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実母と義母 · 第4部

実母と義母 第4部 (4/5)
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「私専用の電話だから」

黄色いスカートをひるがえして去っていく貴美子を、手離したくないと思った。

家に帰ると、すでに母の陽子は帰っていた。お手伝いさんの作ってくれた食事は、綺麗に片づいている。やはり彼女が食べたらしい。

母は部屋から出てこない。

帰ってきたのがわかっているのに……。

啓太は、いつもの母と様子が違うと思いながら風呂に入った。

浴室に母の残り香が漂っていた。

ママが今までお風呂に入っていたんだ……。

啓太の胸がざわついた。突拍子もないように分身が勃起した。

さっきまであんなにやったのに……。

啓太は、貴美子も手離したくないが、母の陽子は、もっと深い意味で、つながりを断ちたくないと思った。

貴美子はセックスの相手として貴重な存在だと思う。

じゃあ、ママは何だろう?……セックス以外に何かあるのだろうか……。

啓太自身、そのへんのところがよくわからないのだが、母を貴美子と較べること自体が間違っている気がした。

啓太は下半身をごしごしと洗った。ママのところへ行こう……そういう気になっていた。貴美子の不浄なすべてをすっかり洗い落とさなければ、母に対して申しわけないと思った。

分身は洗われることでますます刺激を受け、天を突くほどに屹立した。

これなら充分に持続できそうだ……。

いつもの啓太なら、すぐに右手を使いだすところだが、いま放出してはもったいないと思い、どうにか耐えた。

啓太はいったん部屋に戻ると、下着もつけずに、頭からかぶるダブダブのパジャマを着た。裾がひろがっているから、ちょっとまくりあげるだけで下半身が露出する。脱ぐことだって簡単だ。

部屋から廊下に出ると、勃起が震えた。

ぼくの気持ちがストレートに表われている……。

両親の寝室のドアノブに手をかけた。鍵がかかっている。かつてないことである。母が内鍵をかけたとみえる。

ドアを軽くノックした、しかしシーンとして、物音ひとつしない。

「ママ……ママ……」

もう一度ドアを叩いた。前より強い力だったので、廊下にまで響いた。

しばらく中の気配をうかがったが、コトリとも音がしない。仕方なく静かに引きかえした。そうしたほうが得策だと思った。今ここで騒いだからといって、母は簡単にドアを開けてくれるとは思わない。貴美子によって充分な満足を得なかったら、若い啓太は、これほど物わかりがよかったかどうか。

部屋に引きかえしてベッドに引っくりかえると、昨夜のことや、先ほどの貴美子との激しいセックスが、生々しく想いだされた。

天地が引っくりかえるほどの体験したのに、こうして平然としていられるのが自分でも不思議だった。たった二日間で人間は変わるものなのか。いや、確かに変わった……と啓太は思う。なんだか、急に大人になったような気がする。女の体を知るということは、大人になる第一段階なのかもしれない。

聡一はぼくよりずっとずっと大人だった。その聡一に、ぼくは一歩、いや何歩も近づいたのだ……。

あれこれ思いを巡らせているうち、いつのまにか深い眠りにおちていた。

翌日、啓太は朝早くにかかってきた電話で起こされた。呼びに来たのは、お手伝いの小母さんだ。休日出勤なのだろうか。

今日は休みなのに……。

啓太はとっさに、これは母が仕掛けたことだと思った。

電話に出ると、聡一が思いもかけないことを早口でまくしたてた。

「貴美子が……松平貴美子が死んだ。いや、殺された」

啓太は、聡一がいたずら電話で自分をびっくりさせているのだと思った。

「なんだ、君か……馬鹿言わないでよ。せっかくよく眠ってたのに」

「いや、本当だ、嘘じゃない。今朝の新聞に出ている」

強い口調は、嘘を言っているふうではない。それに、確かに聡一は、ときどき冗談電話をかけてきたりするが、決してタチの悪い嘘は言わない。

「どうして? どうしてさ!」

啓太のびっくりした声に、朝食のテーブルに着いていた母と小母さんが、顔を見合わせたほどである。

「詳しいことはまだわからない。調べておくから、十時にいつもの喫茶店で」

「わかった」

電話を切ると、あわてて朝刊を見た。貴美子の顔写真が三面記事の一隅に載っている。--電話で呼びだされて、不審な男に刺された--そんな内容の簡単な記事である。

ぼくと別れて家に戻ってからのことだ……。

「どうかしたの」

母の陽子が、いつもと同じ口調で話しかけた。

「うん、ちょっと……」

「何かあったの?」

「別にたいしたことじゃないよ」

啓太は、お腹が空いていないと言って部屋に戻った。

夢を見ているような気分である。昨日あんなことがあったというのも、信じられない気分だ。

でも、ぼくと松平貴美子は確かに寝た……。

啓太は待ちきれない思いで九時半になると家を出た。喫茶店は隣町の広尾である。十分も歩くと着いてしまった。

休日のため開店は十時からである。すぐ近くの有栖川公園へ行った。禁止の立札があるにもかかわらず池で釣りをしている人、親子でランニングをしている者、幼児と一緒に鳩や雀に餌をやっている母親……みんないちように楽しそうである。

唐突な貴美子の死は、享楽をほしいままにした彼女に対する何らかの復讐ではないか、という気がしてならない。

十時ちょうどに喫茶店の前に戻ると、向こうから聡一がやってきた。いつもの聡一に似合わない深刻な表情だ。やっぱり電話の話は真実だと思い、貴美子が哀れでならなかった。

ふたりが顔を突き合わせるのを待っていたかのように、ブラインドがあがり、ドアの前に営業中の札がぶらさがった。従業員ではなく、オーナー夫人である。現役歌手の彼女の素顔は美しい。

うるさい女子大生たちは学校が休みなので誰も来ない。ふたりは、いつも女子大生たちに占領されている大テーブルについた。

聡一の話によると、貴美子は、彼女を追いまわしている若いホストに電話で呼びだされ、殺されたということであった。

「彼女は遊びに徹していたからな。でも、夢中になる男は多かった。何しろ若いし、美人だし、わりと言いなりになるし。それに、なんといっても名門だからな。そう言っちゃなんだけど、貧乏な奴ほど夢中になったよ。金と性欲でね」

しかし、すべてを話し終えると、聡一は案外さっぱりした顔になった。啓太が冷静だったからだ。

「責任感じたから、別の女の子を紹介するよ」

啓太はあわてて手を振った。もうたくさんだよ、という意思表示だったが、聡一は、すでに話はつけとあると言う。

「だって、いくらなんでも……」

啓太は、貴美子の死にこだわった。

「じゃ、死ぬまで貴美子のことを気にしていられるかい? いや、一年間でも喪に服していられるかい? 早く忘れるにこしたことはないさ。それには別の女とつき合うのが一番いいと思うよ。ところで、今日紹介する女というのは……」

「え! 今日だって……」

啓太の驚きを無視して、聡一は話をつづけた。

服部由紀という二十一歳の私立学生が、啓太の次なる仮の恋人だった。とうにバージンを失っているから、その点で深刻に考える必要は何もない。聡一はそう言った。

啓太には、有名校の女生徒が、いったいどのようにして処女でなくなるのかが、どうもよくわからない。

「体はまだできていないよ。二十一歳だから無理ないけど、ともかく、やってやれないことはない。年が若いから、初めはとやかく反発するだろうけど、一発やってしまえば、あとはどうにでもなるさ」

でも、ぼくのママはかたくなに拒むつもりでいるよ……。

そう言って、これまでのいきさつを相談したい気もしたが、ともかく母とのことは永遠の秘密なのだと心に固く戒めた。

「本当はお母さんとドライブ旅行じゃなかったの?」

「そのはずだったんだけど、ママに急な仕事が入ってさ、帰りは午前さま。まだママは寝てる」

「じゃあ、今日こそ一緒に来てよ」

「だめだ。昨日の分、今日は取りかえさないとね」

聡一の意味ありげな笑いを、啓太は自分なりに理解した。

聡一は帰宅すると、義理のお母さんのベッドにもぐりこむのだろう。いや、お義母さんのほうから誘うのかもしれない。二十七歳のママと二十一歳の彼は、いったいどんなセックスをするのだろう……。

啓太は聡一と別れると、家まで駆けていった。お手伝いさんがいても、自分の切ない想いを遂げるつもりになっていた。

ところが、帰宅すると、母も小母さんもいない。置手紙だけがテーブルの上にひっそりと載っていた。

《小母さんと出かけます。遅くなります》

ただそれだけである。啓太は無性に腹がたってきた。

ようし……。

啓太の怒りは欲情に変わった。それを、まだ見ぬ服部由紀という学生に向けた。聡一は、バージンじゃないからその点は深刻に考えることはないと言ってたし、やってやれないことはないとも言った。

とことんやってやるぞ……と、啓太は早くも勃起した分身をズボンの上から握りしめて、聡一が決めてくれた時間のくるのを苛々と待った。

服部由紀と待ち合わせの場所に、啓太は十分前に行った。時間も場所も一方的に決めてくれたのは聡一である。

聡一は別れ際に、半分に千切ったらしい写真を渡した。二十一歳というだけあって、まだ初々しい。

啓太は、本当にこんな可愛い女の子が男の猛々しいものを受け入れたのだろうか……と、まず疑念を持った。しかし、聡一は断言した。処女はとうに失っているということを。

ひょっとして、由紀もまた、死んだ貴美子と同じように聡一と寝たのではないかとも思った。それならそれで気が楽である。

約束の三時ちょうどに、写真そっくりの可愛い女の子が、麻布十番商店街の入口付近にある、銀行の前にやってきた。二十一歳という年齢にふさわしく、体は華奢である。

胴がスポッと抜けているずん胴型のグリーンのワンピースが、とてもよく似合う。白いソックスと赤い靴が、すらりと細い脚にマッチしている。全体的に身長が特別あるほどではない。一メートル五十六、七センチほどか。

啓太がこの子だろうと思って写真の切れ端と身較べていると、すぐに笑顔を浮かべて歩み寄ってきた。

「私、服部由紀です」

なんの疑問もなくストレートに頭をさげた。

「じゃあ、やっぱり……」

啓太は冷汗をかきながら姓名を名乗った。

「あら……」

由紀は、すぐに啓太の手にした写真に気づいた。

「この隣りには加山さんが写っているの」

やっぱり聡一だったか……。

啓太は、ひょっとして聡一はこの子と別れたがって自分に押しつけたのではないか、と疑った。

「加山さん、破くなんてひどいわ」

由紀は、啓太からその写真をひったくるように取ると、ビリビリと引き裂いて路上にばらまいた。案外、気の強い子かもしれない。

啓太は由紀の意志を尊重するように、これからどこへ行こうかと聞いてみた。

「とにかくお茶でも飲みましょうよ」

ませた口調でそう言うと、由紀は先に立って歩きだした。

啓太は由紀の細い後ろ姿を見ながら、この子が本当に男に抱かれるのだろうか、と首をかしげた。

喫茶店で、ふたりはお互いに家庭のことなどを交互にしゃべり合った。驚いたことに、由紀の父親は高名な作家であった。啓太は、父親をテレビで何度か見ている。

「でも、ママは二度目のママ……私の本当のママじゃないの」

そのときだけ、活発な二十一歳の由紀は淋しそうな顔をした。

聡一もこの子も、家庭的には恵まれない人種なんだ。だから通常でない生き方をするのかもしれない……。

ふと、そんなことを考えた啓太だったが、自分はどうなんだ!……と自問自答すると、頭が混乱するのだった。

自分は何ひとつ不自由のない家庭で育ちながら、とんでもないことをしでかしているではないか……。

啓太はあわてて自分自身に対する言いわけを探した。

そうだ、ママの淋しさをぼくが慰めているんだ……。

「ねえ、何考えてるの?」

冷んやりした由紀の手が頬を撫でたので、啓太は我にかえった。

「いや、別に……」

「ウソ! 退屈なら帰るわ」

由紀の声はきつかった。

「そんなことないよ。ごめん」

「本当に謝る?」

「もちろん、謝る」

「じゃ、許してあげる」

そう言うと、由紀があどけなく笑った。啓太は、ひょっとしてぼくは気に入られたのかもしれない……と少し気持ちを楽にした。

「何時までに帰ればいいの?」

「別に決まってないけど……でも、初めて会ったんだから、そうねえ、九時ぐらいまでならいいわ」

夕方頃と言われると思っていた啓太は、心の内でしめたと叫んだ。それだけ時間があれば、聡一の言ったように、できるかもしれない。

しかし、どこでやればいいのか?……ラブホテルなど行ったことがないからわからない。貴美子のときのように、由紀にアジトなどあるわけがない。公園の暗がりか……。

「ねえ、あなたの家に行ってみたいわ」

由紀の声に救われたように、啓太はうなずいた。このときだけは、母の不在を感謝した。しかも、置手紙には帰りは遅いと書いてあったから、由紀の言う九時ぐらいまでなら、きっと帰らないだろうと推測した。

麻布十番から啓太の家までは近い。ぶらぶらと暗闇坂を登って十分ほどで到着した。

「ずいぶんクラシックなのねえ」

由紀は感心したようだった。啓太はちょっと誇らしい気持ちになった。以前は、古い家とか旧家とか言われるのがいやでならなかったが、数年前頃から雑誌のグラビアで紹介されたり、テレビのブラウン管に古い家などが映しだされたりするようになって以来、こういう我が家も貴重なのだと思うように変わってきていた。

もっとも、内部は一部分改装されて、使いやすくなっている。台所や浴室、啓太の部屋など、その最たるものであった。

由紀は男の兄弟がないこともあってか、啓太の部屋をもの珍しそうに見渡した。

「まあ、座りなよ」

啓太の声にうながされて由紀が座った場所は、ベッドの端である。

意外と無警戒なんだ……。

啓太は、このままスッと寄り添ってキスをしても、由紀なら受け入れてくれそうな気がした。

「ねえ、何か飲む?」

「ビールにするわ」

そう言って、由紀は舌を出した。

「ほんとに!」

啓太はビールを口にしたことがあるが、胃の中に流しこんだことはない。どうしてこんなににがいものを大人たちは飲むのだろう、と思っている。

台所からビールを持ってくると、由紀はコップに注いでひと息に飲んでしまった。

コップをかえされた啓太は、馬鹿にされないために飲むことにした。

ビールを注いで、由紀がじっと啓太を見つめている。勇気をはかっているかのようだ。

啓太は平然と飲んだ。途中でよほど吐きだそうかとも思ってみたが、由紀の光る目を見ると、やはり無理をしてしまった。

胃の中がカーッと熱い。すぐに頭がポーッとした。

「気に入ったわ」

中瓶だったので、ふたりはもう半分ずつ分けて飲んだ。

「ふふふ、赤くなった」

由紀自身も少し頬を染めている。とても可愛いと思った。そう思うと、下腹部がいっぺんに膨張した。

啓太はベッドに並んで座ると、思いきってキスをした。アルコールのせいもあったし、相手が自分よりふたつも年下だという気やすさもあった。

由紀はすぐに応えてくれた。ぬるっとした舌が、啓太の口に押しこまれてくる。実際のところ、啓太はろくにキスの仕方もわからない。ただ単純に唇を重ねるだけだと思っていたから、びっくりした。

由紀の舌は乳くさい匂いがした。それに少し甘い。

由紀は舌で歯茎を舐めまわし、啓太の舌にからめてくる。啓太は酔ったようになった。キスがどうしてこんなにいいのだろう、と思われるほど快い。

啓太は官能の炎に包まれていく自分を感じた。どう対処していいかわからないので、ともかく舌を突きだした。由紀の舌が引っこむ。今度は啓太の舌が由紀の口腔に押し入った。目茶苦茶にかきまわした。

「ふう……」

由紀が深い吐息をついて、苦しそうに顔を振り、舌が外に出た。

もう啓太の体には、止めることのできない勢いがついてしまっていた。夢中で由紀を抱き寄せ、押し倒した。いつの間にか、手が服の上から由紀の乳房を撫でていた。ずいぶん小さいな……と思ったのも束の間、啓太の頬は強い力で張られていた。ひるんだ啓太の目に、怖い顔をして睨みつけている由紀の顔が映った。険しい表情で、もう一度、啓太の頬を張った。

「やっぱりそうなのね。あなたと加山さんはグルだったのね」

少女の声は厳しかった。すぐに由紀はさっと立ちあがると、軽蔑したように啓太を見おろした。

啓太は怪訝な顔をしてベッドに座り直した。グルという意味がわからない。聡一から特別なことは何ひとつ指示されていないから、心外であった。

「とぼけても駄目よ」

由紀の声は相変わらず厳しい。

「何言ってるのさ」

気押されたように啓太が言った。

「グルってどういうことだよ」

「ほんとにとぼけるのがうまいんだから……私はね、加山さんが私と別れたがっていることはわかっているのよ。あの人、あなたに、私をやっちゃえってけしかけたはずよ。それを口実にして、私と別れるつもりなんだわ。図星でしょ!」

「いや……」

それは違うと言おうとしたが、あえて口に出さなかった。

そういうことなら、聡一の奴、初めから相談してくれればよかったのに……。

啓太は素早く頭の中で計算した。

聡一がそういうつもりなら、彼のために今こそひとはだ脱ぐべきだ。それには、聡一が望んでいるように、目の前の由紀を犯すに限る。

由紀は部屋から出ていこうとしていた。啓太は、このときとばかり迅速に行動した。

「おい、待てよ」

言葉よりも先に体が動いた。パッと由紀に飛びかかると、ものすごい勢いで彼女の手を振りまわした。

気は強くても、体力のない少女である。ものの見事にベッドの上に引っくりかえってしまった。

ワンピースのスカートが大輪の花のようにパーッとひろがり、黄色のパンティが丸見えになった。グリーンの服に黄色の取り合わせだから、色が鮮やかである。

「何するの! バカ!」

スカートの裾を押さえながら、由紀が白い目で見た。

「先に殴ったじゃないか」

「エッチなことするからよ」

口では負けそうである。

「お返ししてやる」

啓太は思いきって、由紀の頬を打った。手加減したつもりだが、ずいぶんと派手な音がした。殴った本人がハッとしたほどだ。

「言いつけてやる! パパやママに言いつけてやる!」

啓太は、これは大変なことになると直感した。何しろ由紀の父は高名な作家である。

どうしよう!……そうだ、ここまできたら中途半端に終わらせないことだ。自分のためにも、聡一のためにも、とことん由紀を犯すしかない!……

犯された二十一歳の女の子が、堂々と真実を語れるものではない。秘密にしておきたいと思うはずだ。啓太はそれに賭けた。

「言いたかったら言え! 君はもちろんのこと、君のパパやママだって、世間の恥さらしになるからな!」

由紀の表情に怯えが走った。啓太は、自分の考えが間違っていないと確信した。それにはまず実行あるのみである。由紀を犯したという事実をつくらなければならない。

啓太はダイビングするように由紀の上に身を躍らせた。

前開きのボタンをはずそうとすると、由紀が暴れた。啓太はもう一度、今度は思いきり引っぱたいた。由紀が恐怖の表情で啓太を見た。両手を胸の上で祈るように合わせている。

ここで思いとどまったら負けだ。啓太は心を鬼にして素早くボタンをはずし、上衣の部分を肩からすっぽりと落としてしまった。

透き通るようなスリップの下に、黄色いブラジャーが見える。胸の盛りあがりは小さい。

しかし、啓太は興奮した。母とも貴美子とも違う幼い肉体だ。

スカートの部分を足もとから引き抜こうとしたとき、由紀が蹴りあげた。またもパンティがチラッと見えたが、蹴られた啓太は、もんどり打ってフロアに倒れた。

由紀が立ちあがって逃げだそうとした。とっさに足で払うと、由紀もフロアに倒れこんだ。手加減せずに、強引に衣服を足もとから引き抜いた。

「いや……やめて! やめて!」

由紀が泣きわめいて、起きあがろうとした。啓太は馬乗りになり、スリップの紐とブラジャーの紐を一緒くたにして、肩から抜いてしまった。

盛りあがりの少ない小さな乳房だったが、それだけに妙な色気があり、啓太の目を刺激せずにはおかない。

つかむという感じではなく、掌で乳房全体を擦るようにすると、由紀は全身をのけ反らせて、激しく首を振った。すぐに掌に突きでた乳首が当たる。啓太は、意外な結果に目を丸くした。明らかに感じている素振りだ。

「いや……いやァ……やめて!」

口ではそう言っている。しかし啓太はもう一方の乳房に舌を這わせた。

「あっ、いやァン……イヤァ……」

切なく応えて甘ったるい声を出す。体から急に力が抜けていくのがよくわかる。

次第に、首の振り方や声の出し方、反抗する仕方、すべてが頼りなくなってきている。それでも、ときどき思いだしたように、意外な力で啓太を押し戻そうとする。

油断はできないぞ……。

啓太はできるだけ体重をかけながら、掌と舌で乳房への愛撫をつづけた。舌にはっきりと突きでた乳首の感触が伝わり、由紀の呼吸はせわしなくなっていく。どこから匂ってくるのかわからないが、ひどくミルクくさい。だが不快ではなかった。

啓太は自分のこわばりを、ズボンを通して由紀の股間のぼってりと膨らんだあたりに押しつけた。それだけで充分に気持ちがいい。

「いやァ!……やめてェ……」

由紀が身をくねらせると、こわばりが刺激されて、今にも爆発しそうである。

啓太はいつもの余裕を失っていた。とにもかくにも、まず初めの一発を、由紀の体の奥に放たなければならない。既成事実をつくってから、何回でもゆっくり抱こうという気になっている。

そのうち、由紀の体がふやけたように動かなくなってしまった。顔は真っ赤である。

そっと乳房を解放した。掌の跡がくっきりとついている。乳首は薄いピンク色で、とても小さくて可愛らしい。こんなものでも女は感じるのかと、ひとしきり感心した。あとの狙いは下半身である。

啓太は、由紀の反応をしっかり見つめながら、スリップをまくりあげた。

黄色いパンティの中心に、黒い翳りがほんのりと見える。啓太がびっくりしたのは、その面積の広さである。中心の広い範囲にわたって黒い影が浮きでている。

ママのより多いな……。

それが第一印象である。

スーッと脱がしていいものか……できるだけ穏やかにことを運びたい……。

啓太は掌全体で、恥丘の盛りあがったふくらみを覆った。

ぴくりと由紀が動いた。布地を通して恥毛のさやさやした感触が伝わってくる。

そっと全体を揉んだ。白い由紀の喉がスーッとひきつる。下にのびた指先を微妙に動かして、亀裂と思われるあたりを押した。

あっと思った。パンティの布地に、ぬるっとしたものが染みたのだ。

今度はそのまま上下に軽く擦る。

「あ……ああああン……ハァン……」

腰がひくつき、顔が苦しそうに二度三度と左右に揺れた。

もうこっちのものだ……。

小躍りしたい気持ちを抑えて、ともかく相手をその気にさせようと、ソフトに、そして慎重に指を動かし、掌で圧迫した。パンティのぬるついた染みが、次第に大きくひろがった。

もういいだろう……。

啓太はパンティの上にあった手を、そのままパンティの下に差しこんだ。しっとり潤った恥毛に触れたのはほんの一瞬で、たちまちはねのけられていた。どこにそんな力がひそんでいるのかわからない。

「いやよッ、絶対にいやッ!」

しっかりした声である。

啓太は若かった。カーッとなってしまい、納得ずくという方法を忘れてしまった。やにわにパンティを引き剥がそうとした。

「何よ、いやッ、いやーッ!」

死んだようになっていた由紀が、また反撃した。

パンティが引き裂かれ、破れたところから少女の女陰が現われた。とても二十一歳のものとは思われない飾り毛の多さである。まさに女陰という感じであった。その淫らさが、啓太をさらに興奮させた。その上に怒りが加わったから、もう完全な暴力である。

由紀の太腿を無理やりこじ開けた。両脚を突っ張って暴れる。遠慮なく太腿をつねった。

「ヒィーッ」

由紀は悲鳴をあげ、体から力を抜いた。顔全体を由紀の秘唇の上にかぶせ、ともかく濡れているところを舐めまくった。そこはすでに愛液でドロドロになっていた。濃厚な蜜を音をたてて吸うと、由紀の幼い腰が小気味よく跳ねる。

毛深い奥に、ほんの米粒ほどの皮をかぶった突起があった。それを舌全体でざらっと舐めてみた。また由紀が腰を持ちあげる。かなり感じやすい体質のようだ。

啓太は粘膜をひろげた。母や貴美子のように、肉のビラビラがあまりない。ぽってりとした肉そのものをひろげたという感じである。小さなホールであった。ピンク色で子供っぽい。それなのに恥毛だけが黒々としている。まったく卑猥な光景だ。

もう余裕はない。啓太はせっかちにズボンからこわばりを引きだした。勃起は自身の吐きだした露でベトベトに濡れている。そのまま女陰に近づけた。

気配を察して、またも由紀が暴れた。啓太は由紀の内腿の柔らかい肉を、思いきりつねった。悲鳴があがり、由紀はすっかりおとなしくなってしまった。

「今、入れてやるからな」

さんざん手こずらされた腹いせもあって、啓太は憎々しげに言い放つと、それこそ一気に膣口に硬いこわばりを沈めた。反射的に由紀が腰をあげた。

黒々とした恥毛の奥に、啓太のこわばりが沈んだ。かなりの抵抗感があったが、ふたりの呼吸が一致したので、呆気ないくらいである。

啓太は苦笑した。由紀の腰が逃げていくと思ったのに、予想に反して突きだしてきたからだ。

さんざん焦らされていたため、啓太の噴出はすぐにやってきた。

ともかく一度は終わった……。

啓太は放出したあと、いつまでも乳房にとりついていた。思惑どおり、萎えかけた肉棒は、由紀の胎内に潜ったまま、またもぐんぐん膨張した。

今度こそゆっくりやってやる……。

そのとき、すすり泣きが聞こえた。由紀が泣いたのだ。

今頃、口惜し涙を流したって遅いっていうもんだ。よし、それなら……。

啓太は用心深く腰を使った。五分、十分、じっと我慢するしかない。そのうちにすすり泣きの声がやみ、荒い息づかいがしだした。

肉棒の動きはとても円滑に行なわれた。

トロトロと肉棒に浴びせられる生温かい愛液が、啓太には、はっきりとわかった。由紀の手が、啓太の腰肉をすごい力でつかんだ。急激に膣の中が収縮する。

「ああ……困るゥ……私……あああ、いや、いやいやいやァーッ!」

叫びながら由紀が悶え狂った。そして、一本の棒になった。

啓太はこのときとばかりに、したたかに精を放った。

啓太は、わざと裸のままガウンを羽織り、玄関口に由紀を送った。そこへ行くまで、啓太は強制的に由紀に陰茎を握らせた。

靴を履いた由紀に向かって啓太はガウンを脱ぐと、硬くなった肉棒に、黄色いパンティを巻きつけた。

由紀は顔をくしゃくしゃにしたまま飛びでていった。

第七章 ママとするのが最高……

外出先からタクシーに乗って戻ってきた陽子は、支払いをすませ、古い格子戸造りの門を開けて、玄関先までつづく敷石を踏んだ。

十年ほど前から近くにあった旧家はほとんど姿を消し、代わりに、コートとかヴィラとか名づけたマンションが建つようになり、今この界隈に残っている古くからの家は、西田家くらいのものである。

玄関の明りが、ほんのりとあたりを照らしている。

家の中で息子の啓太といることに気づまりを感じ、外出したのだが、陽子は大好きな芝居を観ても心はそぞろだった。

孤独に耐えきれずについ、自分のもっとも恥ずかしい姿を我が子に覗き見されてしまったことが原因で、啓太を挑発した結果となり、あげくには人の道にはずれた母子相姦という恐ろしい行為を犯してしまった。いくら悔やんでも悔やみきれるものではない。

あの日以来、つとめて平静を保ち、啓太に対しても以前と同様に振舞っているものの、心中は決して穏やかではない。

夫はまだ出張中である。お手伝いさんがいてくれれば、会話にかまけて啓太を気にすることもないが、息子とふたりきりになると気が重い。さいわい、あれ以来、啓太は何も求めてこないものの、あの子の心の内がわからないだけに不気味である。

仲のよかった母子の間に、埋めきれない深い溝ができてしまった。陽子は悲しい思いにさらされていた。あまりにも決定的な事実ゆえ、修復できない母子関係を思うと、心やすまらぬ日々の連続だったのである。

そんな思いでいる陽子が、玄関戸を開けようと合鍵をハンドバッグから取りだしたとき、まったく不意に家の中から人が飛びだしてきた。

「?…………」

一度も見かけたことのない若い娘だ。顔が涙でくしゃくしゃに濡れている。

ふたりは出会いがしらにぶつかった。相手は小柄だが、あまりに勢いがよかったので、大きな陽子が倒れかかったほどだ。

開け放たれた戸の向こうに、裸同然の啓太が立っている。陽子は一瞬のうちに、家の中で何が起こったかを悟った。

少女は、ほんのいっときたじろいだように陽子を見たが、すぐに後ろも見ずに走り去ろうとした。

「待って!」

陽子は夢中で後を追った。事情は確かめなくともわかっている。このまま少女を帰してしまったら、大変なことになりそうな予感がした。

啓太は部屋に引きこもって、由紀とのことを思いだしていた。

確かに初めはすごくいやがった。しかし、最後には自分の言いなりになったではないか。あんなにいい感じになって、反抗などしなかったではないか……。

啓太に、由紀の年頃の少女の心理がよく理解できるはずがない。由紀はその点で、やはりごく普通の女の子でしかなかった。

由紀は、啓太の前に屈服したことが、無性に口惜しくてならなかった。啓太に抱かれてあられもない声を出したことは、自分と加山聡一の間の決定的な別離を意味すると思うと、自分に腹が立った。そして、啓太を憎んだ。何もかもが自分に不利な状況になったことを知って、投げやりな気持ちになった。

服を着終わるのを、啓太が勝ち誇った表情でニヤニヤ見ているのに気づき、急に涙が出てきた。いったん堰を切ったように涙が流れだすと、まるで同調するように悲しい声が出た。

「みんなに言いつけてやるから!」

由紀は思いきり啓太の頬を張った。まだ下着しか身につけていない啓太が、また笑った。

「あんなにいい声を出してたじゃないか。これからは、ぼくの女になりなよ」

ひどく打ちのめされた由紀は、玄関先に飛びだし、そこで陽子とでくわしたのだ。

ママが帰ってきたのはまずかった。今頃ふたりは何をしているのだろう……。

啓太は落ちつかない気持ちで、母の帰るのを待った。三十分がすぎ、一時間がたった。啓太はいつのまにかウトウトした。

何かの気配で目覚めたとき、目の前に母が立っていた。部屋の中は明りが消えているので表情は定かでないが、泣いているようであった。廊下から射しこむ暗い光が、沈黙しているふたりを包んでいた。

「ママ、死にたい……」

それが母の第一声だった。

再び沈黙が母と子をくるんだ。

母が戻ってこない間は、さんざん自分を正当化しようとしていた啓太だったが、母の悲しい声を聞くと、すごく申しわけない気がした。母の泣いた顔を見たくなかった。その原因が自分にあるから、なおさらである。

「啓ちゃんはすっかり変わってしまったわ。私の希望だったのに……」

母はそれだけ言うのがやっとのように、あとは嗚咽してしまった。そして、くるりと背を向けると、小走りに部屋を出ていった。

ママの希望の星だったぼくは、悪魔の子に変身してしまった……。

啓太には母の気持ちがよくわかるような気がした。

小さい頃から、ママは何をするにもぼく中心だった。それは学生になり、大学生になった今でもずっとつづいている。そのことは、ぼくが一番よく知っている。それなのに、ぼくの体の中では、異性に対する恐ろしいまでの興味が支配して、最大限にまで膨れあがってしまった。ぼくはそれをよく知っているのに、興味や好奇心を自分から追い払うことができない。でもママ、これはぼくだけじゃない。ぼくと同じ年頃の男の子なら、誰でもぼくと同じ悩みを持っていることなんだ……。

啓太は心の内で母に詫びた。でも自分はやはり今までと同じように、女の子に対する興味は失わないだろうと思うのだった。

その夜、啓太と陽子は顔を合わせることがなかった。

翌朝も啓太は母の顔を見なかった。いや、起きたときには、すでに母の姿は見当たらなかった。

通いのお手伝いさんは、いつもの調子で屈託なく話しかけてくる。

「ママは?」

「さあ、知りませんよ。こんなに早くからどこに行ったんですかねえ」

まるで他人事のようである。

学校で啓太は、聡一に昨日のことを報告した。

「由紀から何も言ってこないところをみると、うまくいった、ということになるかな。もしそうなら、近いうちに新しい女の子を紹介するよ」

「うん。でも……」

啓太は、そろそろ大学に向けての勉強があるから、しばらくは女の子はいらないと、やんわりと断った。

「それもそうだな」

聡一はあっさり了承した。こういうことにかけては、加山聡一はなかなかスマートで、ある意味では大人の感覚を持っている。

だからこそ、ぼくは彼を好きなのかもしれないな……と啓太は思った。

聡一と一緒に、いつもの広尾にある喫茶店に立ち寄った。

お嬢さん大学の女子大生がウヨウヨしている。啓太は、彼女たちのかもしだす匂いに圧倒され、密かに欲情した。

「あんまり変な目で女を見るなよ」

聡一にたしなめられたほどである。

聡一と別れ、ひとりになって家へ帰る道すがら、啓太は家の近くにしゃがみこんでいる女学生の姿を見て、ドキンとした。

由紀が待ち伏せしていたかと思ったが、近づいてよく見ると、似ても似つかぬ平凡な顔だちの少女だった。その少女は、生垣の小さな花についている虫を観察しているふうであった。啓太に気づいて振りかえった少女は、ちょっとはにかんだ笑いを浮かべた。

しゃがみこんだスカートの奥に、白い内腿が見える。啓太はぎごちなく笑いかえしたものの、ズボンの中では、早くも分身がグングン大きくなってきていた。

少女は、すぐに警戒した目つきになって立ちあがった。

勃起に気づいたわけではない。啓太の笑いと、そのあとの険しい表情に、少女らしく反応したものとみえる。

啓太はあわてて門をくぐった。

「お帰りなさい」

迎えに出たのは、意外にも母の陽子である。いや、かつてはそれがごく普通の日常だったのだが、ふたりの間に共通の秘密ができて以来、啓太を迎えるのはいつもお手伝いさんになっていた。

「昨日のことなんだけど……」

母が玄関先で話を切りだすなど、滅多にないことである。

「…………」

啓太は少しあらたまった顔で陽子を見た。

「話はすべてつけてあるわ。もう心配しなくていいの。勉強に精を出してね」

陽子はそれだけ言うと、台所のほうへ行ってしまった。そして向こうでは、すぐにお手伝いさんとの間で賑やかな会話がはじまった。

正直なところ、啓太はほっとした。同時に母に対して感謝した。

あれから追いかけて行って、由紀との間でどんな会話がなされたか、まったく見当がつかない。ひょっとして、今朝早く出かけたのも、それに関係があるのかもしれない。

夕食の時間になると、部屋まで母がやってきた。勉強に夢中になっていた啓太は、母の甘い匂いに安心した。

ママはぼくの人生の潤滑剤みたいなものかもしれない……。

啓太は、母がいなければ、自分ひとりでは何もできないのではないかと思った。そんな母を悲しませたくないと思うのだが、その反面、ママは犠牲になるのを喜びとしているのではないか、という気もする。

非常に都合のいい自分勝手な少年の解釈だが、実際、陽子にはそういう自己犠牲の精神があることも事実なのだ。啓太は少年らしい嗅覚の鋭さで、そのことに気づいていた。やはり、そこは血のつながった母子というものであろう。

ふたりきりの夕食だったが、陽子はいつもよりはるかに饒舌であった。啓太はいつしか、自分が不肖の息子であることを忘れていた。

ブランデーを飲んだ母の顔は、ほんのりと朱が浮いて、とても綺麗だ。その陽子の顔に、父に責められて苦悶する顔が重なった。

いや、あれは苦しんでいるのじゃなく、歓んでいる顔なんだ……。

啓太の心の奥で、悪魔の声がした。

啓太は息苦しさを覚えた。母と同席していることが耐えられなくなっていた。

「どうしたの?」

優しい母の目は、ほんのり潤んでいる。

「いや、パパはいつ頃帰ってくるの?」

「テレビのお仕事は、予定が延びることはあっても、短くなることはないんでしょう」

ふたりは同時に、壁に貼ってあるテレビ局のカレンダーを見た。啓造がよくレポーターに起用する美人キャスターの顔が、母と子に向かって微笑を投げかけている。

この女が、パパの恋人と騒がれたことがあったんだ……。

啓太は、学園時代に起きた父とキャスターのスキャンダルを思いだし、だからインポになったのさ……と心の内で呟いた。

夕食が終わると、啓太はまた、勉強にとりかかった。なんだかすごくはかどるような気がする。

途中、喉が渇いたので台所に入ると、もう母の姿はない。浴室で湯を使う音がした。

その音を聞いた途端、それまでの啓太の平衡感覚が、一瞬のうちに失われた。まるで悪魔に操られるように、啓太の足は浴室に向かった。

脱衣室のドアがほんの少し開いている。啓太はそこにへばりついて覗いた。

浴室のガラス戸に湯気がかかり、かすかに母の白い裸身が映っている。シャワーを浴びているらしい。丸みを帯びたヒップの部分だけが、やけにはっきり見える。

啓太の体内の血が早くも妖しくざわめき、急激に海綿体が膨らんだ。

母の陽子は、啓太が願ったように、今度はガラス戸のほうを向いた。啓太の目が下半身に張りついた。

黒い縮れ毛がほんのり浮いて見える。啓太は勃起を握りしめた。

これがあの黒い茂みを分け入って、もっと奥の熱い割れ目に入ったんだ……。

そのときの強烈な印象が、頭の中に鮮明に復元された。

ママはあのときからぼくのものだ……。

啓太の心も体も、もう引きかえすことのできないところまできていた。啓太は足音を殺してその場を離れた。そのときにはもう、啓太の心はある決意で固まっていた。

陽子はバスタオルを体に二重に巻き、バスローブを羽織って部屋に戻ってきた。ほどよく酔いがまわって、体は快いけだるさにくるまれている。

ドアに内鍵をかけ、バスローブを脱ぎ捨てた。三面鏡の前のスツールに座ると、化粧水で軽く肌を整えた。

陽子は決して自惚れの強いほうではないが、自分はまだ充分に美しいという自覚を持っている。だけど、夫はこの体を愛してくれることができない……。

陽子は、二重に巻いたバスタオルをはずした。それまでバスタオルに包みこまれていた香気が、パーッと室内に漂った。

陽子は見事な裸身を恨めしく眺めた。いっそのこと、二十も三十もいっぺんに老けたなら、こんなにも本能を意識せずにすむのに……という思いに駆られる。

そっと乳房に手をやった。それだけで血がざわざわと騒ぎたてる。

「ああ、あなた……」

遠い異国の地にいる夫の手を借りたかった。何もかも委ねて、どんな方法でもいいから愛してもらいたかった。

いったい、自分はいつ愛されたのだろう?……

記憶の糸をたどって、陽子は愕然とした。

愛されたのは、ほんの数日前ではないか……。

にわかに啓太の若々しい肉体が瞼の裏側に浮かんだ。

なんということを!……

陽子はあわてて我が子の幻影を追い払い、淫らな妄想を必死で断ち切ると、三面鏡の前を離れた。素肌の上にネグリジェを羽織ろうとしたとき、陽子は我が目を疑った。追い払ったはずの幻影が、現実の姿となってカーテンの後ろで立っていた。

「啓ちゃん……」

声にはならなかった。唇の間から、呻くような空気となってもれただけである。

「ママ」

啓太は、それまでの一連の母の仕草で、すっかり興奮させられていた。ダブダブのパジャマの前は、見事にテントを張っている。

陽子は不意の息子の出現に仰天して、言うべき言葉を失った。しかし、見た目にも明らかなように、我が子の体は、あからさまに欲情を表わしていた。

「いけないわ……」

息子の次なる行動を予知したように、ようやくかすれた声を出した。

「ママ……ママ……」

その言葉しか知らないかのように繰りかえしながら、啓太が近寄ってくる。それでも金縛りにあったように陽子の足は動かない。三面鏡の前に立った陽子の欲情は、明らかに高まりつつあった。欲情は、息子の不意の出現にもかかわらず、なかなか消滅しようとはしなかった。いや、逆に、我が子のそそり立つ肉棒を見たことによって、少なくとも体は火をつけられていた。

ただ、気持ちのほうはまだ母親らしさを失っていない。かろうじて陽子はとどまっていた。ほんの一瞬だけ、あの硬いもので疼いた箇所を突き刺してもらえたなら……という邪念の気持ちが起きたものの、それはたちまちプライドと理性によって、駆逐されていた。

それでも気持ちと肉体はまったく別の生き物である。頭の中ではよく理解しているつもりのことが、体では承服できないでいる。

「いけないの……ね、啓ちゃん。あのことはもう忘れるの」

言っている陽子こそ、一度の母子相姦にこだわっていたというべきだろう。

啓太がすぐ目の前までやってきた。陽子は少し両手を前に突きだした。それは女としての本能であったが、そこには、陽子の強い拒絶の姿勢が何も感じられなかった。

啓太が突きだした母の手をたぐり寄せる。陽子の体は意志のない人形のように、前のめりなって啓太にぶつかった。啓太の鼻孔にいい匂いが流れこみ、肺の中にまで染み渡った。

「駄目……」

その声も、義務的な響きがこめられていただけで、強固たる意志に欠けていた。

啓太の体に、男の本能を剥きだしにした逞しい力がみなぎった。

強い力で抱きすくめられてから、初めて陽子の体に反抗する意志が芽生えた。しかし、それとても、決して少年の力や意志をくつがえすものではない。

陽子の柔らかい体が、息子の腕の中で頼りなく揺れた。が、かえって啓太の欲情を揺さぶる役目を果たしたにすぎない。

陽子は我が子の脈動する勃起を恥丘のあたりに感じ、あわてて腰を引いた。しかし、啓太がおかまいなしにグイグイと押しつけてくると、もう諦めたように体から力を抜いてしまった。

啓太は決して焦っていたわけではないが、早く体をつなげて、既成事実だけはつくってしまいたいと思った。そうなれば、あとはどうにでもなると少年らしく計算した。

「いけない、いけないわ……」

苦しそうな息には、女の生臭い欲望の匂いがした。敏感にも、啓太は牝臭をはっきりと嗅ぎとり、さらに欲望を高めた。

母の体を押しだすようにして頬を擦り寄せると、陽子がふらついて後方に倒れた。啓太が計算したように、母子は重なり合ってベッドに倒れこんだ。

陽子の下腹に、硬いこわばりが弾みをつけて当たった。

「お願いよ。離れて……神様が許さないわ」

だが、もはや獣と化した我が子に、その言葉はなんの説得力もない。陽子は、うわごとのように拒む言葉を吐いた。にもかかわらず、体はいやらしく媚液を噴きはじめていた。

ネグリジェこそ羽織っているものの、下半身は生まれたままの素っ裸である。やみくもに体を押しつけているだけで、啓太はそれなりの快感を得ていた。

母から発散する匂いはますます強くなり、体は頼りなく右に左にと揺れている。

啓太は、柔らかい母の秘裂とおぼしきあたりに勃起を擦りつけているだけで、もう爆発寸前のところまで高ぶっていた。

このまま出してしまおう……。

啓太は、その後のことを考えていた。

若いだけに、熟女の年齢にさしかかっている陽子とは、まともに勝負はできない。一度か二度放出すれば、どうにか対等にやっていけそうな気がする。

啓太は決心すると、腰をいやらしく振りたてた。開き直ってしまうと、思った以上に長持ちするものだ。気持ちに余裕が生まれたせいかもしれない。

やがて、陽子のほうが甘い声で喘ぎだした。

よし、このまま、このまま……。

啓太は、少しずつ体の位置を修正しながら、もっとも湿り気の多いあたりに、硬くなった分身を割りこませた。

「あっ、いや……」

そのくせ陽子は、啓太の首の後ろに腕をまわして引きつけた。

「ぼく、出ちゃう」

その瞬間が、啓太に訪れようとしていた。

このまま終わってくれれば、あとは何事も起こらないかもしれない……。

その一瞬だけ、陽子のなかに母親らしい自覚が生まれた。

啓太の動きが、はたと止まった。

「ママッ……」

すがりつく我が子を、陽子はひしと抱きしめた。

陽子の性器の上で熱い勃起が爆発し、万遍なくまわりにひろがった。男女の薄い衣を通して染みていく樹液には、強い匂いがこもっていた。陽子はその匂いにむせて、体を疼かせた。だが、それを露わにする立場ではない。耐え忍んで喘ぎ声を呑みこんだ。

「もういいでしょう。さあ、終わったわ」

優しく我が子を体から引き剥がそうとしたが、啓太はいっそう強い力でしがみついてくる。仕方なく、陽子は啓太が落ちつくのを待つことにした。

いつの間にか、この子は女を欲しがる年齢になっている……。

感慨にとらわれているうちに、陽子を当惑させるようなことが起きた。

息子の吐きだしたザーメンが、ネグリジェを通してベッドと下腹に染みている。そこがまだ十分とたっていないうちに、再び硬いもので圧迫されはじめたのだ。同時に、それまで死んだように動かなかった啓太の体が、ゆるゆると動きだす。いやらしい腰の律動につれて、硬い肉棒はさらに長大になり、とうとう痛いほど陽子の恥丘を押すようになった。

啓太は母の反応をうかがった。母がびっくりしているのがわかる。

あとはどう出るのだろう?……

啓太はゆっくりと腰をまわした。

「もう終わったんでしょう。やめるのよ、啓ちゃん。ママ、苦しいわ」

押し戻そうとする手には、さっぱり力が入らない様子だ。

「ママ……中に入れたい」

啓太はわざと甘い声で、母の耳もとに囁きかけた。

「とんでもないわ……」

低いが、かなり重い声である。

「お願いだよ。もう悪いことをしないって誓うから……ね、ママ、させてよ」

駄々っ子のように体を揺さぶると、下で受けとめている陽子のあらゆる性感帯が刺激されて、はしたなく震えた。

こんなことになるなんて……と思う反面、この子を救えるのは私だけ……とも思うのだった。

服部由紀という学生を襲ってまで性欲を発散させる息子が怖い。だが、この子はまぎれもなく、自分がおなかを痛めて産んだ本当の子供なのだ。陽子は二本の道標の前に立って、激しく思い悩んだ。

サクリファイス・アンド・サービス。

犠牲と奉仕という、陽子の出身校の憲章が、目の前にちらついた。

自分が不幸になることはかまわない。しかし、他人を不幸な目にあわせて、平然としているような人間にはなってもらいたくない。だが……だが……だが……。

陽子の心は揺れ動いた。

「させてったら……そしたら、もう絶対に悪いことはしないからさ」

啓太の手がネグリジェの胸もとから乳房にのびた。陽子は無言のまま、手をはずそうとした。だが強引さでははるかに啓太のほうが優っている。それに、陽子の頭の中には、さっきから犠牲という言葉が飛び交っていた。

啓太の熱い手がしっかりと乳房をつかんだ。

疼痛がそこから湧いた。頭の中が痺れた。痺れは、すぐに下半身の亀裂を揺るがすように伝わり、やがて全身を陶酔の渦の中に巻きこんだ。

「いけない……いけないわ」

絶えず口から出ていた言葉も、次第に間隔が長くなり、ついには荒い息づかいだけとなった。

啓太は陽子とは違って、かなり醒めた目で母親を観察していた。初めから、すべて計算づくであったから、見る目も確かである。それに、いざとなれば相手が自分の母であるということを楯に、暴力的行為に訴えることも可能である。母だからこそなんでも許してくれるという、彼なりの判断があった。

そして、事態は啓太の計算どおりに、いい方向に進んでいる。

前開きのネグリジェであるから、乳房がすぐに露出した。ふたつの隆起の谷間に顔を埋めると、なんとなく乳くさい匂いがする。クンクンと鼻を鳴らして大きく息を吸いこんだ。

陽子にとって、そうした息子の行為は、母親としての甘い気分に浸らせてくれるには充分である。陽子は幼児を抱いているときのように、感傷的になっていた。しかし、啓太は乳を欲しがっているわけではない。大人の行為を欲しがっているのである。

可哀相な啓太……。

かといって、抱きしめるわけにはいかない。陽子は明らかに矛盾の中にいた。どうなるかわからないと思ったが、それは陽子が自分を偽っているのにすぎない。息子が望んでいるものは明確なのだ。結果は、はっきりしている。

母子相姦!

恐ろしい文字が頭の中で躍った。

一度の失敗は許されても、二度目は……。

だが、体が言うことをきかない。いや、もう気持ちまでもが、体に同化しようとしている。

啓太の手が下にのびた。恥丘は、さっき啓太が放出した精液でぬるぬるになっている。熱い手が淡い恥毛をまさぐった。

「…………」

やめようとしてももう言葉が出ない。

「ママ、好きだ」

駄目よ、それは駄目……。

心の内でだけ、陽子は叫んでいた。

実母と義母 第4部 (4/5)
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