実姉と義姉 第一章 義姉・亜矢子の寝室 · 2 (2/7)
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--男と同じさ。女だって気分よくなってくれば、乳首やクリトリスは硬くなるよ。
そんなことを教えてくれた友だちもいる。
これほどぐっすりと寝入っていても、感じたりするものなのだろうか?
ペニスの先を別の乳首に移動させて、丹念に同じことを繰りかえしてみた。美しいピンクの光沢がさらに輝いて、確かに乳首は大きく膨張した。
ひょっとすると、俺がよく見るように、亜矢子ねえさんも変な夢を見て気分を出しているのかもしれない……。
そんなことを想像すると、またしても欲望がはじけそうになってくる。
もうダメだ……。
秀之はこれ以上の我慢の無理強いは到底できないと悟り、いきりたったものを、身を乗りだすようにして唇のほうへ移動させた。
透明な露は、まるで湧き水のように鈴口から溢れてきて、納豆のように糸を引いて、亜矢子の胸や口もとに落ちていく。秀之は狙いを定めるようにして、鈴口からたれる欲望の先走り液を、亜矢子の開いた唇に落とした。二、三滴が唇のまわりを濡らしたが、後の大部分はうまく口の中に落ちこんでいく。
かつて一度だけ、亜矢子にあしらわれて、亜矢子の掌の中で爆発したことが想いだされる。口の中で欲望を発散させるというアイデアは悪くないが、もし、亜矢子が起きたらどうなるのだろう。唯一の不安がそれだった。
また、亜矢女ねえさんの奴隷になるのか? それとも先のことなど考えずに、力ずくで犯してしまおうか?……そうするしかない! 犯すのだ!!
ようやく一つの結論を出すと、秀之は急に大胆になっていく自分を感じた。無理矢理にこわばりを下方にねじ曲げると、亜矢子の上下の唇の間に押しこむように入れてみる。美しい顔が急に痛々しく歪む。だが、ここで同情しては何にもならない。
膨張しきってツルツルに張りきった亀頭の丸い粘膜が、ようやく半分ほど口腔におさまる。その途端に、かつて味わったことのない眼もくらむような鮮烈な快感が、腰骨の中心あたりからドッとばかりに噴きあげてきて、あやうくこわばりが爆発しそうになった。
秀之は必死で耐えた。歯をギリギリと鳴らし、アヌスに力をこめて、ともかく耐えた。眼に染みる光景を瞼の奥にしっかりとどめておきたかった。男と女の織りなす奇妙な構図に魅了されたように、秀之は自分も含めた全体像を眺め、気持のうえではとにかく充足感を味わった。
グングン内部からせりだしてくる快感の前触れは、もうすぐそこまで来ていた。
「ああ、おねえさん」
秀之が感きわまって呟いた。その時、亜矢子の舌がぎごちなく動いた。無意識の行為だったのだろうか。ともかく舌は亀頭の先を掃いた。
「あっ……」
小さく叫んだ秀之は、夢中で残っている肉茎の半分を義姉の口腔に押しこんでいた。
息苦しそうに亜矢子が呻いた時が、秀之の限界の頂点だった。眼の奥で光がはぜた瞬間、逞しく膨れあがったくさびの先から、信じられないほど多量の歓びのしるしが一挙に噴出した。
「あうう--ッ
!!
」
秀之は両手を義姉の顔の両側についてふんばると、全身を激しく痙攣させた。
美しいルージュに彩られた唇の端から、独特の匂いを放った白濁した液体が溢れでた。
不思議なことに、亜矢子は眠っているにもかかわらず、ほとんどの液体を喉の奥におさめてしまった。
すっかり欲望を吐きだしてしまうと、秀之はにわかにあわてだした。虚脱した体にムチ打って亜矢子から離れると、枕もとにあったティシューペーパーを指先に巻きつけて、亜矢子の口腔にまだ残っている樹液をぬぐい取り、唇の端から流れでた分もすっかり拭きとった。急に恐怖感が甦り、秀之は震える手でワイシャツのボタンをはめて羽毛布団をかけると、いたたまれないような罪悪感に苛まれて、亜矢子の部屋から退散した。
第二章 実姉・沙由里は処女(バージン)?
家の中も、窓の外も、何ひとつ物音がしていない。亜矢子は天井の一角を見つめながら、まだ口の中に残っている栗の花とそっくりな精液の匂いを、ある種の感慨をもって深々と吸いこんだ。
亜矢子が動物ものでヒットを飛ばしたある映画監督と別れたのは、ついひと月ほど前である。中堅女優を妻に持つその監督は、セックスにかけては抜群のテクニックの持ち主で、亜矢子は彼の性技にすっかり溺れ、女房と別れるかもしれないという相手の言葉を信じて、ある期間、身も心も捧げていた。
しかし、結局は捨てられてしまい、ますます男に対する不信感をつのらせていった。
淋しい気持をまぎらわすために、その監督と別れてからたてつづけに複数の男たちと交渉を持ったが、どの男も遊びだとはっきり割りきっていた。ある男などは、セックスが終わると枕もとに二万円というはした金を置いて、亜矢子をホテルに置き去りにした。
そんな折り、義理の妹である沙由里の結婚が正式に決まった。相手の男は、地方財界の有力者の跡とり息子で、沙由里の大学での先輩だった。
一つ年下の義妹とはいえ、ともかく妹の沙由里が先に結婚するということで、男に捨てられた直後の亜矢子の気持は、ますます荒んだものになっていった。
私は再婚した母の連れ子だから……という意識が亜矢子をとり巻き、やり場のない怒りを、目に見えぬ加害者に向かって投げつけた。そして当然のように泰造親子を恨んだ。
しかし、肉体とは哀しいものである。すっかり男によって開花された亜矢子の肉体は、あのめくるめく快楽の味を決して忘れてはいなかった。レポーターとして、有名タレントの情事を追跡している時など、時として立場を忘れて、自らその渦中に飛びこんでいきたい衝動に駆られる亜矢子だった。
昨夜もそうだった……。
フライデーやフォーカスまがいのことをして、清純派といわれるアイドル歌手を追いかけ、ようやく相手の男のマンションまでつきとめたのだが、そのアイドルは男の部屋に入ったきり一夜明けても出てこない。
同行のカメラマンと一緒に思いきってブザーを押すと、男だけが顔を出した。
「アイドル歌手の××さんがご一緒のはずですけど……」
「え
!?
夢でも見てるんじゃない。中に入って見てもいいですよ」
相手は部屋の中を全部公開してくれたが、アイドル歌手の影も形もない。一晩じゅう見張っていたのだから、こんなはずはないと思ったが、実際に部屋はもぬけの殼である。
眠い眼を擦りながら雨の中で待機している時、亜矢子は部屋の中にこもっているアイドル歌手に嫉妬した。
まだ十七か八のくせに、男の部屋に泊まるなんて……。ぬくぬくと男の胸に抱かれて、セックスの饗宴を繰りひろげているのかと思うと、なんとも腹立たしい。そのうち、亜矢子は自分が情欲の塊りになっていくのをはっきりと意識した。もしその場で同行のカメラマンが迫ってきたら、きっと体を開いたに違いない。
亜矢子は欲情の処理を家に帰ってから行なった。自慰がもう少し長引いていたなら、その最中に秀之が声をかけていたはずだ。
秀之が無断で部屋に入ってくることはなかった。だから、亜矢子は内鍵もかけずに安心して自慰に専念できた。
男もののワイシャツのようなパジャマを着ると、パンティを脱ぎ捨ててベッドに横たわった。じかに肌に触れる前に、さらりとした木綿地の上から乳房を撫でまわす。布地が軽く擦れて、少し痛いような感触がなんともいえず快い。いつもそうだが、こういう時、亜矢子の想像は自由にはばたいた。過去の男たちが試みたさまざまな情事の方法を想いだして指を粘膜に戯れさせ、少しでも深い快感をとりこもうと努力した。
亜矢子はまず刺激の少ない部分から愛撫することを好んだ。ガツガツした男のなかには、すぐに女の秘所に手を差し向ける未熟な者もいたが、セックスのベテランになればなるほど、髪の毛とか首筋などに軽くタッチし、それから徐々に唇や耳、ふくらはぎとか足指の間などに触れ、高ぶる乳房へと至るのだった。
亜矢子が一人で慰める時も、だいたい同じような経緯をたどることが多かった。ただ、髪の毛とか足の指の間などは、自分で触ったのではあまり感じない。乳房の周辺や内腿のあたりなど、快楽のツボの中心からさほど離れていないところから刺激しはじめ、気分が高揚するにしたがって、おもむろに乳房や乳首、そして濡れはじめた秘唇の柔らかな粘膜へ移行するのを常とした。
亜矢子は別れたばかりの映画監督のやり方を想い起こしていた。そして、その通りに自らの体を愛撫していった。
その男は爪による愛撫が特技だった。決して指や舌で女の肌にじかに触れないのだ。だから、いつも右手の小指の爪を伸ばしていた。爪で耳たぶを弾き、耳の穴をくすぐる。その微妙なタッチは女をじらせるのに充分な効果があった。
「もっと強くして
!!
」とどんなに叫んでみても、その男は決して亜矢子の望み通りにはしない。ひたすら爪の先で軽く掃くだけである。手首をつかんで「もっとして、強く触ってよ」と哀願しても、男は愛撫の方法を決して変えようとはしなかった。
亜矢子は、男がこわばりを挿入する寸前までの自分の狂乱ぶりを想いだして、体を熱くした。
「どうしても強く触れてもらいたいなら、自分の手でやるがいい」
男はそう、うそぶいた。一時間近くも爪だけのデリケートな愛撫が繰りかえされると、亜矢子は本当に発狂寸前になることがあった。
そんな時、亜矢子は男の見ている前で、すさまじいオナニーをやった。一度そういう癖がつくと、なりふりかまわず自らを慰めた。すぐ目の前で男が見ていると思うと、目の前がクラクラするほどの高ぶりを覚え、快感の度合も深まった。
男はそんな時、亜矢子に卑猥な言葉を言わせるのだ。男に抱かれたくてたまらない状態に追いこまれた亜矢子は、なんのためらいもなく男の望んでいる言葉を口にした。
「さあ、言うんだ。君は今、何をされたいのかね?……何をしたいんだ?」
すかさず亜矢子は、自分の指で刺激している女の部分の俗称を、唸るように叫ぶ。若い女なら決して口には出せない恥ずかしい四文字の言葉を言い放つと、その瞬間、いつも亜矢子は飛翔した。
姿見に全身を映して、かつての監督とのそんな情事を想い起こしながら、亜矢子は指を股間に這わせる。
爪先による充分な愛撫を与えた後なので、すべての粘膜は敏感に反応した。しっとり潤った繊毛の中に中指をくぐらせると、すっかり充血したヴィーナスの丘は、それだけで期待に震えた。淡い茂みをまさぐりながら、中指は少しずつ愛の突起に近づいていく。亜矢子はこの短い間の期待感がたまらなく好きなのだ。
そこはすっかり膨れあがり、今にもはじけそうだった。例によって細い指先がスーッと撫でる。
「う--っ
!!
」
亜矢子の口からケモノのような充足の唸り声が吐きだされる。次に、両手を同じように使って、突起の左右の粘膜を引っ張った。ぎりぎりにまで粘膜が伸長すると、その緊張感で全身がおこりのように震えた。
まず最初の小さなエクスタシーが訪れる。陰核自体が、早く触ってもらいたくて、ピクン、ピクン……と蠢きだす。同時に、背中に突きあげられるような快感が生じ、亜矢子は自分の胎内から淫水がほとばしるのを感じた。
こうして、第二、第三のエクスタシーが矢継ぎ早に訪れる。そして一回目より二回目、さらに三回目、四回目と回を追うごとに、エクスタシーは高度なものとなっていくのだ。
亜矢子は男にじらされた時のように、自らの肉体にも忍耐を要求する。愛液でたっぷりと潤っている女芯には、なかなか手を触れない。我慢をすればするほど、最後に訪れる快楽が強く大きくなることを知っているからだ。
「オマ×コ触って」
あたかも傍に男がいるかのように、甘い声を出す。女陰を意味する四文字を、誰はばかることなく言う時の解き放たれた歓びは、いったい何にたとえたらいいのだろう。そこには燦然たる光の世界がある。言葉を発した本人しか知り得ない金色の世界がある。
「あなた、オマ×コに触ってよ、お願い」
亜矢子はもう一度鏡の中の自分に哀願し、ゆっくりと両脚を極限まで開いていく。しだいに長く黒い茂みが左右に割れて、そこにひとつの宇宙が拓ける。それまで絡み合っていた小陰唇がねっとりした糸を引きながら左右にわかれ、全容を露わにした肉洞の奥からキラキラした淫水が外に向かって滴り落ちる。
「早く……早く触って」
切なく喘ぎながら、待ちに待った指をV字形にして陰核を挟み、ゆるゆると揉みこんでいく。たちまちピンク色に染めあげられた二本の指が愛液で濡れそぼるのだ。
決して強くは揉まない。あくまでも軽く、触れるか触れないかのタッチで掃くように擦る。ジワジワと湧き起こる快感は、まるで限界がないように上昇していく。初めから強く触ると、ズシンッと響くような快感を得ることができるが、すでにその時が頂点であって、それ以上の快感は望めない。しかし、亜矢子の流儀でやると、スタートこそもの足りない感じがするが、徐々に高まる興奮と快感はつきることなく上昇していく。
亜矢子はこうやって第一歩、第二歩と快感を掘り起こす作業をつづける。自分自身でも感心するほど見事な肢体に、どうしてこれほどいやらしい形をした性器がくっついているのか不思議でならない。しかし、この醜悪な形態をしたものこそ、快楽の震源に他ならないのだ。
心地よさは触覚だけでなく、視覚によっても増幅されていく。女陰の、言葉には言いつくせない卑猥な形は、それがたとえ自分自身のものであっても、見ている者を興奮させずにはおかなかった。
亜矢子は鏡に映しだされた自分の姿に酔い、行為に熱中した。指の位置を変えて、人差し指と親指で硬く尖ったクリトリスを先端に向かってつまみあげながら、中指を濡れそぼって充血し、蕩けそうになった肉の割れ目にゆっくりと押しこんでいく。
かつて愛人だったある男は、秘唇にこわばりを突き立てたままの状態で、亜矢子に陰核を触らせた。男の肉棒が与えてくれる歓びと、自分の指が引きだす快感に、彼女は狂喜したこともある。
「あなたの言う通りに触ってるわ……ほら、こんなふうに擦ってるの」
股間を熱い眼で見つめながらしゃべりかけ、中指を蜜壷に抜き差しする。時には入れた中指を鉤形に曲げ、肉片を掻きむしる。より強い接触を求めて、腰をブリッジ状に突きだす頃には、亜矢子の体力も限界に達している。それを充分に計算したうえで最後のオーガズムに突入するのだ。
肉襞の間からドッとばかりに淫水が噴きだしてきて、蜜壷に埋めこんだ中指に浴びせられる。両方の太腿をよじると、膣の肉襞が指を強い力で圧迫して、めまいを起こしそうな快感が肉洞から脳天に突き抜けていく。
亜矢子が汚れた下半身をティシューで拭き清め、新しいパンティを身につけて誘眠剤を呑んでから十分ほどたった頃、廊下で秀之が声をかけたのだ。亜矢子は夢うつつで義弟の声を聞いていた。夢の中のようでもあるし、現実の世界のようでもあった。睡魔が急激に亜矢子を襲いつつあったが、なんとか耐えていた。
秀クンが入ってきたようだ……。返事をしようとしたが声にはならない。
亜矢子は秀之の行為を半分ほど覚えている。後の半分は夢の中の出来事だと思った。眼を開こうとしたが瞼が重すぎて、その努力も結局、無駄であった。
なぜ、秀之が私の体に触れるのだろう? やっぱり夢なんだ、という気がした。あのおとなしい秀之がそんな大胆なことをするわけがない。
亜矢子はもうろうとした意識のなかで、かつてつき合った巨根が自慢の男のことを想いだしていた。彼は勃起した一物を見せたがった。確かに大きな代物だったが、テクニックは並み以下で、それは当人もよく承知していたとみえ、結合する前に、その巨根で女体を撫でまわすのが好きだった。そうやって時間稼ぎをするのだが、途中で耐えきれなくなって、乳房を撫でまわしているうちに射精してしまうのだ。
亜矢子は、その男ではない誰かが、長大になった肉棒で体のあちこちを愛撫している夢を見ていた。だが、時折りその相手は「おねえさん……」と声をかけてくる。おねえさんと呼ぶのは秀之以外にはいなかった。矛盾に気づいた時、亜矢子はそれが夢ではないことを悟った。いや、口の中に、無理やり硬くなったペニスが押しこまれた時に、現実の出来事だと気づいたといったほうが正しいかもしれない。
何か言おうとした。だが息苦しくて何も言えなかった。ただ、舌をもぞもぞと動かしたにすぎない。その瞬間に生温かいミルク状のものが一気に口腔に注ぎこまれたのである。
亜矢子はそれをゴクリと呑みこんでしまった。そうしなければ窒息しそうだったからである。頭の中はボーッとしていたが、夢でないことだけははっきりしていた。
相手は秀之しかいない。混乱した頭で、なぜ秀之がそのようなことをしたのかを考えた。
母が亜矢子を連れて秀之の父と再婚して間もない頃、亜矢子は秀之が両親の部屋を覗き見しようとしたのを見つけたことがある。それ以来、秀之は義姉に弱点を握られたことで奴隷のように忠実にかしずいた。
亜矢子は自分なりにある判断を持っていた。あの子はそのことで私を憎んではいない。むしろ、私の言う無理難題を嬉々として聞き入れてきたのではないか。私に接することをひとつの喜びとしていたという信念があった。それは、とりも直さず、私に関心があるということに他ならない。極言すれば、私に惚れているということなのだ、と。
だから、亜矢子は黙って寝入ってるフリをして押し通した。気持のどこかで、秀之の行為を許容する部分があったからである。
眠っている女の口腔に精液を発射するなどということは、女性に対する許しがたい侮辱であるが、亜矢子はあえてそれを許した。
秀之が音もなく部屋を出ていってから、亜矢子は泰造や沙由里に対しては憎しみに近い感情を持っていても、秀之に対してはそれほどでもないという気持を再確認した。いや、むしろ秀之の自分に対する微妙な気持を、自分も一種の期待感をもって密かに待ち望んでいるのではないかという気さえした。
秀クンと私が義理の姉弟という枠を破って、男と女の関係になったら、家族はどんな顔をするだろう?……
それは泰造や沙由里に対する痛烈な復讐になるのではないか……。そう思うと、なんだか今までの塞いでいた気分が、急に浮きたつような感じさえするのだった。
そんなことを考えているうちに、亜矢子は本格的な眠りについてしまった。
その日の昼すぎ、札幌では泰造たちが仲人を交えて、沙由里の婚約者である花沢敏也とその両親たちと、四月の吉日にとり行なわれる結婚式の打ち合わせをしていた。
敏也の父親は北海道財界の有力者の一人で、一人息子の敏也は、沙由里の大学での三年先輩であった。敏也は入学したばかりの沙由里が乗馬クラブに入部した時にひと目惚れして、大学を出てからも、沙由里から離れたくないばかりに北海道には戻らず、父の経営する会社の東京出張所にとどまるほどの熱の入れようであった。
沙由里は、正直なところ、敏也に対してそれほど強い関心を持っていたわけではない。敏也は沙由里に対して優しいナイトぶりを発揮したが、どちらかというと自我の強い男で、乗馬クラブでも孤立した存在であった。それは一人っ子という環境で育ったことが強く影響していた。
沙由里がなぜ、そういう男との結婚に踏みきったか。それは、父の事業を助ける目的があったからである。
数年前に商社を辞めた泰造は、小さな輸入会社をつくった。当初こそ順調であったが、沙由里が大学を卒業する頃から経営が行き詰まり、かなり危険な状態になっていた。花沢家は、それを全面的にバックアップするという条件をつけてきたのである。
沙由里に言い寄る男は星の数ほどいたが、一番熱心だったのは敏也である。沙由里は父の窮地を救うために、敏也との結婚を承諾した。利口な沙由里は、もちろんそのことに関しては、父に対しても相手の敏也に対しても、まったくひとことも触れなかった。この結婚には種々の思惑が絡んでいたことを、泰造と沙由里以外の者は誰も知らない。もし、亜矢子が沙由里の婚約成立の裏に、複雑な事情があったことを知っていたなら、年下の沙由里が姉の自分を差しおいて結婚することに同情したかもしれない。知らないからこそ、亜矢子は沙由里に嫉妬し、泰造を恨んだのだ。
結婚式についての詳細な打ち合わせが終わると、仲人や両家の親たちは気をきかせて、沙由里と敏也を二人だけにして解放した。
夕方近くになっていたが、敏也は沙由里を藻岩山の頂上近くへ案内した。美しい雪化粧の札幌の街並みが沙由里のそれまでの緊張感を和ませた。
「ユリちゃん、今度はどこへ行こうか」
敏也は、学生時代からの沙由里の愛称で呼んだ。沙由里は学生の頃から、沙由里を短くつめたユリという名前で呼ばれていた。
「札幌はあまり詳しくないからお任せするわ」
そう言ってから沙由里は、自分が軽い女に思われたのではないかと後悔した。どこでもいいからついていく、そんなふうにとられたらいやだなと思った。
敏也は沙由里を、大きな建物の最上階にある、洒落たラウンジ風のバーに案内した。店長らしい上品な男がわざわざ挨拶にやってきたところをみると、敏也はよくこの店を利用しているようである。
もともとアルコールに弱い沙由里の前に、敏也の注文したトロピカル・ドリンクが運ばれてきた。敏也はスコッチのオンザロックである。甘い口当たりのいい飲み物だったので、沙由里は同じトロピカル・ドリンクをもう一杯注文した。
一時間ほどして席を立つと、ちょっと足もとがフラフラした。敏也は沙由里の丸い腰に手をまわして支えると、入ってきた時とは違うドアに向かった。厚手のゆったりしたカーテンに仕切られたそのドアを開けると、モスグリーンの絨毯を敷いた広い廊下がまっすぐにつづいている。
いつどこで用意したのか、敏也は番号札のついた大きなキーを持っていた。
沙由里は部屋に案内されて、初めてそこがホテルだということに気がついた。ラウンジ風のバーは、ホテルからもビルからも出入りができるようになっていた。
そこがホテルとわかっても、沙由里は目くじらをたてて敏也を非難するようなことはしなかった。どうせ二カ月後にはこの男と結婚するのだ。父の事業の救済が敏也の手に委ねられているという諦めの気持もあった。ただ、自分が安易にのこのことついてきたと思われたくはなかった。それをどのような手段で訴えたらいいのか、少し酔っぱらった頭の中であれこれと考えを巡らせていた時、敏也に唇を奪われた。
敏也はそれまで沙由里に対してキスもしたことがなかった。だからというわけでもないが、彼の手は少し震えていた。
それは沙由里も同じことであった。沙由里は二度、三度、拒む仕草をした。だが軽く振った頭は敏也の両手でしっかり挟まれ、少し甘いアルコールの匂いのする唇が押しつけられた。
沙由里は二十三歳の今日まで完全な処女であった。だが、キスの経験がまったくないわけではない。沙由里に惚れた男から力ずくで唇を奪われたことがある。しかし、それは強制されたものであって、徹頭徹尾、沙由里は拒みつづけたのだ。その時のことについては嫌悪の感情しか思いだすことができない。
しかし、敏也からキスされた今、沙由里には結婚という大前提があった。それに二十三歳の完成された肉体が反応した。
初めて、ヌルっとした舌が唇を分けて入ってきた時、沙由里はなぜか、ひどく動物的なものを感じた。しかし、その舌が微妙なタッチで口腔をまさぐりはじめると、しだいに沙由里の気持は高揚し、頭の中が霞んだように白くなっていった。胸が締めつけられてキュンと鳴り、めまいを起こしそうな陶酔が支配した。沙由里は自分がベッドに崩れ落ちたことさえわからなかった。
敏也は長い間キスをしつづけた。そうしながら頬に触れ、肩をさすり、なだらかな腰骨の曲線を優しく撫でまわした。
沙由里は、自分の体が今までになく火照っていることを知って狼狽した。恥ずかしい部分が、かつて経験したことのない切ない疼きを伝えてくる。
なぜ? どうして……。
ハッと思った時、洋服の上から胸の隆起を優しく揉まれていた。やめて……という声が口から出かかったが、その意思は急速に失われてしまう。敏也に恥をかかせたくないという気持もあるにはあったが、何よりもまず沙由里自身が、それまで味わったことのない気だるい感覚に包まれていた。雲の上に乗っている、そんな感じである。それは陶酔と呼んだほうがふさわしいかもしれない。
沙由里には、たった一度だけ、自分以外の者の手によって乳房をつかまれた経験がある。その相手は、まだ学生だった秀之だ。当時まだ一緒の布団で寝ていた秀之が、まるで母の乳房に戯れるように握りしめていたのである。その時のくすぐったい感覚とはまったく別の、やりきれないような切ない疼きが、敏也の手が動くたびに、触られている乳房全体から湧いてくるのだ。
沙由里は思わず息をはずませた。塞がれている口の中に敏也の唾液が送りこまれてくる。沙由里は気づかなかったが、その時の彼女はすっかり性的な雰囲気に包まれて、身も心もうわずっている状態だった。
次々と送りこまれてくる唾液を呑みこんだ。それは、考えてもみなかったほど甘い味がした。
ハッと気づいた時、敏也の手は巧みにボタンをはずして、ブラジャーの上から乳房を撫でていた。全身がかっかと火照り、頭の中が誰かの手でかきまわされているような気がした。胸に差しこまれた手には、はっきりした意志があった。指先はブラジャーと乳房の裾のわずかな隙間をくぐり抜けて、直接乳房に触れた。ズキンッとそこが疼いたかと思うと、急激に膨らんでいくのがわかる。
いや……どうしてそうなるの。
沙由里は冷静な意志で乳首の膨張を押しとどめようとした。肉体が敏也の手によって、そんな形で反応するのがとても恥ずかしかった。だが、乳首はおかまいなしにグングンと体積を増してしまう。沙由里も冷静であり得なかった。瞼の裏側で満天の星が飛び交い、全身の血が音をたてて逆巻いた。
そんな様子を、敏也は薄眼を開けてしっかりと見ていた。沙由里は暴れたり取り乱したりはしなかったが、きわめて高い興奮状態にあることは容易に察知できた。いかにもこういうことには馴れていないという様子が、敏也をさらに夢中にさせた。
男の行動に初々しい反応をする沙由里を見て、敏也は叫びたいほどの満足感に包まれ、ひょっとすると、やっぱり沙由里は処女かもしれないと、いっそう歓びに胸を膨らませた。
学生時代から、沙由里は処女だという評判が、男子学生の間で起こっていた。彼女と交際するようになってから、それは単なる憶測ではなく、真実かもしれないと思うようになった。だが、それを聞くことはできなかった。それに、沙由里が処女であろうがなかろうが、そんなことはどうでもいいことであった。それほど沙由里に熱をあげていたのである。ただ、男として、処女であればそれにこしたことはないという気持はあった。
はっきりと結婚という段階にたち至った時、敏也はチャンスがあれば一刻も早く沙由里を抱きたいと思った。愛の形を、沙由里の肉体にとどめておきたかったからである。今がそのチャンスであった。
敏也はブラジャーの裾から指を差しこんでいるうちに、偶然にもそれがフロントホックのブラジャーであることに気づいた。ホックに指をかけてはずすと、まるで嘘のように胸もとが解放された。掌にたっぷりとした量感が伝わってくる。その時初めて、敏也は自分の肉体の逞しい変化に気づいた。しかし、沙由里にいたずらに恐怖心を与えたくなかったし、ある程度は紳士的に振舞いたいとも思った。
敏也には、いざとなったら自分をコントロールする自信もあった。それでも男の常として、できるならこのまま最後まで突き進んでしまいたかった。室内の明かりがフロアスタンドだけであったことに敏也は感謝した。もし煌々とした明かりの下でだったら、沙由里はこういう行為を拒否しただろうという予感がした。
ようやく沙由里の唇から離れると、敏也は少しずりさがって、十センチと離れていないところから、初めて乳房をまともに見た。それは、敏也が今まで見たどの乳房よりも気品があった。美しく豊かでありながら、どこかつつましやかであった。
気持の高ぶりは肉体に如実に現われた。一刻も早く、膨張しきったズボンの下のこわばりを、沙由里の秘められた部分に押しこみたいという誘惑に駆られたが、それをかろうじて耐えた。それまで指先で触れていた片方の乳房は充血して盛りあがり、乳首は小さなさくらんぼのようにプックリと膨れている。
沙由里は感じているのだろうか? そっと表情を盗み見ると、眉間に皺を寄せて、瞼をきつく閉じている。半ば開き加減の唇は、心なしか細かく震えているようであった。
敏也は細心の注意を払いながら、もう一方の乳房に唇をそっと押しつけ、目の前の乳暈の中に埋もれている乳首を舌先でまさぐった。
ゾクゾクッとする感じは、寒けとはまったく異質のものであった。乳首が男の舌に委ねられているのを知った沙由里は、羞恥と興奮で、ほんの一瞬だけ全身を硬直せた。
あっ、いや……。
またしても乳首が急速に膨らんで、痛いような感覚を伝えながらせりだしていく。沙由里は、敏也の視線が気になって、死んでしまいたいほどの恥ずかしさを覚えた。
「ああ……」
次の瞬間、乳首はすっぽりと敏也の口の中に含まれてしまった。そこからツーンと生じる疼きは、驚いたことに、下腹部の一番恥ずかしい部分に何倍もの強さとなって伝わった。
あああ……。
沙由里はあやうく声を出すところだった。あまりにも鮮烈な性感であった。セックスは沙由里にとって、まったく未知の世界といっていい。沙由里の成熟した肉体は、二十三歳の女が自然に持つセックスに対する期待を抱いていたが、こと異性に関することとなると、まだ足の踏み入れたことのない世界でしかなかった。だから男に愛撫された時の感じ方は、すべてが新鮮であったし、強烈であった。
沙由里がオナニーを知ったのは大学三年生の夏休みである。
生理が終わった直後、沙由里はそこを清潔にするために湯殿へ向かった。そこはレトロ趣味の温泉旅館で、浴室はまさに湯殿と呼ぶにふさわしかった。
沙由里の指が触れたのは小さな肉の突起だった。沙由里は思わず小さな声を出してしゃがみこんだ。小さな家族風呂だったので内鍵をかけると、そっと股間をのぞいた。ほんのり淡い茂みの下の肉が生きた貝の剥き身のように割れ、淡いピンク色に染まった肉が複雑に重なり合っている。
沙由里は小さく渦巻いた繊毛の中にそっと指を忍ばせた。そしてまた小さく体を震わせる。ポツンと膨らんだ突起は、ちょっと触れただけでも強い電流のようなショックを体の隅々にまで伝えている。
その夜、沙由里は隣室にいる父と義母のセックスの声を初めて耳にした。義姉の亜矢子は大学生になっていて、その旅行には同行していなかった。すぐ横では学生の秀之がぐっすり寝こんでいた。
沙由里は両親のセックスを直接見たわけではないが、義母の桂子の、とぎれとぎれの切ない喘ぎ声を耳にした時、それがセックスによってもたされるものだと確信した。胸の動悸はいやがうえにも高まり、全身は火がついたように熱くなった。
そしてもう一カ所、思ってもみなかった部分が、ズキンッ……ズキンッと脈動した。あの小さな肉の突起である。
沙由里はパンティの上からそこをまさぐった。とたんに飛びあがるほどの痺れが膣を引っくりかえさんばかりの勢いで全身を駆け巡った。肉の突起は、湯殿で触った時よりも数倍大きく膨れていた。掛布団を股間に挟みつけて、そこを強く押してみた。そしてかすかに聞こえてくる桂子の喘ぎ声に合わせるようにして、ぎごちなく腰を使った。最後には柔らかい布団ではもの足りなくなって、直接、秘唇を指でまさぐった。
驚いたことに、亀裂はまるで生理の時の出血のように、ヌルッとしたものですっかり濡れていた。濡れた指先を目の前にかざすと、そこに付着していたものは血ではなく、透明な液体であることを確認した。
その夜以来、沙由里は時折り自分の体を指で愛撫した。だが、これがオナニーだという自覚を持ったのは大学生になってからだった。
--男に抱かれるより、オナニーのほうが自由に夢を見られるから最高よ。
友人の一人は平然と言ってのけ、赤面する沙由里に得々とオナニー論を展開した。けれども、沙由里は決して深入りしなかった。いつもほどほどのところで切りあげた。
その頃、義理の姉にあたる亜矢子は、とっかえひっかえ男をかえて遊びまわっていた。対して沙由里は、言い寄る男も数多かったが、男性に関する限りかなりの奥手であった。結婚についても漠然としか考えなかった。それを具体的なものにしたのが敏也である。
それまで沙由里のイメージの中で、セックスはある程度以上に大きく膨らむことはなかった。それが今、現実のものになろうとしていた。
敏也の愛撫で、二十三歳の沙由里の肉体はグングン目覚めていった。オナニーで得る不透明な快さとはまったく違う感覚が、体のあちこちから湧きあがってくる。
これが性感なの……。
沙由里はセックスの持つ不思議な魅力に負けそうになっていた。胸の隆起を吸われたことで、体の奥から何かが確実に溶けて流れだしていた。それは恥ずかしい女の秘所に満ち溢れ、やがて下着にまで染み渡った。
あの透明な液体に違いなかった。体からしだいに力が抜けていき、あんなにきつく閉ざしていた太腿がゆっくりと開いていく。沙由里の意思は逆らっているのに、体のほうが自然に反応してしまうのだ。
「きれいなオッパイだ……」
いったん乳首から離れた敏也は、呻くように言った。
露わになった乳房のすぐ前に、男の熱い視線があるのかと思うと恥ずかしくてたまらなかったが、同時に誇らしい気分にもなっていった。
「ほんとに素敵だよ、ユリ」
敏也の唇がもう一度乳房の上を這った。
「アーン……」
沙由里は自分の声に驚いてあわてて口をつぐんだ。敏也がすぐに追い討ちをかけてきた。
「気持いいの? ね、ユリ」
とてもいいの、とは言えなかった。確かにすごくいい気分なのだが、それを是認してしまうのは女のプライドが許さなかった。それにまた恥ずかしくもあった。
だが、敏也はどうしても沙由里の本音を聞きたかった。
「ね、気持いいんだろう? ちゃんと言って。ユリがどんな気持でいるか知りたい……うんとよくしてやりたいし、ユリがよくなればなるほど、僕は嬉しいんだ。だから教えて」
敏也は熱く囁きながら乳房を舐めあげた。
「あっ……」
またしても下腹部を直撃するような疼きが走り抜けていく。しなやかな体を弓なりに曲げて、沙由里は喘いだ。
「いい気持かい?」
敏也が少し強い力で乳房を握りしめた時、沙由里の頭はコクンと素直にうなずいていた。
「嬉しいよ、本当のことを言ってくれて。もっとよくなって欲しい……もっとね。君の歓びは僕の歓びなんだよ」
大きな口が乳房全体を呑みこむようにして吸引すると、痛みと一緒にツーンと染み入るような快感が四肢の隅々に向かって流れだしていく。
あっと思った時、不意に沙由里の秘所がパンティの上から優しく愛撫された。あわてて両脚を閉じようとしたが、気持を裏切るかのように、体がいうことをきいてくれない。沙由里のこんもりと盛りあがった恥ずかしいふくらみは、すっぽりと敏也の分厚い掌で覆われてしまった。しかも亀裂に向かって押しつけられている指が、微妙なタッチを繰りかえす。敏感な肉の突起は、その指の下ですっかり膨張して疼いていた。
お願い、やめて……。簡単なその言葉が声にならない。快感はグングン増していった。
「あ、あああ……」
沙由里は無意識のうちに、たてつづけに声を放って身悶えた。
敏也にとってはまたとない反応であった。敏也はしっとりした潤みをパンティの上からはっきりと中指に感じた。粘膜のように柔らかい部分を少し強く押すと、生温かい潤いがパンティの布地を通して指先に伝わってくる。かすかに突きでているのはクリトリスに違いない。敏也は入念に黒い茂みを撫で、突起を愛撫した。
「あっ……ああーン……ああああーッ」
敏也の巧みな指の動きによって、沙由里はたてつづけに嗚咽をもらし、けだるそうに腰をくねらせた。
普段がつつましやかなだけに、その仕草はたまらなくエロチックである。敏也は男としての最大級の歓びを感じ、ついに耐えきれなくなって、ズボンごと硬く勃起したものを沙由里の太腿に押しつけた。
しかし、それが何であるかを探索する余裕が沙由里にはなかった。沙由里が身悶えるたびに勃起は太腿によって擦られ、今にも射精しそうなほど高まってくる。
「ユリ、僕たちは結婚するんだ。だから……ね、ユリ」
敏也の指がパンティのゴムの縁をくぐり抜けて、じかに茂みに触れた。その期におよんで、沙由里は事態がとりかえしがつかないまでに切迫していることを知った。
「だめ、お願い……」
だが、敏也はあくまでも強引だった。
「君が欲しい! 今すぐ欲しいんだ」
敏也の指が突起を撫でて深く切れこんだ一条の溝をさぐり当てる。沙由里は、それでも必死に敏也の手首をつかんで引きはがそうとした。
「許して、今はいや。お願い……」
「欲しいんだよ」
「あげます、あなたに……でも初夜まで待ってください。その時、綺麗なままの私を抱いて……処女はその時までとっておきたいの」
「…………」
処女
!!
やっぱりそうだったのか
!!
敏也のこの時の感激は、言葉では言い表わせないほど大きなものであった。敏也は特別に処女にこだわりを持っていたわけではない。ましてや、その端正な美しさと肢体の見事な充実ぶりは、どの男の眼にも充分に観賞に耐え得る。
敏也は初夜まで自分に苦業を強いることにした。今、強引に自分のものにしようと思えばできないことではない。しかし、処女という言葉は、敏也にも大きな重みがあった。二カ月後の感激を想像すると、耐えることもまた楽しからずやと思えてくる。
「わかったよ、ユリ。でも……ペッティングだけでも許して欲しい。それで僕は充分に満足する。いいね」
そうまで言われると、沙由里はうなずかないわけにはいかなかった。
「そうか、ありがとう。優しくするからね。君は宝物だよ。一生大事にする」
会話の途中で少し落ち着きをとり戻した沙由里は、この時になって、ようやく太腿にごつごつと当たるものの正体を知った。セックスにうとい沙由里でも二十三歳になれば、男の体がこのような場合にどう変化するかぐらいのことは知っている。少し怖いと思う反面、早くそれを知りたいという気持もあった。
敏也の手指の動きは優しかったが、探求心にも富んでいた。何本かの指が恥毛の一本一本の根元から毛先までを丁寧にさぐり、地肌も微妙なタッチで撫でまわす。初めはくすぐったいと思っていた感覚がしだいに変化して、小さな歓喜の源を掘り起こされたかのようにグングンと気持が高まっていく。またしても体の奥の芯が震えて、トロリと何かが溶けていった。
恥ずかしい部分がむず痒くなるので、思わず太腿をはしたなく擦り合わせると、流れでた秘液は肉の亀裂の表面に溢れてパンティを濡らした。それが自分でも手にとるようによくわかるだけに、沙由里は死にたいほどの恥ずかしさを覚えた。
敏也の手がそこに触れたらどうしよう……。沙由里は気が気ではなかった。敏也の手の動きは慎重かつデリケートで、沙由里はますます感情が高まっていく自分を感じていた。
感情の高まりは、性感の高揚に他ならない。敏也の指の動きや、太腿に押しつけられた逞しいものの脈動がとても気になる。ズボンの上からでもその力強さははっきりと伝わってきた。
すでに結婚している友人の一人は、男の一物に貫かれた時の痛さや、やがてそれが与えてくれる気の遠くなるような歓喜を、教えてくれたことがある。
--こんなに大きいのよ。
その友人は具体的に男の一物の大きさを両手で示した。
まさか
!?
というのが当時の沙由里の実感である。どう考えてみても、そんなに長大で太いものが、女の股間におさまるわけがないと思った。
--でも、よくしたものなのよねえ。スッポリ入っちゃうんだから。
その時の友人の嬉しそうな顔が忘れられない。
--セックスとはそういうものなのよ。
友人のしめくくった言葉を思いだしながら、沙由里は今、自分はそのセックスの一部を知ろうとしているんだと、改めて思った。
「あっ……」
思わず沙由里は声を出して全身を小刻みに震わせた。敏也の指が的確に愛の突起をさぐり当てたからである。
めまいを起こしそうであった。だが、敏也がじかに触れたのは初めの一瞬だけで、あとはピラミッド型の底辺のあたりを軽く擦っている。切なくてやりきれない。
もっと、もっとちゃんと触って
!!
沙由里は心の中でそう叫んでいる自分に気づいて真っ赤になった。私からそんなことを望むなんて……。沙由里は自分自身の心境の変化に驚いていた。友だちの言ったセックスの素晴らしさに私は酔ったのだろうか?
敏也の指は、徐々にではあるが、確実に沙由里に女の歓びを教えていた。とてもいい気持にさせてくれるのだ。甘くて切なくて異性に恋こがれる感情を芽生えさせてくれる。
この時、敏也がもう少し強引な態度に出たならば、沙由里はすべてを許してしまったかもしれない。沙由里は敏也の指が与える歓びの中で陶酔していた。
うまく体がコントロールできない。自分ではどうしようもないのだ。すべて相手の指の動きによって支配されている。
「ああ、あなたッ」
感情のこもった婚約者の声を、敏也は冷静に判断していた。沙由里の性感は明らかに高まっている……。大きな歓びを噛みしめながら、敏也は二本の指で突起を挟むと、ゆるゆると小さく円を描くように撫でまわした。
「あうッ、あ……あああっ」
切ないまでに憧れていた沙由里の歓喜の声は、ますます敏也を忠実なサーバントに駆りたてていく。掌を内腿に這わすと、そこにはもう沙由里が溢れさせたねっとりした液体ですっかり濡れていた。掌にそれをなすりつけ、陰唇全体を覆うようにして揉みたてた。
沙由里が激しく顔を左右に振ると、ふわふわと揺れる長い黒髪から、香料の入り混じった生臭い女の匂いが発散した。
沙由里のあらゆる仕草は、敏也の気持にも体にも力強さを与えずにはおかなかった。だが約束したからには、これ以上の行為はコントロールせねばならない。
敏也は指先に付着したぬるついた液体を優しく亀裂やその周辺に塗りたくった。沙由里の口からは絶えず狂おしいまでの声がもれ、火のように熱くなった体はさざ波のように揺れはじめる。
そんな沙由里の姿を眺めながら、敏也は、これから送ることになる結婚生活での性の楽しみに思いをめぐらせ、しあわせだと感じた。
「あっ、痛ッ……」
突然、沙由里が敏也の体を突きのけた。
「ごめんよ。大丈夫?」
敏也はうっかり指先を肉の割れ目に差し向けてしまったのだ。
「ええ……」
ああ、やっぱり沙由里はバージンなんだ。
敏也の歓びは倍加した。注意深く陰核と亀裂をなぞっているうちに、沙由里はあらぬ声をあげて悶えはじめる。
敏也は男の勘で、沙由里が一つの終局を迎えつつあることを悟った。オナニーによる歓喜の頂上はあるはずだから、これは俺の手を借りたオナニーと同じなんだ。敏也は小刻みに指を動かしつづけた。だが、沙由里の粘膜に強く押しつけたりはしなかった。
その効果はすぐに形となって現われた。沙由里が大きく体をしなわせて、敏也の指に粘膜を擦りつけてきたのだ。より強い接触を求めていることは明らかである。敏也は沙由里の濡れた秘唇に指を触れて、また離した。
「あっ、もっと!」
とうとう沙由里は敏也のもっとも望んでいる言葉を口に出した。
左手を沙由里の首の下にまわしてしっかりかかえると、右手で沙由里の望む秘所の粘膜を刺激した。沙由里と同じように、敏也も眼のくらむ思いであった。
「あ……あ……ああっ、ううう--っ
!!
」
沙由里の白い喉が美しい弧を描いてのけ反り、全身がビリビリッと震えて硬直した瞬間、敏也もまた、ズボンの中でせいいっぱいの歓びを爆発させていた。

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