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安里咲1 · 第5部

安里咲1 第5部 (5/5)
前の話

わたしは足枷と棒を外そうとしてみた。

彼女たちは簡単に装着していたが、わたしははじめて見るものだったので、そのバックルを引っ張りながら外すことに気づくまで少し時間がかかってしまった。

右足を外せそうになったところに人影を感じる。

見ると、彩芽がニヤニヤしている。

「なにしてるの、安里咲」

返事ができない。

「まさか、自分で外して逃げようとしていた?」

もう間に合わない。しかしやりかけたことだ。バックルを外し、右足だけは自由になった。

「寮長!」

彩芽が怒鳴る。

「安里咲が悪いことをしているわ!」

玄関のドアを抜けようとしたが、左足についたままの棒が邪魔して、そのまま不様に倒れてしまう。

ドアは半開きで、半身だけは外に出たのだが……。

「安里咲!」

「うっ」

彩芽がわたしの上に裸足で乗った。

小柄な彼女でも、十分に重い。

「なに? どうしたの」

寮長がどたどたとやってきた。

「安里咲が逃げようとしたのよ」

「へえ」

寮長は驚かない。

「薬局で淫汁垂らすし、ちょっと甘い顔をしたら逃げようとするなんて、安里咲はもっと厳しくしてやらないといけないかしらね」

「そうよ! 安里咲はもっとうーんと厳しく躾けないとダメよ」

わたしを踏みつけながら、彩芽がうれしそうに言う。

「たすけて。お願い。もう耐えられない」

「ふーん」

彩芽はわたしの背中に座りこむ。

そして顎に手をかけ、足にも手を回すと、思い切り反り返った。

「うぎぃぃぃぃ」

彼女の体重を受けて背骨が折れそうだ。格闘技の技のように、いとも簡単に身動きが取れない。それどころか、激痛が走る。

クリップが乳房に食い込み、クリトリスは引きちぎれそうになり、二つの穴も悲鳴をあげている。

「耐えられないっていうのは、こういうことを言うんじゃないの?」

ごろごろと左右に彩芽が体重を移動させる。そのたびに顎の手、足にまわった腕が深くがっちり食い込んできて、いくら足をバタバタさせても逃げられない。寮長が左足についたままの棒を掴んでいるから余計だ。

ドアが外から開いた。

「うわっ、びっくりしたー」

寮生が帰ってきたのだ。

「ごめんね、安里咲がちょっと暴れたものだから」

ようやく彩芽がどいてくれ、わたしはゲーゲーと喉を鳴らしながら、痛みと死の恐怖から呆然となっていた。

「罰をあげましょう」と寮長。

「夕食まで時間があるから、帰ってくる寮生の足をすべてきれいに舐めてあげなさい」

あまりにも常軌を逸した言葉に、意味がわからず、まだゲーゲーしていたのだが、彩芽に乳首のクリップを引っ張られて、「あうっ」と体を硬くする。

「寮長の命令よ。安里咲はしばらく人間カーペットになりなさい」

「いやです」

「もっとひどい目に遭いたいの?」

寮長がわたしの手を取り、縄をかけていく。足の棒は取り外されたが、その足を抱えるように腕が縛られていった。

お尻を上に向けたかっこうだ。

棒をつっかえ棒のように足に縛り付けて玄関の角に食い込ませたので、横に倒れることはできなくなった。上がり口の段差に体の右側を押しつけている。

土足で通るタイルに背をつけて。

「これがいるかしら?」

金属の器具をわたしに見せつける。

「ええ。安里咲は狂暴だから噛んだらいけないわ」

二人がかりで口を開かされ、その器具を押し込まれた。太い針金のようなものでできている。口を開いたままにされてしまうのだ。

崩壊

「安里咲、舌を出してごらん」

出せない。

「うっ」

彩芽が乳首のクリップを引っ張る。

「早く舌を出したほうがいいよー。乳首が取れちゃうよー」

悔しいのでガマンしようと思ったが、クリップが思った以上に強力で、彩芽が言うように本当にちぎれそうに引き伸ばされてしまい、それが視界に入ってくると恐ろしくなってしまった。

「舌を出しなさい、安里咲」

「ううううう」

目尻に涙が滲む。

舌を少し出した。

「あっ」

すかさず、舌の先にクリップがつけられた。

ピリッとした刺激。すぐに舌を引っ込めるが、異物が口の中にある。歯が使えれば簡単に外せそうだが、開口器によって歯は使えない。舌の先が切れそうな痛みだ。

「ダメダメ」

クリップには紐がついており、彩芽が引っ張ると舌を出さないわけにいかない。びくびくと反応する舌を、自分でも抑えられない。

「こうやるのよ」

彩芽は靴下を脱ぎ、その舌の上に足の親指をのせた。

「気持ちいいわよー」

親指が舌を押す。

「えー、やだー」

帰って来た寮生たちがうれしそうにはしゃぐ。

「やってみなよ。っていうか、やってあげて。安里咲はそうしないとダメになっちゃうの。そういう病気なんだから」

彩芽が紐ごと彼女たちに渡す。

「ただいまー」

そこにまた新たな寮生が戻ってきて、「なにやってんの!」と驚いている。

「安里咲のドアマットだって」

「えー、なにそれー」

寮長が「使ってあげてね。それが安里咲のためなんだから」と言う。

これが効いたのだろうか。

彼女たちはソックスやストッキングをその場で脱いで、次々とわたしの口に、足を入れてきた。

「うわ、なんか変な気持ち」

サンダルで裸足の子は汚れた足。ブーツの子は臭い……。

「もっと舐めて。指の間もよ」

彼女たちはおもしろがって、舌と乳首の紐を引っ張りながら、足を口に押しつけてくる。

「あがあっ」

喉の奥まで足が押し込まれる。

「すごい涎だわ」

濡れた足を乳房で拭く。

「おもしろいかも」

同性なのに。それとも同性だからか。彼女たちの遠慮のなさが恐ろしい。

「見て見て! これ、グロいよー」

「うわあ、マジ、ヘンタイ」

足を舐めさせた彼女たちが、次にお尻に目を向けている。クリップにはさまれたクリトリスはきっと真っ赤に腫れて飛び出しているだろう。その下に銀色のクスコで開かれた性器。そして鞭の柄を飲み込んだアヌス。

「ヘンタイって治らないんじゃないの?」

そう言いながらお尻の鞭を掴んで動かす。

「がひ」

内臓をこすり上げられる不快感にゾッとなる。

彼女たちは無邪気に鞭の部分を動かすだけだが、その末端はわたしの奥深くに突き刺さっている。そのことを理解しているとは思えない。

「そんなことないって。きっとヘンタイだって治るよ。みんなで協力して安里咲を治療してあげようよ」

「そうよね」

勝手な解釈をして、正当化している。

夕食の時間を過ぎても次々と帰ってくる寮生のために、わたしは口を開け続け、恥ずかしい部分を見られ、紐を引っ張られ、お尻をいじられて泣かされた。

夕食を食べる気力もない。朦朧としている。考えても無駄なので、考えないようにしているからか、自分がどんどんバカになっていくような気がする。

それほど利口だと自覚したことはないが、あえてバカになるのはつらい。

耐えきれずに何度も本気で泣いたが、みんなは笑うばかりだ。足で涙を拭かれた。

「どう? 少しは反省した?」

夕食のニオイをさせて、彩芽が戻ってきた。肉料理だ。ケモノのような女たち。この寮に入ったとき、これほど楽しくて雰囲気のいい世界も珍しいとすっかり満足した。上級生も同級生も明るくて楽しい人ばかりだと思っていた。寮長の渡辺奈美でさえも厳格な面を持ちつつも、温かい人だと思っていた。

「安里咲も食べさせてあげる」

やっと舌のクリップを外された。先端がちぎれたのではないか。それほどの痛みが残る。

そして乳首からもクリップが外れる。

「があぃぃぃぃ」

強烈な痛みに気が遠くなる。

「大丈夫? フラフラね。こっちを外したらどうなるかな」

「あが、あが、あがぁぁ」

クリを挟んでいたクリップがゆっくりと取り除かれた。身もだえして苦しむ。

「ぐあああ」

いつまでも痛みが取れない。

「いいなあ、安里咲はなにをしてもカワイイから」

股間の紐が解かれ、クスコが引き抜かれる。

「すごい、おつゆタップリ」

クスコを見せる。金属からしたたる体液を口の中に落とされる。

「安里咲のエッチな汁。どう? おいしい? ちゃんと飲みなさいよ」

どろりとしたものがまざっている。ひどく濃いものが分泌されたようだ。自分がそんなものを垂れ流す存在になったことに絶望する。

寮長が洗面器を持ってきた。

またしても、ドロドロの食べ物だ。

「今日は罰だから、強制的に食べさせる練習をしておこうと思うの」

「それ、やりたい!」

口を器具で開かれたままなので、どうにもならない。

「縛り直して正座させて」

いやいやをするように、抵抗を試みるが、健康そのものの二人には太刀打ちできない。このときに、わたしは愕然としていた。まだわずかな時間なのに、ひどい倦怠感とともに、筋力も低下しているだけではなく、気力が失われてきているのだ。

睡眠不足、過労、そしてこの粗末な食事。

すべてがわたしという存在を、なにか別のものにしようとしていた。

通常の排泄ではなく何度も浣腸を受けているのも、体力を失わせている。そして常に拘束され、監視され、命じられ、罰せられて、強烈な痛みを受けて、心が砕けそうになっている。

もしかすると、亜由美もたたみかけるようなこうした暴力に屈して、自ら拷問実験を受けるほどになっていたのではないか。

苦痛や痛みを自ら欲しがるなど、いまのわたしにはあり得ない心境だが、少しずつそうなっていくのかもしれない。

いまも、後ろ手に縛り直されていても抵抗ができない。床にうつ伏せにされて二人に乗りかかられると、多少足を動かすことはできても、それ以上のことはできない。あきらめが先にくる。

「だいぶ、素直になってきたわね」

二人に喜ばれている。こっちは言うことを聞くつもりなどないのに。

足に縄をかけられて、二人に体を起こされると、正座姿になる。玄関の床が固いため、足の縄が食い込み、脛がひどく痛い。

背中もそうだが、タイルの冷たさが皮膚の感覚を奪っていく。

こうした痛みの積み重なりで、わたしの思考力は失われ、心も蝕まれてしまう。

そんな自分が情けなく、悔しく、なによりも信用できなくなってしまった。

「安里咲。怖い目をして……。人間ドアマットはそんなにつらかったの? だけど、あれって安里咲にとっては至福の時なのよ。みんなの足を舐めさせてもらいたいときは、おまえからみなさんに頼むのよ。きっと、そのうち頼むようになるわ」

絶対にそんなことはない。絶対に。

寮長を睨む。それぐらいの抵抗しかできない。

「生意気だわ、安里咲」

「うがっ」

彩芽が髪の毛を掴んで、後ろに引っ張った。わたしは顔を上に向ける。

「生意気でもいいの。カワイイし、いじめ甲斐があるし」

彼女は金属の漏斗を手にしていた。その先端にゴムがついている。

「陽子さんが用意してくれたのよ。安里咲専用」

喉を傷つけずに、なんでも胃に押し込むつもりなのだ。

「ゆっくり入れてあげるわ」

それを突っ込まれる。

「あがあがああ」

喉にまで入り込む。

「男のチンポだと思ってごらん。おいしいでしょ?」

ゴムの先端が喉の奥にある。

「飲み込んでね」

寮長が、洗面器を漏斗に傾けていく。

「あああああ」

悲しくなる。自分の意思に関係なく、おぞましい食べ物が腹に詰め込まれていくのだ。

「安里咲。あなたの予定はびっしりなんだからね。ゆっくりテレビを見ながらご飯を食べたりする時間なんてないのよ。まともな食事をもらえているだけでも、感謝してほしいぐらいだわ」

すっかり流し込み、寮長は最後にツバを漏斗に吐きつけた。彩芽も真似をする。

「こうなったら、おまえにはどんなものでも入れることができちゃうのよ。わかるでしょう? 口も、鼻も、おまんこも、お尻の穴も、ぜーんぶ、わたしたちのものなのよ。そこになにを入れてもいい。安里咲はひたすら受け入れるだけなの」

なかなか漏斗を引き抜かない。

口が自由になったら、吐き出してやろうと思っていたのだが、二人はそれを察知している。すっかり胃におさまってしまえば、簡単には吐き出せない。彼女たちのツバが、ゆっくりと漏斗を下っていくのを見ているようだ。それが胃に入る頃には、わたしは逆流させることなどできなくなる。

すうっと漏斗が抜かれた。

「うげえっ」

吐くならチャンスだが、うまくできなかった。寮長が巧みに抜き取ったからだ。

「吐く? 吐くならここに吐きなさい。そのかわり、また同じ方法で吐いたものを入れてやるから」

洗面器を置かれた。

抵抗は無駄だと教え込むつもりだ。

悔しいが認めざるを得ない。

「安里咲の夕食は終了。これから浣腸、マシーンセックス、拘束訓練、アヌス拡張訓練、膣圧訓練と立て続けにあるわ。楽しみでしょう? 苦痛ばかりじゃなくて、最高の悦びも味わえるのよ。わたしは忙しいからすべてに参加できないけど、彩芽、頼むわね」

「はい」

自分の中から、自分らしさがどんどん剥がれ落ちていくような気がした。

マシーン

夕食後も厳しい時間が続いた。

一リットル浣腸をされて、ガマンする間、食堂のテーブルに縛り付けられた。恐ろしい目的のためだけに作られた装置が取り付けられるのだ。

足首はテーブルの脚にくくりつけられ、お尻を突き出して、背中をテーブルに。腕はテーブルを背中で抱えるように縛られた。

みんなは食事をしたり楽しいひとときを過ごしているが、その隅で、わたしだけがこんな姿を晒している。

玄関に長くいたこともあって、寮生たちもわたしがこんな状態にあるのに慣れたのだろうか。

口にはボールギャグをつけられた。

その上からタオルで猿ぐつわもされる。

「うるさいと邪魔だからね」

うめき声も彼女たちの耳には届かない。

四角い金属の箱が持ち込まれた。自転車漕ぎをする機械の本体部分だけのような装置だ。

彩芽はディルドを手にしていた。それに長い金属の棒がついている。ディルドは比較的、柔らかそうだが、とても長いタイプだ。見るからに卑猥な肌色をしていた。

「寮長。初日ですけど、何分にしますか?」

「次の訓練が十九時からだから、それまで。浣腸も三十分、ガマンさせるから」

「じゃ、これも使う?」

「そうして。食堂で粗相されたら困るから」

ただ震えているしかない。

彼女たちの残虐ぶりに終わりはないらしい。

彩芽は長い棒のついたディルドを壁に立て掛けると、別に用意された黒いゴム製の棒にローションをかけた。

「これを安里咲のお尻に入れてあげるからね。そうしたら絶対に漏れないから」

太い棒。

「んんっぐ」

それをお尻に押し込む。暴れてもうめいても、彼女の手は止まらない。なにが悔しいかといって、わたしのお尻は浣腸をされているせいもあるが、すっかりそういうことに慣れてしまっているのか、さしたる痛みもなく受け入れてしまったのだ。彩芽が上手なのかもしれない。ただ、悔しい。

「中で膨らませるからね」

「くうううう」

それは……。急激にお腹の中が膨らんでいき圧迫される。苦しい。膨らむのは中だけではなく、お尻のすぐ外でも膨らんでいき、肛門を内と外ではさんでしまう。

「きついかしら? でもこれぐらいは大丈夫よね。あとで拡張訓練もするから、準備運動みたいなものね」

ディルドにローションを塗りたくっている。

それを膣の中に突き入れた。

「くっ!」

「安里咲、どこまで入るかな?」

ぐいっと押し込まれる。

「んんぐぅぅ」

痛み。そして屈辱。クスコで痛めつけられた粘膜はまだ熱を持っていた。そこに淫具が押し込まれたのだ。それも剛介たちの性器よりも深く。

「ここでいっぱい?」

彩芽はおへその下あたりを上から押して、体の中のディルドを確かめる。浣腸液でパンパンなので、わかるはずがない。

それでも体重をかけて確かめるのだ。

「このあたりかな? すっごく深く突き刺さってるわ」

「ぐぅぅぅ」

うめいてもうめいても、誰にも聞こえない。寮生たちはテレビを見て笑っている。

「じゃ、はじめるわよ。タイマーで三十分セットしておくからね」

棒をどこかにはめこんだ。スイッチが入るとディルドが引き抜かれていった。

ホッとしたのも束の間、今度は押し込まれてくる。

その機械はセックスのように、ディルドを出し入れするのだ。それもスピードが変化する。最初はゆっくり。そしてときどき激しく。振動も加わる。角度も少しずつ変化するようで、上から下から、右から左から突かれる。

「んぎゅぇぇぇ」

痛い。苦しい。

五分ほども突かれて、ローションを彩芽が追加した。

寮生たちが集まってきて、わたしを見下ろす。

「なにこれ!」

「マシーンよ」と彩芽が言う。「タイマーがあるから最長二時間までセットできるわ」

二時間……。

死んでしまう。

「すごーい、こんなことされたら、恥ずかしくて死んじゃうわ」

「それとも、ホントに天国かもよ」

「ギャハハハ」

笑われた。

だけど、体はおかしくなっている。その機械の刺激を最初は苦痛としか受け付けなかったのに、彼女たちにバカにされ、蔑まされていると、むしろ熱くなってしまう。怒りではない。

玄関で彼女たちの足を舐めさせられたことが思い出される。

みんなの足を舐めた。そこで笑っている彼女の足。気持ち悪そうに見下ろす彼女の足。ヘラヘラとバカにした笑いを浮かべる彼女の足も……。

安里咲は、みんなの足拭きマットになったのだ。そしていまは、機械で性器をさいなまれている。

忘れてしまいたい恥ずかしさや悔しさ、つらさの連続。それなのに、体は急激に燃えてきて、浣腸の苦しみも吹っ飛んでいく。

「がぐぅぅぅぅ」

白目を剥いているのがわかる。

「あっ、安里咲がおかしいわよ! ねえ見て!」

「死んじゃうんじゃない? 大丈夫?」

寮長がやってきて、わたしの乳房に手をやった。鼓動を確認している。目を覗き込む。喉にも指をあてた。

「ふふふ。安里咲は感じてるのよ。とてつもなくね」

説明ができない。苦しすぎる。それは単純な暴力ではない。奇妙な刺激と、辱めによってなにかが起きている。

大勢の人たちによって、わたしの体と脳は改造されていくのだ。

苦痛や屈辱を快楽と感じてしまうように……。

ああ、悔しい。

彩芽の笑い声が、珠緒の声に聞こえてくる。マーコフもそこにいるのだろうか。

――安里咲。あなたはホントはスケベだったんでしょう? 破廉恥な快楽が欲しかったんでしょう? 取り澄ましたお上品な顔をして、わたしたちをバカにしていたけど、安里咲は本物の変態だったのね――。

そう言われているような気がした。

ごめんなさい。悔しいけど、異常なのはわたしだったの。ああ、もうダメ。なにかすごいものが来るの。来てるの。そこにいるの。わたしをおかしくさせるなにか……。

「があぁぁ」

三十分の間に、何度もイカされてしまう。その恥ずかしい姿をみんなに見られてしまった。

ようやく機械が止まったとき、失神寸前になっていた。

「安里咲ちゃん。ホントにかわいい」と汗だらけの体に彩芽が抱きついた。首筋や乳首を舐められた。

「かわいすぎて、もっともっといじめたくなっちゃう」

拘束を解かれ、バケツを彩芽が持ってきた。

「ここでしなさいよ。みんなが見てるから」

猿ぐつわはそのままで、反論もできず、気力もなく、ただ排泄したい一心で、バケツをお尻にあてがう。

「いくわよ」

彩芽がお尻に入っている棒から空気を抜いてくれた。

「ぐぅぅ」

あああ、ひどい……。

ほとんど感覚のない下半身から、大量の浣腸液が噴き出す。

三食、異様なものを食べさせられているので、大量の固形物が落ちる。

「へえ」と寮生たちが驚いている。

「安里咲のウンチって臭くないわ」

「変なニオイだけどね」

みんなが感心している。

「安里咲には陽子先生が開発した特別食だけを与えているの。栄養分もあるけど、そのほか、従順になりやすい栄養素だとか、エッチになる成分とか、ウンチのニオイの元になる腸内の細菌に反応して消臭する物質も入っているらしいのね」

「すごーい」

実験動物にされたような感覚だ。

すっかり排泄が終わり、後始末を自分でして、お尻も拭いた。

わずかな自分しか

甦

ってこなかった。安里咲としての大部分は、どこかへ消えてしまったような気がした。

監視していた彩芽が、食堂に連れ戻した。

「これから毎日一時間、拘束訓練をするわよー。寮生で希望者は安里咲の拘束の仕方を教えてあげるから残ってね」

手足には力が入らないし、魂が抜けたようになっている。

彩芽が、わたしの頬を撫でる。

「安里咲ちゃんはいずれ、すごく従順になると思うの。だけど、拘束はしないといけないのね。だって、決まりだから。それに安里咲もそのほうが気分がいいの。なんて言えばいいのかしら、そう、心の安定が得られるのね。体をぎゅっと締め付けられて、自由にできないといい気分ってこと。だからみんなも協力してほしいの」

わたしを縛ることがわたしのためなのだ、わたしをいじめることがわたしのためなのだ、彩芽は寮生たちにそう言い続ける。

寮長も率先して、そのための行動をする。

誰も疑わない。疑ったとしても、わたし一人の問題だと片付ける。変態女子大生の痴態に過ぎないと、決めつけている。

そして、周囲がそうなってくると、だんだん、わたしまで、そんな気になってきてしまうのだった。

拡張

「拘束の時間よ、安里咲」

あらゆることの中で、暴力ほど耐えられないものはない。絶望しかない。泣きわめくのは、そうしていれば、終わるかもしれないからだ。考えず、受け流したい。なかったことにしてしまいたい。わめいていれば、なんとかやり過ごせるかもしれない。

叩かれることは、気が狂うほど痛い。

自分を忘れるようにしないと、耐えられない。

叩かれるたびに、自分が追い出されていく。

だから寮長や彩芽が乗馬鞭を手にしているのを見ただけで、なんでも言うことをきいてしまう。

寮長たちは、わたしにも手伝わせて、食堂のテーブルを片付けると、寮長の部屋から組み立て式ベビーベッドのような木でできた部品を運ばせた。ずっしりと重く硬い木で、使い込まれたものだった。黒っぽいが、塗った黒さ以上に、なにかの染みで黒ずんでいる。

寮長が木槌とボルトで組み立てると、陸上競技のハードルに似たかっこうになった。それより頑丈で大きなものだが。

「楽しみでしょう? 毎日、これを見るだけで濡れてくるようになるわよ」

そんなバカな。感じる部分をいじられれば、体は反応してしまう。だが、殴られて感じるのは、痛みと屈辱だけだ。快楽にはほど遠い。

「ここに首を置いて、こっちに手首。抵抗するなら余計な痛みがプラスされるわ」

彩芽に言われて、黙って言われたとおりにした。窪んだところに首、手首をのせた。

「

晒

し台よ。英語ならpillory。昔はこれだけでも刑罰の一種だったけどね」

彩芽は楽しげに作業をする。

上からもう一本の窪みのある部品で押さえつけられた。金具を留められ、わたしはこの装置から、自力では逃げられなくなった。

ひどいことをされる……。

体がぎゅっと縮まるような感覚。そのとき絞るように括約筋が動いて、だらしのない股間からなにかが垂れた。

「まあ、安里咲ったら」と彩芽が大げさに言う。ほかの寮生に聞かせるためだ。

「こんなにおつゆが出ちゃうの? よっぽど好きなのね」

そんなはずはない。

「安里咲。なんとか言いなさいよ」

彩芽は、黙っているわたしに腹を立てて、無防備な乳首に爪を立てた。

「きぃぃぃ。痛いぃ。いやです、お願い、叩くのはいやなの。叩かないで」

「そんなの聞きたくなーい」

爪を立てたまま引っ張る。

枷のように首と手がはさみこまれているので、逃げられない。

「すてきなかっこうだわ」

寮長が、暴れる足首を握った。晒し台の下部にある突起に足をくっつけて縛り付けた。足はやや開かされて固定される。

「寮生のみなさんは、もし安里咲を叩きたいとか、ムシャクシャするときはこの台を使うと便利よ。これが安里咲の基本的な拘束方法。安全に簡単に拘束できるでしょ?」

彩芽はパドルを手にした。

「痛いの、いやなの?」

「いやあああ。お願いですから」

泣いている自分がみじめすぎる。しかしもう限界だった。

「大丈夫よね? 安里咲、好きでしょ、こういうの」

パドルで頬を撫でる。

「お願いです。なんでもするから。しますから。もう、叩かないでぇ」

親に甘えるような声になってしまう。それを寮長もヘラヘラと笑いながら眺めている。

彩芽はニヤニヤしている。

「おかしいわよ、安里咲。そうか! そうやって気分を高めてるってわけね? さすが、変態女子大生だわ」

彩芽がわたしからは見えない後方へ移動した。

「あああ、いや。もういやなんです。お願いですから!」

お尻にパドルが打ち込まれた。

「ひぃ!」

「うるさいなら猿ぐつわをすればいいのよ」

寮長は用意した道具を寮生に見せる。

「これはボールギャグ。これは開口用。知ってるわね、ドアマットのときにしていたやつ。口の中にタオルを詰めて革ベルトで縛るのもいいわよ」

そしてドサッと縄が床に。

「それにロープ。みんなで安里咲を縛ってみるといいわ。教えるから」

晒し台に拘束されているのをいいことに、縛りの練習台にされる。

寮長が指導して、乳房回りに縄が回っていく。何人かがわたしの太ももにも縄を回していく。

「やめて、お願いだから」

「うるさいよ、安里咲!」

バシン、バシンと彩芽はパドルをお尻に振り下ろしている。

その痛みがわたしをどん底に突き落とす。

寮生たちが笑いながら縄を操り、きつく縛り、体を物のように扱い、無遠慮に触る。

「このかっこうにしたのは、これからアヌスの拡張訓練をするからなの。時間が足りないから、拘束でも一番やさしいものにしたんだけど、いずれ縄だけでの拘束もしてみましょう」

寮長は寮生たちのロープワークを指導している。

「拡張訓練ってどうするんですか?」

寮生の一人が質問した。

「これをあそこの中に入れるのよ」

彩芽が黒いゴムの棒をわたしに見せつけに来た。ポンプがついており、それを握ると棒の部分が大きく膨らむ。それを彩芽は男性器のように指で扱う。

「ね、おもしろいでしょ?」

浣腸のときに使われた栓と同じものだろうか。なにも入っていないお尻の中に、それを押し込んでいく。

「あふぅぅぅ」

「入りやすくなってるわ。えらいぞ、安里咲」

ほめているつもりだろうか。

「よおし、膨らませるね」

最初は感じなかったが、しばらくするとお尻の穴を力強く内側から拡げる感触。じわじわと大きくなり、内臓が破裂するのではないかという恐怖。

「こわい」

「大丈夫よ。いい感じに大きくなってきたわよ」

「いたい」

「痛い? ウソばっかり。安里咲は大げさね。この程度じゃ限界とは言えないけど、最初だからなあ」

その限界がわからない。

「見てあげて」

みんながお尻を見ている。

「うわ、すごいわ、なにこれ」

「裂けちゃうんじゃないの?」

寮生たちが驚いている。

「ふふふ。大丈夫なんだな、これが」

彩芽が肛門を触っている。

「中で膨らんだゴムがこれぐらいしか見えていないじゃない? ぜんぜん平気なのよ。もっと大きくしないといけないんだから」

「どのぐらい?」

「みんなの手が入るぐらいよ」

「手なんて入るの!」

「安里咲は素質があるから、きっと大丈夫」

「信じられないわ」

からかわれているのだ。お尻の中に手を入れることなど、できるわけがない。たとえできたとしても、誰がそんなことをしたがるのだろう。

彩芽や寮長ぐらいのものだろう。彼女たちの手がお尻の中に……。

「い、いやぁぁ」

おぞましいが、絵空事ではない。やるつもりなのだ。

「もし、そんなにお尻の穴が大きくなっちゃったら、安里咲、普通の生活ができなくなるんじゃない?」

「もう、普通の生活じゃないわよ」

と寮長が一蹴する。

こういう晒し台に拘束されると濡れるようになり、みんなにいじられると悦びになり、お尻の穴は手が入るぐらい大きくされて快楽に浸る……。それでもわたしは生きていくのだろうか。

そんなことに意味があるのだろうか。

「安里咲、なにを考えてるの? よくない徴候よ。みんな、安里咲をもっと夢中にさせてあげましょう」

寮長が宣言した。

膣圧

夢中にさせる……。寮長の言葉にさらに暗澹としてしまう。

快楽が続きさえすればいい、ということはないと思う。人間、テンションはそんなにずっと高いままではいられない。もともと、そういうタイプの元気さはないのだから、いまさらニンフォマニアのようにふるまうことなどできない。

「あうぅ」

鞭で叩かれた。お尻の上のあたりだ。

「どうなの、お礼をいいなさいよ」

「ありがとうございます」

「気付け薬は叩くのが一番」と寮長。

ビシッと二発目が同じところに食い込んだ。

顔が動かせないので、どんな道具で叩いているのかわからない。細い、よくしなる棒のようなものではないか。

「今度はわたしね!」

寮生たちが、順番に叩いている。

「叩くたびに、お礼を言わないとダメよ」

わたしの正面に回った寮長が、顔を近づけて言う。

「ありがとうございます」

「そう。これからはどんなことをされても、感謝の気持ちを表さないとだめだからね」

「はい」

ビュッと空を切った鞭が激しくお尻に当たった。

「あひっ、ありがとう、ございます」

痛い。体が痺れる。

肛門を拡張されている苦しみなど比ではない。

「みんなが一通り叩いたら、次は膣圧の訓練もするわよ」

まだ終わらない……。

一日が長すぎる。

「こっちは抜いてみるわよ」

彩芽がお尻の道具から空気を抜いてくれた。鞭の痛みもあって、お尻全体が痺れている。腸を引きずり出されるような感触。ボワッと広がってしまっているのがわかる。

「みんな見て! 安里咲のお尻」

「うわ、すごい。開いたままだわ」

「こんなになってるの? お尻の中がまる見えよ」

直腸まで見えるというのだ。

「だけど、まだフィストはムリよ」

彩芽の指がすんなり入る。それも四本ぐらい。しかし、すぐにつっかえてしまう。とても手がすっぽり入るようになるとは思えない。だが、彩芽たちはそうなるまで、この調教をやり続けるのだろう。

「次はこっちだからね。こっちは締める訓練よ」

まるで見えないので、どうにもならない。ひたすら受け身でいる。あそこにローションが塗られていく。

そして冷たいゴムのようなものが入れられた。

「お尻を叩いたら、力を入れるのよ。そうねえ、膣とお尻の穴の間ぐらいを締めるような感じかしら」

お尻を平手で軽く叩かれて、力を入れてみた。

「見て、四十六もあるわよ」

「あら、けっこういい線だわ。五十を超えないとダメだけど」

「なんですか、その数字」

寮生が質問をしている。

「膣圧。いま測ったところ四十六あったの。三十から四十ぐらいでも普通なんだけど、五十を超えたらバナナを切ったりできちゃうぐらい。いわゆる名器ってやつなのよ」

「安里咲って、名器なの?」

「そう言ってもいいかもしれないわね。ラッキーな穴を持っているのね」

「それでエロいんだ」

笑い声が起こります。

「圧力だから、単位はmmHg」

「Hgは水銀のことね」

「そう。血圧の単位でもあるわ。百四十とか百六十とかっていうのと同じよ」

叩かれて股間に力を入れる。その繰り返し。そう簡単に数字が上がるわけではないし、計測方法によっても違うのではないか。それでも彩芽が読み上げる数字は四十を下回ることはなかった。

ただ、遊びのように、お尻や乳房をいじって実験を繰り返す。

「今度はこれよ。外国製のオモチャだけど」

「いやらしいかっこうだわ」

クスクス笑い。

「外国人サイズだから、安里咲にはぴったりだと思うわ。彼女ね、最初の男は外人だったのよ」

「きゃー、すごい」

「さすがね」

自分の大事な初体験が笑われている。

「どう、安里咲。あんたでっかいチンポじゃないとダメなんでしょ?」

さっきの器具は引き抜かれ、新しい器具が押し込まれる。ぐっと奥まで入り込む。とても長い。

「今度は安里咲に見せてあげるわ」

コードが伸びていて、彩芽は小さな器具をわたしの前に見せた。LEDが仕込まれた箱だ。

「誰か、お尻を叩いて」

パシンと平手で叩かれると、二十段階のLEDがパラパラと点灯していく。

「膣圧によって光るわけ。感じた時にどう変化するかわかるわ」

乳房を揉まれ、お尻を叩かれ、「もっと力を入れて!」と怒鳴られ、必死になっていると、LEDが半分ぐらいまでは点灯するようになった。

「全部つくまで頑張らないとね」

どんな基準かはわからないが、押し込まれた部分に圧力センサーでも入っているのだろう。それが反応して光る。

自分が力を入れると、どう光るかを教え込もうというわけだ。

「あんただけ感じてもダメなんだからね。男の人が安里咲のここを使ったら、すごくいい気持ちにならないといけないんだよ。いくら膣圧が高くても、肝心なときにギュッとできなきゃ、意味がないのさ」

寮長が吐き捨てるように言う。

「あ、すごい、ここで光るわ」

乳首をひねられて、思わず力が入ったようだ。

「そうか、おもしろいわね」

飽きることなく、そんな訓練をされたあと、やっとシャワーが許された。もちろん寮長と彩芽が同行する。

体を洗うことが許され、髪も丁寧に洗うことができた。

力がいっきに抜けていく。

湯船につかることも許された。二人はわたしにはなにも要求しなかった。

「なに、もじもじしてるの。なにかされたいわけ? ホントに色狂いになったわけ? 安里咲は女子大生でもあるのよ。頭を空っぽにしている時間が長くなかったかもしれないけど、ずっと空っぽじゃダメなのよ」

この事態を受け入れるには、考えないほうがいい。それなのに、考えろという。

「ただ空っぽな変態女が欲しいわけじゃないの。ちゃんと考えることができる人間だから、楽しいわけじゃない? 安里咲はそこがいいところなんだなー」と彩芽。

「寮長、今夜の自由時間はどうするんです?」

「寮生への貸し出しよ。一時間だけね。晒し台を運ばせましょう」

「かわいそうに、安里咲。毎晩、寮生に貸し出されるのよ。楽しいでしょ?」

やはり、このまま休ませてくれるわけではないのだ。

貸し出し

準備も自分でやらされる。

足枷と鎖。木製の台をいったんバラすのだが、首と手首をはさんでいる部分は、彩芽に手伝ってもらってしっかり取り付けてもらう。残りの部品をそこにぶら下げることができる。重い木製の晒し台をそのまま背負っているようなものだ。

これで暴れたら、彩芽を叩き潰せるかもしれない。

しかし、疲れ果てている上に、あまりにも重く、立っているのが精一杯だ。

「おいで」

階段を上がらされる。上から彩芽が、下から寮長が見張っている。彩芽は首輪からの鎖を引っ張り、寮長は後ろから竹刀で背負っている台を突く。古いマンションを寮にしたので、六人乗りのエレベーターが一基だけある。だが、使わせてくれない。

「これも訓練のうちだからね」

常に素行の悪い囚人のように罰を受け続ける。

怒りさえも、肉体的な疲労の中に溶け出して、考えられなくなる。

「ここよ」

三階の部屋。その前に立っても、しばらくはそこが自分の部屋だったことを思い出せずにいた。

彩芽がドアをノックする。

「はい」

声がして内側からドアが開けられた。

「あら。安里咲じゃない?」

そこにいたのは、神南登美子、藤倉佐智子、丸尾映奈だった。

激しいショックを受ける。彼女たちは寮生ではない。

唇が震える。

末土教授の亜由美に対する拷問実験のときに、一緒にアルバイトとして参加させられた三人。

「たすけて」

思わず、わたしはそう言っていた。

「ん? なに? 聞こえないわよ、安里咲。さ、早くわたしたちの部屋に入って」

「わたしたちの部屋?」

「そうなのよ」と登美子。「安里咲は、部屋がいらなくなったんですってね。もう大学も始まってしまって、いまから募集しても引っ越してくる子なんていないでしょう? 陽子夫人からのご紹介で、使わせてもらうことにしたの」

末土教授夫人が手を回したのだ。

「みんな家から通っているんだけど、こんなに大学に近いところに部屋があると便利だから借りることにしたのよ」

佐智子が鋭い目で睨む。口元は薄笑いを浮かべている。

「どう。あたしたちで、よかったでしょ? お礼を言ってほしいわ」

映奈はいつも無邪気だ。

後ろから寮長の竹刀がわたしを押した。

「あ、ありがとうござます」

なにをされても礼を言うのだ。

三人はニッコリと笑った。

「さっさと入りな。廊下じゃ、邪魔なんだよ」

晒し台のわたしを責めるのはこの三人だと気づく。

「い、いや」

わたしの声など誰も耳を貸さない。

彩芽に首輪を引っ張られ、寮長に尻を竹刀で叩かれながら部屋に入れられる。

「ハハハ。まるで家畜だわ」

登美子が吐き捨てるように言った。

「そうね、思ったよりもオッパイが大きいから、乳牛って感じね」

「ふふふ。いやらしい乳牛ね」

ガランとした部屋。わたしの荷物はすべて運び出されてしまった。見慣れぬ机と本棚がある。そこには彼女たちの私物が置かれている。ベッドはない。

「自分で組み立ててみせな」

寮長が枷から部品を外した。そしていったん、枷も外してくれた。

竹刀で順番を指示する。みんなあたりまえに服を着ているが、わたしだけ全裸で作業をさせられる。

「安里咲、けっこうお似合いじゃない?」

「あなた、そういうのが好みだったわけね?」

揶揄されても、返事もできない。

クタクタになっているのに、なおもこれから一時間、貸し出される。その相手はあのとき、一緒に末土教授に抗議した彼女たち。わたしだけ、立場が変わってしまった。

悔しい。

「首と手を出しなさい」

また枷にはめこまれる。そうなったら、自分ではどうすることもできない。自分を拘束する道具を作るところまでは耐えられたが、そこに自分をはめこむ作業はどうしてもできない。

寮長が持つ枷の押さえつける側の部品を両手で掴んだ。

「うん? どうするの、アリ?」

たまに、寮長や彩芽がわたしのことを略して呼ぶのだが、それも腹が立つ。

この部品を振り回して、ここを脱出する。

「おとなしく、首をその窪みにあてなさいな」

奪い取ろうとしているのに、板はびくともしない。片手で持っている寮長は余裕で薄笑いを浮かべている。竹刀をゆっくりと持ち上げる。

「安里咲。そんなに痛いのが好きなの? ホントにド変態のマゾ女なの?」

友人になるかもしれなかった三人の前で、酷い言葉を浴びせる。

彼女たちの表情を見ていると、楽しんでいるのがわかる。あのとき、亜由美に対する拷問のスイッチを押したときも、彼女たちは密かに楽しんでいたのではないだろうか。その後ろめたさから、教授を批判していただけなのではないか。

亜由美が、たった一人で引き受けていた想像を超える苦痛に、彼女たちは喝采を送っていたに違いない。

そして今度は、わたしに。

彩芽がグイッと鎖を引っ張った。

「うっ」

なにするのよ、と怒鳴りたかったが、ムリだった。たたみかけるように、寮長の竹刀が下から振り上げられて、股間に当たった。思わず足を閉じる。すると竹刀をはさんだようになった。

「ふふふ。好きなの? うずいちゃっているの?」

竹刀をいやらしく動かす。

股間を開くしかない。するとビシッと、敏感な部分を打ち上げた。

「あっ」

体を屈めると、彩芽が首輪を引っ張り、立たせようとする。足でお尻を押して股間を寮長に突き出すようなかっこうになった。

「ひっ」

「どうなの? 自分でやれば楽なのに」

再び竹刀が下から突き上げる。

「あっ」

板から手を離すしかない。その手を佐智子が掴んだ。

「安里咲。さっさとやりなさいよ」

手を背後にねじりあげられた。

「ううう」

彩芽が鎖を引っ張った。

「どうどう」と家畜にかけるような声を彩芽が投げかける。

台の枷に首を向けさせる。鎖を台の下にある突起に引っ掛けて、引っ張り上げると、首輪ごと首は枷に押しつけられてしまう。

頭を登美子が押さえつけた。

「安里咲、好きなくせに」

佐智子は掴んだ手を枷に押しつける。彩芽が右手を掴んでやはり枷に押しつける。

「これからはおとなしく、自分から進んでそうするんだよ」

寮長が上から板をおろした。金具を彩芽が素早く留めてしまった。

「これでいくら暴れても、逃げられないわ」

「楽しそう」

一歩下がっていた映奈がつぶやく。

「足ぐらいは自分でおとなしく縛られなさいよ」

遠くから言う彼女が恨めしい。

彩芽と寮長が足を台に固定する。

「ステキでしょう? ちょっと遅くなったわね。零時が消灯時間だから、あと四十分ぐらいしかないけど、初日だから許してあげて」

彩芽はそう言って、道具の入ったバッグを置いた。

「じゃ、四十分後に迎えにくるわ」

寮長と彩芽は出て行ってしまった。爆発するような二人の笑い声が館内に響いていた。

「安里咲。あなたとはちゃんと話をしたかったのよ」

登美子はいつも上から目線だ。

「教授とどんな取り引きをしたの? 聞かせて?」

「なんにも」

「ウソだわ」と映奈が言う。「ここでこんなことをしているのが、証拠よ。いつからマゾ女として教授に気に入られたの? 亜由美よりも前?」

「そんなこと、していません!」

「細い体。かわいそうなぐらいだわ。だけど亜由美よりは丈夫そう。それに、亜由美のことはわたしたちはよく知らなかったけど、安里咲のことは知ってるつもりよ。ちょっと美形で鼻持ちならなくて、ズルくて、いけすかない女よね」

佐智子にそんな風に言われるなんて。

「そう。抜け駆けが得意だものね」

「男に取り入るのもね」

いわれなき非難。いちいち反論もできない。

「こんなメスブタを友だちだって思っていたなんて……」

「こいつ、わたしたちを笑っていたんだわ」

根拠のない非難。彼女たちはそれを補強するように怒りに火をつける。

「この道具を使ってもいいわけよ」

登美子がバッグから、道具を取り出す音がする。なにがそこに入っているのか、見えないし、わたしは知らない。

わたしの前に登美子が立った。

「これ、使ってもいいかしら?」

ラケット。固いゴムでできている。そのしなり具合を手で確かめている。それを頬に押し当てる。ゴムのニオイ。

「痛いかしら?」

登美子は見えないところに移動した。そして、指先でお尻を撫でてくる。

「今日、なにをされてきたのか知らないけど、安里咲ってすごくいやらしい体つきだわ。キャンパスではお高く気取っていたわね。外人好きだなんて想像もできなかった」

バシンと音が響いた。

「うぎぃ」

自分の身に起きたことだとは一瞬、わからなかった。

「うわ、えぐい音がしたわよ」と佐智子。

「あなたもやってみなさいよ」

「じゃあ」

バシン、バシンと佐智子は左右のお尻を叩いた。

「がひっ、くっ」

歯を食いしばって耐える。

痛みは累積していく。最初の痛みが引かないうちに二発、三発と加えられていくと、一瞬、前より楽なような錯覚をするが、すぐに累積した痛みに身をよじることになる。声も出せないほどなのだ。

「どうなの、安里咲。教えてよ。お尻は赤くなってるわよ」

「熱い。お尻が焼けるよう……」

「そうなんだ、それはよかったじゃないの」

痛い尻を撫で回す。

「こんなのもあるわよ」

映奈もとうとう、背後に立った。なにを手にしたのかはわからない。

ヒュッと空を切り、ピシッと鋭い音がした。

「ぎひぃっ」

切り裂かれるような痛み。

すでにラケットで真っ赤になっているだろうお尻から、血が噴き出していたとしてもおかしくはない。

「なんなの、それ」

「わからない。針金の鞭かしら?」

「どれ、貸してよ」

「ああ、いや、やめて」

思わず泣いてしまう。

「おやおや、これがつらいらしいわ」

「じゃ、ぜひやらないとね」

三人が入れ替わり、鋭い金属のような棒状の鞭とラケットで、お尻を叩く。

「いや、ひっ、いたぃぃぃ、だめぇぇ、たすけてぇ」

涙がポロポロ落ちていくのが悔しい。こんなことをさせられて、自分というものが、おかしな生き物にされていくのが悔しい。

「ごめんなさい、許して」

つい、そんな言葉が出てしまう。

「謝るの? なにを?」

「やっぱり教授と取り引きしていたのね? どんな約束をしたの? 教えてちょうだいよ」

「そうよ。亜由美だって、海外留学したって聞いたわ。成績優秀だとかって言ったって、入学したばかりで留学できるなんておかしいじゃない?」

バシッ、ビシッと手加減のない鞭とラケットに、お尻の感覚がおかしくなっていく。

「外人好きだから、海外に行きたいのよね? 違うの?」

「うっ、ぐっ、ひっ、あぅ」

答えたくても、わたしだってよく知らない。

それに絶え間なく叩かれて、考えることさえできない。

「みんな、見て!」

指先で割れ目をまさぐられる。

「うわ、ドロドロよ」

「信じられない。こんなに痛い目にあって感じるなんて」

「こういうのもあるんだな」

「うわ、いやらしい」

「ホントに入るかしら」

「入るに決まってるじゃない」

指でねばついている膣口をいじりはじめる。彩芽が用意したのがどんな責め道具かだいたい予想はつく。

寮長たちが用意するものは、叩くもの、突っ込むもの。挟むもの。

「入れちゃえ、入れちゃえ」

「いやあああ」

休む時間がほとんどなく、なにかを入れられ続けている膣の粘膜に、太いディルドが突き刺さった。

「ぎひっ、許してぇぇ」

苦悶の声を彼女たちは笑って聞いているのだった。

『安里咲2』へつづく

奥付

お読みいただき、ありがとうございました。

二〇一四年三月 第一版 二〇一六年九月 第二版著作権 あんぷらぐど(荒縄工房)荒縄工房の情報は下記サイトへ●ブログ「荒縄工房」

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