「いずれ、もっと大きな穴にしていくがね。最初はこれでいいだろう」
消毒液のスプレーを望月が吹きつけます。
じとっと冷や汗をかきながら、私はただ見ているしかありません。
パチン、パチンと、全部で八カ所に穴が開けられ、金色の鳩目が差し込まれていきました。
小さな、敏感な肉片にびっしりと鳩目が埋め込まれました。
「この鳩目もいずれ、ハンマーでぶっ叩いて潰すんだが、いまはまだこれでいいだろう」
そこにヒモが通されます。
めいっぱい引っ張られると、膣がパッカリと開いていきます。
「まあ、これだけじゃ、虫は入っていかないかもしれないから、こいつを仕掛けてやろうか」
直径四センチ、長さ十センチのほどの、針金で荒く編んだカゴを、鬼丘はピンク色に口を開けている膣の中に押し込みます。
「ぐがっ」
鋭い針金が、粘膜を削るようにして奥へ侵入していきます。
「こいつは、釣りで使うコマセを入れるカゴだよ。おまえの穴に虫をたっぷり誘ってくれるぞ」
「おお、子宮が見えそうだ」と望月。
「いずれ、もっと楽に開くようにしてやるからな」
小陰唇を広げているヒモは、腰を回って縛り付けられていきます。
空気が体の中に入ってくるのを感じます。完全に開ききっているのです、虫を捕るために……。
次は肛門です。
膣鏡を抜き取られ、小さなおちょぼ口になっています。そこにも穴を開けるのでしょうか。
「これを見ろ」と鬼丘。それは、膣鏡に似ていますが、違う器具でした。
「特大のアナル・リトラクターだ。手術で使うんだろうが、おまえにぴったりだぞ」
鏡のように磨き込まれた嘴のかわりに、逆U字の棒状のものが二つ、ついているのです。
頑丈な馬蹄形の腕に支えられていて、腕の片方は、刻みのついた支柱に取り付けられていました。
鬼丘がそれを操作して見せます。
「シンプルだろう? こうやって広げるだけだ」
カチッと音をたてて支柱部分のツマミをずらすだけで、逆U字の部分が大きく開いていきます。
「最大、十八センチまで開く」
最大まで持って行くと、とても人間の肛門の大きさではありません。四角い大きなペットボトルがラクラク通り抜けるぐらいの幅です。
鬼丘は私のお尻に唾をはきかけ指で揉み込み、リトラクターを差し込んでいきます。
冷たい金属が、せっかく閉じていた肛門に奥深く入り込んできます。それだけでも苦痛なのに、押し広げていこうというのです。
「力を入れるんじゃないぞ。ケツの穴が裂けるぞ」
カチッ、カチッと音がして開いていくのがわかります。力を抜けと言われても、コツがよくわかりません。
「せいぜい五センチが限界だろう」
ぽっかりとお尻に大きな穴があきました。私の下腹部は荒い呼吸で波打っています。苦しい姿勢ですが、それよりも、余計な力を入れてはいけないという一心で、なんとか下半身を緩めるようにします。
それでも、穴を開けられ引っ張られている性器が痛くて、つい、力が入ります。すると、お尻が硬い器具を握りしめるように、キュッと反応してしまうのです。
そして鬼丘が、虫の好むエキスをまぶしていきます。
「ケツの穴、おまんこにたっぷり入れてやるよ」
肛門と膣にはあふれるほどまぶしました。
そして乳首、乳房、鼻の穴、口の中や周り、耳の穴、首筋、脇、そけい部、太もも、臀部にも。
「あと二カ所、いい場所があるんだが、それはまあ、これからだな。どこか、わかるか?」
私にわかるはずがありません。
早くも香りを嗅ぎつけた虫たちが肌にまとわりついてきます。
鬼丘はエキスのついた指先で、私の開ききった性器を触ります。その先端が、もっとも敏感な核をつまみました。
「いずれ、このクリちゃんを大きく育てて、そこにも虫が食いつけるようにしてやるよ。それから、ここだ」
太い指先が、おしっこの口を開こうとします。
「ゆっくり時間をかけて、ここも広げてやるからさ。楽しみにしているんだな」
二人は笑ってまた小屋に戻っていきました。
時間の感覚が徐々に薄れていきます。鬼丘や望月がいるときと、いないときの違いしかなく、二人がいれば必ず残酷な目に遭うのに、それがうれしいとさえ感じるほどです。
なにをされてもいいから、ひとりにしないでほしいのです。
こうして放置されているよりも、彼らが自分の体を痛めつけているときのほうがまだいいのです。
穴という穴を開かれて、体を裂かれるような痛み。そして孤独に耐えるのは辛いことでした。
太陽は真上にのぼり、木々の間から降り注ぐ光がまぶしく、目を開けていられません。ときどき意識を失いながら、ふいに猛烈な痛みをもたらす無数の虫の攻撃を受け気がつく……。その繰り返しでした。
隷獣改造
どれぐらいの時間が経過したのでしょう。
体の奥まで虫たちに蹂躙されて、朦朧としていたようです。
パチンパチンと頬を叩かれて、目を開くと、曇ったゴーグル越しに、ぼんやりと視界が広がります。太陽はまだ高い位置にありました。
「どうだ、収穫はあったか」
望月がしゃがみ込み、私の体を眺め回します。
私の目の前にある柔らかな肉と粘膜の中に、おぞましい虫たちが、つぎつぎと入り込んでいくのを見たような気がしています。
それは夢か幻だろうと思いたかったのですが、現実であることを教えるかのように強烈な痛みが襲ってくるのです。
その繰り返しに私は心が折れ、自分を守るために何度も意識を失ったのです。
鬼丘は、先端に小指の先ほどの小さなピンセット状のハサミのついた細い管を持っていました。白く光っています。
手元には液晶画面があって、それを見せるのです。
「奥まで入り込んでいるだろうからな。慎重にやらないと」
尻の穴にそれが差し込まれていきます。
「ほら、大物だぞ」
半分にちぎられたムカデが引っ張りだされたとき、私はまた失神してしまいました。
再び、頬を激しく叩かれました。
「けっこう採れたぞ」
ケースには、今朝見た以上に大量の虫が入っていました。
「すごいじゃないの、郁美」
その声にハッとしました。有希恵がいるのです。私の頭の上の方に。
「郁美、見てごらんよ。あんたの体にこんなにすごい虫がたかってたんだよ。これはなに?」
「うん。これはカナブン、これはゴキブリだな。それにこいつはダニの一種。毛虫、蛾、ブヨ、蚊、小さな蜂、蟻、カミキリってとこだ。それにこれはハネカクシ。あちこちに皮膚がかぶれたみたいになってるだろう。これのせいだよ。それに、今回の大物はこいつだな」
鬼丘は箱を振って、十センチほどもあるムカデを見せつけます。
「ごあぁー」
私は叫んでいました。
「何カ所か、痺れているところもあると思うんだけどね。こいつは肉食で虫を食べに来たんだな。ほかにも三匹ぐらいはいたね、どこにいたと思う?」
「え、どこなの?」
「ケツ穴だよ。中で潰してから、引っ張り出してやったがね。下手に暴れるとやばいからな」
心の底から震えていました。自分の体にそんな大きな虫が入り込んでいたとは……。大声で叫び出したいぐらいの恐怖でした。
「初日でこれだけ虫が捕れるなんて。やっぱりガタイが大きいと有利なのは、自然界の法則かしら」
「いやいや」と鬼丘。「ガタイが大きいと、それを維持するためにたくさんの食べ物がいる。体を支えるためには捕食能力がなくちゃダメだ。いまのままじゃ、生き延びることはできない」
「そうね。虫がいくらたくさん採れても、それがこの体を維持できるだけのエネルギーになるかどうかってところなのね」
なにかの実験でもしているかのように、冷静に話をしているのです。
「こいつをまた料理してくるから」と鬼丘が告げて遠ざかりました。
「よく決意したわね」
有希恵が私を覗き込みます。
「やっぱり私の思ったとおり、あなたの血には、隷獣の素質があったのね」
そして有希恵はズボンを下げて、私の顔にまたがりました。真っ白な下半身、そしてこんもりとした茂みが、目の前にあります。
「喉が渇いたでしょう。ちゃんと飲みなさいよ」
ジョーッと音を立てて、有希恵は小水を口に注ぎます。
しぶきを立てて、顔、鼻を濡らしていきます。必死に喉を開けて飲み干しました。
「下手くそね。もっと上手に飲みなさいよ」
有希恵は、湿った股間を伸びきった私の足にまたがって、こすりつけてぬぐいました。
私の体をトイレットペーパーのように使ったのです。
「うわあ、酷いわねえ。そこら中、虫に刺されてるわ。こんな姿、誰にも見せられないわね」
同年代の同性に言われて、自分がどんな姿になっているのか、想像してみました。それは皮膚が裂け、ぶつぶつや、でこぼこだらけになっている姿です。
体中が痛くて、熱があるようです。昨夜から血を吸われ、噛まれ、食いちぎられ続けていたからです。
見える範囲の皮膚は、ぶよぶよに腫れて、点々と赤く跡がついています。広げられた二つの穴の粘膜は、ズタズタに傷つけられているのか、感覚が麻痺しているようです。
ほどなく、すり鉢を持って来た鬼丘が、その中身をゴミ箱に捨てるように、私の口に注ぐのです。
「熱はあと一晩もすれば下がるさ。最初が肝心だ。こうやって抵抗力がついてくるんだ。そうなれば、獣への第一段階を突破できる」
何回にもわけて、ドロドロの異臭のする液体を飲まされます。その様子を有希恵はカメラで録画しています。
「あんな風にされて、痛くないのかしら」と有希恵がつぶやきます。
痛くないわけがないのです。
「なーに、大丈夫。鼻輪もちゃんと消毒しているし、この食べ物にはそれなりに役に立つ薬草のエキスも入っているしな。見ろ。化膿はまったくしていないだろう?」
「だけど、あの、大事なところなんて……」と有希恵。
「ああ、まだこれは臨時なんでね。穴をもう少し大きくして、金属のハトメを打つ予定だよ」
「そんなことしたら……」
「まあ、こいつは耐えるだろうね。それぐらいのことは平気だろうさ。自分から隷獣に志願したんだ。さあ、忙しいぞ。今日はほかのこともしなくてはならない」
「望月さんは?」
「そのためにちょっと町に買い出しに行っている。どうだ、こいつがなにをするか、見たいんだろう?」
「ええ、見たい」
「じゃ、今晩はここに泊まるんだな。退屈はしないだろうさ」
「話では聞いたことがあるけど、本当に隷獣になる女なんて、見たことがなかったから」
「昔は、隷獣の小屋が山の向こうにあって、繁殖までさせていたそうだがね。いまでもその頃の集落は残っているが、一頭も残ってはいない」
「そう。でも、最近まで何頭かは残っていたの?」
「人間に戻りそこなったやつがな。かろうじて生きていたが、見なくて幸いだよ。あまりにもその……」と冷徹そうな鬼丘でさえも口ごもる。
「でも、見たかったな」
「相当な心の準備が必要だ。普通の心では、こっちがやられてしまう。おれはガキの頃から見ていたからな」
「繁殖ってできるの?」
「必ずというわけじゃない。体を酷使しているから、普通のようにはいかない」
「不可能じゃないわけ?」
「ま、ゼロではない。おれがガキの頃に産ませたことがあるよ。珍しいからって、大騒ぎだったはずだ」
「これだけのいい体なのに、繁殖もさせないなんて、もったいないじゃない?」
「有希恵様にそこまで面倒を見る勇気がおありなら……」
「そうか。それを言われちゃうと、ちょっと考えちゃうわね」
熱いうちに打て
鬼丘が洗浄用の道具を持ち出して、私の膣内を水で洗います。激しい水流に腫れ上がった粘膜が洗われていくのです次は、お尻からお腹の中へ。冷たい水が染み込み、逆流して噴き出します。何度もやりながら、最後にはホースの先端を奥まで入れて、大量浣腸をされました。
開きっぱなしのお尻なので、まったくガマンができません。
汚物の混じった水が噴き出してきて、顔や体に浴びてしまいます。
「ごう、ぉぇっ」
開いたままの口や鼻に自分の汚物が入ってくるのです。それを無抵抗で受け入れるしかありません。かなりの量の汚物と水を飲んでしまいました。
余った水でその顔と口の中も洗われました。水が鼻から気管に入って激しくむせていましたが、同情などはされないのです。
びしょ濡れになったお尻から、鬼丘はアナル・リトラクターを取るためにネジを緩めてくれました。口がすぼまり金属の器具を引き抜きます。
やっと肛門は閉じることが許されました。見ていると、そこの感覚はあまりなくて、動きも鈍いのです。なにか大きな塊をはさみ込んでいるような鈍痛が残っています。
お尻の穴は、とうとう完全には閉じませんでした。指が入るぐらいの穴が残っています。そこからまだ残っていたのか、水が漏れています。
膣内のコマセのカゴが、ようやく引き抜かれました。虫たちに蹂躙されて腫れ上がった粘膜を、掻きむしるような行為です。激しい痛みに思わず全身を震わせます。
「あらあら。せっかくのおまんこが、台なしだわ。よっぽど虫に気に入られたのね」
カゴにはまだ、洗っても落ちなかった虫の残骸が貼り付いていました。水に混じって、どろっと粘りけのある液体も流れます。
「虫にやられて、感じてたんじゃないの?」
有希恵が笑っています。
そんなこと、ありません。ただひたすらおぞましく、痛かったのです。痛い、痛いと泣いたり失神していただけなのです。
小陰唇を広げていたヒモも解かれました。だらしなく伸びきったまま、元に戻ることはありません。
埋め込まれた小さな鳩目のせいもあって、剥き出しの恥丘から、貝のようにだらしなく飛び出しています。
足を縛っていた縄が解かれました。ゆっくり背中を伸ばし、地面に大の字になります。柔らかな土に触れるだけでも、背中やお尻に痛いところが何カ所もありました。
一晩中、そして朝からいままで、虫に食われていたのですから。
手も自由にしてくれました。
逃げよう。いましかない。
私は一瞬考えたのですが、体がまったく動きません。長時間、苦しい姿勢で固定されていたのと、虫たちの毒が回っていたからではないでしょうか。
逃げたくても逃げられないから、縄が解かれたのです。
悔しくて涙がポロリと流れ落ちました。
ぐったりしていたら、鬼丘は容赦なく鎖を引っ張るのです。
「がぁぐぅぅ」
うめいても、首が引き抜かれそうな痛みが増すだけです。
這うようにしてついていくと裏の水場に行かされて、そこで体を洗われました。
乳房の縄、鼻フックもゴーグルも外されました。
冷たい水を頭から浴びせられ、石鹸の泡で痛む体を洗うのです。しかも、柄のついたタワシで擦られていきます。
切り傷、擦り傷をタワシが刺し、皮膚をめくりあげていきます。そこに冷たい水が染み込んでいくのです。
寒さと新たな激痛に震え、泣きわめいていました。
「大げさだぞ。このぐらい、慣れなくて生きていけないじゃないか」
鬼丘が厳しく言います。
体全体を洗われて小屋の土間に連れていかれました。ふわっとした温かい空気に、少しホッとします。
拘束はなく、水の冷たさと、発熱と、痛みと恐怖にガタガタ震えていましたが、徐々に落ち着いていきました。
さっきに比べれば、このときのほうが、逃げようと思えば逃げることもできたと思います。
でも、私は小屋の壁にもたれて、ただじっとしていました。彼らや有希恵が、私に温情をかけるはずはないと思っていました。それはわかっていても、いまは、さきほどのように逃げたいという強い衝動が消えていました。
有希恵が持って来た食べ物が広げられ、鬼丘はそれをうまそうに食べています。その匂いは、つい昨日まで、私にも簡単に手に入れられたものばかりです。コンビニやデパ地下に漂う香りが小屋に広がります。
もはや、望んでも得ることのできない別世界のものになったのです。
人間をあきらめること。人間とケモノを区別すること。それが隷獣になることです。私はそれを、体で理解させられるのです。
ぼんやりとしていると、有希恵は「あいつ、こっちを見てるわ」と言いました。
「気にするな。なにも考えてはいないはずだ。高熱でそれどころじゃないだろう」
「ふーん。食べたくないのかしら」
「もし素質があるなら、隷獣らしく、あきらめるはずだ。ペットじゃないんだからな。ケモノなんだから」
「おあん」と、私は思わず喉を鳴らしました。
「これから、どうするの?」
「あいつが戻ってくればわかるさ。夜は夜でお楽しみがあるしね」
「私も楽しめる?」
「それはどうだろう。試してみればいい。有希恵様なりの能力を確認することになる」
「私の?」
「そう。ケモノを見抜く目を持っている。その敏感さは貴重だ。そして、人がケモノになっていくように仕向けても、心が乱れない。その冷静さも貴重な能力だ」
「ふーん」
「なにしろ、そこにいるのは、生身の体なんだぞ。人をひとり、こうしてケモノにしてしまうのだからな。それで有希恵様は平然としていられる」
「まあ、そうね」
有希恵はよくわかっていないのでしょう。私が本能のままにこの道を選んだように、有希恵もまた、わからないなりに、本来の能力を発揮しつつあるのです。私がその最初の犠牲者であり、実験台なのです。
そこに望月が戻ってきました。どうも敏感になっているのか、臭いでわかります。彼が都会的な臭いをつけてきているのもわかります。
「お、早いな」と鬼丘は機嫌がいいようです。
「うん。たいして時間はかからないよ。地元で全部、揃ったから」
望月はそう言いながら、私を見ます。きっと無反応なので驚いたのでしょう。
「大丈夫か?」
「ただ熱が出ているだけだ。じき治る」
「ムリさせないほうがいいんじゃないか」
「鉄は熱いうちに打て、だ。おれたちは甘やかすために、ここにいるんじゃない」
「ま、そうだが……」
「時間が大切だ。一定の期間の間に、徹底しておとしめてやらないと、あとで裏切られる」
「そういうものか?」
「そうだ」
鬼丘は望月から、いくつかの袋を受け取りました。
「なに、それ」と有希恵。
「いまは」と鬼丘は口を歪め、それを棚に置きました。
「ほら、時間がないぞ。日が暮れる前にやることがある。手伝ってくれ」
「人使いが荒いぜ」
「おまえ、町で焼き肉を食っただろう。ぷんぷんしている。昼メシが終わってるなら、さっさと仕事だ」
ああ、それは焼き肉の匂いだったのですね。私にはもう口にすることもない、遠い存在です。
男たちは棚に行き、ガチャガチャと金属音を立てて道具をそろえていました。
前にも使ったベルトなどの革製品に穴をあけるパンチ。そして、金属の細い管。消毒薬も用意されました。
なにかされるのです。私の体に。もう、壊れそうなこの体に……。
土間には、昨日よりやや太い棒がセットされました。長さは同じぐらいでしょう。
「郁美。自分でまたがってみろ」
鬼丘に命じられます。
昨日は股間に塗り込まれた薬の力を借りて、その棒にまたがるしかありませんでした。今日は私の意思で、自分からそれを突き入れろ、というのです。拘束もされていません。イヤなら逃げることもできそうです。
「こっちに、おまえの大好きなものを塗ってやる」
かゆみを誘発する例の液体を、棒にたっぷりと垂らします。
もし自分からそれを体内に入れれば、激しいかゆみを受け入れ、死ぬ思いをしながら、ボロボロの粘膜を太い棒にこすりつけることになります。
前後の穴は粘膜を虫に噛まれ、かぶれ、腫れ上がっているのです。
それは快楽などとはほど遠い、激痛だけの世界でしょう。
改造
望月も有希恵も、黙って私を見ているだけです。
鬼丘も、ただ待っています。
私は、体を起こしてみました。体が重く、だるくて、駆け出すこともできません。
小屋から外に出ることもできないでしょう。
でも、私は棒に背を向けて、小屋の戸口へ一歩、踏み出しました。
「そっちじゃないよ」
鈍くなっているので、鬼丘はすぐ私の背後にきて、剥き出しの両肩をしっかりつかんでいました。
体の向きを変えられます。
土間から生えている棒。そんなものが体に入るとは思えません。
許して……。声にならないので、目で鬼丘に訴えました。
「ほら」
鬼丘は笑いながら、私を押し出します。
いつの間にか、棒の上に立っていました。
どこからか冷たい風が流れてきて、私の頬を撫でていきます。
「そうだ。やれよ」
彼らは私の大柄の醜い裸体をながめて、笑っているのです。
虫刺されで傷だらけの体を、ゆっくりとかがめていきます。膝がガクガクと震えています。おそろしい。苦しい。それでも、もう止める力もないのです。
「ふぇぇぇぇ」
うめきながら、腫れた粘膜を棒の先端にあてました。閉じかけた傷口を開くように。
ゆっくりと体をさらに沈めます。
拡張され続けたせいか、すんなりと棒は奥へ入っていきました。体でおぼえたのでしょうか。要領までよくなって、棒の大半がスムーズに入り込んでいきました。
真ん中をすぎたあたりから、腸壁がジンジンと痺れてきます。激烈なかゆみ。踊るように身もだえをはじめます。薬が染み込んできます。抑えることができません。
太い、と実感したのはそのあたりでしょう。昨日のようには入っていきません。
「うっぐぅぅぅ」
バランスを取りながら、なおも棒を受け入れていくと、やがて短い方の棒が膣口に近づいてきました。
そこで腰から力が抜けました。
「はっ、ひー」
思わず恥ずかしくも甲高い声を上げて、ぺたんと尻が土間につくまで、いっきに突き通ってしまいました。
立ち上がることはムリです。擦りつけようにも、自分の体を動かせません。
狂ったように身もだえして、絶望的な苦痛の中で、底なし沼に沈んでいくような感覚です。
「あさましいわ」
有希恵が吐き捨てます。
男たちはなにも言いません。
しばらくは棒をくわえ込んだままで、体をくねらせていましたが、ようやく膝に力が入るようになって、ぐいっと持ち上げると、全身をカーッと灼熱の快感が追いかけてきて、私はもうそれに夢中になっていくのです。
十分ほど、休むことなく体を上下させながら、何度も絶頂を味わっていくのでした。
壊れる、もう、私は完全に壊れる、と思いました。
鬼丘と望月は私の背後に立って、ふいにバランスを崩さないように注意してくれていたようです。
もし棒が内臓を突き破るようなことがあれば、そこですべては終わってしまうからです。
ケモノと化して、もだえ狂う私を、鬼丘は危ないと思ったのでしょう。
乳房と上半身に縄をかけると、天井からの滑車に結びつけ、バランスが取れるように吊り下げていきました。
乳房に食い込む縄。その新たな痛み。でも、体が軽くなったような気がして、屈伸をするようにさらに激しく上下に棒を擦り続けました。
すでにかゆみは遠のいていました。薬剤の効果は失われているのに、自らの欲望からやめることができないのです。
鬼丘と望月が、縄をゆっくり引き上げて棒を抜き取り、足が地面につかないほどまで吊り上げました。
私は足をバタバタさせて、もっと欲しい、もっとめちゃくちゃにしたいとアピールしましたが無視されました。
「いけそうだな」
鬼丘は急いで棚に戻り、そこから、以前に見せつけた節くれ立った秘木を取ってきました。
宙づりの私の膝に縄がかけられ、M字型に開いていきます。その足を天井に向けて吊り上げて、腰のあたりにも縄をかけました。
婦人科の診察台にいるような格好です。
鬼丘は、手にした秘木を持って近づいてきます。
「これがうまく入るかどうか、試してみるか?」
返事を待たずに、肛門にその先端を感じます。
ぐりっと入り込んできました。
先端部分は難なく入ったようです。それから、捻れ節くれ立った秘木の中間部分を、慎重に探るように入れようとします。
「あぐぅう」
腸が捻れるようです。
ただの木の棒ではないのです。ケモノが乗り移ったような、特別な木なのです。
それが鬼丘に操られて、生きているかのように私の中にぐいぐいと入り込んでくるのです。
痛みを避けるように体をくねらせますが、それはまるで秘木に命じられているかのようで、くねるたびに奥へ奥へと入り込んでくるのです。
まるで、私の体の中が秘木に合わせて組み替えられていくようです。
鬼丘は、三十センチもある長い棒を、最後の瘤だけを残してすべて体内に入れました。
「うーん。みごとだ。これほど早く飲み込むとはね」
「でも、その最後の部分はムリじゃない?」
有希恵が私の腹部に溜まった汗を指先で撫でながら言います。いつしか、私は全身が燃えるように熱くなっていて、汗をびっしょりかいていたのです。それは虫の攻撃による発熱とはまったく違い、自分自身の中にある発電所がフルパワーを発揮しているような、すさまじいエネルギーのせいでした。
「いまの郁美では瘤の部分を入れようとしてもムリだ。肛門が裂けてしまうだろう。しかし、いずれ自然に飲み込んでいくはずだ」
興奮した鬼丘は、急いで棚へ行くと、そり落とした私の髪の束を取ってきて、瘤の先端から突き出ている金具に、髪の毛と同じように細い針金で縛り付けました。
隷獣にふさわしい、黒々とした尻尾が生まれたのです。
秘木が私になにかをもたらしているらしく、熱いものがこみあげてきて、それが猥らな透明の液体となって、秘部からあふれ、したたり落ちていきます。
有希恵はポカンと口をあけて私を見ていましたが、気を取り直すと、何枚も撮影していました。
「郁美、この秘木をできるだけ長い時間、入れておくことだ。いいな」
鬼丘がそう言ったとき、私はまるで絶頂を感じたように、体を震わせました。性器による快楽とは違う、熱い陶酔の世界に入っていたのです。
「はへぇ、はへぇ」とあえぎ続けていました。
「どうなってるんだ」
望月は私の惚けた顔を覗き込んでいます。
「この秘木はな、ただの棒きれではない。特別な木だ。何百年もの間、何十頭もの隷獣の体内にあった。その間に、秘木は磨きこまれ、喜悦が染み込んでいる。装着しているだけで快楽となる。この長さ、太さを受け入れることのできる者だけが得られる快楽だ。もちろん、秘木がもたらす快楽に耐えうる心身でなければならない。並の人間なら、一晩で気が狂うだろう」
びくびくと体を震わせて、秘木の快楽の虜となっている私を、有希恵と望月が見つめていました。
傷だらけで、醜く皮膚がただれている私でしたが、秘木のパワーで輝いていました。
体の中から喜悦がほとばしって、その滴が飛び散っています。彼らだって感じないはずがありません。
ほら、有希恵。そこの望月とやってみればいいわ。この快楽の半分ぐらいは得られるかもしれないけど、どうかしら……。
私は有希恵が全裸になってその場で望月に貫かれている様子を妄想していました。
「こうして、こいつはケモノに堕ちていく。だがな、この快楽にどっぷりはまり込んでしまったら、ほとんどの者は、人間には戻れなくなる」
「そうなの……。でも、それを取り上げたらいいじゃない?」
「同じことだ。この棒による喜悦で狂い死ぬ者がいるように、この棒を取り上げられることで、抜け殻のようになってしまう者もいるからな」
「それを乗り越えた者だけが、再び人間に戻れるってわけ?」
「そうだ。それが真の再生だ。大自然を支配する崇高な力、私たちの祖先はそれを『シン』と呼んでいた。『心』という意味のシン、『芯』という意味にも、『真』にも『新』にも通じている。もちろん『神』にも……」
有希恵はチョロっと舌なめずりをした。
「郁美は、再生できる?」
「わからない。誰にもわからない。まだ、ケモノに堕ちきっていない。まずは徹底して堕とす。それからの話になる」
ようやく床におろされて、いったん縄が解かれ、尻尾をつけたまま、あらためて縛られました。
土間と居住する畳を敷いた床の間には、五十センチほどの段差があります。床の縁にはいくつもの金具がついていました。その金具を使って私を縛り付けるのです。
後ろ手に縛られ正座して、床の上に乳房をのせ、固定されました。
「いろいろ便利なように、この大きな乳房に穴をあける」
鬼丘が、黒いマーカーで、乳房に点々と印をつけます。それが、穴をあける場所らしいのですが、一つや二つではないのです。
私はFカップで、背の高さとは違って、ここだけは、多くの女性から羨望や嫉妬を得ていたと思います。
まだきちんと男とセックスをしたことはありません。ぐいっと乳房は突きだし、乳首はピンク色です。乳輪が大きめで恥ずかしいのですが、薄いピンク色で溶け込んでいます。
「穴をあけるって、そんなに?」
有希恵は驚いています。
「大丈夫だ。何度もやっている」
鬼丘は平然とマーカーで印をつけました。乳首、乳輪の縁の上下左右、乳房の上下左右と、片側だけで九カ所。左右合わせて十八カ所もあります。
鬼丘が乳首をコリコリと指で揉み固くさせました。
「大きいからやりやすい」
そう言うと、二ミリにセットしたパンチで横から打ち抜きました。
「あがっ、あがっ」
ふいにやってきた痛みに飛び上がりそうになりましたが、体が縛り付けられているので、余計に痛い思いをしただけでした。
血が少し出て、小さな肉片が飛び出しています。私の乳首の一部です。それを鬼丘は捕虫の容器に入れました。いずれ私に食べさせるつもりなのです。
うめき暴れる私にお構いなく、左右の乳首に穴を開けて、望月が銀色のリングを通していきました。細いリングでしたが、その輪は四センチほどもある大きなものでした。
乳首を囲む乳輪は、少し大き目です。その端の部分。
乳輪のピンクが乳房の肌色に溶け込んでいくあたりの、上下左右に、三・五ミリの穴を開けられました。
そこには、小さなフックをつけるのです。
フックは先端に釣り針のような返しがあります。穴がふさがったあとも、返しによって簡単には引き抜くことはできません。フックの末端にはヒモなどが通せるような五ミリほどの穴もありました。
最後に乳房の付け根付近の上下左右です。
四・五ミリの穴を開けられ、大きく太いフックが装着されました。
「あえっへ、へえぇ、へえぇ」
連続する痛みに呼応するかのように、体内の秘木が熱く、お尻が焼けるようです。
私は咳き込むように叫びっぱなしでした。痛みが快楽に変換されて、とてつもない力となって私の体の中に染み込んでいくからでした。その力によって、私の細胞や分子が組み替えられていくようでした。
「やってみろ」
左側の乳房をすべてやり終えると、鬼丘は道具を望月に差し出しました。
「できるかな」と望月が迷っていると、有希恵が「私がやりたい」と言い出し、パンチを奪い取りました。
彼女は、仮にも友人として一緒に山に登った同級生の私に、穴を開けたいというのです。
乳房の柔らかさを確かめるように指先でつまんで、鬼丘に習って冷酷にパンチを握りしめました。
パチンと音がして、肉片が飛びました。
有希恵は表情一つ変えず、残りの穴を開け、リングやフックをつけていくのです。
私のうめき声や身震いなど、まったく目に入らないようです。
「ふー」
ため息をついた有希恵は、額にうっすらと汗をかいていましたが、仕事をやり遂げて爽快な表情になりました。
「案外、簡単ね」
男たちは黙っています。
有希恵にはもともとおそろしいほどの素質が隠されているのです。大自然の力「シン」に仕える特殊な能力があるはずです。
私に隷獣になる素質があったように、有希恵には隷獣を見抜き、支配する力があるはずです。それは、もしかすると鬼丘をしのぐほどかもしれません。少なくとも、その冷酷非情な部分は……。
私はこれから、有希恵に見られただけで痛みを感じ、身もだえするようになるのでしょう。
「かつて山の裏で、多数の隷獣たちがいたのだ」
鬼丘はその光景を思い浮かべているかのように語ります。
「ひとりずつケモノに堕としては結果を見るようなまどろっこしいやり方ではなかった。あの頃はおれみたいな役目の者が数人いて、一度に何頭もの隷獣を育てていたのだ」
「それはスゴイな」と望月。
「そんな時代は二度と来ないと思っていたが、有希恵様の能力が目覚めたからには、復活できるかもしれない」
「私なら大丈夫。できるわ。ケモノたちを統制し、その命の権限を握ってやるわ」
「そのためには、いま以上に冷酷になることだ。できるかな?」
「やってみせるわ」
私が隷獣となることで、有希恵の能力が証明されるのです。
そして私はケモノに堕ちたあとに、そこからどうやって人間に戻れるかが試されるのです。
それがどれほど血なまぐさく、激烈な痛みを味わうことになろうとも、やるしかないのでした。
使役されるケモノ
私の胸を、銀色のリングとフックが貫通していました。
変わり果てた乳房。ここへ来てからのわずかな時間に、大きく私は変わりました。その変化の象徴が、この醜く改造された乳房です。
ただでさえ高熱を発しているところに、さらに加えられた仕打ちに、体が拒絶反応を示しています。その全身を包む痛みに、ひたすら耐えるしかないのです。
「このフックは、いずれ背中とか尻にもつけていく」
「なんのため? だって、せっかくカッコのいいオッパイだったのよ。これじゃ、台なしだわ。楽しみがなくなっちゃうんじゃないの?」
「有希恵様。隷獣はペットでも、セックスの道具でもない。その存在そのものが、使役のためにある」
「しえき?」
「隷獣としての務めだ。『シン』に仕える使役動物なのだから」
「たとえば体で虫を捕るような?」
「あれは、自然界で食べて行くための隷獣としてのごく基本的な行動にすぎない。まだまだやることはいっぱいある。これから、もう一仕事しなければならない」
鬼丘は、灰色のビニールパイプを持ってきました。直径は五センチほど。長さは三十センチほど。それにぴったりはまる金属の筒。
「なに、それ?」
「こうなる」
金属の外側の輪を鬼丘が手前に引くと、中から丈夫な八枚の金属片が出てきて、花びらのように開いていきました。
「どういうこと?」
鬼丘が指先で金属片を確かめます。バネでできているらしく、広がったままで、かなりの力を入れないとすぼめることはできないようです。
外側の輪を押し戻すと、きれいに中にしまわれていきます。
「隷獣は、『シン』の使役動物となるが、その行為にはすべて無上の悦楽がある。郁美はまだ気づいていないが、昨夜から昼にかけて、虫に食われながらも、何度もまばゆいばかりの快楽に溺れていたはずだ。高熱が引いてくれば、もっとそれを自覚できるはずだ」
そうなのか、と私は実感しましたが、有希恵は鬼丘の説明がもう一つよくわかないようでした。
「これでいいかな」
望月はポリ容器を鬼丘に渡します。
「うん、これでいい」
「ええ! なに、気持ち悪い」
「ゴカイだよ。元気がいいな。有希恵様、指を入れてみたら?」と鬼丘。
容器の中に、ミミズのような肌色の細長い生物が固まっています。有希恵が、恐る恐る指を入れました。柔らかく細いものが動いています。
「痛い!」
慌てて指を引っ込めました。
男たちは笑っています。
「ゴカイは釣りのエサだよ。元気がいいやつは噛むからね」
「噛むの? こいつが?」
「ああ。かなり噛む」
「用意はできた。暗くならないうちに行くぞ」と鬼丘が言いました。
拘束から解かれ、背中には網状の袋を担がされます。そこに鬼丘は道具を入れていきました。袋から伸びた細いロープを、尻尾である秘木に数回巻き付け、パンチで穴だらけにされた陰唇の間を抜け、金具が埋め込まれた乳房の間から、首輪に結びつけられました。
鼻フックもきつく装着されました。
奇妙な三人と一匹が、小屋の裏から流れる小さな川に沿って下っていくのです。鬼丘が使っている踏み固めた細い道。草むらの中に入っても、鬼丘にはわかるらしく、薄暗い森をすたすたと歩いて行きます。
必死にあとから四つん這いで歩きます。荷物が動くたびに秘木がくいくいと上下し、下半身に得も言えぬ快感が走ります。そのせいで、あえぎながらも恍惚となっていました。
あまりにも気持ちがよくて、このまま死んでもいいと思うほどです。
三十分ほど下ると、いくつかの支流が合流し、川らしくなってきました。
さらに十五分ほど歩いて、開けた谷に出ました。人里が近いことがはっきりと感じられます。
もっと明るければ遠くの町が見えたかもしれません。
河原には大きな岩、丸い石がゴロゴロし、川は深くなって急流もあります。
そこをさらに抜けて、田畑が広がる場所に出ました。
町外れという感じです。それに気づくと、恥ずかしさがこみあげてきました。
有希恵は、チェーンを強く引きました。
「なに恥ずかしがってるのよ。おまえは隷獣なんだよ。あそこから、いやらしい液をこんなにあふれさせてるくせに」
同じ年齢の女性になじられながら、厳しい言葉さえも、秘木からにじみ出す快楽を増す効果があるようで、私はズキンと感じていました。
悔しくて、恥ずかしくて、痛い。その感覚すべてが、どういうわけか、「もっと欲しい」と思えてしまうのです。
これが隷獣なのでしょうか。
ぼんやりと思いながら、引かれるままに穏やかな流れとなった川縁を歩くのでした。
「このあたりがいい」
鬼丘が立ち止まりました。近くに舗装された道があり、ポツリポツリと街灯もあります。それが川から二メートルほどの高さのところに見えます。誰がいつ通りかかっても不思議ではないのです。
太陽が山に隠れそうですが、まだほのかに明るさが残っていました。
鬼丘は懐中電灯をつけて、それを有希恵に持たせると、私の背から荷物を外しました。
「仰向けになれ」
ざらざらとしたコンクリートの護岸の上で、仰向けに寝ます。青白い肌が、暮れていく淡い光線の中に浮かんでいます。
「足を上げて、膝の裏に自分の肘を回して」
鬼丘の指導のままに、子どもがおしっこをさせられるようなポーズを取りました。
望月が「まんぐり返しだな」と言いました。
「そうだ。いいか、郁美。これから、まんぐり返しをしろ、と言われたら、いつでもどこでも、その格好をするんだぞ」
穴のあいた小陰唇にヒモが通されていき、あそこが全開にされました。
虫による腫れが引いたのか、ピンクの粘膜がギラギラと光っています。歩いている間に感じてしまった名残の汁が、まだあふれていました。
あの金属の輪が、そこにあてられました。ぐいぐいと先の部分をねじって無理に膣口に押し込まれます。
冷たい金属に、体がキュッとなります。
そして輪をゆっくり手前に引いていきました。
「あぐうぇー」
痛みと怖さにうめきます。バネの部分が、膣の最奥部分で外側に向けて、強烈な力で広がっていくのです。私の柔らかな粘膜は、それを押しとどめることはできません。
バネ部分は広がりながら、さらに奥へと入り込んでいくのです。その苦痛に反応すればするほど、私はそれを奥へと飲み込んでしまいます。子宮の手間に先端が押し広げた肉の空間が生まれました。
以前、五センチの膣鏡、コマセのカゴで広げられたことがあります。今回はそれ以上に、奥へ行くほど大きく広げられていきました。きっと妊娠して子宮が大きくなって下がってでも来ない限り、普通の女性はここまでお腹の中を広げられたりはしないでしょう。
体を裂かれるような恐怖を味わいつつ、うめいていました。
バネの部分が完全に食い込んで、外に向かって広がろうという力をなおも発揮していましたが、肉の力と均衡して、ある程度で止まったようです。
「見ろ。とうとう子宮が見えるまでになったな」
「どれ?」
有希恵が懐中電灯で、照らしてきました。
「ホントだ。なんだかグロテスクね」
「ま、普通の女のような役目は果たさないけどね。使役には役立つ」
そしてポリ容器のゴカイをごっそりと、その中に投げ込むのです。
「ぐぅへー」
私は叫びましたが、膝に回した手ははずしませんでした。拘束されたり、強制されているわけではないのに、まんぐり返しのままで、その怖ろしい行為をすべて受け入れたのです。
柔らかな粘膜の空間に放たれたゴカイたちは、ぬめぬめと動いています。
体が自然に反応してしまいます。キュッと子宮や膣が震えます。
すると攻撃を受けたと勘違いしたのでしょうか。ゴカイたちが粘膜を噛んできました。
噛まれると、余計にビクビクと子宮や膣壁が反応してしまいます。ゴカイたちも、それに対して攻撃してきます。
「うごぉぉぉ」
お腹の中を食い荒らされる痛みと恐怖に耐えるのです。
「元気のいいエサだ」
鬼丘が金属の筒に、ビニールの筒をつなげました。ぴったりと合うのです。
鬼丘は、それからやっと私の手と足をその格好のまま縄で縛りあげました。足首にも長い縄を結びつけます。
「よし。これでいい。こっちを持て」
鬼丘と望月は、私の足首からの縄を肩にかけ、左右から体を持ち上げました。そのまま川に入っていきます。水深は膝までもありません。
「ここがいい」
丸い石がゴロゴロしている川床に降ろします。冷たい水に浸かります。
望月は足首のロープを持って、反対側のコンクリートの護岸に打ち込まれている錆びた鉄の輪に結びつけました。
「もうちょっと引け」と鬼丘に言われて引っ張って結び直しています。
そう言いながら鬼丘ももう一方の縄を近くの護岸の鉄輪に結びつけて、私の足の広がり具合を調整します。
柔らかな体のおかげで、股間を全開に近い状態で固定されました。
水量が増えても腰が浮かないように、別の縄で大きな岩に結びつけられました。
しだいにオレンジ色の夕焼けが広がり、のどかな田園風景は、山の陰に沈んでいきます。
「こういう場所だから、いろんな獲物が獲れる」
鬼丘は、私にゴーグルをかけ、耳、鼻、口、腕などに例のエキスを落としていきました。虫に襲わせるつもりなのです。
「大物が獲れるといいな」
「で、どうするの、これから」
「あとは三、四時間放置するだけだ。こいつのエサとしての働きしだいだな」
「私たちは?」
「ここまで来たんだ。その先に知り合いのそば屋がある。久しぶりの町だからな。うまいものでも食いたいよ」
「いいわね」
三人はそう言いながら護岸を上がり、上の道路に出ると、のんびりと歩いて行ってしまいました。
川床のエサ
残された私は、複雑な気持ちでした。寂しく心細いのです。誰かにこんな私を見られたらどうなるのでしょう。
それでいて、ゴカイによる激しい攻撃を受けて、涙を流しています。
秘木はなおも、神秘の力を発揮していました。あらゆる痛みが、快楽の底なし沼に私を引き込むのです。
小さな虫たちが、体の中から自分を食い尽くしていくような幻想が見えます。それはとても甘美なイメージでした。
まだ熱のある体を、川の水が冷やしてくれます。
日が暮れると山里の気温は急速に下がっていきました。川面を冷たい風が吹き抜けていきます。
カエルの鳴き声。セミの鳴き声。鳥の鳴き声。そして秋の虫の声もしています。
耳元にはぶんぶんと人を刺す虫たちが寄ってきました。チクチクと顔や、剃られた頭、首などが容赦なく襲われていきます。刺された跡をさらに刺すのです。
ぼんやりとしか見えませんが、川の底から黒いものが太ももの内側に這い上がってきました。一匹、二匹、三匹……。どこからともなく、獲物を求めてやってくるものたち。蛭です。
痛みはなく、何倍にも膨らんでは川の中に去って行くだけです。不思議とゴカイによる痛みもやわらいでいくようで、妙に心が穏やかになりました。血を吸われていたからでしょうか。
突然、今度は水に浸かっている太ももやふくらはぎに、鋭く突き刺す痛みが襲いました。
「ぐぅあああ」
何度も、何度も刺してきます。
足をそのままもぎ取られるかのような痛みで、気を失いそうになりました。
なにかが柔らかな体を攻撃しているのです。抵抗もできません。理不尽な苦痛に身を任せるしかないのです。
その激痛が、快楽になるのを祈るように待ちながら、秘木の力にすがるのです。
いつしか薄暗くなっていました。遠くの街灯が川面に反射しています。
自動車が何台か通過しましたが、私に気づく者はいませんでした。川の中までは、ヘッドライトも当たらないのです。
うとうとしていると、なにかがパイプに入ってきました。それは重く大きなもので、パイプにぶつかりながら奥へと進んできます。
何? イヤ! 怖い!
とうとう一番奥までやってきて、私の体に入りました。それは、ゴカイを襲っているようです。パイプが動くほど、激しく暴れるのです。
そこにまた、新たなものが入ってきたらしく、パイプの揺れはさらに激しくなります。がっちりと金属の先端が私の体の中に食い込んでいるので、パイプと金属の輪が外れることはありません。
「ひゅぅうぇぇー」
たちまち絶頂を迎えてしまいました。それほどの苦痛だったのです。
熱も下がったようで、はっきりと覚醒したような気分がありました。
自分の中であばれる大きなものの感覚に、失神してもいいようなものでしたが、むしろ冴え冴えとして、明瞭な快楽が脳髄を突き上げていくのを感じていました。
これほどの喜悦があるとは、思いもよらないことでした。
もはや体にたかる虫たちも、それほどの問題ではありません。
パイプ、膣、子宮口へと行ったり来たりしている物体が、徐々におとなしくなっていくのがわかります。
ああ、とめどなくあふれるこの快楽は、なんでしょう。
そしてまた新たな物体がやってきました。三匹になったのです。
再び激しく暴れます。三匹が私の中で格闘しているようです。パイプごと、下半身を引きちぎっていくのではないかと思います。
「うぇおぇぇがっ」
声をあげながら、いつまでも続く快楽をむさぼります。こうして肉体を引きちぎられて、死んでいってもいい、とさえ思っていました。
遠くでケラケラと笑う有希恵の声がしました。
ほがらかな女子大生の有希恵。その一方で、自分は体をボロボロにしてこうして川に浸かっているのです。その惨めさも、快楽になっていくようでした。そんなことでも、感じてしまう体なのです。ケモノとしかいいようがないのです。
懐中電灯が川面を照らしました。
「いたいた」
無邪気な有希恵。それは酔っている声です。
三人が戻って来たのです。
「うわあ、キモい」
有希恵が私を照らして、はしゃいだ声を出します。
きっと虫に刺されて、すっかり変形した顔が見えたのでしょう。
そして足には、びっしりと蛭がたかっています。
それだけではなく、何匹もの肉食系の水中の虫たちが、太ももに、その鋭い口を突き刺していました。


