リングギャグは猿轡の一種で、BDSMの現場で使う口枷である。ボールギャグと違い、口を塞ぐ部分が輪になっている。着用者の気道を完全には塞がないため、窒息の恐れはボール型より低い。口を開けたまま固定するので、何かを挿入する形にも向く。猿轡はふつう言葉を奪う道具だが、リングギャグははっきりした発音はできなくても、かなり大きな声や音を出せる。かつてはリングとプラグがセットになった商品もあった。着用者——主に女性——の顔が歪み、よだれが垂れるのを見て興奮する嗜好があり、その効果が高い器具として認知されている。
輪は入口ではない
口を塞がない目的は、呼吸を残すことにある。挿入が第一目的ではない。実際に何かを入れるにはリングが小さすぎる製品が多く、逆にかなり大きい輪で口を開かせた場合は、ただ入るだけで使い勝手は悪い。輪の直径と、歯と唇の負担は別の問題である。長時間装着すれば顎が疲れ、よだれは止められない。それが視覚効果でもある。ボールギャグ、テープギャグ、バルーンギャグ、ビットギャグと同じ棚に置きつつ、リングギャグだけが「口を閉じさせない猿轡」として残る。顔の歪みと涎を商品にするなら、輪のサイズは挿入のためではなく、開口の形のために選ぶ。
かつてのリングとプラグのセットは、開口と閉塞を同じ器具で切り替えるためのものだった。プラグを外せば息と声が通り、はめればボールギャグに近づく。いま単体のリングとして売られる製品は、開口の形そのものを見せるための道具である。はっきりした言葉は出せなくても音は出る、という中途半端さが、沈黙の猿轡とは違う興奮を作る。窒息しにくい、と書いてあるから安全なわけではない。顎関節、歯、唇の内側は、輪の硬さと締め方で傷つく。呼吸を残すことと、口を性器として使うことは別の設計思想であり、リングギャグは前者のために輪になった器具である。












