5部分 (5/6)
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「そうよね。ちゃんと算数わかれば、わかる話よね」

「いえ。いくらお給料いただいてるか知らないですし」

長い廊下を歩く。部屋は一番奥の角部屋、スイートルームだった。

「組織から、十六人、それは貴女も私も含めての人数だけど、今日は入っているわ。まあ仕込みってところね。私達以外はしばらくこのまま働くことになる。私たちは十日間だけだけどね。それをひいてもテーブルの数の倍近く、女を用意してる。全員が時給五千円。お客からはひとり一時間に一万円しか入って来ない。この時点でほぼトントンよね、満席だとしてもね。でも、これにさらに歩合がある。まず指名料二千円。そして五曲目で射精させた場合のお手当。客が一回目だと三千円、二回目だと四千円、すでに二回逝ってる客をもう一回つまり三回目逝かせれば九千円。めぐり合わせもあるから、運が良ければだけど、マックス時給五に三足す四足す九で、一時間に二万一千、それに三つ全部自分の指名客だと六足して二万七千円稼げるわけよ」

ま、あくまで理論上のマックスだけどね、と優菜は花純の顔を見ながら微笑む。

店の採算計算はともかく、あんな重労働で一時間最大でそんなものなのか、と逆に花純には思えた。

「おかえり」

部屋に着くと、既に乃里子がピンクのバスローブを着て、ワインの瓶を片手にドアを開けてくれた。

「赤、ちょっとだけ冷やしといたから、乾杯しよ、お疲れ様の」

花純はすぐにもベッドに倒れこみたかったが、そうもいかないようだった。

「あら、おかえり」

たまご色のバスローブを羽織った熟女が、広い部屋の真ん中に据えられた応接セットのソファーに座っていた。

女同士でもその胸に目がいってしまうほど、胸元を盛り上げてる乳房が目立つ。

「ただいま、沙織ママ」

優菜が答える。花純は軽く会釈をした。

「ね、ママ。やっぱり優菜ちゃんが一等賞なのよね」

乃里子が促すように熟女に言いながら、ワインとコルク抜きを手渡した。

ミーティングに出ず、ひと足先に帰った乃里子は、成績表を見ていないようだった。最後にシャワーをしてきた自分たちよりも、沙織も早く戻って来ていた。

わたしワイン抜くの下手なの、と優菜にとも花純にともなく乃里子が言った。

「うふふ。そうねダントツよ、さすがね。あら、花純さんだったわね、どう、疲れた。見せてるだけってのもね、意外に大変なものよね。色々指示されるしね」

娘からワインを受け取った熟女は、テーブルにワインを置いて、コルク回りの装飾を剥がしつつ、花純を見て言う。

「優菜ちゃんはね、一発目九人、二発目三人、三発目五人だったのよ。サービスついたの十八人だからね、十八人中十七人抜き。特に三サイクル目はね、六人のうちひとりはベテランふたりが責めても逝かせられなかった客を最後の最後でコンプリート。残りの五人は全員二連チャン出来てる客に付いて全員三発目ミッション完了のパーフェクトよ、わかるかしらこの意味が」

「お客さんの一時間を三つに分けたうちの、その最後の三回目は困難そうなお客にばっかりつけられたってことね、お気の毒に。全部で六回のうち五回は二回逝っちゃってる客で、逆になかなか逝ってくれないお客が一人。完璧ね。それで、駄目だったのは」

乃里子が花純に聞かせるように説明を付け加えて、さらに優菜に振る。

「最終の二十三時の時の、真ん中。一回目で逝かされた後で、勃たせるのがやっとだった。お酒も積極的に召し上がってらしたしね。中年のおじさま」

「全部でミッション完了の歩合給だけで、八万四千円。今日初めて入ったわけだから指名はないけど日当三万五千円と合わせて〆て十一万九千円ね、払わないけどね」

うふふ、と沙織が妖艶に笑う。

全員のワイングラスに沙織によって赤い液体が注がれると、にっこりしてカチーンとグラスを重ねた。

引き込まれて花純も少し笑う。

「うちから入った子では九万円台が三人居たわ。プロパーの女の子では八万円台後半になった子が七人も居たけど、そこに固まってたかな。結構レベルは高い方なんじゃない」

指名の数で、サービスした人数にもバラツキあるしね、と乃里子が補足する。

結果の数字については、花純も成績表で確認していた。

「途中、一時間も休憩させてもらえるなんていいお店ですよ。昔居たお店は、夕方五時の開店から夜中の閉店までびっちりやらされてましたから。それも五分、十分でひとり抜きとかでぐんぐん回転。一時間に十人以上抜いたのもザラだったし。楽ちんですよ。しかも時給も歩合も高いし、休み時間の分引かれないみたいだし。まあ私いただかないから関係ないけど」

優菜がいたずらっぽい表情をする。

本人も自信満々に見えるし、その腕前はやはり相当なものなのだろう。しかもそれだけ働いてきて、疲れている素振りも見せていない。

乃里子の説明で、お店のシステム自体が女の子にとって、この業種の中では、かなりよい条件の方なのだなと、花純にもようやく理解が出来た。

「東京のお店も同じようなシステムなんですか。する女性と見せる女性が居る」

こんな話すら、お酒のツマミのようなものなのだろうけれど、三人が花純に色々説明してくれているというのを感じて、そんな質問を投げてみる。

「そうね。目的あってこうしてるからね。普通に考えたら不合理にも見えるようなことも、うちの会社にとってはこれ以上ないくらい合理的に考えられたシステムなのよ。亡くなられた前の会長の肝入りだったの、東京のお店。まあそれにしても、こっちの店はさらにお金かけて、いろんな仕掛け作ったけどね。名古屋はね、SMクラブという風俗発祥の地で伝統的にマゾ女も多いからと大野君が言うもんだからね」

沙織が答えてくれる。ワインのせいか目元がほんのりと赤くなっていた。

目的…。

未だまるでその全容がつかめていないこの「会社」と、そして女達。

「会社」と「倶楽部」はイコールなのか、そうではないのか。

気配がして横を見ると、乃里子と優菜がそれぞれワイングラスを片手に持ったままキスをしていた。

『ピンポーーン』

深夜の部屋に、音が響く。

こんな時間にまた誰かがやってきたのだろうかと思ったが、ルームサービスだった。

女たちは

健啖

なことに、これからまだ何かを食べようということのようだった。

【八】二〇〇六年十月

寒河江沙織 歯科手術

「お願いします、どうかどうか。どうか麻酔してください。絶対、絶対に耐えられません」

花純は既に半泣き、いや今や完全に泣いていた。

「うふふ。大丈夫よ」

弱虫ね、と思うものの、本人は本当に麻酔なしで全ての歯を抜かれると思っているのだ。歯科治療の経験があれば、その恐怖は想像できなくもないが、怖がる女などというものは、いくらでも目にしていて、そして実際には本人の想定以下のことしか起こらないとわかっていると、何か物足りなさを感じる沙織だった。

「どう、一本まずは試験的に抜いてみたら」

歯科女医の紗友里に言ってみる。

今日は沙織が助手代わりで、診療室には沙織と歯科女医、そして既に全裸にされて、手首、足首と四肢を拘束されている花純の三人だけだった。

十日間の名古屋でのピンサロ「研修」で、花純に出された結果は「不合格」だった。

二日目からはサービスにもつく女として普通に店に出た彼女の成績は、風俗嬢初体験としてはさほどひどいものではなかったのだが、その間に客に混じって入っていた十人の評価者の評価を得られなかった、というのが彼女に告げられた結論だった。

「明日手術せよ、というのが貴女のご主人からのご依頼よ」

最後の日の夜、ふたたび全員が集まったホテルの部屋で、沙織が花純に告げた。

早くても二ヶ月預けられた後にそういったことがあるのかと若干覚悟をしていたものの、あまりに早く簡単に下された結論と、あまりに早いその実施日に花純はただただ言葉を失った。

「沙織様、いえMの女性は自分がそうであるが故か、みなさん同性のMさんには厳しいですわね。わたくしもMのはしくれとはいえ、感心申し上げますわ」

どことなく

棘

の感じられる口調で、紗友里が反論した。

いや、それは反論なのかどうか。

単に女医という意識が言わせているだけかもしれなかった。

だが、先だってからこの女医との間が少しぎくしゃくしていることは事実だ。

勿論、今日の「治療」が抜歯などではなく、歯を全体的に削るだけだということを紗友里は知っている。

「不合格」という結果を申し渡すために、試験官が十人、客として混じっていたのだと花純には言ったが、それは事実ではなかった。

花純が客を逝かせられなかった回をピックアップして、それを試験官だったことにしてそう告げただけだ。少なくとも、初日を除く九日間で折檻されるような成績だった日は一度もないし、むしろ日を追うごとに慣れて成績は良くなっていっていた。

花純の夫は、全抜歯に今でもかなり乗り気のようだったが、それを説得したのはやはり隼人だった。いつでも出来ることを慌ててやる必要がないということを言ったようだ。

隼人は元々、女の身体改造には否定的な方だった。

以前、加奈という自分の女の豊胸手術にも最後まで反対して、おかげで加奈はそれを逃れている。

逆に、寒河江という隼人の同僚だった男を夫に持っていた自分は、普段の生活にさえ支障を感じるほどの豊胸をさせられてしまっている。重たすぎる双の乳房に肩こりだって半端ではない。

そんなこともなんとなく沙織の心に引っかかっているのだった。

「女は見世物、奴隷は商品」と完全に割りきっていた前会長と、そこが現会長の三田村隼人との微妙な違いなのかもしれないその先代の三田村会長から権力の移譲を受け、全てを相続したのは隼人の方だ。その相続の中には、自分に対する「所有権」も含まれていた。夫だった寒河江は今はモスクワに居て、もう日本に戻る気はないと言われている。

「削るだけなら、さっさとやってくれ。そして本人には全部抜くと言って、少しはおっかながらせておいて、ワシが今回は温情をかけたとよーく言って、その分さらにその削って歯が当たりにくくなった口での、奉仕のテクニックを完璧に身につける努力をせいとな」

折角訓練を続けるなら、歯を少し削ってもう少し

咥

えやすくしてみてはどうかというこちら側の提案に対して、そのように言ってきかせろ、と花純の夫は言ったそうだ。

「グズグズ泣かないで。往生際が悪い。歯と一緒にそのふたつの乳首も削り取ってあげようか。自分が裸にされているの忘れないで」

言ったのは沙織ではなく、紗友里の方だ。

やはりどうやらあまり機嫌がよくなさそうだ。

その紗友里が診察台の横のスイッチを触ると、花純の目の前の大きな鏡がサッと透明なすりガラスに変わる。

台の上の花純の開かれた脚に力が入るのがわかった。

夫が居ると予想したのではないか。

だが、花純の夫は来ていなかった。そこに居るのは、組織の幹部クラスの女達だけだ。

「さ、口開けて。器具入れるからね」

「やめてー、おねがい。あ、お、おっぱいもイヤ」

沙織がアルコールを染み込ませた脱脂綿で乳首を摘んだために、先ほどの紗友里の脅しが効いたのだった。

「ほら、口っ」

再び紗友里が怒りを含んだ声をかける。

「あ、ぎゃっ」

強制開口具が装着され、花純は言葉を封じられた。

紗友里が銀色に鈍く光る器具を手に取ると、その先端からキュイーンという独特の金属音が鳴る。

目をいっぱいに見開いていた花純が、今度はその目を硬く閉じた。

僅

かに自由が残る、開かされた両足の膝のあたりがガクガクと細かく痙攣した。

「痛かったら…」

歯科医が言うセリフを言いかけた紗友里が言葉を切った。

「痛かったら…、我慢してね」

コードのついた器具の反対側の先端が、口の中に侵入する。

ぶるるる、と花純の膝から太ももにかけてが痙攣して、股間から薄黄色の液体がチョロチョロと零れた。失禁したのだった。

「あら」

沙織は思わず声を出した。

そして顔を見ると、ガクリと首から力が抜けているのがわかった。

花純は恐怖のためか、失神していた。

いちいち失神されちゃうと仕事にならない、という紗友里の言葉で、アルコールを嗅がせて蘇生させた花純に、結局この時点で本当のことを話すことにした。

「うふふ。残念だけどね、今日は上の歯と下の歯をそれぞれ削って短くして、まずは歯が当たらないようにするだけよ。なので全然痛くないと思うわ。だからもう失神しちゃ駄目よ」

あわわわ、と言葉にならない声をあげた花純が、ガクガクと首を縦に何度も振る。

「動いたら危ないからね。特に顔動かすと、削らなくていいところ削っちゃったり、削り過ぎたり。その可愛いくちびるが裂けたりしたくないよね」

沙織はそう付け加えた。

花純は、目でわかったと告げてくるが、その目に自分が手にしたものを見せつけてやる。

そして、それをおもむろにはだけきった股間、それもクリトリスの真上に当てて、スイッチを入れる。

「じゃ、しっかりね」

今度は紗友里がそう言って、金属性のそれを再び口の中へ。

うぃーーんという電動マッサージ機の音と、キィーーーンという駆動音が、不協和音を部屋の中に奏でた。

ガラス越しにこちらを見ている女達のひとりに、こちらに入ってくるように合図を送ると、すぐに二列目の右端に居た女が反応して立ち上がった。電マを持たせるためだ。

花純の口から聴こえてくるのが、ギギギキッという音に変わる。削っているのだろう。

「ほら、動かないで。ほんとに危ないわよ」

本人にしてみれば、だったら首も固定してくださいよということになるのかもしれないが、まあこれとて見世物のひとつである以上は、それでは面白くないだろう。

生での中継こそしていないが、三台のビデオカメラで撮影していた。

「言っとくけど、歯だって神経があるんですからね。削り過ぎるとそれに触って、抜かれる以上に痛いわよ。だから顔動かさない」

紗友里がまた剣のある声で注意をする。

助手役の女が横に来て、沙織からマッサージ機を受けとった。

沙織のように自己の判断で、それの効果を弱めたりそこから離したりすることのできない女がそれを手にしたことで、花純にとってはますます地獄の悶絶が待っていた。

【九】二〇〇六年十月

三田村隼人

ピンクサロン「天使牧場・東京」

「申し訳ありません」

沙織が三つ指をついて、頭を下げた。

クリーム色の地に大輪の紅い花をあしらった和服姿だ。

報告は既に彼女の隣に座っている歯科女医から受けていた。

録画をしていただけで、生で中継していなかったのは幸いだったかもしれない。いや多少の怪我程度のことに、動揺するような会員など一人も居ないとは思うが。

「男性患者さんのものを女の子が口でゆるゆるフェラしているというのと、電気で強力に動いている振動を女性器に当てながらというのでは、似て非なることです」

普段治療中に衛生士たちが男性の患者にしているのと、今回花純にしたことでは全くレベルが違うと、女医は憤懣やるかたないという風情で言った。

「まあしかたがないだろう。手術に失敗して死んでしまったわけではないのだから。本来の目的は達したんだろう。それに沙織の指示というより、彼女の旦那が電マでも当てながらって言ってきてたらしいから、映像を後でチェックされる以上は現場としては仕方がなかったんじゃないのか」

彼女の主人である岸谷氏が実際どういう意向だったかなど聞いていたわけではないが、取り敢えずそう言って、なんとかこの場は紗友里をなだめた。

一週間前の歯を削る手術の際、電マの刺激に暴れた花純は、口の中の何箇所かを切って血を流したようだが、今はもう既に回復していると聞かされている。

そのため沙織の謝罪も形式的なもので、それは彼女が顔をあげる前から隼人にもわかっていた。

もし致命的なミスであれば、自分の前にこの女が服を着て出てくる筈などないのだった。何千発でも鞭でお仕置きして下さい、と言って、頭を下げるのではなく、両手を組んで差し出すだろう。

顔をあげた沙織は、早速本題に入った。

「取り敢えず本日、歯を削ったことと少し名古屋で訓練したことなどでいくらか技術も向上したと思われる花純、そして会長に殿方として是非味わっていただきたい、実際に奥歯以外の歯を全部抜いたイラマ用奴隷人妻美冬、そして最近ますます腕をあげてる元スーパーピンサロ嬢の優菜の三人。二十分ごとはお店のルール通りで、よかったら三回転掛ける二回ずつ二時間のコースで如何でしょう。もちろん折角だからお店で。今夜は他のお客にこの三人を付ける予定はありませんので、一回戦だけお店で味わっていただいて、後半戦は場所を変えて、三人同時なんなら乃里子でも加えて四人同時のハーレムなんてのもいいですわね。みんなを集めて先生の歓迎会もしなくてはですし」

「いいじゃないか。一度、何年ぶりかで店の視察も行こうかと思っていたんだ。まあ店では一回ずつでよかろう。その代わりその後半とやら俺の歓迎会は、目の前で特別ショーでもやってもらおうか。お前か瑞花が誰かを責めるというのがいいかな。まあ例えば…」

隼人はそこまで言って、言葉を切った。

沙織が合点がいったという目をしたからだ。

その後、今度は瑞花やリサと打ち合わせを済ませて、『天使牧場』に着いたのはもうあたりが暗くなってからだった。

十月に入り、日が暮れるのも早くなってきている。

二年ぶりに入った店内は、随分と様子が変わっていた。

一瞬、広くなったのかと勘違いをしたが、壁が全て鏡張りになっているからだった。

当時の店長は先日オープンさせた名古屋の店に異動になっているが、最近改装したというわけでもなさそうだから、その前店長が手掛けたのであろう。

既に営業が始まっているが、以前より随分と照明も明るくしている。

各シートの前のテーブルに、全裸の女がそれぞれしゃがんだり何人かは立ったりして、サービスを受けている客に乳房や性器を見せているというスタイルだけは従前と変わっていない。

ただ、かなり明るくしているのと、壁の鏡にもそれが映しだされているために、薄ピンク色に染まった女達の素肌が、やたらと目立っていた。

以前は、受付の外にある階段に長い待ちの列ができていたものだが、今は事前カード決済の完全予約制なのだという。

新店長は、誰が何処から連れてきたのか、えらく真面目そうな男だった。

店の目的は営利ではなく女の調達である。

隼人は、多分グループ総帥の来訪のために空けてあったのであろう、店内のほぼど真ん中の席へと導かれ、ソファーに腰をおろした。

「先生」

座るとすぐに白の夏用のセーラー服を着た娘が、スッと席の隣に滑りこんできた。

最初に来るのは花純だろうか、優菜だろうか、総入れ歯だという人妻は多分最後であろうというのが隼人の予測だったが、実際にはその三人の誰でもなく、隣に腰を落としたのは乃里子だった。

出会った頃は、こうしてセーラー服を普通に着ている本当の女子大生だった乃里子も、今ではすっかり大人の女になっている。

今夜この後、自分の口から彼女にとってびっくりするような発表をすることにしているため、この時点での登場に驚いた隼人だったが、それをおくびにも出さぬようにして、尋ねた。

「おお、どうした。なんでだ」

「ほんとはね、ママが来てお隣に座る予定だったんだけど、急にどうしても断れない人かなんかにご指名されちゃったみたいなのよね」

「ふーん」

音楽が店内に鳴り響き、お互いに顔を近づけて会話をしなければ、聞こえにくい。

乃里子からは、薄い香水だろうか、この女の持つ本来の匂いとは違う香りがしていた。

「店長変わったじゃないですか。その時にシステム少し変えたんですよ。まあ変えたのはうちのママなんですけどね。ママがその仕組とかの説明をする時間が、今日なかったからって」

自分が隣に来たのは沙織に変わって、説明をするためだと乃里子が言う。

「今までってお客さんが指名出来てたのは、サービスする女の子だったでしょ。実際にフェラチオしてくれる女の子三人のうちの一人だけを指名出来る。でも女の子はひとりのお客さんに全部で六人来るわけですよね。サービスの子と見せる子と。で、実際お客さんの要望もあったらしいんだけど、見せる方の子を指名してもいいことになったのね。裸やあそこをじっくり見たい子を指名してサービスの三人はお店任せにするわけ」

この話は初耳だった。

「でね。それだけじゃつまんないだろうから、ほらこんな感じで顔近づけないとなかなか声とか聞こえないでしょう。だからその場合に限って、命令伝達係ってのをもうひとり付けてあげることにしたんですって。それがこの隣に座る女の役目で、見せる方の子を指名した場合だけ女が全部で一時間に七人付くってわけ」

なるほど。

サービスをされている男は、目の前に立ったりしゃがんだりして身体を見せる女に、顔を寄せてポーズなどの希望を言うのは難しい。なので、隣にひとり女を置いて、その子を通じてポーズの要求などをさせようということか。

確かにそれならば、サービスを受けながらでも言葉を交わせる位置に隣の女は居るわけだし、そしてその女は自在に立ち上がるなりして、見世物役の女に伝達が出来る。

隼人は、同時に沙織の意図も理解出来たような気がした。

それは決して、そうした新しいシステムの「指名」を利用する客へのサービスなどではないだろう。元々店自体が、客の気持ちなんて考えて営業しているわけではなく、あくまでこの状況の中で、組織に適合する女を掘り出すことが目的なのだ。

「で、私はその説明を先生にしろとママに言われてのこのこ来たんだけど、でも私だってその役割ちゃんと果たすよ先生のために」

乃里子はそう言いつつ、長い髪を掻きあげてにっこりと笑い、そして隼人にねだるように口唇を寄せてくる。

隼人は苦笑いしつつ応じてやった。

「そうすると今日のこの後の余興は乃里子がなんかしてくれるということかね」

ここで三人の女のサービスを受けた後に、別の場所が用意されることになっているが、そこにこの娘の母親、沙織は来ないのだろうかと思った故の質問だ。

いわゆる今夜の重大発表は、瑞花とリサは既に知っているが沙織には敢えて話していないのだ。

「いいえ。ちゃんとママも来ますし、ちゃんと先生がお望み通りの生贄ちゃんが来て、ママにズタズタにされて、泣いて許しを乞うことになると思いますけど」

キスが短いことに、あからさまに不満の顔をわざとして見せた乃里子が、正面に目線を向けて敢えて隼人を見ずに言う。

暫く日本を空けていたし、その間に立場まで激変した隼人だったが、乃里子は外見こそ大人っぽくなったものの、本人自身はまるで変わることなく二十代の時の乃里子がそのまま齢を重ねているようだ。

表面は苦笑いしつつも内心ホッとしている隼人だった。

この場には来られなかったという沙織も、この後にはちゃんと来る段取りが出来ているらしいし、その時に自分が誰を鞭責めショーにかけろと言ったかも、彼女はちゃんと理解したのだろう。そして、それを乃里子にも告げてあるらしかった。

かかっていた曲が終わりになり、店内がざわつく。

女の子たちが一斉についていたテーブルから離れ、五分の間に準備をして、次のテーブルに行くのだ。

サービスをしていた子たちが一斉に化粧室に入るため、この店を作る時にもっとも気を使ったのがその空間だったと以前聞いたことを隼人は思い出す。

たった五分の間に次の支度をするため、というよりも、その五分の間に女達の仕事の「結果」をチェックするためという要素が大きかった。支度などというものは、うがいと簡単な消毒をするだけで、半裸もしくは全裸に名札を提げているだけだったり、ベテランの子や組織からヘルプで入ってる子が、隣の乃里子のようにセーラー服などの簡素で脱ぎやすいコスチュームを身に着けているだけであるため、身支度などというものとは無縁だからだ。

「このお店の仕組みもね、前より、もっとうーんとコンピューター化されてて、色々面白いんですよ。お客からうちの社員になった超〜オタクなエンジニアちゃんが次々にアイデアを出してシステム化してるんですって。色んなランキングがすぐ見られるし、もちろんインターネット経由でも見られるみたいで、ママはちゃんと毎晩チェックしてるよ」

会長という立場になって、いよいよ自分にこんな口調で喋る相手が少なくなった隼人には、乃里子の物言いが新鮮に感じられる。

だが、明日からその乃里子も立場が少々変わる事になる。実質は今日までと何も変わらないし、本人も変わらぬように心がけるかもしれぬが、まわりの方で劇的に変わってしまうかもしれないと、隼人は思う。

静寂から新たな曲が店内に流れ始める。

その昔、初めて「調査」という名目でこの種のいわゆるピンクサロンという名前の風俗店を回ったとき、それぞれの店で物々しくアナウンスが流れ「◯番テーブルには、◯◯番△△ちゃん」などとやっていたが、そしてこの店でも最初はそのようにしていたと思うが、今気がついたのは、そんなだみ声は一切聞こえてこないということだ。

「こんばんわ、はじめまして」

上半身裸で、サイドが紐になっているオレンジ色のパンティ一枚の若い娘が、隼人にそして隣にいる乃里子にもペコリと頭を下げ、目の前のテーブルにもなっている台へと上がり、姿勢よく気をつけをする。上向きの乳房の頂点にバランスの良い乳輪と、そして少し大きめの乳首が勃起していた。

首にかけた名札には「1番

翔」とある。

わざわざ組織のトップのテーブルに店側が付けてきた女だ。それなりに自信があるということではあろう。

誰が見ても、こんなところで乳を晒して立ってるのが不自然に思える美しさと若さを兼ね備えた娘だった。

しかも背番号一番、エースナンバーをつけているということか。

店内に流れていたピアノの旋律がフェイドアウトして、ドラムスの激しい音で始まる軽快なメロディーに変わった。

「よろしくお願い致します、会長様」

花純という、先日組織で預かることになった見覚えのある人妻が前に来て、膝立ちになって挨拶をした。こちらは既に全裸で、他の通路を歩きまわってる女達と同様、首から名札だけを下げていた。「スミス夫人」という文字が蛍光ピンクで書かれていた。ナンバーは何故か四桁、1539番。何か特別な意味を持たせているのだろうか。

確か年齢は三二十代の半ばだと聞いた気がするが、背筋を伸ばした時の乳房は二二十代のものと言ってもいい綺麗な丸みを保っている。そしてなんといってもサディストから見て、ひと目でマゾだろうという雰囲気を漂わせているのがよかった。それは人妻のしっとり感などという言葉では代替出来ない独特の雰囲気だった。最初に見た時には、そこまでの印象を持った記憶もないので、こちらで預かっている間に身につけたのかもしれない。

首からそのネームプレートを外して、テーブルに置いた花純が膝立ちでにじり寄ってくる。

「失礼します」

今日は自分のためだけに呼ばれていると聞いているが、名古屋の店のオープンに際しても店に出させたらしいし、この店にも何度か出ているのか、その仕草にぎこちなさのようなものは全くなく、ごく自然に隼人のズボンのベルトに手をかけてきた。

正面を見ると、テーブルの上の女は気をつけの姿勢から手を頭の後ろに組んで上半身を音楽に合わせて揺らし始めている。そしてそれは、自分の目の前の女だけではなく、店内で同じ状況にあるいわゆる「見世物」と呼んでいる女達共通の姿勢だった。

もちろんこんな場合の挙動さえも、店側の女に対する評価のひとつなのだとは、やっている当の女たちは誰も知らないだろう。

花純の手の動きに合わせて、腰を上げてやり、ズボンを下ろしやすくさせてやる。脱がせたと同時に、花純はいきなり半勃ちのそれを根本まで口に含んで舌を動かし始めた。

巧みに舌で亀頭全体をねぶってくる。

組織で預かって、実際に「奴隷フェラチオ」を仕込んだのが元々ピンサロ嬢あがり、それもナンバーワンのテクニックを誇っていた優菜なわけだから、その技が伝授されていても何ら不思議はなかった。

花純は勃起が充分とみると、一度口を離し、舌を裏筋づたいに小刻みに動かしつつ根本へと向かう。

狭い空間ながら器用に姿勢を変え、これまで床に正座をしていた状態からお尻を後ろに突き出し、四つん這いになって隼人の膝下に屈みこみ、玉舐めに入る。同時に右手でそっと亀頭を包み込むようにしてサワサワと指先を動かしてきたのも優菜仕込みだろうか。

「先生、彼女のパンツ脱がせていいですか」

横で、翔という名の女と自分たちの仕事の成果でもある花純の様子を交互に見ていた乃里子が、指で翔の股間を差し、パンティを外すように命じた。

女は頭の後ろで組んでいた手を一旦腰の部分にやり、右、そして左とオレンジの紐を解いた。同時に足を開くと、ただの布切れと化したものが、ハラリと下に落ち、背中を凹ませ、低い姿勢で四つん這いになっている花純の背中に着地する。

今や花純の舌は、玉と尻の狭間を往復していた。舌の動きとともに、さりげない手指の動きが素晴らしかった。

乃里子が照明によって妖しく光るオレンジ色の布切れに手を伸ばす。

「ほら、先生」

乃里子が拾ったパンティの内側のそこだけ二重になっている白いあて布部分を見せる。

「身体見せてるだけで、こーんなに濡らしちゃって」

乃里子の声は翔にまでは届いていないとは思うが、まっすぐ正面を見据えているとはいえ、その視界に乃里子の動きが入るのであろう。僅かに翔は視線を動かした。

店内に流れているメロディーの一曲目が終わる。

「まず肛門だ」

乃里子の耳元に隼人が小さな声で命令を出す。

言った後で、最近こればっかりかなと思う。先日も自分自身が同じ命令をされた乃里子もそう思ったかもしれなかった。

それでも乃里子がスッと立ち上がると、その伝達を聞こうと翔が上体を屈めた。

花純は四つん這いから再び正座へと身体を戻しつつ、口と手の位置を巧みに入れ替え、右手は今自ら充分に濡らした玉をさすりつつ、中指か人差し指かはわからなかったが、尻まで一本を延ばしそこにも自らの唾の濡れをまんべんなくまぶすように撫で回してくる。既に舌による亀頭舐め回しもはじまっており、その口と手のバランスは絶妙だった。

歯を削ったためなのか、それが当たるということも今のところない。

翔はくるりと半回転すると、脚をテーブルの上で更に開き、不自由な態勢ながら少しお尻をこちら側に突き出した状態で、両手で尻たぼをくつろげて、ふたつの穴を丸見えにするという屈辱的なポーズを自らしてみせる。

店内の他の見世物の女達は、特に命令がないためか、翔を除く全員がしゃがんでしまったようで、ひとりだけ立ったままという状況は、他の席からも晒しものになっている筈だ。

といっても、この席より前の客は滅多に振り向くことはないので、後方に位置する席からだけだろうが、店内が充分に明るいために、かなり目立っている。

M性も充分ということであろうか。その屈辱的なポーズにも興奮を覚えるのであろう。翔の性器はあきらかに露で満ち、太ももの内側にそれが垂れて流れてきていた。

「よし。しゃがませて、顔と乳をもう一度よく見せるように言え」

乃里子に命じつつ、自らは花純の左の乳房に手をやって、その弾力を確かめると、少し強い力で乳房全体を揉み込んでみる。花純の表情は僅かに歪むが、奉仕の動きに寸分の影響も及ぼしはしなかった。

さらに力を加えつつ位置を変え、親指と人差指でその手の中にあった尖った乳首も摘んでみる。

翔の方は、ようやく店内の他の女同様二曲目のときに見世物女たちに要求されている、性器が見えるように足を開いてしゃがみ、手をふたたび頭の後ろで組んで、顔と乳房、そしてその状態での性器を見てもらうというポーズを取った。

胸を半ば反らせているため、乳房はつんと上向きになっている。

今隼人が直接触っている花純に較べて一回り小さい感じはするが、乳輪の大きさや乳首のサイズなど、乳房の見栄えは一級品といえる。

そして、見世物役の女は、身体を見てもらいつつ、座った瞬間からは奉仕をしているサービス役の女の口元や所作を見て勉強せよというのがこの店の開店以来のルールで、翔もまた花純の口元つまり隼人の勃起しきっている男根を見たのだが、途端に目を少しだけ見開いて、口の動きだけで「おっきい」と驚いて見せ、口元を綻ばせた。

再び隣の乃里子が立ち上がり、翔の耳元に口を寄せる。

店内に流れる曲が三曲目に変わった。

乃里子に指示されたのか、翔の左右の脚がさらに開かれる。身体が柔らかいのだろう。その開き具合は百八十度に限りなく近づく。

「彼女、天然らしいですよ」

先ほどから、翔がパイパンなのはわかってはいた。だが、何しろその部分に毛のない女など日常的に見ている隼人には特に違和感もなかったのだが、そう言われると凝視してみたくもなる。

脚をMの字に開いただけの翔のそこは、そのポーズをしてもなお、ひと筋の線になっているだけで、先ほど後ろから肛門と同時に拡げられて内部のピンク色の膣壁を晒したのとは、また全然違った眺めだった。

「で、そちらは如何ですか」

ふたたび耳元に口を寄せて、乃里子が花純の方に目配せをした。

「でも先生、このオクサマは絶対お買い得よ。これまでフェラが下手っぴだったというだけで、その理由だって口が小さくてなかなかちゃんと奥まで入れられないだけだったんだし。でも、そんなことを差し引いても余りあるくらいドMだと思う。しばらく一緒に居てみて、これは自分たちと完全に同じ匂いのする女ってわかったもの。私だってママほどじゃないけど、色々とわかるようになってきたのよ、これでも」

確かに乃里子の言うとおりなのだろう。

この女が醸すマゾとしての雰囲気は、ただ単にフェラチオという行為を通しても、その没頭ぶりと真剣に男の快楽のために持てるものは全て使って楽しませようとする姿勢に、マゾとして天性のものがあると思えたし、乳房に加えられる痛みも快感に昇華出来ていると思える点も含め、充分に「極上」という評価を下せるものだ。

そんなことを思いつつ、再び手をかけている乳房全体を強く、あきらかに苦痛が感じられるほどに強く、揉み込んでみる。

そうしつつ顔を見てやると、痛みに目を一瞬閉じたものの、すぐに濡れた目線を合わせてくる。

マゾの目だった。それも相当重度の。

「うん、悪くない。乳の感触も弾力があっていいし」

「でしょでしょ。おっぱいもなんかいい触り心地なんですよね、わかります。ここじゃぁおまんこテストは出来ないけれど、あとで先生のでずぶずぶとお試しになるといいわ。ママが今夜先生の前でショーをするって張り切ってたから、その時にでも試されたら如何ですか。なにしろこればっかりは女同士ではどうにも調べようがないんだし」

曲が四曲目になる。

翔は指示のないままだったが、言い渡されている全体的な現在の店のルールなのだろう。しゃがんでる状態から、尻をテーブルに直接つけて座り、開脚はそのままで、両手を股間に持ってきて、左右の中指と薬指を使って性器を拡げ、右の親指でクリトリスの皮を剥いて小ぶりのピンクの塔までも露わに晒して見せた。

花純の方は再び隼人の股間深く潜り込み、玉を丁寧に舐めた後に尻穴を舌先で刺激してくる。もちろんすかさず右手は口と交代して亀頭をさする。

一時間ちょっとの間に、三人の女に奉仕をさせ、別の三人の女の裸を凝視できる。それがこの店の客へのウリであり、女達には男を毎回逝かせろ、それも早くても四曲目、出来れば五曲目の間に射精させるようにしろと指示が出ている筈だ。

まだ最初の一人目である。

まして隼人には今日はこの後の愉しみも用意されていた。

店のコンセプトはともかく、既にそんなに若くはないわけで、毎回などとても射精してやるわけにはいかないのだから、順当ならばここは我慢すべきところだろう。

ましてや百戦錬磨の隼人にとって、一時間や二時間、女に奉仕をさせるのは、半ば当然のこととして、その持続力や耐久力にもまだまだ自信があるのだ。

それでも。

この女の口に出してやろう。たった二十分のフェラチオであるが、そのこと以上にこの女が射精を受ける時にどんな仕草をするのか、どんな快楽を自分にもたらすのか。乃里子と優菜で仕込んだという極上奉仕の最終地点を知りたくなったのだった。

久しぶりの店の雰囲気にも少し酔ったのかもしれない。

花純。翔。そして横に居る乃里子。店内あちこちで同様にフェラチオ行為が行われていて、さあ発射させるぞという、サービスしている女達の濃密な気配も充満してきている。

五曲目での射精。

そのためにより確実な方法を取ることにした。

右隣で翔を見、また隼人の股間にいる花純にも目をやったりしている乃里子の髪の毛を掴み少し引き寄せる。

「えっ」

と声に出して隼人の顔を見た乃里子だったが、すぐに察して自らその髪をかきあげる仕草と同時に、花純の右手を下に追いやるようにして、乃里子が勃起を口に含んだ。

花純の手の動きも悪くはなかったが、流石に隼人のものに慣れている乃里子の口と舌の動きは的確だった。

察した花純の手は、男根の裏筋の少し下あたりを握ったり開いた手の指の腹で擦ったりという動きに変化した。

もちろん尻舐めも的確に続いていた。

翔はあっけにとられたような顔をして、それでも股間にまとわりついている二人の様子を見ている。

隣に「指示役」という三人目の女を置くという選択肢を設けてはいるが、その女がサービスに加わるという余地は本来ないだろう。あくまで建前はともかくとして、店としては女達の資質がわかればよく、そして男にいや男根に奉仕するという技術が向上すればそれでいいのであって、客の快楽や満足は、二次的な結果として現れるものに過ぎないのだ。

もちろん女性たちには、男を最大限満足させろ、と指示はしているであろう。でも店としては、そのために三人目がサービスに加わることは店の目的に対するデメリットこそあれ、メリットなど何もないのだから。

いつの間にか、乃里子の右手は玉に添えられ、隼人がもっとも好む動き、指先で掃くような動きをしている。二人の女のふたつの口、ふたつの右手が充分な快感をそこにもたらし、それを正面から凝視しているもうひとりの裸の女の濡れた目、そしてその女が自らの手で拡げて見せつけているピンク色もまた刺激的であった。

曲が五曲目に変わった。

隼人は再び乃里子の髪の毛を掴んで引き寄せる。

察して、乃里子が名残惜しそうに男根から口を離し、今一度先端にチュッと音をたててキスをすると、定位置に戻って来る。

いや、定位置よりもだいぶ隼人に近づいて、密着して座り直していた。

花純もそれを察して、いよいよフィニッシュに向け座り直し、改めて男根を先端から口にした。

「先生…」

口奉仕をさせられたことで、一気にマゾの気を濃密にした乃里子がせがむのに応えてやり、口を重ねて舌を入れてやる。乃里子も積極的に舌を動かし、口の中にも快楽への装置があることを互いに確かめるような濃厚なキスに応じてやる。

花純は口の動きを火急にしつつ、今度は左手も加えて、男根胴部にまとわりつかせ、時に強く握りながら捻りを加えつつ、口の動きと同時に咥えこんでいる口唇のすぐ下を上下させる。右手は乃里子が先ほどしていたのとほぼ変わらぬ動きで玉を刺激しつつ、指一本だけは先ほどまで自らの口で充分潤した尻穴に円を描くように刺激を加えている。

隼人は、花純のその巧みな連動を愉しみつつも、神経を集中させる。

「オクサマには、フィニッシュもきっちり牧場流を仕込んであるから、イッてあげて、先生」

口を耳元に持って来た乃里子がそうささやき、そのまま耳たぶから耳の中へと舌を這わせてくる。

牧場流とは、射精の瞬間の動きの事で、口唇、舌、そして両手の動きを総動員して最後の一滴を喉で受け止めるまで一定のリズムを保ち、最後まで楽しませるという奴隷のフェラチオ奉仕の極意の一つであった。

翔は、と見るといつの間にか、両手での性器開きはそのままに、右手の親指で自ら剥き身にしているクリトリスの先端を同じ手の人さし指で擦っている。

見世物役の女にオナニーを命じているとは聞いていなかったので、乃里子に目で翔を見るように合図をすると、乃里子の方でもそれを見て「あらっ」という顔になった。

翔自身は、訓練を受けたことで技術が一気に向上し、傍目にも巧みになったのがわかる花純のフェラチオを食い入るように見つめていた。手の動きはむしろ無意識かもしれない。

射精が近いことを、口にしている男根の脈動で感じ取ったのか、花純は一気に責め立ててくる。

「んっ」

隼人は、それを花純のコントロールする流れにまかせることで、その瞬間を無事に迎え、花純の口内に放つ。

おおこれは久しぶりにかなり気持ちがいいぞ、とその時に思えるのは、男としての征服欲の充足にも繋がったし、実際射精を受け止める花純の、口の上下や、特に両手の動きは相当に巧みだった。

文字通り最後の一滴まで絞り、動きを徐々にスローにするという、元ナンバーワンピンサロ嬢優菜仕込みと思われる、奉仕の仕上げまでパーフェクトだ。

「さすがだ。お前たちに預けてみるもんだなあ」

乃里子の耳元に囁くと、にっこりと微笑みながら、「歯、削ったのは断然大きいとおもいますよ。先生のおっきいのでもご満足いただけるのはやっぱり」

と、囁

き返してくる。

翔はとみると、上気した目でちょうど射精後の男根が花純の口から解放されて、まだ力が漲った状態であるのを目で確認したといったところで、ふたりからの視線にハッとしたように顔をその視線の方にあげてきた。

そしてその股間で動かしていた指をようやく止めると、身体をピクリとさせた。

「こっちも、なかなかの

上物

かもな」

再び乃里子がにっこり笑う。

「お店明るいのに、見せながらオナニーしちゃう子は初めて見ました」

「てっきりそういうルールに変えたのかと思ったよ」

「うふ、まさかぁ」

こちらの声までは聞こえていないと思うが、翔は自分のことを言われているのがわかったのか、小さくイヤイヤと首を横に振る。それでも性器を拡げている手に緩みはなく、丸見えになっている内部のピンク色がいまだ僅かに蠢いている。

五曲目が、終わった。

花純が膝立ちになって、口を開く。

口の中いっぱいに白い液体を溜めていた。

「先生…」

乃里子がまた耳元に口を寄せてくる。

「そういえば、彼女の旦那様が彼女に仕込んでることで、これはいいかもということがひとつあるの。今まで考えたこと私たちもなかったんだけど」

そう言いつつ、乃里子は隼人の手を取り、花純の喉元へと導く。

隼人はなんとなく察して、柔らかい首筋に両手を当てて、親指で僅かに喉のところを押さえつけて、締めるようにしてやると、口を閉じた花純は口の中の液体をゴクリと飲み込んだ。

喉の動きで、精液がそこを通って彼女の胃へと落ちていくのがはっきりとわかる。

一回では飲みきれなかったのか、二度まるで音が聞こえるかのような飲精と同時にピクンと身体を震わす人妻。

「しかも、飲む瞬間にイクの。このひと」

「先生がお気に召したようだから、あの翔って子。もうココあがらせるように言ってきたわ。正式にお店の奴隷にしてもいいけど、当面はリサさんの下で先生の秘書させてもいいんだし」

女達と一緒に一度席を立った乃里子が、まっ先に戻ってきてそう言った。

インターバルの間は、柔らかなピアノのインストルメンタルが流れているだけなので、声もよく聞こえる。

そのため、乃里子は声のトーンを落としたので、逆に隼人の方が顔を近づけたくらいだ。

「もちろん、よく言い含めてってね」

いつまでも十七や二十一歳の小娘のままという筈がないのは当然だが、今や組織のナンバーツーの立場を手にしているも同然の沙織の娘として、内部でもそれなりに地位を確立してきているのかもしれなかった。

乃里子が、先ほどの翔という女を『ピンクサロン天使牧場』からは、引退させて、正式に組織の女にすることを店長に告げて来たというのだ。勿論、彼女の事情もわからぬから、そうすんなり行くものかは不明だが、少なくともその乃里子の判断と素早い行動に、隼人は驚かされていた。

考えてみれば、自分がドバイに行っている間も沙織や瑞花を中心に動き続けてきた組織の構成を、改めてちゃんと確認してやること、そしてそれを周知させるために、まずは自分が認知したものとして、きちんと発表しなおすべきなのかもしれない、と改めて隼人はそんなことを思った。

まずはその前に今夜の発表だ。

そのこともあって、乃里子の義父でもあり、かつロシア地区の責任者として行ったきりになっている、寒河江とも連絡を取らなければなるまい。

前会長の三田村勇輔の「人事」でロシアへ渡った寒河江とは、それっきり直接の連絡を取っていなかった。三田村が当面ふたりが連絡を取り合う事を「組織のため」と称して禁じたからだった。

まだ隼人が

掌握

していない様々な事情もあったのであろうが、自分がトップになった以上はそろそろそのあたりのことも知っておくべきなのかもしれなかった。

行方不明になっているわけではないのだ。いや、それどころか組織が提供している奴隷の中にロシア人や他のヨーロッパ諸国の女と思える白人の娘が確実に増えているのは、彼の着実な成果なのだろう。

ドバイに次ぐ、いやひょっとするとそれ以上の拠点として、ロシアの何処か、モスクワなり別の都市なりに、それなりのものを築いていると思われた。

長年、その手腕を競ってきたライバルであり、敬愛してきた先輩でもある。

彼の現況や、何故一時的なものではなく恒久的にロシア担当の責任者となって「永住」することになったのか、そしてまた、一時的にでも帰国させることが不可能な理由があるのか、沙織ならきっと詳しく知っているであろう。

奴隷牧場2 闇の相続人 第5部分 (5/6)
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