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縄味 2 · 第1部

縄味 2 第1部 (1/4)
次の話

本作品はすべてフィクションであり、実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません。また、特定の個人、団体、宗教、人種、性別などを誹謗中傷する意図はありません。

あんぷらぐど

SM雑誌に「仲ゆうじ」名でSM小説を執筆して作家活動をスタート。その後、作家活動は休止し、編集の仕事に携わる。ネットでは「ふにゃふにゃ」「あんぷらぐど」名でSM小説を執筆。独自の自虐的SM、一人称による告白形式の作品、伝奇SM小説などを発表し続けている。東京在住。

これまで

主な登場人物

キス

トリプル

乳房責め

夫の許可

貞操

仕事

野外撮影会

ポルチオ

奉仕活動

覚醒

イベント

みんなの目の前で

落ちた世界

電流の快楽

熱湯責め

夫婦

シェリー

妻失格

受精

終わりのはじまり

檻の中

引っ越し

練習

立場

終幕

奥付

これまで

菜緒美は結婚していたが、縄に魅せられ「なわ」というハンドルネームでネットで発言をしていた。その密かな楽しみから、ふと銀座で開かれていた緊縛写真の展覧会に立ち寄る。そこでカメラマンの吹雪に声をかけられる。

学生時代に読者モデルとして、その後はカタログのモデルや展示会の仕事をしていたこともあった。夫ともある展示会で知り合ったのだ。

自分が縛られている姿を思い描き、スタジオを見学。縄師の深川先生、その弟子で日本画家の赤岩に出会う。顔を出さない、着衣での緊縛という条件で、テスト的な撮影を承諾。そのとき菜緒美は衝撃的なエクスタシーを感じてしまう。吹雪は思わずその表情を撮影。発表はしないと約束するが、その写真がネットに流出してしまう。

モデルの絵夢奴が流したという。

読者モデル時代からの友人のモデル・シェリーたちから「見損なった」となじられる。さらに義理の兄である有森金男からも脅され、野外調教の果てに、縄奴隷「なわみ」として、デビューをさせられることに……。

主な登場人物

私 有森

菜

緒

美

二十七歳 大学時代から読者モデルの経験あり。大手メーカーに勤める夫とは展示会の仕事で知り合う。都内近郊のマンションに住む。

有森哲次 三十一歳 菜緒美の夫。大手メーカー勤務。

有森金男 三十三歳 哲次の兄。バイク事故によって下半身に傷が残っている。

吹雪清玄 五十歳 カメラマン。緊縛写真で知られている。商業写真の仕事もしている。

深川明 六十二歳 縄師。

赤岩陽介 三十五歳 深川の弟子を自認するが、本業は日本画家。

喜美江 三十八歳 ホステス。元女優。緊縛モデル。

絵

夢

奴

二十二歳 緊縛モデル。

シェリー(反町美代) 二十五歳。ファッションモデル。菜緒美を姉貴と慕う読者モデル時代からの友人。

キス

「えー、やだー」

絵夢奴は、キスをしろと言われて、笑います。

しかし、吹雪さんの勢いに押されたのでしょう。

わたしの唇に重ねてきました……。

「あぐぅぅぅ」

舌で口を舐められました。

「なわみっておいしいわ」

やっと下ろされて、すべての縄が体から離れたあと、放心状態でスポーツドリンクを飲んでいると、「おはようございます」と女の声がしました。

喜美江さんでした。着替えていた絵夢奴が駆け寄り友人のように話しています。

彼女の撮影を見学したのはずいぶんと昔に思えます。

「二人とも、ちょっと来てくれないかな」

吹雪さんたちは二人を控え室に連れて行きました。

わたし抜きで打ち合わせをするのです。

その間、わたしは

義兄

の金男と一緒に待っていました。

「いい写真が撮れているよ」

金男が唐突に言いました。

「見たことのない表情だったね」

それはそうです。俳優でもない限り、あらゆる表情を人に見せることはないのです。まして、こんな醜い顔……。作品は見ていませんが、きっとそうに決まっています。つらく、苦しいばかりなのですから。

「なわみは、きつくすればするほど、いい顔になるね」

返事なんてできない。したくありません。

「おっと、傷口が開いてるね」

有刺鉄線で裂けたお尻、腰のあたりに、新たな血が滲んでいました。

彼がティッシュで拭こうとするので、わたしは思わずそれを奪い取り、自分で拭きました。ピリッと痛みが走りました。

わたし、なにをしてるんだろう。どうなっちゃうんだろう。

なにをされるんだろう。

ここに今日、やってきたときの恐怖とは違うのです。不安というのでもありません。なにかされることは決まっていて、絵夢奴に加えて喜美江さんまで来たのですから、もっと激しいことになるのです。

がやがやと笑いながら戻って来た吹雪さんたち。

喜美江さんはきっちりと地味な着物姿。絵夢奴は全裸です。

「じゃ、さっそく始めましょう」

吹雪さんが言い、みんなが動きはじめます。深川先生と赤岩が縄を持ってやってきて、その束を畳にどさっと置きました。これまで見たことがないほどの量です。

「じゃあ、なわみから縛ろう」

文句は言えません。二人に身を委ねるしかないのです。物のように。

「体からいきます」

かろうじて赤岩が教えてくれますが、それも金男に言っているのです。

「おもしろいですね」

義兄

は興奮しているようです。

首に何重にも縄が巻かれ、髪もまとめられてしまいます。腕を体の横に沿って伸ばします。右の腕、胴、左の腕と縄が巻きついていきます。乳房の上下も。

ぐいっ、ぐいっと強く締め付けられていき、肌に深く食い込みます。

さらに背中に別の縄が編み込まれます。首から胴、腕までギシッときつく絞り上げられていくのです。呼吸も苦しいほどです。

太腿の付け根と手首をくっつけて縛られます。足も左右を梱包するようにびっちりと。

畳に仰向けにされ、身動きできません。ぐるぐる巻きですが、左右対称に編まれた縄は美しく、我が物顔に体を支配しています。

「さて、仕上げだ」

赤岩は細い十センチぐらいの縄の先端にチューブから透明な液体をつけました。

「目をつぶって」

閉じたまぶたに、その縄の先端が押しつけられました。数秒のことです。

縄が引かれると、まぶたが強制的に開いてしまいます。

「瞬間接着剤だ。安心していいよ、溶剤ですぐ取れるからね」

まぶたを引き上げる細縄を額におき、ヘアバンドのように別の縄を頭に巻き付けます。まぶたを閉じることができません。

「口をあけろ」

今度は同じように細い縄ですが、一メートルぐらいあります。

「ゆっくり呼吸するんだ」

縄の先端が左の鼻孔に入れられました。

「ぐはっ」

涙が出ます。

ぐいぐいと奥へ押し込んできます。

「くしゃみや咳をしてもいいぞ」

「あひぃぃぃ」

ガハガハと苦しみながら、縄が喉に達するのがわかります。

「こっちもだ」

右の鼻孔からも縄の先端が入れられます。

苦しさと恥ずかしさ。こんなことをされるモデルはおそらくいないでしょう。

「いいぞ」

ペンライトで口の中をのぞく赤岩が、大きなピンセットを口の中に入れてきました。

「ぐぅひぃ!」

それで鼻から喉に出て来た縄の先をつまみ、口から引きずり出したのです。敏感な粘膜を擦りあげていく縄のおぞましい感触。

「ふゅぇぇぇ」

目を閉じることもできず、自分の体に暴虐を加える赤岩を、涙越しに見続けることになります。

とてもうれしそうに作業をしています。背後の金男も興味深げです。

深川先生は足元の縄をさらに丁寧に縛っています。

口から二つの縄尻が引き出されました。赤岩はそれを固く結びました。

「わかるな、どうなるか」

縄を鼻孔側から引っ張ると、喉の奥に結び目があたりました。

「木で鼻をくくる、なんて表現があるけど、本当に鼻をくくってやったわけだ」

ぐいっと引っ張られると、とっても苦しいのです。

「あぁぁぁぁ」

今度は開いたままの口に縄がかけられます。猿ぐつわのように何重もの縄を噛まされるのです。

「今回のテーマは、新

巻

だよ。新巻鮭みたいにね。新巻というのは

葦

や

藁

で魚を巻いたもののことなんだけどね」

鼻の縄を動かされるとゲホゲホとむせます。鼻汁や涎が飛びますが、赤岩たちはおもしろがっているのです。

そこに絵夢奴が裸でやってきました。

鼻縄を赤岩から受け取ると、またがってきました。

「かわいいお馬ちゃん。鼻はつらいでしょ?」

笑う声が頭の上で響きます。

「奥さん。愛人にいたぶられる気持ちはどう?」

そんなシチュエーションなのでしょう。絵夢奴の演技は下手くそですが、スチル写真なので彼女がいい表情をすればいいのです。

「ふふふ、いい体」

抱きつかれ、体をすりつけてきます。

縄だらけの体ですが、その縄と縄の間から飛び出した部分を、彼女は全身で味わうように、すりつけてくるのです。

「いいわあ、気持ちいい。この上で寝たいわあ」

思いきり体重をかけてきました。息ができません。

「欲しいなあ、これ」

家畜、いえ家具のように扱われています。

トリプル

「ご主人はあなたよりわたしが好きだって。あなた、捨てられたらどうする? あたしが拾ってあげようか」

架空のご主人様の前でレズSMを繰り広げる設定のようです。

絵夢奴はそれらしいセリフを口にして気持ちを高めます。彼女は愛人。わたしは妻の役です。愛人に責められる妻。それはいまのリアルな境遇と重なってゾクゾクしてきます。

わたしは、憎たらしい絵夢奴に舐められ、触られ、いじられるだけの存在。

「子供ができないっていうけど、すること、してないんじゃない? あたしがいっぱいもらっちゃっているからかな」

彼女の体重、肌触り、においを感じながら、その下手な演技がかえって心に突き刺さってきます。

もしここにわたしの主人がいたら……。彼はなんと言うでしょう。

「あなたのような変態よりも、あたしのことが好きなんだって。どうするの、変態妻さん」

見たくなくても彼女を見なくてはなりません。

シャッターの音がしていますが、撮影を意識できません。彼女への嫌悪は増すばかりです。この設定は吹雪さんたちの考えでしょう。でもそれを支えているのは彼女の悪意です。

鼻縄をぐいっと引かれました。粘膜を削るようにきつく食い込んでくるので、ゲホゲホとむせてしまいます。

「おもしろいわ、これ。家畜以下ね」

彼女がわたしの顔をはさむように立っています。

「こうやっても感じるんでしょ。こんなことをあたしみたいな女からされると、悔しくて、みじめで、いっぱい感じてしまうのよね。哀れな生き物だわあ」

鼻が上を向くように縄を引き上げます。抵抗できません。全身をきっちり縛られて、ミイラのようにされているからです。

「喜んでよね。あなたが嫌がることをいっぱいしてあげるから」

絵夢奴はゆっくりとしゃがんできました。

彼女のお尻が大きくなっていきます。視界がほぼすべてお尻になります。

「いい? 愛人のおケツを味わってみない? 屈辱的でしょ」

ぐっと、彼女のお尻が顔の上に乗りました。鼻は性器の下部。口はお尻の穴にくっついています。逃げられません。

そして彼女がお尻を擦りつけてきたのです。

「がああう」

抗議したいのですが、口の中も縄だらけで言葉が出ません。

「ほら、もっと味わいなさいよ」

息ができません。顔をこすり上げられ、唇や鼻で彼女を味わうのです。

「何をしているの」

喜美江が畳の上にやってきました。

「あなたの息子さんの大事な人を虐めてますのよ。こんな変態女、追い出してやりましょうよ」

「確かにきれいな顔と体つきだけど、息子のためにならない女だわ。追い出すよりも責め潰す方がよくないかしら?」

喜美江は紙を見ながらセリフを言っています。

動画でもないのに。いえ、もしかしたらビデオを録られているのでしょうか。

「わたしにもやらせて」

着物の裾をまくりあげた喜美江は、絵夢奴にかわってわたしの顔にしゃがみ込みます。

「かっふぅ」

あらがいたくてもできません。

雑巾のように顔を使われています。なされるがままに。

目を閉じることも許されず、見ないわけにはいきません。

「あー、気持ちいいわ。一度やってみたかったのよ」

姑役の喜美江は遠慮がありません。その崩れた体をぐいぐいと押しつけるのです。

「こうしてみようかな」

絵夢奴は上下を縄ではさまれて、ピンと立ち上がっている乳房をつかんできました。しばらく揉んでから、長いツメの先で、引っ掻くような愛撫をしてきました。

「あがががが」

敏感すぎる場所です。

「もっと気持ちいいことしなさいよ」

喜美江は絵夢奴に命じています。

「たとえば?」

喜美江は立ち上がり、助手からディルドを受け取ります。ピンク色をして、ゴツゴツとした太いオモチャです。

「これをこうセットして」

彼女は開いたままの口にそれを押し込みました。その上からまた縄をかけていきます。

口から男根を生やしているような姿になります。

「すてき」

絵夢奴が腰をおろしてきます。自分でオモチャを体の中へ入れていきます。

目の前で濡れた女性器に入っていくところを見せられます。絵夢奴のそこは黒ずんで、崩れていますが、それが淫らな生活のせいなのか、生まれつきなのかわかりません。

こういうことを、なんのためらいもなくできることに、呆れてしまいます。

「はあああん」

わざとらしい鼻にかかった甘えた声を出して、深くディルドを入れていき、ぐいっと腰を落として、今度は引き上げていきます。

汁が飛び散りました。

「気持ちいいわ」

絵夢奴はしだいにスピードを増して上下に動きます。彼女からしたたり落ちる愛液は、口の中に流れてくるのです。

なにが悲しくて、憎たらしい彼女の愛液を口にしなければならないのでしょう。

絵夢奴は指先でクリトリス周辺をはげしく擦りながら、感じを出しています。

「かわって」

喜美江も着物のままですが、お尻を剥き出しになるまで裾をからげて、ディルドに腰を落とします。

年齢がいっているはずですが、喜美江はきれいな肌をしていて、そこも薄いピンク色を保っていました。リップ部分だけが色素がかなり濃いですが、同性から見ても若くて色っぽい股間の持ち主です。

入れたまま反対の向きになっていきます。彼女のお尻が鼻に触れます。

「ふふふ」

笑いながら、わたしの乳房を強く叩きます。

「がふっ」

「なにか文句でもあるの? 言ってごらんなさい」

「うぐううう」

口が塞がれているので、なにも言えません。

「こら、どうなのよ! 泥棒ネコ」

喜美江は乳首をつまんでひねり上げました。

「があああ」

足を震わせて痛みに耐えます。そのたびに縄が食い込みます。

「しぶとい女だわね」

二人は吹雪さんから指示されたのか、いったん、降りました。

赤岩と深川先生とで、わたしの口からディルドを外すと、体をそのまま持ち上げて、立たせるのです。

手足をそろえて、ギチギチに縛られているので、足の裏だけではうまく立てません。

赤岩が、鼻から出ている縄を掴みます。金男が差し出す長い棒にその縄を結びました。

「引っ張って!」

金男が棒を釣り竿のように持ち上げます。深川先生も手伝っています。

「ががっ」

鼻と足でバランスを取るのです。涙がポロポロと流れ落ちます。

乳房責め

鼻を吊り上げられた姿で、絵夢奴と喜美江が、わたしをはさむように立って、体を撫で回すのです。

喜美江は和服なのでそれが肌を擦ります。絵夢奴は素肌で触れてきます。

二人で貞操帯を持ち、ぐいっと引き上げるのです。

「がううう」

宙に浮いてしまいます。

口の中の縄を噛みしめます。縄の味。なわみ。わたしはこれを求めていたのでしょうか。

ちがう、とは言えないことに気づきました。

顔を出さない約束で撮ってもらった写真。その中に唯一、顔が写っていたカットを絵夢奴が意図的に流出させ、昔のモデル仲間にも知られ、夫の兄にも知られてしまったのです。女子大生で読者モデルだった菜緒美が、いまは緊縛に夢中になっている……。

そう思われてもしょうがないのです。

義兄

はわたしを脅し、野外で下手クソな緊縛写真を撮って、わたしがそういうことを好んでやっていると、吹雪さんたちに思い込ませることに成功しました。

いまさらわたしが否定したところで、どうにもならないのです。

そして、深川先生、赤岩に厳しい緊縛を経験させられて、いま、このスタジオに立っているのです。

顔を隠すどころか、貞操帯をしているものの、体をすべてさらけ出しています。誰がどう見ても、それはかつての菜緒美です。流出した作品よりも、どぎつく、変態的な絵柄になっているでしょう。しかも、今回は流出ではありません。

今夜、出張から帰宅する夫が、もしも金男に言われるがままに了承してしまったら、堂々と世の中に出てしまうのです。

鼻で吊られたまま、縄を解かれていきます。実際には赤岩が中心となって解いているのですが、ときどき、絵夢奴たちにやらせて撮影します。

目と口と鼻以外は縄をすっかり解かれています。

「四つん這いになって」

畳の上で手と膝をつきます。絵夢奴に鼻の縄を引っ張られて引き回されました。うしろからバラ鞭を手にして喜美江がお尻を叩きます。ポーズだけでもいいのに、迫力を求める吹雪さんに怒鳴られて、実際にバラ鞭でお尻を打ちのめされました。

鼻の粘膜が激しく刺激されて、惨めでもあり、涙がとまりません。酷い顔になっているはずです。ようやく吹雪さんはわたしを撮ってくれます。カメラがすぐ近くにあります。

「泣け! もっと泣け!」

目を閉じることもできず、見開いたままで、頭と口を縄で縛られていますが、見る人が見れば、わたしであることは明白でしょう。目を閉じることができないことを、理解してくれるでしょうか。

絵夢奴や喜美江はカッコよくきれいな姿を撮影しているのに、わたしは醜く悲しい顔ばかり撮られます。

正座をさせられ、鼻縄を頭部に引き上げて、背中で組んで縛られた腕に縛り付けます。豚鼻になっています。ちぎれそうです。

口の縄を解かれました。さらに顔がはっきり写るでしょう。

「はーはーはー」

荒い息。それは熱でもあるかのよう。病気であえいでいるときを思い出させます。

「興奮してるのか」

左右の乳房に別々に縄をかけられます。

「もっと苦しませてやろう」

右に絵夢奴、左に喜美江。絵夢奴は全裸なので正面を向き、喜美江は着物なので背中を見せ、二人ともわたしの腿に片足をかけて、乳房の縄をピーンと左右に引っ張ります。

「ひぃぃぃ」

か細い悲鳴しか出ません。

絞り上げられて、ちぎれそうになっていく乳房。

二人の手加減のない引っ張りに脅えます。

吹雪さんは夢中でシャッターを切っています。

「よーし、きょうはこのぐらいで切り上げようか」

ようやく撮影が終わりました。

「口の中の結び目を出して」と赤岩に言われます。喉の奥にある結び目を吐き出そうとしますが、なかなかうまくいかず、自分で指を入れて引き出します。そうすると縄が鼻の中を擦れて、また涙がいっぱい流れます。

「ふぇぇえん」と泣いています。

「ふふふ。なわみはいい顔してるよ」

べとべとの縄を彼は解き、ゆっくりと鼻から縄を引き抜いていきました。結び目だったためにクセがついた縄尻が通過すると、はげしくくしゃみと咳が出ました。鼻汁まで飛ばしてしまいます。

「すみません、ごめんなさい」

赤岩に謝ります。

「いいんですよ。こうなることはわかっててやったんだから」

彼は笑っています。

「しかし、このシリーズをずっと撮らせてくれたらおもしろいなあ。ねえ、吹雪さん」

「うん。正妻を責める愛人と姑。それを旦那も公認しているわけだからね。地獄絵図になるよ」

自分の置かれた立場に近接しているように思えて、わたしはゾッとしています。

「ぜひ、お願いします」と金男が明るく言います。「ちゃんと許可を得て、正式にデビューさせますから」

「楽しみにしていますよ」

吹雪さんに言われました。

上機嫌の金男は帰りはタクシーを利用させてくれました。彼が上機嫌な理由はすぐにわかりました。タクシーの中で、「赤岩さんから借りたんだ」とタブレットを見せてくれました。そこには、深川先生、赤岩、そして今日の吹雪さんに撮影されたわたしの写真が何十枚も入っているのです。

指先でその写真をつぎつぎと見せるのです。

「おまえの夢がかなうね、いよいよ」

夫が帰ってくるのです。金男は夫にそれを見せるつもりなのです。

「うれしいんだろう? うれしいよね」

酷い顔をした自分。

それを見せつけられながら、股間に

義兄

の指を感じています。

縄の跡が残る肌。火照り、鎮まることなく放り出された体。

終わりのない地獄の快楽。

このままタクシーがどこにも到着しなければいいと思いました。そのほうが、まだしも救われるような気がしたのです。

夫の許可

夜。

わたしは久しぶりに服を着ることを許されて、夫を待ちました。

思ったよりも遅く帰宅してきましたが、とても機嫌はよく、兄の金男が来ていることを素直に喜んでいました。話は金男がすることになっていました。

三人の食事。わたしは気が気でありませんが、ハードな日々が続き、体も心もクタクタで、この場から早く逃れたくて仕方がありません。恵比寿の撮影から帰る途中、近所のお店に寄って、哲次さんのために惣菜を仕入れました。

残念ながらわたしの料理の腕はあまり上達していません。がんばっていますが、夫も「ムリしなくていいよ」と言ってくれるので、甘えてしまっています。

ビールを飲み、金男と楽しく出張での出来事を話す夫。そんなことまで、と思うほど会社の事情や仕事のことまで話しています。金男はそれをすべて理解しているようです。

「遅くなっちゃったけど、泊まっていく?」

「それよりも大切な話があるんだよ」

無邪気な笑顔の夫に金男がとうとう切り出しました。

「なに? なんの話?」

金男が「菜緒美さんから話があるんだよ」と切り出しました。

すべて彼が話すといったのに。

「モデルの仕事をまたやりたいんだそうだ。そうだよね?」

「はい」

「うーん、そうなの? 本当にやりたいの?」と夫は難色を示します。わたしは中途半端だったモデル業に未練がないと思っていたからでしょう。

「なにか別の新しいことをはじめるんだと思っていたけど……」

「ごめんなさい。わたし、モデルを本気でやりたいんです」

「本気なら止めないけど……」

「ただ、問題があるんだよ」と金男。タブレットを食卓に置きました。

「実はおまえが出張している間に、菜緒美さんに頼まれて、こういうテスト的な撮影のためのアレンジを手伝ったんだ」

「え? 兄さんが?」

「おまえが出張中だったから、菜緒美さんはおまえを心配させたくなかったんだ。だからおれに相談してきた。手伝ってちゃんと面倒を見たほうがいいと思ったんだよ。忙しいおまえの代わりにね。これは一流のプロによる撮影だけど、テスト版で、おまえがNOと言えば中止になる。なかったことになる」

本当になかったことになるのなら、どんなにいいことでしょう。

あの写真を流出させた絵夢奴のことです。わたしが拒絶して、吹雪さんが受け入れたとしても、なにをやらかすかわかりません。

今度の一連の撮影は、流出した写真の比ではない衝撃を見る者に与えるでしょう。とくに以前のわたしを知っている人には……。

「ちょっと特殊な写真のモデルだから、おまえがショックを受けたらいけないかな、と思ったものでね」

「えー、兄さん、脅かさないでよ」

まだ笑っていて、わたしをチラッと見てもそれほどの疑いは抱いていないようです。

「こういう写真だよ」

緊縛の写真です。自分でも直視できないほど、わたしの欲望が溢れ出ています。心底からそういうことを求めている女に見えるのです。アブノーマルな世界の虜になっている女。

「うおー」

夫の表情をじっと見ていました。笑みは、これまで見たことのないような、深くて濃いものになっているようです。最初はひきつっているのか、怒りをこらえているのかと思えたのですが、そうではありませんでした。

「菜緒美……。おまえって、こういうことがしたかったの?」

まるで暗闇の中、懐中電灯を下から当てて浮かび上がらせたように、くっきりとした影のある笑みです。

ドキッとしました。

夫の中に、そんな表情が潜んでいたなんて。

それは公園でわたしを縛ったときの金男の表情とそっくりでした。

「びっくりしただろう?」と金男が、指のとまっている夫にかわり、写真をつぎつぎと見せていくのです。

「うん。びっくりした。これはまさかAVじゃないよね?」

「違う。そこはおれがすべて立ち会っているから大丈夫だ。それに、これを見てくれ。なわみ、立てよ」

家庭にいるのに、その名で呼ばれるなんて、ショックです。

「お

義兄

様、それは……」

「見せればすぐわかるじゃないか」

「でも……」

「まくりあげて見せろよ。これだけの写真を自分の亭主に見せているんだぞ。いまさら、なんだよ」

打ちのめされていました。

話をすれば解決するだろうと思ったのです。どっちに転ぼうと、金男が思うようにはいかないだろう。哲次さんは、そういう人ではないから。

ですが、改めて突きつけられたのは、わたしに対する愛情以上に、兄弟には深い絆があったことでした。バイク事故に始まり、多感な思春期を二人で乗り越えてきた結果なのだと思います。

最初から知っていれば、おそらくわたしは結婚しなかったでしょう。できなかったと思います。

兄弟の間には、誰にも入ることのできない世界があったのです。

「早くしろよ」

夫に言われてしまうと、どうにもなりません。

ワンピースの裾を持ち上げました。夫はビールをぐいっと飲みました。

「なんだ、それは。貞操帯か?」

「はい」

「うーん」

夫はもはや限界で、兄を追い出し、わたしだけと話をしようとしてくれるのではないか。そうすれば、苦しいことですが、希望の見える解決ができるのではないでしょうか。

でも、夫は金男を追い出したりはしません。

「邪魔だよね、これさ」と哲次が言いました。

「しかし、いくらモデルでも、こういう世界だから、なにが起こるかわからないだろう?」

「まあ、そうだね。だけど、似合わないな。きれいじゃないよ」

金男が夫の態度を確認して、ニヤリをわたしを見たのです。ほらみろ、哲次はおれの弟なんだ、昨日今日の女なんかに振り回されたりはしないんだ、と言っているようです。

「どうなってるの?」

「この鍵で外せるんだよ」

金男が鍵を外しました。

二人の前で下半身を見せるのはとてつもなく恥ずかしいのです。

「だ、だめ」

手で隠そうとすると、「なわみ、だめだよ」と夫に言われました。菜緒美と呼んでくれたのかもしれませんが、わたしにはもうその区別がつかなくなっています。

「そうだよ。隠したりするなら、縛っちゃうよ」

金男が笑うと夫も笑っています。

貞操帯が外されました。正直、ホッとしました。擦れている部分があって、つらかったのです。

「カメラマンはむだ毛の処理をしないでくれと言ってるんだよ。髪も伸ばし続けてほしいそうだ」

「へえ。そのほうがいいのかな?」

「みたいだね。もっとも、いまは吹雪ってカメラマンとしか話をしていないけど、この写真が出れば、ほかからのオファーもあるだろうしね」

「それが菜緒美のやりたいことなら、止めることはできないな」

半笑いの夫。疲れているのでしょうし、お酒のせいでもあるでしょうし、ショックでもあるはず。

あまりにも軽い言い方に驚いてしまいました。

「哲次さん……」

「隠すな!」

金男に手をはたかれました。

二人に陰部を見せて立たされているのは、みじめで恥ずかしく、震えてしまいます。

「菜緒美。ぼくは好きなことをする君が好きなんだ。だからどういう世界で活躍しようと、止めることはしない。だけど、約束してほしいことがあるんだよね」

「なんでしょう」

「一つは私生活はきっちり分けてほしい。モデルだからといって、ぼくと君との生活を壊すのはダメだよ」

「はい」

それは仕事の量を増やさない口実になりますから、わたしにとってはむしろうれしいことです。金男が鬼のように仕事を取ってくるのではないかと、恐れているからです。

「そして、もう一つはそのぼくたちの生活にとって大事なことなんだけど、ぼくの子どもを産んでほしい」

「はい」

涙が出そうになります。

「そのために健康でいてほしいし、ぼく以外との性交渉はダメだよ」

「はい」

「そして子作りのための行為は拒まないこと。菜緒美がどれだけ疲れていても、ぼくが必要だと思ったときは、拒否しちゃダメだ」

「わかりました」

「あと、仕事についてはすべて兄の指示に従うこと。兄をいつも同席させてくれ。兄の目の届かない仕事はしてはいけないよ」

「はい」

「あと、私生活がバレるような仕事もね」

「わかっています。充分に気をつけますから」とわたしが答えました。

「ほかには?」と義兄。

「うーん、特にない」

あとは、好きなようにしていいというのです。

驚きです。認めてくれたのです。

こんなことなら、密かに吹雪さんに写真を撮られるようなことをせず、最初から夫に相談しておけばよかったのです。金男の介入もなく、わたしと夫だけの秘密なら、どれほど楽だったか……。

そのほうが吹雪さんたちも、優しく接してくれたはずです。

絵夢奴と金男に、すべてがねじ曲げられてしまったようです。もう、戻すことはできません。

「それはやめようよ」と夫は貞操帯を指さします。

「どうしたらいいかな?」と金男。

「いま、思いついたアイデアがあるんだ」

夫はうれしそうです。軽い決断だけではなく、このことを喜んでさえいるようです。

哲次に特殊な性への趣味があったという記憶はありません。でも、金男にあるような部分を、秘めていたかもしれません。

「要するに中に入れられないようにすればいいんだからさ」

夫はメモ用紙にスケッチします。丸底のフラスコのような形です。

「この膨らんでいる部分は柔らかな素材にする。中で膨らむんだよ。こうすれば抜けないしね。そしてこの口のところから空気を入れて膨らませて、その口のところに鍵がかかればいいわけだよ」

「そんなもの、どこで手に入るんだ」

「簡単さ。作ればいいんだ。材料があればできるよ」

「うまく行くかな?」

「いくと思うけどね」

貞操

わずか三日で夫は貞操帯にかわる器具を作り上げてきました。

それは奇妙なものというよりも、恐ろしいものでした。

「いろいろ考えて、一番シンプルな方法にしたんだ」

金男も呼ばれています。

夜の八時過ぎ。夫は着替える時間ももったいないようで、素っ気ない段ボールに入った器具をテーブルに並べました。

スケッチしていたような丸底のフラスコのようなものではなく、細いパイプでした。どちらもよく似ています。ペニスよりはずっと細く、タンポンのよう。

「こんな細くて小さくて大丈夫かな」と金男。

わたしにとっては凶器に見えます。

「さっそく試してみよう。その前に風呂入ってメシだな」

夫は鼻歌まじりで風呂へ行きます。

あの条件付きの許可を得た月曜日の夜以降、夫は変わらず会社へ行き、遅くまで仕事をし、わたしを抱いて寝ます。

昨日も抱いてくれました。子作りは本気のようです。彼に抱かれるとすごく安心できて、わたしも休まる反面、そこには縛られて自分が自分ではないような感覚の中、みんなから責められているような興奮はありません。まるで感じないわけではないのです。ただ、別物ということです。

すごく心が痛いのは、彼に抱かれてうれしいときに、本当にわたしは夫が好きなのだとわかることです。彼以外の男性との関係は考えられません。この夫婦関係の大切さをあらためて強く思うので、余計に、縄奴隷なわみ、という存在が申し訳なく感じてしまうのです。こんなわたしを愛してくれる人に、絶対に迷惑をかけるわけにはいきません。

「お

義兄

様。教えてほしいことがあるんです」

思い切って金男に聞いてみます。

「哲次さんは、どうしてあんなに平気でいられるんですか?」

愛する妻が、他人に縛られて裸にされて、写真を撮られている。それも、責めさいなまれている絵なのです。怒り狂ってもいいはずです。

「どうしてだと思う?」

ザーっとお湯を浴びている音がしています。

「わかりません」

「これを言うとおまえは怒るだろう。だから、いまは言わない」

「どうしてですか」

「いずれ教えてあげるよ」

みんな意地悪です。

吹雪さんとは正式な契約をし、深川先生、赤岩とも週末に撮影したものについての契約を交わしています。金男がすべてやっています。

吹雪さんたちは、出版社の持っているアダルトサイト会社で、わたしのページを作り、定期的に発表しながら、いくつかのブログを作るなどして、浸透させていこうと考えているようです。

わたしはあれからは、彼らとは会っていません。貞操用の器具ができるまでは、撮影はしないと夫と約束しているからです。

夫に拒否されたり、叱られたり、最後にはこの家から追い出されたらと思うと、絶望的な気持ちになります。

毎晩のように、とくに変わったこともせずに淡々とセックスをしていても、わたしはその儀式が、儀式だからこそいいのだと思うのです。突出した快楽ではなく、快楽がないこともない。だからこそ、安心できるし、深く感じることができるのです。

縄は、衝動的に自分の黒い部分をさらけ出してくれるのですが、そこで得られるドロドロの快楽は、わたしの中では夫との関係とはまったく相容れないのです。純粋にわたし個人の中だけにあるものです。誰とも分け合えないもの……。

「兄貴は入らないの?」

半裸で出て来た哲次は冷蔵庫から炭酸飲料を出して飲みます。

「じゃあ」

金男も風呂に入ります。

夫と二人になりました。

「なわみ、か」

これまでと少し違う目でわたしを見ているような気がします。

「いいな、女の人は」

ポツリと彼が言って、ニッコリ笑うのです。

「どうして、ですか?」

「裸になることで、評価されるじゃないか。男で裸になって評価されるのはほんの一握りの鍛え抜いた人ぐらいだ。だけど女性の場合は、みんながみんな『ミロのヴィーナス』じゃなくても、評価されるからね。もちろん、菜緒美はすごくきれいだし、プロポーションもいいから、なおさらだと思うけど」

妙なことを言い出します。恥ずかしいような、少し腹が立つような。

「やっぱり、人間、評価されることをやるとうれしいものだからね。おまえに最初に会ったのは、展示会だったものね。輝いていたからなあ」

「妙なこと、言わないで……」

「それが裸になって、縄で縛られる。すごい衝撃なんだよね、実は」

「ごめんなさい」

「正直、ぼくにはそういうことはできないし、そういうことで気持ちが高まる面もないではないけど、遠い世界に思える」

それはわたしだけの世界だから。

「だけどおまえは毎晩、ぼくのものだしね」

もじもじしてしまうような言葉です。

「愛してる。それは間違いない。君がどういう仕事をしようとも」

「ありがとう」

「応援というのとは違うけど、できればやめてほしいけど、これも考えてみると最初からあり得たことだったんだなあ」

「最初から?」

「展示会場に、すごいキレイな子がいると教えてくれたのは兄貴なんだよ」

「え!」

「ぼくは仕事で展示会場にいたんで、君たちのことは全部同じようにしか見えていなかったんだ。十人ぐらいいたでしょ、あの時」

コンパニオンのアルバイトだったので、派遣されて練習通りのことをする。わたしはモデルでしたから、説明などもしないで、ポーズをとって立っていればいい役でした。交替で会場に立ちましたので、全員が揃うのは最初の打ち合わせと最後の打ち上げぐらいでした。

「兄貴に言われてから、君のことを意識するようになったんだ」

さっき、金男が言い淀んだこと。

最初にわたしを気に入ったのは金男だったのです。そしてこの交際や結婚を後押ししたのではないでしょうか。

考えてみれば、哲次は技術者で口ベタで、誰とでもすぐに打ち解けるタイプではないのです。だからこそ、わたしは彼を信頼したとも言えますが、そんな彼がよくわたしに声をかけてくれたと不思議だったのです。

「バイク事故のことは聞いたんだよね?」

「ええ」

「ぼくは兄貴に誓わされたんだよ。助けてくれた引き替えに、ぼくは兄の分も楽しい人生にするってね。だからおまえがこの妙なモデルの仕事をやること、それを兄がサポートすることは大賛成なんだ」

「どうして、それがあなたの楽しみになるの?」

「おまえの苦しむ表情はすごくいい。だけどぼくには、かわいそうでそんなことはできない。正直、自分でやりたいとまでは思わない。子どもも欲しい。慎ましい家庭も欲しい。どっちもかなえてくれるかもしれないじゃないか」

重い鎖。

ガチャリと音をたてて、いま、わたしは夫と義兄につながれたような気がしました。それは「理解ある夫」であると同時に、奇妙な共犯者でもあるのです。夫は直接手を下さないけども義兄と共にわたしを縛り、苦しめる。義兄は直接わたしを犯さないけど、夫を通してセックスをして子どもをつくらせる……。

ゾクッとしました。

下半身がじわっと熱くなります。

「一本、貰うよ」

金男は缶ビールを手にしています。いつの間に上がっていたのでしょう。

「じゃ、やってみようか。裸になってみて」

夫が立ち上がり、キッチンのテーブルを横にずらしました。

「ここで?」

「どこでも脱ぐ。どこでも縛られる。縄奴隷ってそういうことなんだろ?」

金男が言います。

二人に見られるのは、これまでの撮影以上に恥ずかしく、つらいことです。まして、実は夫よりも先にわたしを発見していたのが金男だと知ってしまったので。

金男がわたしに強いていること、流出した写真を発見してしまうほど、わたしのネット上の画像を集めまくっていたこと……。

それは一種の愛情なのです。その強さは夫以上でしょう。肉体的な欠損が、彼をより強く、わたしに執着させているのかもしれません。

「わたしもお風呂に……」

「だめだ。それは試してからでいい」と金男が言います。

縄奴隷なわみとしては、金男がすべてを決めて命じるのです。

部屋着を脱ぎます。

彼らに見られながら。

「まだ傷が少し残っているね」

夫とは毎晩、肌を重ねていますが、これほど明るいところで肌をさらしたことはないのです。

「大丈夫だよ、かさぶたが少しあるだけだ。なわみは治りも早いね」

有刺鉄線でつけられた傷が、最後まで数カ所、残っていたのです。

「床に座って。足を広げて」

いつも生活をしているキッチンの床にお尻をつけて足を開きます。二人が食い入るように見ています。

「なわみ、そこを開いて見せろ」

「恥ずかしい……」

金男に言われて、指で秘部を開きます。

夫が例の器具を手にしています。

「自分で入れてごらん。こっちが先だよ」

小さな鍵の刺さっている方が外側です。

彼らに見られながら、入れてみようとしますが、思ったよりは太く、親指ほどもあるので簡単ではありません。

「濡れていないときは、これをつけろ」

ローションを渡されます。

撮影のたびに、これをすることになるのです。読者モデルとはいえ、モデルまがいのことをしていた頃に、人前で着替えるぐらい平気になっていましたが、あそこになにかを入れるところを見られるなんて……。普通ではないのです。

「オナニーして汁を出せばいいんだよ、なわみ」

ハッとするほど怖いことを金男が言います。

「ああ、やってみてよ。見たいなあ」

夫までも。

金男が、ローションを取り上げます。

「決まりだね。オナニーして入れるんだよ。客が二人じゃ寂しいだろうから、こいつをセットしておこう」

ビデオカメラを三脚にセットして、部屋全体を明るい照明に切り替えます。まぶしいほどの白い光の中で、全裸でオナニーをしろというのです。

「縛られたくて発情していたんだから、オナニーぐらい何度もしてるよね」

金男は意地悪です。

「セリフも必要だろう」

紙に金男が殴り書きしたセリフ。

「スタートと言ったら、これをハッキリ言って、オナニーしてトロトロになったら、それを入れるんだ」

カメラのスイッチが入り、小さく赤いLEDが点灯しました。

「縄奴隷なわみの恥ずかしいオナニー姿をご覧ください」

言わされたのに、異様に燃えていく体。カーッとなって、いままでにないスイッチが入ったのでしょうか。

指先でクリトリスの周辺を撫でながら、ゆっくりとオナニーをします。以前からたまにするのはベッドの中での愛撫なので、床の上で人に見られながらだと、やり方が思い出せません。

頭が真っ白です。

「濡れてきたぞ」

かすれた金男の声。

指先にそれが触れるので、自分でもわかります。わたしは濡れている。感じている。そう思うとさらに、こみあげてくるのです。

「オッパイを揉んでみろよ」

のけぞるように、片手を床につけていたのですが、背中も床につけて、片手で乳房を握りしめます。指先で乳首を撫でていきます。手を変えます。濡れた指先で乳首をつまみます。

「あああー」

思わず声が出ました。

「じゃあ、これを入れてみろ」

金男が道具を渡してきました。

体を起こし、驚くほど濡れて光っているそこを開き、荒い息をしながら、挿入していきました。

「ふーん」

声が出てしまいます。

「一番奥まで入れるんだよ」

思ったよりも膣が短いようです。すごく奥まで入ります。

「当たるまで入れるんだ」

指でぐいっと押し込みました。全体がすっかり入ってしまいました。

「これをセットして」

哲次がスポイトのようなものを用意しました。

「空気を入れるだけだから」

「やり方がわかりません」

哲次はカメラの角度をかえて、わたしだけが写るようにし、スポイトを持ってきました。

「鍵が刺さったままじゃ、ダメなんだ。ちょっと引っ張るからね」

彼が指を中に入れて、鍵を引くと、一緒に棒の部分も顔を出しました。つるつるとすべるそれを彼はつまみ、鍵だけをひねって外すと、鍵について本体の一部が外れました。そこに細い管があります。そこにスポイトのような器具の先端をつけて、空気を送り込んでいきます。

最初はまるで感じませんでしたが、やがて、お腹の中が膨らんできました。それもかなり奥の方です。

「これぐらいでいいと思う」

十回ほど空気を入れたあと、チューブにごく小さなクリップをつけて戻します。鍵をひねり、ぐるっと一回転させると鍵だけが抜けました。

「これで、なわみの中に入ったままになるんだ」

彼が指を離すと、まるで飲み込むように、器具は奥へ入ってしまいました。

「うっ」

ものすごく深く入り込んだ感触です。

「どうなってるんだ?」

金男が言います。

「あの筒の中に、特殊なゴム風船が入ってるんだよ。正確にはゴムじゃないんだけど、粘膜や湿り気のあるところにピタッと貼り付く性質があって、奥で膨らんで子宮口あたりにべったり張り付いてるはずだ」

「取るときはどうするんだ」

「鍵を開けて、さっきのチューブのクリップを外せば空気が抜ける。風船がしぼんで本体に入れば抜けるよ。抜きにくければ、鍵を差し込んで、回すようにすれば抜けてくると思う」

「よくできているな。これなら挿入はできない。万が一、精子を入れられても子宮口は塞がっているわけだしね」

「この状態で挿入しようとしたら、ペニスは傷つくし、まずムリだと思う」

「無理やりこれを引き抜いたらどうなる?」

「ゴムが張り付いた状態でか? かなり強力だから、たぶん子宮ごと引っ張り出すことになっちゃうよ」

「ウソだろ」

「試す気はないけど、貼り付いているときはそれぐらい強力なんだ」

「で、鍵はいくつあるんだ?」

「二つだけだ。ぼくと兄貴だけ」

「合い鍵を作られたら?」

「ちょっとした仕掛けがあって、この鍵の複製は難しいよ。これを作ってくれたのは、日本を代表するある金属加工会社でね。ぼくの知り合いがいるからできたけど、一般の人にはムリだね。作るとしたら、何百万円もかかるよ」

兄弟は楽しそうです。

わたしは、この装置によって、縄奴隷なわみとして仕事をすることになってしまうのです。

「よし、じゃあ、もう一本も入れておこうぜ」

「まだ、ですか?」

「ケツ穴だよ。おまえアナルセックスの経験あるのか」と金男が言います。

「あるわけないです」ときっぱり拒絶しました。

「だけど、やられちゃうかもしれないものね」

「いきなりは……」とあくまでも嫌がります。

「そうだな。浣腸してきれいにしてからでないと、入れられないよね」

「仕事のときは必ず入れるからな」と金男。彼が楽しみにしてるのは別の意味です。それを哲次もわかっていて、許容しているのです。

仕事

正式に仕事を始めることになってしまい、金男が相談したらしく赤岩の持っている個人会社を窓口にすることに決まりました。

金男としては有刺鉄線まで持ち出した非情な赤岩が、とても気に入っているらしいのです。

「赤岩はなわみを狙っているよ」

金男はそう笑います。

「そんなこと、あるはずないじゃないですか」

「いや。おまえも赤岩が好きだろう」

「ふざけないでください」

あやとりをした指を思わず見てしまいます。

「浮気したら、子宮を引きずり出してやる。ケツから腸も引っ張り出してやろう。赤岩はそんなおまえを夢中でデッサンするぞ」

恐ろしい光景。

でも、確かに赤岩ならするかもしれません。もしかすると、それがわたしにとっての望みなのかもしれません。優しい夫、怖い義兄。この境遇から逃れるために、もっとも恐ろしい赤岩によって嬲り殺されていく……。

たとえそうなっても、赤岩だけが、わたしの存在をこの世になんらかの形で表現しておいてくれるのではないでしょうか。吹雪さんは優しすぎます。深川先生はわたしにはそれほど執着していません。長年付き合っているモデルたちのほうがカワイイのでしょう。

「じゃ、あとはよろしく」

朝、哲次は会社へ行ってしまいます。

片付けものをすませた頃に金男がやってきます。

「ゆうべもやったのか?」

「はい」

手首をつかまれ、体のニオイをかがれました。

「裸になって待ってろって言ったけどな」

「すみません。洗濯をしていたので」

金男が手を高く上げました。

「ひっ」

叩かれると思い身をすくめます。

「口答えするな」

「ごめんなさい」

「脱げよ」

エプロンを外し、部屋着として着ているクリームイエローのワンピースを脱ぎます。その下に、下着はつけていません。

「そこに座れ」

床に座らせられます。

足を開き、秘部を義兄にさらすのです。

彼は指でそこを撫でたり、いじったりします。

「そうか、夕べも可愛がってもらったのか。よかったじゃないか」

指を入れてきます。

「いいなあ。おれもおまえとやりたいよ」

ぐいぐいと擦られて、無理やり濡れるように仕向けるのです。

「仕事のたびにこれやって気分出して、いいね、なわみは。幸せだな」

濡れてきたところで、あの器具を押し込まれます。奥まで押し込んでから空気を送り込みます。何度試しても、慣れることのできない不快感です。

「よーし。四つん這いになれよ」

次はお尻なのですが、仕事のたびに義兄によって浣腸されることになったのです。

「今朝は出たのか?」

「少しです」

「じゃあ、このところ出ていないんだろう」

黙っているとお尻を叩かれます。

「はい。昨日は出ていません。一昨日も少しだけです」

「たっぷりしないとな」

仕事へ行くまえにくたくたになりそうです。

「五百CCにしよう。微温湯で作るんだ」

洗面器に

温

いお湯を五百CC用意します。義兄はお湯の量を指定するだけで、薬の量は別なのです。

「やっぱり多めに入れておくか」

グリセリンのボトルから適当にどぼどぼとお湯に流し込みました。

「便秘しなくていいだろう」

どこに義兄に浣腸されて喜ぶ嫁がいるでしょうか。

「こっちにケツを向けるんだ」

自分でさせてくれと頼んでも、許してくれません。夫も「それぐらいいいじゃないか」と取り合いません。兄弟は一心同体だというのです。「ぼくはそういう趣味はないけど、ぼくがやっていると思えばいい」

理解できません。

誰かに相談することもできない悩みです。

「ここもきれいだね」

指でお尻の穴を押します。

「弟はここは触らないのかな?」

「はい」

「もったいないね。だけどまあ、これからなわみと仕事をする相手はここが大好きかもしれないから塞いでおく必要がある」

ガラスの浣腸器でチューっと吸い上げてお尻に刺します。

「あっ」

お湯が入ってきます。

「うううん」

すぐに苦しくなります。

百CCの注射器で七本も入れられました。グリセリンを二百CCぐらい入れた計算でしょうか。

「きっちり十分、がまんして」

「ふううぅ」

すぐにお腹が苦しくなります。お尻を締めるのが精一杯で、ほかのことなんて考えられません。

「もうだめ」

「あと七分」

「ムリ、限界」

「まだまだ」

「トイレに行かせて」

「だめに決まってるじゃないか。あっ、電話が来た。まだダメだよ」

金男は携帯で誰かと話をしています。

もうだめ、もうだめ。そう思いますが、勝手にトイレに行けば、どれだけ叱られるかわかりません。

ガタガタと震えながら、四つん這いでひたすら耐えるのです。

長い電話です。もう十分は過ぎたのではないでしょうか。

縄味 2 第1部 (1/4)
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