ブーツフェティシズム(Boots fetishism)とは、異性のブーツ姿、あるいはブーツそのものに性的興奮を覚える性的フェティシズムを指す。日本語ではブーツフェチと略される。靴フェティシズムの一種であり、主に女性が履くブーツに対する嗜好として男性に多い。フィット感やほどよい拘束感、女王様的な感覚を求める場合はサディズムやマゾヒズムと重なる。服飾文化としてのブーツがある地域とない地域では、気温、湿度、降雪、文化的背景によって差が出る。境界は曖昧で、靴フェチ、ラバーフェチ、SMの女王様ブーツが同じ一足の上に重なることもある。
脚を包み、蒸れ、締め付ける
ブーツには固有の特徴がある。脚を包み込んで脚線美を際立たせること、長時間の着用で蒸れること、締め付けて脚にフィットすること。通常の靴にも同じ要素はあるが、ブーツではそれが極端に強調されるため、別物として認知されやすい。視覚、嗅覚、触覚のどこに固着するかで、愛好者の内部は細分化される。女性誌(『JJ』『CanCam』『ViVi』など)のブーツ特集号が、フェティッシュな成人雑誌と同等に読まれることもある。ファッション誌の商品ページが、そのままfetishのカタログになる。
長さ、ソール、ファスナー
形状への嗜好は、まず長さで分かれる。くるぶしより上、ふくらはぎ中ほどのショート、膝下のノーマル、膝までのロング、膝上のいわゆるニーハイ。ソールも、ハイヒール状、ソールも踵も厚い厚底系、踵の低い乗馬靴系に分かれる。薄い素材で脚にフィットし足首が細く見える美脚系と、芯材が入って脱着が容易で太さが変わらないゴム長靴系、という分け方も愛好者側では使われる。靴業界やファッション業界の用語とはずれる。ロングでも膝下か膝上か、内側zipかzip無しか、セミロングか乗馬靴タイプのロングか、紐・ベルト・ブローチなどの飾りを好むか。個人差は大きい。
素材と光沢も独立した軸である。レザーやスウェードは獣皮特有の匂いと柔らかさがある。本革のエナメル仕上げ(パテントレザー)、合成皮革のエナメル(パテントPU)、PVCは光沢が強く、自由なデザインが効く。天然ゴムでありながら装飾的なブーツもある。エナメルのレインブーツや婦人用長靴の、ツルツルでピカピカした表面に欲情するケースがあり、西洋では wellygirl(長靴を履いた女性)というジャンルがフェティシズムのカテゴリとして成立している。光沢、匂い、ゴムの厚みは、それぞれ別の固着になりうる。
履く動作、コツコツ、キュッキュッ
市販ブーツは取り扱いの容易さから、ファスナーやマジックテープが多い。ゴム長靴系としてそのまま履けるものも人気がある。一方、紐の編み上げやバングルなどの金属締め付け具を併用したボンデージファッション風のブーツは、コスプレ的な側面があり、グラビアでは好まれる。ブーツを履く動作そのもの、舗道とヒールが立てる「コツコツ」という音、長靴で歩くときや長靴の表面同士が擦れる「キュッキュッ」という音に惹かれる人もいる。嗜好の範囲は、履かれた結果の脚線だけでなく、着脱と歩行の過程にまで広がる。
色では、ロングブーツは黒や茶が主だが、音楽隊やバトンガールの白いブーツを好む例もある。婦人用長靴やエナメルレインブーツでは、赤・白・黄・ピンクといった、普通のロングブーツでは楽しめない鮮やかな原色が魅力だと言う人も多い。白は別格として、原色の長靴は日常の黒ロングとは別のカテゴリになる。
蒸れた内部のイソ吉草酸
長時間ブーツに包まれた足が蒸れ、爪先・足裏・踵の皮脂、汗、垢が常在雑菌で分解され、イソ吉草酸などの悪臭が内部に残る。その臭いを好む性癖がある。恋人や妻、同居人が寝静まったあと、こっそり嗅ぐ者もいる。ネットオークションでは、臭くなったブーツが高額で取引される。真夏の日中や数年間毎日、素足やストッキングで履いていたもの、足にぴったりフィットするストレッチ系やロング、ニーハイ系が人気で、数万円で落札される場合もある。履かれた時間そのものが、商品になる。
ニーハイは膝上ではない
一般にブーツフェティシズムと言うと、フィット系のロングや女王様のエナメルロングを好むことだと思われがちである。実際は形状、素材、締付具ごとにフェティシズムが違い、総称として「ブーツフェティシズム」が使われているにすぎない。膝上丈を「ニーハイ」と呼ぶ用法は近年の日本語だが、国際標準では誤りで、正しくは Over The Knee(OTK)である。ショート以上で概ね膝丈に近い長さは Knee High が正しい。日本ではファッション業界の先導で「ニーハイ=膝上丈」が根付いてしまった。太腿付近まで覆うものは Thigh High(サイハイ)、脚の付け根付近まで完全に覆うものは Crotch High(クロッチハイ)が正しい記載である。呼び方がずれても、包む長さ、光沢、蒸れ、音——固着する点は一本のブーツの上で分かれたまま残る。














