『女郎蜘蛛』はアダルトゲーム会社PILが1997年に出したアダルトゲームシリーズである。昼間は屋敷を歩き会話イベントをこなし、夜間は女たちを縄で調教する——緊縛が調教の中心で、マルチエンディングは調教の結果と選択肢で分かれる。本稿では1998年のWindows版を軸に書く。大正の暑い夏、帝大生が北畠家の書生として入り、本当の仕事が女たちの縄調教だと知らされる話だ。
PC-98から真伝まで
1997年1月、PC-98版『女郎蜘蛛〜呪縛の牝奴隷達〜』が発売された。2007年、コアマガジン『遊べる!!美少女ゲームクロニクル《PC98編》』付録DVDに収録されている。同年9月にはベストセラーズのBESTゲームノベルスSERIESで、楠木誠一郎による小説版が出た。1998年4月13日にWindows版『女郎蜘蛛〜呪縛の牝奴隷達〜』が発売され、2002年6月21日に『女郎蜘蛛〜真伝(まことがたり)〜』としてリニューアルされた。
ゲームパートは昼と夜に分かれる。昼は世界内を移動して会話イベントをこなし、夜は女性キャラクターへの調教を行う。調教は縄による緊縛が中心だ。ヒロインの調教状況はパラメーターが明示されるが、主人公の性格は隠しパラメーターである。当初は純情だった主人公が、自分の意思を守るか、状況に流されて邪悪になるかで、エンディングが大きく左右される。調教の数値は見える。鉄哉がどこまで腐ったかは見えない。プレイヤーは女たちの縄の進み具合を見ながら、自分の手がどれだけ汚れたかを後から知らされる。
大正の北畠家と書生の仕事
時は大正、異常に暑い夏。高額な収入につられ、仕事の中身をはっきり知らされないまま、帝大生・蒲生鉄哉は北畠家の書生として働くことになる。本当の仕事は、北畠家の女たちを縄で縛り、調教することだった。資料整理の住み込みバイトとして門をくぐった学生が、夜になると長女・次女・未亡人を縄で責める。家の乗っ取りを企む後見人、亡き当主の影、実子でありながら使用人扱いされる蝶子。屋敷の人間関係そのものが、調教の舞台装置になっている。
蒲生鉄哉は主人公で、帝国大学の学生。住み込みの資料整理のアルバイトとして北畠家を訪れる。北畠蝶子(声: 岡田まみ、身長157cm、B77/W56/H80)は長女。実子でありながら初等教育以外は受けさせてもらえず、周囲からほぼ公然と使用人とみなされ、とくに伊佐治と弥平から粗雑に扱われる。北畠茉莉絵(声: 神崎ちひろ、身長157cm、B85/W58/H84)は次女。父親を慕い、彼の死と同時にアメリカから帰国する。愛犬ロシナンテを飼い、姉と違って天真爛漫で表情が豊か。北畠未砂緒(声: 紫苑みやび、身長164cm、B92/W63/H85)は未亡人で、蝶子と茉莉絵の母。伊佐治を愛人にしている。
中畑伊佐治(声: 一条和矢)は後見人。卵と蘊蓄が好きな詐欺師で、会社をいくつも作っては悪質な手口で客を集めて逃げる。本作では北畠家の乗っ取りを企む。中年で独身。蝶子を心底嫌い、未砂緒には本気。茉莉絵からは嫌われている。「伊佐治」の名を嫌い、「正義(まさよし)」という通名を使う。那賀川義男(声: 金剛一恵)は当主・清邦の腹心で、蝶子を心配する。北川弥平は忠実な執事、元軍人。物腰は丁寧だが蝶子にだけ冷たい。松川よね(声: 三島由紀)は女中。無愛想だが蝶子を案じる。北畠清邦は当主。未砂緒の婿養子として家を盛り立てた実業家であり医学者でもあったが、研究所の火災で負った傷が元で死ぬ。
スタッフと関連
原画はさくらめーる、シナリオは丸谷秀人。PC-98版のイメージソングは「こ・わ・れ・も・の〜蝶子のテーマ〜」と「女郎蜘蛛」で、どちらも歌は北畠蝶子。『女郎蜘蛛〜真伝〜』の主題歌「うたかた」は、作詞が丸谷秀人、作・編曲が細江慎治、歌が江幡育子。小説版『女郎蜘蛛 呪縛の牝奴隷達』は1997年9月、ベストセラーズ刊(ISBN 978-4584153369)。原作PIL、著は楠木誠一郎。コアマガジン『遊べる!!美少女ゲームクロニクル《PC98編》』(2007年10月、ISBN 978-4862522375)の付録DVDにもPC-98版が入っている。PILの後年作『仏蘭西少女』には、中畑伊佐治と北畠蝶子が再登場する。大正の屋敷、隠しパラメーターの邪悪化、夜間の縄——PILの緊縛ゲームとしては、調教の昼夜分割が『女郎蜘蛛』の骨格である。書生として入った帝大生が、夜ごとに女を縛り、昼は会話で関係を動かし、自分の性格まで隠し数値で腐っていく。その二重構造が、シリーズを『学園ソドム』などPILの他の鬼畜作から分けている。











