BDSMにおけるスパンキング(spanking)は、合意した成人同士が、平手や平らな道具で尻を叩いて痛みと興奮を取りにいく打撃プレイである。尻叩きの総称として使われることが多いが、道具ごとに呼び名が分かれる。籐のケインならケイニング、スリッパならスリッパリング、パドルならパドリング、鞭ならウィッピング。平手だけの場合、英国ではスマッキングと呼ばれることもある。ここでは成人の合意プレイを先に置く。学校教育や家庭の体罰としての尻叩きは、歴史上の懲罰であって、性的対象ではない。
ラブ・スパンキングとしてのBDSM
性行為や前戯の一環で、叩く側と叩かれる側が役割を決めて快楽を取るやり方を、ラブ・スパンキング(love-spanking)と呼ぶ。BDSMの打撃系の一支として読まれることが多い。痛みの量、道具、回数、セーフワードは事前に決める。叩かれた熱と羞恥が興奮に変わる人と、叩く手ごたえと相手の反応を見る側の興奮が、同じセッションのなかで交差する。国内では海外アダルトビデオの流通とともに愛好者が増え、海外ほどハードではないものの、国内AVでもスパンキング場面は珍しくなくなった。
OTK、ベントオーバー、コーナータイム
OTKは Over the Knee の略で、膝の上にうつぶせにして叩く基本姿勢である。受け手が暴れるロールを取るときは、外側の腕を背中側で押さえ、両足で相手の脚を挟むと動きが止まる。ヘアブラシなど短い道具以外は使いにくい。ベントオーバー(bent over)は腰を折って尻を突き出す姿勢で、机にうつ伏せ、椅子に手をつく、四つん這いなどがある。パドルやケインなど長い道具が使える。コーナータイムは、打ち終わったあと部屋の隅に立たせる行為で、尻を出したまま立たせることが多い。辱めと、興奮や混乱を鎮める時間の両方を見込む。
脇に抱き抱えて叩くスタイルは、漫画やアニメではよく見るが、片手で成人の体重を長時間支えるのは体力的に難しい。スパンキングビデオではまず見られない。ベントオーバーの相手の腰に片腕を回した、擬似的な抱え込みは稀に残る。
体罰史としてのディシプリン・スパンキング
欧米では躾や懲罰としての尻叩きをディシプリン・スパンキング(discipline-spanking)と呼ぶ伝統があった。これは合意のない体罰の歴史であり、成人の性的ロールプレイとは別物である。未成年への体罰の是非は社会問題として論争されてきたが、ここではその論争を性的に扱わない。BDSMのスパンキングは、同意した成人が痛みと羞恥を快楽に読み替える契約である。道具の名前や姿勢の名前は体罰の語彙から借りているが、現場の条件は同意と中断可能性である。
道具の名前は借り物、現場は合意
ケイニング、スリッパリング、パドリング、ウィッピング、スマッキング。呼び名は叩く物で変わるが、成人セッションでは同じ打撃系の棚に並ぶ。OTKは短いヘアブラシ向き、ベントオーバーはパドルとケイン向き、コーナータイムは打ち終わったあとの辱めと鎮め。抱き抱えは映像では稀で、擬似抱え込みが残る程度だ。ラブ・スパンキングは前戯にも本番中にも組める。国内AVは海外ほどハードではないが、海外作品の流通が愛好者を増やした、というのが現場の見立てである。
尻叩きという言葉自体が、懲罰と性愛の両方に使われてきた。このサイトで先に置くのは後者である。平手でも籐でも、回数と強さと中断の合図を決めた成人同士の契約として読む。体罰史のディシプリン・スパンキングは、その契約の外側にある。子供の尻を性的に描く話ではない。道具と姿勢の語彙だけが、教室と家庭の懲罰からBDSMへ渡った。













