自分の指では絶対に得られない快楽のひとときを思うと、男の逞しいものが欲しくてたまらない。けれども、恋人でもないのに、セックスを望むような言葉は口にはできないから、香澄は正紀の気をそそるように、陰阜でペニスを突きあげたのだった。その挑発に正紀が乗り、腰を擦り合う二人の呼吸はうまく一致した。
ところが、早くペニスで淫裂を貫いてほしいと望む香澄の気持ちは無惨にも打ち砕かれてしまった。正紀が不意に五体を痙攣させたかと思うと、「ああああっ」と情けない声を出して、放出してしまったのである。
放出したことは、正紀の震えとその後のぐったりした様子ですぐに察知した。途中で放りだされた形となった香澄は、腹立たしさを感ずるには若すぎた。だが、不満は残った。
「ごめん……」
正紀がノロノロと起きあがって部屋を出ていった後で、香澄はパンティのなかに指を差しこんでみた。割れ目の奥は蜜でもぶちまけたようにヌルついている。あわてて起きあがり、ティッシュペーパーで汚れを拭き取ったが、パンティについた染みは冷んやりとして後味の悪さを残し、消えそうになかった。こんなことになるのだったら、パンティの替えを持ってくればよかったと悔んだが、後の祭りである。
そこへ正紀が戻ってきた。その姿を見て、香澄はこれからすべてがはじまるのだと気がついた。
正紀は体にバスタオルを巻いていた。バスタオルが彼の衣装のすべてだった。
「少しゆっくりできるんだろう?」
正紀の問いかけに、香澄は当然のようにうなずいていた。
あらためてベッドの上で唇を合わせると、少し前に拭いたはずなのに、もう股間の粘膜のあたりはじっとりと潤んでいた。生温かい恥液がパンティに染みをひろげていくのがわかる。
「ねえ……触ってくれないか……あそこに触ってよ」
耳たぶを軽く噛まれながら言われると、香澄の手は素直にバスタオルの合わせ目をくぐっていった。
あらっ
!?
……
心のなかで、香澄は素っ頓狂な声を出していた。正紀の股間には、呆れるほど太く硬いものが力いっぱい脈打っているではないか。
さっき出したはずなのに……。
そう思うと、体が燃えるように熱くなった。
「握られると、とてもいい気持ちなんだ」
耳もとでうっとりと囁かれ、香澄の手は自然に伸縮自在の表皮をやさしくしごいていた。しかし、馴れていると思われたくないので、動かす手の振幅は遠慮がちであった。
手のなかで肉棒は、まるでそのもの自体に意志があるかのように、ピクンピクンッと強烈に跳ねる。それだけでも、香澄は気が遠くなりそうなのに、正紀がまるで女の子のように体をくねらせて喘ぐから、さらに挑発されて、恥ずかしい膣肉の奥に官能のしたたりをたっぷりと溢れさせていた。
すぐにも、いま自分がしているように、正紀に触ってもらいたいが、いっこうにその気配はない。むず痒さは、もう我慢できないほどになっていた。だからつい、太腿をもぞもぞと擦り合わせてしまう。そうしないではいられないのだ。
香澄の細かい仕草を正紀は盗み見ていた。
「ねえ……」
手を休めた香澄が、甘えた声を出してすがりついてきた。
「なんだい?」
「私も……私のも、触って……」
顔を見られるのが恥ずかしいのか、ぴたりと頬と頬をくっつけて訴える。
「触るって……どこを?」
正紀はとぼけた。
香澄はすねたように体を揺すって、「こういうところも」と握りしめている手に力をこめ、さらに「おっぱいとかいろいろ……」と泣いているような声を出した。
「わかった。じゃあ、脱ぎなよ」
香澄はベッドに座ったまま背中を向け、隠れるようにワンピースを頭から脱いだ。服と同系色のブルーの薄いブラジャーとパンティには、可愛らしいレースの飾りがついている。撫で肩で細い胴のわりには、腰が悩ましく張っている。ハイレグのパンティからはみでている尻肉に、大きな二つの窪みができていた。そこだけ見ると、まるで成熟した女のようである。
「ねえ……ホックをはずして」
背中を向けたまま言う。恥ずかしいのだろう。
正紀はホックをはずす前に、うなじに唇を這わせ、舌先だけで掃いてみた。
「うッ……アーン」
首が折れたのかと思うほどガクガクッと揺れ、香澄はバタッと前に突っ伏してしまった。よほど強烈に感じたらしい。
正紀は後ろから覆いかぶさるようにして、もう一度同じことをやってみた。反応は前よりもはるかに顕著だった。蛙が平べったくなったような姿で、香澄はベッドの上で狂おしげに身悶えている。
美少女の思わぬ狂態を見て、正紀は複雑な気持ちになった。ことセックスに関する限り、女はおしなべて自己中心的になる。つまり溺れるのだ。冷静に自分を見るということはないようだ。
こんな若いのに、淫乱女のように悶えるなんて……。
正紀は、突きだされたヒップの合わせ目から、スーッと指を前方へすべらせた。
「ひいーっ
!!
」
予期せぬ愛撫を仕掛けられた香澄は悲鳴をあげて、ベッドの頭のほうへ逃げた。いやだったからではない。恥ずかしかったのと、脳天まで響くような快感にびっくりしたのである。
下着は股間の淫裂の形状をくっきり浮かびあがらせるほど濡れていた。
「うわあ、どうしてこんなにグショグショなのさ」
正紀は意地悪な質問をすることに、わくわくするような快感を覚えた。
「だって……だって……」
香澄は今にも泣きだしそうな声を出した。
女のお決まりの文句だな。男にそうされれば誰だって濡れてしまうと言いたいんだ……。
正紀はもう一度、「どうしてひどく濡れるの」としつこく聞いた。
「……変になってしまうの」
「つまり、とても気持ちがいいからってわけだ。そうだろう?」
香澄はシーツに顔を押しつけたまま、コクンとうなずいた。正紀が、引き剥がすようにしてパンティをずりおろした。
香澄は両脚を伸ばして平たくなった。足首から抜かれたパンティは、まるで濡れたハンカチのように小さくなってしまった。
正紀は香澄の体を仰向けにすると、乳房に顔を擦りつけながら、指先を草むらへ伸ばした。香澄は自ら望んで「触って」と口にしただけあって、おとなしくされるがままになっている。乳首が舌先にとらえられ、柔肉の上を指が縦横に這いまわると、美少女はすぐに息をはずませて、両脚を大きく開いていった。
自分の指で触る比ではない。目がくらむような快感が、接触する個所から次々と湧いて、全身にひろがった。
「気持ちいいかい?」
正紀にやさしく聞かれると、今度は素直に「うん」と言えた。
正紀が両脚の間をこじ開けて割りこんできたとき、チラッとその股間に視線を走らせた。そそり立つペニスの裏側を見た香澄は、まるで蛇みたいだと思った。大きく張りだしたカサの部分は、綺麗に磨かれた陶器のようにツルツルと光っている。それが、今にも溶けそうになった自分のアソコに入ってくるのかと思うと、全身におののきが走り、またしても割れ目に愛液が溢れた。
いよいよだわ……。
そう思った香澄の期待は裏切られた。いったんは中腰になってかまえた正紀だったが、すぐに平たく這いつくばると、両手で恥毛を丁寧に分けはじめたのだ。
何もかも男の視線にさらされるのかと思うと、香澄はついつい両脚をすぼめたくなる。だが、その反面、ギラギラと輝く正紀の目を見て、もっと恥ずかしい姿を見せつけてやりたくもなる。
「わあ、すごいや……」
好奇心いっぱいの正紀の声を聞くと、香澄は体の中心にツーンとした疼痛を感じた。内臓まで見られているようであった。ざらっとしたものが柔肉に触れた。短く叫んで腰を跳ねあげると、両腿をかかえこまれて動き封じられた。もっとも感じやすい肉芽を舌先がチロチロと這う。
「イヤーン……」
その声は正紀にではなく、自分自身に向けられたものだった。あまりにも敏感な自分の体に恥ずかしさを覚えたのだ。
正紀の舌は執拗だった。恥毛を舐めたかと思うと、鼠蹊部の窪みを掃き、会陰部を往復した後に、割れ目の縁を吸う。そしてときには長々と突きだされた舌が、まるで陰茎のように膣をうがつのだ。
大して奥には入らないが、正紀の舌は柔肉の裏側を掘り起こしたり、膣襞をえぐったりするものだから、香澄はセックスしているような錯覚に陥り、腰をはしたなくうねらせていた。
正紀は美少女の変わりように、内心びっくりした。虫も殺さぬ顔をしているのに、まるで娼婦のように淫らな姿をさらしている。びっくりしながらも、おかしかった。女には二つの顔があると思った。
上の顔と下の顔と……。
ついこの前まで、つまり女を知る以前は、女に対して強い憧憬の念を抱いていたものだったが、女の実体というものに触れて、それはただの幻影にすぎなかったことを思いしらされた。愛するなどということが、実に曖昧で、くだらなく思える。
そうだ。遊び道具だと思えばいい……。
そういう考えを徹底して持てば、男は傷つかずにすむ。失恋という言葉も、馬鹿馬鹿しいほどおかしい気がする。
女は抱くけど、絶対に惚れたりしないからね……。
正紀は肚のなかで悪魔的な言葉を吐きながら、一種の快感のようなものを味わっていた。
一方の香澄は、舐められていることだけに、もはや耐えられなくなっていた。子宮の周辺のむず痒さといったら、ちょっと言葉では言い表わせないものがある。できることなら、自分の手で思いきり引っかいてしまいたい。腰が跳ねてしまうのも、単に心地よさからではなく、どうしようもない焦れったさのようなものがあったからだ。
「ねえ……ねえったら……」
思わず焦れた言葉を吐いていた。
「何さ……なんだい?」
正紀にそう言われると、次の言葉が出てこない。早く入れてとつづけたいが、さすがにそこまでは言えない。
正紀は女心の微妙な本心まではのぞき見ることができなかった。またそれができる年でもなかった。だから、「どうしたのさ」と何度もしつこく聞いた。
香澄は正紀が知っていて、わざと意地悪く聞いたのだと判断した。
「知ってるくせに……もう……」
「知らないったら。ちゃんと言ってごらんよ」
「もう知らない……意地悪!」
「あ、そんなこと言うんだね。ようし……」
正紀は柔肉に舌を押しつけるだけでなく、軽く歯を立てた。ほんのおふざけのつもりである。ところが、それが考えてもいない効果をもたらしたのだ。
「うーっ!」
獣さながらに呻いた香澄は、全身を棒状に突っぱらせて、まるで小水を噴きだすように快液を溢れさせた。
それが潮吹きのように、正紀の顔を直撃した。生温かいものを次々と浴びた正紀は、大いに驚きもしたが、またしても知った女体の新しい反応にうれしくもあった。
本当に女の体って、飽きのこないオモチャだな……。
探求心に駆られた正紀は、香澄の両脚を高くかかげて折り曲げた。平べったくなった尻肉の間から、女陰のすべてが剥きだしになった。見あげると、香澄は頭を枕からはずして顔を左右に振りたてている。
正紀は枕を手もとに引き寄せて、少女の尻肉の下に押しこんだ。くの字に曲がった香澄は、自分の手で両脚をかかえこんだ。アヌスホールまで見せて、美少女は次の男の仕掛けを待っている。いや、待っているというより、その姿には待ち望んでいるという言葉のほうが、よりふさわしいようであった。
正紀の心のなかに突然、狂暴なものが芽生えた。それは、いわれのない憎しみだった。美的なものに対する意識の崩壊だった。
正紀は豊かな尻肉にいきなり噛みついた。
「痛っ……」
香澄が尻を振った。目の前で淫裂が歪み、恥溝が割れ、奥から押しだされるように媚液が溢れて、シーツの上にポタポタとしたたった。
香澄はやめてとは言わなかった。それどころか、「もっとして……もっと噛んでっ」と叫びながら、ヒップをぐいぐいと正紀の顔面に押しつけたのだ。
正紀にとって、何もかもが新しい出来事であった。しかし、呆れたり驚いたり、ときにはうれしがったりしながらも、正紀の心には何か釈然としないものが残っていた。それはやはり、女の意外な面を見たことで、裏切られたような気持ちになっているからであった。
女はオモチャだという思いは、ますます強固なものとなった。
正紀は少し力をこめて噛んだ。歯型がくっきりと赤く残った。それでも、香澄はやめてほしいとは言わず、かえって前よりも大きな喘ぎ声を出して、ベッドまで叩いて激しく身悶えた。
正紀は赤褐色の裂け目から際限なく溶液が流れでるのを見ながら、女にはキリがないのではないかと思った。そして、自分が楽しむ以上に、香澄が快楽を貪っていることが不当のように思えるのだった。
「入れるぞ!」
正紀は唐突に叫ぶと、そのまま美少女に覆いかぶさった。充分にこなれている女の柔肉は、難なく長大な一物を呑みこんでしまった。
正紀には、それさえも不当のように思われてならなかった。シーツをバリバリと引っかいて狂喜する香澄を、不思議な生き物でも見るように眺めながら、気のおもむくままに熱水を放出した。
ひどく索漠とした気分だった。
【第七章 娘の前で貫かれる菊門】
香澄との体験は、正紀にとって初めて、レイプではないセックスだった。それでも正紀は、香澄に恋愛感情を抱くことはなかった。あくまでもオモチャの感覚で付き合う気持ちしかなかったのだ。
ところが香澄は、一度体を許した正紀に、恋心を抱くようになっていた。自分に対する正紀の本心など知る由もないまま……。
正紀は、香澄を訪問する日を指折り数えて待った。学校のトイレでレイプして以来、香澄の義母である理恵とは顔を合わせていない。会うこともないと思っていたし、また彼女もそれを望んでいないはずなのに、香澄が思わぬ仲介役をしたことになる。もっとも、そうはいっても、当日に理恵が在宅しているかどうかはわからない。理恵のことを聞くのは不自然な気がして、訪問日までの楽しみとしてとっておくことにした。
そして、その日が来た。
夕食を御馳走になることになっていたので、午後三時頃に訪問する約束だった。当然、理恵は娘からボーイフレンドが訪ねてくるということを、前もって聞いているはずである。しかし、その名前が小牧正紀と聞いても、自分を学校のトイレで犯した男とまではわからないだろう。
その日、朝から正紀は気負い立っていた。父と一緒に庭へ出て、小さなネットの前でゴルフボールを打つ練習をしていて、父から、「少し力みすぎじゃないか」と言われたほどである。
「お父さん、今日は出かけないの?」
「うむ……実はちょっとお前に話があるんだよ」
伸吾はティーの上にボールを置きながら、正紀の顔を見ないで、さりげなく言った。
「ふーん、面倒な話なら後にして。ぼく、出かけなきゃならないんだ」
「そうか。いや、そんな面倒な話じゃないんだ」
伸吾はボールを打つと、もう一球、打つかまえを見せた。
「お前、父さんの再婚、どう思うかな……賛成とか、反対とか……」
打ったボールはネットの的から大きくはずれて、危うくネットの外に飛びだすところだった。
「相手はいるの? どんな人?」
正紀は賛成も反対もせずに、単刀直入に聞いた。初めて父は振りかえり、まともに正紀の顔を見た。
「いや、特別どうのこうのという人はいないんだ。ただ、まわりの人がいろいろと気をつかってくれるものでね……それに、お前もいつまでも一人で放っておけないし……」
正紀の脳裏に、ゴルフ練習場で父と一緒だった女の顔がよぎった。
「ぼくのことなんかどうでもいいけど」
「いや、いいわけないさ」
本当は、お父さんが自由にできるオモチャが欲しいんじゃない?……
そう言ってやりたい気がしたが、その言葉は唾液とともに呑みこんだ。
その日、出かける前に、正紀は久しぶりに母の位牌の前に新しい水を供え、手を合わせた。本来なら毎日欠かさずにするべき簡単な行事を、このところ欠いてしまっている自分がとんでもない親不孝者に思えてならない。
「お母さん、ごめんね。これからは毎日きちんとやるから」
生きている者に言うように語りかけると、気持ちがホッと落ち着いた。同時に、母に代わってこの家に入りこむかもしれない女に対して、憎しみの気持ちをぶつけるのだった。
正紀が約束の時間に香澄を訪れたとき、義母の理恵は美容院に出かけていて留守だった。
ひどく緊張していた正紀は、「そんなにコチコチにならなくていいのよ」と香澄に言われ、思わず苦笑した。
「ねえ……」
香澄は居間へ入るところで、後ろに従った正紀を振りかえり、目を閉じて唇を突きだした。正紀は儀礼的に唇を重ねたが、香澄はそれだけでは不満らしく、正紀の首に腕を巻きつけて、口のなかに舌をこじ入れてきた。
正紀は不覚にも勃起した。それを太腿あたりに敏感に察知した香澄は、手を伸ばしてペニスを握った。
「大胆だね。そんなことされると、したくなるじゃないか」
どうせ相手はオモチャなんだと正紀は思い、ズバリと言った。
「いいわよ……二階へ行きましょう」
香澄はキッチンにいるお手伝いさんらしい中年女に、「ケーキは居間に用意してね」と声をかけ、正紀の手を引いて、立派な手すりのある螺旋階段を軽い足どりでのぼった。
「ここなら誰も来ないわ」
十畳間ほどの広さのあるウッドフロアには、衣裳箪笥や大きな姿見が並んでいて、部屋の一角に小物でも入れてあるらしい民芸調のベンチチェストが置いてある。
部屋の内鍵をかけた香澄は、後ろ向きになると、巧みにスカートをまくりあげて、パンティをスルスルと脱いだ。それはまるで、日常のなかのきわめて自然な一つの行為のように見えた。
正紀が半ば呆れ、半ば感心していると、香澄は「あら、早くしないと、ママが帰ってきてしまうわ」とせきたてた。
正紀はズボンとブリーフを脱いだ。解放されたペニスが勢いよく宙を向いて跳ねた。
「大きいわァ」
その言い方も、見つめる表情も、セックスに馴れている女のようで、正紀はあまりいい印象を抱かなかった。
香澄はそんな正紀に無頓着に、ベンチチェストの上に片脚をかけ、壁に寄りかかった。
「早く……ねえ」
スカートを両手でたくしあげたポーズは、何かの映画で見た暗がりのなかの娼婦によく似ていた。心のなかではいやだと思っているのに、いっこうに萎えてくれない分身を、正紀は恨めしく思った。
女をオモチャと蔑んでみたところで、男だって女なしではいられないのか……。
オモチャをあてがわれなければ、始末もできない自分に、正紀は嫌悪の情を抱いた。乱暴にこわばりをしゃくるようにして、亀頭を淫裂に当てる。もうそこはネチャッと音をたてるほど濡れている。ズブッと押した。最初だけ少しきつめだったが、すぐにスムーズに胎内へもぐりこんだ。
正紀は不安定な格好のまま、すぐに欲望を吐きだしてしまった。
香澄は不満を口にしなかった。自分の体に正紀が魅力を感じているから、抱きたくなるのだと思っている。そして自分の体で欲望をやわらげてあげたということで満足していた。
香澄は萎えてポロリと抜けでた肉茎を、自分が脱いだパンティで清めると、照れくさそうな笑いを残してトイレに駆けこんだ。
正紀は先に階下におりて、居間でケーキを食べた。
そのとき、玄関ドアが開いて、「ただいま」という女の声がした。お手伝いさんはキッチンにいてその声に気づかないようだったし、香澄はまだ二階のトイレから出てこない。
正紀がソファから立ちあがったとき、「誰もいないのかしら……」と華やかな声がして、女が居間に入ってきた。
美容院から戻ってきた理恵だった。正紀はさりげなく会釈した。ニコッと笑いかけた理恵の顔が、一瞬の後に凍てついた。
どうして!……なぜ
!?
……
あの忌まわしいレイプ少年が我が家にいるのが、理解できないふうだった。
ちょうどそこへ、香澄が入ってきた。
「あ、ママ、お帰り……何よ、その顔?」
香澄は、あまりに厳しい表情をして突っ立っている理恵を苦笑しながら見た。
「こちらが今日のゲスト、小牧正紀君。うちの母です」
事情も知らない香澄は、屈託なく二人を短い言葉で紹介した。
「はじめまして、小牧です」
正紀は理恵の下腹部の秘められた顔を思いだしながら、にこやかに挨拶した。
「香澄の母です……いろいろとお世話になったそうで」
娘のボーイフレンドが強姦魔だとは……。理恵には、この偶然が神の悪戯のようで情けなかった。
「そうよ。ちゃんとお礼を言ってね。学級新聞のことでとてもためになるアドバイスを受けたんだから」
香澄のしゃべり方は無邪気のようでいて、どこかにトゲがあった。義理の母娘という垣根のせいかもしれないと、正紀は思った。
理恵が再び同じような言葉で礼を述べた。
「じゃ、ママ。後はお料理のほうをよろしく頼むわね」
「はい……じゃ、のちほど」
理恵は逃げるようにその場を離れた。
「変だと思わない?」
「何が?」
「うちのママ、若いと思ったでしょう?」
「ああ……」
「後妻なの」
正紀には承知ずみのことだ。
「お母さん、亡くなったの?」
「生き別れ……離婚したのよ」
「そう。たまにはお母さんに会うの?」
「全然……だって、アメリカ人と再婚して、向こうへ行っちゃったんですもの。男も女も、大人ってだらしないわ」
その言葉はひどく年寄りくさかったが、今まで香澄がしゃべってきたことのなかでは、一番まともな言葉に正紀には思えた。
食事のときまで、理恵は姿を現わさなかった。お手伝いさんは通いらしく、午後六時になると帰ってしまった。
「ねえ、何か飲みましょうよ」
食事の前に、香澄は正紀を地下の酒庫に案内した。そこには数多くの洋酒が貯蔵されていた。レミー・マルタンのルイ十三世の瓶がうっすらと埃をかぶっていたり、ドン・ペリニョンやロゼなどが無造作に置かれている。正紀はいい加減に一本の瓶を手にした。
「あら、これ飲んだら、パパはどんな顔をするかしら? もっともパパも今頃、ヨーロッパでこれを飲んでいるかもね」
「なんていうの?」
「あら、知ってて選んだのかと思ったわ。ロマネ・コンティ……本当か嘘か知らないけど、平均生産量が一年に八千本なんですって」
「じゃ、よそう。別のにする」
「いいの。パパは一人っ子の私に甘いんだ」
それは、どこの家でも同じじゃないか、と正紀は思った。
食卓にロマネ・コンティを香澄が置くと、さすがに理恵はびっくりしたような表情を見せたが、何も言わなかった。
食事中、理恵の口数は極端に少なかった。しかし、心地よく酔った正紀と香澄は、理恵のことなど気にせず、よくしゃべり、よく笑った。
食事がすんでから少しの間、三人でトランプをしたが、そのうちに香澄は何度も欠伸をするようになった。
「昨日、あんなに遅くまで起きているからですよ」
ここではじめて、理恵は母親らしい口をきいた。すかさず、正紀は理恵をまともに見た。
「そんなに遅くまで起きていたんですか?」
自分に向けられた質問だったので、手持ちのカードから視線をはずした理恵は、正紀の視線をはねかえすように見かえした。
「ええ、香澄さんはハワイにとても仲のいい日系四世のボーイフレンドがいるんです。昨日はそのボーイフレンドに何やら長々と手紙を書いてましたから」
ボーイフレンドというところを強調するような言い方に、正紀はおかしさをこらえて、黙って聞いていた。
「あら、ママ、そんな言い方をすると誤解されるわ。ペンフレンドって言ったほうが正確ね。英語の勉強になるでしょう。だから、月に一度か二度、長い手紙を書いて送るの」
どうやら、香澄の話が真実に近いようだった。
「じゃ、疲れただろうから、ぼくはこれで」
「ごめんなさいね。なんだかすごく眠くてたまんないの」
二人に、正紀は玄関先まで送られた。そのとき、ほんの一瞬の隙をついて、正紀はさっきトイレに立ったときに書いたメモ用紙を、理恵を手渡した。
部屋に戻った理恵は、それを読んで慄然とした。
『一時間後にまた来ます。それまでに必ず香澄さんを寝かせつけること。玄関は開けておいてください』
理恵はトイレで襲われたときの、自分のあさましい行為を思い起こした。理由はどうあれ、自分は明らかに少年の行為を受け入れただけでなく、感じてしまったのである。その後、少年が呼びだしをかけてくるのではないかと恐れていたが、さいわいにもその気配がなくホッとした矢先だった。
こともあろうに、義理の娘が招待した少年が、レイピストだったとは!……
香澄はすぐに自分の部屋に入ってしまった。しばらくしてから、理恵は念のために、そっと香澄の部屋のドアをノックをしてみたが、なかからはなんの反応もなかった。ドアを開けて室内をのぞくと、香澄はほの暗い電気スタンドの光のなかで、もう寝息をたてている。
ホッとしてドアを閉めた理恵は、自分が、すでに少年の再訪を認めていることに気づいてハッとした。しかし、拒めそうにない。もし玄関を開けていなかったなら、何をしでかすかわかったものではない。大声でもあげられたら、それこそ取りかえしのつかないことになってしまう。
すべてを失う勇気があれば警察に届けることもできたが、資産家の妻という座を自分からおりるような真似はできなかった。ともかく今夜を切り抜けるには、やはり少年の提案を受け入れるしかないようだった。要求される中身はわかっている。
手早くシャワーを浴びた。股間を洗おうと、ソープをてのひらに塗って手を差しのべた途端、自分の手であるのに、ハッと腰を引いてしまった。
そこが敏感になっていた。生理が近いときになる、いつもの現象である。近頃になってそれに気づいた夫は、その日を楽しみにして理恵を抱くことがある。特に乱れ方が激しいからだ。体のあらゆる部分が性感帯となってしまう。
そっと撫でるようにして洗ったが、それでも声が出てしまうほど感覚が高まっている。ぬるま湯を浴びせると、思わずうっとりした気分になってしまい、シャワーを中断するのさえ惜しい気がした。
それにしてもあのときは……。
トイレで見た少年らしからぬ勃起を思いだした理恵は、夫のささやかなシンボルと取り替えたいという気持ちになった。
これは不貞かしら?……いいえ、あくまでも私は、か弱い被害者……。
そう思うことで、はっきり気持ちを決めると、裸にバスローブを羽織って玄関に行き、錠をはずした。
二階の夫婦の寝室で真新しいブラジャーとパンティを身に着け、体の隅々にまで香水を吹きつけているとき、階下でかすかに物音がした。理恵は決して落ち着いていたわけではなかったが、気持ちをはっきり固めてからは、少年の言いなりに従い、そして早く帰ってもらおうという気になっていた。
螺旋階段の踊り場から玄関ホールを見おろすと、正紀が自信たっぷりな微笑を浮かべて立っていた。理恵は素早く階段をおり、ホールの明かりを消して、少し冷たく言った。
「こっちへ」
先に立って理恵が正紀を連れこんだ部屋は、一階のキッチン脇にある、いわゆるお手伝いさんの控え室のような六畳の和室だった。
「ここなら、少々の音も気にならないってわけか」
したり顔の少年を振りかえった理恵は、「香澄さんが眠ったという保証はないの。すぐに帰って……それから、もう絶対にこんなことはやめてください」
早くも涙声になっていた。
「いいよ。この家に来ることはあるかもしれないけど、あなたには手を出さない」
理恵は信じがたい表情をした。
「あなたに恨みがあるわけじゃないし、代わりもいるからね」
「まさか……香澄さんと?」
「それは母親としての質問? それとも単なる興味かな」
「母親として……でも、そうだからといって、私にはどうにもできないことだわ」
「自分の体を犠牲にして、というのは美談じゃないかな」
理恵の顔に翳りが生じた。
「冗談だよ。もうあなたには手を出さないって約束する。その代わり、今夜はどんな命令でも聞いてもらうよ」
怯えながらも、理恵はかすかにうなずいた。
「まず、裸になってくれよ」
そんなことはもう覚悟を決めていたし、ともかく今夜がすぎてしまえば後は安心という気持ちだったので、理恵は女のたしなみを忘れない程度の仕草をしながら、バスローブを脱ぎ、身に着けたばかりの下着を取り去った。
「今度はぼくを脱がして」
横柄で自信満々の少年を目の前にして、理恵はわけもなくドキドキした。少年のズボンの前は、異様に膨らんでいた。
もう大きくなっているわ……。
中年すぎの夫は、すでにその活力を失っている。時折り怪しげな強精剤などを、セックスの前に飲むが、本人が言うほど効きめがあるとも思えない。
ところが、理恵が裸になるのを見ただけで、正紀のペニスは充血してズボンを突き破らんばかりになっている。一枚、また一枚と脱がせてブリーフ一つにさせた理恵は、大きく反りかえって布地を突きあげているこわばりに圧倒された。しかも、先端に触れている布地には、もうエキスの一部と思われる染みが浮かんでいる。
「あなたって、香澄よりずっとチャーミングだ。だから、ほら、こんなになってる」
正紀は自分の手でブリーフをずりさげた。
顔前に飛びだした怒張を見つめながら、理恵はブリーフを正紀の足首から抜いた。
「やっぱり、あの子とあったのね」
「処女じゃなかったよ」
「そんな
!?
嘘でしょう……」
「本当さ。がっかりしちゃった」
正紀のしゃべり方は、子供っぽいときと大人びたときがある。
「ところで、あなたはいくつのときだった?」
「え
!?
」
「処女じゃなくなった日」
しばらく理恵は無言だったが、どうせしゃべらされるに決まっているからと肚をくくった。何も本当のことを言う必要はない。
「十九よ」
実際は二十一歳である。
「相手は?」
「大学生」
「いつ?」
「夏休みに……」
「ねえ、触りっこしよう」
正紀がどういうつもりなのか、理恵には理解できない。
部屋の片隅に、夏もののカバーをつけた座布団が重ねて積んである。その二枚を並べて正紀は座った。理恵もうながされるままに、もう一枚の上に座った。
「駄目だ。正座するんじゃなくて、こう座るんだ」
正紀は両膝を立てて膝の間をひろげた。下腹から宙に向いた肉棒は、さながら敵地に砲身を向けた太砲のようだった。
理恵は、ともかく素直に従うのが得策だと考え、すぐに同じようにした。黒々とした恥毛の下がどんな形で開いているのか自分からはよくわからないが、経験で想像できる。大人になりかけの頃、いったい性器はどんな形をしているのだろうと興味を持ち、手鏡を当てて観察したことがある。それに処女と訣別した直後とか、生理の手当てのときなどにものぞいた。こんなに醜悪でグロテスクなものか、とびっくりしたものだ。それに、思ったよりも大きい肉器だということにも驚かされた。
今、私はそのときに近い格好をしている……。
「触りっこだ」
正紀が幼児のような無邪気な笑顔で、てのひらを上に向け、まるですくうような手つきで陰門を撫でた。ゾクッとしたものが、理恵の全身を痺れさせた。
「さ、ぼくのも触って……袋もだよ」
袋という言葉が、卑猥な響きをともなって鼓膜を打った。理恵はこんな子供のような戯れに、自分がひどく感じていることを知った。
ペニスに手を伸ばすと、すぐに正紀の表情が変わった。うっとりした表情で目を閉じ、まだ大人になりきらない首をのけぞらせて、息を荒げる。袋を撫でたり揉んだりすると、さらに変化が大きくなり、肉棒がビクビクと活発に脈打った。
「ねえ……出したいの?」
理恵の声に、正紀は大きくうなずき、「ちゃんと呑んでくれるよね」
と半ば強制的に、半ば哀願するように言った。
理恵はそれに答えなかったが、同意したも同然だった。呑むという言葉に、彼女の肉体は鋭く反応した。
てのひらだけで理恵の性器全体をサラサラと触っていた正紀は、いつしかてのひらが性器に付着してしまうほど濡れているのに気づいた。理恵が淫らというにはあまりにも幼稚な会話と行為に対し、敏感になっているのは明白だった。
「ああ、出ちゃいそうだ……」
いきなり正紀が後方に引っくりかえった。
理恵はあわてて少年の下半身にかぶさるような姿勢をとった。気づいたとき、手は肉棒の表皮を巧みに摩擦して、まぎれもなく射出の手助けをしていた。
手のなかで、こわばりが一挙に膨らんだ。
「出ちゃうよ……呑むんだ!」
正紀の声よりも早く、理恵は肉棒を吸っていた。
ただ単に噴出するだけでなく、理恵の柔らかい口が肉棒を咥えて、まるでストローを吸うように吸茎したので、そこに生じた快感は二倍にも三倍にも増幅した。獣のように呻いたかと思うと、正紀は肉棒につまったすべてのエキスを放出した。
理恵はペニスを咥えたままエキスを呑みこもうとしたが、噴出の勢いのすさまじさとその量の多さに息がつまって、とうとう肉茎を吐きだしてしまった。
まだ射出はつづいていた。それらはすべて宙を飛び、先端の切口からタラタラと滲む残滓は、そのまま幹を伝わって恥毛の陰に隠れるように沈んでしまった。
理恵は呆然として眺めていた。ペニスがゆっくりと勢いを失っていく。特色あるきつい匂いが鼻腔を刺激すると、理恵はそれを忌まわしいものとは思わずに、胸いっぱいに吸いこんだ。性的欲望はその匂いによって挑発され、理恵の股間も多量の愛液にまみれて、次に来るべきものを待ち望んで、嬉々として蠢くのだった。
全身を火照らせたまま、理恵はあちこちに飛んだ白濁液を拭き取り、正紀の体に付着した汚れを清めて、ホッとひと息ついた。自分はあくまでも辱しめを受けている身でありながら、どこか目の前の少年に憎めないものを感じる。それは正紀が生来身につけているノーブルな雰囲気が、多分に彼女の心に作用しているようだった。
でも、甘い考えは禁物だわ……。
ふっとゆるみそうになる気持ちを引きしめた。目の前の正紀が、のっそりと起きあがった。気品のある顔立ちに、非道な色などまったくないのが不思議であった。
「案内してくれないか」
「え
!?
」
理恵は質問の意味を解しかねた。トイレの場所なら承知しているはずである。
「さあ、早く」
理恵は端正な表情の裏に隠された、よこしまな企みに気づかず、不審そうに少年を仰ぎ見た。さっきまでの猛々しさが嘘のように、男の象徴はうなだれている。
「香澄の部屋に案内してよ」
理恵はいっそうわけがわからなくなり、言葉もなく眉をひそめた。
「彼女の部屋へ行くんだ。さあ」
「な、なぜ? どうしてなの?」
冗談かと思ったが、少年の顔は真面目だった。
「あそこでやるんだ。きっと楽しいよ」
そう言って笑った正紀の顔を、理恵は悪魔よりも恐ろしいと思った。
「いやよ。そんなことできるわけないわ」
「やってみなけりゃわかんないさ。それに、どんな命令だって聞くと言ったじゃないか。約束を守らないなら、それでいいさ。ぼくだって約束したことは忘れる」
つまりそれは、この先も理恵との関係を持続させるぞ、という脅しである。どちらも危険な二者選択であった。
正紀が理恵の肩をポンと叩いた。まるで条件反射のように理恵は立ちあがり、白い裸身をさらしながら、正紀の前を歩きだしていた。
怖いわ……もう私は駄目かもしれない……こんなことになるなんて……。
階段をのぼり、香澄の部屋へ行くまでの間、理恵は人生のどん底を這いまわる自分の姿を何度も想像して身震いした。ドアノブに手をかけようとしたが、どうしても震えてしまう。
見かねて、正紀が代わった。彼は危険を楽しむかのように、ゆっくりとドアを開けた。
その肩越しに、理恵はこわごわと室内をのぞきこんだ。淡い電気スタンドの光が、ベッドの枕もとを照らしだしている。体を折り曲げるようにして、香澄はよく寝入っていた。掛布団の上に投げだした片手が白い光沢を放って、まるで置物のようである。
正紀に手を取られた理恵は、夢遊病者のように枕もとに立たされた。香澄が目を覚ましたら、すべてが終わりである。
背後から抱きかかえるように、正紀が両脇から手をまわし、恐怖におののく二つの乳房を手中におさめた。
「どうしたの? 体がすっかり冷たくなっているよ」
耳もとで囁く声があっても、今の理恵には普通以上の大声に聞こえた。
「落ち着いて楽しもうよ」
冗談じゃないと思っても、声には出せない。
正紀は、娘の部屋で全裸の母を嬲るという異常な状況のなかで、女体がどれほど変化するのか、それが知りたいという好奇心と、香澄がいつ目を覚ますかもしれないというスリルがたまらなくて、理恵の乳房に手を伸ばしたのである。
はじめは腕のなかで震えていたのに、一分もすると、理恵の体に以前の温かさが戻り、さらに時間が経過すると、乳首がコリコリと硬直して、その存在を誇示するように勃起した。
女って、これだから面白い……。
正紀は片手を理恵の脇腹から陰阜の上へすべらせ、指先で毛を梳いてから、これとおぼしきところに指をあてがって殻をそっと剥いた。下からプクッと小粒の豆が飛びだした。
「もう大きくなってる」
その言葉通りだったので、理恵は真っ赤になって息を荒げた。
「ぼくも、また大きくなりかけてるんだ。ちょっと触ってよ」
正紀を黙らせるには、ともかく言われた通りにするしかない。話し声や物音はこのうえもなく危険なのだ。理恵は後ろに手を伸ばした。半勃起の肉茎が手に触れた。生魚でも掴んでいるような妙な感じである。しかし、すぐにぐんぐんと硬度が増した。てのひらがはじかれそうである。
直立した肉棒は、ヒップの合わせ目をノックした。
「ここでしたことある?」
理恵はあわてて否定した。触られたり舐められたりしたことは何度もあるが、アヌスを使って交わるなど一度もなかった。そういう点では、理恵はセックスに対してきわめて常識的な考えを持っていた。
まさか、この人……。
そんな疑念がふっと湧いたが、それを望まない理恵はすぐに打ち消した。
「可愛い寝顔をしているね。こんな顔してるくせに、セックスのときはすごいんだから」
香澄を見ながら、正紀が囁いた。理恵の体のなかで血がざわめき、あわただしく駆けめぐった。年若い二人が絡み合う姿が浮かんだ。
そのとき、陰粒をくすぐっていた少年の指が、ズルッと膣肉をかき分けて内部に侵入した。突きあげる快感に理恵はよろめいた。
フロアがミシッと音をたてたが、正紀はそんなことには無頓着のように、大胆に指を最奥にまでもぐりこませてこねた。
目の前で、香澄の寝顔が揺れた。今にも起きだしそうな気配に理恵はゾッとしたが、それと同じ時にぐんぐん上昇する性感にもゾクゾクッと身を震わせた。
「ベッドに両手をつくんだ」
従うしかなかった。身を折り曲げると、もう目と鼻の先に香澄の寝顔がある。規則正しい寝息が、理恵の唯一の救いだった。
正紀は電気スタンドを手にすると、理恵の足もとに置いた。理恵の両脚は開かれていて、スタンドの笠の上部に開いた穴から放たれる光が、理恵の陰部を真下から照らしだした。
理恵は危うく悲鳴をあげそうになった。翳った香澄の顔に変化が起こったのだ。眉根に皺を寄せて、小鼻をピクピクさせ、今にも起きだしそうである。
ああ、神様……。
理恵の必死の願いが通じたのか、香澄はすぐにまた心地よさそうな寝息をたてはじめた。
しかし、その直後に理恵がもっとも恐れたことが起こった。
正紀は剥きだしになった淫裂のぬめりを筒先に塗りたくって、理恵にインサートの意志を伝えていたが、本当の狙いはアヌスホールにあった。茶褐色の濡れたすぼまりは、前のホールほど淫らな感じはしないけれども、いかにも可憐で、好奇心の強い少年には、絶好のターゲットといえた。
そこを正紀は不意討ちに襲ったのである。理恵は最初、バックスタイルに不馴れな少年が、間違った場所に挿入しようとしていると思い、痛みをこらえてヒップを振った。
だが、正紀はがっちりとヒップをかかえこんだまま、剛棒を無理やり肛門に押しこもうとした。亀頭によって、無数の皺々が左右に伸張し、半分ほどが肉路に食いこんだ。きつい分、快感も大きい。なおも一気に押した。
「うッ……」
理恵は必死で叫び声を押し殺した。目の前の香澄が目覚めたら、万事休すである。どんな弁明も許されないだろう。だから激痛に耐えた。額から脂汗が滲んだ。痛みはいっこうに去らなかった。
正紀は冠部分がスッポリとアヌスにおさまったところで、無理押しするのをやめた。快感が強烈なので、一気に爆発してしまう予感があったからだ。それでは面白くない。女の反応がどんなものか確かめるのが目的だから、無理は慎んだ。
受身の理恵にとってはさいわいだった。痛みが進行しなくなったばかりか、少しずつやわらいでいく。伸縮自在のアヌスの粘膜が、インサートされた太いものに対して、幾分とも馴れたせいである。ホッとひと息ついた理恵だったが、肛門に太いくさびを打ちこまれているから、体が自由に動かせない。ベッドに両肘をつき、ヒップを後方に突きだしたまま、後ろにへばりついた正紀の出方を待つしかなかった。
「うーん……」
香澄が呻き声をあげて寝がえりを打った。その拍子に掛布団の半分がずれて、片脚が剥きだしになった。ベビードールふうのネグリジェがまくれあがり、丸みのある尻の合わせめのあたりまでがのぞいた。Tバックのパンティがきっちりと食いこんでいて、後ろからでも陰唇のふくらみが垣間見える。
二人の女の似たような姿を同時に見たことで、正紀の興奮のボルテージは急激にあがった。彼は香澄を触るようなつもりで前に手を差しのべ、理恵の陰核をさぐった。
ヌレヌレの肉芽をいじられると、理恵は肛門の痛みを忘れて、そこから噴きあげる快感に身を揉んだ。その感じる姿を見て、正紀はようやく自信を持った。
理恵が五体をくねらせる。アヌスに挟まった肉棒が軋む。快感が生まれる。膣口から溢れた快液は、ポタポタとしたたってベッドの縁を濡らした。
陰核への攻撃をさらに強めた。正紀は指を駆使しながら、少しずつ抽送を試みた。
痛みに馴れた理恵は、快感をより多く取りこもうとして腰を揺さぶりはじめた。
陰核を弄んでいた指がスッポリと膣口におさまった。
「あああっ……」
思わず理恵がよがり声をあげると、香澄がまた大きく寝がえりを打った。
正紀は、危険な状態が性的興奮をもたらすことを知った。腰を使い、指を使うと、ペニスと指は女の薄い一枚の肉壁を通して擦れ合った。
肉壁を擦られたことで、理恵の肉体が妖しく踊った。
正紀は噴出を予感した。
二人は身も心も一つにして、押し流されそうな快感に耐えた。声を出せないのは地獄の苦しみに通じたが、それを耐え忍ぶことは被虐的な快感に繋がった。
「イクッ……」
押し殺した声には、圧倒されるような実感がこもっていた。
指が膣壁で締めつけられ、肉棒が肛門の括約筋で絞りあげられた。
理恵の五体に激しい痙攣が走り抜けたとき、正紀もたまらず、ドッと精液を秘めたる穴のなかに吐きだしていた。
【第八章 許されざる標的】
正紀は机の上に小さなハンカチをひろげた。縮れた毛が十数本入っている。先夜、理恵の股間から刈り取ってきたものである。
「恥毛をいただく代わりに、もう二度とあなたとセックスはしないよ」
そう言うと、理恵は何度も「約束してね」と涙を流して哀願したものだ。
それを見た正紀は、これ以上女を追いつめると、自分の身が危なくなるかもしれないと思った。窮鼠猫を噛む、という諺だってある。
正紀は、欲望が生じたときはオモチャを相手にすればいいと思った。オモチャとは、いうまでもなく市村香澄である。しかし香澄は、正紀にとって満足のいくオモチャではなかった。美少女には違いないが、自分より以前に何人かの男と性交渉を持っていたという点が、そもそも気に入らない。
身勝手かもしれないが、正紀に限らず多くの男性が女に抱く正直な気持ちである。やはり香澄は、その場限りのオモチャなのだ。
今度は誰にしようか……。
PTA名簿をパラパラとめくっていたとき、父から電話があった。
「夕食を外でしないか。話したいことがあるんだよ」
時間と場所を決めて電話を切った正紀は、ここ数日、父が落ち着きのない態度でいるのを見ていた。家で顔を合わせたときに言えばいいのにと思ったが、どうも話の内容はかなり重そうである。
いやな気分で出かけた。約束の場所は初めてだったが、恵比寿から中目黒へ抜ける通りに面している大きな鮨屋で、すぐにわかった。二階座敷へ通された正紀は、父と一緒にいる女を見て、やっぱりと納得した。ゴルフ練習場で父といた女だった父はすでに少し飲んでいた。そのせいか、家にいるときよりはるかに饒舌であった。
紹介された女は舞坂翔子と名乗った。舞坂姓は、亡くなった母方の遠い縁つづきのはずである。正紀がそれに気づいて父の顔を見ると、「うむ。お母さんとは、またいとこ同士の子になるのかな。ちょっと複雑なんだが、ほんのわずかばかり血筋が繋がってるのさ」
「そう。道理でどこかで見たような気がしたんだ」
正紀は、気品が漂う翔子をまともに見た。
「うれしいわ。少しでも覚えていてくれたなんて」
翔子もまたじっと正紀を見かえした。
「正紀は本当に覚えているのかなァ。実はこの人は、お前を何度も抱いたり背負ったりしたことがあるんだよ。しかし、それはまだ赤ん坊の頃なんだけどねえ……」
父がそんな否定的な言い方をすると、「いえ、正紀さんはお利口な赤ちゃんだったから……」
不意に翔子は声をつまらせた。涙こそ見せなかったが、その目は潤んでいるように正紀には見えた。
なぜ?……
正紀はそれに気づかないふりをして、箸を使った。
父が「お酒を頼んでくれないか」と翔子に言った。
翔子はすぐに立って部屋の外に出た。壁に『御用の方はこの釦を押してください』と明記してあって、呼び鈴らしいボタンがある。わざわざ出ていったのは、前もって父と打ち合わせがしてあったに違いないと正紀は思った。
「正紀、翔子さんをどう思う?」
「うん、綺麗な人だね」
「気持ちもやさしい人でね……」
父が何を言いたいのか、正紀にはよくわかっていた。だが、自分からそれを口には出さなかった。
女は表面はともかく、心のなかで何を思っているかわかったものではないという女性不信の念を、正紀は抱くようになっていた。
それに、まだ正紀の心のなかには、死んだ母の面影が生きていた。病弱ゆえに、あまり幸せではなかった母に代わって、別の女が家に入ってくるのは、不当に思えてならない。
単なる愛人なら許せる……そうだ、オモチャなら父に女が何人いようとかまわない……。
「周囲の人もすすめるし、あの人ならお前のお母さんとして充分やっていけると思うんだよ……だが、お父さんはお前が反対すれば考え直すことにする」
オモチャみたいな存在ならいいよ……。
そう言ったら、父はどんな顔をするだろうか。
「急だから……考えておくよ」
正紀はそれだけしか言わなかった。
「そうか。うむ、それでいいよ。さあ、もうこの話はよそう」
父がホッとして息をついたとき、まるでそれに合わせたように、翔子が仲居と一緒に入ってきた。
それからの父は御機嫌そのものだった。翔子はあまり飲めないらしく、小さな盃で二、三杯飲むと、ほころびた桜の花のように肌を染めてしまった。
無線で呼び寄せたタクシーに三人は同乗したが、祐天寺近くのマンションの前まで来ると、そこで翔子だけ先におりた。
「今夜はとても楽しかったわ。正紀さんに会えて本当によかった」


