出そうになります。少し出たんじゃないかと思います。
「悪い悪い。ここで出してごらん」
「トイレに……」
「もう間に合わないだろ」
「そんなー」
「やれよ」
「ううううう」
洗面器にしろというのです。リビングの床で。
「早くしないと大変なことになるよ」
「ふえええええ」
べそをかきながら、洗面器にお尻をおろします。すぐにジャーっと音を立ててお尻から液体が噴き出します。そして固形物が……。
「あっ」
金男はわたしの排泄姿を撮影したのです。
「やめて……」
「だめだ。特典映像だな、これは」
派手な音を立てて、大量の排泄をしているわたしを彼はビデオで記録するのです。
赤岩と金男は気が合うのか、ライバルなのか、わたしから見ていると少しハラハラする関係なのですが、一致しているのは、わたしのすべてを記録して、ネットなどで公開していこう、という点です。
「なわみの生き方そのものがスゴイんだよ」と赤岩が強調します。「ぜんぶ、さらけ出すんだ。服を着ていても、着てなくても……」
そんなことができるでしょうか。それによってわたしはどうなってしまうのでしょうか。
「終わりました」
「まだダメだ。風呂場に行く。それをトイレに捨てるんだ」
排泄物を捨てに行くところも撮影されてしまいます。
風呂場ではお湯を出して、浣腸器でさらにお湯だけを入れます。入れては出し、入れては出しするのです。
「つらい……」
「慣れるよ。それに気持ちがいいはずだけどな」
それは人によるのではないでしょうか。
「今日の仕事もきついから、覚悟してほしいんだよ」
お尻を洗ってローションをつけ、哲次が作った器具を入れて中で膨らませながら、金男が言います。
「どういう仕事なんですか」
「野外の撮影会だ。楽しいぞ」
「野外……」
絶望的な気持ちになります。
野外撮影会
「もう興奮しているのか?」
金男がタクシーの中でわたしの小鼻を指でつまみます。
思わず運転手が振り向いたほどです。
「小鼻がふくらむから、わかるんだよ。ね、運転手さん、こいつ、小鼻膨らんでいるでしょう」
「え? はあ、よくわかりませんけども」
股間に異物がしっかりと入っている状態で、全裸に薄いコートを羽織っただけ。
金男の下手な縄で両手首はコートの下で後ろ手に縛られています。ぶらぶらの袖が不自然なはずです。
おまけにコートの前のボタンを一つもしてくれません。
「ずいぶん、郊外ですけど」
運転手さんも不安になるようです。怪しい男女だから。タクシー強盗と思われているかもしれません。いまはドライブレコーダーがあるので、彼とわたしのことはしっかり記録されているのではないかと思いますが……。
電車とバスで行こうという金男に頼み込み、タクシーにしてもらったのですが、そのかわりに、彼の言うとおりの姿で移動することを了承したのです。
「あの農家のところでお願いします」
バス停があり、農家があります。あたりは見渡す限りの田畑。小川が流れ、遠く山が霞んでいます。
バス停は広場になっていて、そこで終点らしいのです。
抱えられるようにしてタクシーを降ろされました。タクシーはUターンして帰っていきます。
こんなところで撮影会などがあるのでしょうか。
一台の車がやってきます。外国製のスポーティーな車で、風景に似合いません。それが広場の隅に止まり、人が降りてきました。
赤岩です。
「ここから、もう少しいったところにいい場所があるんですよ」
サングラスをした赤岩は、いつもの雰囲気よりはやや悪い人のように見えます。近づきにくい怖さがあります。
見渡しても周辺にはなにもないようです。雑木林に囲まれ、その向こうは山の斜面。見えていた農家も声が届かないほど遠い場所です。
「バスは少し遅れるだろうけど、もう用意しますか?」
「お願いします」
金男が言うと、二人は赤岩の車のトランクからダッフルバッグを二つ降ろしてきました。その一つから、赤い縄が取り出されました。
「裸になって」
「えっ、ここで……」
ほかに誰もいないのです。カメラもありません。撮影と聞いていたのですが。
「いいから」
金男にコートを脱がされます。
「きれいですね」
赤岩はニコリとして縄をしごき、わたしの首にかけました。首で一つ結び目を作ります。
「楽しみでしょう」
「今日は外なんでしょうか」
「ええ。場所はあとで移動しますが、ここでお迎えをするんですよ」
赤岩は、金男の縄を外しながら、自分の縄をかけていきます。うむを言わせず、腕を背中に組ませて縛り、前に垂れた縄は乳房の上下をはさむようにしたあと、腕からの縄を使ってさらに胸の谷間にからめて縛り上げたので、腕を動かすと乳房がぎゅっと締まります。乳房を楽にするには腕を思い切り上へ上げなくてはならず、それも苦しいことです。
金男がコートを羽織らせてくれます。コートのベルトを軽く縛って前を閉じてくれます。
「来たんじゃないですか?」
遠くに砂埃と大型のバスが見えます。みるみる近づいてくると、このバス停に入りました。
乗客は十五人ほどで、地元の人たちはわたしたちを怪訝そうに睨んだあと、わいわいと農家のある方向に歩いて行きます。
残ったのは中高年の男性十一人です。全員がカメラを持っていて、大きなバッグを持っていたり背負っていたり。
「じゃ、こちらで受付しますので」
金男が地元民がいなくなり、バスが再び走り出したあとに、彼らから現金でお金を取っていくのです。なんという素朴な方法でしょう。
「ではみなさん。撮影場所はこの少し先にあります。その前に、モデルのなわみを紹介しましょう」
コートを金男が脱がせます。
「おお」
表情のなかった男たちが、うれしそうにわたしを見ます。
「さあ、ご挨拶をしなさい」
わたしが言葉を発しないといけないらしいのです。
「縄奴隷のなわみです。よろしくお願いいたします」
頭を下げます。
「今日は天気はよさそうなので、野外撮影会にはいいコンディションですね」と赤岩。
高曇りですが、雨よりはマシでしょう。
「じゃ、行きましょう。この場所での撮影はご遠慮くださいね。場所を特定できる写真が出回ると、次に使えなくなるといけませんから」
カメラをいまにも構えようとしていた男たちは、少々、ガッカリしているようです。
スニーカーを許されていて、わたしは赤岩に縄を掴まれ、雑木林の小径に入ります。裸なので、ちょっとでも空気が変わると全身で感じてしまいます。ぶるっと震えます。
ですが、ほどなく、開けた空き地に出ました。小高い丘なのでしょうか。耕作地だった跡があります。何年も見捨てられていたのでしょう。荒れ地となっています。
太陽を感じて、ここは少し暖かいと思ったのですが、ときどき強い風が吹いてきます。すると体温をいっきに奪われます。
「では、みなさんからのリクエストがありますので、それでなわみを責めながらの撮影といきましょう」
仕事といってもプロのカメラマンによるものばかりではないのです。いえ、金男や赤岩はむしろ、もっと怪しげな仕事をあえて求めているのかもしれません。自分たちの嗜好に合ったもの、ということでしょうか。
「最初からきついやつですが、これはみなさんが期待しているとおり、なわみのシンボルともいえるものですからね」
赤岩は細い縄を手にしています。
「い、いや」
思わず顔を背けてしまいますが、サングラスをつけた金男が背後からがっちりと体をつかんでいます。
「おとなしく縄を受けるんですよ」
目をつぶります。
「口を開けて」
金属の開口器を口に押しつけられました。それを噛みしめると、ベルトでがっちりと留められてしまいます。
「見るんだ、なわみ」
赤岩が細い縄を近づけてきます。
先端が鼻に入れられます。本当につらいのです。粘膜を擦り、くしゃみが出ます。笑われながら、縄が口の奥に到達し、自分の力で吐き出すようにして、気管へ行かないようにします。
「よーし、だんだん上手になってきたね」
赤岩の指が口の中に入り、先端をつまむと、すーっと縄を通されます。
「今日はちょっと変えましょう」
「あーーー」
長く引っ張り出されて、先端を乳首に巻き付けます。細い縄で乳首が絞首刑のようにくびれ、縛られました。
「こっちを引っ張ると」
「ああああ」
鼻の粘膜が擦れ、乳首が引っ張られる……。
お客様たちが笑うのが悲しいのです。
「こっちも」
左右の鼻に別の縄が通されて、それぞれに乳首に縛り付けるのです。
「こうしたらどうなるかな?」
鼻のところで二本の縄を交差させ、絞
り上げます。
「ふぃぃぃぃ」
乳首がちぎれそうになります。
「みっともないでしょう。読者モデルまでしたことのある人妻が、こんな荒れ地で、すごいことになっていますね」
すぐに緩めてくれましたが、悲しすぎます。
風もあるので、みなさんがいつシャッターを切っているのかわかりません。
「次はこっちです」
金男と赤岩に体を倒されて、スニーカーを脱がされ、足に縄をかけられます。股間が剥き出しになります。十一のレンズがあちらこちらから、わたしに向けられています。
草原の上で、なにも下には敷いてくれません。肌で枯れ草を感じながら、縛られるのです。
脛
と
腿
を折りたたみ、ぎっちりと編み上げるように縛られました。
金男がわたしの背中から抱えるようにして、体を起こしました。
「うぐううう」
足は自由にならないのですが、お
相
撲
の
蹲
踞
のように、つま先でしゃがんだかっこうに立たされます。
「こうしてみましょう」
赤岩が鼻の縄を持ち、離れたところに立ちます。縄が徐々にぴーんと張られます。
口から出て乳首につながる縄は開口器のせいで、わたしにはコントロールできないのです。
「あうぅ」
「さあ、なわみ。散歩だ」
しゃがんだまま、ヨチヨチと歩かせようというのです。
ひどいのです。ただのモデルではなく、金男と赤岩に責められているところを自由に撮影させる……。
金男の持っている暗い欲望と赤岩の嗜好は、掛け算のように残酷な方向へ進んでいくのではないでしょうか。
この荒野でなにをされるのか。まったく聞かされていません。
夫の許可が出ている以上、二人はわたしを最低限、子どもが産める体に保ちさえすれば、あとはなにをやってもいいことになるのです。
「あうううう」
粘膜を擦られ、必死に歩きます。タイミングが合わないと、強烈に乳首を引っ張られることになります。
右、左と体を方向けながら、裸足で荒れ地を歩く姿は、どんな風に映るのでしょうか。
「もっと、おっぱいを揺すって歩けよ」と金男に言われます。
「そうだ、股も開いて歩くんだ」
赤岩も手を緩めません。
風が冷たいのに、あっという間に汗が噴き出てきました。
「もう一周お願いします!」
参加者の声に押されて、必死に歩かされました。
ポルチオ
縄奴隷としての撮影会。それも野外。
空は曇っていて、薄寒い風が吹いています。
ときおり鳥の鳴き声がするぐらいで、あたりは静かすぎるほどです。すぐ近くにバス停や農家があるとは思えないほど、そこだけがまるで別の空間のようです。
カメラを構えるお客さんたち。まともに見ることはできません。光の向きがありますから、彼らはいつもシルエットです。
赤岩が縄を取り出し、わたしを縛っていきます。拘束のための縄ではなく、飾るための縄です。足を片方ずつ、編み上げていきます。腕も左右、別々に編み上げます。そして首から乳房、腹部にかけても。
普通に歩くこともできますし、手も自由なのですが、ぎっちりと縄が肌に食い込んできて、わたしは頭の中でなにかが溶けていくような気さえしました。
暖かい……。
縄の温もりと肌に食い込む厳しさが、わたしを異次元に連れていくのです。
広場にテントを張るときにでも使うような金属の杭を、金男が打ち込みます。
そこに大の字に寝かされました。
手首、足首を杭につながれます。いえ、そんな生やさしいものではありません。金男も赤岩も、男の力と体重までかけて、思い切り引き絞るのです。
「うぎー」
開口器があるので、言葉になりません。
「みなさんに、少し遊んでもらいましょう」
写真をひとしきり撮っていた十一人の男たちは、最初はおそるおそる、しだいに当たり前のように、わたしの体を触るのです。
「なわみの体を自由に触っていいんですよ」
普通のモデルは絶対にやらないこと……。
鼻を通って乳首に結ばれた縄も引っ張られます。鼻血が出ているようですが、男たちは笑っているだけで、心配さえしません。
体をべたべたと触ってきます。腹部、腕。腿。
すべてに縄が食い込んでいるのですが、縄と縄にはさまれて盛り上がった部分を、さらにつねったり、撫でたりされるのです。
そして彼らの関心は当たり前のようにそけい部に移ります。
「あれ、これってなんですか?」
割れ目を押し開いた男が、そこから飛び出している金属の筒に驚きます。
「貞操用具ですよ。それは子宮まで達していて、鍵で空気を抜かないと抜くことはできないのです」
赤岩が説明します。
「彼女はこれでも人妻なんですよ。夫は彼女に子どもを産んでほしいらしい。だから縄奴隷としてあらゆることをしてもいいという許可は出ていますが、性器とアヌスは封印されているわけですね」
「なるほど」
そこを写真に撮る人たち。
誰かがその貞操具の末端を指で動かしました。
「がふぅぅぅ」
叫んでしまいます。
中でふくらんだ風船部分は子宮にぴったりと貼り付いているのです。だから、それを動かされると、子宮に直接、響くのです。
「感じてるぞ」
「おもしろいな」
金男も驚いているようです。
わたしだって驚いています。
穴を塞ぐだけではなく、装置はわたしに激しい快感を与える器具にもなり得るのです。
「なるほどね。常にチンポを飲み込んでいるようなものじゃないですか」
客がぐいぐいと上下に動かしはじめました。ピッタリ入っているので、動く範囲はわずかですが、体というのは柔らかなものですから、多少の無理もきくのです。
「がはぁあぁぁあ」
声を出してのけぞってしまいます。
「やさしく撫でてあげるだけでも、この感じようだぞ」
見知らぬ男が、わたしの性器を撫で回すと、中の貞操器具が上下左右に動きまわり、神経を直接触るように、電気が走りました。
「なわみさん、感じてますね。こんな荒地で、知らない男たちに触られて、こんなに悦んでしまっていいんですか?」
予想していない事態に、わたしは戸惑っていました。撮影に連れ出されて、つらく、恥ずかしく、そして痛いことばかりになるのだろうと思っていたのです。
それが、まさかの激しい興奮状態に、体が暴走をはじめていくのです。
「こっちも同時に引っ張ってみましょうか」
「はがぅぅうう」
鼻の粘膜を擦られ乳首が引っ張られていきます。
痛み、そして快楽。
子宮のあたりで感じることがあると聞いたことはありますが、わたしはこれまでそんな強烈な性体験はしたことがありません。
夫とのセックスはキライではありませんし、感じていますし、これまでも男性とお付き合いをして普通に気持ちがいい思いもしたことはありました。
ですが、こんな強烈な、脳が溶けていくような快楽はありませんでした。
背中に草や石が当たって痛いし、全身に巻き付いた縄が肌を痛めつけるのですが、それでもなお、いえ、それだからこそ、特別な快楽に浸っていくのかもしれません。
「はふぅぅぅぅ」
最初の波に飲まれて、のけぞります。
「なわみさんは、すばらしい感度じゃないですか!」
男たちが興奮しています。怖いですが、犯されることはないので、それだけは安心しきっていました。
ただ、こんな風に乱れていく自分が、人様に見られ、撮影されていることは、恥ずかしくてしかたがありません。着飾ったモデルではなく、むしろすべてを剥ぎ取られた自分を見られているのですから。
快楽だけを身にまとう女。
そんな自分を妙に客観的に見てしまうと、それで醒めるどころか、さらに燃えていくのです。なわみは、荒野で、男たちに肌を存分に晒して、どろどろの快楽の中に悶絶するのです。
「よければ、お尻にも同じように器具が入っているんで……」
金男が告げます。
「へえ。なわみさんはケツも好きなんですか?」
「あがあがが」
そんなこと、したことはありません。アナルセックスのことを知らないわけではありませんが、自分とは無関係な不潔な世界だと思っていました。
誰かが、お尻に手を入れてきます。
「はあぐぁあ」
すっかり感じまくっているからでしょうか。男の手がお尻の穴を探り当てて、そこにある器具の先端に触れただけで、小さな波が襲ってきました。
「ホントだ。なわみはケツでも感じるんだね」
「おれにも触らせてくれ」
彼らは入れ替わり立ち替わり、手を伸ばして、膣とお尻をいじってきます。
お尻は感じるわけないと思っていましたが、おそらく子宮をはげしく揺すられて、下半身全体に快感が行き渡っていたからだと思うのですけど、お尻をいじられて、体の中の器具がぐいっと子宮の裏側を刺激してくると、おしっこが出そうなほどの快感がやってきて、自分でもわけがわからなくなっていきました。
「ほがぁ、ほがぁ」
情けない音を発しながら、のけぞり、縮み、くねり、泣きました。
「あぐぅぅぅ」
十一人もいるので、代わる代わる触られ続けていると、十分でも二十分でも終わりません。
とうとうおしっこを漏らしてしまいました。
「あっ、こいつ」
股間をいじっていた男たちが慌てて飛び退きます。
「小便、漏らしやがった」
「それだけ、感じちゃってるんだなあ」
そんな声を聞きながら、止めることができません。
「すみません。こっちも出そうになっちゃうんですけど」と客が言います。
「そうですよー、これはたまらんですよー」
「生殺しじゃないですか!」
男たちも興奮してきているのです。
十一人の客が暴れたら、金男はバイク事故による不自由な体で満足な動きはできないでしょうし、赤岩だって一人ではどうにもならないでしょう。
もし、金男が鍵を奪われたら、けっきょく、わたしは犯されてしまう……。
金男と赤岩がコソコソとわたしの上で相談をしています。
金男がわたしに小声で言います。
「口はいいだろ」と。
「あぐううう」
返事はできません。嫌だと言っても通じないでしょう。首をこれだけ横に振っているのに……。
「いいですよ。なわみは、みなさんに口を使って奉仕すると言っています。いま鼻の縄を取りますから」
「いえ! そのままでやりたい!」
そうだ、そうだと男たち。
「じゃ、どうぞ、お好きなように」
そんな。
絶対に妊娠することがない口ならいいというのでしょうか。
奉仕活動
金男がわたしに言うのです。
「いい思いをしたんだろう。今度はみなさんにもいい思いをさせてあげないと納まらないよ」
因果を含める、というのでしょうか。
口は開いたままにされていて、なにをされたところで、文句は言えないのをいいことに。
金男が体を起こしてくれます。
赤岩は縄を手にしています。全身に縄がかかっているので、それを使えばわたしの体をどのような形にでも簡単に縛ることができます。
後ろ手に縛られて、体を前屈させます。足と足の間に上半身が入るぐらいまで背中を押されて、その形で胴と足を一緒に縛っていきます。
二人がかりでお尻を基点に体を起こしました。
わたしはコンパクトに折り畳まれてしまいました。
背後の木に縄を垂らし、みんなでわたしを運んでいき、そこに吊り下げたのです。
足をV字に跳ね上げ、後ろ手で縛られ、風鈴のように。
体が折れそうに苦しいのですが、全身を締め付ける縄をうまく使って吊り下げているので、力は分散されているようです。
蓑虫のようにぶらぶらとしています。お尻は地面の草が当たっていますので、それほど高い位置ではありません。
というのも、彼らがわたしの口に、立ったまま男性器を入れるのに都合のいい高さに調整されたのです。
「じゃあ、ちょっと楽しんでいただきましょうか」
背骨が折れそうで怖いぐらいなのですが、男たちはおもしろがって、自分のものをおしっこでもするかのようにズボンから取り出すと、口の中に入れました。
「しゃぶれよ」
鼻の縄を引っ張られます。
「がふぅっ」
舌で男のものを感じます。ずっしりと重く、温かく、濡れています。男は奥まで入れてきます。唇が使えないので、舌と頬だけで愛撫することになりますが、男はおかまいなしに頬や喉に擦りつけてきます。
「ぐあぐあぐあ」と喉が鳴ります。
咳き込みながら、愛撫を続けていきます。
最初の人がドビュッと喉に精を放つまでがひどく長く感じられました。体が吊られているので揺れています。それを利用して喉を犯されるのですが、乳首から鼻を通されている細縄を引っ張られるので、激痛に耐えているのです。
次の人は思ったよりも早く出してくれましたが、顔にかけられました。
「きれいですよ、なわみさん」
三人目からは記憶が曖昧です。
わたしは舌を積極的に使うようになっていました。心の中でこの状況を楽しみたいという気持ちが芽生えていました。もっとオチンチンをください、もっと精液を飲ませてください、と念じるのです。そうしないと、つらすぎます。
被虐性を強めることで、異常な状況を受け入れて、苦痛をやわらげたいのです。あと何人とか考えたくないのです。いつまでもこの時間が続いてくれたらいい、お願いもっとひどいことをして、と思うこと。
そこに救いがあると気づいたのです。
なにもかも忘れて、お客様のものをしゃぶりつくす。飲み干すのです。
ふと気づくと、写真を撮られていました。お客様はみな、少し遠くにいます。
終わったらしい……。
「すごいね、いっぱいもらったじゃないか。うれしいんだろう」と金男に言われました。「なわみは、うれしそうな顔をしてるものな」
表情まで計算できません。自然にそう見える顔になっていたのかもしれません。
「みんなで、ご褒美をあげようじゃないか」
赤岩はそう言って自分の男性器を取り出しました。彼らにも奉仕しなければならないのかと思いましたが、違うのです。
彼はわたしに近づいてくると笑いながらオシッコをしたのです。最初はちょろっと体にかかったのですが、なにをするの、と思う間もなく勢いがついて顔にまともに浴びせてきました。
「あがうぅぅぅ」
「精液だらけの顔をきれいにしてやるよ」
逃げられないように鼻からの縄をしっかり引っ張られて、口に注がれます。
「いい顔だ」
赤岩が笑います。
「みなさんもどうぞ」
金男の声がします。
「なわみの顔を、みなさんの黄金水できれいにしてやってください」
今度は一人ずつではないのです。二、三人が同時にわたしに放尿してきます。
目に、鼻に、耳に、そして口に浴びせられます。
呼吸ができないので、口に入ったものを吐き出しつつも、かなり飲んでしまいました。喉が焼けるような感じがして、いけないものを飲まされていることに脅えながら、耐えました。
「がうぅぅぅ」
顔、体がビシャビシャになっていきました。
その様子をまた撮影しています。
「よーし、いったん休憩だ」
赤岩が宣言して、用意してきたらしいポリ容器の水を頭から浴びせられました。
そして、ようやく苦しい吊りから解放されたのです。
乳首の縄が解かれ、鼻から真っ赤になった縄が抜かれていくと、そこにも大量の精液が付着していました。開口器が外されます。
「はああ」
思わず長いため息が出ました。精液と小便のニオイがします。
「こっちに来い」
首に縄をかけられ、立たされました。手足が痺れてしまい、思ったように支えることができません。
「生まれたての仔鹿だな」と誰かに笑われました。
自分でもおかしくて微笑んでいました。そこをまた写真に撮られました。
用意されていた水で顔を洗い、タオルで拭き、少しは落ち着きました。
ですが、全身から尿のニオイがしているような気がしてなりません。
水を飲み、口をゆすぎ、鼻をティッシュで掃除し、耳もきれいにしましたが、髪はどうにもなりません。足もオシッコと水で濡れた地面を踏んだのでドロドロです。
「どうだ。楽しいだろう」
金男が言います。
「つらいです」
「なわみのデビュー記念だから、マニアックなことをしないと話題にならない。今日はとくにいいお客さんが来ているんだから、あともう少し、がんばるんだよ」
「まだ、あるんですか?」
「誰がお金を払ってこんなところまで来ると思うんだよ。この人たちを満足させられなかったら、おまえのデビューは失敗しちゃうんだぞ」
失敗したからといって、どうなるんでしょう。なにも問題はないように思うのです。むしろわたしにとってはそのほうが救いになりそうです。
「安心しろ。後半もおまえの意思とは関係なく、みなさんに悦んでもらえることを考えているよ。ね、赤岩さん」
「もちろん。後半は縄で遊ばせてもらいますよ」
有刺鉄線がないだけマシということでしょうか。
赤岩は汚れた縄を丁寧に拭きながら、ほかの縄とわけて置いています。新しい縄が追加されます。
全身に縄の跡があります。深く残っているので、しばらく取れそうもありません。
「だけど、なわみは本当に体が柔らかいし、手足が長いから、きれいだなあ。まあ、これ以上は痩せないでほしいけどね。むしろ、少し肉がついてもいいと思う」
赤岩は勝手なことを言っています。
喜美江も絵夢奴も、むっちりとした体でしたから、そのほうが縄にフィットするのかもしれません。
「そうですね。いっぱい食べてもらいますよ。だけどいまも栄養をもらっているわけで、このままでもいい感じになっていくんじゃないですか?」
「そうかもしれないね。なわみは、縄に愛されているんだから、縄をまとうほど、いい体になっていくかもしれないな」
勝手なことを言っています。
「じゃあ、時間もないことですから、後半をスタートしましょう。あっちの雑木林に行きます」
雑木林の入り口付近に、下草が刈り込まれた場所がありました。赤岩は以前にもここを使っているのです。
見上げると前後、左右に太い幹の木があり、丈夫そうな枝が張りだしていました。
「胴と足で吊ります」
赤岩は新しい縄をわたしの胴に巻き付けます。
覚醒
しっかりと腰と足の付け根に縄を回してきました。
赤岩はわたしの体に足を押しつけて締め付けます。荷物扱いです。
「ぐぅぅぅ」
上半身は後ろ手、そして乳房を突き出すような縄。首にもかかっています。これもいままでにも増してきつく感じます。赤岩はすごく力が入っているのです。
「よし、これで吊ってみるから」
上の枝に縄を投げて、赤岩が引っ張り、金男がわたしを支えます。
体が引き上げられます。
立っている状態のまま足が宙に浮きます。金男がわたしを支えなければ、バランスを失って頭から地面に倒れてしまうでしょう。
「もう少しだな」
さらに引き上げられました。
「ぐはっ」
全身が締め付けられ苦しくて声も出ません。
「これでいい」
縄を赤岩が木の幹にしっかり縛り付けてしまうと、わたしは宙に浮いたままです。
金男と赤岩が、ゆっくりとわたしを倒していきます。
頭が地面から二十センチぐらいのところで、逆さになたのです。
「ぐふふふぅぅぅ」
息をするのも苦しい状況。
「次は足」
ぐるぐると回ってしまうのを金男が足を持って支えています。
赤岩が左足首に縄をかけてそれを引っ張って、別の木の幹に縛り付けます。極端な開脚です。
右足首にも縄をかけて、一端、別の木の幹に巻き付けますが、しっかり結ぶことはしません。それだけで、わたしは空中で百八十度開脚をしているようなかっこうになっています。
「はぁぁぁあ」
声を出せば少し呼吸ができます。
撮影が続きます。
恥ずかしくも、陰部をみなさんが見下ろす位置に
晒
しています。
少し飛び出しているらしい貞操器具を、金男が指で押して奥に入れました。
「こことここに杭を打ちましょう」
赤岩と金男で地面に杭を打ち込みました。そこに縄をかけて、わたしの股間を通したのです。
枝から吊られているので、少しは上下に動きます。足の縄を揺すると、体が上に下にと動きます。地面、股間、地面と山の形になった縄が、そのたびに食い込んできて、またしても子宮を刺激するのです。
「あっ、あっ」
声が出てしまいます。
「これだけじゃ、おもしろくないんで」
赤岩は右足首の縄を木から離して、手で持つのです。そして上下左右に動かすと、わたしの体は揺れ動きます。
「ううううう」
苦しいだけではなく、股間に強烈な刺激です。
「みなさんも遊んでみてください」
撮影していた男性たちは足の縄を手にして遊びます。足も百八十度以上に開こうとしたり、横だけでなく縦に足を延ばすなど、いろいろなポーズを作っては撮影しました。
「これを使ってみましょう」
赤岩は落ちていた枝を拾ってきて、余計な枝葉を取り、一本の棒にしました。
「みなさんもよろしければ、そのあたりに落ちているもので鞭を作ってみてはいかがですか?」
「叩いてもいいんですか」と客たちは驚いていますが、一番驚いているのはわたしです。
「ええ、かまいませんよ」と金男。彼も枝を拾おうとうろうろしています。
男たちはしばらくそのあたりで枝漁りをしていましたが、戻ってくると、手には太いの、細いの、長いの、短いの。さまざまな枝があります。
男というよりも、男の子です。だけど、ほほえましい姿ではありません。
「突いてもいいですね」
赤岩が枝の先端で腹部を押しました。
「あふっ」
肌に感じる痛みよりも、男たちが全員でわたしを取り囲み、暴力をふるおうとしている姿が恐ろしいのです。
「どうなの。なんか言ってみなよ」
金男も枝で柔らな肌を押してきます。
「ふうぅぅう」
返事なんてできません。
「なわみ。縄に巻かれて幸せなんだろう?」
頭に血がのぼります。あえぐだけで精一杯。
「淫らな体をして。人妻だというのに、こんな恥ずかしい仕事をするとは。恥ずかしくないのかな?」
枝の先が乳房をなぞってきます。
「恥ずかしいです」
「じゃあ、なんでやってるんだ。カネのためか?」
「ちがいます」
お金じゃない。義兄に脅されたから……。
口を開こうとしたんですが、ハッとしました。
本当に義兄に脅されたからでしょうか。もし、それだけなら、わたしはいつでも逃げることができました。いくら縛られているとはいえ、一日中ではありません。隙をみて逃げればよかったのです。
それをしなかった……。
すべてが逆さまに見えます。
こうして吊られていると、頭が下になって、彼らの足元が見えます。地面が見えます。世の中が逆さまに見えます。
そこでは、菜緒美がウソで、なわみがホンモノ。
元はといえば自分で撒いた種です。そもそも縛られたい、という気持ちはゆるぎないもので、こうしていても、確かに体を締め付ける縄によってわたしは高揚しているのです。気を失いそうなほどですが、しっかり感覚を研ぎ澄ましていないともったいないと思うほどです。
赤岩に指を縛られたとき。深川先生に囲炉裏のある部屋で縛られたとき。赤岩によって有刺鉄線で縛られたとき。そして吹雪さんに撮影されながら、縛られたとき。
もちろん、いまも。
体に刻まれていくこの感触は、日常に起こるあらゆることを飛び越えて、わたしの記憶の一番大切なものになっているのです。
「ああ、なわみは幸せです」
呟いていました。
「なんだって?」
「なわみは幸せです。こうして縛られて、吊されて」
「縛られるのが好きなんだな」
「それ以上です」
言葉がうまく出てきませんでした。
好き嫌いを超えています。なわみは、縄味なのです。縄を味わうこと。
「すばらしいですね!」
客が大きな声でいいました。
「なわみさん、叩かせてください」
「なわみ、と呼び捨てでいいんだ。頼むことはないんだよ」と赤岩が急に声を荒げて、枝を振り下ろしました。
「あうっ」
太ももの付け根を叩かれました。皮膚が切れたのではないかと思うほどの痛みです。
「じゃ、やります」
客はお尻を叩きました。
金男はみんなが叩くならと、股間の縄を外しました。
浮ついた快楽ではなく、縛られて叩かれるだけ。苦痛だけ。それがなわみには似合うのかもしれません。
「うっ、あっ、ひっ」
足、お尻、背中、お腹、そして乳房。
叩かれ、突かれて、わたしの体は揺れます。
「ここをやったらどうなるかな」
金男が、みんなは遠慮していた股間に枝をそっと置きました。
「はぁぁぁ」
なにもされていないのに、悲鳴が漏れます。
「叩いてほしいんじゃないのか? あれだけ感じたんだからね。叩いても感じるんじゃないのかな」
「ふぅぅぅぅ、お、お願いします。なわみを厳しく罰してください……」
とうとう、そんな言葉が出てしまいました。
「いくぞ」
金男が枝を振り上げて、股間に打ち据えました。
「あぐぅぅぅ」
なんてきつくて、厳しいのでしょう。枝が股間に当たると、体内に入れられた器具がさらに深く突き刺さり、子宮や内臓に強烈な衝撃を伝えるのです。
体の中から鞭打たれているようです。
「感じるみたいですよ。みなさんもやってみてはいかがですか?」
十一人のお客さんたちが、それぞれ三発ずつ、股間に枝を打ち下ろしていったのです。
「あ、失禁しちゃいましたよ」
ガクガクと震えるほどの苦痛。それはなわみにとっては悦楽。
漏らしたおしっこを全身で受けます。
「まだまだ」
その後も、リンチのように、しばらく打ち据えられて、ようやく地面におろされました。
呆然としています。
自分の体ではないような感じ。ミミズ腫れや傷がいくつもついています。縄の跡もさらにくっきりと。
「では、そろそろ時間もなくなってきましたので、これが最後のポーズです」
赤岩は手首に縄をかけて、左右の木の枝から、わたしを大の字に吊しました。金男がしばらくわたしの体を支えてくれたのですが、足首も縛り終えると、彼が離れていきました。
「ぐぅぅぅ」
手首と足首で、磔になっています。
赤岩は首にも縄をかけました。その縄は絞首刑のように上の枝に巻き付けたのです。
もし手首の縄のどちらかが外れただけでも、本当に首が絞まってしまうでしょう。
「ひぃぃぃ」
恐怖です。ひきつっていると思います。
傷だらけの体が楽しいらしく、みんながいろいろな角度から写真を撮ります。
赤岩はわたしに水をかけました。
「ひー」
全身が濡れて、陽の光に反射しています。
「どうだ。なわみ。縄奴隷のデビュー撮影会の感想は」
赤岩が首の縄をぐいっと引っ張ります。
「がひっ。う、うれしいです」
「それだけか? こんなところまで来ていただいたんだ、閉会の挨拶をしろよ」
「ううう。縄奴隷なわみの撮影会に来ていただき、ありがとうございます。ご満足いただけたでしょうか。これからもどうか、末永くよろしくお願いいたします」
そう言うのがやっとでした。
「そういうわけです」と金男があとを引き受ける。
「今後も場所を変えて、いろいろな撮影会を実施していこうと思っていますので、もしよろしければご参加ください。また、リクエストも募集しますので、サイトの掲示板やメールでお寄せください。できるだけご希望にそえるようにしたいと思っています」
「本日はありがとうございました」
このままなのです。
わたしは放り出されて、赤岩と金男が、名残惜しそうな参加者たちを連れて、バス停に送っていきました。
わずか三時間ほどの撮影会だったと、あとでわかったのですが、わたしにとっては一生でもっとも長い三時間でした。
風が吹き、森が音を立てています。ほかに音はありません。木々が揺れ、わたしの手足も引っ張られます。
このまま金男たちが戻ってこなければ、こうしてわたしは消えていくことができるかもしれません。
それはステキなことかもしれません。
だけど、死んでしまったら苦痛はもう得られないのです。縄でギュッと締め付けられる感触もなくなります。
それは嫌です。
そのとき、突然、なんにもしていないのに、体が熱くなってきました。
「ああっ、だめ、感じるぅ」
声に出してしまいました。
縄をぎゅっと握りました。ガクガクと体が震えます。
こんなことって……。
細い道から戻ってきた金男と赤岩が見えます。エクスタシーの中で朦朧としているわたしにまだ気づいていません。
「うううう、イクぅ」
強烈な感覚に満たされていきました。
もう、わたしは菜緒美には戻れないかもしれません。
そして事実上、死ぬまでこの状態を続けるのです。いつか、事故で首の骨が折れるか、首が絞まるかして死ぬでしょう。それとも、感じすぎて狂い死にするかもしれません。体が耐えられず、心臓が止まってしまうかもしれません。
どちらにせよ、もう、縛られて磔にされた人生なのです。
「ははは」と金男が笑いました。
「また感じてやがる」
濡れた股間を撫でてきました。
「うれしいのか?」
「はい……」
「よかったじゃないか。みんな大喜びだったぞ。彼らはまた来るってさ」
「ううううう」
大粒の涙。
「こっちも涙であふれているよ」
「このまま死んでもいい……。殺してください」
「それはダメだ」と赤岩が断言しました。「おれの縄では誰も死なせない」
妙にきまじめな声でした。
イベント
貞淑な妻、という言葉はもはや死語でしょう。
少なくともわたしと哲次の間では。
貞操こそ守りつつも、恥ずかしい裸体を大勢の人の前でさらし、身もだえていた妻を彼はどういう気持ちで抱くのでしょうか。
「この傷はひどいね。誰にされたの?」
「わかりません。木の枝で叩かれたんですから」
夫は傷モノのわたしを抱き、肌を合わせるとき、傷口を意識しつつあえて無遠慮に触ってきます。
「うっ」
その痛みにわたしは耐えます。
痛いとは言いません。夫がえぐるように傷に触れても、なにごともないかのようにふるまうのです。がまんするのです。この痛みは、わたしを悪い妻にする快楽そのものです。縄で縛られることを自ら望んだ女。夫よりも縄を選んだ女です。
貞操具を膣と肛門から取り出すのも、夫の楽しみになっています。どろどろになっているので、本当に恥ずかしい姿ですが、隠さずに見ていただきます。
「こんなになってるなんて。恥知らずな女だな」
「すみません」
彼は汚れた器具をしげしげと眺めます。あとできれいにして消毒し、撮影のときにはまた装着しなければなりません。
「ぱっくりと開いているぞ」
「あっ、はい」
「前戯もいらないな」
そしてインサート。乱暴に入れてきて。生殖行為そのものです。
溜まっていたであろう最初のほとばしりを、体の奥でたっぷり受けます。
「こんなことじゃ、感じないんだろ?」
「そんなことありません」
半日、酷い目に遭わされて、なんども絶頂を味わっていますが、夫とのセックスはまったく別のものです。それは夫婦として、愛し合ったもの同士の悦びなのです。これを捨てることなど、わたしにはできません。
「あなた……」
わたしは彼に抱きつくばかりです。全身が痛いし、肌も傷だらけですが、だからこそ思い切り彼を求めるのです。痛みの中でしか、あの快楽は得られないから。
一度の射精では終わりたくないのです。
わたしは彼の股間に顔を埋めます。いろいろな人に蹂躙された光景が忘れられません。彼のものはいっそう愛おしく、丁寧に舐めていきます。
彼のものが少しまた硬くなってきました。
「やめろよ」
彼はわたしを払いのけました。
なぜ。
「おまえにそんなことをしてほしくないんだよ。娼婦じゃないんだから」
きつい言い方です。昼間のことを彼はすべて知っているわけではないと思いますが、金男から聞いている可能性はあります。
「すみません」
「いいんだよ。おれが許可したんだから。おまえも楽しかったんだろう?」
楽しいという言葉はそぐわないと思います。あれは過酷な体験です。
「おれも、おまえを縛ってあげようか。縛り方を習おうかな」
「えっ」
「ふふふ。そうなったら、おまえ、地獄だぞ。外では仕事で縛られ、家に帰ったら夫にも……」
わたしはどうしていいのかわかりません。本気なのか冗談なのか。
「まあいいや。疲れたから寝るよ」
「はい」
わたしは放り出され、彼はそのまま寝入ってしまいました。
ひとり、バスルームへ行き、体を洗い、傷を消毒しました。
自分の体を鏡で見るのが怖かったのですが、いまではそれも後ろ暗い悦びになっています。
こんなに傷ができて。まだ縄の跡が残っていて。痣ができて。腫れたところがあって。
奴隷。
ほんとに、わたしにピッタリな言葉でしょう。
これがわたしの求めたものなのかもしれません。
スケジュールはかなり前からわかっています。先日のような撮影会は、場所を変えて毎週一つは入っています。野外はさすがに当分、ないようですが、個人宅の庭、廃屋、工場跡地などが多く、セックス以外の凌辱が思いきりやれる場所として選ばれているようでした。
深川先生の古民家風アトリエはその中では安心感のある場所でしょう。死にそうになる江戸時代の拷問を受けるとしても。
石抱き、駿河問い……。体がバラバラになりそうで、何日も痛みが残ります。その痛みが癒えるのを待ってくれたりはしません。
赤岩によって緊縛ショーも設定されていました。
「凌辱や拷問はないから」と言われましたが、安心はできません。
その会場は繁華街の中にあって、地下に舞台がありました。
赤岩がすべて仕切っているようで、司会も彼がやります。
「今夜は、なわみさんの緊縛をたっぷりご覧いただきましょう」
わたしは、上半身裸で縄を女囚のようにかけられた状態で舞台に引き出されました。
赤いふんどし姿です。すごく恥ずかしいのです。全裸より恥ずかしいと思うほどです。
そして舞台に立って、「なわみです。よろしくお願いいたします」と挨拶したところ、最前列に、シェリーや昔のモデル仲間が十人ぐらい座っているのに気づきました。
以前の事務所の人たちや、お世話になったカメラマンの顔も見えます。
その瞬間、頭が真っ白になって膝がガクガク震えました。
みんなの目の前で
知っている人ばかりいるところで、ムリです……。
愕然としているわたしを舞台近くで立っている金男が笑って見ています。彼の仕業なのでしょう。
「おまえのすべてを見せてやろうじゃないか」
赤岩はそう言いながら、縄をわたしにかけていきます。
目がシェリーたちについ向いてしまうのです。薄ら笑い。蔑み。お酒を飲み、スナックを食べながら、堕ちた菜緒美をあざ笑って楽しむのでしょう。
以前は姉貴と慕ってくれたシェリーにバカにされるのが、一番、きついです。
足首に縄がかけられ、右足だけを舞台の端にある支柱にくくりつけました。舞台にお尻をつけます。
左足は反対側の支柱に縄を回して、赤岩が徐々に引っ張っていくのです。
「はぁぁぁぁ」
息を吐くように、切ない悲鳴が口から漏れます。なわみとなってから、何度もされてきた恥辱。それなのに縄には逆らえない自分。
体が開かれていくとき、恥ずかしがる菜緒美と、そこに快楽を求めるなわみが、分離されていくようです。
彼は膝を背中にあてて、わたしの上体を支えています。赤褌の股間が広がっていきます。
「なわみでございます」と赤岩が客席に向かって宣言しました。
菜緒美は消えて、いまはもう、なわみだけ。
正面を向いて百八十度の開脚になります。ストロボが焚かれます。自由に撮影していいのです。
カーッと体が熱くなります。
みんなに見られるということは、モデルの真似事をしていたときも、それほど気にならないときもあれば、すごくナーバスになってしまうこともあったのですが、いまは、このまま消えてしまいたいほど落ち込んでいます。
夫の言葉が頭の中でぐるぐると回っています。「縛り方を習おうかな」。そうじゃないんだということを夫にわかってもらいたいのですが、とてもうまく言えそうにありません。「あなた、わたしを縛って」とお願いするような話とは違うのです。わたしが魅せられた縄は、この縄のように、非情すぎるほど非情なのです。
わたしに対する愛情など、いらないのです。ただギリギリと締め付けるようにきつく縛る。そして、ひと目に晒す。それが写真やネットを通じてでも、撮影会でも、そしてショーでもかまわないのです。
夫に縛られるのは、好きでもキライでもなく、わたしからすればどちらでもいいようなことです。夫とは別の絆があると信じているから。
いまさら都合のいい考えでしょうけども。
赤岩がなにかをしゃべりながら、わたしのポーズを変えていきます。後ろ手の縄を解き、手首と足首を縛ります。うつ伏せに床につくようなかっこうになりました。
長い頑丈なパイプをその手首と足首に通しました。
支柱の縄を外し、金男とパイプを持ち上げるのです。
金男がパイプを肩に担ぎ、赤岩も持ち上げます。
そして舞台から客席に降りていきます。さすがに縄に痺れていた頭が働きました。
「ああ、そんな……」
それだけでもとても体にきついのです。床だから百八十度の開脚ができたのです。手足が伸びきって、腰と背中にも大きな負担がかかっています。
「前列からご挨拶」
ライブハウスですから、テーブルがあり、イスがあり、みなさんは飲み食いしながらショーを見ています。その最前列を練り歩いていきます。
「菜緒美さんって、ホント、淫乱なのね」
モデル仲間の声が聞こえてきます。
「いやあ、なかなか大したものだな。うちの事務所と再契約しないかな」と笑いながら以前、世話になっていた事務所の人。
「やめてよー、わたし、変態と一緒に仕事するのムリですからー」
シェリーの声です。
ぐさりと心に刺さります。だけど彼女が悪いのではありません。わたしが悪いのです。久しぶりの再会のきっかけは、流出した緊縛写真でした。もう、あの段階でわたしたちの間には友情もなにもなくなったのです。
「見てよ、これじゃ、ただの肉の塊よね。グラムおいくら?」
そんな声も聞こえます。
「美しいというとは、ちょっと違うかなあ」
カメラマンの声。
「淫らな美しさってあると思うだけど、これはなあ。正直、がっかりだぞ」
「あら、でも、素材は悪くないと思わない?」
「どうだろうねえ。巨乳ってわけでもないし。生々しいだけだよね」
「そこがいいのかも、変態趣味の人には」
モデルの誰かとそんなことを話しているのです。
その前を通過して、客席をぐるっとひと回りし、最後に真ん中を通って舞台に戻りました。
それだけで、苦しいこともあって、汗びっしょりになっていました。
パイプを天井から下がる鎖に取り付けて、わたしは宙吊りにされました。
足をパイプに縄で縛り付けていきます。少し緩い開脚になっていたのに、再びパイプにぴったりくっつくほど足を開いて縛られました。
手首は解かれて、そのまま逆さまに。
指先が舞台につくぐらいの高さです。
このまま落ちたら大変ですが、赤岩は腕を体の横にぴったりつくように縛っていきます。両手の自由が再びなくなり、落下の恐怖が高まります。
ぐんと一段高く持ち上げられました。
「こわい」
つい声に出てしまいます。
さらに高くなりました。顔が赤岩の顔と並びます。赤岩は、笑いながら、わたしの唇を奪いました。
「きれいだよ」
ほめてくれるのは赤岩や金男や、シェリーたちが言うところの変態な人たちばかり。
縄奴隷なのです。もうすっかり、みんなとは違う次元にはまりこんでしまっています。
赤岩は別の縄で乳房の根元をきつく縛りました。左右別々の縄です。これはとてもキツイのです。
「どうかな」
その縄を指で引っ張りました。
「ぐうぅぅぅ、赤岩さん、今日の、きつい……」
「ふふふ。きついってことは、それだけ楽しんでるわけだな」
さらに高く吊り上げられ、天井のすぐ近くまでいきました。みんなを見下ろしているのです。
そして、乳房の縄を引っ張ります。
「あっ、だめ」
上体が斜めになって、それから縄が緩むと反動で反り返ります。ブランコのように揺らされているのです。
その縄が客席のシェリーたちに渡りました。
「キャハハ、なにこれ」
彼女たちが乱暴に引っ張るので、ちぎれそうです。
「あっ、いたいっ」
「痛いだってさ。バカじゃないの」
今度は縄を激しく波うたせています。
「あああっ、だめ、やめて。ちぎれる」
「いいじゃない、ちぎれちゃえば」
彼女たちはわたしに恨みがあるかのように、乳房をいたぶります。
落ちた世界
逆さ吊りで、乳房をくくった縄を客席にいる友人たちに引っ張られ、ブランコのように揺らされるなんて。
その部分の痛みに耐えるだけでも大変なのに。心も痛くなります。
自分の欲望を密かに叶えたいと思っただけで、魔が差したというか、ある意味の勇気をもって吹雪さんの写真展に行ったところから、転げ落ちてしまいました。それ以前にあった日常はもう手の届かないほど高いところにあります。もうすぐ見えなくなってしまうでしょう。
「哲次さん、ごめんなさい」と心の中で謝っていました。
頭がボーッとなってきました。


