「マツモムシだな。こいつは、消化液を肉に注ぎ込み、それを解かして食べるんだ。体長は一センチほどしかないけどな」
その攻撃による痛みはあまりにも激烈です。
「さすがに絶滅危惧種のタイコウチはいないか」
「どんなもの?」
「似たタイプの肉食系の水棲昆虫だ。大きさは、このマツモムシの三倍ほどもある。昔はこういう漁をすると、何匹ものタイコウチに襲われて身もだえしていた隷獣がいたもんだよ。懐かしいな」
「ゲー、吐きそう」
「引き上げる前に見てみよう」
鬼丘は川に入って、私の下腹部に手をやりました。
びくびくっとパイプが震えます。
「おお」
指先に確実な反応を感じたはずです。パイプを少しゆすると、さらにはっきりと反応がありました。
「獲れてるぞ。すごいな」
望月が対岸の縄を外してきました。
川の中で手や足の縄を鬼丘が解いていきます。私を川から引き上げるのは難しいのでしょう。だから、私に自力で河原へ上がらせるのです。
「よし、こい」
ゆっくりと護岸に這い上がります。ずっしりと重くなったパイプから、水がしたたり落ちます。
体の中にいたものが、暴れながらパイプの端へ落ちていくのがわかります。
使役、という言葉がなんとなくわかってきました。こうして私は全身を使い、苦痛の中で身もだえながら、快楽をむさぼるケモノとなっていくのでしょう。
「ほら、まんぐり返しだ」
濡れた体を震わせながら、護岸のコンクリートの上で再び自ら秘部をさらします。
上になったパイプからどっしりとした物体が子宮まで落下しました。
「がぅぅぅ」
再び暴れています。
「見ていろ」
鬼丘は、懐中電灯を私の顔にあてました。
虫に襲われて、腫れているはずです。顔、手、足、それが徐々に快楽に包まれていくのです。
「なにやってるの、こいつ」
「感じてるんだよ」
「うそ」
「隷獣になっていくと、あらゆる苦痛が快楽になっていくんだ。だから普通の人間では無理なこともできるのさ」
「こうなったら、人間としてはもう終わりってことじゃない?」
「有希恵様のそういう蔑むような言葉も、郁美にはごちそうになるんですよ」
「ふーん」
もっと蔑んでください。私をいたぶってください。有希恵様。殴ったり、蹴ったりしてもいいんです。これがどれほどの快楽なのか、あなたは知らないのでしょう。
望月がビニールのバケツを構えました。金属の輪から、鬼丘がビニールパイプだけをゆっくり抜いていきました。
そこに懐中電灯をあてる有希恵。
「うわ」
広げられた膣の中に、三匹のうなぎがひしめいていました。
「大漁だよ」
鬼丘はうれしそうです。指先でうなぎを私の中から掻き出してはバケツに入れていきます。
「大丈夫だ。うなぎは傷ついていない。よかったな。
うなぎの血には毒があるからな」
暗い夜道を一時間以上かけて、三人と一匹は小屋に戻りました。
私はうれしそうにお尻を振って、自分の髪の毛で作られた尻尾が左右に揺れ、お尻に当たるのを感じていました。すごいな、自分ってこんなこともできちゃうんだな。苦しくて怖くて死にそうだけど、あの快感は獲物を獲ったから得られたものでもあるんだろうな、と思っていました。
私という存在が、どんどん人間ではなくなっていくのは、怖ろしいような、ワクワクするような気持ちでした。有希恵に、それがわかるでしょうか。
きっと誰にもわからないのです。秘木を深く受け入れた私だけが得られる、ケモノの快楽だからです。
穴の具合
久しぶりに土間で横になって眠りました。開口器以外はなにも身につけていません。すっかり熱は下がり、夜の間は秘木も取り除かれて、体が軽くなっていました。
真っ白な光の中で石のように固まっている自分の夢を見ました。裸なのですが、少女の頃の体つきです。まぶしくて目をあけていられません。そこは山頂で、太陽がとても近く感じます。足下には尖った岩があり、その上につま先立ちしています。
周囲には雲海が広がっていて、そこに自分の裸体が写し出されています。不安定な場所にいるのに、不安はなにもありません。
ただ気分がいいだけです。
「いつまで寝てるんだ」と鬼丘に尻を蹴られました。
目を開くと小屋はまだ薄暗いのです。気持ちのいい夢ですが、体は重く、頭もぼんやりしています。くたくたなのです。
「来い」と鎖を引かれて小屋の裏へ連れていかれます。手押しポンプのついた噴霧器で、冷たい山の湧き水を、お尻に強制的に入れられ、排泄させられます。
うなぎとゴカイが暴れ回った膣の中も洗われます。
頭から水をかけられ、全身を柄のついたタワシでこすられます。容赦なく体のあらゆる部分を、皮が剥けるほどの強さで洗われるのです。
口の中にも、タワシを押し込まれて洗われるのです。
濡れたまま土間に戻されると、望月と有希恵が眠そうな目をして待っていました。
昨夜はあれから三匹のうなぎを食べたのです。私にも、彼らが残してくれた頭部やヒレ、骨を素揚げして、虫の残骸とともにすりこぎで潰して食べさせてくれました。
「うなぎは粘膜にいいんだ」と鬼丘が言っていました。
その満腹感がまだ残っています。
「手を後ろで組め。正座して、おっぱいをそこに乗せろ。これがおまえの正座だ。これからは正座しろと言われたらそうするんだ」
鬼丘に言われ、乳房に穴をあけられたときのポーズをとります。伸し餅のように、大きな乳房が床の上にあります。
「かなり痛いが、がまんしろ」
鬼丘は、乳首を貫通している銀の輪を指でつまみ、動かしました。
「ぐぐぐう」
えぐられるような痛みです。ああ、また今日も、朝から晩までこうした痛みを感じ続けるのでしょうか。
輪を上下に動かし、それからぐるぐると回します。それを左右とも、スムーズに動くまで何回もやるのです。
「鼻輪はその重みで、おまえが動けば輪も動く。だが、ここはそうはいかない。しっかりくっついて、なおかつ動くようにしないと役に立たない」
乳輪の四つのフックも、ぐりっと動かします。
「あぐぅわー」
乳房が引きちぎられるような痛みです。せっかく落ち着いた傷口が再び開いたのです。金属に巻き付いていた肉が剥がされます。
「やってみろ」
鬼丘は望月と有希恵にもやらせます。
秘木の力も借りられず、ひたすら痛みだけを受け入れるしかありません。
鬼丘は二人にやらせて、苦悶する私をながめています。この過酷な二日間、私はかなり変わっているはずです。体重も落ちたでしょう。頬もこけて、目つきも悪くなっているでしょう。
自然の中で、皮膚、そして粘膜までもさらしているせいか、肌は透明感こそありませんが、なめし革にも似た強さが加わってきたようです。
隷獣になれるかどうか。それはまだわかりません。私はいまも、おかしくなっていく途上で、これからさらに自分が自分ではないような、怖ろしいまでの変貌を遂げそうです。
「これからが重要なところだな。しばらく秘木から遠ざけるつもりだ。おまえは、あまりにも順応するのが早い。すべての苦痛を快楽へ変えてしまう秘木の力に、慣れきってしまったら、それもマズイ。隷獣になりきれていないのに、なったかのように見えてしまうかもしれないからな」
「じゃ、どうするの?」
「しばらく秘木は与えず、必要以上の悦楽も与えない。できるだけ苦痛だけを徹底して与えよう」
なんと厳しいことを。私は昨日のような、なにをされても、どんな苦痛をも快楽に変えることができるのなら、喜んでこの命を投じようと思っていたのです。
鬼丘はそれを察知したのでしょうか。このまま、私が正気を失い、なにも感じなくなって、ただの廃棄物のようになってしまうことを恐れたのでしょうか。
でも、あの快楽があるから耐えられたのです。もしそれを望むこともできず、ただ苦痛だけとなったら、私はどうなってしまうのでしょう。
「熱は下がったしな。こっちに来てから食べ物による体質改善も進んでいる。だからこそ、これまで以上のことに耐えられなくてはならない。そこを越えて、はじめて隷獣に堕ちたことが確認できる」
すべてのフックが、望月と有希恵によって、オモチャのように激しく動かされると、鬼丘は乳房に薬液を散布しました。
「これで化膿することはない。次は、まんぐり返しだ」
私は自分の足を抱えるようにしてごろんと土間にころがりました。
鬼丘が私の足を持って、肩の方へ引っ張ります。柔軟さはまだ失われていません。後頭部で足を交差させ、縄を使って固定されました。
自分の足の中から、上体を出すような形です。手は、太ももを抱えるように縛られました。
「眠りのポーズだ。これから命じられたらすぐに、どんなときでも、できるようにしろ」
拘束されると、恐怖に襲われるのです。逃げるチャンスがあっても逃げられなくなっていた私ですが、こうして手足が縛られて、どうにもならないと怖ろしくなってきます。
つい目を見開いて鬼丘を見つめてしまうのです。なにをされるのだろうか。今度の苦痛に、私は耐えられるだろうか。もし耐えられなかったら、私はどうなってしまうのだろうか。
股がみっともないほど大きく開かれて、閉じることはできません。洗ったあとで濡れているそけい部。剃った毛がうっすら生えていました。
鬼丘はそれを再びそり落としていきます。
「隷獣となったら、毛を剃ることはなくなる。いまは、ここをはっきり見るために、そして、おまえに自覚させるために、つるつるにしておくからな」
小陰唇が、だらしなく外に飛び出しています。八カ所の穴に、三ミリの金具がはめ込まれ、人間の体には見えません。
昨日の朝に開けられたばかりですが、広げられていたこともあって、ラビアはいびつに伸びて、穴も多少は大きくなっているようです。
望月が、銀の金具を持って来ました。細いボルトとナットです。鋭いねじ山が切られています。
乳房にかけたのと同じ液をラビアにかけます。
そしてペンチを持って、鬼丘はそこにはめ込まれた金具を引き抜きます。
忘れていた痛みが倍になって戻ってくるようでした。
金具をグリグリと回し、捻れる粘膜から剥ぎ取ります。
引き抜くと、びらびらに穴があいているのがわかります。すぐふさがろうとしますが、簡単にはふさがりません。柔らかな肉は、穴を隠そうにも隠すことができないのです。
その穴に、ボルトを差し込みます。閉じようとする穴を切り進み、貫通していきます。飛び出した部分にナットを入れて、はさみつけてしまいます。
これを八カ所全部にやっていきます。
ボルトの重みで自然に小陰唇は、だらりと下がります。
なんてみっともないのでしょう。
革でできたガーターベルトのようなものを腰に巻き付けられました。そしてそこから下がる左右四本の革ベルトには丈夫な歯がついたクリップがあり、それを太ももに装着したガーター状のベルトに噛ませます。
普通のガーターベルトとは違い、垂直に股間のすぐ横に降りている二本のベルトには、左右四つずつ穴が開いていました。
そこに小陰唇から飛び出しているボルトを通していきます。最後に別のナットで止めてしまいます。
採集されて標本となった蝶のように、小陰唇が強く引き延ばされ、不自然にあそこを剥き出しにしています。
「これからはそうやって、いやらしい部分を剥き出しにしたままにしておくからな」
鬼丘は望月に合図し、開いた膣を指さしました。望月はすでに硬くなっている男根にコンドームをつけています。
そのまま不自然な格好をしている私に被さり、荒々しく犯すのです。
「うえぇぇ」
「おお、意外といいぞ。かなり締め付けてくるな。前よりもいいぐらいだ」
十分、十五分と望月は飽きることなく責め立て、ようやくフィニッシュしてくれました。ゴムに放った精を、開いたままの私の口に注ぎ込みます。
鬼丘も続きます。
「あれだけムチャをしたおまんこだけど、ホントに前よりよくなってやがる」
鬼丘は驚いています。
しばらく私の中で遊んだあと、鬼丘は得意の肛門を犯してきました。
「すごいぞ、こっちも。おそろしいほどの感触だ」
「秘木のせいで?」
「ああ。だが、これは、郁美に素質があったからだろう」
「うぇぇ」
私はお尻を犯されて、くっきりとした悦びを得ていました。それまで、こんなに感じたことはないほどです。
鬼丘のペニスを受け入れても痛みはなく、お尻全体で包み込むようで、ぎゅっと吸い上げていました。
「ちくしょう、これはたまらない」
熟練した鬼丘でも、あまり長くは保ちませんでした。
やはりたっぷりゴムに溜まった精は、口に注いでいただきました。
「おまえは成長している。驚くべきほどにな」
「ねえ、触ってもいい?」
有希恵もガマンできないのでしょう。膣と肛門に同時に指を侵入させてきました。
細い、冷たい指でした。
「うわあ、すごい。締め付けてくるじゃない。気持ち悪いぐらい」
有希恵は指を増やして、二つの穴に三本の指を突き入れて、粘膜の具合を確認するように動かします。
クチュクチュと音を立て、あふれる淫水を振りまきながら、穴は有希恵を求めるように開いていきます。
「吸い付かれるみたい」
「どこまで入るか、やってみろ」
鬼丘がけしかけます。
「こっちは五本入るわ」
拡張が続いた結果でしょう。私の膣は、有希恵の右手のすべての指を受け入れていました。そして、徐々にそれが奥に沈んでいきます。
「行けるところまで行ってみろ」
「うそっ!」
有希恵は笑いながら、手をもぞもぞと動かし、ぐいっと押し入れました。
「ぐが!」
手首まで入っていました。
「すごいわ。郁美の体の中で握手できたりして」
でも、アナルはそう簡単ではありません。秘木によって拡張されてはいましたが、まだ固いのです。指の先を五本受け入れても、そこからは入っていきません。
「無理はするな。いずれあの秘木の瘤を飲み込むようになる。そっちは膣とはまるで構造が違うからな。まず秘木に慣れて、腸が奥まで広がるようになる。次に肛門が広がっていけば、そうだな、有希恵様の肘ぐらいまで楽に入るようになる」
「まさか!」
「ケツ穴でもうなぎが獲れるようになるんだがな」
「それはすごいわ」
有希恵がニヤリと笑います。
「まあ、見ていろ。郁美は素質があるから、案外、早く、そんな無様な姿が見られるだろう」
「楽しみね」
オモチャで遊ぶ子どものように、弱いものをいたぶるように、有希恵は手がだるくなるまで、私の体の中をかき回すのでした。
「ぐうぇ」
私は肉体的な痛みと心の痛みを感じながら、何度も軽い絶頂を感じていました。
ネズミ
飽きるまで責めた有希恵は、その両手を私に見せつけます。
「ホント、いやらしいわね、郁美は。手がべとべとになっちゃったわ。洗わなくちゃ」
その指を私の口の中に入れて、味わわせてから、手を洗いに行きました。私の臭いが口の中に残っています。
「虫を捕るだけじゃ、腹がふくれないことがわかっただろう。毎日、うなぎを獲りに行ってもいいが、今日は別のことをしよう」
ようやく縄を解かれました。厳しい姿勢を長く続けたこともあり、土間で体を伸ばしました。少し体がリラックスできたと思ったら、鬼丘が非情にも「まんぐり返し」と命じるのです。
すぐにポーズを取ります。
股間の銀色のボルトが触れあって音を立てます。
鬼丘と望月が用意したのは、うなぎの仕掛けと同じような器具でした。少なくとも、膣に入れる金具はほとんど同じに見えます。
あれをいつも入れられたら、私の性器はなにもしなくても、ぱっくりと口を開いたままになってしまうのではないでしょうか。
まだ濡れて光る粘膜に、冷たい金具が押し込まれます。昨日以上に膣が広がっています。
「子宮がはっきりと見えるぞ」
「一回り、大きいからな」
その中に、コマセ用のカゴを挿入してきます。以前に使ったものより目が細かく、長いのです。
「あぐぅぅ」
子宮を押し上げるぐらい奥までカゴが入り込みます。
「うまく入ったぞ」
望月が確認して、いったん、カゴを引き抜きます。
「どうするの?」
手を洗ってきた有希恵は興味津々です。
「新しい仕掛けだ」
鬼丘が手にしてきたのは、真っ白で小さなネズミが何匹も入った箱でした。その中の一匹の尻尾をつまみ上げて、私に見せつけるのです。
ミカンでも入れる網のような細かな網にネズミを入れると、その手足と鼻先が網の間から突き出ます。その網をカゴの底に細い針金で縛り付けて固定しました。
ネズミは暴れ、掻きむしっていますが、カゴから出ることはできません。
「こいつにもチャンスを与えるんだよ。うまく網を破って逃げられればよし。そうでなければ……」
まさかと思いますが、鬼丘は暴れるネズミが縛り付けられたコマセのカゴを、私の中に入れていくのです。
「ふぐあー」
あまりにも怖ろしくて、泣き叫びました。
ですが、拘束されていないのに逃げられない自分がいました。自分で足を抱えてまんぐり返しの姿勢を保ちつづけ、男たちがしようとしているおぞましい仕掛けを、受け入れようとしていたのです。
全身から汗が噴き出してきました。
膣を押し広げている金属の輪の内側に、ネズミの入った仕掛けが入れられます。内臓を押し上げるように深くまで入れると、クリップのような器具で、カゴと金属の輪を留めてしまい、抜けなくなりました。
金属の輪は私の中で花びらのように押し開いているので抜けることはないのです。
「おまえには罠として務めてもらおう」
前よりも太く長いパイプがそこにセットされました。
うなぎよりも大きな獲物を捕らえる罠なのです。ネズミをエサにするような生物を狙うつもりなのです。
「うなぎ用は、穴の入り口に戻れないように逆向きになった串のような棒が埋められいるんだが、このパイプは、通り抜けると、自動的に閉じるシャッターがついているんだ」と望月が有希恵に説明しています。
「来い」
ぶざまな姿です。鬼丘の手を借りて立ち上がると、その仕掛けを下腹部にぶらさげたまま、がに股で歩かされます。股間を閉じることはできません。望月がパイプを支えているおかげで、あそこが裂けずにすんでいます。
ですが、さっきからずっと私の体の奥で、あのネズミが暴れているのです。いまにもお腹を食い破って飛び出してきそうな勢いです。
ネズミも怖いのです。その意味では私もネズミと同じです。
キーキーと鳴いている声まで聞こえてきます。
有希恵にも聞こえるのでしょう。私を見て笑みを浮かべます。
「わくわくするでしょ」
小屋の前にある広場、そしてその先の草むらには、若い木が切り倒された跡がありました。まだ根はしっかり張っていて、直径五センチほどの幹が、地面から二十センチほど突き出ていました。
「脱水症状になるといけないから」と鬼丘は、ポンプで、立ったままの私の腸内に大量の水を入れて、お腹を膨らませていきます。
「ほら、ゆっくりしゃがむんだ」
その幹の上に、鬼丘と望月に支えられながら、腰を下ろしていきます。
助けて。それは辛いことになるに決まっているのですから……。
鬼丘を見つめても、彼は無反応です。
濡れたお尻が硬い幹に触れます。
串刺し
「ちゃんと奥まで入れろよ」
二人は、私の肩に軽く手を置いています。もし逃げようとしたり、ちゃんとお尻に入れないようなら、ムリにでも押し込むつもりのようです。
「ほら、ズッポリ飲み込め」
私は幹の先端を肛門に感じています。ノコギリで切られたザラザラとした切断面が、粘膜を切り裂いてしまいそうです。
この数日で身についたことですが、自ら肛門を開くようにすれば、痛みはかなり減るのです。体をくねらせて、深呼吸をしながら、幹が私を貫いていくことに耐えます。
徐々に奥へと入れていきます。秘木のような熱さ、そして生き物じみた滑らかさはありません。
ゴツゴツとした幹が腸を裂くように、奥まで入り込みます。
「もっとだ」
とうとう二人は、私の肩を押しました。
「がっ!」
地面にぺったりと尻がつくまで入れることになりました。
身動きが、できなくなりました。
「下手に動けば、肛門が裂けちまうかもしれないぞ」
地面にお尻がつくほどしゃがんでいるような格好ですが、肛門を幹で貫かれ、膣にはネズミの入った仕掛けと大きなパイプがあるのです。
鬼丘と望月は、私の右足を持ってゆっくりと前に伸ばします。
「あぐ、あぐ」と声が出ます。鬼丘の肩に手を回してなんとかバランスを取るしかありません。
「今度はこっち」
左足を望月が持ち、ゆっくりと伸ばします。
「おろすぞ」
お尻全体が地面につきました。その分だけ、さらに幹が奥まで入り込みます。
串刺しです。
痛みから逃れることもできず、お尻と腹部をねじって、それに耐えます。なんとか幹は腸を突き破ることなく私の中にまっすぐに入っていったようでした。
「どうだ。いい気持ちだろう」
そんなはずはありません。
足をまっすぐ伸ばすと、彼らは足首に縄をかけて、近くの木の根元に縛り付けていきます。
両腕を背中で縛られます。
首輪から伸びた鎖を背中の腕に縛り付けました。
体が全体的に背後に反っているかたちになります。
「ちょっと支えててくれ」
有希恵が私の背中を足で支えてくれます。
肛門を突き刺す幹だけで、バランスを取るのは困難でした。
前方の木の枝から縄を垂らします。左右の乳房の根本を縛りあげ、そこに枝からの縄を巻き付けます。
「よーし、引くぞ」
望月が枝からの縄を引くと、私の乳房が引っ張られます。有希恵の足が外れても、私の体は倒れません。
その代わり、新たな激痛に耐えなくてはならないのです。
周りの草むらから、私の上半身だけが突き出ているはずです。
有希恵が私にゴーグルをつけ、鼻フックも装着します。容赦なく、ぐいっと引き絞ります。
「せっかくだから、こうしたら?」
根本を絞られて、枝からの縄で引っ張られ、大きく突きだした乳房に、有希恵は興味を持ったようです。
乳首のリングにヒモを通すと、別の木の枝にそのヒモを結びます。絞られた乳房。その先端の乳首は、ヒモに引っ張られ、斜め上に突き出ています。枝が風にそよぐと、乳首が引っ張られるのです。
「おもしろいでしょ」
有希恵の中にある魔性も、強化されていくようです。
「こんな風に」と有希恵はわざと枝を揺らします。
「がーっ」
乳首がちぎれてしまいそうな痛み。
この数日の異常なことの連続の中で、私は男を知り、セックスを知り、絶頂を知りました。
そのせいか、穴を開けられリングを通された乳首は、とても敏感になっていて、ほんの少しの刺激を受けるだけで妙な感じになるのです。
痛みと快感の連続に、おかしくなってしまいそうです。
「ほら、もう感じてるわよ」
望月が、乳輪と乳房のフックに細い鎖を装着していきます。左右に八カ所ずつあるので、八本の鎖が蜘蛛の巣のように網状になっていきます。そこに小さな板を置き、小石や土をのせました。
「こうすれば、虫が喜ぶだろう」
鬼丘が、乳房のフック部分と私の表情を見ながら、その重さを加減します。
望月が近くの草を引き抜いてきて、首輪と首の間に差し込んでいきます。鼻の穴、耳の穴、口にも、土がついたままの草が差し込まれます。乳房からぶら下がっている板の上にも木の葉や草がのります。
虫を引き寄せる薬を、いつものように各穴や腕に振りまくだけではなく、乳房、乳首、そこからのびているヒモ、そして板の上にも振りまきます。
「すごい仕掛けね」
「さて、じゃあ、でかけるか」
三人は支度をしてどこかへ出かけていきました。有希恵の笑い声が徐々に遠ざかっていきますが、私の背後で起きていることなので、よくわかりません。
森の静寂の中に放置されました。
昨日の川とはまるで違います。今日の私は冷静で、周りがよく見えています。頭もはっきりしています。痛いときは、その痛みがダイレクトに感じられるのです。
ふわっとした快楽の麻酔はありません。秘木があるのとないのとでは、こうまでも違うのです。
もういやだ、と思いました。こんなことは、もういやだ、やっていられない、と。
それはなんといっても、膣に仕込まれたネズミとそれを狙いにくるであろう生物への恐怖でした。
昨日はよくわからなかったのです。そしてあらゆる刺激が快楽になっていました。体が痺れ、頭も麻痺していました。まさか、あれだけ大きなうなぎが三匹も自分の中に入ってくるなんて、想像さえしませんでした。
それが、今日は違うのです。
自分の中に入り込む獲物を見ることになるでしょう。それは肉食です。ネズミを食べるだけではなく、私の内臓を食べようとするかもしれません。
コマセのカゴでそれは防げるはずですが、いまこうしていても、ネズミがガリガリとカゴを囓り、そのついでに、私の繊細な女性器官を傷つけているのがわかります。
ネズミだって必死なのです。網を破ってしまえば自由に逃げられます。パニックになって、あたりかまわず噛み、引っ掻いています。
あの連中は、なんということを考え、そして実行するのでしょう。
鬼丘は頭がおかしいのです。言っていることもよくわかりません。隷獣などというものに、人間がなれるわけがありません。私は私なのです。
有希恵もおかしくなっています。
「有希恵様」などと呼ばれて喜んでます。騙されているのを知らないのでしょう。
彼女は肉体を彼らに与えているのでしょうか。だとしても、私なんかとは違い、ずっとまともな女として、ノーマルなセックスをしているのです。
望月もなにを考えているのかわかりません。登山で有希恵たちと一緒に行くようになり、いろいろなことを教えてくれていた頃は、まともな人間に見えたのです。いえ、普通の人よりも堅物で、しっかりしている人間に見えたのです。
だから、私は彼と二人だけの山行を不安に思ったりしませんでした。
鬼丘の考えに完全に賛同しているようでもありません。しかし彼の手によって、私は犯され、この地獄に連れ込まれたのです。
彼らに肉体をむさぼられるだけならまだしも、こうして、虫や動物にまで体を与える意味がわかりません。不衛生だし。そこら中に、人間を蝕む菌がいるはずです。
裸で、傷口をさらし、体内をさらけ出していて、なにかに感染しないはずがありません。あのドロドロとした食べ物で、それを防ぐことができるとも思えません。私はそんなに強くはないのです。
このままでは、おそらく体が腐ってしまうか、頭が完全におかしくなるでしょう。それがケモノに堕ちるということなら、その通りだと思います。
私をケモノにしたいのなら、もっと簡単な方法がありそうなのに……。それこそ、頭が吹っ飛ぶような薬を飲ませればいいはずです。
なんにも理解できず、わからなくなっていれば、どんなことをされてもここまで苦しむことはないでしょう。
なぜ苦しめるのでしょうか。なぜ責めさいなむのでしょうか。
確実なことは、あの三人が、私の苦しみを楽しんでいることです。
私のためと言いながら、普通の人間にはできないような懲罰を課して、楽しんでいるのです。
彼らは、私の前からときどき、姿を消します。町のファミレスにでも行って、私への新たな責め苦でも考えているのです。
ケラケラとよく笑う有希恵が悪魔のようなアイデアを次々に提案している様子が想像できます。
そして、男たちは断固として実行するのです。
苦しむのはひとり、私だけです。死ぬまで、いじめ抜かれるのです。
この地獄は、果てしがありません。
空は雲に覆われて鈍い銀色です。雲がしだいに厚くなってきました。
不快さと苦痛を舐めながら、私は不安な時間を、ただ耐えていました。
餌食
冷たい風が森を吹き抜けていきます。
枝が大きく揺れ、ヒモが引っ張られると、乳首がぐいっと持っていかれそうになります。ピキーンと鋭い痛みが伝わってきて、敏感な部分がちぎれそうになります。
誰もいないのに、責められているのです。
多くの虫たちが、周りにやってきます。体につけられた草に安心しきって入り込み、穴の中まで平然と入ってくるのです。
乳首の先のヒモにも、たくさんの虫が這っています。それは乳房やそこから垂れ下がる鎖、その下の板にもたかっています。
大きな頭をした蟻が、行進をして体の上を這い回ります。私の肉をエサと考えて、思い切り噛みつきます。虫たちは、小さな傷口も見逃しません。
皮膚がやぶれているところを見つけると、そこに容赦なく攻撃をしかけてきます。
蟻にも大小があります。黒い蟻もいれば茶色い蟻もいます。派閥があるように、それぞれに分担して違う部分を責めてきます。地面から木の幹を飲み込んでいる肛門付近に噛みつくものたちがいて、幹伝いに中まで入ってきます。
虫たちにすれば、私の腸は柔らかくて食べやすい肉なのです。
「あっひゅっっひぃぃ」
ぞわぞわとする不気味な感触と、激烈な痛みの繰り返し。そして乳首がグイッと引っ張られ、気を失うことも許されません。
「はっふぁっかあ」
自分の声と呼吸を聞きながら、朦朧としていきます。
じっとりと汗ばめば、その汗を感じてさらに多くの蚊やブヨがやってきます。ハーハーと吐く息に反応して、口の中、鼻の奥まで入り込みます。
アブは乳房にたかり、鋭く突き刺します。私は虫たちの獲物なのです。
「はぐぅわー」
痛みに苦しみもだえるしかありません。それが快感にすり替わることはないのです。
ひたすら、痛いだけです。
痛みに反応して少しでも体が動くと、ネズミも大暴れします。
「ひゅぅひゅぅ」
鋭い爪や歯が私をズタズタにしている感触に、悲鳴をあげます。
ぷっくりと膨らんだ腹部。おしっこがしたくなります。大量に水を腸内に入れられたからでしょう。
大きな金属の輪で広げられた膣に押されて、尿道は潰されていましたが、ちょろちょろと漏れ出します。それは広げられた粘膜を濡らし、地面にしたたっていきます。そこにまた虫たちが寄ってくるのです。
草むらが動いたように見えました。風とは違うようです。
なにかがいるのです。
気のせいかと思いましたが、しばらくするとまた動きがありました。
草の間から、縞模様をした大きなヘビが現れました。
「ふひゅぇぇ」
悲鳴が悲鳴になりません。こんなことが自分の身に起こっているなどとはとても思えません。
ヘビは舌を出しながら、徐々にパイプに接近してきます。私が少しぐらい動いても、大きなパイプは動きません。ヘビは警戒しながら、パイプから臭ってくる獲物を感じているようです。
そして、おもむろにパイプに入っていきました。
長い胴体、そして尻尾も隠れてしまいます。
「ひゃっひぇぇ」
気が狂いそうです。
わめこうが、もはやどうにもならないのです。
ヘビがパイプに入り、シャッターが降りました。ヘビはパイプと私の体の間に閉じ込められたのです。
ヘビは中で暴れ、同時にネズミも必死に暴れています。
ヘビはネズミを補食するために最奥部にやってきたようです。ネズミをとらえている網ごと、その鋭い牙で襲ったのでしょう。ネズミの悲鳴のようなものが聞こえたように思いましたが、動きは止まりました。
網を破り、ネズミを飲み込んでいるのです。
涙と汗がとめどなく流れ出し、激しく失禁しました。
「ひゃひぇひぇひぇ」
助けて。お願い。誰か。あの三人でもいい。とにかく、ここから助けて。
喉で叫ぶだけですが、そうしているから、まだ正気でいられたのです。
気が遠くなりそうになりました。気絶してバランスを崩せば、肛門は裂け、乳首はもぎ取られてしまうでしょう。
そうなってもいいと思うのですが、激痛によってなんとか思いとどまるのです。
体が壊れたら、彼らの思う壺です。人間に戻ることなどできなくなるでしょう。おそらく、ここで野垂れ死ぬのです。
ヘビが暴れています。その力は思いのほか激しく、パイプが飛び上がるほどです。それによって、膣を拡張している金属の輪が粘膜に食い込んできます。
その痛みは、生きたまま内臓をえぐり出されるようでした。
「ふあぅうぅくぅ」
大きな杭を膣に打ち込まれ、乱暴に揺さぶられています。
裂けてしまうかもしれません。
彼らが戻ってきたとき、前も後ろもぱっくりと裂けて、血と内臓を噴き出し、乳首のもがれた私を見てどう思うでしょう。
それでも有希恵は、笑うかもしれません。
「あーあ、つまらない。郁美ならできると思ったのに。大したことなかったわね」
などと言うでしょう。
もう一分、一秒もガマンできません。死んでもいい、ここから逃げたいのです。
そう思いながらも、決断ができずにいると、ヘビはさらにガサガサと乱暴に暴れ、パイプを激しく揺さぶります。
その振動が、私の中のスイッチを押したようでした。
「ばっふぇっ」
体が硬直しました。
こんなものは快楽であるわけがないのです。快楽にしてはいけないのです。甘美さからほど遠いものです。
必死に抵抗しても、一度入ったスイッチは、私の体を心底打ち震えさせていくのです。
だめ、だめ、だめ……。
「はひゅぅうぅ」
力なくうめくしかありません。
間違いなく感じていました。とてつもなく甘くて切ない電流が、何度も全身を流れ、やがてそれは大きな波になっていきます。
くる、あれがくる……。
それに備えました。秘木でさんざん味わったあの感覚が、いま、真っ正面から襲ってくるのです。秘木なしで……。
足が痙攣しています。
数秒で終わるものではありませんでした。二分、三分と続くのです。
「ひぅぅふぅぅ」
膣もお尻も、ぐいっと締め付けています。
このまま死ぬんだ、と思ったのですが、それもまた、快楽を増幅させる要素になってしまうのでした。
あらゆる苦痛がいま、快楽に置き換えられ、脳が破裂しそうです。
どのぐらいそうしていたのでしょう。張り詰めた緊張が溶けて流れ出し、体がドロドロになって、力が抜けていきました。
もともとへたり込んだような格好にされていたので、お尻を貫通する幹に頼るように弛緩しました。
ぼんやりと、長いこと風を感じながら、そうしていました。
隷獣の素質
遠くで人声がし、それが有希恵たちだとわかったものの、気持ちを立て直すこともできませんでした。
鬼丘がすぐ横にいて「ふふふ」と笑っています。
「どうしたの。死んだの?」
「まあな。郁美の中のなにかが死んだんだ。こうやって、一つずつ、壊れていくんだ」
鬼丘は、私にへばりついている虫たちの採取を始めました。
「大物がかかったとはいえ、虫も大切だからな」
虫を入れるケースがたちまち一杯になっていきます。それは昨日の倍以上でした。
乳首のヒモを外し、吊り下げていた板と石も取り除かれました。そのどちらにも虫がたかっていたので、もちろん回収されていきます。
口、耳、鼻、すべての仕掛けに虫が残っていました。尻、足にもいました。そしてパイプが突き出ている、開ききった粘膜にも。乳房にも、腹部にも。
小さな傷口は大きく広がり、新たな皮が破かれ、肉がちぎられていました。
「これぐらいじゃ、もう熱も出やしないさ」
すべてを取り除くと、鼻フックが外されました。手の拘束を解き、足首も自由になりました。
望月と二人がかりで、ゆっくりと私の体を持ち上げていきます。
「ほごぅぅわ」
お尻が引き上げられていきます。その痛み……。腸が幹にからみついているようです。その幹を伝って体内に入り込んだ蟻たちが突き刺さります。
ズタズタに切り裂かれていくようです。
ようやく木の幹が抜けると、少し残っていた腸内の水が、どぼっと排泄されました。幹には血がにじんでいます。
「裂けた?」
「大丈夫。粘膜からの出血だ。大したことはない」
指先をお尻の中に入れて、あちこちと触りながら、鬼丘は満足そうです。
「荒削りな幹でも、この太さを受け入れるようになったのだな。急速に仕上がっているぞ」
そして問題の仕掛けに手をやります。
私を前屈みにさせ、パイプの中身がシャッターの方に落ちるようにしてから、パイプを引き抜きました。
鬼丘は板で、パイプの口をふさぎます。
「ずっしり重い。大物だ」
望月が透明な箱を持って来ました。そこへパイプを逆さにすると、体長一メートルほどのヘビが飛び出しました。
「アオダイショウだ。この種類ではそれほど大物じゃないよ」
望月が言います。
「でも、それがあそこに入っていたのよ」
有希恵は興奮しているようです。
鬼丘は、私を前屈みにさせたまま、後ろから金属の輪の中にあったカゴを引き抜きました。
それには、切り裂かれた網の残骸がありました。ネズミの血なのか、私の血なのか、多少の血が付着しています。
膣を広げていた金属の輪の仕掛けをゆっくりとすぼめながら引き抜いていきます。昨日のものより一回り大きいこともあって、粘膜が巻き込まれるようで、鋭い痛みも感じます。
時間をかけて慎重に抜き取られました。
「見てみろ。穴がぽっかりあいているぞ」
「ほんとね。もう閉じなくなっちゃったのかしら」
「そんなことはないだろう」
しかし、私は彼らが指で触るのを感じながら、お尻の穴もおまんこも、だらしなく広がったままなのを自覚しました。
痺れるように、そこの感覚もあまりないのです。
廃人のようになっている私は、小屋の裏に連れて行かれ、冷たい湧き水で洗われました。外も内も。鬼丘は丁寧に、そしてタワシでごしごしと洗います。
「すごいな」と鬼丘が言います。
「おまえ、きれいだな。だいぶケモノになってきたぞ」
そして鬼丘は、後頭部でなにかをしています。ベルトを外したようです。
最初、その意味がわかりませんでした。
「外していいぞ」
開口器のベルトが外されたのです。
ずっと噛みしめていたからか、なかなか自分からはき出せません。
鬼丘がネジを動かして、口の中の輪をすぼめてくれました。そのおかげで、ぽろりと外すことができました。
開口器の木の部分に、新しい歯形がくっきりと残っているのが見えます。私の歯形です。
「これは、いつでもおまえに使うからな。余計なことを言うな。ケモノはしゃべらない。返事はなんでも必ず『はい』だけだ。言ってみろ」
私は呼吸を整えてから、「はい」と言ってみました。顎がこわばって、擦れた他人のような声しか出ません。うめき、叫びすぎたからです。
「よし。忘れるな。『はい』意外の言葉を許可なく使ったら懲罰だ。懲罰というのは、いままでおまえに加えられたようなものとは違う。これまでにおまえに与えたのは調教だ。ケモノとなるための過程にすぎない。だが、懲罰は違うぞ。おまえもいつか味わうことになるだろうが、懲罰は徹底的にやるからな」
「はい」
正直、これまでの苦痛と懲罰の苦痛に差があるとも思えません。わかりませんが、それしか言えないので、私は「はい」とだけ言ったのです。
「これから、おまえはこの口も鍛えなくてはならない。これまでは開けてるだけでよかったが、これからは動かさなくてはいけない」
「はい」
「よし」
這うように歩こうとする私に、鎖が引っ張られ「立て」と命じられます。「ケモノは四つ這いが基本だが、これからは、立って歩くのも許す」
「はい」
小屋に連れられて入ると、いい匂いがしていました。まさか、もうヘビを料理したのでしょうか。
「おまえが獲った大物だ。すごいだろう」
ヘビは透明の箱に入ってとぐろを巻いていました。心なしか胴体が太いのは、飲み込んだネズミでしょうか。
「この同じ仕掛けで、モグラも捕ることができる。エサはミミズだ」
「はい」
どうして、そんなおぞましいことばかりさせるのでしょうか。私の体をおとしめることが目的なのでしょうか。疑問がわいても、質問をすることはできません。
「こういうものが獲れると、おまえも使役として役立つだろう」
鬼丘が私の目を見ます。私の質問を読み取ったのかもしれません。
「いいか。通常、人間がそこにいたら、獲物など簡単には取れない。昨日のうなぎ、今日のこのヘビだってそうだ。警戒心が強いから、人間がいるところにうかつに近づくはずがないのだ」
鬼丘はそんなことを、真剣な表情で言うのです。
「しかし隷獣は違う。隷獣は人間ではない。ケモノでありながら自然の中に溶け込み、ある時は土に、ある時は草むらになる。おまえが、こんなに短時間に罠として役立ったのは、仕掛けやエサのせいではなく、おまえ自身が、もう人間ではないからだよ」
人間ではない……。
それはショックな言葉でした。
「だからといって、まだケモノに堕ちきったかどうかはわからない。これからの調教で、それがだんだんわかってくるはずだが、少なくとも有希恵様が睨んだ通り、おまえには隷獣の素質があることだけははっきりしたな」
その言葉に私はニッコリと微笑んだのではないでしょうか。
鬼丘はとまどったように、私から目を逸らしました。
喉の調教
有希恵たちは昼食をどこかで調達してきたようです。懐かしい弁当の香りが小屋を包んでいました。中身まで想像できます。唐揚げ、天ぷら、煮物、ゴマをふったご飯……。
コーヒーの香りもします。
その数日前までごく当たり前だったものが、いまの私には遥かに遠い世界のものとなったのです。
土間に寝るように言われました。酷使しされた前後の粘膜に、鬼丘が薬液を塗り込んでいきます。触れるとまだ痛いのですが、擦りつけるように強く塗りつけるのです。
乳房、乳首にも。
まるで自慢の道具を手入れするかのように、鬼丘には喜びの時間のようでした。
「あんたも食べたら」
私にも弁当がありました。
容器の蓋に、どろどろしたものが山になっています。有希恵たちがかみ砕いて、吐き出したものでした。
私はそれに向き合いました。久しぶりに味わう料理なのです。涎が出るほど食べたいのです。
彼らの唾液がたっぷり混じっていたとしても、拒むことはできません。
手を使うことは許されないので、顔をそこに近づけ口を開けて、どろどろの山に舌を伸ばします。
「郁美、ホントに食べるの?」
有希恵のからかうような声など耳に入りません。
がぶりと喉の奥まで食べ物を入れました。わけがわからない味と匂いですが、それでもかまいません。私はもう人間ではないのですから。
「がっついてるわ」
体が求めるのです。私は土間の隅で、動物のように小さくなって、夢中でそれを食べました。
「今日はこれから、郁美の喉を鍛える」
「へえ。どうやるの?」
棚から湾曲した長い杖を取り出しました。ところどころ刻み目がついています。
「穴という穴で、なんでも飲み込めなければならない」
「それで?」
「そうだ。喉というものは、ある程度奥へいけば、感覚もない。『のど元過ぎれば熱さ忘れる』というだろう。そののど元を過ぎた奥まで、なんでも自在に通せなくてはならない」
「ふーん」
食べたばかりでしたが、さっそく「正座」を命じられます。床の上に乳房をのせて、正座しました。
「上を向いて口を開けろ」
命じられるままに、口を開けます。
「もっと大きく」
顎が痛いのです。開口器を長時間装着したためでしょうか。
「もっとだ」
杖の先が、乳房に食い込みます。
「ひー」
「久しぶりだわ。郁美のそういう悲鳴が聞きたかったんだ」
「口を開けろ」
杖が持ち上がると、乳房にその跡が赤く残っていました。
必死に口を開けるしかありません。
「喉も開け」
できているかどうかはわかりませんが、とにかくやってみます。
そこに杖の先が入ってきます。
「げー」
「声は出してもいいが、喉を開いておけよ」
ごくんと飲み込む部分が無意識に反応して、杖を飲もうとしてしまうのです。
思ったよりも奥まで入っているようです。苦しくて、杖を噛みます。
「もう少し奥までだ」
鼻で呼吸を整えて、喉を開こうとします。
ぐいっと杖は深く侵入してきました。涙があふれてきます。
「胃カメラを飲むときに、麻酔をしていても苦しいものだが、それを麻酔なしでやっているようなものだな」と望月がつぶやいています。
「もう少し」
「うげー」
私は限界でした。杖の先が胃にまで届いていたのではないでしょうか。
鬼丘は杖をすばやく引き抜きました。
私は倒れ、土間に食べたばかりの昼食を吐いてしまいました。
「食え」
鬼丘は非情に命じます。
呼吸を再び整え、土間に飛び散った嘔吐物を口と舌でまた食べるのです。
土も入りますが、必死に飲み込むしかないのです。
「汚しやがって。きれいに舐めろ」
土間を舐めて、すっかりきれいにするまで許されません。
「郁美、口が泥だらけよ」
ですが、拭うことはできないのです。
「よし。正座。そして手を出せ」
床の上に、靴のような手袋をした私の手。鬼丘はそれを外しました。
通気性の悪い中に押し込まれていた手はふやけていました。
「これからは新しいものを装着する」
「はい」
棚から鬼丘が持って来たのは、おにぎりぐらいの大きさの革でできた二個の円盤でした。それぞれ革の紐がついています。
「握るんだ」
革の円盤を鷲づかみします。しっかり握ると指先よりほんの数ミリだけ、円盤は厚みがありました。
しっかりと握っていると、革からでている革紐を指を編むように、かけていきます。革の円盤には細い溝があって、指をその溝に縛り付けていくのです。
それだけでは足りないらしく、別の革紐を持って来ると、底の部分にある溝を通して、手首に固定していきます。その余った革紐を、肘まで編み上げていきます。
両手にそれをつけると、サンダルを履いた足のようです。もはやそれは人間の手ではないのです。
「それがおまえの蹄だ。しっかり握っているんだぞ。四つ這いになったときに、自分を支えるんだからな」
「はい」
手袋型よりは通気性もよく動きやすいとは思いますが、指と手首に大きな負担がかかりそうです。
爪切りで、私の爪を切り落とします。
「よく聞けよ。おまえが手を思い切り振り回したりすれば、これは簡単に外れてしまう。外したくなれば、外していい。だが、せっかくのチャンスをふいにすることになる。おまえはケモノに堕ちることも、人間に戻ることもできなくなる」
「そんな話、聞きたくない」と言いたくなりました。
それを察したのか、鬼丘が「しっ」と指を唇にあてます。
「発言は許されていない。懲罰の対象だ。忘れるな」
「はい」
そう言うしかないのです。
「もし、おまえが生き延びたら、この蹄の革が減っていくにつれて、指先も地面に触れて角質化する。指はいまの二倍ぐらい太くなる。そしてホンモノの蹄のように革と手は一体になるだろう」
いまはまだ革を握っているだけの手。それがいつか、完全に変形してしまうのでしょうか。
「落ち着いたら、もう一度だ」
再び、杖を飲む訓練です。
「歯を立てるな。噛まない訓練でもあるんだぞ」


