秘蜜夫人 天上の雪肌 第三章 黒い下着の令夫人 ~ 第四章 償いの口唇愛撫 (2/5)
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第三章 黒い下着の令夫人
1
「まっ、待って下さいよ、遥香さん」
あわてた聖彦が止めるのも聞かず、遥香はどんどんシャツのボタンを外していく。
聖彦にすれば、本当はうれしい驚きであり、強烈な刺激でアドレナリンが体内にあふれ出しているのだが、ただ間抜け顔して眺めているわけにもいかなくて「もうそんなこと、やめて下さいよ」とうわべだけの言葉を口走っているのだ。
夫人のシャツの前が開くたびに、ハッとするほど白い柔肌がまばゆくのぞき、生汗が背中を伝う。
さらに官能的な黒のブラもちらついて、その下に包まれているたわわな隆起の一端がかいま見えた。聖彦の股間はそれを見てまた激しく反応する。
が、一方では防衛本能のスイッチも作動していた。
(ちょっと話がうますぎる。遥香さんて、どういう人なんだよ、一体。ああ、まさか……後から怖い人が押しかけてくるんじゃないよな。そういうの何て言ったっけ。ツツガムシ……いや、つつもたせ、か)すぐにそれはありえないはずだと気づいた。名家に嫁ぎ、しかも一流ブティック・オーナーでもある篠宮遥香が、自分のような若造から金を巻き上げようとする理由がないのだから。
それでは、前にも抱いた妄想パターンの一つ、保険金殺人だろうか。これから自分は遥香の勧める生命保険に加入させられるのか。だが、どう頭をひねってみても現実的ではなかった。
「隈田さん。このたびは本当にすみませんでした。私が出来るお詫びの形と言えば、こうして、恥ずかしい思いをして、あなたに笑っていただくぐらいしかありません」
「笑うだなんて、そんな」
「いえ。どうかそうなさって」
黒のブラジャーが悩ましく目に飛び込んでくる。洒落たデザインで肩紐の幅はかなり細く、白い肩にそれがあやうげに走っている。
カップの周縁にパールグレイの上品な刺繡がほどこされてあり、いかにも高級下着特有の気品と輝きを放つ。
しかし何という豊かなふくらみだろうか。肩や腕のなよやかさとはそぐわないところがエロチックに映るのだ。
いけないとは思っても、視線をそらすことが出来ず、しっかとバストを見据えてしまう。
上半身は黒のブラで、下がライトグレイのパンツ・スタイルという取り合わせもひどく悩ましい。
パンツはややローウエストのため、くびれきった腰部のラインが浮き出している。それにしてもまっすぐに伸びた足が綺麗で、さすがは元バレリーナだと感心した。
「どうかこれで、遥香の失礼を許して下さい、隈田さん」
「いや、あの……」
いつしか問題をすり替えられていた。どうして約束をすっぽかしたのかという質問には答えず、遥香は、あくまで下着姿になって謝罪するというのだ。
そして聖彦はあまりにセクシーな眺めを前にクラクラしながら、夫人のペースに乗せられていく。
「この通り、お詫びします。本当に申し訳ありませんでした」
遥香は深々と頭を下げた。
深い胸の谷間がいやでも強調される。
モデル系のスレンダーな長身であるだけに、黒のブラの中でゆさゆさする豊乳の眺めが一層刺激的である。
わざとバストを見せつけているのかと思うほど長く遥香は頭を下げている。
「もう、いいです。わ、わかりました」
「本当に? こんなので、許してもらえるんですか」
「許します。いや、そんな僕なんかが、そんなえらそうに言える立場じゃないし」
「うれしい。隈田さんて、いい人ね。初めて会った時からそう思ってましたけど」
真正面に立ったまま、遥香は、胸を隠そうともせずにこちらを見つめてくる。
とにかく夫人にほめられると聖彦はうれしくて、天にも昇りそうな気分となる。浮かれてはいけないのだと自分を戒めても、すぐににやけてしまう。
「じゃ乾杯したいんですけど、いいですか。仲直りを祝して」
「あ。はい。缶ビールがまだ冷蔵庫に入ってますから」
「いいんです。私が取りに行きます」
立ち上がろうとした聖彦を制して、遥香が冷蔵庫まで行く。
タイトなパンツ・ルックの脚線が流れるように優雅に運ばれていく。無駄な肉のない白い背中に、黒のブラのベルトが素晴らしいアクセントになっている。
夢の中にいるような気分で、聖彦はその後ろ姿をじっくり鑑賞した。夫人はヒップの形もなかなかに素晴らしい。若い娘に負けないほど上向きに持ち上がって、美しい丸みを保っている。
夫人といるだけで、この古い観光ホテルの一室が最高にゴージャスな空間に思えてきた。まるでラスベガスのホテルで、コンパニオンをあてがわれVIP待遇を受けている気分である。
ロング缶とグラスを二つ持って遥香が戻ってきた。
「乾杯!」
「隈田さんのサバティカル休暇のために」
「ついでに、嘘から出たマコトもよろしく」
グラスを
掲
げると、たちまち
打
ち
解
けた。聖彦のつまらない冗談に、遥香は豊満な肉丘を揺すってクスクス笑う。
やはり波長が合うのだと改めて思った。聖彦の水彩画スケッチを見て、あれほど鋭い批評をしてくれた人は初めてだった。
まだ数えるほどの回数しか会っていない二人だが、例えあんな不愉快な出来事の後でもすぐにこうしてなごめるし、言葉にしなくても通じ合える部分がある気がする。
(いや、ほんとは違うのかな。この俺がただ能天気なだけなのか……)けれども世のほとんどの男は、これほどの美女に下着姿で接待されたら、細かいことは忘れ、ごきげんな気分になるのではないだろうか。もし遥香の放つ強烈な官能美に立ち向かえる人間がいたら、お目にかかりたいくらいだ。
「寒くないですか、遥香さん。もうシャツ着た方がいいですよ」
「……ご迷惑、ですか、やっぱり?」
キュッと眉根を寄せ、唇を薄く開いて、表情を翳らせる。不思議なのだが、そんな時には夫人は十代の娘のようにも見えた。
「そ、そんなことないですよっ。ただ、何だか、あの申し訳なくて」
「だって私は何か罰を受けるべきですもの。それに……」
「なんですか?」
「隈田さん、まだこの町に残るとおっしゃってくれないし」
「あ……そうか」
すると遥香は立ち上がった。
ブーツを脱いで聖彦の椅子のすぐ横までやって来て、そこへ膝をついて正座した。
2
どうにも目のやり場に困ってしまう。聖彦の位置からだと、正座する遥香のちょうど真上から、ブラにぴっちり包まれたたわわなバストをのぞき込む恰好なのだ。
じっくり見たくてたまらないが、スケベな目つきをして軽蔑されるのを恐れ、ちらちら盗み見するのが精一杯だった。
「隈田さんのこうむった迷惑を考えると、これくらいじゃまだ全然足りないはずです。私、もっとあなたに誠意を尽くさないと、いけないと思うんです」
「いいんですよ、もう」
いやひょっとして、これ以上まださらに素晴らしい体験が待っているというのか。そんな甘美な期待に胸が破裂しそうになる。
どうにも誘惑には勝てず、正座する夫人のボディへ視線をじっとり注いだ。
みずみずしい顔の皮膚と同じく、体もとても水分に富んだなめらかな肌をして、乳白色に輝いている。
パールグレイの刺繡に飾られた黒のブラが、勢いよく豊乳に突き上げられている。深い谷間を目にするにつけ、そこへ手を伸ばしたい衝動をこらえるのが一苦労である。
「ど、どうか、もうそんな大げさに考えないで下さいよ、遥香さん。誠意はよくわかりました。今までのことはお互い水に流しましょう」
「じゃあ、この町にしばらくいて下さるんですか」
遥香の濡れた瞳がこちらを見上げた。そうして聖彦へビールのお酌をする。
「も、もちろんです」
有頂天の気分で聖彦は頷いた。
「ありがとうございます、隈田さん」
「なんか
堅
苦
しいな。もしよければ、聖彦って名前で呼んでもらえますか」
「わかりました。聖彦さん」
そう呼ばれて、ゾクリと甘い気分になりながら、また股間がいきり立つ。
遥香はどこか
媚
びるような妖しい眼差しを注ぎつつ、立ち上がった。
「ごめんなさい。パンツが皺になってしまいますので……」
「そうですよ」
席に戻るのだとてっきり思った。
ひどく残念だが仕方がない。近くにいる間に、もっと胸の谷間をのぞき込んでおけばよかったと悔やんだ。
だが、そうではなかったのだ。またしても遥香夫人は驚くべき行動に出た。
黒のファッションベルトを外し、ライトグレイのタイトなパンツのファスナーをおろしていくではないか。
「い、いけませんよ、遥香さん! 駄目です、それ以上は……」
「いいえ。これは、お詫びと同時に、私の感謝の気持ちでもあるんですもの。ねえ、どうしても、いけませんか?」
「う……」
「恥ずかしくてたまらないけど、出来れば聖彦さんに、私のセミヌードを描いてほしいんです。今、私の体を、どうか瞼に焼き付けてもらえないでしょうか」
途中で止めていた手をふたたび動かし、夫人はライトグレイのパンツを一気に脱ぎおろすのである。
(セミヌードを描く? じゃ、好きなだけじっくり観察していいってわけか。そうなると話は別だぞ)よだれの出るほどおいしい話ではないか。聖彦はもういい子ぶって夫人を止めることはせず、目をらんらんと輝かせて見入った。
ムンと官能味を放つ黒の下着姿で、遥香はすぐそこに立つ。
「俺、ほんとに観察して、見ちゃいますよ。いいんですか」
「ああん。やっぱり、恥ずかしいわ」
ストレートロングのまばゆい髪を大きくかきあげながら、くびれた腰部を揺すり、夫人はため息をつく。
そのポーズさえも、むせんばかりに悩殺的なのだった。
「ねえ、そんなに見られたら、私……」
かきあげた黒髪がするする流れ落ちてくると、女っぽい甘やかな香りが漂う。痺れる気分で聖彦はその香りを吸い込んだ。
「すっごく……きれいだ。遥香さん」
「嘘です」
片足だけ「く」の字に曲げて、さも恥ずかしそうに身をくねらせる。夫人のそんなふうな仕草の一つひとつが、聖彦の性欲をこすり上げた。
と同時に、何かがうごめいた。
今まで聖彦の心のずっと奥で眠っていた、魔のようなものが目を覚ましつつあった。
「遥香さん、身長はどれくらいですか」
「百六十七センチです」
「じゃ、ついでにスリーサイズも教えてもらおうかな」
厚かましい言葉が平気で出てきた。
なぜか遥香を前にすると、どんどん自分が変わっていく感じなのだ。それがいいのか悪いのかはわからないが。
「ね。早く答えてよ」
「……あのぅ……やっぱり、答えなくちゃ駄目ですか」
聖彦が攻勢に出ると、先ほどまでの大胆さと打って変わって気弱な表情となる。途端に凛とした美貌に、妖美な色香がにじんだ。
乳白色に美しく輝く足はとにかく長い。それだけでなく形がとてもいいのだ。細すぎず、適度に脂を乗せた下肢が柔らかそうに、スーッと直線的に伸びている。
ことに太腿のねっとりした輝きに聖彦はひときわ目を見張る。成熟した女の生のエロスがそこに宿されているかのようだ。
「ちゃんと知っておきたいんだ。あとで描く時にサイズがわかれば役立つし」
馴れ馴れしい口調で言うと、喉がカラカラになり、ビールをぐいと流し込んだ。おおよそのサイズは見当がつくが、直接本人の口から聞き出したいのである。
「……わかりました。だって、今日は、聖彦さんの言葉にはさからえませんもの」
そんな泣かせる言葉を言うと遥香は、白い前歯で軽く唇を嚙んでから、「あの、上から……八十八、六十一、ええと八十六です」
「素晴らしい」
「いやっ」
夫人はうつむいたまま首を小さく振った。水気を豊潤に含んだ黒髪に、顔を隠そうとするごとく。
(遥香さん、なんて色っぽいんだろ。しかし、いいのか、俺。人妻を相手に、こんなことしていて……)生来、気の弱い聖彦は下半身へ視線を這わせることに後ろめたさを覚えるが、遥香本人から、ちゃんと見てほしいと頼まれたのだからと思い直して、しっかと見据えた。
「手を、どけてみて。モデルなら隠したりしないで、ちゃんとまっすぐ立っていてほしいんだけどな」
自分でも思いがけない言葉が口から出た。いっぱしの画伯になった気分である。
「え……。は、はい。ごめんなさい」
ためらいつつも遥香は股間に当てていた手を外した。
黒のビキニショーツは、両サイドの部分が透けたレース地になっている。
ショーツのフロント部には、ブラに合わせて、パールグレイの可憐な草花の刺繡がほどこされている。
そして神秘のVゾーンの底に、わずかなヴィーナスのふくらみが息づいている。突如、そこへ顔をうずめてみたいという猛烈な衝動が襲いかかってきた。
(いけない。ああ、本当に、頭がどうにかなってしまいそうだ。遥香さんが悪いんだよ。酒を飲ませといて、こんな超セクシーな体、見せつけるんだもの)体内で目覚めた猛獣が暴れだしている。それを押さえつけるのに聖彦は必死で、全身に生汗さえかいている。
3
人妻の熟れた下半身をじっくり鑑賞すると、もう一度改めて聖彦は、黒の下着姿の全体像をなぞるようにして眺めた。
三十三歳というのに、今でもそのままモデルで通用するプロポーションである。手足のすらりとしたスレンダーな長身なのに、バストのふくらみがやけに目立つのが遥香の特徴なのだ。
ショーツをはいたそのすぐ上の下腹と、腰まわりには、いくらか贅肉がついているし、太腿もむっちりとしている。けれどもその適度な丸みが人妻らしさをものがたり、よけいに強くアピールしてくる。
ウエストラインも魅力的だ。驚くほど深い腰のくびれと大胆な反発は、イタリア人が好むグラマラスな流線形のデザインを連想させた。
「そのくびれ、一体どうやったら作れるのかな、遥香さん。教えてほしいよ」
「知りません。聖彦さんのいじわる」
「だって、本当に知りたいんだもの。俺、こんな美しいヌード、生まれて初めてですよ」
峻
烈
な感動と性的興奮が、聖彦をいつになく
饒
舌
にさせていた。
こちらを大胆な気分にさせるフェロモンが夫人の肌から濃厚に放たれてもいるのだ。
「ああん。もういいでしょう? だって、私も一緒に飲みたいんですもの」
さすがに聖彦の熱い視線に耐えられなくなったのか、遥香は恐る恐る言った。
「まあいいですけど、でもまだ服を着ちゃ駄目ですよ」
「はい。今日は、何でも聖彦さんの言う通りにします」
はにかみがちに遥香は答え、ショーツから伸びた贅沢すぎる長い足を運んで、ふたたび冷蔵庫へと向かう。
黒のビキニショーツのヒップがたまらない。バストに比べ豊満というほどではないが、このくらいの大きさだからこそ上向きの臀丘をそのまま保っていられるのだろう。
(今日は俺の言うことを何でも聞くって本当なのか……。やらせろって迫っても? まさかそんなこと言えないよな。遥香さん、絵のモデルになってくれてるだけなんだし)戻ってきた夫人はすぐ真横に正座した。心は千々に乱れたまま、夫人のお酌でビールを飲んだ。
旅に出て四ヵ月近く、いまだセックスから遠ざかったままの身にはあまりに刺激が強すぎるのだ。カウパー腺液があふれだして、トランクスが気持ち悪いくらいヌルヌルになっている。
さすがにもう我慢の限界だった。
いきなりセックスの話を切り出すのはNGだろうが、少しずつ段階を踏んで迫って行けば、何とか攻略出来るのではないか……。
そうだ。王様ゲームをやっているつもりになればいいのだ。
「あのぅ、俺、大好きなビールの飲み方があるんですよ」
「そう。どんな?」
「口移しで飲ませっこするんです。遥香さんともそうしてみたいな」
「………」
「駄目ですかね、やっぱり」
「……ごめんなさい。だって、ああ、私はもうそんな若くないのよ」
「いやいや、遥香さん、十分すぎるくらい若いですよ。それに、本心からあやまりに来てるんだったら、そのくらいしてくれてもいいじゃないですか。さっきは何でも俺の言う通りにするって言ってたくせに」
いくらか語気を荒らげて言ってみた。
ふだんの聖彦なら絶対に言えないことだが、遥香にはこちらをSっぽく変化させる不思議な妖力、あるいはM性があるのだ。
「だってそれは、ああっ、聖彦さんの、絵のためになれるなら、というつもりで言ったんですもの。もし私の言葉が足らず、誤解させてしまったら、ごめんなさい」
「いや、大いに俺の絵のためになるんですよ、これが。遥香さんの唇の感触を知れば、イマジネーションも広がるはずだもの」
夫人は正座したまま、うつむいた。恥ずかしそうに白い肩がぴくついている。
「やろうよ、遥香さん。一度くらい俺の頼み事を聞いてもいいんじゃないかな」
官能美たっぷりの黒の下着姿と、つやつやした黒髪を見ていると、聖彦の中の獣が暴れまわるのだ。
「どうしたんです。遥香さんが先ですよ。さあ、飲ませて下さい」
「え……」
夫人は途方に暮れた表情になる。
平気でセミヌードにはなるくせに、口移しをなぜそんなためらうのか、聖彦にはよくわからないが、そう考えを進めるとそもそも遥香の行動はすべてがミステリアスなのだと思い当たった。
「あの、体には、触わったりしないと約束してくれますか?」
目元を妖しく染めながら、雪白の優美な肩をくねらせてたずねた。
ごくりと
生
唾
を呑み、聖彦は小さく頷く。
不思議だった。夫人の言葉はまるで反語のようで、触わってくれなくてはいやだと催促しているように聞こえるのだ。
グラスに入ったビールを口に含み、遥香は膝立ちとなって聖彦に顔を寄せてきた。その黒目がちの双眸にきらきらと決意をにじませて。
肉感的な唇がそっと触れてきた。
たったそれだけで聖彦の体内を、感動が駈けめぐる。
唇と唇がぴったりくっつき合う。たまらなく柔らかな唇だ。そして口紅のほのかに甘い香りにうっとりしながら、聖彦は、どうぞとばかりに口を開けた。
同時に遥香の口が開いて、ひんやり冷たい液体が少しずつ流れ込んでくる。その気持ちよさときたら。
(すごいや。ああ、遥香さんが口移しで飲ませてくれるなんて)ごくわずかな量なのだが、ビールはこの上なく美味に感じられ、聖彦は痺れる気分で飲み下した。
口からあふれないよう何度かに分けて、液体がねっとり口に注ぎ込まれる。そのたびに遥香の優しさと女らしさまでが伝わってくるようだ。
「ありがとう、遥香さん。すっごく
美
味
しいよ」
「……ああ」
「もっと飲ませてほしいな」
と、遥香は伏し目がちに頷き、ビールを含んだ。豊かな髪をかきあげながら、なまめかしく唇を近づけてくる。
4
二度目の口移しもまた素晴らしく官能的だった。遥香夫人と粘膜と粘膜を共有している感覚が、ゾクゾクする興奮をもたらす。
それに遥香のような美女の口から飲ませてもらうと、ビールは苦みと甘みがミックスされて、絶妙の味に変わるのだ。
「こんな幸せな気分、もうどれくらいぶりだろう……」
「もう許して。聖彦さん」
ブラの細い肩紐を直しながら、遥香は訴える。その表情はどこか濡れた感じに変わり、頰の赤みもぐっとまして何ともセクシーだ。
さらにもう一回無理矢理せがんで、そうして三度目のビールを飲み終えた。
行儀よくしているのも限界だった。聖彦はそのまま口を離さずに、思いきって舌を差し入れた。
「ウッ――う、ムんっ」
逃れようとする遥香の肩を押さえつけ、手前に引き寄せた。
憧れの人の口の粘膜が、しっとり濡れた感覚で包んでくれる。聖彦はさらに深くつながろうとしたが、夫人はそれを振りほどこうとする。
「い、いけませ……」
強く抱き寄せて、すぐに唇をふさいだ。
もう何があっても離すつもりはなかった。ふたたび舌を差し入れ、ほのかな香りを放ち、濡れ濡れとした口の粘膜をまさぐる。
キスだけでこんなにも興奮するものかと思った。
果実のように甘くて柔らかな唇。
心地よい唾液に濡れ包まれた口腔。
ほんのわずかだけこちらへ押し当てられて、遠慮がちに触れてくる遥香のねっとりした舌腹の動き。
ここ数日間の
煩
悶
と苦悩をぶつけるごとく、聖彦は美女とのキスの快楽をむさぼった。
「ああ。好きなんだ」
唇をくっつけたまま、ささやく。
声がみっともないくらいに高ぶっている。
「あの日、マコトさんを乗せたクルマで、初めてあなたを見かけた時から、ずっと、ずっと好きだったんですよ」
「駄目。ああっ、それ以上言わないで」
それでも遥香夫人も唇を外さないでいる。
言葉をかわしながら、唾
液
をしたたらせた聖彦の舌を恥ずかしげに吸ったりもする。
「てっきり、からかわれたんだと思ったんだ、俺。約束を二度もすっぽかされて、そのあげくにゆうべはエッチな電話もかかってきたし。だからもう、沖山町を離れた方がいいかなと思って」
「……それは誤解なのよ。本当に」
「ええ。そうじゃないんだってことはよくわかった。今はただ遥香さんの誠意がすごくうれしくて」
すっぽかされた理由はついにはぐらかされたままなのだが、もうそれはどうでもよくなっていた。今、夫人といるこの瞬間がすべてなのだ。
「ああ、あの……私は、ただ聖彦さんに、いい絵を描いてほしくて……」
相手の言葉の途中で、また舌を深く差し入れた。
すると遥香も今度ばかりは濃厚に舌をからませてくる。ヌラヌラと悩ましい動きでこちらへ愛撫を返して、聖彦を大いに悦ばせた。
二人が息を合わせ、口を吸い合うと、いよいよディープキスになっていく。
勢いに任せ、ブラに触れた。さっきからその豊満さをたっぷり見せつけられており、今まで手を出さないでいられたのは奇跡に近かった。
(ちょっとぐらいお触わりしても、もう許してくれるだろう。俺がずっといい子にしてたのは遥香さんだってわかってるはずだし)高級ナイロン特有のなめらかな手触わりだ。そしてその下で、確かな重量感をみっしりたたえて肉丘が揺れる。
聖彦の心は深い感動に包まれた。
温かな母性と、悩ましいエロスとをこんなにも妖しくたたえたボディがあるとは知らなかった。いやでも指に力が入り、カップ越しに肉丘を揉みあげる。
「信じられない。こ、こんなスマートなのに、すごく胸が大きいんだね、遥香さんて」
「ああん……いや……」
「とっても、超セクシーだよ。なんか、あんまり悩ましすぎて、遥香さんのこの体、絵に描くのが怖くなりそうだもの」
なおもナイロン・ブラの上から、ぴちぴちした隆起を愛撫した。いったん触わると、もうその豊満な感触のとりこになって、二度と手を離したくなくなるのだ。
「い、いけないわ。ねえ聖彦さん。もう、触わらないでちょうだい。ああ、どうか、お願いだから……」
遥香は敏感そうに息づかいを乱して、切なげに肩を上下させながら訴えかける。
「だって、こんな気持ちになって、触わるなって言う方が無理でしょう。遥香さんだって本当はわかってるくせに」
「いやよ。いけません。む、むふうん……あああン……」
キスを繰り返しながら聖彦は、ブラの胸のふくらみに酔いしれる。別の手では長い髪を撫でて水気をしっとり含んだ感触を楽しんだり、さらに手を下へすべらせて、背中を撫でたりする。
遥香の体のどこに触れてもすべすべして弾力があるし、上品な柔らかさにもみちていて、聖彦はひたすら感嘆するばかりだ。
ズボンの中で勃起がビクンビクン跳ねている。このままだと、あやうく暴発してしまいそうな恐れさえあった。
5
キスの合間に、言ってはいけない禁断の言葉を、聖彦はとうとう口にすることにした。
「ほしいよ――」
「え?」
「わかるでしょ。ほしいんです、ああ、遥香さんを。遥香さんのすべてを」
「あんっ。駄目よっ。そ、それは、絶対にいけません」
聖彦の切迫した言葉と口調に、今さらのように夫人はうろたえる。
聖彦が抱き寄せようとすると、きらめく黒の下着に包まれた悩殺的なボディをくねくねさせ、あらがうのだ。
「いいじゃない。お願いだよ、遥香さん」
「私……ああん、そんなつもりじゃ……なかったのに」
その白い柔肌から微香性のフレグランスが立ちのぼった。深くくびれきった腰部が際立ち、ショーツの股間が誘うようにうごめいて、聖彦の欲望を一層けしかけた。
「この体、全部見たい。遥香さんのすべて、何もかも目に焼き付けたい」
「いけないわ」
「じゃ、ヌードを描きたいって言ったら、全部脱いでくれるの?」
「それは無理だわ。そんなずるいことを言う聖彦さん、嫌いよ」
「え……」
「自分の才能を餌にして、女性を脱がせたり、くどこうとするなんて。聖彦さん、そんな卑怯な人じゃないはずだわ」
にわかに二十一歳年上の口調になって、聖彦をたしなめるのである。
怒った遥香もなかなか素敵だった。
遥香さんならもっと叱られてもいい。聖彦はそんなやけっぱちな気分になっていた。
「すみません、遥香さん。だったら、正直にぶっちゃけて言えばいいのかな」
「ちがうわ。そんな意味じゃないのよ」
「でも言わせてほしい。俺、勃
って勃って、もう猛烈におっ勃っちゃって、苦しくてたまらないんだ。今すぐにもトイレ行って、抜きたいくらいなんだもの」
「やめて! 不潔よ、聖彦さん」
「じゃ聞きますけど、遥香さん、俺がインポだとでも思ってたの?」
「え?」
「だってさ。夜中にホテルの中で、そんな悩ましいボディ拝ませてもらって、おまけにキスまでしたんだ。男なら誰だって遥香さんが猛烈にほしくなりますよ。それでも我慢しろって言うんですか。そんなの、あんまりだ。ひどすぎるよっ」
言い過ぎかとも思ったが、いったん恨みつらみを口にしだすともう止まらなくなった。性欲と食欲はよく似ていて、渇望感がきわどく高まると無性に怒りっぽくなるのだと聖彦は思った。
篠宮遥香は濡れた唇をきつく嚙んでいる。
ブラの背中のホックの位置よりも下まで伸びた長い髪が、深い吐息をつくたびにさわさわ揺れている。
こしがあって濃い黒髪の色と対照的な、きめ細かな白い肌がいとおしい。
「ああ俺って、最低の男だな」
すぐに聖彦は後悔した。いくら自分が勝手に興奮を覚えたからって、性欲の責任をとれだなんて、女性に向かって言うべき言葉ではなかった。
「ごめんなさい、遥香さん。今の言葉、全部取り消します」
「いいえ。いいのよ。確かに、あなたの言う通りかもしれない」
「……え。でも」
「可哀相に。そんなに
勃
ってしまっていたら、さぞかし辛いでしょうね。気づかいが足りなくて、こちらこそごめんなさい」
あまりに優しい言葉が返ってきて聖彦が面食らっていると、遥香はさらに思いがけない言葉を口にした。
「ね、聖彦さん。ズボンを脱いで下さい」
まっすぐにこちらを見つめる情熱的な瞳に、決然とした意志がうかがえる。
「ええと、あの……どういうこと」
「私が、処理してあげるわ。でも、あのね、今日あなたと、いきなりそういう関係は、ああっ、やっぱり無理なの。だって、わかるでしょ。だから……」
そこまで言うと、夫人は恥ずかしそうにうつむいた。
豊潤な黒髪が顔を隠す。ただ肉感的な唇が開きかけては閉じるのがうかがえた。
胸が甘く痺れるのを感じながら、聖彦は次の言葉を待った。
「お口に、出して」
「いいの、遥香さん?」
その言葉を聞いただけで、さらにカウパー腺液が出て、下着がぬるぬるになってくる。
遥香はこっくり頷いて、それから揺らめく髪をかき上げ、聖彦を見やった。
「だから約束して。もう私、これ以上は脱がないわ。どうかお願いですから、ああ、無理に脱がそうとしたりしないでね」
「わ、わかったよ。約束する」
どうして遥香の
一
言
ひとことが、こんなにも官能を揺さぶるのだろうか。
わざと困らせてやり、その美しい顔がうろたえるさまをかえって眺めたくなる……。遥香本人もそれをどこかで望んでいるような気がしてならない。
立ち上がり、ズボンを脱いでいく。
自分が今まで足を踏み入れたことのない妖しい性的世界に、聖彦はゾクゾクする気分で身を委ねようとしていた。
第四章 償いの口唇愛撫
1
聖彦はトランクスも脱ぎ、下半身を露出させて椅子に座った。
初めてペニスを女性に見せる時はやはり恥ずかしい。しかも興奮しきって、勃起全体が我慢汁でヌルヌルになっているのだから、すごくみっともないし、軽蔑されないかと気が気でない。
「あのさ。やっぱり、シャワー浴びて来ようかな、俺」
「いいのよ。そんなこと気にしなくて」
「でも……」
しきりに照れる聖彦だが、篠宮遥香は優しい笑みをたたえ、股間に身をすべり込ませてきた。
聖彦のペニスは平均サイズよりもやや大きめだ。ひょろりとした体型にはそぐわず、幹の太さにおいて際立っている。
その
屹
立
へ目をやり、遥香は意味ありげに吐息をついた。
「ああ……。こんなに、元気だったら、つらいはずだわ」
「うう」
「ごめんなさいね、聖彦さん。私、気づいてあげられなくて」
そんな温かい言葉をかけると、カウパー腺液にまみれた肉茎に遥香は左手の指をからめ、ゆっくりしごきだした。
「ご、ごめんね、遥香さん。なんか、ネバネバしていて、きたないでしょ」
「ううん。全然、平気よ」
せっせと指を動かしながら首を振る。
「あの、いつもこんなわけじゃなくて、さっきは俺、ちょっと興奮しすぎてたから」
「わかってるわ。うふふ。そんなこと気にしなくていいのよ」
遥香の女らしさが身にしみる。
と、一
物
をさする指に結婚指輪がキラリと光りを放って、にわかに聖彦の心に翳りをもたらした。
(ちくしょう。遥香さん……独身だったらいいのに)思っても仕方のないことなのだが、ついつい嘆いてしまう。名家の跡取りでハンサムな夫がいては、自分などとても歯が立たないのだし、れっきとした人妻にこんなことまでさせて、本当にいいのだろうか。
後ろめたさと、無力感が振り払おうとしても心につきまとう。だが、次々にこみあげてくる峻烈な快感がいつしかそんな感傷を吹き飛ばしてくれた。
遥香はいかにもペニスの扱いに馴れた感じだ。ぬらつくカウパーがローションの役目を果たして、弓なりに沿って指を快調にすべらせてゆくのである。
「あー俺、まるで童貞クンみたいだな」
「だって、私のせいで聖彦さん、こんなになっちゃったんですもの。かえってうれしいくらいだから、私」
すまなそうにキュウと眉根を寄せた表情には、温かくておおらかな母性が漂って、聖彦を懐かしくて切ない気持ちにさせた。
「あ、あ……遥香さん……うう」
「ゆっくりね。ゆっくり楽しみましょうね」
はやる聖彦をなだめるようにして言うと、亀頭に顔を近づけて、真上から唾をタラーリと落した。
続けて二度、三度とそれを行なう。
亀頭から流れ落ちた遥香の唾液が、スーッと
太
棹
を伝った。カウパー腺液とそれがまじり合い、絶妙の潤滑剤となる。
そうして指ではキュッキュッしごき上げながら、顔を反対へ動かし、まず聖彦の太腿へ舌を走らせた。
電流のような鋭い快感に、椅子の上で聖彦はビクンと震えた。
そんなふうな場所へ愛撫は受けたことがなかった。
「あ。ああ。いい」
遥香の舌腹はかなり面積が広くて、しっとり濡れた感じが柔らかく内腿を走るのがとても気持ちいいのだ。
「うふぅん――ムふぅぅん」
セクシーな泣き声とともに遥香は内腿を丹念に、愛情たっぷりに清めていって、ついには膝近くまでたどりつく。
たちまち片方の太腿全体が唾液でぐっしょり濡れ包まれた。聖彦は奉仕される気持ちよさにどっぷり浸かってゆく。
(すごいや。ああ、まさか遥香さんに、こんなふうに尽くされるなんて……)舌で肌をしゃぶられるたび、海綿体に血が流れ込むのだ。直接ペニスを舐められていないのに、こんなにひりつく快楽があるものなのか。
まだどこか信じられない気分で、聖彦は、人妻へ視線を注いだ。
あの篠宮遥香が黒のブラに包まれた乳房を揺すり、妖しいカーブを描く腰部をくねらせ、一途に口唇愛撫にふけっている――。それをまじまじと見つめると、今さらのように興奮と感動がこみあげてくる。
「遥香さん。こ、こんな、感じるの、初めてですよ、俺」
「うれしいわ。ムふぅん……。聖彦さんも、素敵よ。だから、もっと感じてほしいの」
鼻にかかった声でそんなふうに言われ、勃起がビクンと飛び跳ねた。
内腿を
愛
しげにぬらぬらになるまで舐めしゃぶった遥香の舌は、陰毛をしゃりしゃりさせながら、股の付け根へと戻ってきた。
指では巧みにペニスをあやすのを決して忘れない。
今度は紅唇を
鼠
蹊
部
にぴたりとつけて、じらすように、誘うように粘っこく舐め上げていくではないか。たまに角度を変えて、きわどく吸いつかれると、快感が電流のように鋭く走り抜ける。
そしてもう片方の手も遊ばせてはいない。今舐めつくしたばかりの内腿一帯の、唾液で濡れた箇所をそっと指でなぞっては引き延ばし、かきまわしている。それが何ともたまらない。まるで二人がかりで奉仕されているかのようだ。
「あぅぅ……ああ……遥香さん……そ、そんなっ……」
年上の人妻の唇で、下半身をねっとり攻められる快感に、聖彦はあえいだ。
こちらの思っていた以上に、遥香は男を悦ばせる経験を積んでいるようだ。あるいは亭主、篠宮慶司好みに厳しく仕込まれたという可能性も考えられる。人妻なのだから後者の方が自然だろうが、聖彦とすればいささか複雑な気分でもある。
「俺、遥香さんが好きだから……大好きだから、そんなことまでされたら、もうひたすら感激するしかないよ」
「ねえ。私だって、聖彦さんが好きだわ」
「え。ほんと?」
「好きよ。決まってるじゃない」
細
面
の冴えた美貌を上気させ、夫人はちらりと聖彦を見上げた。大きな瞳を情熱的に輝かせている。
「じゃなければ、ああん、こんなこと、しないもの。だから私も、感じてます」
啼
き声まじりにそう言って、聖彦の陰毛の中へ顔をうずめた。
その言葉を裏付けるように、黒にグレーの刺繡をほどこした官能的なビキニショーツの双臀を、さも敏感そうにゆらめかせている。
「なんか、死ぬほどうれしいよ、俺。まさか、こんなふうにしてもらえるなんて」
感情の高ぶりのまま聖彦は、ブラの胸を握りしめた。
豊満な弾力が返ってくる。そして遥香の敏感そうな吐息も聞こえてくる。
たとえセックスをしなくても、前戯だけでこんなに極上の興奮を得られるのかと思った。それほど夫人の舐めしゃぶりは濃厚で、舌の動き一つひとつが情感にみちていたし、きわどい箇所まで攻め込んでくる。おまけにブラ越しに揺れる双乳の量感が悩ましかった。
左右の内腿、そして鼠蹊部をみっちり舐めつくされた。
「うっうう――。ああ、遥香さん。あのう、オ……オチンチンを、そろそろ舐めてほしいんだけど」
「まだよ。まだ駄目。もう大人なんだから、それくらい我慢出来るでしょう?」
聖彦を手玉に取るようにして、遥香は、ぱんぱんに硬く張りつめた玉袋を口に含んだ。
「ああぅぅぅ」
いっぱいに含んだまま、それをチューッと吸い上げ、舌で転がした。かと思うと口を離し、今度は面積の広い舌腹いっぱいに玉袋を乗せて、ぬたぬた舐めさする。
一方では熟練の指づかいで規則正しく肉棒をしごかれているからたまらない。痺れるような快美感が下腹部で渦を巻いて、聖彦はなすすべもなくひたすらあえぐのだ。
2
聖彦の再三の懇願もあって、ようやく肉茎本体に遥香の舌が這い上がってきた。
さんざん攻められた玉袋は、夫人が残した唾液のしずくを粘っこくしたたらせて、それがまた聖彦を興奮させている。
「おいしいわ。うあっあン。聖彦さんの、ここの匂いも、たまらないわ」
「そう? 自分じゃよくわからないけど、でも、遥香さんに気に入ってもらえて、すごくうれしいよ」
「うむふっ。うむふぅぅ」
「あ、うあ、ああう……そこ……ううっ、感じるう」
指は亀頭に近いあたりにからませ、上下にあやしながら、遥香は悩ましい舌を、勃起の根元に重点的にぐいぐい押しつけてくる。それだけでも聖彦は初めて味わうような熱い快感を覚えた。
(どうしてこんなに
上
手
くてすごいんだ、遥香さんたら)
まるで風俗にいたかのようだと最初は思ったが、それとも違うのだ。ただ技巧に走るのではなく、もっと切実な感情がこめられていて、それが口唇の動きを通して泣きたいくらいストレートに伝わってくる。
たっぷりペニスの根元を舐めつくすと、少しずつ遥香の愛撫の矛先が這い上がる。
充血しきった
茎
胴
を、ぬらり、ぬらり快美な粘液で濡れ包んでゆく。
ぽってりしたセクシーな唇から、綺麗なピンクの舌が長々と差し出され、分身に休みなくからみつく。形よく伸びた鼻先から甘い吐息があふれる。
その様子を聖彦はうっとり眺めた。
今までこんなふうにじっくり舌で愛撫されたことはなかった。フェラチオと言えばただ女が口の中に入れて、激しくスロートするものだとばかり思っていた。
要するに大人のセックスを全然知らなかったことになる。
「そんなにたくさん舐めてくれてありがとう、遥香さん。顎とか口、疲れないの?」
心配になってたずねてみた。
遥香はくすりと笑い、ブラの肩紐を直した。それから髪を大きくかき上げて、「大丈夫」と言った。こちらへ微笑みかける白い歯並びがまばゆい。
「そんなこと心配しなくていいのよ」
「そうなの」
「うふっ。あなたって、時々ひどく子供っぽくなるのね。それが可愛いんだけど。あら、ごめんなさい」
「いいんですよ、全然。俺、年下だし、遥香さんになら、どんなふうに言われてもかまいませんよ」
「だって、美味しいんですもの、聖彦さんのこれ。うふふ。だからね、たくさん味わいたくなってしまうの」
ゾクリとする妖艶な眼差しを向け、遥香はすぐにまた愛撫に戻った。
豊潤な唾液を浴びてぬらつくペニスを、実に巧みな指づかいで揉みしごきながら、茎胴の裏側ばかりでなく、横側を舐めたり、下腹部にぴったり貼りついた表側まで舌をペロペロ這わせるのだ。
「感じてるのね、聖彦さん。ああん、どんどん匂いが、濃くなってきたわ。私、この匂いが、好きよ」
「あっあ――。うっうっ」
「聖彦さんも、ここの匂いも、大好き」
そんな泣かせる言葉をつぶやいてくれる。
今は、血管がぶくんぶくん脈打つ太幹の根元を、指でしごかれている。魔のように幅広の夫人の舌腹は、いわゆる裏筋一帯に押し当てられて、そこを小突くような強いタッチで攻めてくる。
性感の急所をとろりとした粘液でぐっしょり濡れ包まれる感覚と、どこまでも柔らかな遥香の舌が粘っこくマッサージする感覚が溶け合い、聖彦を夢幻境へいざなう。
「もう、たま、たまんないよっ」
ぬたぬたと裏筋を這い上がってきた遥香は、思いきりとがらせた舌先で、カリ首の付け根を舐めだした。
ピチャピチャ音を立て、尿道口の近くまで迫る。
「うぅぅぅ」
興奮がどかんと爆発しそうになる。やばい。やばいぞ。まだもっと、この気持ちよさを持続していたいのに……。
聖彦は専門学校の時に少し習った気功の呼吸法を思い浮かべた。へその下にある丹田に意識を集中させ、邪念を振り払うのだ。
(気持ちが落ち着いている。とてもリラックス出来ている――)心の中で繰り返しているうちに、何とか危機は去った。
ぎりぎりのピンチだったことをものがたるように、尿道口からヌルリと、白い粘液がひとかたまりだけ湧き出した。
すると遥香はそれをさも美味しそうに舌ですくいとり、飲み下すではないか。
「ごめんね。そんなことまで」
「うふっ。あやまらなくてもいいのよ」
よほど苦いのだろう、眉をぴくぴくさせながら、遥香は聖彦を見上げた。
「もうちょっとで出ちゃいそうだったけど、何とか必死にこらえたんだ。アー、あぶなかったよ」
「よかったわ……。うふふっ。私も、聖彦さんの匂いを嗅いで、つい夢中になってしまったから」
「すっごく気持ちいいよ。どこか、ずっと高いところでふわふわしてる感じで、頭がボーッと痺れちゃってるんだ」
自分のしゃべる声がひどく上ずっているのがわかった。
「ああっ、お願いだよ、遥香さん。ほんとに、そろそろ口でくわえてほしいんだ。だってさ、その前に暴発しちゃったら、くやしくて眠れないもの」
切迫しきった聖彦の訴えに、遥香は濡れた口角をゆるませて小さく頷いた。
3
待ちに待ったスロートが始まった。
おしゃぶりしながら遥香は、それまでよりもぐっと官能的な音色になり忍び泣きを洩らすのである。
その声を聞きながら聖彦の胸は切なく締めつけられた。
(あー、よかった。やっとこさ至福の瞬間にたどりつけた。何とかここまで、耐えに耐えてきた甲斐があったよなあ)つややかな長い黒髪をはらり、はらりとさせ、本格的にフェラチオを行なう夫人の姿を見やり、感無量の聖彦である。
それにしても夫人の口の中の締まりは素晴らしい。濡れた粘膜がペニスにねっとり巻きつく感触は、まるで本物のヴァギナとつながっているかのようだ。
いや、ひょっとしたらそれ以上の快感かもしれない、とも思う。スロートを受けながら、たえず唇が茎胴を走り抜けて、それと同時に舌が裏筋へネバネバこすりつけられるのだから。
どうやらもうあまり長くは持ちこたえられそうもなかった。
四ヵ月近く旅を続けて、まったくと言っていいほど快楽に無縁だったのに、いきなりこんな強烈きわまる体験をしているのだからそれも当然だった。
「あ、あの……お願いがあるんだけど。遥香さん」
「え?」
勃起の根元を指でしごきながら、遥香は揺れる髪を払い、顔を上げた。
ため息の出そうな白い谷間が、いやでも目に飛び込む。
「怒るかもしれないけど……ブラを外してほしいな。俺、遥香さんのおっぱい揉みながら、イキたいんですよ」
「あん。約束が、違うわ」
「お願いだよ。どうしても、ねえ、どうしても、この手でおっぱい、触わりたいんだ。それが、そんなにいけない事なのかな」
「ごめんなさい。下着は、脱ぎたくないの。わかってね。それだけはどうしても……」
これ以上は甘やかさないのだと告げるごとく、きりっとした目をして、首を横に振った。
そうして顔を沈め、今度はその首をクイッ、クイッと縦に動かしながら、より深くまでくわえるのだ。
充血しきった肉茎を、濡れた口腔の粘膜がしっとり巻き締めてくる。にわかにスロートのピッチが上がってきた。
「あうっ」
「むふうン。むっふうン」
「ああうっ」
甘美すぎる感覚が、聖彦の下半身に渦のようにひろがる。
椅子の上で何度ものけぞった。まだまだ達したくないのだが、下手をすれば、このまま果ててしまいそうだった。
(まずいぞ。これじゃ俺の負けになっちゃう。しかもぼこぼこに打たれまくって、一方的なノックアウト負けだ)本来、こうした愛撫に勝ちも負けもないのだろうが、ただ単に性欲処理を篠宮遥香にしてもらう恰好になるのがいやなのだった。
受け身にまわってヒイヒイあえいでいるばかりでなく、自分も少しは攻勢に出たいのだ。
遥香が好きだからだ。今夜、たとえ本物のセックスは望めないにせよ、二人で一緒に感じ合い、愛する気持ちを高め合いたかった。
いいアイデアが浮かんだ。
「ブラを外せと言ったんだけど、命令が聞こえなかったのかい?」
遥香が時おりちらちら漂わせているM性に、つけ込もうと思った。さっきもそれでうまく事が運んで聖彦はすっかり味をしめていた。
「……むむむん」
「約束が違うって? 困るなあ。最初に俺の言うことは何でも聞くと言ったのはそっちだよ。遥香さんこそ約束を守ってほしいな」
なおも高飛車に告げると、戸惑い気味に遥香は、髪をかき上げた。
「……どうしたの? ねえ、少し怖い。だって、聖彦さんらしくないわ」
「俺、もう少しでイキそうなんだよ。だから遥香さんのおっぱいモミモミしながら、出したいんだ。それの一体どこが悪いのかな」
「あ、ああん。いやん」
自分の言葉の勢いに
煽
られた恰好で、聖彦は、大好きな人の髪を真上からつかんだ。水気を含んで、ひんやりとして、絹そのもののなめらかさに胸が震えた。
(いいのかよ。俺……こ、こんな、ひどい事しちゃって)ぐらぐら髪を揺さぶりながら、Sっぽくふるまうと愉悦が身内を突き上げてくる。
と、遥香は勃起をしゃぶりながら、ひときわ
艶
っぽい泣き声を響かせるのだ。
4
もう止まらなくなって、こしのある黒髪を強く引き絞り、聖彦は「精子飲みたいんだったら、さからうんじゃないよ。いいかい」と念を押した。
途端に遥香はMっぽい音色ですすり泣いて、聖彦をニヤリとさせた。
こっちから攻めると、快楽に太い芯が生まれて骨太になる感じだ。遥香の口に入ったまま、白い我慢汁がさっきみたく出まくっているのに、何とか踏みとどまれるのである。
「それとも俺がブラ、外してあげようか」
「……わ、わかりましたから」
そう答えてから、遥香は真っ赤に
火
照
った目元をのぞかせ、ためらう。
唾液と我慢汁でとろとろの粘り気にまみれた肉茎を、それでも休まずしごき続けており、別の手では内腿を優しく愛撫している。
聖彦が「早く!」と催促し、つかんだ髪の毛をぐいっと大きく絞り上げた。
「ほうら。脱ぐんだってば」
「あン――あン」
とうとう観念して、遥香は悩ましい仕草で白い肩をあえがせ、両手を後ろへまわした。
極細の肩紐がはらりとほどけた。
ふんぎりをつけたのか遥香は、黒のブラを素早く腕から抜き取ってフロアへ置き、すぐにフェラチオに戻った。それがいかにもけなげだった。
スマートな体型とはまるで対照的な、ずっしり重たげな双乳がゆさゆさ揺れている。
(こんな……こんな大きかったのかっ)
聖彦は心底驚かされた。
体が下を向いているから当然乳房も下を向いているのだが、白い柔肉を張りつめた肉丘が長々と垂れているさまが何ともいやらしい。
ちょっと薄茶がかったピンクの乳首も大きめで、厚いボタンを思わせる形にふくらんでいる。
「ほんとに、大きいな。びっくりしたよ」
「いや。言わないで」
恥ずかしくてならないらしく遥香は高ぶった声を出した。
あるいはそのモデル体型にそぐわない豊乳が(したがって男にとっては垂涎のセクシー・ボディになるわけだが)遥香本人にとってはうっとうしいだけなのかもしれない。だからブラを脱ぎたくなかったのではないか。
ちょっぴり気がとがめたが、興奮の方がはるかにまさった。
望み通り、乳房を両手でつかみとった。
アドレナリンがどっとあふれだした。遥香のバストは、ひょうたんを思わせる奥行きのある肉丘で、柔らかな丸みと張り具合が素晴らしいのだ。
「ああ、遥香さん、ありがとう。こんなふうにおっぱい揉みたかったんだよ。俺、ものすごく興奮してるよ」
「うぅむむ。うぅむむん」
「信じられないっ。ンあああ。この気持ちよさときたら、現実に起きてるんじゃないみたいだ。なんか、夢でも見てるようだ」
柔らかな乳房を揉んでいると、なぜここまで興奮が劇的に高まるのかよくわからない。篠宮遥香という美女を征服した気分に浸れるからか。それともこの乳房の感触が特別だからか……。
胸をこってり揉まれて、遥香の泣き声も一段と高まってきた。情感の溶けた音色で、アアン、ウフンとすすり泣きながら、一途に聖彦の勃起をしゃぶり上げるのだ。
爆発が近づいている。
もう死んでもいい――。あまりに快楽が深いと、人はタナトスに近づくのだと聖彦は初めて知った。
「遥香さん。いいよう。ものすごく、気持ちいい」
「ああふん。私も……感じるう」
「そう。おっぱい感じるの?」
「え、ええ。とっても。ああううっ。ねえ、だから……だから、恥ずかしいのよ」
ぐっしょり濡れた唇をなまめかしく開いて、遥香は愛らしく答え、それから、「聖彦さん、いつでも出していいから。遥香に、飲ませて」
潤んだ瞳で見つめてきた。
なおも聖彦がバストを揉みつづけると、さも切なげに鼻を鳴らして、感情をぶつけるごとくフェラチオを再開した。
「むふぅ、むふうふん」
「う、あっ。うあうう」
「……うぐぅ、うぐふうン」
またしても聖彦は驚嘆させられた。遥香はどんどん顔を沈めていき、やがて長大な勃起をすっぽり根元までくわえてしまったのだ。
多少苦しげな息づかいをしているものの、いわゆるディープスロートを行ないながら、巾着壼のように唇をぴくりぴくり締めつけるし、そればかりか幅広の舌腹を茎胴にからませてくる。
(どこまですごいんだ、遥香さんて……)
聖彦のそれはサイズが普通より大きめだし、そこまで深くスロートされたことは今まで一度もなかったから、相手に要求することさえ思いつかないでいた。
まさに未体験ゾーンの悦楽だった。
勃起全体を口の粘膜に深々と濡れ包まれて、根元を口唇で刺激されるのがこんなに気持ちがいいとは知らなかった。
「クああうう。いいい。す、すごすぎるう」
がくんとのけぞり、聖彦はうめいた。
もちろん両手は片時も豊満な乳房から離さず、奥行きのあるふくらみを粘っこく揉みしだいている。
モミモミする手のひらを通して、興奮は脳幹と海綿体にくまなく行きわたるのだ。
「俺もう、どうにかなっちゃうよ、遥香さん。そこまでオチンチン、くあううっ……しゃぶられたことないもの」
「むぐぅぅ……む、むぐむう……」
端整な美貌を真っ赤にさせ、遥香はディープスロートにふけった。
そして呼吸が苦しくなると、ヌルーッと茎胴沿いに顔をいったん引き上げて、すぐにまた沈めていくのだ。それを甘ったるい泣き声とともに行なうから、愛撫される聖彦はたまったものではない。
「呑ませて。うふン。あなたの精子」
「あああ。遥香さん――」
すさまじい淫楽のマグマが今まさに噴き上がろうとしていた。
「うあああ。出る!」
「……ぐぅ……ンぐうう」
「うわああぁぁ。出るうう」
大声で叫んでいた。
それは聖彦が人生で限りなく繰り返してきた射精とはまるで違うものだった。このままどこか異空間へワープしてしまうのではないか。そんな爆発的なエネルギーがとめどなくあふれだすのだ。
「うっ、うわわあぅぅぅ」
「んく。んくく」
遥香は激しく顔を前後させて、聖彦の欲望を余さず絞り出しにかかる。背中に届くストレートの髪がまばゆい光沢を放って波打つ。
そうして次々噴き出す聖彦の粘液を、苦悶と愉悦のまじった吐息とともに受け止める。
「まだ出る。うああ、飲んで。遥香さん!」
色とりどりの花火が体内で炸裂するような興奮を聖彦は味わう。
そのさなかにあって視界の隅では、遥香の黒のショーツの腰部が妖しく悶えるのをとらえてもいた。


