実姉と義姉 第三章 義姉・朱唇に散る樹液 (3/7)
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第三章 義姉・朱唇に散る樹液
私があんなことを……。
両親の待つ札幌駅前のホテルへ戻ってきた沙由里は、敏也とすごした数時間前の出来事を、ベッドの中で信じられない気持で思い起こしていた。
敏也のとった行動は、男としてある程度許容されるべきものかもしれない。だが、女として自分のとった行動は許されるものかどうか……。いくら最後の一線だけは守ったといっても、ぎりぎりのところまで自分は許してしまったという後悔の念があった。
二十三歳という年齢を考えると、自分はやはり、気がつかないうちに一人前の女として成熟したのだと思った。
恥ずかしいまでに溢れた滑らかな液体は、どう考えてみても、性の営みを助ける特殊な小道具に違いない。
あの液体で充分に潤った愛の通り道を、太腿に当たった敏也の逞しいものが突き抜けていく。その時のことを想像すると、頭の芯がカーッと熱くなった。
あっ……。
気がつくと、浴室で充分に洗い清めた女の部分が、またしても奥から満ちてきた溶液でしっとりと潤いを増し、何かを訴えるようにズキン、ズキンと音をたててひくついていた。
キューンと胸を締めつけられるような切なさに、思わず両方の腿をよじるように擦り合わせてしまうと、きっちりと挟みつけられた肉の狭間からじんわり溢れだした媚液が、とり替えたばかりの下着をジワーッと濡らしていく。
部屋の中が暗かったせいか、沙由里は気分のうえで開放的になっていた。自分一人という状態がいっそう輪をかけたのかもしれない。
沙由里はすっかり暖まっている部屋の中で大きく毛布をはねのけた。分厚いカーテンの隙間から、ほんのりと外の光がもれてくる。両脚を器用に曲げてきっちり股間に食いこんだパンティを足首から抜きとると、まるでストリップ・ティーズのようにふんわりと宙に投げた。白く柔らかい布が、枯葉のようにベッドサイドに落ちる。
沙由里は闇の中に浮かんだ自分の白い優雅な曲線を、まるで他人が眺めるように見た。ツンと上を向いた胸の隆起には、まだ男の舌や指の感覚が残っていた。
そっと掌で覆うと甘い疼きが生じ、気持が急速に淫らなものに変化していく。
こんなふうにされたんだわ……。
敏也の丹念な行為を思い起こしながら、ゆるゆると揉みしだいていくと、そこからじんわりと快さが湧きだして、ゆっくり全身にひろがっていった。そのなかでもとりわけ敏感な部分があった。
なぜこんなに? と思われるほど、そこは濡れていた。指を差し向けようとしたが、恥ずかしさが先にたって、なかなかできない。誰が見ているわけでもないのだが、オナニーにまったく馴れていない沙由里には、ちょっぴり恐怖感もあった。
湿った吐息が沙由里の唇からもれた。男に愛されるという本質の一端に触れた沙由里に、この時、冒険心が芽生えはじめていた。
もっと知りたい。性に関するあらゆることをもっと知っておきたい。その答えは結婚後に充分満たされるはずであるが、沙由里の気持が、そして体が、性急に欲望についての回答を要求していた。
不意に、数年前の、まだ学生だった秀之と同じ布団に寝ていた時のことが頭の中をよぎった。好奇心いっぱいの秀之の手が、夜中に乳房をまさぐっていたあの感じは、くすぐったさと同時に、一種の甘美な感覚をもたらしたものだ。そして先ほど、敏也によって愛撫された乳房は、それをはるかに超えた強烈な快感を与えてくれた。それは男と女の肉体の結びつきを前提としていたがゆえに、その期待感と不安感が一体となって、女体に強烈な影響を与えたに違いない。
沙由里は太腿のあたりに手をやった。
このあたりだったわね……何やらひどく硬くてゴツゴツした熱いものが擦りつけられていたのは……。
性体験のある友人が、両手をひろげて具体的に硬く勃起した時の男性器の大きさを示したことがある。
まさか、そんなに大きいなんて……と、沙由里は、友人の両手の幅の広さと指で示した太さに驚嘆したものである。確か、先ほど太腿に当たった敏也のシンボルもかなり量感があり、力強さにあふれていたと思う。
やるせなさに、思わず両手で乳房を強くつかむ。胸の鼓動が何かをせかすように激しく高鳴り、闇の中に、クモの子を散らしたように無数の火花がよぎる。
沙由里は婚約者がそうしたように、右手で恥ずかしい丘を撫でた。しっとり湿った少なめの恥毛が指先に触れると、何やらゾクッと背筋が縮んで、疼きがツーンと股間に走る。
「敏也さん……」
沙由里は、まだそれほど愛着を抱いていない男の名を呼んだ。それは、具体的には敏也という対象ではなかったかもしれない。漠然とした男の影に向かって呟いたようであった。
自分の体に性の歓びを与えてくれる男の手や足が、妄想の中で沙由里の肌の上を這いまわった。
沙由里を包みこんだ熱気はグングンと上昇し、想像の中で沙由里は男に抱かれていた。男の手が恥ずかしいあたりを何度も往復した。同じように沙由里の手は恥毛を撫で、掻きわけ、すでにはちきれんばかりに膨れあがった陰核をつまみあげる。
細くしなやかな指が動くたびに、強弱さまざまな性感の波がめまぐるしく体の中を駆けめぐる。肉襞が沙由里の意思にかかわりなく蠢動すると、膣の奥はおびただしい愛の潤滑油で溢れんばかりに満たされた。だが沙由里は、直接そこに触れようとはしない。そこに指を差し向けてしまったなら、今までやったこともないような淫らな行為を、疼いている肉の裂け目にやってしまいそうで怖かった。
沙由里は静かに起きあがると室内灯をつけた。溢れた液は肉の合わせ目から押しだされるように流れだし、内腿をビッショリと濡らしている。サイドテーブルのハンドバッグから銀製のコンパクトを出すと、鏡の部分を開いて股間に近づけていった。性に飢えたふしだらな女のようで恥ずかしくもあったが、未知の体験に少しでも近づきたいという気持のほうが強かった。
両脚をはしたなく開くと、濡れた股間は冷んやりとしていた。
鏡でのぞいてみたが、黒い翳りの下は露で覆われていて、かすかにピンクの肉が見えるにすぎない。左手で茂みの生えた皮膚を上に引きあげると、伸びきったクリトリスが歪んだ姿を現わした。今にもはじけそうにツヤツヤと輝いて、せいいっぱい自分の存在を誇示しているかのように見える。
それにしても、なんと卑猥でグロテスクな形をしているのだろう。
スーッと立って姿見に全身を映す時などは、黒い茂みがそこはかとない風情を漂わせて、その造形美に我れながらうっとりするのだが、今、こうして淫らに両脚を開いてその全体を詳細に見ると、自分の持ち物でありながら、その醜悪な形にゾッとしてしまう。
これが、男の人が求めてやまないものだなんて……。
そう思うのだが、現実にそこからもやもやした何かが全身にひろがっていく。今もまた、ズキン、ズキンと肉片の一枚一枚が蠢いて、なんとも切ない気分になる。
こんなふうにしたんだわ……。
沙由里はコンパクトを放りだすと、人差し指と中指で尖った肉片を挟みこんだ。
「あっ、あーん……」
ピクンッと全身が引きつって、とてもいい気持だ。
「もっとして……」
沙由里は自分の呟いた言葉にびっくりした。そのまま同じ言葉をつづけざまに言い放ち、再び横になると太腿を強くよじった。両手がきつい感じで圧迫され、二本の指に挟まれた突起が悲鳴をあげたように震えた。
中途半端ではあったが、ともかくこうして、沙由里はひとつの終局を迎えた。
夜中に夢を見た。小さな蛇が逃げまどう沙由里の足もとに絡みつき、無理やり頭から恥ずかしい肉の裂け目にもぐりこんでくる。とても痛いのだが、さらに違った感覚も生じてきた。それは急に大きな歓喜となって沙由里を襲った。
「ああっ、もっと
!!
」
叫んだ声で目が覚めた。股間は小水をもらしたように濡れそぼっていた。恥ずかしさもさることながら、この時初めて、沙由里の心に男に対してのやるせないまでの恋情がかきたてられて、身悶えたのだった。
その頃--。
東京の港区にある神坂家では、風邪気味で昼すぎから寝込んでいた秀之が、湯気がたつほど汗をかいて目を覚ました。急いで着ているパジャマを新しいものと替えると、頭の重みとけだるさは嘘のように消えて、爽快さが戻っていた。
熱い玉子酒が効いたのかも……。
秀之は、まだ強い匂いの残っている空のコップを持つと部屋を出た。アルコールに弱い秀之は、元気を回復した今は、ちょっとした酒の匂いにもムカムカするのである。
キッチンから出ると、浴室で湯の流れる音がした。寝入っている間に亜矢子が帰ってきたらしい。そういえば、テーブルの上にブランデーの瓶とグラスが置いてあった。亜矢子は寝酒をあおってから風呂に入ったようである。
こんな時の義姉はひどく疲れている。そう思いたつと、廊下に立って浴室の気配をそれとなくうかがっていた秀之は、急に胸騒ぎを覚えた。
疲れきって帰ってきた亜矢子はアルコールを胃に流しこんだ後なので、すぐに寝入ってしまうだろうという確信があった。浴室と脱衣場の仕切りのガラス戸はきっちり閉めてあるが、廊下と脱衣場の引戸は開けっぱなしになっている。
それまで座っていた亜矢子が立ちあがってシャワーを浴びはじめた。曇りガラス越しに浮かんだ曲線の陰翳は、見ている秀之の大脳をこよなく刺激し、その結果は、たちまち下半身のふくらみとなって現われた。
足音を殺して脱衣場に近寄ると、ナイティの上に色鮮やかな紫と白の二枚のパンティが脱ぎ捨てられてあった。秀之はガラス戸の向こう側を気にしながら、二枚のパンティをつかんで鼻に押し当てた。白いパンティには、ほのかな香水の香りがたちこめていたが、紫のものには強い女の体臭が染みこんでいた。股間の細い切れこみにはかすかに湿り気とぬくもりが残っている。
秀之は夢中でパンティを口の中に押しこんでいた。ほんの一瞬でしかなかったが、秀之の脳髄は麻痺し、勃起がさらにひとまわり大きさを増した。
シャワーの音がやんだ。秀之はその場をいち早く離れて、キッチンの暗がりに身を隠した。そこからは脱衣場がよく見えた。
浴室から出てきた亜矢子が、さまざまに大胆なポーズをとりながら体を拭きはじめる。張りのある胸の隆起や、外人のように上方に盛りあがったヒップは、ちょっとした動作で右に左にと美しく変形し、盗み見ている秀之の心にみるみるうちによこしまなプランを思いつかせた。
とりわけ、亜矢子がパンティをはこうと前かがみになった時の、後ろから丸見えになった股間の構図は、秀之に決定的な気持を植えつけるに充分であった。大きく左右に張りだした尻肉の中心の割れ目から、赤肉のような粘膜が露わになり、そのまわりの腫れぼったい肉には、いやらしい感じで織毛が生えていた。
秀之はパジャマの上から突っ張った肉棒をしっかりと握りしめ、なんとかして、いま見た女陰の裂け目にこの熱くたぎったこわばりを埋めこみたいと思った。
亜矢子はパンティだけの姿で脱衣場から出てきた。キッチンに入ってきて明かりをつけたらどうしようという秀之の心配をよそに、亜矢子はあまり似つかわしくない演歌の一節をハミングしながら、乳房を揺さぶって階段のほうへ行ってしまった。乳房の揺れる様子にも、いかにも亜矢子らしい艶やかな特徴があった。
秀之はすぐに脱衣場に引きかえし、脱衣篭の奥に備えつけてある洗濯機の水槽をのぞきこんだ。紫色のパンティが、いくつかの洗濯物と一緒にネットにおさめられて水に浮いていた。急いでそれを取りだして電灯にかざして眺めると、中心に当たる布地の部分は、水槽の水ですっかり濡れていて、秀之をがっかりさせた。
だが秀之は、その紫色のパンティを勃起した肉棒に巻きつけると、壁にもたれて激しく右手を動かした。脳裏に亜矢子の裸身が浮かんでは消えていく。ふと気がついた時には胸に熱いものがこみあげ、いかついキノコ形の先端から白いミルクが噴きだしていた。
薄い紫色の布地は、それ自体がまるで亜矢子のあの部分の粘膜のように思えた。それであたりに散ったザーメンを拭きとった秀之は、まだ衰えようとしない分身に同情した。
ぶちこんでやるからな、きっと
!!
……
秀之は義姉の汚れたパンティをネットにおさめ、水槽の水にたっぷりと浸してザーメンの痕跡を消すと、忍者のような足どりで自分の部屋に舞い戻った。
それからの三十分は、いつもの二倍、三倍の長さに感じられた。あの調子なら、また誘眠剤でも呑んで早々と寝てしまうに違いない。明日あたり、両親や沙由里が帰京するだろうから、今夜が最後のチャンスかもしれない。
きっちり三十分が経過してから、秀之はこっそりと亜矢子の部屋に向かった。
やってきたわ……。
亜矢子は廊下のかすかな軋みを耳にすると、しどけなく羽毛布団をベッドの下に蹴落とした。枕もとの小さな電気スタンドの明かりが、ベビードール型の短いネグリジェから剥きだした、すらりとした脚をうっすらと照らしだしている。
亜矢子は浴室でシャワーを浴びている最中に、ガラス戸の外にはっきりと人の気配を感じとっていた。合鍵で玄関に入ってきた時に、秀之のお気に入りのリーガルの靴だけが揃えてあった。それで、家の中にいるのは秀之だけだと知っていた。
亜矢子は秀之と二人だけで家にいることについて、そこはかとない危機感を抱いていた。それが実際の形となって現われたのが、先日の考えてもみなかった秀之の行動である。それ以前にも、実はいろいろと思い当たる節がある。
亜矢子は美しい下着を集める趣味があった。それを特製の白塗りの洋服ダンスにしまっておくのだが、時折り、その位置や順序が変わっているような気がしたのである。
数カ月前のある日、亜矢子は家を出る前に、五段の引き出しのすべてに一本ずつ自分の長い髪の毛を唾で貼りつけておいた。二日後、取材で帰宅してみると、髪の毛はすべて脱落していた。下着の位置も微妙に変わっていたのだ。
犯人は秀之以外には考えられない。それでいて亜矢子は、秀之を詰問する気にはなれなかった。そろそろ成人になろうとしている健康な大学生としては、なんとなく当然の行為のような気がした。しかも、亜矢子に対してかなりの関心を持っているということが、彼女の女としての自尊心を満足させていた。むしろ、興味深く義弟の行動を眺めていたといったほうがいいのかも知れない。その結果が具体的な形として現われてしまった。先日の夜、寝ている亜矢子の肉体に対する秀之の悪戯である。
義理の父や妹に対する複雑な気持のうえの屈折は、やがて、密かに義弟である秀之を誘惑してやろうという、よこしまな考えに変わっていった。
ただ、女として、また義姉として、自分から仕向けることはできない。無理やり秀之によって屈服させられたという形をとれば、後になってなんとでも言いわけがたつ。そういうふうにことを運ぶには、まず、秀之の関心を惹かなければならない。亜矢子はことあるごとに、それとなく秀之を挑発した。
秀之の亜矢子を見る眼がしだいに変わっていったのは言うまでもない。脱衣場に若い男の子が興味を持つような派手なパンティを、ことさらだらしなく置いたのも、義弟の関心を惹く方法のひとつだったのである。
亜矢子は脱衣場から自分の部屋に戻る際、わざとパンティだけの大胆な格好で廊下を歩いた。秀之の眼がキッチンの暗がりから自分に向けられていることを知っていたからだ。
足音をたてて階段を昇ったが、すぐに踊り場に引きかえして、キッチンから出てくる秀之の様子を盗み見た。まさか秀之が、水槽の中におさめた紫色のパンティを引っ張りだすとは思っていなかった。それだけに、秀之がむくつけき肉棒に自分のパンティを巻きつけて激しく右手を前後させるのを見ると、まるで自分がその肉棒で犯されているかのような異常な興奮を覚えた。目の前がクラクラしただけでなく、せっかくはき替えたパンティの底が、たちまちぬるつくのを感じ動転した。あわてて部屋に戻り、ティシューペーパーで疼いている粘膜の汚れを拭きとったが、妙に体が火照って寝つけなかった。
ちょっと前に飲んだブランデーの酔いまでが、すっかり吹き飛んでしまっている。誘眠剤を呑もうとしたが、ひょっとすると秀之が、今夜もまたこっそり侵入してくるかもしれないという気がした。それで、誘眠剤を呑まずに、その小瓶をそっとサイドテーブルの上に置いた。室内灯を消し、電気スタンドだけをつけると暖房の温度をあげた。
五分……十分……。秀之がやってくる気配はない。眠ってしまったのだろうかと庭を見ると、庭の一部に秀之の部屋の明かりが陰翳をつくっている。
やっぱりまだ起きている!……その事実だけで、亜矢子は、秀之が必ず部屋にやってくるという確信を持った。そして、亜矢子の思った通りに秀之はやってきたのである。
両方の腕を肩より少し上に曲げているので、短いベビードール型のネグリジェは下腹のあたりまでズリあがっている。露わになっているパンティのふくらみのあたりに熱い視線を感じて、亜矢子はひどく落ち着かなかった。そのくせ、体温はグングン上昇し、体内の血が奔流のように駆けめぐる。
--君の土手は高いなァ……。
かつて恋人だった男にそう言われたことがある。それ以来、亜矢子は水着を着てもホットパンツの時でも、ことさら恥ずかしいヴィーナスの丘を強調するスタイルを心がけた。行き交う男たちの視線が、その場所に眩しそうに注がれると、いつも秘唇を熱く濡らしたものだ。
今、秀之にその恥ずかしい丘を見られていると思うと、体内にひそむ魔性がコソリと音をたてて動きだし、亜矢子の意思とは無関係に、秘液が湧きだすのだった。
かつて亜矢子は、恋する男に女の部分を見られているだけで達したことがある。いつだったかアメリカに取材旅行をした時に、悪戯ごころの旺盛なスタッフに、男の黒人ダンサーたちがストリップをやるという怪しげなバーに連れていかれたことがあった。そこの最大の見世物は、最前列に陣取った女性観光客の前で、素っ裸で踊っている黒人が、ビール瓶ほどに勃起した一物から見事なまでに多量のザーメンを発射する芸である。
彼らは、手はもちろんのこと、器具などはいっさい使わない。ただ、見られているという受動的な刺激を受けて射精するのだ。男も女も、セックスにおいては視覚が大きく貢献すると悟ったのはそれ以来である。
亜矢子は恥ずかしいヴィーナスの丘が、今にも躍りだすのではないかという錯覚にとらわれた。盛りあがった肉が激しくひくつくのを感じた。亜矢子はその切なさに耐えかねて寝がえりを打ち、体を横向きに変えて、恥丘を太腿の下に隠した。だが、すぐに両方の足の親指がスーッと義弟につままれて、また大の字の格好に直されてしまった。
一度体勢を変えたことで、短いネグリジェの裾は下腹を露出させるほどにまくれあがった。下半身は白い薄手のきっちりしたパンティだけである。
ああ、また見られている……。
亜矢子の股間が、一気に熱い液体で満たされた。秀之がどんな格好で自分を見つめているのか知りたかった。だが、眼を開けるわけにいかない。あくまでも寝入ったフリをしていなければならないのがつらかった。それでも、ともかくこの状況に耐えることにした。
影がコソリと動いて、秀之がベッドの端に座りこんだような気配がした。ますます間近で見られているわけである。
ああ、どうしよう……。
亜矢子は処女のように、羞恥心の塊りのようになっていく自分を、心の中で笑った。あまりに期待感が大きいからであろうか、秀之の手がパンティの上に置かれ、恥丘のふくらみを遠慮がちに撫でた時、亜矢子はブルルッと震えそうになる。それをどうにか耐えた。その代わりに、アヌスのすぼまりをキュッと締めつける。
瞼の裏で人影があちこちに動くところをみると、秀之はいろいろな角度から股間をのぞきこんでいるに違いない。恥丘のふくらみに置かれた手は、相変わらずはっきりしない動きをつづけている。
もっと強くすればいいのに……。
亜矢子はしだいに燃えてくる体をもてあまして、もどかしげに心の中で叫んでいた。
秀之の指が一本だけ股間の割れ目にゆっくりと進んできた。少し股を開き加減にしているので、秘唇の中心には簡単に到達する。もうかなりの硬度をもっていた肉の突起は、パンティ越しに撫でられて、たちまち反応し、みるみるうちに膨らんだ。
亜矢子は、その時初めて、ひとつのミスに気がついた。はき替えたばかりの白いパンティが、あまりにもピッチリと下半身にフィットしていたからだ。もっとルーズなものをはいていたなら、秀之も脱がせやすかったかも知れない。
しかし、まさか相手が脱がせようとする時に、腰を浮かして協力することもできない。あくまでも寝入ったフリをしていなければならないのだ。
亜矢子の思いはまさに的中していた。しばらくの間、恥ずかしい丘を撫でまわしていた指先が、やがてソロリとパンティの縁にかかった。その指先にはとまどいが感じられた。あまりにもきっちりとゴムが亜矢子の肌に食いこんでいたからだ。
ああ、やっぱり……。
亜矢子は燃えてきた体を相手任せにして、なんとか横たわっていた。亜矢子もすでにこの時、秀之と同じようにこの秘めやかな遊戯に熱中していたのである。
秀之の指はよくやくパンティの縁の内側に入ってきたが、やはりためらっているようであった。亜矢子自身、秀之の指が食いこんだ部分の肌が痛かった。これではどうにも脱がすことは無理である。案の定、いったんは縁をくぐり抜けた指であったが、やがて未練がましくパンティから引き抜かれてしまった。
亜矢子は、期待はずれに終わった秀之の行為に、思わず大きく吐息をついてしまった。すると、ハッとしたような気配が伝わってきた。秀之が寝息をうかがっているようである。
亜矢子は、いかにも深い眠りに入っているかのように、わざと、さらに両脚をひろげるように体を動かした。一方の脚をくの字に曲げたので、パンティの一番幅の狭い秘唇に食いこんだ部分がすっかり露出してしまった。亜矢子はその部分の冷んやりした感触で、そこがすでに充分に濡れていることを計算に入れていた。秀之の視線をそこに引きつけるには、一番挑発的なスタイルだという確信があった。
効果はすぐに表われた。太腿のあたりに、秀之の熱い吐息が吹きかかった。体をかがめ、顔を股間近くに寄せてじっくりと見つめているに違いない。
ああ、こんなに見られている
!!
亜矢子の意識は、裂け目のすべての肉片や粘膜にビリビリと伝わった。末端神経までが震えだし、子宮が躍ったように蠢いた瞬間、膣は胎内から押しだされてきた淫汁でたっぷりと満たされた。じんわりと溢れでた秘液は、粘膜が接触しているパンティの布地にひろがっていった。
秀之はその光景を間近でしっかりと見つめていた。眠っていても、女体はこんなに敏感な反応を示すものなのだろうか? ひょっとして、義姉は起きているのではないかという疑いを抱いて、用心深く寝息をうかがった。しかし、軽い平常通りの寝息は持続されたままである。やはり眠っているとしか思えない。
秀之は蛙のように這いつくばると、濡れている股間の中心部に顔を近づけた。そこには明らかに、女の匂いが漂っていた。見つめているうちに熱いものが体の中から噴きだし、それが声になって秀之をけしかけた。
やれ、やっちまえッ!
体は今にもメラメラと燃えあがりそうに熱かった。分身は極限にまで膨張して、一刻も早く解き放たれるのを待っている。
秀之はとうとう膨れあがっていなないている分身を剥きだしにすると、不自由な格好ながら、その先端をパンティの濡れた溝のあたりに当てがった。
あっ、この人……。
亜矢子は重くのしかかった影と、大事なところに当てがわれた硬いもので、秀之が何をしようとしているかを瞬時に悟った。
パンティの上からなので直接インサートすることは不可能であるが、秀之はそれでも一種の接触を試みようと努力しているのだ。不憫な気がした。しかし、今となってはどうやって協力することができよう。そのままの姿勢でじっとしているしかなかった。
すぐ顔の上で、秀之のハアハアという荒い息使いが聞こえてくる。
眼を開けたら、いったいどんな顔をするだろうか? いいのよ、好きなようにしていいの……と言ったら、いったいどんな反応を示すだろうか? 亜矢子は寝たフリをしながら、淫らな誘惑に駆られていた。けれど、そんなことをしてしまったら、当初の、秀之によってどうしようもない立場に追いこまれるという、被害者としての立場がなくなってしまう。むしろ、年上の女が挑発し、誘惑したというありがたくないレッテルを貼られてしまう危険性が充分にある。亜矢子は一番それを怖れた。
秀之は硬いこわばりの先を布地一枚へだてた粘膜に擦りつけていた。亜矢子の心も体も、そこに触れられている粘膜も、彼の幼稚な行為を決して嫌悪していなかった。その証拠に亜矢子は、さらに義弟の行為がやりやすくなるように、自然な感じで両脚を開いていった。もちろん、眼は閉じたままである。
秀之は、オヤ? といった緊張の表情で亜矢子の寝顔に眼を向けたが、ぐっすり寝入っている様子を確認すると、また硬くなった肉棒を、しきりにパンティの中心になすりつけた。しかし、それも長くはつづかなかった。すぐに爆発寸前にまで高まってしまったからである。
秀之は少し身を引くと、恨めしそうに亜矢子の腰にぴったりとフィットしている下着を見つめた。こわばりを押しつけたところは、クッキリと溝になって、その下の肉の割れ目が浮きだしていた。愛液に濡れた粘膜と淫らな恥毛が、やるせなく義弟の眼に迫り、秀之の勃起の先からは、とめどもなく透明な露が滴り落ちる。
秀之はかろうじて射精に耐えた。義姉の寝顔は天使のようにあどけなく穏やかに見える。しかし、その股間からは、悪魔の嘲笑が聞こえてくるようだった。
だらしのない男だ。パンティを引き千切ってでもやりたくないのか! 男らしくやってみろ。そうしたら、お前の一物をこの柔肉で思いっきり締めつけてやるから……。
秀之は真のセックスをしたかった。その歓びの大きさ、深さを知りたかった。だが、これほど異常に興奮しているにもかかわらず、力ずくで犯そうという勇気はなかった。
大学二年生の時のあの屈辱的な夜以来、秀之が亜矢子に抱いていたものは、最大級のコンプレックスと憎悪、そして、美しい義姉に対する切ないまでの憧憬に他ならない。秀之はそれをはねのけて、真の男になる勇気がなかった。
結局、秀之のとった行為は、前の時とまったく同じであった。宙に猛々しく向いているこわばりを右手に握りしめると、無理やり下にねじ曲げ、少し横向き加減の亜矢子の顔に近づけた。
亜矢子は、顔の前に迫った影と、鼻先からツーンと匂ってくる男のエッセンスで、秀之が何を企んでいるかをはっきりと悟った。
目を開けるわけにはいかない。寝たフリをつづけるしかなかった。ツルリとした先走りの液が唇に触れ、太くて硬い肉のこわばりがゆっくりと差しこまれてきた。マッシュルーム状の男の先端は、自ら吐きだした液で潤滑油をまぶしたように濡れそぼり、強い独特の匂いが、刺すように鼻孔から流れこんだ。
口腔内に突き進んできたものは、前回の時よりもはるかに長大で充実していた。しかし、それが半分も唇に入りきらないうちに、不意に匂いが強烈になったかと思うと、節くれだったものが、ビクンッ、ビクンッと脈動し、「ああ、おねえさん!!」という秀之の呟くような声が聞こえた。
あ、出すんだわ……。
思った瞬間、見事に膨れきった亀頭の鈴口がカーッと開いて、熱い樹液がドッとばかりにほとばしりでた。そして、亜矢子はまた、秀之の心底からの呟きをはっきりと耳にした。
「おねえさん……沙由里ねえさん
!!
……」
この時の亜矢子の受けたショックは、かつてないほど彼女の気持を傷つけ、打ちのめした。秀之にとって、自分がただの沙由里の身代わり人形にすぎないことを、亜矢子はこの時になって初めて知ったのだ。亜矢子の生涯にとって、これほどの侮辱と裏切りはなかった。だが、亜矢子の憎しみは、秀之にではなく沙由里に向けられた。
亜矢子の口腔内に飛び散った白濁した液は、まさしく沙由里の汚物以外の何ものでもなかったのである。


