実姉と義姉 第四章 実姉・剥かれた裸身 (4/7)
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第四章 実姉・剥かれた裸身
翌日の午後、札幌近郊の温泉を巡って、沙由里と両親が帰ってきた。父母は肩の荷をおろしたかのようにどこか浮き浮きしていたし、沙由里はいつもと変わらないが、その表情は以前とは較べものにならないほど活き活きと輝いてみえた。
秀之は時折り眩しそうに眺め、そういう美しい姉を近い将来自由にできる未来の義兄に嫉妬した。
秀之のような年若い男にとって、結婚という言葉は、つまりはセックスそのものであった。また、実姉の沙由里に対する切ないまでの熱い想いは、誰もうかがい知ることはできなかった。
いや、一人だけ知っている者がいた。義姉の亜矢子である。亜矢子は秀之の心の中をすべて見抜いていた。自分が裏切られた分だけ、亜矢子は沙由里に対して、ますます憎しみをつのらせていった。だが、亜矢子のこうした心の推移を誰一人知る者はいなかった。
亜矢子の実の母である桂子は、再婚相手の泰造やその子供たち、つまり沙由里や秀之に対して、必要以上に気を使っているようであった。それもまた、亜矢子にはシャクの種であった。年長者である自分を差し置いて、義妹が結婚するというのに、嬉々として動きまわっている桂子が理解できない。母にまで八つ当たりしたい気持である。
神坂家では、亜矢子だけが疎外された形で日々がすぎていった。いや、秀之の心もまた複雑きわまりないものであった。姉の存在が少しずつ遠くなっていくような焦燥感にとらわれて、亜矢子とは違った意味で落ち着かない毎日を送った。
結婚することが、そんなにお姉さんにとって嬉しいことなのだろうか?
沙由里の婚約の裏には、泰造の会社に対する花沢敏也や一族の強力なバックアップがあることを秀之が知っていたなら、嫁ぐ姉に対してまた別の感情を抱いたかもしれない。その事実は、秀之にはいっさい知らされていなかったし、亜矢子もまた同様であった。
だから、著名なデザイナーの手によるウエディングドレスが届けられた時、亜矢子の沙由里に対する憎悪は頂点に達した。
亜矢子は仕事と称して、その日から数日、家に戻らなかった。その日、沙由里だけが神坂家にいた。沙由里は離れに用意されてある新婚生活用のおびただしい数の生活必需品をチェックしていた。
純白の匂いたつようなウエディングドレスは、きちんとトルソー台に飾りつけられて、その周囲には気品さえ漂っているかのようであった。
沙由里は、その白さに象徴される自分の肉体を誇らしく思った。札幌での恥ずかしい出事来に耐えてきて本当によかったと感じていた。二カ月後に結婚するのだからと、あの時、処女を与えてしまっていたなら、結婚式という人生の大きな節目が、きっと色あせたものになったに違いない。
沙由里はウエディングドレスを着てみたい衝動に駆られた。
愛用のだぶだぶのセーターを脱ぐと、上半身に着けているものは肌色のブラジャーだけになる。下半身のキュロットスカートを脱ぐと、ブラジャーと同色のパンティが現われでた。
セントラルヒーティングなので、離れの部屋もポカポカと暖かい。
敏也がこの体を望んだ理由がわかるような気がした。いつも控え目な沙由里は、大学生の頃からまわりの者にいろいろな言葉で顔や肉体のすべてを賞賛されてきたが、今、初めてそれを実感として受けとめることができた。
札幌で敏也に愛撫された時のことが生々しく想いだされ、沙由里はいっときの間、全身を赤く染めて、曖昧ながらも、あの時に生じた思いもよらない性の疼きを感じた。
男に愛されると、どの女性もあんなにはしたなく感じてしまうのだろうか? 沙由里は、数多くの婦人雑誌に、必ずといっていいほど掲載されるセックス記事を、以前よりはるかに好意的に理解した。
沙由里がドレスをトルソー台からはずそうとした時、姿見の端に、何やら黒いものがよぎったような気がした。
気のせいかしら? それとも友人のところへ行くと言って出かけた秀之が帰ってきたのだろうか?
沙由里は脱ぎ捨てたセーターで胸のあたりを隠しながら、離れの廊下に向かって「秀ちゃんなの?」と声をかけた。
なんだ、気のせいか……。
沙由里はホッとしながら、再びトルソー台に向かった。その時、いきなり黒い人影が背後から襲いかかった。恐怖感で身がすくんだ。いきなり口に冷んやりするものが押しつけられた。幅の広いガムテープである。
男の力はかなりのもので、たちまち沙由里の優雅な体は畳の上に押し倒されてしまった。
見ず知らずの若い男は、黒のジャンパーにバーバリー模様のマフラーをした上品な顔をしていた。そのくせ、こういうことに馴れているのか、冷静に沙由里を見おろしている。男が沙由里の腹の上に乗って体重をかけ、両手を万歳の格好のまま押さえこんだ。そのため身動きがとれない沙由里は、ただ呆然と男を見つめる他なかった。その時の彼女は混乱と羞恥、それに恐怖で、男がいったいどのようにして侵入したのか、考える余裕もなかった。
「いい女だぜ、みっけもんだ」
甘いマスクに似合わない下品な言葉に反発するかのように、沙由里はきつく眼を閉じ、顔をそむけた。とはいっても沙由里が冷静だったわけではない。体がガクガクと震えっぱなしで、口を塞がれていなくとも、声など出せる状態ではなかった。
その時、男は妙な仕草をした。いかにも性行為を思わせるように、腰をいやらしくクイッ、クイッと使ったのだ。
沙由里の脳裏に、札幌での出来事がかすめた。敏也の硬くなった分身が太腿に押しつけられた時とそっくり同じ感触が、パンティの中心の恥ずかしい丘に感じられた。沙由里の体の上に体重を乗せていた男は、すでに逞しく勃起していた。沙由里はあわてて腰をひねった。だが、かえってそれは男の一物を擦りあげて、刺激する結果となった。硬いこわばりの存在がさらにはっきりと沙由里の大事なところに感じられた。
男は煙草の匂いのする唇を沙由里の瞼や頬に押しつけ、時には舌を出して舐めまわした。沙由里が拒んで顔を左右に振ると、それならとばかりに、先ほどのように腰を淫らに振りたてて、ますます硬く長大になった股間のこわばりを強く押しつけてくる。そのことのほうが怖ろしくて、沙由里は顔を振るのをやめた。
すると男は、腰を押しつけてくることだけはやめ、顔や耳たぶをペロペロと舐めた。しばらくして沙由里は、男の舌の動きには一定の順序と、あるはっきりした意志がこめられているのに気づいた。非常にデリケートで丁寧な動きである。男は恐怖感をできるだけ早く沙由里からぬぐい去ろうと努力しているようでもあった。しかし、状況が状況であるだけに、そう簡単に沙由里が相手に同化するはずもなかった。
男は長い時間、ただ舌だけで沙由里の顔を舐めまわしていた。沙由里はしだいに落ち着きを取り戻したが、同時に、男の執拗な舌の動きで、自分の体が少しずつ何かを感じていることを意識して動揺した。こんなどこの馬の骨ともわからぬハレンチな侵入者によって、歓びを喚起されてたまるかと思った。ところが不思議なもので、いったん、その思いが頭の中にちらつくと、かえって気になってしまい、体の奥底に深く秘めている二十三歳の女盛りの肉欲を徐々に揺さぶるのだ。
沙由里は焦った。こんな男に感じるはずがない、と思った。だが、あくなき男の舌の攻撃はつづく。若い男の大きな体の下から逃げだそうにも逃げだすことのできない沙由里の運命は、もはや風前の灯火といった趣きがあった。
男は時折り、苦しそうにもがく沙由里を、わくわくしながら見おろした。小さなレース編みのブラジャーからはみだしそうになっている乳房の盛りあがりが欲情をこよなく刺激し、キュッと締まった細い腰のくびれが、勃起した一物にますます力強さを与えた。
男は片手で器用に沙由里の頭上で両手首を押さえこむと、もう一方の手を背中の下にもぐりこませて、ブラジャーのホックをはずそうとした。
沙由里は不自由な体勢ながら、なんとかもがいて男の意図に逆らおうとしたが、まったく無駄な抵抗にすぎなかった。指がホックにかかった時に沙由里がもがいたので、ブラジャーは勝手にはずれてしまい、男の眼を楽しませずにはおかないピッチリと盛りあがった形のいい乳房がプルンと飛びだした。
「おおっ……」
男は驚嘆の声を放ち、眼が見事な二つの隆起に釘づけになった。沙由里が本能的にイヤイヤをすると、解放されたばかりの乳房が男の視線に羞じらうように揺れた。乳暈に埋まっている小さなピンク色の乳首は、視線に耐えきれないように姿を隠したままだ。その可憐さを、男は眼を細めて眺め、とうとう我慢ができなくなって、隆起にかぶりついた。
「う……うッ……ううッ……」
ガムテープに塞がれた口の奥で苦しそうに呻いた沙由里は、男を振り落とそうともがいた。たとえそれが無駄とわかっていても、そうすることがまともな女の務めと思っていたし、手をこまねいて見ず知らずの男に屈服するにはプライドが許さなかった。
しかし、そんな努力も男にとっては何の効果もなく、また痛痒を感じている様子もなかった。薄い唇から突きだされた長い舌は、まるで軟体動物のように乳房の上を這いまわり、柔肉に吸いついた。
二十三歳の女の体がいつまでも冷静でいられたなら、それはかえって自然の摂理に反したものに違いない。沙由里はやはり健康な肉体の所有者であった。男の舌が根気よく隆起をまさぐり、唇が柔肌に触れるたびに、おののきが派生して全身を駆けめぐり、少しずつ快感が掘り起こされて、やがて小さな波がたとえようもなく大きな疼きとなって沙由里を呑みこんでいった。抑えようにも抑えられない歓びの呻きが喉の奥からしぼりだされ、それによってきっちりと口を塞いでいるガムテープが、伸びて盛りあがった。
乳房に与えられた性感は、決してそこだけにとどまらなかった。快感は神経のいきつく体のあらゆるところに波及したが、とりわけ沙由里が困惑し、あわてたのは、股間の亀裂までが切なく疼き、火照ったことである。
いったん目覚めた女の官能は容赦なく襲いかかり、体の隅々までのめりこんで、それがいろいろな形で具体的に表われた。
乳首が男の舌の要請に応えてムクッと頭をもたげたのを、沙由里はいたたまれない恥ずかしさの中で感じ、全身がふわふわと波間に漂うような気だるさを味わった。
乳房の柔肉にとりついた男は長い時間をかけて一方を舐めると、やっと満足げに離れて、今までとりついていた乳房を見やった。ピンクの小粒が乳暈から飛びだして、見事な蕾となっていた。
男の舌が別の乳房に移ると、そこからまた、新しい性感が電流のように生じてビリビリと四肢を震わせ、勝手に股間の肉片が痙攣してしまう。
沙由里が一番心配していることが、すでに隠しきれない現実となっていた。パンティの下の一条の溝は、もうその頃になると、ビッショリと濡れそぼり、ひょっとしたら男の鼻は、そこからもやもやとたち昇る香気を敏感に嗅ぎとっているのかもしれなかった。
沙由里は、その部分だけはどんなことをしてでも男の指や舌から守らねばと思った。身にまとっているものといったら、女の最も恥ずかしいところを覆っているパンティだけである。しかも、その中心はたび重なる男の巧みな攻撃によって、黒い茂みが浮きでるほどに濡れてしまっている。
とうとう男は耐えきれなくなったのか、体を沙由里の足もとのほうにずらすと、無防備にさらけだされているパンティに手をかけてきた。
上半身が比較的自由になった沙由里は、反動をつけて上半身を起こすと、夢中になって男の頭を殴りつけた。けれど、こんな場合には、ちょっとやそっとの女の腕力など、男にとって蚊に刺されたほどにしか感じないのだろう。男はニヤニヤ薄笑いを浮かべると、突然右手を突きだして、無防備に揺らぐ乳房を握りしめた。それも思いきったつかみ方である。
沙由里は喉の奥で悲鳴をあげ、たちまち抗う気持を喪失してしまった。
「いちいち逆らうな。傷つけられてえのか」
男の声には単なる脅しではない、すごみがこめられていた。
男の手がドンッと沙由里の胸を突く。たちまち沙由里は下半身を押さえこまれた格好で後方に倒れ、かなりの勢いで後頭部を畳に打ちつけた。
男はパンティの上から透けて見える黒い翳りをわくわくする思いで眺めていたが、やがてそれに満足したのか、好奇に輝く眼をしばたかせると、滑らかな下腹に食いこんだパンティの縁に指をかけた。
その瞬間だけ、沙由里は両手を伸ばして男の行為に抵抗する態度を示した。だが、男がその手を乱暴にはねのられけると、すっかり諦めたのか、両手を胸もとに置き、眼尻から熱い涙を流した。
だが、それはかえって男の欲情を焚きつけるだけでしかなかった。パンティは無惨にも両脚から引き抜かれ、沙由里は生まれて初めて、成熟した女体を異性の前にさらけだした。沙由里の気持が滅入れば滅入るほど男の感情は高ぶり、沙由里が羞恥と屈辱にまみれればまみれるほど、男の欲望は果てしなく強いものになっていった。
「うーん」
男が唸った。感に堪えないその表情は、征服する喜びに満ちあふれていた。
男の視線は、成熟した女体の隅々をくまなく舐めまわすように這いまわった。美しい顎から首にかけてのライン、たわわな胸の盛りあがりの頂点を彩る淡いピンクの乳暈と薄紅く染まった乳首、その裾野から下腹にかけてのデリケートな曲線、それらをすべて引き締めるワンポイントともいうべき可愛いへそ、なだらかに盛りあがった下腹からさらにいちだんと高い位置にある恥ずかしい丘、それから下にかけての亀裂を飾る縦に長い茂み……。男の眼をこれほど楽しませるものが、この世にあるとは思えなかった。
沙由里はかたくなに両腿を閉じていたが、男は逆にだらしなく開かれている女の両脚よりも、そうした慎ましい女のたしなみが好みであった。いずれにしても、そこは男の意志ひとつで開くことが可能なのだ。
男はさやさやとなびく恥毛を撫でた。遠慮がちに生え揃った繊毛は、体の見事さに較べると少なすぎる感じがしたが、それだけに、奇妙なアンバランスは、見る者の心と肉体を刺激せずにおかない。
ぴったりと閉じられたムッチリした太腿の付け根に手をこじ入れようとした。囚われの小羊は激しく頭を左右に振り、それだけは許して、という素振りを示したが、欲情の塊りとなった相手が聞き入れるわけがない。男は強引にこじ入れてきた。
敏也にまさぐられた時の浮きたつような快感にはほど遠かったが、長い時間にわたって男の愛撫を受けた後だったので、体は沙由里の気持を無視していち早く反応した。しかも、そこは先ほどからの男の執拗な指と舌の戯れに刺激されて、すっかり濡れそぼっていた。
「おっ……」
男は歓喜の声と驚きの声を同時に放ち、素っ頓狂な声を出した。
「処女でもこんなに濡れるのかよォ」
沙由里は死にたいほどの恥ずかしさで身を縮めていた。だが、沙由里がもうすこし冷静であったなら、この男の言葉にはどこかおかしな点があるのに気づくはずであった。見ず知らずの訪問者が、どうして初めて出会った女を処女であると見破ることができよう。それを男は断定的に言ってのけた。
男の指は、とうとう肝心な割れ目に達し、濡れているのを幸いに、亀裂を上から下へ、下から上へと撫であげた。
「うっ……う……」
涙を浮かべた美しい女の顔が、間断なく左右に揺れた。
男は徐々に両膝をこじ開けると、その間にどっかりと座りこみ、沙由里の両脚を閉じようとする意志を封じこめてしまった。黒い茂みが二つに割れ、股間の柔肉が痛ましいまでに露出した。
男の手が恥ずかしさに震えている亀裂を這い、可憐な突起を優しくつまむと、さすがの沙由里も腰全体をブルブルと震わせる。その様子を十センチと離れていない目の前で見つめていた男は興奮のあまり、ズボンの下の勃起から歓喜の先走りをもらした。
「いいんだな。とてもいいから、こんなに恥ずかしげもなく濡らしてるんだろ。ほら、どうなんだ。よくってたまらんだろう、え? 返事しろよ。そうか、できないか。よし、それなら……」
男はそう言うと、沙由里の口に貼ってあるガムテープを荒々しく引き剥がした。
こんな姿で助けを呼んだら、大恥をかく……。
結局、沙由里の口からは助けを呼ぶ声の代わりに、女の歓びを表わす切ない喘ぎ声がもれた。
「ほら、ほら」
男は気に入ったオモチャを与えられた子供のように、沙由里の股間に触れ、沙由里の体が反応を示すたびに、喉の奥から絞りだすような声で笑った。
先ほどの言葉の通り、男は沙由里をバージンと承知しているらしく、かなり股間が充血して濡れているにもかかわらず、指を無理に押しこめずに、もっぱら表面の粘膜と肉の裂け目を興味の対象として、いじりまわしていた。
一番大切な処女膜は、自分のいきり立ったもので貫くという信念があるようであった。クリトリスはすでに最大限にまで膨張し、包皮を押しのけて、薄い茂みから、もやしの新芽のように顔を出していた。
男は中指の腹を愛液で湿らせると、それでクリトリスをゆるゆると撫でまわしていく。沙由里が荒い息を吐いて、たまらずに声をあげると、急にスーッと指を遠去け、その時の女の表情を楽しんだ。
攻め方のパターンは決して同じではなかった。ここと思えばあちら、あちらと思えばまたこちら、というように変幻自在で、その切なさに沙由里は泣いた。後悔や口惜しさ、そして屈辱の涙ではない、女としての歓びに耐えられないもどかしさ故の涙であった。だが、死んでもそれを口や態度に出すことはできない。必死で押し寄せてくる快感を耐えたが、相手はとっくに沙由里の置かれている状況を把握している様子で、思う通りに沙由里を操って、その狂おしいまでの姿を楽しんでいた。
「お願い……や、やめてください」
やっとのことで口を開いたが、男はせせら笑うばかりだ。
「心にもないことを言った罰だ」
今度は指を後退させると、分厚い舌を差し向けて、まるで動物が産んだばかりの我が子を舐めるように、割れ目とその周辺を、むしゃぶりつくようにペロペロと舐めまわした。
「ひえ--ッ」
叫んだ沙由里の頭の中は、複雑な感情が逆巻き、一種のパニック状態に陥っていた。しかし女体というものは本当に不思議なもので、沙由里のほんの少し残された理性までも裏切り、男の舌の動きにつれて嬉々として躍動し、すべての神経と粘膜が連動して蠢き、沙由里の心に、さあ、もっと楽しもうよ……という悪魔の囁きを吹きこんだのだ。
「へーえ、これが女の大事なところの匂いか。それに、このなんともいえない酸っぱい味、気に入ったぜ」
男はことさら大きな音をたてて舌を使い、ぽってりと充血した柔肉を吸引した。
「いや--っ
!!
」
悲鳴をあげたのは、心からいやがったわけではない。むしろ、体を突き抜けるような快感に対する一種の反射作用といったものである。
「うまいや、あんたのおま×こ」
男がなにげなく放った下劣な言葉は、一瞬にして沙由里を官能の渦の中に巻きこみ、震えだした肉襞の間から、どっとばかりに淫汁を噴きあげさせた。
「おっ、なんだい、こりゃ。眼に染みたぜ……」
明らかに男は沙由里のはしたなさをからかっていた。
とうとう男は沙由里の開いた膝の中央に腹這いになり、両脚を持ちあげて肩に乗せた。そのお蔭で恥ずかしい裂け目にはもちろんのこと、尻の双丘の合わせ目からさらに奥の小さな肉のすぼまりまでが、すっかりいやらしい形で男の視線にさらされてしまった。
「いやっ、いやです! 許して……ああ、いやよ、こんなのいや!」
沙由里が強く抗議するように腰を振りたてると、男の手によってガッチリ押さえこまれている腰の動きにつれて、淫汁を噴きだしている割れ目がいやらしく歪み、陰唇の濡れた粘膜が剥き身の生きた貝のようにヌラヌラと光った。
男は沙由里の秘所からとめどなく噴きこぼれる淫汁を、音を鳴らしてすすり、飢えた獣のように貪った。
「あうっ……あああーん。いやァ」
男は秘唇だけでなく、菊の花のようなすぼまりをみせる裏門から会陰部までも、ペロリと舐めあげた。
「うわ--ッ
!!
」
沙由里のけたたましい悲鳴は、男のよこしまな官能を激しく刺激した。男の舌は、まるでそれ自体が意志を持った別の生きもののように、縦横無尽に動きまわった。
「いやよ いや、いやッ……あああ。そんなところ、ひどいっ……やめてェ--ッ」
悲鳴をあげながら、沙由里は逃げだそうと腰を持ちあげたが、それはかえって、沙由里の大事なところをより強く男の顔に擦りつける結果となった。無意識な行為が男をこよなく歓ばせていることを、沙由里自身は少しも気づいていない。
男は沙由里を上手に押さえつけながら、片手でズボンのチャックをおろして、先ほどから鈴口を濡らしているこわばりを取りだした。これが今、目の前で濡れに濡れ、疼きに疼いている、ぽってりと充血した柔らかい肉を切りひらいていくのだ!
男は長い舌を羞恥で固く閉ざしている肉の蕾に向け、短剣のように突きだすと、まわりの皺のひとつひとつを丹念に突きまくり、やがてそこが唾液と興奮でほぐれてくるや、ざらついた舌の中央でベロンと擦るように舐めあげた。
「うわわわ--ッ、いやァ--ッ
!!
」
いきなりハンマーか何かで脳天を力いっぱい殴りつけられたようなショックを受けて、沙由里は全身に力をみなぎらせて男の重みから逃れようとした。しかし、たてつづけに襲いかかる舌の攻撃から受ける、目の覚めるような快感には抗すべくもなく、へなへなと体から力が急速に抜けていくのを、ぼんやりとした意識の中で感じていた。沙由里の全身は麻薬に冒されたように痺れ、弛緩した。五体は完全に快感によって支配されつつあった。
男は舌先で陰唇の内外をこねくりまわした後でゆっくりと秘所から顔を離し、膝立ちになってズボンを尻肉の下まで引きおろした。そそり立ったこわばりは下腹とほとんど平行して男の顎に向かっていなないている。男は見事な勃起力の備わった自分のこわばりを満足げに見つめ、それからまるで下腹から引き剥がすように手を添えて下に折り曲げ、上体をかがめた。
沙由里の淡い茂みをひとしきりこわばりで撫でてから、大きな松茸のような形の亀頭を肉の割れ目になすりつける。
グニャリとした皮膚とも粘膜ともつかぬ肉襞は、ヌラヌラと変形して、今にも男根を呑みこむような素振りをみせていた。しかし、それから奥には処女膜が厳然と存在しているはずであったから、女の扱いに馴れている男は、いきなり秘唇に向けてこわばりを乱暴に突き立てるようなことはしない。
自信が男の気持に余裕を与えていた。もう九十九パーセントは男の掌中にあるも同然なのだ。だが男は、挿入すれば、処女膜を破らないうちに自分が射精してしまうことも知っていた。だから、できるだけ落ち着こうと、さまざまな試みをした。
落ち着いて、焦ることなんかないぞ。できるだけ処女の感触を楽しみたいのなら、もっと気持も体も落ち着いてからだ……。男は心の中で、他人に言い含めるかように自分自身に言いきかせていた。処女を破る、その実感をじっくり味わってから欲望のしるしをぶちまけたかった。
男が自分の一物に手を添えて女陰の割れ目をなぞっているのを、沙由里はもうろうとした意識のなかで漠然と感じとっていた。しかし、今さら反抗してもどうなるものでもない。
破瓜の痛みを感じるのは、もはや時間の問題であった。沙由里の肉体はそこにあったが心はなく、まるで脱け殼のようにからっぽであった。遠くで男の声がした。
「いい思いをさせてやるぜ。これからだ、お祭りは」
男は充分に狙いを定め、右手に握っているこわばりの先端で恥毛をかきわけ、潤滑油で濡れそぼった女陰の扉を押そうとした。わくわくする光景を自らの眼で確かめる幸運に、男は酔った。もうそれだけで肉棒が期待に震え、奥からザーメンが押しだされてきそうな気配がした。
早く入れなきゃ、こぼしちまう……。
この時、初めて男は冷静さを失った。それが彼の唯一の失敗だった。男はあわてて肉棒を突き立てようとした。だが、背後に忍び寄った人影を見落とすほど狼狽していた。
沙由里の柔肉が切り裂かれるより一瞬早く、硬い棒状のものが男の後頭部に振りおろされた。
「うわ--っ!」
男の脳髄がショックを受けた瞬間に、まだ宙に揺れている男根からいっせいに白いものが飛び散る。振り向きざまに第二撃をくらった。男はズボンを引きあげながら、脱兎の如く逃げだした。
秀之は男を追うことよりも、無惨な姿で横たわっている沙由里が気になって駆け寄った。
沙由里は気を失っていた。秀之はいち早く、沙由里を二階にある彼女の部屋に運びこんだ。
姉が犯されなかったという証拠はないが、犯されたという痕跡もなかった。男がおびただしい量の精液を撤き散らしていったところから推察すると、男は犯すまでには至らず逃走したようだ。秀之は姉の蒼白い顔色をうかがいながら、そう確信するしかないと考えた。
沙由里はまるで死んでいるように動かなかった。それでもかすかに胸の隆起は息づいていた。秀之は、おねえさん……と声を出しかけたが、その言葉を口の中に押しこめた。
声をかければ目を覚まして元気な顔を見せてくれるに違いなかったが、あのような異常な状況のすぐ後だったので、かえって姉に恥ずかしい思いをさせたくはなかった。また秀之自身、姉の美しい寝顔や裸身をもっとよく見たいと思ったのだ。
羽毛の掛布団の下の沙由里は何ひとつ身に着けていない。誰かが帰ってくる前に、ともかく姉を部屋に運びこんでしまわなければと考えて、秀之は真っ先にそれをやってのけたのである。
秀之は姉の下着がどこに収納されているか、よく知っていた。恥ずかしい思いをさせないために、やはり下着とネグリジェぐらい着せてやろうという気になり、ベッドの下についている小引き出しを開けた。そこにはカラフルな下着や、いかにも高価そうな寝具などがギッシリと詰まっていた。
沙由里ねえさんはまだ純潔なんだ……と何度も心の内で繰りかえし呟きながら、秀之は、可愛らしいレースに縁どられたシンプルな形のパンティとブラジャーを選びだした。
掛布団を静かにめくりあげた時、秀之は、まるで自分がこれから沙由里を犯すような錯覚にとらわれて、ガクガクと膝を震わせた。グンニャリと体を投げだしている姉は、何をされてもわからないのか、ブラジャーを着けるまでかなり手荒く扱っても目を覚まさなかった。
よほどのショックを受けたのだろうか?
秀之は心配になって、ブラジャーを着け終わったところで、「おねえさん」と小さく耳もとで呼んでみた。沙由里は相変わらず軽い呼吸をしながら、昏唾しているように眼を閉じていた。胸の隆起が白いブラジャーに覆われてしまうと、秀之は、なんだか取りかえしのつかないことをやってしまったような気になった。
ブラジャーだけでパンティをはかせないのは、いかにも自分の下心がみえみえのような気がして、秀之はあまり気の進まない様子で、手の中でふんわりと縮まっているパンティをひろげ、沙由里の両方の足首に通した。少しずつ太腿の付け根に近づくにつれて、はかせるという作業もなかなか大変なことがわかった。ぐったりとしている沙由里の体を少しずつ持ちあげながら、徐々にパンティを腰のほうに引きあげていかねばならない。後ろのゴムの部分がヒップの丸味に引っかかってしまい、なかなかうまくいかない。どうしようかと思いあぐねている時、秀之は目の前に黒く彩られた翳りがあることに初めて気がついた。それほど夢中になってパンティをはかせる作業に取り組んでいたのだ。
秀之は姉の太腿にパンティを絡みつかせたまま手を休めた。そこは濡れて光っていた。自分の迂闊さに呪いの言葉を投げつけ、しばらくの間、姉の恥ずかしい愛のふくらみをドキドキしながら見つめていた。翳りの下には一条の亀裂が下に向かって切れこみ、淡いピンク色の肉の一部がほんのりと見えた。眼がくらむ光景とは、まさしくこれに違いなかった。
高なる胸の鼓動で姉が起きだすのではないかと気使いながら、秀之は這いつくばるようにして、姉の秘唇に顔を近づけた。眼に見える部分は、どこもかしこも何かに濡れて光っていた。それが、もし白く濁った液体であったなら秀之はひどくがっかりしたに違いない。しかし、秀之の幼い経験によって判断すれば、本人自身が胎内から吐きだした特種な液体のはずである。それは、義姉の亜矢子との体験で、秀之も知っていた。
沙由里ねえさんは、見知らぬ男によって犯されようとしながらも感じていたのだろうか? 秀之は改めて女体の神秘さを知らされた思いだった。
「おねえさん……」
秀之の切ないまでの慈愛のこもった声にも、沙由里は反応しなかった。しかし、沙由里の失神は、実はそれほど深いものではなかったのだ。沙由里は自分の部屋に運ばれてくる途中、秀之の腕の中で意識を回復していた。男が狂気の表情でのしかかってきた時、恐怖のために気が遠のいたが、しばらくすると、霞んだ意識の彼方から、少しずつ現実の感覚を取り戻していた。不思議なことに自分を抱いているのが男の腕とわかっていながら、怖れといったものがない。その腕には信頼すべきぬくもりがこめられていた。
あ、あの男ではない……。
沙由里は自分を抱きかかえているのが、本能的に秀之であることを悟った。助かった。そう思うと、また意識が遠のいた。
気がつくと、秀之の匂いがした。頬ずりをしているのが弟だとわかると、沙由里はそのまま眼を閉じてすべてを委ねていた。幼い頃、ひとつの布団で眠ったことが想いだされ、その時の気持に浸っている自分を感じた。まるで揺りかごで揺られているような気分である。
秀之はいたわるように、掌で何度も頬を撫で、髪の毛を指先でくしけずっていた。やがて沙由里は背中を少し持ちあげられたのに気づいた。後ろに何かを通しているようである。眼を閉じているから、それが何であるかわからない。乳房のあたりに弟の熱い視線を感じた。秀之の手がのせられた。ひどく熱い。母親がむずかる幼な子の患部を撫でるようにしている。
沙由里は弟の愛情を感じた。そのうち、秀之の手の動きが微妙に変化してきた。恋人のようなぬくもりがある。このまま眼を閉じていていいのだろうか。沙由里の気持も複雑に揺れた。だが姉弟という垣根が、この時、沙由里にははっきりと見えていた。
弟は柔らかな乳房にも頬を寄せてきた。しかし、そっと押しつけているだけである。沙由里はしだいに速まる胸の鼓動を気にした。息苦しさを感じた。秀之の頬が離れると、胸のまわりが何かで覆われた。
あ、ブラジャーだ……。
紐を肩に通したり、背中でホックを留めたりするのに、かなりてこずっているようだった。それでも、どうやらきちんとブラジャーがつけられた。
やはり、このまま眠ったフリをしていたほうがいいんだわ。沙由里は弟の気配りを感謝して、そのままじっとしていた。
そうだ、私はあの男に裸に剥かれてしまったんだわ……。
この時、沙由里は初めて下半身も裸であることに気づいた。といっても、今さらどうなるものでもない。秀之は犯される寸前に救ってくれたのだから、すべてを見られてしまったという諦めもあった。
秀之が足もとのほうに移動した。今まで少しも肌寒くなかったのだが、この時、初めて震えそうになった。刺すような視線を感じた。
「おねえさん……」
小さな呼びかけには、沙由里が意識をとり戻したかどうかを確かめるような響きがあった。
身動きひとつしない沙由里を見ると、秀之は震える手で可愛い芝草を撫でた。暴漢の汚れた手によって受けたような欲情は少しも感じられなかったが、沙由里は場所が場所だけに、複雑な気持に陥った。遠慮がちな手の動きが、かえって閉じこめてしまったはずの感覚に火をつけそうだった。
秀之は明らかにためらっていた。姉が意識を回復した時に、恥ずかしい思いをさせないという思いやりから下着をつけてやったはずなのに、いざ自分の手でブラジャーをつけてしまうと、隠れてしまった乳房に未練が残る。
今、じかに見ているものを永久に見つづけるわけにはいかないのだろうか。憧れていた美しい姉の一番秘められた部分を、自分だけは好きなようにできないのだろうか。好きな時に見たい。そうしたいと思った時に自由に触りたい。そして、そして……。
だが、結局、秀之はパンティをはかせた。ようやく太腿にまで達した時、秀之はそれ以上、薄い布切れで姉の体を隠してしまうことをためらった。そうしてしまったなら、今見ているものは、おそらく永遠に自分の眼に触れることはないだろう。そんな怖れがあった。
秀之はもう一度、小さな声で姉の名を呼んだ。今にも泣きだしそうな声だった。
沙由里は、若い弟が自分の裸身に抱いている気持を考え、起きるべきかどうか迷っていた。
自分も秀之も傷つかない最良の方法を探しあぐねているうちに、恥毛に熱い秀之の頬が押しつけられた。そうしないではいられない……そんな感じの唐突なやり方だ。あやうく声を出しそうになったが、どうにか耐えた。結局、沙由里は眠ったフリをするしかなかった。
秀之は小し濡れている恥毛に頬ずりをしながら、それだけではもの足りないように指先を這わせた。ぬくもりのある湿った亀裂が指先に感じられる。うっすらと、そこから女の匂いがたち昇った。
もっと下へ……もっと奥へ……。そう思ったが、それ以上は指が進まない。秀之は割れ目の上のほうに指先を移動させた。途端に姉の体がガクッと揺れた。秀之がびっくりするほどの反応だった。
いったい何が? 秀之はしばらくじっとしていたが、元の状態が戻ってくると、今度は恥毛から顔を離して、十センチほどの近さで指の動きと姉の反応を見つめた。指は先ほどと同じように割れ目の下からゆっくり上に移動した。今までには感じられない粘り気が指先にまとわりついていた。明らかに変化があった証拠である。
秀之の指が割れ目の頂点に達した時、また姉の体がピクンッと跳ね、ウッと小さな呻き声がもれた。秀之は恥毛の奥にひっそりと息づいている豆粒大の突起を見た。それは濡れてヌルヌルと光っていた。
--クリトリスのことをおさねとも言うんだ。
誰かが言った言葉が脳裏に甦る。これがそうか……。上眼使いに姉の表情を見つめながら、秀之はまたもそこに触れた。
「ウッ……」
腰が揺れて、太腿が一瞬だけよじれた。切り傷のような肉唇の間から、光った液体が滲みでるのをはっきりと見た。
興奮で喉がカラカラだった。体も震えた。凝視した。触ろうと思えば、また触ることはできる。だが、それから先にどのようなことが待ち受けているというのか。後は自分の体を結合させることしかないではないか。
姉を救ったはずの自分が姉を犯す! それは、先ほどの男のとったハレンチな行為をうわまわる醜悪きわまりない行為だ。
「ああ、おねえさん……」
呟いた秀之は、滲みでたものにそっと唇を押しつけた。唇がしっとりと濡れ、わずかに甘い香りが鼻孔をくすぐる。
沙由里は、秀之の行為がこれ以上エスカレートしたらどうすべきかを考えた。恥ずかしいことに、やみくもにまさぐった秀之の指がクリトリスに触れた時、沙由里の体ははしたなく反応していた。それだけならまだしも、体の奥から湧きだした秘液が股間を熱く濡らすのだ。弟がそれを間近に見たと思うと、死んでしまいたいほど恥ずかしかった。
淫らな女だと思わないだろうか?……いや、思ったに違いない。これが限界だと思った。それとなく起きるべきた。そうだ、起きなければ……と思った瞬間、恥ずかしい女の部分が薄い布地で隠された。
ホッという秀之の溜め息が聞こえた。恥ずかしい丘が温かい掌でもう一度ゆっくり撫でられ、それから静かに布団がかけられた。室内の明かりが小さく絞られ、人影が部屋から去ると、沙由里はようやく眼を開いた。数時間の出来事が夢のようだった。
その時、沙由里は、初めて侵入してきた男がどのようにしてこの家に入ってきたのか疑問に思った。そのためには、いくつかの鍵がなければならない。すべての鍵が開放されていたとは考えにくかった。いや、絶対そんなことはない。いくつかの疑念を解き明かす必要があった。
暗くなる前に沙由里は起きだした。狂犬に噛まれたような災難に遭ったが、ともかく処女を奪われずにすんだのがなによりの慰めである。
桂子や亜矢子も帰ってくる頃だ。キッチンであれやこれやと動きまわっているうちに、沙由里は、その日が秀之の二十一歳の誕生日であることに気がついた。自分の婚約、そして結婚ということで、てんやわんやの状態がつづいていた。そのため、家の者は誰一人として秀之の誕生日に気づいていない。沙由里は、それがまるで自分の罪であるかのように受けとめた。桂子や亜矢子はともかく、少なくとも父や私は、そのことに関心を持つべきではなかったか。沙由里は後ろめたさを感じながら、秀之の部屋へ行った。
薄暗い部屋の片隅のベッドで、秀之はぐっすりと眠っていた。幼い顔をしている。起こして、誕生祝いをどのようにしたらいいか、弟の意向を聞くつもりでいたが、あどけないその寝顔を見ると、起こすのが気の毒な気もする。
その時、沙由里はベッド脇のサイドテーブルの上に、リボンで結ばれた小さな化粧箱と、『お姉さんへ』と表書きしてある角型の封筒を見つけた。
沙由里はいたたまれない気持になり、思わず涙ぐんだ。自分のことだけにかまけて、たった一人の血のつながった弟の誕生日も忘れてしまっている自分に較べ、弟はしっかりと姉の結婚のためにプレゼントまで用意していてくれたのだ。母親代わりのつもりを自負していた自分が恥ずかしく情けない。
ごめんね……。
心の中で呟きながら、あどけなさの残る秀之の寝顔を見つめていた時、何やらブツブツ呟いていた秀之が、突然、そこだけはっきりと呟いた。
「……だって、おねえさんを好きなんだもの……」
沙由里は、起きていたのかしらと、しばらく表情を見守ったが、秀之はスヤスヤと寝息をたてている。夢を見ていたに違いない。夢の中でこの子は私にあの言葉を言ったのだろうか?
沙由里はそれまでも、秀之の自分に対するある種の甘えの感情を知っていた。そして沙由里自身、それを許容していた。かなり大きくなってからも、秀之が自分と同じ布団で寝ることを許したのも、そんな気持があったからだ。
秀之が夢の中で呟いた「好き」という感情は、いったいどういう種類のものなのだろう。単なる好き嫌いのニュアンスとは異なっているような気がする。
この子は、私を女としてみている
!?
……
沙由里はその事実に気づくと愕然とした。まったく予想されなかったことではなかったが、秀之が男として、女の自分を眺めていたかと思うと胸が痛んだ。
乳房にそっと触れていた数年前の秀之の姿が浮かんだ。こっそりと股間をまさぐっている秀之の掌の感触が想いだされた。
あの頃からこの子は……。
その時、秀之が小さく唸って寝返りをうった。肩口のあたりにうぐいす色の小さな布切れが見える。ハッとした。見覚えのある色である。そっと手にすると、はたせるかな、沙由里のパンティであった。
この子が、私を
!?
……
この時、沙由里は弟の真意をはっきりと理解した。パンティは栗の花の匂いに満ちていた。沙由里の裸身を網膜に焼きつけた秀之が、自分の部屋に戻ってから、満たされない姉に対する欲望をそこにぶちまけたに違いない。
沙由里は足音を殺して部屋を出た。弟の気持をこんなにもはっきり知ったからといってどうなるものでもない。少なくとも、表面上は何ごともなかったかのように振舞わなければならない。
肉親の弟が自分に向けた愛……それにどう対処していくかは、沙由里の気持ひとつにかかっていた。


