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ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌 · 第五章 一夜の真実(第一幕)

ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌 第五章 一夜の真実(第一幕) (5/7)
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第五章 一夜の真実(第一幕)

1

『そんなに硬くならなくても。リラックスして。何ならもう少しビールでも』

『いえ……結構です』

DVD冒頭。しばらくは和室の中ほどに座って向き合う藪沼と咲美の何ということもない会話が続いた。

(今なら、まだ……観るのを、やめられる)

とりとめない会話が終わる前ならばと、停止ボタンを押して深呼吸するも鎮められずに結局また再生ボタンを押して続きを観る。この流れを幾度となく繰り返すうちに、映像の中の二人に動きがあった。

『これは私たち夫婦のこれからのために決断したことです。私自身、元々まったく望んでなかったことである、という点。重々ご理解願います』

咲美が言い放つ。とてもこの先どうこうなるとは思えない、毅然とした態度だった。

『もちろん、わかってるつもりだよ。僕たち夫婦だけでなく、スワッピングを経験するカップルは皆、似たような事情を抱えているからね』

応ずる藪沼は余裕綽々。どれほど己の性技に自信があるのか。あるいは咲美を軽んじているのではと思うと、観ているだけで腹立たしい。

『アサオカちゃんが悩みに悩んで決断したことも承知してる。だいたい君の仕事ぶり見てれば、わかるよ。真摯で一途な君が、考えなしに決断するはずもない』

『今回が最初で最後ですので。どうか……手短にお願いします』

理解者を装い摺り寄る藪沼に対して、咲美はつれない態度を貫いた。

『手短に、ね……』

だというのに、藪沼は怯まない。それどころか咲美の纏う浴衣に手をかけ、脱がそうとまでする。

『じ、自分で脱ぎますから!』

弾かれるように身を離す咲美を見る奴の目が、「手短にと言ったくせに」と嘲ってるように思え、画面向こうの奴をぶん殴りたい衝動に駆られる。

そんな、傍観者の心情を当たり前に無視して。

『アサオカちゃん』

『……はい?』

藪沼は、嫌悪を色濃く顔と声に表している咲美に、言い聞かす。

『君が手短に済ませたいのはわかる。ただし、こういうことはやはり感情が伴うんだ。男ってのは案外デリケートにできていてね。相手が嫌々やってるのが伝わると上手くいかないこともある。君は賢い女性だから、わかるよね?』

数秒の間が空いた。その間、咲美が誰との、いつのことを想起したのか。

『……そういう、ものだとは思います』

執拗に勃起不全を演じ、画面向こうの彼女と同じ落ちこみ顔を見てきた智には、嫌でも理解できてしまう。己の撒いた種がしっかりと妻の内に根づいていたと、こんな形で知ることになるなんて──。

──嫌だ。

──これをこそ、望んでいたのだろう?

また、二つの感情がせめぎ合う。

『だから今だけは、できるだけ素直になって心を開いて欲しい。それが君たち夫婦のためでもあるんだ……わかってくれるよね?』

この言い方が覿面愛妻に効くことも、すでに過去の出来事であるDVD映像に語りかけても無駄なことも、わかっている。それでも、発せずにいられない。

「やめろ、藪沼……。咲美も……知ってるはずだろ……?」

──奴は、お前とやることしか考えてない、下種だ。そのための方便に過ぎない!

──その方便を与えたのは、僕だ。僕こそ、奴以下のクズじゃないか。

願いと、自虐。二重に苛まれる夫の見つめる先で、覚悟を表情に宿した妻が頷いた。

『そこに立って、脱いでくれないか』

攻め所を逃さぬ野獣が、一気呵成に仕掛ける。

咲美は瞑目し、祈るように、しばらく無言で佇んでいた。

(どうか、そのままで)

夫の願い空しく、そろりと彼女は立ち上がる。意を決したその手が自ら浴衣にかかり、帯を解いた。そして、はらりと前がはだけた瞬間。否応のない股間の疼きに苛まれる。期待しているという現実を、もはや認めぬわけにはいかなかった。

息を呑む夫を挑発するように、身震いし、尻を揺らした妻の白い肩から、浴衣がずり落ちる。その下に纏っていたのは、上下共に無地の白下着。彼女が乗り気でないのを示す、何よりの物的証拠。

『ほおっ』

そんな事情など知る由もなく、咲美の正面に立った藪沼が感嘆の声を上げた。

驚き怯えた咲美が後ずさったために、彼女の腰から下はフレームアウトしてしまう。その間に屈んだ彼女がブラを外し、次いでショーツまでをも脱ぎ落とす。

『いいよ、いいっ。さっきの僕の言葉を理解してくれて、嬉しい限りだ』

躊躇いを振りきるように脱衣したのを、焦らしとでも受け取ったのか。藪沼が盛りのついた声で褒めそやす。

(違う! 咲美はお前を悦ばす意図で脱いだんじゃない、断じてない!)──覚悟を決めているから。一度決めたことはやり抜く人だから。

──理由はどうあれ、藪沼とヤるために脱いだことに変わりはないさ。

「くそっ……黙れ……!」

内なる己に当たり散らしつつ、巻き戻し、コマ送りする。

──咲美の表情をこの目で観て、確かめたいんだ。

──咲美の胸と腰に目を向けていたくせに。咲美の裸を藪沼が独り占めしてる、ってのを、自分の目にも焼きつけることで否定したかった。そうだろう?

いずれにしても、望んだものは得られなかった。ブラを外す際開いた腋から覗くのを期待した、横乳さえ観られず。二重三重に落胆した分、苛立ちも倍々に募る。

結局、画面越しの夫には、焦燥煽る衣擦れの音と、しなやかな背中だけが餌として与えられた。

『綺麗だ。綺麗だよ、アサオカちゃん! 思い描いた通りの、素晴らしい身体だよ』

ただ一人、咲美の裸体を隅から隅まで眺め尽くすことの許された男、藪沼が、よだれを啜りながら、吠え盛る。すでに前屈みの奴の姿勢から、昂奮ぶりが嫌でも伝わる。

咲美は、声に出しこそしないものの、我が身を抱いて怯えていた。歪んだ表情が、泣き出したがっているように見えた。

(なのに、僕は……)

──妻が汚されゆく様を、歯痒い思いで観ているしかない。

──早く、続きを観たくて歯痒いんだろう?

『で、電気を消し……』

混濁する感情の波に漂流する夫の意識を引き戻したのは、震え、それがゆえに艶めいて感じられる咲美の声音。

(あ……っ!)

引き寄せられるようにして見つめた夫の眼に、妻の裸身に正面から覆い被さる男の姿が飛びこんできた。と同時に心臓に、ぎゅっと掴まれたような痛みが奔る。

『やっ!』

『力を抜くんだ』

嫌悪をも露わに振りほどこうと暴れた咲美に、抱きついた藪沼が囁く。

『大丈夫、すぐに終わる』

紡がれた一言一句を呑みこむかのように、咲美の喉が鳴る。そうして、観念したように力の抜けた裸身に、いやらしい男の指が這い始める。

相変わらず画面には咲美の背中側、腰から上しか映っていない。視聴者は、ただただ奴と咲美の挙動から細部を察する、想像で補う他なかった。

『すばらしい、すばらしいよ』

藪沼の手が咲美の背中側に回っている。おそらく、尻を撫で回しているのだ。初めて言葉を交わした夜、水商売の女性にそうしていたような手つきで──。想像すると、あの夜の水商売女性の男に媚びる表情と腰つきまでもが思い出された。

『……や、ぁ……っ、ぁうっ……』

そこに煩悶する妻の声音が被さることで、まるで彼女が今まさに藪沼に媚びているような錯覚に陥ってしまう。

『柔らかい。吸いつくようだよ。それに、子どもを産んだとは思えん張り。最高だ』

批評しながら這う奴の手が、咲美の背を伝って前に回る。留まることなく、今度は肩口からゆっくりと滑降していった。

『……や、ぁっ……!』

大きく感応した咲美の様子と、藪沼の手つきから、どこに触れているのか、すぐに見当がつく。藪沼の細目が大きく見開かれ、荒い鼻息を咲美の横っ面に吹きつける。むずかった直後に、また咲美が吐息と身震いを連ねた。

『ほお……ここ、乳首が特に感じるんだね、アサオカちゃんは』

ちゃんと覚えておくからね、と続けて告げる男と、向き合えずにいる妻。背けられた彼女の顔が、羞恥に染まっている。小さく開いた唇が、パクつきながら吐息を──喘ぐようなリズムで、こぼしていた。

(藪沼に、乳を愛撫されて……っ)

すぐに弱点を暴かれ、攻められるがまま立ち尽くしている。逃げ出さぬ獲物をしゃぶり尽くす勢いで男の指が這い回り、その都度妻の声のトーンが一段、また一段と昂ぶってゆく。

──ただの生理反応だ。成熟した女であるのだから、たとえ相手を忌み嫌おうとも、それは仕方のないことなのだ。

──すなわち、誰相手にも感じ入れるスケベな肉体を持ってる、ってわけだ。夫である僕でなくても、咲美は……。

妻を信じたい、擁護したい自分がいる。一方で、彼女の淫乱さを夢想してやまぬ自分も、確かに存在する。矛盾を孕む二者が、共有する心と身体の主導権を握るべく、熾烈な綱引きを繰り広げているのだ。

『安心しなさい。力抜いて』

咲美の耳朶に囁きかける奴の口元は、平素以上に締まりがなく、ひと際醜悪に映った。だが、だらしのない顔とは対照的に、奴の手管は巧みだった。

『んっ! や、ぁ……待っ、は……んぅ……うぅ……」

『ほら……少しずつ、少しずつ……膨らんで、硬くなってきた……』

無遠慮で、無神経な日常の様からは想像もつかない、節くれだった太い指に似つかわしくもない、不気味なほど繊細な動き。

咲美の反発を警戒して一挙に攻めこまず、かといって性感を煽る手を止めるでもない。絶妙の加減を状況に応じて使いわけるその手腕で、性的に初心というわけでは決してない咲美を見る間に追いこんでゆく。

奴の肩や腕の挙動に合わせて咲美が身じろぎ、その都度、反り気味の背に浮いた汗が滴った。

男の言葉を信じるなら、すでに妻の乳首は勃起しているのだ。なんとか声を出すことだけは堪えているけれど、その内実は性的昂奮のるつぼにある。

──嘘だ、信じるものか。早く、そのいやらしい手をどけろっ!

──くそっ、見せろ! 身体をずらして、こっちに見せろよ! この期に及んで、想像するだけじゃ満足できないんだよっ!

別個の理由に由来する苛立ちが二つ。競るように全身を巡った。先に腰の芯へと到達したのは──後者。

『……ン……ッ……』

咲美がとうとう、うっとりと惚けるような溜息を漏らしたのは、直後のことだった。背けられたままの妻の顔は、火照りに染まっている。

(あれだけ嫌ってた男に弄られてるのに……まだ、たった数分、なのに……そんなに、奴の手と指が好い……のか!?

そうなのか咲美っ!)

恋人として、夫として、積み重ねてきた時間を、瞬時に上回られた気がして、悔しさと嫉妬が煮沸する。問うたところで返事が得られようはずがない、それがまた、余計に疎外感を孕ませた。

『よしよし、いいよ、身体預けて』

なのに、身のままならなさを嘆きながら妻が藪沼に従ったのを視認した瞬間。背に奔る悪寒、胸の呻きを共に凌駕する、雄々しき脈動が傍観者の股間に迸る。

眩暈を伴うそれは紛れもなく、禁忌の妄執に漏れなく付随する、忌まわしくも狂おしい肉衝動。妻が他者に汚される、そんな歪な事態でしか得られぬ、卑しき欲熱。

──最低だ。

──ああ、最低だとも。

初めて合致した、内なる二人がほくそ笑み合った。

瞬きひとつせず食い入る夫の瞳に、なおも続くねちっこい愛撫の様子が映り入る。

藪沼の右手が、触れるか触れないかのソフトタッチで乳輪をなぞり、乳頭を優しく撫で、悪戯するように小さく乳首をつまむ。いずれも焦らす思惑たっぷりの愛撫だ。

声を堪えるので手一杯の咲美は、大した抵抗もなせず、男の罠に嵌まってゆく。その有様は、獰猛な肉食動物の前で震えることしかできない兎かなにかを思わせる。

子細は僕の妄想──そう思えども、映像の中の咲美の煩悶ぶりが、当たらずとも遠からずであると、現実を突きつけてくる。

藪沼が大きく乳房全体を揉み上げたあと、再び人差し指で素早く乳頭を弾いた。

『くふ、ぅぅんんっ』

反射的に紡がれた甲高く、甘い轟き。それが、妄想と現実の乖離が限りなく少ないことを裏づけた。堪らず藪沼の肩を抱いた咲美の唇が、ハッ、ハッと乱れた息を吐きつける。目尻に涙の浮いた瞳が半開きの状態で呆然と画面の方に向いていた。

──僕に助けを求めているのか

!?

君を裏切り、送り出した、僕に……。

──感じ入って、目が泳いでるんだよ。奴の虜になり始めてる証拠だ。

期待と自虐が入り混じり、罪深き夫の股間が天を衝く。

人の妻を易々蕩けさせる藪沼への嫉妬心が、渦を巻く。

負けたくない。だからこそ、見届けてやる。冷静であればあり得ない想いに憑かれて、再度目を凝らす。奴の右手はまだ咲美の胸元で蠢き続けていた。

(もう片方の手は? どこだ……)

ニィ、と口を歪めた藪沼が、抱いた女体ごと数歩後退する。まるで視聴者の意図を察したかのようなその行動により、ついに咲美の下肢が画面上に露わとなった。

「なっ……!」

真っ先に目に留まったのは、もじもじと揺らぐ両腿。次いでその上で震える桃尻に目が向かう。その、さなか。

尻の下からにゅっと突き出てきた、節くれだった太い指に目が留まった。これ見よがしに指を突き出して、咲美の内腿を掻き混ぜるように撫ぜ。

『はぅっ、ぁ、やぁっ、だ、ぁぁっ』

咲美の口からとろり滴る艶声を引き出して、股向こうに消えた、藪沼の左拳。

(いったいいつから……くそっ! 僕が、咲美の胸ばかり気にしてる間に、奴は)すでに咲美の下肢をも弄んでいたのだ。そればかりではない。

驚愕する夫を尻目に、大口を開けた奴の唇が、咲美の右乳房に迫る。

「やめっ」

届くはずもない制止の言葉を、言い切ることすら許されなかった。

『んぶぢゅうううっ』

食らいつくや、舌を蠢かせて乳首を舐め転がし始める藪沼。陰になっていて視認ならずとも、音の響きや男女の身の動きから容易に想像がつく。藪沼は右手で咲美の左乳房を捏ねながら、卑しい吸引音を響かせていた。

『嫌っ、あっ! やめ、やめて、えぇっ』

吸いつかれた瞬間から咲美の表情は歪んでいる。火照りを吐くばかりだった口腔から、拒絶の言葉がこぼれてもいた。

──それでも。

『んぶぷ……ほぉら、こっちも、っ。ぁむちゅッッ』

攻め場所を左乳に変えた藪沼の舌と、おそらく歯にも乳首を嬲られると、あえなく仮面が剥げ落ちた。

『……ンッ、ふ……っ』

堪えきれぬ甘美が、ぎゅっと結ばれた彼女の口腔の底より噴き漏れる。

『乳首、両方ともすっかり硬いよ、アサオカちゃん』

『……ンン、はっ、っン、ン、ッ、ンン、ッッ!』

右から左、そしてまた右へ、藪沼の舌が、歯が、唾液が、咲美の乳房に摺りこまれていくにつれ。テラテラと濡れ光る乳首が、堂々とその勃起を誇示して──けれどそれは夫の目に届かず、ただ一人藪沼の目を愉しませている。

結ばれた妻の唇は、震えっ放し。その内に閉じこめられ、行き場をなくした末に、くぐもった吐息が漏れ落ちる。聞きたくないと思っても、その切なさと甘美の入り混じる響きに、耳を澄まさずにいられない。もどかしげにうねる妻の尻を、叶うなら鷲掴みし、藪沼以上に感じ入らせてやりたかった。

『ぷはっ。それじゃ、こっちも……ねっ』

解放された咲美の右乳首と、藪沼の唇との間で唾液の糸が引く。糸はじきに切れてしまったが、藪沼がわざわざ画面を向いて喋ったがために、奴の唇に残る残滓が嫌でも視認できてしまう。

こっちも、と告げた際、奴の左手が咲美の股下でもぞついていたのも、当然見逃してはいない。その意図を察して、喉奥がひりつく。苦しげに張った股間の根元から、止め処なく湧き続ける嫉妬の熱が、疎ましくも、愛おしい。

「咲美……っ」

──お願いだから、耐えてくれ。

──どうか、もっと、痴態を曝して。

共に愛情を源とする二つの願いが、喉元でぶつかり、結果、嗚咽だけが漏れる。

注がれた側である妻は、股下で蠢く藪沼の手指に喘がされるがまま、頭の位置を下げた。おそらく、愛撫に耐えかねて膝を曲げたのだ。

『やっ!』

咲美の短い悲鳴を受け、改めて画面に食いつく夫の眼に、藪沼のニタニタ笑いが映りこむ。奴はまるで職人のような澱みなさで位置取りを済ませると、屈んだ目線の先にちょうどあった咲美の股座へと、躊躇なく抱きついた。

それと同時に、奴が何らかの方法で操作したのか、画面が突如ズームアップする。

「……ッッ、な……! あ……」

藪沼の指で左右に割り開かれた双臀と、その谷間で息づく薄褐色の窄まり。咲美の秘すべき恥部が、画面一杯に大写しとなった。

『はむっ、んぶぷっ、れぢゅっ、ぢゅちぅぅぅっ』

間を置かずに、藪沼のものであろう吸着、吸引音が響き渡る。

『ひっ! ぁン……! ンン……ふッ、うう……っ! ンン!』

次いで、必死に堪える、なれど艶をまったく隠し通せてない咲美のくぐもった喘ぎが、悶え揺らぐ尻の動きと共に飛びこんできた。

(咲美が、感じてる。藪沼の舌と唇に、喘がされてる……)震える双臀の谷間でヒクヒクと、物欲しげな収縮を重ねる彼女の尻穴が、何よりも雄弁に物語っている。

十年近いつき合いの中でも初めてまじまじと凝視した、妻の排泄穴。その蠱惑的な蠢きに、目は釘づけとなり、早鐘のように鳴る心臓に煽られるように、スウェットの奥の男根が張り詰めてゆく。

『出てきた、出てきたよアサオカちゃんっ』

じゅるじゅると響く藪沼の吸引音。続けて嬉しげな奴の声が響き。

『はっ、ぅ……あ、あぁっんっ、や、ぁぁっ』

喘ぎの合間に拒絶の意思を知らせる咲美の、切ない声音が届く。

「咲、美っ……ごめんっ……僕は、ふ、っ、うう……ふううっ、ふ、ぅぅぅっ」

彼女の声が切なくあればあるほど、その煩悶が伝わるほどに、夫の胸内で卑しき妄想が成育する。カメラアングルのせいで未だ正面から妻の裸体を視認できないという状況のもたらす焦れと悔しさが、この上なき妄想の糧となった。それもおそらくは、藪沼の目論見の内。屈辱に思えども、一度膨らみ出した妄想を止めるすべはない。

(咲美を、愛してる。だから、だからこそ僕は……)──この妄執からは、逃れられない。

──逃れたくない。

認めたが最後。歯止めの利かなくなった卑しき塊が、瞬く間に肥大する。

咲美が抵抗らしい抵抗を示さないのは、早く済ませたいと願っているからだ。

──声を堪えるのに手一杯なんだ。この目で見たんだ。それは紛れもない事実。

──奴のしゃぶり方が上手いのさ。だから守勢に回らざるを得ない、音の響きからも想像がつくだろう?

正反対の期待が同時に胸を衝く。胸からへそを伝って、下腹へ──内なる芯に、より強く響いたのは、またも後者。

(咲美は、クンニされるのを嫌ってた。恥ずかしいから、汚いから、って、だから僕は、気を遣って、それだけは避けるように……なのに、どうしてだよ咲美! どうしてそんな奴に)長いつき合いの夫がまともに舐めた事のない秘唇を、赤の他人である藪沼が堪能している。状況とテクニックを駆使することで、奴は自ら勝ち取ったのだ。

敗北感に打ちのめされながらも、観ることをやめられない。やめようという考えが、思い浮かびすらしなくなっていた。

『やっ、やだ。あっ、んんっ、もうっ、もうやめてぇぇっ』

喘ぐ咲美の腰振りが、なりふり構わぬ雑な動きに変化していく。広げられっ放しの双臀に、奴の汗と、火照った咲美の汗とが染み、混じる。谷間で忙しなく、窄まりの物欲しげな収縮が続いていた。

『感じやすいねぇ。でもまだだ。まだ我慢だよっ』

咲美の切羽詰まった様子を見て取った藪沼が一転。勢いよく貪っていた響きを控え、リズミカルな、ゆっくりとした吸引に転換する。

『やっ、そこは嫌っ、お願いです、いや、ぁぁっ

!?

んっ、んんーっ』

ビクリと身を震わせて咲美の尻穴が、ぎゅっとひと際窄まった。揺れていた腰が、やはりビクリと跳ねたきり、何かに集中するように揺れを止める。代わりに表れた小刻みな身の震えと、甘露な声の響きとが同調しだす。

きっと、クリトリスを舐められているのだ。

(藪沼の唾でとっくにヌルヌルの股唇をヒクつかせて? すでにビンビンにしこってるクリを、食まれ、噛まれ、愛でられるがままに、喘いでる……そう、なのか!?)視認できぬがゆえに、妄想は際限なく膨れ続ける。咲美の尻の向こうに垣間見える藪沼の頭部の動きと、音の響き具合から、奴の行っている愛撫の全容をも想像する。

まるで蛇のそれがごとき器用さで、円を描き、蜜壺のふちをなぞったり。突っついたり。かと思えば不意に、ずぞぞ、と強く吸い上げる音を響かせる。

先の手指同様、緩急を自在に使いわける手管に、クンニに免疫のない咲美が長く持ちこたえられようはずもなく。

『あ、あぁっんっ! ひぁっああああ』

ついに鼻から抜けた、明確な嬌声が噴き漏れた。

『ん? ここ、だね? いいよ、一杯してあげるっ』

その発言と、続く吸引音、間を置かず再度放たれる咲美の嬌声。一連の流れから、咲美の弱点が重点的に攻め抜かれているのを知る。

愛妻は、クリトリスを捏ねられると、今のような声を決まって発するのだ。

(僕がろくに舐めたことのないクリを、指で愛でるくらいしかできなかったそれを)強弱交互に響く吸引音を聞かされるたびに、猛烈に嫉妬する。

それは藪沼が、咲美の小粒なクリトリスが引き伸ばされるほどの強い吸引と、やんわりとした接吻を交代で与えている証拠でもあった。

『はっ、あぁぁ、んっ、ふぁ、あはぁぁっ』

咲美の手が藪沼の頭を押さえている。引き剥がそうとするでも、腰を引いて逃れようとするでもなく、ただ押さえていた。

腰を反らせて、より強い吸着をせがんでいるようにすら見える。

──耐え忍ぼうと必死なんだ。それ以外の意味なんてない!

──本能で、刺激を求めているんだよ。

(僕が、抱いてやらずにいたから……そう、なのか咲美……)一縷の希望にすがった夫の観る先で、藪沼の頭が持ち上がりだす。その際咲美が押さえつける手に力をこめたのは。

──これ以上変なことをされたくないからに決まってる。

──いや、早くイかせてほしくてだよ。

夫が惑い、呻き、嘆くうちに、画面は再び引きの構図となり。抵抗を制した藪沼の頭が再度咲美の右乳房にたどり着くや食らいつく。その全容が余さず捉えられた。

『ふぁっ、や、ぁぁんんっ』

呻きとも喘ぎとも受け取れる声音の合間に、ピチャピチャという水音が、二重に連なって響く。一か所は、当然藪沼が貪る右乳房からだ。もう一つは──。

(……ああ)

目で追い、確かめて、唾を飲む。

もう一つの音の出所は、くねる愛妻の尻の向こう側。蠢く藪沼の右手の先が、接着しているであろう部位。先ほどまで奴の舌に嬲られてもいた、秘唇の奥から、攪拌音は響いている。

(藪沼の指が、咲美の中に……)

ペニスさながらに突き入り、内部に溜まった蜜を掻き混ぜ、掻き出し、泡立ったその蜜にまみれた状態でまた、我が物顔で押し入ってゆく。音の様子から想起される事態に、吐き気と昂奮が収まらない。

『やっ、だ、ぁひっ、ぃっや、だめ……だめぇぇぇっ』

甲高い声の響きに誘引されて画面に目を凝らすと、咲美の尻のくねりが再び大きなものに変わっている。先のものと違うのは、円を描いていること。膣内に受け入れた藪沼の手指の動きに応ずるように、咲美の声のリズムと尻の揺れがリンクしている。

咲美の背にそよぐ髪も揺れていた。イヤイヤと首を振っていたのかもしれない。

『いいんだ、いいんだよっ』

なだめすかすような藪沼の囁き。

『やだやっ、あああっ!』

感極まった愛妻の、ひと際甲高い嬌声が迸る。

『ほら、すぐだ。いっぱい出してごらんっ』

一転急かす口振りとなった藪沼の手指の出入りが激しくなる。忙しい抽挿音に乗って、揺らぐ咲美の尻の下、内股でもじつく腿の間に、粘液が幾度となく滴った。

『やっ、あっ、あひぃっ、ひやっ、あっああっあっあ……っ!』

『ほら、すごいよ、アサオカちゃん、いいよっ、可愛いよっ!』

輪唱のごとく、リズムに乗った二人の声が追いつ、追われつ。グチュグチュと響く粘着音も併せての三重奏が轟き渡る。

『だっ! だめっ、出ちゃうぅぅぅっ』

それに終いをつけたのも、泣き声に限りなく近い妻の叫びだった。

『ほぉらっ、イっちゃおうっ!』

藪沼の手指がひと際深く咲美の蜜壺を突き、喋り終えた唇が右乳首を強く吸った。いずれも、むしゃぶりついてすぐに容赦のない責めに徹する。

藪沼の左手に揉まれながら、汗と熱と汁にまみれた臀部が、縦に大きく弾む。その一瞬後には硬直し、声を迸らせた。

『あっ、ああああああああっ』

長く、細く、震えるような、咲美のオルガスムスの声だった。

同時に透明の飛沫が、股下に飛び散ってゆくのも視認する。止め処もなく湧き出る泉のごとく、キラキラ吹き上げるそれを網膜に焼きつけながら。罪深き夫は、咲美の嬌声がやむまで、画面を注視し続けた。

そうすることが、今できる唯一の愛情の示し方だと信じて。

2

「はっ、は、ぁっ……は、ぁぁっ」

気づけば、プレイヤーの一時停止ボタンを押していた。

いつの間にか右手が自らの股間に這っていたのに気づき、慄然とする。

右手の触れているスウェットの股座には、黒々とした染みが形成されていた。愛しき妻が他人の手で絶頂を極める姿を傍観しながら、トランクスはおろかスウェットにまで浮き出すほどの大量の我慢汁を漏らしたのだ。

「……僕は」

とことん最低だ。羞恥と失望に呑まれ、幾度目とも知れぬ自虐に浸る。

一時停止した画面上では、今の自分と同じように羞恥と情けなさに溺れた愛妻が、藪沼の頭に寄りかかるように前のめりとなり、絶頂直後の尻を抱き締められていた。

(あんなにもあっけなく、潮まで噴いて)

愛しき妻が、藪沼によって絶頂へと導かれた。その一連の流れ、まるでアダルトビデオのワンシーンのごときそれが、今、同じ屋根の下で寝息をたてている、性に関して奥手な、我が妻咲美の痴態であるという事実。受け入れるにはあまりに重い、しかし受け入れざるを得ない現実が、今も目の前で再生の時を待っている。

熱病にかかったように、虚ろな目つきと手つきで、パソコンのカーソルが目的地に向かうのを追った。一方で、深呼吸をし、少しでも体調を整えようと努力する。

──でないと、この先には耐えられそうもない。

──できるだけ長く、甘露を味わいたいものな。

半分意識が飛んだような状況で、再生ボタンを押す。

心臓の早鐘は、一向に治まる気配がない。頭に上った血と、腰の芯に漲る血潮もだ。鎮めるすべは、きっとこの先の映像にしかないのだ。覚悟を決める他、なかった。

藪沼が編集作業に手間取ったと言っていたのを思い出す。その言葉通り、再生された映像はすぐに場面を切り替え──。

3

画面上に、共に全裸の男女の上半身が大写しとなる。敷布団の上に仰向けで寝かされた咲美の上に、向き合う形で藪沼が覆い被さっていた。

カメラが目一杯ズームアップしていて、二人共胸から下は窺えない。それが余計に、夫の焦燥と妄想に火をつけた。

代わりに、上半身の様子は双方とも細部まで見定められた。咲美が、汗の浮いた胸を上下させている。玉の粒となった汗が、未だ荒い彼女の息遣いに乗じて、双乳の谷間や、腹部の方へと流れ落ちていった。

ようやく、一部とはいえ正視できた愛妻の裸身に、目を見張る。ピンと張ったままの勃起乳首。そこを濡れ光らせている藪沼の唾液。次々見つかる愛撫の痕跡に、煽られた嫉妬の炎が燃え盛る。夫以外の男に昂らされた彼女のさまが、悔しいが今まででもっとも艶めかしく、美しく彩られているように思えてならない。

柔らかな咲美の茶髪を馴れ馴れしくも掻き上げて、震える彼女の耳元へと口を寄せた藪沼が何事かを囁く。囁きの内容は、ボリュームを上げても聞き取れず。代わりに目を凝らすと、藪沼の身体がかすかに揺れているのがわかった。

「……ッッ!」

まさか。もう、挿入されてしまっているのか。最悪の想像をした瞬間から、胸の苦しさが一段と増した。息苦しさを堪えて耳を澄ます。かすかに淫靡な水音が聞こえた。最悪の想像が、ひと際の現実味を帯びてゆく。

『聞こえるね?』

藪沼が咲美に囁いた台詞が、自分にも向けられているようで、強張りきっている心臓が痛々しく弾んだ。

『もう、素直に楽しむ気になろう、アサオカちゃん』

腰を振りながら囁く奴の言葉に、咲美は応答しない。ぎゅっと口を結び、目を瞑ったその様子は、ただただ時が早く過ぎ去るのを願っているようにも思われた。

『理性は驕り、本能こそ自然なり……。ハハハ、今のは僕の考えた格言。自然な本能を拒否することこそ、むしろ汚らわしい。そうは、思わないかね』

そのような御託を受け入れる咲美ではない。

だというのに、胸の奥から押し寄せるこの不安は何なのか。

ただただ傍観することしかできない夫の心の内を見透かしたように、カメラがまた引きの構図に変わった。

『ほら』

そうして、誇らしげな藪沼の口振りと共に、絡む男女の全容が露わとなる。

咲美の秘唇──先刻、藪沼の指と唾液でたっぷりと愛撫された女性器が、ひっきりなしにヒクついていた。まるで物欲しげに喘いでいるかのような、その股唇が時折ピンクの内粘膜を覗かせる。

それだけでも悔恨と嫉妬と、性的昂奮が強烈に煽られるというのに。

ガチガチに張り詰めた藪沼の剥き身の陰茎が、我が物顔で咲美の股肉に摺りついていた。その喜々としたヒクつきぶりと、優悦にまみれた奴の表情とが、瞼裏に張りついて剥がれない。

視聴しながら我が手で擦るのが精々の己の男根との状況の差に、屈辱を覚えずにいられない。蓄積された屈辱が歪な恍惚の種となると知っていながら、すでに過去の出来事である映像の中の男に恨みをぶつけずにいられなかった。

藪沼の肉棒は、一見しただけでわかる際立った大きさと、異様な圧力を有している。黒く血管を浮き立たせた肉竿は誇らしげに天井を向き、巨大キノコを思わせる傘部分の出っ張り、段差も凶悪だ。

その逸物で、奴は実にゆっくりと、卑猥な腰の動きも用いて、咲美の秘裂を擦り続けている。幾度目かの往復の過程で、藪沼のヒクつく亀頭から垂れた透明な滴が、糸を切らすことなく咲美の下腹部に落ち、摺りこまれていった。

(あれが。あんなものが、咲美の中に入るというのか)卑しさと逞しさを具現化したような逸物。夫の物よりも一回り以上大きく、長いそれの味を、同じ屋根の下で今も眠っている妻が身に刻み、覚えこまされているやもしれない。危機感に怯え、スウェットの奥のペニスが牽制めいた脈を轟かす。己の右掌に伝わるのみの空しい遠吠えに付随する切なくも甘美な衝動。それを押さえこもうと右掌を押しつければ、圧によって押し出された悦がカウパーという形でトランクスに新たな染みを刻んだ。

『約束通りにゴムはつけたから。先っちょだけ、入れるよ』

羞恥と恍惚に再度呑まれゆく傍観者を煽る言葉が、藪沼の口より発せられる。咲美の忌避を和らげるため、クリアピンクのコンドームに押しこまれた肉厚の筒が、雄々しくも狂おしい脈動を見せつけた。

『ただし、その後は……』

焦らす意図も露わに、ゆるゆると。

「何、言うつもりだ……早くっ、言え。言えよっ……!」

意図にまんまと嵌まった夫と、怯えの渦中で黙りこくるのがやっとの妻に言い聞かすべく、一言一句はっきりとした発音で。

『アサオカちゃんが合図してくれるまでは、入れない』

ニタニタと笑みを絶やすこともなく、余裕たっぷりに言い放つ。

『そうだな。僕の指、軽く握ってくれたら、それが合図ってことで』

ぺらぺらと語り、一人勝手に決めていく奴に耐えかねたのだろう。ようやく咲美が薄目を開けて、抗議する。

『そんなの……いいですっ。いいからさっさと済ませて……』

早口に、恐怖と苛立ちが覗いていた。

(咲美は必死になって……耐えようとしてるんだ)──さっき、あれほど喘いでいたのを忘れたか?

(うるさい! あれは肉体が生理的に反応しただけ。咲美が望んだわけじゃない)──どちらにしろ、あれだけ前戯でほぐされた女体が、持ちこたえられるわけがない。

(だからなんだ。それは、話を受け入れた時点で覚悟の上だったはずだ!)そう、彼女の心さえ穢されなければ。たとえこの先の映像で肉体が穢されるのだとしても。

(それは……僕が望んだことでもあって、だから問題はない……はずなんだっ)だというのに、延々と炙られ続けた不安と恐怖で、胸がはち切れそうだ。

スウェットにテントを張った男根が意地汚い鼓動を響かせ、むず痒い衝撃が腰の奥に届く。それがまた、さらなる刺激に焦がれる引き金となるのだ。

『そんなんじゃ、僕はしたくないんだ。セックスってそんなもんじゃない』

宣言通り、藪沼は決して自ずから突き入ろうとせず、ひたすらに咲美の割れ目を擦る動きに専従していた。喜悦の鼓動と先走りのつゆのみを置き土産に奴の腰が引かれ、肉の摩擦が遠のく際。摩擦を浴びる回数が増えるほど。

咲美の呼吸は乱れ、下腹の波打ちも忙しくなっていく。何事か言おうと口を開いては、慌てて閉じるのを繰り返す。喘ぎが飛び出かけて噤んだようにも見えた、その唇の端に、彼女自身の唾液が一滴。漏れ落ちそうになっているのが見て取れた。

押し殺しきれぬ悦が、今にも溢れ出さんとしている予兆なのでは、と。悪い方に妄想の舵を切ったことで、悶々とした熱が止め処なく男根へと注ぐ流れができあがる。

『今、この瞬間はすべてを忘れてくれなきゃ。でないと、僕は続けられないな』

(当初、酒に酔わせて強引に、なんてほざいた口が何を言う。咲美、そんなの無視しろ。合図なんてしなくていい。……心だけは、強く保っていてくれ……!)これは過去の出来事なのだ。今さら何を言っても遅い。わかってはいても、否、わかっているからこそ、画面に向かって心の叫びを上げずにいられなかった。

『旦那のこと忘れて思いっきり楽しむ気になったら、合図して』

『そんっ……なっ』

咲美が言葉を詰まらせる。彼女の中に強く「夫を裏切りたくない」感情があるのがわかり、束の間の優悦が夫の胸に染んだ。

『嫌なら合図しなければいいだけの話だよ。じっとしてればいい』

わざと無碍な言い方をする藪沼。ニタつき通しの唇に、いやらしい本性が丸出しだ。

(咲美……っ。奴は、ただ焦らして楽しんでるだけだ。わかってるよな!?)引っかかってくれるな。こんな手に。願いをこめ見つめた画面が、また切り替わる。

別のカメラからの映像なのだろう。後方からの構図で、咲美の濡れた小陰唇に伸し掛かる藪沼のエラ張り亀頭が、ひと際禍々しく大写しとなった。

『とりあえず、先だけ……ねっ』

二度、三度と往復してコンドームに咲美のツユを馴染ませた後、奴が不意に前言と矛盾することを言う。宣言は、夫の制止も、咲美の応答も待つことなく即座に実行される。

『んぁッッ……やぁぁっ』

咲美の甲高く短い叫びが、耳をつんざく。

「藪……沼ぁぁっ」

傍観する他ない夫の喉から、憤怒が形を成して迸る。

それらを糧としたかのように、喜々と藪沼の肉砲身が脈打った。ゴムに覆われた突端が浅く咲美の内へ。濡れた割れ目をいともたやすく突き破り、ほんの一センチほどだが潜っていた。

ついに、藪沼の肉体の一部が、咲美に挿入された。二人が繋がったのだ。

「……ッッ! う、ぐ……ぅぅっ!」

吐き気と怖気、嫉妬。それらに炙られ増長した性的衝動と歪な欲求。すべてが一斉に、罪深き夫の胸と腰奥に侵攻した。当然のごとく処理しきれず、混濁した果てに、喉からえずき、腰から甘苦しい疼きが、同時に噴き漏れる。

一時停止して幾度画面を見返しても、藪沼の醜悪な物が、咲美の入り口に、その先端を挿れてしまっている事実は覆らない。ゴム越しだ、生で繋がったわけじゃないと言い聞かせるも、繋がっている事実をより認識するだけの結果に終わる。目を凝らすほどに現実を直視させられ、悪寒と恍惚が競るように全身に巡った。

藪沼が、浅く入れた位置はそのままに、腰を回して膣口の内粘膜を摺り始める。

『やっ……ぁっ、嫌っ、はっ、あ、っんん、ッッ!』

焦らす思惑が丸出しの奴の腰使いを、十五回は耐え忍んだだろうか。拒絶を貫かんとしていた咲美の言葉尻が、ついに甘く喘ぐ。肉棒を抱き締めるがごとく震え締まる膣口より溢れる愛液の量は、回を重ねるごとに増し続けていた。ヒクつきも増し、早く奥まで来てとせがんでいるように見える。

『ほら、ほら。溢れてるじゃん。我慢なんて、しないほうがいいってぇ』

惚け囁く藪沼と、火照りにまみれながらもなお健気に堪えるそぶりを、目や口元に表している咲美。

藪沼が顔を寄せることで、二人の唇が急接近する。確実に息がかかり合う至近距離で、まるで目で会話をしているかのように、二人はしばし静寂を共有した。

その間も、コンドームを介した男女の性器が浅い位置で擦れ合う。掻き出される咲美の蜜音が次第に大きく、慌ただしく変化する。

『はっ、う、んんっ……や、ぁぁっ』

やだ、と咲美の唇は告げていた。懸命に耐え忍び、今なお拒絶の意思を示している。彼女の心は未だ穢されていないのだ。夫の胸に一抹の安堵、次いで正反対の感情──物足らなさが芽吹き、暴れだす。

(やめろ……僕は、もう……これ以上は……)

望まない。望んでる。真逆の答えが堂々巡りし続ける。結局何も言えずに、すがるように画面を注視した。藪沼がいつ咲美に口づけるのではと気が気でなかったのもあり、視線は一直線に二人の唇に向く。

藪沼が不意に目を見開いた。一瞬後にだらしなく目尻を下げる。さらにその数秒後。

『よっしゃっ! ありがとうっ、ありがとうっ、アサオカちゃんっ!!』

(咲……美?)

何があった。二人の唇を視界の中心に据えていた夫には理解できなかった。

『やぁあっ

!!

』

惑い狼狽えていた心根が、直後に響いた愛妻の叫びを受け、否応なしに察する。

『ほらっ、入った! 入ってるよアサオカちゃん! ついに一つになったんだっ』

続く奴の言葉が追認した。咲美が合図をしたのか、しなかったのか。いずれにしても、藪沼の肉棒は彼女の膣内の奥深くにまで到達してしまった。ゴム越しとはいえ、夫が長きに渡って占有してきた聖域が、ついに他者の足跡を許したのだ。

『あああ、あったけ~

!!

この日をどれだけ夢見たことかっ……。アサオカちゃんがパートで入ってきた時から、ずっと夢見てたんだよっ』

咲美の下腹部に乗った藪沼の肥え太った腹肉が、悦び波打っていた。

『や、ぁああっ、ひっ、やっ、ぁっ』

合わせて咲美の下腹部も揺れ、同じリズムで声音も跳ねる。

『ずっとっ……可愛いなって思ってたんだよっ』

ゆっくりと、藪沼の腰が躍りだす。

『い、やっ、あっ、ひぃ、ンンッ!』

『でも絶対無理ってあきらめてたんだ……オヤジギャグ言っても、ちっともっ、笑ってっ、くれなかったし、ねッッ』

横回転の円運動で、すでに汁だくの蜜壺が捏ねほぐされていった。

咲美は咄嗟に手足を奴の背と腿に巻きつける。なんとかピストンの幅を殺そうとしての、おそらくは無意識の行動だったのだろう。しかし、それは逆効果だった。

『や、やめてくだっ、あッんッッ!』

『真面目そうで』

クリアピンクの避妊具越しに雁高を誇示する亀頭が、拒もうと締まった膣肉を割り広げ、強かに抉りながら攻め上がる。密着を強めたのが仇となり、あっさりと最奥にまで到達を許す。亀頭が悦び放った脈動は幹に伝い、咲美の膣洞内にも執拗に残響した。男の昂奮ぶりは、きゅっと縮まり上がった玉袋からも察せられる。

『やぁっあああっ、はひ……ぃぃっ』

抵抗の余地を自ら失くした咲美が、引き攣った嬌声を吐き出し、乞いすがるような眼を藪沼に向けた。

『旦那をほんとに愛してそうでっ』

藪沼の口撃は、止まらない。一転速度を上げたピストンで、蜜壺を掘っては掻き出し、また掘って。

『やっ、やめっ、あの人のっ、ことっ、はっ、言わなっ、あッッンッ!』

リズミカルな腰使いにリードされ、咲美の声音が躍る。

『それがっ、どうだ、出会って半年っ、狙い続けて半年っ、こうしてめでたくっ』

『ひっ、あっ、あっ、あぁんっ、や、やめっぇぇっ』

やめて、の一言が紡げぬほどに喘がされ、代わりに首をイヤイヤと振って見せた、咲美。儚い抵抗を諦めていないのが伝わるたびに、夫の胸を切なさが突き抜ける。

『セックスっ、してるよぉぉぉっ』

ひと際大声で、勝利宣言のごとく発せられた藪沼の発言が、スウェット奥の男根に強かに轟く。発狂寸前の、胸を掻き毟られるような嫉妬心の中。気がつくとスウェットは下ろされ、いきり立った自らのペニスが手中に収まっていた。

「っふ、くぅぁっ……」

わずかに腰を動かしただけで、痛切な痺れが、玉袋から肉竿の突端にまで駆け上がる。少し擦っただけでも、射精しかねないと直感した。

(奴が咲美を味わってる、それを見つめながら、僕はッッ、~~~!!)劣等感に苛まれながら、せめて漏らさぬようにと肉棒をきつく、きつく握る。

そうして、股間に迸る苛烈な痺れに蕩かされた眼で、画面を凝視し続ける。

ほどなく映像がまた切り替わった。カメラは、後背位で繋がっている二人を真横、左側面から捉えている。

『ほら、声っ、まだ我慢してるっ』

言いながら藪沼が腰を振るう。

奴の肥えた腹肉と、咲美のむっちり肉の詰まった尻とがぶつかって、パンパンと小気味のよい音を響かせていた。

『はぁっ、はっ、あぁ……っ、ふぐっ、むぅっ、んむぅうぅっ』

頤を反らせた咲美の唇は、血がにじみそうなほどに食い縛られている。藪沼の言通りに、嬌声を噛み殺しているのだ。

「咲美っ……」

耐えてくれ、と願う気持ちを、瞬時に欲望が呑みこんでしまった。

──早く、もっと蕩けた鳴き声を聞かせてくれ。

剥き身の男根が期待に脈打ち、己が手中にべっとり、先走りのツユを吐きつける。

『我慢、しないっ』

吠えた藪沼の腰が回転速度を上げた。

『あっ、ひぃ、いぃぃんんッ!』

尻肉がたわむほどの痛烈な一撃を連発で見舞われて、咲美が叫びとも、喘ぎともつかぬ金切り声を吐き漏らす。

『そう! 全部、忘れてっ! 思いっきり!』

藪沼の動きに変化があった。深く肉棒を突き刺すのと同時に、腰を八の字に回している。ああやって、蜜壺に己の存在、形状を刻みつけているのだ。

溢れた蜜で濡れ光る肉幹を、誇らしげに誇示しながら、歓喜の只中にいる藪沼。

(それに比べて僕は……ッッ)

状況の格差に嘆くべき状況で、尽きることなき嫉妬が肉竿に宿る。終わりの見えない嘆きが焦燥伴う熾烈な痺れとなってペニスの根元から突端にまで駆け巡った。

『エッチになっちゃいなっ、アサオカちゃんっ』

『やぁ、んっ! んひぃっ、やっ、ぁ、だめっ、だめぇぇっ』

イヤイヤと首を振った咲美の髪がそよぐ。その匂いを堪能せんがため、藪沼が上体を傾け、咲美の背に被さった。

『そうそうそう、すごい、すごい締まる締まってるよっ、アサオカちゃんっ! 口よりもお股の方が素直だねッ』

奴の意地汚い肉竿を、咲美が締めつけている。よだれ代わりに蜜をボトボトこぼしながら、頬張るように、より奥へといざなうように。

『あぁぁっ、はっ、あぁっ、んっあああっ!』

すでに、開き通しとなった口腔からはひっきりなしに嬌声が生成、放出されている。唾を絡めた彼女の舌先までもが顔を覗かせて、喜々として震えるさまを見せつける。

『ひょっとして……もうイキそうだったり?』

いやらしい尋ね方をする下種男に対し、咲美は無言で、恥悦にまみれた顔を小さく縦に俯かせた。首肯したのだ。

(それくらい僕にだってわかるっ。だから、勝ち誇るな……藪沼ァッ!)汁濡れたゴムに覆われている逸物を食い締める膣唇が、小刻みな震えを発している。悶えうねる彼女の腰つきは、夫が幾度となく蜜事の中で目にしたものと同じ。

(ああ……もうすぐ)

終わる。終わってしまう。夫と同じ想いを抱いたであろう画面の中の咲美が、潤む瞳を背後の男に振り向けた。その視線に宿っているのは、期待。

(もうすぐ終われることを期待しているんだ。そう……だろ?)──もっと、欲しいってせがんでいるのさ。

反する二つの推測のどちらが正しいのか。答えは、藪沼の次の一手が導き出した。

『まぁだ、だめだよ』

いやらしい笑みを湛えた奴の唇が、間近の咲美の耳朶に、そう囁く。次いで、これまでの激しさが嘘のようにぴたりと腰を停止させて、相手の表情を窺う。

『……っ

!?

』

顔を背けるのも忘れて、咲美が一瞬、困惑を表情に浮かべた。

それを確かめたうえで、満足の笑みと頷きをし、藪沼の腰がゆるりと回りだす。捻るような動き、より小さな円回転で、膣の奥深いところを穿り始めた。

『んッ……ふ、ぅ……っ、ンン……ンンっ……やぁ……ぁはぁっンンゥッ』

受け止める咲美は、もどかしさと恍惚のはざまを行き来するように、頻繁に表情を変える。今にも頽れそうなほど震えていた手足を突っ張らせているのも、瞼を下ろして視覚を遮断しているのも。膣奥に轟くじれったい衝撃を、少しでも強く体感したいがためではないのか。

(咲美が……藪沼の与える刺激を、藪沼のペニスを、欲しがってる……)どんなに嫌っていても、夫を愛していても、肉体の求めに抗えない。一度繋がってしまうと、これほどに脆いものなのか。

『ほら、じゃあ自分で動いてごらん』

『やっ』

『やなの?』

馴れ馴れしいやり取りが交わされる間も、咲美の眼は閉じたきり。自分から腰を動かそうとしないのは、そこが彼女なりのデッドラインだからだろう。

愛しき妻は、じっと股間の歯痒い刺激に耐え忍び、かつ甘受していた。

『なら、ずっとこのままだ』

無慈悲な藪沼の言葉を受けて、瞑り通しの咲美の瞼と、まつ毛が切なげに震える。夫の目には今にも泣きだしそうに映った。

『ほら』

余裕たっぷりに藪沼が腰を揺するたび、あっ、あっ、と小さな響きが咲美の唇よりこぼれ出る。そのぷりっとした唇にも唾液が染み、瞬く間に艶めきを強めていった。噛み殺そうとするものの、結ぶこともできないでいるさまが、彼女の切迫ぶりを鮮烈に伝える、それでも咲美は自ずから動こうとはしなかった。またイヤイヤと首を振るばかりだ。

(そうだ……咲美は、こんな貶めるような真似をされて、自分から腰を振る女じゃない。まして、夫以外の男に抱かれてる状況でなんて……あり得ないんだ!)彼女は見かけによらず頑固で、強い意志を持っていて、一度決めたことは必ずやり遂げる。約束だって守る。尊敬に値する、愛しい女性なのだ。

(辛いよな。苦しいよなっ

!?

だけど……だけど、どうかっ……耐えてくれ)

この時ばかりは、なぜか卑しい欲望は湧かず、期待にすがる想いが急膨張した。

思いの丈をこめた眼差しで、画面を食い入るように見つめる。耳も体感も澄まし、映像のみに集中させた。すると──。

ぱふ、ぱふ、と、ごく小さな音だったが、研ぎ澄まされた聴覚が知覚する。

期待にすがっている夫の眼に、わずかに前後に揺らぐ妻の裸身が映りこむ。

胸のざわめきに抗ってより神経を研ぎ澄ませば、先ほどの「ぱふ、ぱふ」の出所も判明した。それは咲美と藪沼の接点──双方の腿と、咲美の尻と藪沼の腹。各々の肉がぶつかる際に紡がれている。藪沼の腰は、自ずから動いてはいない。

咲美が腰を揺すって、わずかに藪沼の腹をノックしているのだ。

「どう、して……っ」

──身体の疼きを、求めを堪えられるわけない。とっくにわかってたことだろ?

のさばっていた期待を、歪な欲望が凌駕し、呑みこんだ。

『そう、そうっ、いいよ、もっと大胆にっ』

藪沼の導きに従って、ぱふ、ぱふ、が回を重ねるごとに大きくなる。合わせて、藪沼の腰がタイミングを取り出すと、ぱふ、ぱふ、は再び、パン、パン、に変わった。

『ほれっ! これくらいの勢いで!』

平手打ちを食らわせられたような音を、咲美の尻が奏でる。ぶつかった藪沼の腹肉と、咲美の尻肉が共にたわんで、喜々と弾んだ。

『んあっ! はぁ、あぁぁ、っ……ひ、ンンンッッ! はひィィィッ』

お返しとばかりに咲美の腰が勢いよく打ちつける。その返礼で藪沼が、また咲美が、藪沼、咲美──交互にぶつかっていたのが、次第に重なり、ほどなく同時に打ちつけ合う格好となった。

『あっ、んっ、はひ、いぃっ、やっ、ぁぐ、だっ、んひっ、ふぐっぅぅぅんっ!』

藪沼はもちろん、咲美も、もはや性的欲求を押し殺すそぶりすら見せなかった。

勝利の笑みを浮かべた藪沼の両手が、咲美の白く柔らかな、マシュマロのごとき尻たぶを左右に割り広げる。そうして剥き出された薄褐色のすぼまりを、上体を起こして見下ろしつつ。汁気をたっぷりと含み蠢動している、待ち焦がれている秘唇に応えるべく、藪沼の腰がスパートをかけた。

『はひっ、ぃやぁぁっ、あひんっ、はひっああひゃっはあああ……っ!』

忙しく紡がれる喘ぎの合間に、咲美の唇が別の動きを見せる。だめ、だめ──そう、彼女は懸命に拒絶の意思をも紡ぎ続けている。一方で、汗だくの裸身の火照りを色濃くし、滴る汗を糊代わりに、藪沼の腹と己の尻肉とを吸いつけ合わせたまま、フリフリと淫靡な腰振りを披露してもいた。

心と裏腹の肉体の感応。それは、今まさに傍観するしかない身の無力に打ちのめされながら、手中の肉棒を扱かずにいられない、この心情と同一。

ゆえに、より痛切に、彼女の煩悶と昂奮のほどが伝わってくる。

擦るほどに喜悦の衝動を蓄える肉棒の卑しさを恨むほどに、確信した。

(きっと、咲美は。もうじき……)

『んん~? 何が駄目なの? ねぇっ、ねぇっ』

『やっ、だ、めっ、だめっ、なのっ、ぉぉぉっ!』

強烈にウザったい藪沼の口振りにも、余裕のない咲美はすがらざるを得ない。

『ほら、言ってよっ。パンパンがだめ、なんでしょぉっ』

『やっ、あひっぃぃッッ! ひぃっ、いあっ、あひっ、いっ、いぃ……っ!』

『いい? イくの? そうなんだねっ。イくんだねっアサオカちゃんっ』

言葉にせずに済むのなら、と思ったか。あるいは判断する余裕もなく、三度。突き上げる肉棒のノックに合わせて、咲美の顎が上下に跳ねた。

『ちゃんと言うんだよ、イくって!』

『ひやっ、いやああっ!』

『言うんだよッッ』

強烈な藪沼の突きこみを浴びて、膣壺が戦慄く。内に溜まっていた蜜汁が押し出され、止め処もなく咲美自身の内腿に伝った。

「く……そっ、くそっおおおっ」

それを凝視しつつ、画面の中の藪沼に対抗して罪深き陰茎を扱き立てる。喜悦のツユを漏らし続ける肉竿に限界の時が迫っていた。

それでもせめて奴より長持ちさせる、負けるものかという激情に支えられて、擦り切れるのではと思うほどに激しく、きつく握った状態で擦り続ける。

『あ、ああっ、ひっあっあああああっ、いっ、いいいいっ』

「言うな咲美っ……くぅっ、ふ、うぅぅっ」

『言うんだっ

!!

おっきい声でっ!』

喘ぎながら紡いだ懇願が、藪沼の大声に掻き消された。続けざまに画面の中の男女の生殖器同士がぶつかり合う肉の音が弾け、飛び散った蜜が煌めく。

『いっ、いっ、イぐぅぅぅぅっ

!!

』

とうとう、咲美の心が藪沼に屈した瞬間。

峻烈に引き攣れて潮を噴いた割れ目から、巨大な肉砲身が引き抜かれるのと同時に、みじめな傍観者の手中でも悦波が爆ぜる。

『うほおおおおっ! 出るよ、出るよぉぉぉぉ! アサオカちゃあああんっ!!』

猛々しく反り返る藪沼の砲身が、桃色ゴムを引っぺがされてすぐに尋常でない量の白濁液を、弓なりの咲美の背中に撃ちつけた。量もさることながら、ドロリと濁った液の粘度、濃度共に濃く、付着したそばから自重によって垂れ下がり、糸を引く。勢いも強烈で、打ち据えられる都度咲美の背が怯えたように大きく震えた。

結果、一斉に背筋より滑り落ちた粘液が、火照り通しの桃尻をも染め抜いてゆく。

「んぐっ! ううううっ!」

その一部始終を見届けることしかできない中での吐精には、痛切な虚しさと、過去にない甚大な量の淫悦が付随した。

『ハハッ、はぁっ……まだ出るよっ、全部受け止めてねっ、アサオカちゃんっ』

小便するように、ブルッと身震いしてから五度、六度。奴の射精は音まで聞こえてきそうな勢いで噴き続ける。

『ふぁ……あ……んぁ……ぅ』

咲美は四つんばいの体勢から前のめりに倒れ、小さく呻いたきり、荒い息を吐きながら目を閉じていた。敷布団の上で亀のように丸まった姿勢を取り、噴きつける精のすべてを受け止めている。

黄色く粘っこい藪沼の体液が、咲美の背の窪みから溢れ、桃色の肌へ、たっぷり吸われた乳房へと垂れ落ちてゆく。尻の谷間からこぼれた汁が、膣口の方にドロリと伝うのも視認できた。

フローリングの床に飛び散った己の精と、愛妻の肌を席巻する藪沼の精とを見比べた。量も濃さも、吐き出る際の勢いも、奴の方が明らかに勝る。

唯一、吐精の瞬間は奴よりもわずかに後だった。しかしそれも、奴が咲美の膣内を堪能した、という現実の前では、さしたる優悦を生み出さない。

咲美が藪沼と情を交わしたという事実は、もう決して覆らない。

(……あぁ)

この数か月抱き続けてきた妄想が、ついに最悪の──至高の形で結実したのだ。

こうなって初めて、この目で見てようやく思い知る。以前の咲美が、画面に映し出されているその時点で、すでに永遠に消え去ってしまっていたのだと。

失望ではなく憐憫が湧いたことで、つくづく改めて咲美に寄せる愛情の深さをも思い知らされた。

「咲美……ごめんっ、ごめん、なぁっ……」

ぎゅっと絞った肉竿が内に溜まった最後の一滴をひり出すのと、画面の中の肉凶器が愛妻の尻をベチベチとぶつのとが同時。今度は奴の方が一瞬遅く、桃尻に摺りつきながら射精する。

映像は未だ、録画時間の半分も過ぎていなかった。先を観る理由はもはやなく、さりとて観ないという選択肢が浮かび上がろうはずもなく。

妻を裏切り続けた末に到達した悦波の味が忘れられず、気づけば再び画面に目を奔らせていた。

ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌 第五章 一夜の真実(第一幕) (5/7)
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