深紅のタイトスーツを着た瑞花の後ろから入って来た女を見た瞬間、よし当りだと米倉は心の中でほくそ笑んだ。
チャコールグレーのセーターにオフホワイトのミニスカート。手に持った黒色のコートは一目で高級品とわかるもの。
セーターを押し上げている胸は、伝言に入れられていたサイズよりは大きく見える。
乳首の突起がノーブラであることを示しているが、形も申し分ない。
そしてその胸の隆起を際立たせているのが、腰の細さだった。
「コート、そこに置きなさい」
瑞花はすでに命令口調で、ライティングデスクの椅子を指す。
「はじめまして」
米倉はあえてソファに座ったままで女に言葉をかけた。
「植草加奈と申します。どうぞよろしくお願いします」
コートを置いてしまった手をどうしたらよいのか一瞬戸惑うような仕草を見せたが、ぺこりと頭を下げた後、頭の後ろに持って行った。
「ノーブラは瑞花に命じられたのかな」
「いえ、初対面の方に初めておっぱいを見ていただくのにブラの痕などがあるのは失礼だと、他の方に貸し出される時などに前はきつく言われておりましたので」
「そうか。では早速脱いで見せてもらおうか」
「はい」
こういった時、普通の女はまず袖を片方ずつ抜いて、次に首を抜いてと意味もなく時間をかけるものだが、これも以前の男たちに教育を受けているのか、加奈はセーターを下からまくり上げ、即座に裏向きに首から抜いた。
美乳。
やはり形がいいし、乳首、乳輪のバランスも申し分ない。
これでは本人が豊胸を申し渡されて戸惑い逃げ出したのも無理もない。
それほど変わっていないと想像できるが、調教を受けてたのは二二十代の頃であるからより美しい乳をしていたことだろう。
ためらうことなく、スカートにも手をかけて足首から抜いた。
薄ピンク色のパンティはつけていたが素足で、これも普段の習慣というよりは覚悟の現れなのだろう。
無駄な贅肉のない脚は、三二十代前半と言う年齢を全く感じさせないものだった。
加奈は一瞬米倉の方を見たが、しかしすぐにパンティにも手をかけた。
「ご覧になりますか」
「よし、見せてみろ」
加奈は脱いだパンティを裏返し、性器に直接触れていたであろう、そこだけ白く二重になった部分を上になるよう折り畳んで、手を出した瑞花に渡した。
「まぁ、すごい」
瑞花は米倉に手渡す前にそれを鼻先に持って行った。
「お二人にお会いできて、奴隷にしていただけると考えただけで、とても恥ずかしいことになっていると自分でもわかります」
ふたたび手を頭の後ろで組んだ加奈が、しっかりと瑞花を見て言った。
「淫らな牝の匂いがいたしますわ」
設定では瑞花も奴隷ということになっているので、跪いてうやうやしくそう言って米倉にそれを手渡した。
薄いピンク色のパンティの内側の白い部分は、確かに本人や瑞花の言う通りねっとりとした液で激しく濡れていた。
「どのようなご調教にも耐えられるよう努力致しますので、私をご主人様の奴隷にして下さい。瑞花様と先ほどお会いした瞬間にきちんと決心いたしました。こんな美しい方を奴隷にされている方なら間違いないと。そして今、ご主人様の前で裸にさせていただいて、本当に涙まで出てしまいそうなくらい嬉しいです」
加奈は一息に言った。
「どんな命令にも従うか」
「はい。どのような厳しいご命令にも、どのような恥ずかしいことでも従います。もしご主人様や他の奴隷の方がご不満と思われることがありましたら、どのような厳しいお仕置きでも喜んでお受けいたします。それが私の望みでした。ずっとずっと辛かったんです」
一瞬目を閉じると、本当に加奈の目から一筋の涙がこぼれた。
「よし、半回転して尻を見せてみろ」
瑞花にも「お前も脱げ」と命令口調で言う。
後ろから見ると、さらに腰のくびれが見事で、尻から腿にかけてのラインも申し分なかった。
「先に尻の穴見せてもらおうか」
「はい」
その命令を予期していたかのように、即座に体を前に倒し、自らの両手で尻たぼを拡げて肛門を剥き出しにした。
この手のポーズを取らされることも慣らされていたのだろう。
「いつ以来だ、男に尻の穴を自分から開いて見せるのは」
「結婚前の最後のご調教以来です」
「どんな気分だ」
「おまんこを見ていただくよりもずっと恥ずかしくて、でもとても嬉しいです」
「脚をもっと開きなさい」
命じた通りに前屈姿勢のまま開脚すると濡れそぼった性器も丸見えとなった。
毛は生えそろっているが、性器から肛門にかけては産毛程度で、ラビアもさほど大きくはなく、手で尻穴を剥き出しにしているため性器も少し広がり、ピンク色の内部が覗いていた。
米倉の目配せで瑞花がデジタルカメラを取り出して、フラッシュを焚いてその姿の撮影をはじめる。
「顔こちらにお向け」
苦しい姿勢のまま顔だけ振り向いた加奈にさらにフラッシュが焚かれた。
「テーブルにあがっておまんこ見せてるところも撮らせて」
瑞花の命令に加奈は「はい」と言って、米倉が座っているソファの前のテーブルに上がり、尻をついて立てた膝を左右に開いて手を頭の後ろに組み、米倉を見て、そしてカメラを構えた瑞花の方をしっかりとみつめた。
「いい覚悟ね。それに憎らしいほど形のいいきれいなおっぱい」
レンズのズーミングをしながらさらにフラッシュが何度も光った。
「中まで見せて」
「はい」
両手を性器にあてがいラビアを自らの手で開くと、薄白い愛液が溢れた。
「ご主人様、瑞花様、どうぞ加奈の、奴隷の恥ずかしいおまんこをご覧ください」
奴隷の作法はよく躾けられているようで、これはすぐにでも客に出せるレベルにあると米倉は思った。
さらにテーブルの上で四つん這いなどいくつかのポーズを撮影して、「今度は、ご主人様のものにご奉仕よ」
米倉が黙っていても「奴隷」の瑞花が次々と命令を下していった。
「失礼します」
テーブルを降りて跪いた加奈が米倉のズボンのベルトをはずす。
協力して腰を浮かせてやるとトランクスと一緒に膝まで下ろした。
「すごい…」
すでにいきり立ったものを見て、加奈は一瞬息を飲んだ。
「お口でさせていただくのも三年ぶりなんです。しかもこんなにご立派だなんて。もしヘタクソだったら一から厳しく仕込んでくださいませ」
米倉を見上げて言った。
「最初に喉まで入れて、大きいおちんぽおしゃぶりさせていただく喜びを味わうのよ」
カメラを構えた瑞花が命じると、その許可を待っていたかのように、手で髪をかきあげてしゃぶりついてきた。
口を大きく開けて一気に口中深く銜えこんでいくところをまた次々にフラッシュが焚かれていくが、加奈はその都度カメラ目線を送るなど、撮影されることにも慣らされているようだった。
「よし、ちゃんと奉仕しろ」
一分以上喉の奥深くで口中いっぱいに味合わせてから、米倉は命じた。
了解の合図を送って来た加奈の目は極上のマゾ女のそれだ。
舌を使って刺激を加えながら口唇を締めつつ亀頭部へと上がって来て、ぎりぎりのところからまた一気に喉まで銜えこみ、それから頭の上下動で口腔奉仕を始めた。
左手は髪の毛を押さえ横顔を自らカメラに晒し、右手は玉下に添えて指先を使ってくる。
やはりマゾの奉仕をきちんと叩き込まれていた。
極上の奉仕をたっぷり一時間ほどかけて味わって、最後は立ち上がって頭を押さえつけて遠慮の一切ない腰使いで喉を使って、精液を口中深く放った。
加奈は厳しいイラマチオにも咽せることもなく、喉を鳴らしてそれを嚥下した。
米倉がゆっくりと腰を引くと、口から出た瞬間、それを惜しむように舌を出して裏筋を舐めてきた。そしてそのまま自分の唾液で濡れ光る部分を丁寧に舐めとっていった。
後始末をさせていると「コンコン」とドアをノックする音。
一時間後に、と言って夏美と言うやはり米倉が調教をはじめて三年になる二十二歳の娘を呼んであった。
瑞花がドアを開けに行った。
「話していたもうひとりの奴隷だ。お前より二十一歳以上も若い女だが、そのような小娘より下の、最下等の奴隷とするがそれでいいんだな」
「はい。よろしくお願いします」
夏美は部屋に入ると来ていたワンピース一枚を落とし、即座に全裸になった。
百五十センチを切る小柄な体に鞭によるものと思われる傷だらけのFカップの乳房。
「こいつはなペチャパイだったんだ。元はAに近いBくらいだったのを改造した。でも、見えんだろう偽物には。わざわざフィリピンへ行かせてその道のプロ中のプロの医者にやらせたんだから」
「水沢夏美です、よろしくお願いします」
自分より年上の女に挨拶をする。
「夏美、この女は加奈。お前の下の奴隷にするから、お前もそのように振る舞っていいし、年上でも敬語使ったりしなくていいぞ。そうしたければおまんこでも尻の穴でも舐めさせろ」
「最下等の奴隷にしていただくことになった加奈と申します。夏美様、よろしくお願いいたします」
「挨拶が済んだところで、早速剃毛だ。とりあえず前の男たちの奴隷だった証も見てやろう」
「はい、お願いします」
瑞花が準備のためにバスルームへ行った。
手を後ろ手に縛り上げてから、ベッドに行くように命じ、仰向けに寝た加奈の顔の上に夏美をしゃがませ、その上で折り曲げて開いた脚を夏美に持たれるという屈辱的な姿でそれは行われた。
もちろん夏美への舌奉仕をさせられながら、瑞花の手で性器の上部の密集地帯から性器の周りの産毛まで泡とともに剃り取られて行く。
米倉はベッドの周囲を動き回って、さまざまな角度でシャッターを押した。
左半分が済んだところで剥き出しになったピンク色の肌に、米倉が考えていた以上にはっきりと「奴」という文字が浮かんで来た。
そこでいったんストップさせて、タオルで泡も拭き取らせ、夏美にも一度立ち上がらせて、カメラを向かせて、とろんとした表情と半分だけ毛があるという屈辱的な状態の性器が写り込むようにフラッシュが焚かれた。
続きを命じ、最後の泡もタオルで拭き取り、「奴隷」という文字が浮かび上がる頃には「おまんこイクーーっ」と夏美が、しゃがむどころか、完全に口を塞ぐようにして腰を使って性器を加奈の口にこすりつけて断末魔の声をあげた。
「そんなに動いたら危ないじゃないの、剃刀使ってるのに。しかも勝手にいっちゃうなんて先にあなたのお仕置きかしら、夏美ちゃん」
自分も奴隷だという設定を半ば忘れて瑞花が言う。
しかしそれも悪くないと米倉は思い、夏美の手でラビアを拡げさせ奴隷という文字の下に淫らに濡れる性器撮影をした後、夏美に鞭三百発の刑を言い渡した。
手をほどいてやった加奈には、刑罰を見ながらのオナニーを命じ、四つんばいで膝を曲げずに尻を突き出すという鞭刑のポーズを取らせた夏美の尻に、バラ鞭乗馬鞭一本鞭と徐々に厳しい鞭を、米倉、瑞花が交替で与えた。
二百を数えたところで夏美が床に崩れ落ちると同時に「もう駄目です、イキます」と加奈も激しくクリトリスをこすり、体を痙攣させた。
「あら、勝手にイッたらどうなるか目の前でされてるのに、お前もお仕置きが欲しいのね」
瑞花はすっかり女王様モードに戻ってしまっていた。
「ああ加奈にも、最下等奴隷の加奈にも鞭をお願いします」
「そうか、希望どおりにしてやろう」
そう言ってふらふらしている夏美とともに部屋の中央に立たせると、十センチ以上の身長差があるふたりを背中合わせに縛り上げ、ふたり同時に米倉と瑞花の手で乳房への鞭責めが行われた。
そうして無惨な鞭痕で乳房から血がにじむ頃には、崩れそうになって泣き喚く夏美を加奈がふんばって支える形で立ち続け、しかも鞭だけで「イキそうです、もっと痛くしてぇ」と言って、最後はふたりの鞭を同時にひとりで受けて実際に気をやったところに、二十二歳の夏美とは比べものにならない、加奈の女としてのキャリアの長さ、マゾとしての深みも凄みも感じさせたのだった。
二〇〇二年六月
雨の日が続いていた。
うんざりするほど深い場所にホームがある地下鉄の出口を出て、六本木交差点の方に少しだけ歩くと、左に入った路地に、この四月に三田村が新たにオープンさせた店がある。
角を曲がった時点で、傘をさして並ぶ列が見えた。
豊富な資金力を背景に、アイディアは産まれたら即実現する。
一月に三田村が思いついたプランは、米倉の眼力とスカウト陣の腕もしくは金銭と口説き文句、これらによって短期間で集められた三十人の女たちを擁して、計画から三ヶ月後には店をオープンさせ、半月もしないうちに行列が出来る「六本木に登場したスーパーピンサロ」として風俗好きには知らないものはいないという店になっていた。
その店「サロン天使牧場」の店長には大野が就任した。
米倉はその上の統括責任者、役職としては社長として、当面の目的を果たす役割を担うことになった。
寒河江や瑞花とともに出席したオープン前の作戦会議で三田村は、「イニシャルコストは当然別として、初年度の年間予算は一億二千万だ」
と、言い渡した。
これは月一千万の赤字で運営しろ、という意味である。
それは赤字は一千万までは許す、という意味ではない。売上に関係なく人件費、つまり「コンパニオン」嬢たちの給料に上乗せの支払をして評判をあげろということだ。
「店の営業形態については後で大野から説明を受けてくれ。お前のもっとも重要な仕事は新人の面接」
米倉はそう言い渡された。
当初予想していた以上に、風営法改正つまりテレクラ規制法による影響は甚大だった。
当たり前と言えば当たり前である。
利用者はクレジットカードの番号を使った認証システムによる身元と年齢確認もしくはファックスなどを利用した身分証明書の確認をとらなければならない、と決められてしまえば、男性はともかく肝心の女性利用者など居る筈がないのだった。
したがって米倉たち「狩人」たちの仕事もまったくもって奮わなくなり、これまでのSM伝言システムを利用してマゾ性の強い女をピックアップするというやり方を捨て、この店を新たな奴隷狩りの舞台とすることにしたわけだ。
したがって、そのための仕掛けが随所に施されている。
店内のあちらこちらにさりげなく隠された六十台の小型高性能カメラから送られてくる映像はそのまま六十台のハードディスクとDVDを利用したビデオシステムに記録されていたし、なによりその営業形態、つまり「コンパニオン」のサービスのさせ方に独自のシステムを取り入れ、そのコンパニオンの中にはすでに米倉たちの手によって奴隷教育を受けた女たちが「スパイ」として混じって、必要以上に濃厚なサービスをしながら女たちに溶け込んでいることなど、幾重にも奴隷狩りのための仕組みが盛り込まれていた。
米倉は行列の横をすり抜けると雑居ビルの裏手へと回り、裏の入口からエレベーターで三階へと上がった。
店は地下一階にある。
廊下を歩いて行くと一番奥の部屋の入口に「スタジオ・エスタブリッシュメント」と書かれた金属プレートがつけられており、ドアを開くといきなり応接室があって、反対側のドアの向こうはスタジオという名のモニタールームだ。
誰もいない応接を通って扉を開く。
「遅いご出勤だこと」
白いブラウスに青色のスカート、ピンクのセーターを肩から背中にたらして、袖の部分を胸元で結んだ、彼女にしては清楚と言える格好をした瑞花が、ドアの音に振り向いて言った。
「新宿の方でちょっと実習をしてきたからな。それよりいいのか、こんなしょっちゅうこっちにばかり来ていて」
伝言ダイヤルを利用した奴隷狩りが不可能になったため、インターネット上にいくつかの「素人SMサイト」を作ってそこに掲示板を設けて網を張るというのが、今の瑞花の役割だった。
「最初はサイト作り面白かったけど、なんだかほんとに男か女かも初めはわかんないのとメールのやりとりするのも疲れちゃうのよね。やっぱり男もタダっていうのは駄目よ。あきれるようなのばっかりで嫌んなっちゃってさ。それにメールのチェックなんてここでだってできるんだし」
本当に不満そうな顔だった。
二十インチの液晶モニターが上下二段に五台ずつ、ほとんど壁一面といった状態で設置されている。新宿のホテル内にある「クラブ」のモニタールームと違い、メインとなる大きいモニターはないが、その替わり別の一面に六十台の録画装置が並べ積まれている様子は圧巻だった。
「で、どうなのモノになりそうな娘はいそうなの」
「ああ。集めた三十人のうち十人ピックアップして身元調査中だ。なにしろ面接でとったわけではなく、こちらから頭下げて来てもらったわけだからな。いろいろ調べてからじゃないと。それとは別に今月募集で取った五人はほぼまちがいなくいけるぞ。まあこれから追い込みにはお前さんの手を借りることも多々あるだろう、よろしく頼むよ」
「楽しみね、モニター見ててもおちんぽしゃぶる舌づかいはみんな半端じゃなくうまいもんね。みんな隼人が仕込んだんじゃないかと思うくらい。レズのお舐めを仕込むの、楽しみよとっても。フェラチオシーン見ながら考えただけでわたし、おまんこうずく。なんとかして」
瑞花が笑いながら言った。
「残念ながらちいと現場検証だ、まぁ上から見ててくれや」
自分の机の上に荷物を置いた米倉は、先ほど応接を抜けて入って来た側とは反対の扉を開け、階段を通って地下一階まで降りた。
六本木なんだからBGMはジャズだけにしようと言ったのは店長の大野だった。ドアを開く前からコルトレーンが聴こえてきた。さしずめムードタイムといったところか。
「あ、社長さん」
入って来た米倉に気がついた黒服のボーイが慌ててフロアへと出て行った。大野を呼びにいったのだろう。
地下のフロアはビルの大きさよりも広いということもあって、それを全て借り切っていたので、この裏口の階段とドア一枚で直結した部屋もそれなりの広さがある。
この場所で新人の面接をするので、カメラも二台設置されていた。
「おはようございます。お呼び立てして申し訳ありません」
大野は米倉よりもいくつか年長ではあるが、丁寧な言葉遣いと物腰である。
ただし、見た目は体育会系で、けっして手をあげたりはしないが、若い男性従業員には畏れられかつ慕われてもいるようだった。
また、大野の風貌と丁寧な物腰は、ヤクザ風の客の入店を断る際や、時々勘違いしてやってくる本物のヤクザにも効果を発揮していた。
三田村の力は裏の世界でも有名であったから、滅多にそんなことはないのだが、今回のこの店を開店して数日たった日に、池袋の店の使いだと言って「引き抜き」の抗議に来たふたりの男たちが居た。大野は「もうすぐ責任者が来るから」と言ってふたりをソファに座らせ、自分もその前に座って二時間ほど釘付けにした。彼らが何を言おうが大野に「まあもう少しお待ち下さい」とにらまれてはどうすることもできず、米倉が入って行った時には脅しに来た方がむしろびびって震え上がっていたほどだ。その二時間の間に三田村が手を回し、彼らの事務所のみならず、上部団体の事務所から数人の幹部の自宅、それに抗議の輩をさしむけて来た池袋の店まで一斉に警察のガサ入れが入り、米倉とほとんど入れ替わりに、携帯で呼び出されたふたりは脅しどころではなく帰って行った。
その大野から、見てほしい娘がいるから六本木まで足を運んでほしいと電話があったのはほんの一時間ほど前だ。
「リョウコって子覚えてらっしゃいますか。社長が一番最初に行かれたお店から引き抜いた娘ですが。そのリョウコが連れて来たんですが、去年の夏から前の店休んで海外留学してたらしいんですわ。いいとこのお嬢さんという雰囲気の娘なんですが、何らかの事情で親と絶縁状態らしくて大学行きながらピンサロ嬢やってて、リョウコに言わせればあの店でも指名はトップクラスだったんだそうです。社長も行かれたからあの店のレベルはご存知と思いますが。で、日本に帰って来てみたらリョウコが店変わってるの知って、今日ついて来たんです」
「そうか、で」
「とりあえず使ってみてくれというので簡単な説明だけして店に出してみてます。さっき見ましたらおっぱいもいいしさすがに口遣いも良さそうでしたが、お試しになられますか。後で実地の面接するかもと言ってはありますので、いつでもここへ呼びますが」
「いや、俺が行こう。彼女にはまだ何も言わなくていいよ」
電話があった時から考えていた通り、客として「面接」をすることにした。
この部屋からは、店内と客の出入りする外の階段の間にある通路に出ることができる。外の階段に並んでいる客に見られることもなく、順番が来た客として店内に入ることができるのだ。
モニター越しではなく実際の様子を見るために客として入ったのは初めてではないので、従業員も心得ていた。ただ、リョウコ(この店でもそのままリョウコという名を名乗っていた)には見られないように大野が配慮したであろう。
店内は比較的ゆったりしたソファとそれぞれにテーブルが五列に五脚ずつ計二十五席が配置されている。これに対してコンパニオンが常時五十人以上になるよう、足りない分は奴隷たちの中から補充していた。スパイを兼ねた娘もいれば、口奉仕の訓練のためと言われて出されている娘もいる。
一番奥にあたる列の一番後ろの席に米倉は「案内」された。視察の際の指定席といっていい。
店のシステムは、客一人にコンパニオンが二十分ずつ三人がつくというシステムだ。一時間で二万円。高級ピンサロと言われるわけで、その値段ならソープに行った方がいいとかヘルスにだって行けるじゃないかという客に来てほしくないというのが値段設定の理由だった。安く抜けるから好きというのではなく、ピンクサロンという一種独特の雰囲気の中で献身的なサービスを受けるのが好きという客が集まることが、本来の目的に合致したからでもある。
コンパニオンたちは全裸である。
サービスをする時だけ脱ぐのではない。
全員が常時すっぽんぽんで首から番号と名前が書かれたプレートだけを下げた格好で交替時などに店内を歩き回らせている。
客はどこを見てもいいことになっている。
「店内はかなり明るいですし、横を見たり後ろを振り向いたりされるお客様もいらっしゃいます。見られることが苦手なお客様は入店をお断りさせていただいています」
初めて来たという客には、黒服のボーイがこう説明している。
「新人の
優菜
さんとナツミさんです」
連れられて来た娘は、顔だけ見るとまだ二十代の半ばにさえ見える小作りで幼い顔をした小柄な娘で、もうひとりは奴隷の夏美だった。
指名のない客は、ここでどちらか片方を選ぶシステムになっている。
「彼女の方を」
形式にそってちょっと二人を見比べた上で優菜を選ぶと、選ばれた娘はソファの横にぴったりと寄り添って座り、夏美はテーブルへと上がり、膝を立てて性器を見せつけるようにして脚を開き、手を頭の後ろに組む。
ふたりのうち選ばれなかった方はこうすることになっていた。
席に着くより前に黒服に飲み物をオーダーするシステムになっていて、飲み物を持って来た黒服はテーブルの上に上がった娘が広げて立てた足首の内側にビールの入ったグラスを置く。ここで脚の開き方が足りない娘は黒服に脚の位置を直されることになっている。もちろん一度グラスを手に持った客がグラスをテーブルに戻す際にそれを要求すれば、より脚を開かなければならない。
優菜は手順通り、まず自分のネームプレートをはずしてテーブルに置くと、米倉の両手を取って乳房へと導いてからズボンのベルトに手をかけた。大野が言う通り、形もいいし、Dカップ位だろうか、弾力もあって小柄な体にしては申し分のない乳房をしていた。
「おっぱい小さいのに私を選んでいただいてありがとうございます」
夏美と比べて言ってるのだろう。豊胸で作った夏美の乳房はGカップで、さすがに目立っていた。
「お客様は、こちらへははじめてですか」
ズボンを下ろしておしぼりで軽く拭くまでだけ、客と会話をしていいことになっていた。
「いや、何度かあるよ」
「では女の子が一時間に三人つくことはご存知ですね。私はさっき紹介された通りこちらのお店は今日初めてなんですけど、なんだかとってもびっくりしちゃって。全員裸のままだったり、ひとりはこのナツミさんのような格好してないといけないとか」
「そうだね、私も最初はびっくりしたよ。続きそうにないかい」
ご主人様が考えたくせに、と夏美の目が笑っていた。
「いいえ。サロン自体は経験ありますし、さっき私も見せてる役やったんですけど恥ずかしいのにすっごい濡れちゃって、こんなの初めてでちょっと興奮してます。後でお指で確認してくださいね」
そう言って米倉の右手の人差し指と中指を同時に口に含んでしゃぶった。
「失礼します」
言って横たわると顔を米倉の股間深く埋め、まずは玉へと舌を伸ばし、徐々に蟻の戸渡りと呼ばれる玉袋の下部から後ろの方へと窮屈な姿勢をものともせずに舌を伸ばしてくる。ひんやりとした絶妙な舌先で、同時に触れるか触れないかの羽のようなタッチで右手がペニスを刺激してきた。
サービスのやり方は基本的にはマニュアル化されている。
それも店内で流れているジャズのBGMが時計替わりになっていて、最初の曲は二分程度の短いもの。この間に客のズボンを脱がし準備を終える。次の曲が約三分。このサービスを初めて最初の三分間は性器そのものには手を添えるだけで、口は玉や肛門舐めから入るように指示してある。三曲目から五曲目がそれぞれ三分前後の曲で合計十分。この間のサービスの仕方は女の子に任されているが、ただし、手で直接ペニスをしごいてはいけないし、またこの三曲の間に客を射精させてはいけない。充分に焦らして楽しませて次の六曲目の三分半で射精させること、というのがルールだ。
ひとりの持ち時間が二十分とはなっているが、実際は約十八分で、これを三サイクルしてひとりの客へのサービス完了。約二、三分の間に女たちは一斉に入れ替わる。花びら回転と呼ばれるシステムだ。
またこのルールに沿ってコンパニオンの仕事は評価されていく。
まずやってきた客が入店前に指名をした場合は五点。指名なしの客は連れてこられたふたりのうちから一人選ぶわけだが選ばれたら三点。客が入店時に指名したコンパニオンが三回転のうちの何番目に来るかは店任せ。当然女の子の方は一時間に三人しか指名を受けることはできない。最初の二十分が終わるとコンパニオンが交替するが、その際、現在テーブルに上がって性器見せをしている子を指名するか下げて別の子を呼ぶかを選択できる。別の子を呼ぶ場合は、指名は出来ず、やって来た子のサービスを受けなければならないが、下げられてしまうと女の子はマイナス三点二人目のサービスが始まって五分程度の間に、二回転目であぶれた子がまたテーブルに上がりにくる。これの繰り返し。
サービスでの点数は、客の一回目の射精に五点、二回目の射精に十点、三回目の射精には十五点が加算される。ただし、これはルール通り六曲目でいかせた場合であり、五曲目だった場合はマイナス二点、四曲目だった場合はマイナス五点、三曲目だった場合はマイナス十点がその達成ポイントから引かれる。つまり一回目の射精を三曲目でさせてしまった場合など差し引きマイナスになることもある。また、客の一回目の射精が一サイクル目とは限らず、三サイクル目で客はもう充分に高まっているのにたまたま前のふたりではイケなかったという場合など六曲目まで持たないことは充分ありうることだった。
女の子から見て、一時間に三人とも指名客で、二人目は最初のコンパニオンに射精しており、三人目についた客も別のふたりにイカされていて、かつルール通り六曲目で三人とも射精まで導くことができれば、一時間に計四十五点満点。五時営業開始で六時十分、七時二十分、八時半、九時四十分、十時五十分の合計六サイクルあるから最高二百七十点、一点千円で計算するので一日の基本給三万円をプラスして日当三十万という高額の報酬がはじき出されることになる。
もちろんこれは理論値であって、これまで一度も二百七十点に届いた子はいないし、一日に二百点を超えた娘すら数えるほどだ。
なんといってもまだ開店して二ヶ月あまりで、一日十八本すべてに入店指名がある子は僅かだったし、指名がないと二回転目以降テーブルに上げられる可能性も高い(客が目の前の子を下げるということがあまりない、それなりに高レベルの娘を集めたわけであるから当然だが)わけで、テーブルに上げられると、開脚の義務づけのために置かれる飲み物を倒してしまうとその都度マイナス五点などというルールもあるし、そもそも一時間に三回射精させるというのは、超のつくハイテクニックの娘たちを集めたとはいえなかなか難しいわけで、実際は何人かを除いては百点にすらなかなかいかない。
店の方針として、性器の全剃毛もしくはクリトリスの位置より下の部分の剃毛・抜毛も義務づけており、すでに奴隷である娘たちを目立たなくするためというよりも、性器を見せるという意識と羞恥心との兼ね合いをつねにこちらサイドでチェックするという意味があった。ちなみに、この服務規程にもマイナス二十点という減点ポイントがある。
もちろん、性器をへらへらと見せる女を必要としているわけではないので、恥ずかしさについグラスを倒してしまったなどの様子は全て後からビデオで様子をチェックし、編集したものを定期的に本部に送って来ている。
また、最初の三ヶ月は全員常時全裸を義務づけているが、来月あたりからは、給料だけではなくこのポイントの累積により、コンパニオンのランク分けをする予定で、ランクによって制服下着全裸と客から見てもランクがわかるようにする予定だ。
曲が替わり、優菜はずり上がって来て玉袋からペニスの根元へ、そして徐々に上に向かって微妙に行ったり来たりしながら舐め上げてくる。
これは相当慣れている、というかテクニックを持っているというのがその微妙な舌使いからもみてとれた。
性器に指を入れてみると、本人も言う通りぐっしょりと露をしたたらせており、待ってましたとばかりに指を締め付けて腰を揺らす。
そんな優菜の表情と口の動きを見ていた米倉が顔をあげて、夏美の性器を指差す。
テーブルに上がった女は、基本的には手を頭の後ろに組んで胸を突き出して客に見せながら、目はサービスしている方の女の口元と客の男性器を見ていなければならない。
さらに、米倉が指示したように、性器を広げて見せてほしいという客からの合図があれば、躊躇なく、脚を開いたまま両手を使ってその性器の内部までを開いて見せなくてはならないことになっていた。
こういったひとつひとつに女のマゾ性がにじみ出るし、他の女のやっているサービスを見ることで自分の未熟な技術を向上しろと言い含めているのだった。
夏美は一瞬戸惑ったように泣きそうな顔をしたが、すぐに頭の後ろで組んでいた手をほどき両方のラビアのすぐ外側を指で押さえて左右に開いた。俺には何度も見せているだろうにという意思を目で送ると、照れたような薄い笑みで目をうるませたが、理由はふだんの性器検査の時以上の濡れ具合が示していた。
それを見て、米倉はしまったと思った。
視察と称してここに座ったことは何度もあるが、面接そのものを客席でするのは初めてだったわけで、ルールに沿うならば、先に夏美にサービスをさせて優菜をテーブルに上げて反応を見るべきだった。大野もそう思って奴隷の夏美を一緒によこしたに違いなかった。
三曲目になっても優菜は
銜
えることをせずに、微妙な舌の律動を加えながら上から下へ裏側から時に表側へと舐め回していた。ペニスに口がある時には玉袋へ、玉や尻穴へと舌を這わせる時にはペニスへと右手の繊細な指使いも一級品だ。
四曲目に替わり、今度はいきなり喉の一番奥へと銜え込んだ。
奴隷としての訓練をしてもディープスロートができるまでには時間がかかるし、どうしても口の開きが不十分で不可能という場合もある。
ましてや米倉は日本人離れした巨根である。
それをいとも簡単に根元まで飲み込み、それどころかその状態で、微妙に舌で刺激をしてきた。しばらくして、ゆっくりとしたストロークをはじめる。米倉を見上げてくる表情は涼やかで余裕綽々だ。これは六曲目でスピードをあげてきて簡単に百戦錬磨の米倉をノックアウトするだろうことは確実だった。
それにしても、と米倉は思う。
ひとつの店から三人も引き抜いてしまったのは、今日この優菜を連れて来たリョウコや米倉が自分で口説いて現在は奴隷の一員になっている由香という子の居た、米倉が調査を始めて最初に行ったあの店だけだったのだが、なんともうひとり凄い隠し球がいたわけで、こうなると逆にあの店で女の子たちに「指導」をしている人間を聞き出して、その人物も引き抜かねばなるまい。
口で奉仕させることには慣れきった米倉をもってしても、テクニックのある女にされると快感は数段違う。ましてこの娘は射精させる瞬間からその終わりまでも絶妙だった。喉奥にザーメンを受けながらも口の動きを止めることなく、さらに吸い立てるようにしてくる。全てを受け止めてからは徐々にスピードを落としそれでも深く浅くしゃぶりたててくる。見ると目を閉じてうっとりとした表情をしており、いつまでもしゃぶっていたいというような、恋人のものを大切に口にしているようにさえ見えた。
米倉が優菜の性器から指を抜くと、それを合図にしたかのようにようやく口を離して起き上がって来た。
おしぼりを手にした瞬間、「あっ」と言いぺろりと舌を出す。顔立ちが幼いのでそういう仕草をすると大学生どころか学生のようだ。
「つい飲んじゃったぁ。知ってらっしゃるかもしれませんけど、ここのお店、口で受けたお客さんのもの女子トイレで見せないといけないんです。店長さんが待ってて口の中を見せて、それからコップに出すの。さっきはちゃんと覚えてたんだけどなぁ。ついつい夢中になっちゃったからなぁ」
おしぼりで米倉のペニスを軽く拭きながら、笑って言う。
そのコップに吐き出された精液をその日の夜に「お仕置き」と称して全部飲まされる奴隷女がいたり、公開浣腸ショーの浣腸液として二次利用されたりしているとは、このあどけない顔をした娘には今のところ想像もできないだろう。
「ちゃんと上手にいかせてくれたって申告しとくよ」
ありがと、と言ってチュっとほっぺたにキスをしてくる。
ふたりが一度下がると黒服がやってきて、「この後どうされますか、と店長が聞いてくるようにとのことですが」
と、膝をついて耳元にささやく。
通常は同じようにして、「次はテーブルの子でよろしいですか、それともチェンジされますか」と聞くところだ。
「俺だけ立ち上がるのも変だし、空いてたらリョウコつけてくれ。それに上は最近採った五人のうちの誰かを」
「承知しました」
「ああ、それと今の娘だが二重丸の合格だと大野に言ってくれ」
二十分間のサービスを終えた娘、テーブルに上がっていた娘たちが次々に横を通り過ぎる。使い終わったおしぼりを手にしているのがサービスをしていた娘で、何も持っていないのがテーブルで乳房や性器を客に見せつつアピールしていた娘だ。いずれにしても一度リストと呼ばれる控えの場所に戻され、そこで店長の大野か副店長あたりから次の指示を受ける。
シート別にテーブルの娘をそのまま呼ぶかチェンジするかを客から聞いた黒服がリストに報告してパソコンに入力すると、すでに入店指名されている娘の情報とともに何番シートに何番の娘がつくということをコンピュータが決定する。そしてそれが決まると同時に、残る娘の配置、テーブルに上がる娘、チェンジのため指名なしでサービスに回る娘の番号が席ごとに瞬時にディスプレイに表示される仕組みだ。
米倉のように後ろの方の席についている方が、より店内を眺められるため、前方から戻ってくる娘の顔や乳房、後方からテーブルに配置される娘の腰や尻をしっかり見ることができるが、店内の前面の壁は鏡張りになっているため、最前列であっても鏡越しにある程度は店内の様子をうかがえる。
いずれにせよ三分程度のこの間合いの時間はいつ見ても壮観であった。
「あ、わーい社長さんだ。指名の谷間だったのがラッキーだったんだー」
この店に引き抜いて初めて会ったとき、リョウコは残念ながら、米倉があの店に偵察に行った時のことを覚えていなかった。
最初に女の子たちを集めて店のおよそのコンセプト(もちろん本当の目的などはおくびにも出さぬが)を話した時に、一流の技術を持っていてかつ容姿も充分である子だけを私が調べて歩いたので全員のサービスを受けたことがあるということを話してあった。
その後、客に混じってひとりひとりを再チェックした時に、リョウコのサービスを一度受けたのだが、「おかしいな、こんだけ立派なおちんちん忘れる筈ないのに、なんで社長さんのこと覚えてないんだろう」と言っていた。
「あ、優菜ちゃん見に来てくれたのね。もう面接すみました」
「ああ、たった今。いい子連れてきてくれてどうもありがとな」
「え、ここでやったんだー。すごーい。初めてよねここのお店でサービスさせながらの現場面接なんて。前のお店にはお見えになったようだけど」
「ああ、まだ本人は面接だったって知らないんだ。でもさすがにリョウコの紹介だけあって、かわいいだけじゃなくて、技術も一級品だった。お前さんには特別ボーナスで今日三百点をつけるように大野店長に後で話しておくから」
「わーい、紹介料貰えちゃうんですか三十万円もぉ。凄いラッキー。ああ、もう今日は手を抜いちゃおうかなぁ。優菜ちゃんに絞られた後じゃ、イッてもらえるかわかんないし」
言いつつも抱きついてきて唇を重ねて舌をねじ入れてくる。
リョウコが玉舐めに入る二曲目の直前に、もうひとりの娘がやってきてテーブルにあがった。確か北海道出身の子で、小柄ながら色白で真ん丸の乳房をしている。入店して二週間くらいになる筈だがいまだに妙におどおどしているように見えた。膝を立てても股間に視線を感じるとつい膝が内側に寄ってしまうようだ。米倉の事をもちろん知っているので、慌ててすぐに開いて性器を晒す。最初の面接の時にも見ているが、剃毛の必要がまったくないほど毛が薄く、それがとても恥ずかしいと言っていた。
この店が風俗初体験の娘なので、フェラチオの技術はまったく未熟で、なかなか指名は増えないだろう。今のところマゾ性は未知数だが、数ヶ月前、親と姉を事故で亡くして、親戚などの妙な親切も重たくて北海道の短大を中退して単身東京に出てきて、とりあえず風俗と知りつつ面接に来たという話が本当ならば、それはそれで獲物としての価値は充分あると踏んで採用した。
言葉とは裏腹に、玉舐めをしながら右手での巧みなソフトタッチでリョウコは勃起を誘ってくる。この娘のサービスを受けるのもすでに三度目だが、技術はベテランの域に達していると感心させられる。
リョウコで暖気運転して最後は由香にするか、それとも目の前の娘の習熟度をテストするか、などと考えながら、銜え込んで上目遣いに視線をよこすリョウコのストロークを余裕を持って楽しんだ。リョウコのほかにシズカという背の高い娘も同じ店から引き抜かせたし、由香に至っては、すでに個人的な調教も済ませ、米倉の従順な奴隷として、自分が社長をしているこの新しい店で元の同僚とともにピンサロ嬢を続けろ、という命令に従って働いており、一日全部が指名で埋まる数人の一人になっていた。例え米倉とはいえ指名が入っている、店のナンバーワンやナンバーツーを横取りするわけにはいかない。
やはりあの店にはもう一度行ってみないといかんな、優菜もあっと言う間にトップテンの上位に入ることは間違いないだろうし、下手をするとトップ十人のうち同じ店の出身者だけで四人が占めるというのはかなり異常なことだろうからな、と米倉は思った。
三日後。
新宿副都心にそびえる四十九階建ての高層ビル、エスタブリッシュメントホテルの最上階「エグゼクティブラウンジ」では、ある行事が行われようとしていた。
前年度、二〇〇一年四月から二〇〇二年三月までの十二ヶ月間に、組織が獲得した奴隷は二十一人だった。強いマゾ性、容姿、羞恥心などどれをとっても極上品の元人妻加奈を筆頭に、米倉に言わせれば多少玉石混淆のところはあるとは思うが、それでも新しい女が常に必要である以上、一応は完全な奴隷として組織が使える女が二十人以上増えて、総勢八十余名となったのは喜ばしいことだった。
そのほとんどの女は、例の伝言システムを利用して獲得した。
確認すると、昨年度一年間に自らを「M女」と称してシステムに登録した女は四百人ちょっとだったということであるから、その約五パーセントを運営側で落としたことになる。登録数も前年度の約二倍強。有料会員である男性の登録数は年間三千人を超えていたようであるから、業界最大手に発展していたとはいえ、他にもいくつかあった同様のサービスを含め、新法によって消滅させられたこの巨大な市場はいったいこれからどこへ行くのであろう。
この日、この豪華会員制ラウンジには、十人の新規会員が集まっていた。
一年で生贄が二十人あまり増加したことを受け、組織はこの四月からの二ヶ月間で新規の会員権を五十人に販売していた。新店の開店と伝言システムの収束の業務に従事していたため米倉は一度も立ち会わなかったが、約二百人程度の応募者を、寒河江が中心になってふるい落としたらしい。
今回はとりあえずシルバー会員と言われる、いわゆる普通会員のみ五十人を選び、これまでのシルバー会員も含めて、ゴールドへの昇格はまた後日ということにして、価格も会員権そのものは五百万円で当初会員と同額、名義書換料というか登録料を、最近転売によって会員権を入手したものとの公平を期してひとり二千万円はとったようだが、この何の変哲もない銀色のカードを転売するだけでも簡単に数千万円のお金が動くと言われているわけだから、名義を持つためにはどちらにせよ必要な二千万円はともかく、あと五百万でよいと聞いて、定員の四倍のも人数の応募があったとしても不思議でもなかった。
エスタブリッシュメントホテルの高層階にあるVIP専用の秘密クラブとして、内容はともかくとして存在そのものは、上流社会ではかなり認知されてしまったためでもある。
具体的な秘密が漏れないのは、この秘密漏洩について厳しい掟が待っているからで、組織は会員のあらゆる情報を握り、かつ、クラブ内での素行も全て映像に記録されており、簡単に口外すらできないように入会時に誓約をたてさせると同時に、これを破った時の組織からの報復についても説明を受けているからだろう。
それでも一度だけ、組織の奴隷となりながら、現役の女子大生ということで、昼間は大学に通い続けることを許可していた娘に、あろうことかその大学のそばに黒塗りを乗り付けて声をかけてしまった会員が一昨年に出現したことがあった。
現在その会員が社長をしていた上場会社は倒産し、本人は重度の脱税と会社に対する背任の罪で執行猶予なしの禁固五年の罪で収監されている。これなど三田村の圧倒的な力を示す端的なもので、声をかけたという「事件」の起きた翌日には検察、国税、それにマスコミまでが一気に動き出し、あっと言う間にその会員は社会から抹殺されていったのだった。
ホテル最上階のこのフロアーは、やはりもともとラウンジとして作られていたものを、半分をラウンジ、半分を展望スパルームとして全面改装したものだ。もちろん、全てを利用できるのは増えたと言ってもわずか二百二十人の会員と組織の上層部の人間だけで、これに加え、普段の日のラウンジ部分については、会員が同伴する一名のみ外部のものが使うことができた。もちろん通常は単に高級な会員制ラウンジとして運営しているため、連れてこられた会員以外の人間に、この日のような特別な日にはどんなことが行われているかなど想像がつく筈もなく、優雅にそして贅沢にお酒を飲んだり語らいができる場所として羨ましがられることはあっても、紳士の仮面の裏に隠したサディストとしての素顔がのぞくといったこともないようになっていた。
ちなみに、スパルームの方は会員のみが入室可能であり、都会の煌めく夜景を眼下に見下ろしつつ全裸の奴隷たちが全身マッサージからソープランドのマット遊びの真似事程度までのサービスを提供しており、これはこれで連日人気であった。
さて、今日集まった十名の新会員の資格は、まだ全員がシルバーであるため、サディストといってもゴールド会員に比べればそのS性に対する審査も厳しくはなく、むしろ失うものの多い社会的地位を重視し、あとはせいぜいサディストとしての自覚があって、組織の考えている最低レベル以上で奴隷に対峙できるかといったあたりをポイントとしている。そういった意味でゴールド会員だけを集めた日に行われるような特別なハードショーが行われるわけではなかったが、入会して最初の招待に、フロアーの奥にあるステージを見つめる目にはそれぞれ強い期待と興奮の色が見てとれた。
「本日はお忙しい中をお集まりいただき、まことにありがとうございます」
母がアメリカ人と中国人のハーフ、父が日本人という美女リサがステージの左隅でスポットライトを浴びて挨拶をする。深紅の生地に金色の模様が入ったチャイナドレスを着た姿は一段と妖艶である。
「本年、エスタブリッシュメントクラブでは新たに五十名の方を会員としてお迎えいたしました。先ほど皆様にお渡ししました銀色のプラスティックのこのカードが、当クラブの会員様の証であります。本日よりいつでもこちらのラウンジをご利用いただけますが、このカードがなければ、エレベーターでこのフロアーまで上がってくる事はできませんし、クラブの受付は四十六階にございますが、その受付のある部屋へも入る事ができませんので、大切に保管して下さいませ。今回、ご入会いただいたことを記念いたしまして、十名ずつの方をお迎えして行われるこの入会セレモニーも今夜が三回目、短い時間ではございますが、ごゆるりとお楽しみくださいませ」
リサが一礼すると会員から拍手がおこり、ひと呼吸おいて今夜のショー『奴隷市場』についての説明がはじまる。
「さて、皆様のお手元にお配りしたご案内の通り、本日もこちらで奴隷市を開催いたします。皆様方はショーとして楽しんでいただいても結構ですし、もちろん実際に入札することもできます。本日用意させていただいた奴隷は五名。全員が実は、普段はゴールド会員専属の奴隷たちです。従いまして先ほどカードと一緒にお配りした、六十数名の奴隷リストには掲載されておりません。ふだんご指名いただけるリストにある奴隷も充分に皆様のご満足をいただける女を揃えていると当クラブは自負しておりますし、それはプロフィールや顔写真、全身写真などお帰りになってからじっくりご覧いただければ納得していただけると存じますが、今日ご用意した五名はいずれもそれを上回る特級品です。もしよろしかったらぜひ落札していただき、当クラブの最高級品レベルというものを最初に味あわれてみてはいかがでしょう」
またしても拍手が起こり、それでは、というリサの言葉を合図にして、スポットライトの輪が五つ、ステージに吊された五つの女体をまばゆく照らし出した。
向かって一番左側、ひとりだけ全裸の女は米倉の妻美樹だった。
ほう、と無意識のうちに声を出して米倉は言った。


