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安里咲1 · 第4部

安里咲1 第4部 (4/5)
前の話 · 次の話

チュバチュバといやらしい音を立てながら、棒をしゃぶる。先端が喉を突いてくる。いまの長さで十センチしかないのなら、目標の二十センチはどうすれば達成できるのだろう。

「いいわ、いやらしいわよ。素直にそうやればいいのよ」

彩芽がはしゃいでいた。

「止まったら、その分延長するよ」

やらなければ、いつまでも終わらない。

わたしはあきらめて、頭を前後に振って、棒をしゃぶった。なんの味もない棒。人間のものより固い棒。

「その調子よ。いまはひたすらしゃぶりなさい。毎日やれば、もっと上手になるわ」

彩芽の弾んだ声。

上手になる? こんなことが上手になってなにになるというのか。

「よかったわね、安里咲。寮長にあそこを壊されなくて」

彩芽はやさしく言う。

「わたしもすごくうれしいの。安里咲が素直になってくれて」

完全に屈服したつもりはない。

ただ、彩芽のホットした声に、わたしも素直にうれしくなった。

「じゃ、これから三十分ね」

やっと砂が戻り、彩芽が砂時計をあらためて逆さにした。

ひたすら、棒をしゃぶった。頭を振って、おかしくなってしまうかもしれないが、それでもいい。お腹もお尻もあそこもギリギリと絞られるように痛いのだが、少なくとも新たな痛みは追加されないのだから。

亜由美もそうだったのだ。もっと酷いことをしてほしいと自分から願い出る。なぜなら、どうせされるから。拒んだり逃げたとしても、もっと酷い目に遭うだけだから。

だったら自分から苦痛の中へ飛び込むほうがマシ。

彼女のことを思うと、あらためて涙が出てきた。亜由美はどんな気持ちでいま留学しているのだろう。

「うがああああ」

腹部に強烈な痛みが走った。

早くお腹のものを出さないと気絶しそうだった。止めたらまたやり直しになるかもしれない。

時間が経つのを、ひたすら頭を動かしながら待ち続けた。

なにも考えられなかった。

砂が落ちる量があまりにも少ないように思えた。

二人は黙って見ていた。

半分ぐらい砂が落ちたのは確認したが、そこからはよく覚えていない。ひたすらしゃぶり続けたので、くらくらしてきたのだ。

「よーし、終了」

彩芽が言ったとき、はじめて砂時計がもう砂を落としていないことに気づいた。

「出させてあげるわ」

寮長がお尻に手をあてて、そこに食い込んだ栓を掴んだ。

「えっ、このままで?」

「まさか、寮のトイレを使うつもりだったんじゃないわよね」

彩芽の声はまた厳しいものに変わった。

清掃作業

「ガマンできるかしら?」

寮長は、ぐいぐいとお尻の中の栓を動かして遊ぶ。

「苦しい、助けてください」

「じゃあ、抜いてあげようか?」

「お願いします、でもトイレで……」

「おまえにトイレなんてないのよ」

寮長が背中にお尻を落として、足の枷に固定された棒を持ち上げた。

「いくわよ」

あらためて栓を握る。

「あああっ」

うつ伏せのままでの排泄など、したことがない。

「せーの」

栓が引き抜かれると同時に、ビュッと溜まりに溜まったものが噴き出した。

「もっと! 思いきりやりなよ」

寮長は背中でぐっと体重をかけた。

「うげぇ!」

お腹が押されて、お尻から噴き出す。

「ひぃぃぃ、苦しいぃ」

「気持ちがいいだろう? 全部出してみなよ」

あまりにも恥ずかしい。音もする。ニオイもある。彩芽が笑っている。

こんな姿を見られて、笑われるなんて。

「安里咲のウンチがいっぱい出てるわよ!」

彩芽の声が突き刺さる。

「うわー、すごーい、くさーい。鼻が曲がりそう」

出したくて出したわけではない。

「安里咲。これからは、おまえは自分の体について、全部、わたしたちに管理されるんだからね」

「え?」

「日課に書いてあっただろ? この訓練期間中、おまえは常に監視下にあって、常に拘束されているんだから、当然、自分のケツを拭くことだって、自由にはできないのさ」

寮長も笑っている。

浴室に彼女たちの下品な笑い声が響く。

「こういうの見たことある?」

彩芽はシャワーのホースを持ってきた。その先端はロケットのような形だ。三段にくびれ、銀色をしている。いかにもいやらしい目的の道具に見える。

「いや、もう、やめて」

「だめだよ。すっかりきれいにしないとね。楽しいことをやっていて、汚いものが出て来たら興醒めだからね」

「いくわよ」

彩芽がその先端を、お尻に突き刺した。

「うっ」

温い湯がかなりの勢いで体の中に入ってくる。

「わぁぁぁ」

パニックになっていた。そんなことをされたら、お腹が破壊される……。

「残らず出して!」

ホースが引き抜かれて、音を立てて激しく腸から水があふれ出る。

「はあああ」

「もう一度」

医者でもない彼女たちに、わたしの体の中を弄ばれていることに、恐怖と憤りを感じていた。

剛介たちに騙されてレイプされたときの傷も残っているはず。医者に連れていってほしい。きっと、体の中に無数の傷があり、いずれそこが膿を持ち、腐っていくのではないか。

苦しみの中で、死んでいくのではないか。

「もう一度やって」

「いやああ」

しかし、そうやって腸に水をいっぱい入れられたあと、すぐに排泄する行為は、苦痛ばかりではなかった。

勢いよくお尻から水を噴き出しながら、奇妙な快感があった。

「出たかなあ」

二人の女にからかわれ、立たされた。お尻に違和感があるのは、ゴム手袋をした彩芽が、指をそこに入れているからだ。

「ちゃんと出してよね。出せって言われたら出す。そのほかのときは出さない。大切なことよ」

嗚咽が止まらない。

もうわたしに未来などない。こんなことが気持ちよくなるなんて。こうしてオモチャにされ続けるのだ。

「泣かないの」

寮長に顔をべろべろと舐められた。

「お尻の穴を広げられて、どう? 感じる?」

感じるわけがない。

「文句がなければ、つぎは寮の掃除。さっそく風呂掃除からはじめましょうね」

寮長は彩芽にまかせて、出て行ってしまった。

彩芽は足枷についている棒を外してくれた。その棒をわたしを脅すために使うつもりだ。

「お掃除は罰じゃなくて、安里咲の大事なお仕事なんだからね。普通に掃除をする限りは、体は自由にしてあげましょう」

言われるままに、デッキブラシで自分の排泄したものを下水に流し、その後、風呂場を洗剤で洗う。

「もっとゴシゴシこすって」

水のない浴槽に入り、中をスポンジで洗う。

それをホースの水で洗い流すのだが、ここでは本当に水しか使わせてくれない。ガタガタ震えるほど寒くなるのだが、彩芽に棒で突っつかれながら、なんとか掃除を終えた。

「つぎはおトイレの掃除よ。安里咲は使えないけど、丁寧に掃除しなくちゃね」

トイレブラシ、雑巾などで隅から隅まで掃除させられる。女子寮のトイレは五階建ての建物の各階に二室ずつある。もともとはマンションだった建物を改装した寮なので、各室にトイレをつけてもよさそうなものだが、そうはしなかった。風呂も、いま掃除させられた共同のものしかない。

トイレといっても広く、洗濯機と洗面所もある。洗濯をしながら、髪をとかしたり、化粧をしながら、そして用を足しながら、ガールズトークが繰り広げられる場所だ。

一階に共同のダイニングキッチンもあるのだが、そこは寮長の部屋に近いこともあって、当たり障りのない会話しかできない。風呂上がりなどに、気の合う者どうしで話をしたり、ゲームをしたりすることもあった。

楽しい寮生活だった。それも四月だけで終わってしまった。

必死に便器から洗面所、床、ゴミ箱などを掃除し、ゴミを集めていく。

裸のわたしを寮生たちは、冷たく見るばかりだ。

つい先日まで一緒に会話をした者たちも、目をそむける。

彩芽はその様子を楽しんでいるようだ。首輪と鎖につながれた女……。棒で突っつかれながら、作業をさせられている奴隷。

そもそもこうした掃除は各階の責任で、当番がやっていたはずだ。わたしもやったことはある。

それを、これからはすべてわたしが引き受けることになる。それは彼女たちにとって好都合だろう。

一階の寮長のトイレまで掃除をしたあと、集めたゴミをゴミ置き場まで運ばされた。

そこは裏側とはいえ外なのだが、彩芽はわたしを朝日の中に突き出す。

「もう恥ずかしくないでしょ。誰も安里咲のことを不思議だとも思わないし、無視していたわね」

悔しいが、なにも言いたくない。

「安里咲がどういう存在か、みんなわかっちゃってるのよね」

同じ学生だったのに……。

希望に満ちた入学を終えて、新入生として楽しい大学生活をはじめたばかりの、ごく普通の女子。わたしもそうだった……。

思わず、鎖を掴んでいた。

彩芽はニコニコしながら鎖を引く。

「逆らうの? いいわよ、やってみなさいよ」

棒で肩を突かれた。それぐらいでは離さない。なんだかわたしも意地になっていたのだろう。鎖を両手で持つと、いっきに彩芽を引き寄せた。

バランスを崩した彼女の表情が変わった。驚き。そして怒り。

倒れそうになった彼女の突いた棒が、わたしの乳房に突き刺さった。

「うっ」

無防備すぎる裸体。

息が詰まり、痛みのあまりしゃがみ込んでしまった。

「安里咲。反抗してもいいけど、もっと頭使いなよ。じゃないと、おもしろくないし」

棒はまだ右の乳房に食い込んでいた。ぐりぐりと押しつけながら、彩芽は体勢を立て直していた。

「逃げられないし、逆らっても無駄。そのたびに苦痛が増える。そういう仕組みよ」

寮長がやってきた。

「もう十一時だよ」

「外周りの清掃が終わってません」と彩芽。

「いいよ、今日は。スタートが遅かったんだから。早く連れてきな。昼前にちょっとした運動をしようじゃないか」

寮長の部屋に連れ戻されます。

日程表には「AM十一時 逆さ吊り。鞭またはスパンキング」とあった。

寮長はいまどのメニューをこなしているのかわかるように、項目の上に黄色いポストイットを貼り付けていた。

彩芽は脚立を持ってくると、天井からぶら下がっているフックに縄をかけた。

「寮長。最初だから両足でやりましょうか」

「それでいいわよ」

ベッドに腰掛けさせられ、足枷の上から足首を何重にも縄で縛っていく。そこに新たな縄を通すのだが、それは天井のフックからのものだ。

やりたいことはわかる。

いまは寮長が棒を手にして、痣のようになっている乳房のあたりに、その先端を転がす。

それだけで、わたしは動けない。

「できたわ」

「バカね、彩芽。手もよ」

「あ、そうか」

腕を背中に回して縛られた。

「これもよね?」

「もちろんよ」

またボールのついた猿ぐつわを噛まされた。

「いくよ。せーの」

彩芽と寮長でロープを引っ張ると、わたしの体は足から天井に向かっていき、いっきに逆さ吊りになってしまった。頭が、彼女たちの脛と膝の間ぐらいにある。

ぐるぐると回る。

「肌のお手入れも大切だから」

彩芽がオイルのようなものを、わたしに塗る。足に。お尻に。腹部に。乳房に。最後に股間にも。二つの穴に執拗に塗る。お尻はまだ痛みが残っている。あれだけ激しい排泄を繰り返させられたのだから、傷ついているはずだ。

「鞭とスパンキング、どっちにしようかね」

「ちゃんと掃除をしたから、鞭はかわいそう」

「じゃ、スパンキングにしてあげよう」

寮長はその分厚い手に、革のグローブのようなものをはめた。それで両手を叩いてみせる。バシン、バシンと強烈な音がする。

「おまえのような女を叩くための道具さ。覚悟をしな」

寮長の手がお尻に振り下ろされた。

バチン!

「ががぁう」

思い切り悲鳴を上げたつもりだが、うめき声しか出ない。目が飛び出るほどの痛み。なんという力だろう。

「柔道は受け身を最初に覚えるんだ。安里咲も受けるところから練習しなくちゃね」

バチン、バチンと激しい音が響く。

足首で天井から吊されて、避けることもできない。叩かれて、痛いので動くものの、壊れた振り子のように少し動くだけだ。

「次はわたし」

彩芽は大きな団扇のようなもので、お尻を叩く。これも、強烈な音と痛みだった。

「があああああ」

助けてほしい。だけどムリなのだ。ひたすら彼女たちによる打撃を受け続けるしかない。

安里咲犬

「きれいに赤くなったじゃない?」

寮長と彩芽は、わたしのお尻を撫で回している。叩かれ続けたので腫れ上がっている。ジンジンと深く痛みが染み込んでいる。撫でられると、新たな痛みを感じてしまう。

「寮長はさすがですねえ。上手に跡がついてるわ」

「彩芽もかなり上達してるじゃないの」

「本気になれる相手だと集中力が違うのかも」

「そうね。何度でも引っぱたきたくなるお尻だね、こいつは」

バシンと寮長はなおも叩いた。

「ぐうう」

自分たちがした結果を、彼女たちの成果でもあるかのように確認して、自慢している。

「もうすぐ安里咲は、痛いことをされないと、退屈に思うようになるわよ」

彩芽は勝手なことを言う。

「あなたから、お尻をぶってくださいって、頼むようになるの。その日が楽しみだわ」

そんな日が来るわけがない。こんな痛みを自分から求めるなんてあり得ない。

ああ、しかしまたしても亜由美の存在があった。彼女は自ら痛みを求め、拷問に身を捧げていた……。

あり得ない。

「まあ、いい感じになってるじゃない?」

教授の夫人、陽子がやってきた。

「叩いてみますか?」

彩芽がパドルを差し出した。

「今日はいい。それより昼食の差し入れよ」

「うわー、ありがとうございます」

「食堂で食べましょう。安里咲も一緒に。少しいいかっこうをさせてあげましょう」

三人がかりでわたしをみじめな姿にしていく。

最初に与えてくれた服は、結局、あれきり着させてはくれないのだ。

鼻にフックをつけ、頭を通過して首輪に通して引き絞る。自然に開いてしまう口には、開きっぱなしになるように金属のリングをつけたベルトが押し込まれた。

「あがあああ」

乳房が突き出すように、穴のあいた革のブラをつけられる。腕には肘まである指のない手袋。手は使えない。中で拳を作っている。

膝に丸い革のパットをつける。足首の枷に鎖を通し、それも首輪につながれる。

「これをつけるとかわいくなるから」

彩芽は九尾鞭を手にしている。その柄の部分は男性器をかたどっている。開いたままの口に突っ込まれ、唾液をつける。

「わかるでしょ?」

濡れた柄を、お尻の穴に入れていく。

「あっ! えっ!」

捻るように奥へ入れられるのだ。

「逃げるな」

寮長がリードをぐいっと引く。

逃げる気はなくても、体が自然にお尻に対する暴虐から逃れようとしてしまう。

「しっかり突っ込んでやりなよ」

「わかってるわ」

逃げようとしても、その長い柄を最後まで押し込まれてしまう。

「尻尾もできたし。完璧だわ」と寮長。

「だめ。まだこれがある」

頭につけるカチューシャ。茶色い犬耳だ。

「じゃじゃーん、安里咲犬だよー」

彩芽は楽しんでいる。

みじめすぎる。

「おいで、アリ!」

手と膝で四つん這いになる。リードを引っ張られ、そのまま廊下に出て、共同の食堂へ連れていかれた。

学生たちが普通に食事をしている。

賄

いはついていない女子寮だった。

二台ある大型冷蔵庫は自由に使ってよく、共同で購入している食材もあり、自炊できる。

グループによっては、当番で食事を作っていたりもするが、寮での決まりはない。全員が不規則で、食事時間も決まっていないからだ。

それに大学へ行けば、夜もやっている立派な食堂がある。

今日は土曜日なので、寮生も比較的、のんびりしていた。大学へ行かない者も多い。

掃除をしていたときもそうだが、みんなは、わたしを避けていた。その理由が食堂でやっとわかった。

陽子がやったのだろう。大きな張り紙がしてあったのだ。

「安里咲 実験中につき次の点をご注意ください」とある。

読むと、わたしは自ら志願して、末土教授、野川陽子の実験に参加している。その内容は非常識で過酷なものだが、すべては心理状況などを調べるための実験だという。

「実験を妨げないように、冷静に対応してください。不明点は寮長に尋ねてください」とある。

これのどこが実験なのか。

亜由美の拷問実験も「実験」とは名目だけで、忌まわしい本物の拷問だったのだ。わたしの「実験」は目的さえ明らかにされていない。期間も示されていない。

文章からわかることは、ボランティアとして自分で参加していること。わたしが勝手にやっていると解釈されてもしょうがなかった。

「アリは、これを食べなさい」

洗面器にドロドロの物体が丼一杯ほど、盛られていた。茶色く、不気味だ。

「大丈夫。食べられるものだから」と陽子が言う。「だけど手を使ってはだめよ」

口を閉じることもできないのに。

「全部食べるまで許さないわよ」

顔を近づける。微かに嫌なニオイがする。全体的にはオカラのような感じがしていた。

突っ込むようにして食べ物を口に入れる。噛むことができないから、飲み込むしかない。舌で確認した限り、噛む必要はなさそうだったが、味もなく、泥のようなので、飲み下すのに時間がかかった。

寮長たちは陽子の差し入れた弁当を食べている。海老フライの香りがする。

口に入れるが、閉じられないのですぐに飲み込めず、上を向いて必死に飲み込む。

最後に洗面器を舐めるまで許されなかった。

「きれいに食べたじゃない。顔を見せてごらん」

柔らかな白い布で顔を拭いてくれた。

「ふふふ」

それを広げる。

「見覚えない?」

「あぐっ!」

わたしの下着だ。

「もう、アリちゃんには下着、いらないものね? 雑巾として使うことにしたから」

日記だけではないのだ。わたしの部屋に勝手に入り、なにもかも好きなように使っている。

「水を飲みなさい」

洗面器に水がヤカンから注がれた。

それを飲む。顔が濡れてしまう。それをまた別のわたしの下着で拭うのである。

「そうだ。アリの部屋に行ったけど、いらないものがいっぱいあったのよ。あれ、明日、日曜日だからバザーに出さない?」と彩芽が言う。

「いいわね。自分で売らせたらいいわ」と陽子。

「寮の部屋が空いてしまうね」

寮長がつぶやいている。

「新しい学生を募集してあるから大丈夫よ」と陽子が言う。「明日、越してくるわ。だから、あとで荷物はすべて外に出しておかないといけないわね。それよりも食後は散歩の時間よ」

野外訓練。

犬の姿で寮の外を歩かされるのだ。

寮長は仕事があるのでついて来なかったが、陽子と彩芽は、わたしのリードを持って引っ張り、寮を出るのである。

「彩芽。言うことを聞かなかったら、これで叩いていいんだからね」と陽子は言い、二人ともに竹刀を手にしていた。

異様な姿だったろう。

裸の女。お尻から尻尾を垂らし、犬耳をつけ、口は開いたまま。手と膝で歩いている。足首は首輪とチェーンでつながっているので、宙に浮かしておくしかない。なかなかうまく、歩けない。

そもそも恥ずかしすぎる。ただの土曜日ではない。ゴールデンウィークの週末だ。

都会のこのあたりでも、人通りはかなり多い。

ガタガタと震えながら、彩芽にお尻を竹刀で突っつかれながら歩く。膝で歩くのはとてもつらく、ぶらぶらとしている足首に首輪が引っ張られると、連動して鼻フックまでが強く食い込んでくる。

人間のすることではない。

それをさせられている。

寮から細い路地を抜けると、大学へつながる道だ。そこは商店街の一部でもある。

客こそ少ないが、店主たちが、わたしをじろっと見ている。恐ろしい顔をしている。嫌悪の対象なのだろう。

学生街の商店だから、学生には優しいが、常軌を逸した者には冷たい。

全裸で練り歩けば、警察に捕まるだろう。

わたしはそれを期待していた。

案の定、白い自転車に乗った警官がやってきた。

「ご苦労様です」と陽子に敬礼した。

「あら、そちらこそ、お忙しいですのに」と陽子はかわす。

「いえ、仕事ですから。なにかあれば、いつでもおっしゃってください」

「ご親切にありがとう」

陽子の存在はわかっても、足元にいるわたしの存在は無視する。警官までもが? いったいどうなっているのだ。

しだいに歩くのに必死になっている自分がいた。犬ならもっと上手に歩くだろう。人間だから難しい。そして苦しい。

お尻に入った尻尾が、予想できない動きをし、子宮を内側からぐいっと押すときがある。

すると反応してしまい、ジュワッとなにかが股間に染み出す。

開いた口からは涎が垂れている。

歩けば乳房も揺れる。

恥ずかしい……。そう思うと、余計に股間に妙な衝動が走る。

商店街を外れまで歩かされた。空き店舗に商店街の事務局のようなものがあり、そこにいる初老の男に、陽子は気軽に声をかけた。

「こんにちは」

男は口をへの字にしているが、わたしを凝視する。

「これが安里咲。犬ですけど」と彩芽。

「犬か。まったく……」と男はつぶやく。「薬局の長崎さんに会わせたのか?」

「まだこれからです」

「バザーの場所はここを使っていいから」

「ありがとうございます」

「まあ、楽しみにしているよ。新しいマスコットだからね。みんなでかわいがってあげるから」

男は不気味に笑った。陽子と彩芽も笑っていた。

「マスコットなんて、上等なものじゃありませんわ」

道路の反対側へ渡り、古い薬局に入った。

「あ、これはこれは」

カウンターの奥から男が出て来た。

「ほほう」とうれしそうな顔をしている。「前の子が留学しちゃったって聞いたんで、がっかりしていたんだけど、なかなかかわいいじゃないか」

「でしょう? 安里咲犬よ。アリって呼んでね」

彩芽は常に脳天気を装う。

「アリちゃんね。よろしく」

いやらしい笑みを浮かべる薬局の男に、警戒心しかわかない。

意味はさっぱりわからないのだが、前の子とは亜由美のことだろう。新しいマスコットとはなんだろう。亜由美はここでなにをしていたのだろう。

なにも知らないことに気づいた。わたしと亜由美は、ほんの一瞬、あの地下室で交差しただけで、それ以外の接点はない。

「帰りましょう。急いでね」

ああ、考えることができない。

陽子は足早に寮を目指す。首輪を引っ張られ、必死についていく。汗びっしょりになってしまう。

なにより、お尻に入っている尻尾の柄が、とてつもなくむず痒い痛みを与えながら、内側から刺激を与え続けるので、震えるほど感じてしまう。

もしわたしが感じていることを知られたら、どんな目に遭うか。

じっと耐えながら、わずかながら、もっといじめてほしいという気持ちが芽生え、それを必死に打ち消さなければならなかった。

乳房打擲

「今日は昼寝はなし。自分の部屋の片付けをしなさい」

ひどい話だ。

猿ぐつわをされた上に、足枷をつけられてそこに太い鎖をつけられた。

ジャラジャラと音を立てて引きずりながら、久しぶりに自分の部屋に入る。

彩芽がずっと監視している。

変わり果てた部屋。家捜しされたのだろう。いろいろなものが乱雑に床に落ちている。クローゼットの中身もすべてベッドの上に引きずり出されていた。

「もう、ここはアリの部屋じゃないんだよん!」

彼女は首輪からのリードを持って、手には竹刀を持って、監督する。

「いらないものを捨てるの。捨てるものは廊下に出して。というか、全部、捨てるものだけど」

机の引き出しをあけると、空っぽだった。例の日記、携帯電話、パソコン、テキストや学生証までも、すでに取り上げられているのだ。

「大事なものは寮長が保管しているから安心してね」

口が塞がれているので涙を流すばかりで、反論もできない。

ただひたすら、自分のものを廊下に運ぶ。

「ずっと裸はつまらないから、少しだけ着るものは残そうね」

選択権もなく彼女が仕分けしてしまう。捨てるもの、バザーに出すもの、残すもの。廊下に三つの山を彼女が作っている。

もともと一人暮らしの最小限の物しか持ってきていない。あっという間に片付いてしまう。

ガランとした部屋。掃除機をかける。

「次に来る人も決まってるから、丁寧に掃除してよ」

涙はやっと涸れたが、気分は沈む一方だ。

「ちょっと、暇だったら手伝って!」

彩芽が声をかけると、寮生が三人、手伝いに来た。

バザー用のものを段ボールに入れていく。

「これかわいいわよ」

わたしの下着を笑い物にする。

「これ、古すぎない?」

寮生がパンツを手にしている。

「なに言ってるの。こういうのが売れるんじゃない」

使い古した下着までもバザーに出すらしい。

恥ずかしすぎる。

「えー、やだー。ヘンタイ」

彼女たちはきわめて無責任に楽しんでいる。

どうしてそんなに他人事でいられるのだろう。

「もうこんな時間だわ。遅れたら寮長が不機嫌になるから。機嫌が悪いと、訓練はすごくきつくなるわよ」

首輪を引っ張られ、足枷の鎖を引きずりながら、彩芽のあとをついていく。

階段で一階へ行くと、そこに寮長が待っていた。手に黒いゴムのパドルを持っている。それを使うらしく、ビュンと素振りしてみせた。

「食堂でやるのよ」

寮長にそう言われてショックを受ける。

「あうう」

せめて、寮長の部屋でと思うが、許してはくれない。

「手伝ってもらったお礼をしないとね」

彩芽に引っ張られ、後ろから寮長にパドルでお尻を軽く叩かれながら、食堂に入る。

午後三時。土曜日なので、のんびりした空気が流れている。数人の寮生がお茶を飲んで話をしている。

「気にしないでいいのよ」

寮長が声をかける。彼女たちは少し緊張する。わたしを見ている。哀れな奴隷。しかし、すぐに自分たちの話を続ける。無関心なのだ。

「ここがいいわ」

テーブルを少し脇にどかして、広くした床に正座させられる。

その背中にテーブルが当てられ、リードをテーブル越しに彩芽が引っ張る。体がのけぞる。

寮長が手枷にも鎖をつけて、それをテーブルの背後に回してしまう。わたしは胸を突き出すような形で両手を広げたかっこうで、自由を奪われている。

そこに荷造りを手伝ってくれた寮生たち三人がやってきた。

「お礼に、安里咲のオッパイをこれで引っぱたいてあげてよ」

「え?」

「思い切りやっていいのよ」

「いいんですか?」

「いいの。わかってるでしょ?」

寮長は寮生たちになにを伝えたのだろう。

それだけで、彼女たちが納得してしまう。

これはどこかで見た光景ではないか。亜由美の拷問実験のとき、わたしたちが取った態度と同じではないか。あのとき、アルバイトだと思って研究助手として呼ばれたわたしたちは、どういうわけか、亜由美の拷問をエスカレートさせてしまうことに荷担させられた。あれはいまから思えば仕掛けがあったのだ。そうせざるを得なかったのであって、冷静な判断などできなかった。

だが、そんな理屈はどうでもよく、実際に亜由美は傷つきどん底に突き落とされたあとも、さらに苦痛の中に沈められていった……。

今度はわたしの番ということか。

パドルを受け取った寮生が、「いくわよ」と薄笑いを浮かべて、それを振り下ろす。

「ぐぅぅうぅ」

右の乳房を張り飛ばされて、バンと大きな音がした。

「こうするともっと力が入るわよ」

寮長はパドルを受け取って、片足をわたしの腿にのせて体重をかけながら、振り下ろした。

「ぎゅぇぇぇええ」

その痛みは寮生の比ではない。

右乳房があっという間に真っ赤に腫れている。

「やってみさない」

三人に教えながら、右に十発、左に十発。パドルが打ち下ろされた。

「いい色になったわね」

寮長に痛む乳房を揉みしだかれる。

「痛かった? 痛みのあとは楽しい性感訓練よ」

それも、食堂でやるというのだろうか。

性感訓練

「こっちに上がるんだよ」

寮長が腫れた乳房を掴み、ぐっと持ち上げる。

痛いので体を浮かせる。そのままテーブルに上体をのせていく。

うれしそうな寮長の顔が近い。キスされるのではないかと思うほどだ。

「かわいいね。オッパイをこれぐらい叩かれても、平気な顔をしているね。これから毎日だけど、陽子さんにもう少し厳しいメニューにするように言っておいてあげよう」

どんなことでも自分たちで好きなように決められるのだろう。そのくせ、いちいちこちらのせいにしたり、恩をきせたり。

「もうちょっとこっちよ」

首輪を引っ張られて、首吊りのようになりながら、テーブルの上をすべり、お尻までテーブルの上に。

足のチェーンをテーブルの下にまわして止め直す。

手足は少しは動くのだが、反撃したり、脱出することはできない。

「あぐあぐ」

「まだ初日だし、アリは無駄吠えしたりするといけないから、しばらくは猿ぐつわのままよ。とくにほかの人たちがいるところではね」

彩芽も耳元近くで囁く。

「誰か、ボランティアで手伝ってくれないかな?」

寮長が声をかける。荷造りした三人に加え、お茶をしていた三人もやってくる。

「これから毎日、この時間に安里咲の感覚をさらに研ぎ澄ませるための訓練をやるんだけど、時間があれば手伝ってほしいの」

「いいですけど、なにをすればいいんですか?」

そこは、「なぜ安里咲は裸なのか」とか「どうして安里咲はこういう目に遭っているのか」という疑問ではないのだろうか。

あたりまえの疑問を彼女たちが口にしないのはなぜなのだろう。

「やっぱり一番、感じるのはここかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

寮長は竹刀の先で太ももの付け根をぐいっと押した。

「これを使って、どうなるか調べるの」

彩芽は六人に親指よりも太いボールペンのようなものを渡す。

「ひねると振動するわ」

みんながスイッチを入れると、ブーンという音が響いた。

「みんなでどこでもいいから、安里咲が感じるだろう部分をそれで刺激してみて。そうね。とりあえず十分ぐらいやってみましょう」

悲鳴を上げてみるが、誰の耳にも届かない。

「じゃ、わたしこっち!」

「えー、どこにしようかなあ」

六人の女子たち。バイキング形式の食べ放題に来たように、わたしの体を物色する。そして結局、囲むように並んだ。

「はじめ!」

いっせいに小型バイブがわたしの体に食い込む。

脇の下、乳房の周辺、脇腹から背中、腰、そしてそけい部。

「があああああ」

叫び、テーブルが動くほどバタバタするが、誰も気にも止めない。

「アリちゃん、どう、ここは?」

痛い、くすぐったい、つらい……。

体がくねくねと反応してしまう。

「見て見て!」

いっせいにバイブが離れた。ホッとして荒い呼吸をする。

みんなが見ているのは股間なのだ。

「ふふふ」

彩芽が指先でそこを触る。ビクッと反応する。

激しく濡れているのがわかる。

「やっぱりね。これでみんなもわかったでしょう? アリちゃんはかわいそうな子なのよ。みんな、協力してあげてね」

「はい」と六人が返事をする。

かわいそうな子……。

「寮として追い出すこともできるけど、末土教授と研究者でもある奥様の陽子さんが保証人となって、この寮で特別な扱いをすることにしたわけだから、みんなも彼女がおかしくならないように、注意しながら扱ってあげてね」

寮長が言う。

「よしよし、アリちゃん、見てよ」

彩芽がうれしそうに、どろどろになった二本の指を見せつけにくる。

「オッパイを叩かれて、みんなに刺激されて、こんなに淫らになっちゃうんだから、ホントにかわいそう」

それは違う。させられているのであって、いまわたしを見下ろしている六人だって、わたしのようにされれば同じではないか。

「どうだったかしら。みなさんの話を聞きたいけど」

寮長はまじめな顔をして、メモを手にしている。

「脇の下からバストにかけて、かなり感じていたようです」

「乳房の周りもすごく敏感でした」

「おへその横あたりとかも」

「股間はどこも敏感です。上のほうがとくに」

「上?」

「その……」

「クリトリス?」

「はい」

彼女たちはしばらくマジメに話していたのに、そこで笑いが漏れた。

「ふふふ」と寮長も笑っている。

「ま、普通に感じるところは当然に感じるわけだけど、それ以外にも感じるかもしれないから、これからもいろいろと試してみましょう。陽子先生によると、感じやすい部分は思い切り感じさせて鈍くしていくのがいいらしい。だけど、そうすると、これまで感じなかった部分が感じるようになったりもするそうよ」

「難しいんですね」

「そう。安里咲はただのヘンタイじゃないのよ。病気なんだから……」

病気……。

おもしろがりながらも、全員がわたしを哀れむ。

どういうわけか、わたしは病人とされている。そしてみんなでそれを治そう、または悪化しないようにケアしようとしている。

そのケアの方法が、わたしを思い切り感じさせ、暴力で支配し、うむを言わせず快楽に引きずり込むことなのだ。

「シャワーを浴びさせなさい。買い出しを手伝わせる時間よ」

寮長が宣言をした。また外に出されるのだろうか。

買い出し

外は恥ずかしすぎる。

熱っぽい。服を着せてもらえないからか、風邪をひいたような感じがする。普通に立って歩くことを許されるが、服はダメなのに、わたしを苦しめる器具は身につけさせられる。

お尻に数本の束になった短い鞭を入れられた。尻尾だという。そのグリップ部分は最初からその目的のために作られたように、男性器に似た形になっていた。

「ぐううう」

腸内で動く異物はわたしを狂わせる。それを悟られたくない。鈍くなるどころか、こういう感覚はさらに研ぎ澄まされ、さきほどの歩行よりもさらに狂おしいほどに感じてしまう。

なんという残酷な行為だろう。それを知りながらやっているのだろうか。

抜け落ちないようにと、腰にベルトをつけられ、背中側から紐がベルトから下がり、鞭の柄に巻き付いて、前に回り股間を締め付ける。

彩芽は意地悪で、「紐がズレないようにね」と、クリップで紐とクリトリスを一度に挟んだ。

「ひぃぃぃ」

「痛い?」

それだけではない。一種の絶頂を感じてしまっていたのだ。

「んぐぅ」

知られないように噛み殺そうと必死になる。汗が額からじわっと溢れるが、それ以上に股間が濡れていくのがわかる。

なにも言わないが、彩芽は笑いながらうなずいた。

「気に入ったみたいね」

これで歩け、というのだろうか。

「もっと痛いのがいいかな?」

乳首にもクリップをつけられ鈴をぶら下げる。

「ひいいい。ムリです。痛くてちぎれそうです」

「かわいいわよ」

鈴を彼女は乱暴に手で払って、チリンチリンと鳴らす。

「あっ、あうぅぅ」

強烈な痛みに飛び上がりそうなのに。

「痛い痛いってうるさいわね。猿ぐつわなしで歩かせたいのよ」

「ああー、でもー」

なぜこういうときには猿ぐつわをしてくれないのか。イキ続けてしまうかもしれない。悲鳴は別の意味の声になってしまう。それを自制できる自信がない。

「うるさい」

お尻を気安く平手で叩かれる。

お尻も乳房も朝から叩かれて赤く腫れてしまっている。

ところが、それがまた股間を熱くしてしまうのだ。

「痛みを忘れさせてあげる」

彩芽がわたしの股間を触る。クリを挟まれて苦しんでいるのだが、その下に指を這わせる。上下にゆっくり擦る。

「だめぇぇぇ」

低く押し殺したものの、苦痛より悦楽に聞こえたのではないか。

「これが欲しいのよね?」

太いバイブ。

これまで見た中ではもっとも恐ろしい形をしている。

「いやぁぁ、それは……」

人の拳を模していた。大きさは子どもの手ぐらいだろうが、無骨なその形は人の体に入るようにはできていない。

「彩芽。急いではだめよ。選ばせるのよ」

「だってー。早くフィストがしたい!」

文句を言いながらも、彩芽は別の道具を取り出した。金属の嘴だ。

「安里咲。どっちがいい? わたしのお勧めはこっちだけど」

拳を突き出す。

「それは、どうか、お願いですから、許してください」

なんとか言葉になった。体がヒクヒクと震えている。

「しょうがないなー。じゃ、こっちね」

彩芽は不満そうだが、金属の嘴にローションを垂らし、そこからこぼれて指にかかったものを、そのまま陰部になすりつけている。

「ふぅぅぅぅ」

すすり泣きになっていた。なにをされても感じてしまう。

「安里咲も好きよね。これから人前に出ようっていうのに、すべてをさらけ出そうってことだものね。きっとみんなに同情されるわ」

寮長と彩芽に太ももを持たれて、開かされる。

「うわっ。安里咲。大洪水よ」

「まったく、もうこんな色狂いになっちゃったのかね」

「ふぅぅぅぅ」

なにを言われても、ガマンするしかない。

足首の枷に鉄棒が取り付けられるが、肩幅よりかなり広く足を広げさせられる。

その間もローションをつけた彩芽の指が股間をほぐしている。

「ローションなんていらなかったみたい」

くちゅくちゅという音が聞こえている。

「楽しい買い物をしましょうね」

嘴を女性器に突き立てた。

「うっ。そんな……」

拳型のディルドよりはマシだと思ったが、これはこれで膣に妙な快楽を与えている。

「どこに使うと思ったの? 安里咲は痛いのが好きな変態露出狂。かわいそうだからみんなで女子寮をあげて治療してあげるの。末土教授と陽子夫人がいろいろな人を説得してくれて、特例として見守ってくれるわけだから……」

いろんな人がいろんなことを言う。

すべてがデタラメなのに。わたしがなにを言っても通用しないように、寄ってたかって正当化する仕組みを作り上げている。

それなのに、この体では否定できない。ドロドロになっているのはわたしなのだ。変態の露出狂、色情狂。なにを言われても反論ができない。

また小刻みに逝ってしまう。

「あうっ」

「どう? 全開にしてあげたけど」

おそるおそる見下ろすと、ただでさえきつく股間を締め付けている紐に押さえつけられて、あの金属の嘴の基部だけが突き出ていた。

指よりも長いぐらいの金属部分がすべて体の中にあるのだ。しかも、大きな穴として開かれてしまっている。

「こ、これでは歩けません」

ぐいっとリードを引っ張られる。寮長が「歩くんだよ」と言う。

敏感な部分をすべて痛めつけられながら、体を動かせば、それが強烈な快楽になってしまう。

「背中に説明を書いておいてあげるね」

悪魔のような彩芽が、マジックで背中になにかを書いている。

「『変態女子大生 安里咲 ただいま治療中』って書いたの」

治療……。

どこも悪くないのに。

理不尽すぎる……。

「行くよ」

「これがあることを忘れちゃだめよ」

彩芽は短い乗馬用の鞭を持っている。

「試してみようか?」

軽くその先端を脇腹に当てた。

「ぐはっ!」

竹刀は壁や床を叩くだけでわたしを震え上がらせることができる。乗馬鞭はそれより細く軽く見えるのだが、体に当てられると恐ろしいほど痛いことがわかった。

「大げさね。軽く当てただけよ」

それでも痛いのだ。

「もうちょっと強くやってみる」

彼女は鞭を振り上げた。

「ああ、なんで、こんなことを……」

体を固くする。彼女は笑いながら最初に振り下ろそうとしたところをやめて、乳房の横に食い込ませた。

「ぎひぃぃぃ。許して……」

皮膚が裂けるような痛みに体が痺れてしまう。

「いいわ。大好きよ、安里咲。もっと泣くのよ!」

首輪を引かれ、片足ずつ、出来損ないのロボットのようにぎこちなく、前に出る。

「ひぃぃぃ」

新たな苦痛。

股間に埋め込まれた器具が女性器を痛めつける。

体が裂けてしまいそうだった。苦痛と快楽によって……。

廊下に出ると、寮生たちの好奇の眼差しを受けながら、玄関に出た。靴はない。裸足で歩かされるのだ。ドアを開けている寮長。

明るい日差し。夕方が迫っているのに、五月の空は青く、温い風が吹いていた。

「歩けない……」

膝がガクガクする。しゃがみ込もうにも、腰は落ちるが足が開きすぎ、相撲を取るような姿勢になる。同時に紐がさらに股間に食い込みクリと二つの穴が悲鳴を上げている。

「ゆっくりでもいいから、ちゃんと歩いたほうがいいんだよ」と彩芽。

お尻に突き刺さった鞭を手にして動かす。

「ふぎぃ。お尻が裂けるぅ」

「ふざけないで。ちゃんと歩くのよ」

歩くしかないのだ。

寮を出て商店街へ。土曜日の夕方。学生ばかりではなく大勢の買い物客がいる。異様なわたしたちを見て、悲鳴を上げて逃げる人たちもいる。

携帯で写真を撮る男たち。ゲー研の連中に違いない。剛介もいるのだろうか。

警官がまたやって来たが、寮長となにか話をしてそのまま立ち去ってしまう。

誰も助けてはくれない。

「お肉屋さんに行くわよ」

商店街を練り歩き、揚げ物の総菜類がずらりと並んだ肉屋へ。

わたしの背後に何人も男たちがついてきている。

「すみません。あれがお話した安里咲。これからもよろしく」

「ふーん、かわいいのに、惜しいよね」

「そうなんです」

「それにしてもすごいな」

店の中から主人が出て来て、わたしの前に立つ。

「これ、いつもの」

主人は袋に入った肉を寮長に渡す。

「少しまけてくれたらいいのに」と寮長。

「触らせてくれたら、まけてやってもいいぞ」

「いいわ、それぐらい平気よ」

脂ぎった肉屋のオヤジが乳首のクリップを引っ張る。

「あー、痛い」

顔をそむけるわたしだが、背後から彩芽がピシャッと乗馬鞭を尻に入れた。

痛みに痺れているところを、強引に正面へ向かせた。

「いやっ」

両手で彼女を拒絶しようと思うのだが、手を使えばきっと拘束されるだろう。腕を縮めて、男が乳房を触るのに任せるしかない。

「ここはどうなってるのかな?」

男はしゃがみ、股間を見る。クリを引っ張って悲鳴を上げさせる。

「ひぎぃぃぃ。だめぇぇ、ちぎれちゃうの、痛いの。だめっ」

ヒクヒクと体を痙攣させる。

「かわいそうに。これは重症だなあ」

クスコで全開にされた穴を覗かれる。

ここが白昼の商店街だとは思えない。こんな無法なことが許されるはずはない。

「助けて、ください」

わたしは彼に言う。

「うん? 助けてって? まあ、助けてあげたいけど、こっちは医者じゃないしさ」

「警察を呼んで。この人たち、わたしを……」

「うんうん、わかってるよ。大変だよねえ。変態なんだってね。心の病気って難しいものだからね。商店街でも、あたたかく見守ってあげるって約束したんだ。このあたりは、年寄りと学生ばかりで、小さい子はいないから、まあいいんじゃないかってことになってるんだよ。早く治すんだね」

取り合ってくれません。

「安里咲。これを持って」

肉の袋を持たされた。そのために手を拘束していないのだ。

「次は薬局」

古めかしい薬局のガラスの引き戸を開けた。

「いまこの店のご主人が商店会の理事長なのよ」

よく似た中年の男が二人、店でわたしを待っていた。

夜

「安里咲です」と寮長が紹介する。

「若い娘が裸で足を開いて練り歩くとは……」

店主は渋い顔をする。陽子に連れられて挨拶をしたときにはニコニコしていたくせに。

「すみませんねえ。とんだ病人なので」

寮長がわたしの後頭部を鷲掴みにして下げさせる。それも冗談めいた力ではない。彩芽も肩を押して、膝をつかせる。

コンクリートの冷たい床。手をついてしまう。

男たちが出てきてわたしの横にしゃがむ。無遠慮に手で肌を触ってくる。乳房を揉みながらクリップを引っ張る。

「ふぎっ」

悲鳴を噛み殺す。

お尻を撫でる。突き刺さった鞭を上下に動かす。

「はぐぅぅ」

「おいおい、汚すなよ」

体が反応したのだ。クスコで全開にされているから、体液がしたたり落ちてしまう。

「見ろよ、おまえが汚したんだ。うちは薬局なんだぞ」

髪を掴んで、股間を見せられる。

思った以上に大量の液体。つーっと長く糸を引いていま、新たに垂れ下がっていく……。

「ふえぇぇぇん」

体がおかしくなっている。それが悲しい。

「まったく、とんでもない病気だよ」

激しい言葉でなじられた直後、彼らは「ハハハハ」と大笑いをする。

「この娘もいいじゃないか。まったくすれてないし。上品な顔立ちだね」

「いまのところはね。すぐにみっともないエロボケ顔になっちゃうかもね」

彩芽も笑う。

「ホント楽しみだな。応援する甲斐がありそうだ」

寮長が髪を引っ張り、顔を上げさせる。

「こちらが薬局の店主で、商店会の理事長の長崎さん。あら、もう会っているわよね。こちらは隣町でアダルトショップを経営されている岡山さん。ご兄弟なのよ」と紹介する。

「長い付き合いになるんだから、よろしくね」

うさんくさそうな男たちだ。エロボケ顔とはそういうことなのだろうか。

笑顔にいやらしさがあふれている。

「前の亜由美って子はどこに行ったの?」

「海外に留学しちゃった」と彩芽。「彼女はすごく頭もよかったから」

「そうかー。もっといろいろ楽しいことをしたかったんだけどね」

楽しいこと……。

わたしはどこへ行っても亜由美の代わりらしい。そして誰もが亜由美ほどはわたしのことを期待もせず、気にも止めていない。

虫ケラのような気分になる。

「この子の浣腸液をくださいな」

「用意してある。重いぞ」

立たされて、重い容器の入った袋を持たされた。

「明日のバザーだけど、もちろんこの娘が来るんだろう?」

「ええ、そうですけど」

「楽しみだね。バザーのあとは打ち上げとかやるのかな?」

「よろしければ、ぜひ」

寮長が微笑む。

「いいねえ。組合の会館を用意しておくよ」

「そんな立派な場所じゃなくても……」

「全然、立派じゃないよ。みんな喜ぶから」

意味深な言葉を受けて、買い物を終えたのだが、そこから寮までまた戻る。それがとてつもなく遠く感じられる。

これから毎日のように、これをやらされるのだろうか。

玄関で荷物を寮長と彩芽が持ち去る。わたしだけそのままの姿でしばらく放置された。

逃げることを考えた。

罠だろうか。足を拘束されているが、手は自由なのを忘れているのではないか。

安里咲1 第4部 (4/5)
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